JP2019001201A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体を有し、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能とを両立したタイヤの提供。
【解決手段】複数種の樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格体17を有し、車両に装着したときに車両幅方向内側となるタイヤ骨格体17のサイド部16におけるアスカーD硬度Hiは、車両に装着したときに車両幅方向外側となるタイヤ骨格体17のサイド部16におけるアスカーD硬度Hoの0.84倍以上1.00倍未満であるタイヤ。
【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤに関する。
従来、乗用車等の車両には、ゴムを主な材料とするタイヤが用いられている。これに対して近年では、軽量化、成形の容易さ、リサイクルのしやすさ等の観点から、ゴムに代えて樹脂をタイヤの材料として用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−46030号公報
樹脂を含む樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体を有するタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストである。また、タイヤ骨格体が樹脂材料で構成されたタイヤにおいては、樹脂材料の組成や厚み等を変えることで、容易にタイヤの性能を制御できる。
例えば、樹脂材料の組成や厚みを変えてタイヤ骨格体のサイド部における硬度を低くすることで、タイヤ骨格体の柔軟性が得られ、乗り心地が良好となる。しかしながら、急なカーブを高速で曲がる時のような急なコーナリング時には、サイド部の硬度が低すぎると、タイヤが変形したりグリップが効きにくくなったりすることで、コーナリング性能が落ちる場合がある。そのため、急なコーナリング時におけるコーナリング性能の観点からは、タイヤ骨格体のサイド部における硬度は高い方が望ましい。このように、タイヤ骨格体のサイド部における硬度を調整することによって、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能とを両立させることは難しい。
上記事実を考慮し、本発明は、樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体を有し、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能とを両立したタイヤを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1>複数種の樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格体を有し、車両に装着したときに車両幅方向内側となる前記タイヤ骨格体のサイド部におけるアスカーD硬度Hiは、車両に装着したときに車両幅方向外側となる前記タイヤ骨格体のサイド部におけるアスカーD硬度Hoの0.84倍以上1.00倍未満であるタイヤ。
<2>前記アスカーD硬度Hiと前記アスカーD硬度Hoとの平均値は、0.84以上0.98以下である<1>に記載のタイヤ。
<3>前記タイヤ骨格体におけるタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に沿って巻回された補強コード部材をさらに有する<1>又は<2>に記載のタイヤ。
<4>前記タイヤ骨格体は、3種以内の樹脂材料で構成されている<1>〜<3>のいずれか1項に記載のタイヤ。
<5>前記複数種の樹脂材料は、それぞれ、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、又はポリウレタン系熱可塑性樹脂を主成分として含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載のタイヤ。
<6>前記タイヤ骨格体は、同系の樹脂を主成分として含有する2種以上の樹脂材料で構成されている<1>〜<5>のいずれか1項に記載のタイヤ。
本発明によれば、樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体を有し、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能とを両立したタイヤが提供される。
第1実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。 タイヤ骨格体に樹脂被覆コードを巻き付ける工程を示す断面斜視図である。 第2実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面斜視図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「主成分」とは、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分をいう。
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムはこれに含まれない。
本明細書において「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物を意味し、熱可塑性エラストマーもこれに含まれる。
また、「ゴム」とは、弾性を有する高分子化合物であるが、本明細書では、熱可塑性樹脂エラストマーとは区別される。
また、「熱可塑性エラストマー」は、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する材料である。「熱可塑性エラストマー」には、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂と、主成分である熱可塑性樹脂と添加剤であるゴムとの混合物である熱可塑性ゴム架橋体(TPV)と、の両方が含まれる。
≪タイヤ≫
本発明のタイヤは、複数種の樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格体を有し、車両に装着したときに車両幅方向内側となる前記タイヤ骨格体のサイド部(以下「内側サイド部」ともいう)におけるアスカーD硬度Hi(以下単に「硬度Hi」ともいう)は、車両に装着したときに車両幅方向外側となる前記タイヤ骨格体のサイド部(以下「外側サイド部」ともいう)におけるアスカーD硬度Ho(以下単に「硬度Ho」ともいう)の0.84倍以上1.00倍未満である。
ここで、「複数種の樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体」は、タイヤ骨格体の部位によって、樹脂材料の組成が異なるものをいう。例えば、組成の異なる樹脂材料を用いてそれぞれ形成された2つのタイヤ骨格体の半割体を接合して得られたタイヤ骨格体は、「2種の樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体」である。また、例えば、内側サイド部、外側サイド部、及びクラウン部を、それぞれ組成の異なる樹脂材料を用いて形成した後に接合して得られたタイヤ骨格体は、「3種の樹脂材料で構成されたタイヤ骨格体」である。
なお、「組成が異なる樹脂材料」としては、異なる成分(例えば、樹脂、添加剤等)を含有する樹脂材料のほか、樹脂材料に含有される成分が同一であってそれらの含有量が異なる樹脂材料も挙げられる。
また、タイヤ骨格体のサイド部は、ビード部からトレッド端までのことである。
ここで、「トレッド端」とは、タイヤをJATMA YEAR BOOK(2014年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%を内圧として充填し、最大負荷能力を負荷したときのタイヤ幅方向最外の接地部分を指す。使用地又は製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
また、ビード部とは、タイヤ径方向内側端からタイヤ断面高さの30%までをいい、一方のトレッド端から他方のトレッド端までをクラウン部という。
アスカーD硬度の測定は、アスカーD硬度計(高分子計器社製、型番:CLE-150H)を用い、タイヤ骨格体のサイド部におけるタイヤ軸方向外側の面に対して、温度25℃、荷重5kgの条件で行う。
上記硬度Hi及び硬度Hoは、内側サイド部及び外側サイド部のそれぞれにおいて、車両幅方向内側のトレッド端と車両幅方向外側のトレッド端との距離をLとしたとき、前記内側のトレッド端と前記外側のトレッド端と間の中心(つまり、内側のトレッド端又は外側のトレッド端から1/2Lの距離の位置であり、以下「トレッド中心線」ともいう)から3/5Lの距離におけるアスカーD硬度の値である。具体的には、トレッド中心線から3/5Lの距離に相当する位置のうち、タイヤ周方向において等間隔に3点の位置について上記方法により測定して平均した値を、アスカーD硬度の値とする。
つまり、上記タイヤのタイヤ骨格体においては、トレッド中心線から内側サイド部へ3/5L(すなわち、トレッド中心線から内側トレッド端と外側トレッド端との距離の3/5倍の位置)におけるアスカーD硬度Hiが、トレッド中心線から外側サイド部へ3/5LにおけるアスカーD硬度Hoの0.84倍以上1.00倍未満である。
本発明のタイヤにおいては、前記のように、内側サイド部の硬度Hiが外側サイド部の硬度Hoの0.84倍以上1.00倍未満であることにより、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能とが両立される。その理由は以下のように推測される。
前記のように、タイヤ骨格体のサイド部における硬度は、乗り心地の観点からは低いほうが望ましく、急なコーナリング時におけるコーナリング性能の観点からは高いほうが望ましい。
具体的には、サイド部の硬度を低くすると、タイヤ骨格体の柔軟性が得られるため、例えば路面の凹凸による振動等をタイヤ骨格体が吸収することで、乗り心地が良くなる。一方、急なコーナリング時には、遠心力によってカーブの外側に向かう力が車体にかかるため、タイヤ骨格体のサイド部における硬度が低すぎると、上記遠心力に伴う荷重によってタイヤが変形し、コーナリング性能が低下する場合がある。また、タイヤの変形が起こらない場合でも、タイヤ骨格体のサイド部における硬度が低いと、タイヤのグリップが効きにくくなり、コーナリング性能が低下する場合がある。
一方、上記タイヤでは、両側のサイド部における硬度を同じ値に(すなわち外側と内側とが対称になるように)調整するのではなく、外側サイド部の硬度と内側サイド部の硬度とが異なる値(すなわち非対称)になるように調整している。
ここで、車体への遠心力に伴う荷重は、すべてのタイヤにおいて、またすべてのタイヤ骨格体のサイド部において均等にかかるのではなく、カーブの外側に位置するタイヤ、さらにその中でもタイヤの外側サイド部に最も大きな荷重がかかると考えられる。そのため、上記のように硬度Hiを硬度Hoの1.00倍未満とする(すなわち、外側サイド部を内側サイド部よりも相対的に硬くする)ことで、両側のサイド部の硬度が同じ場合に比べ、急なコーナリング時におけるコーナリング性能が向上すると考えられる。
加えて、内側サイド部の硬度を外側サイド部の硬度より相対的に低くすることで、タイヤ骨格体の柔軟性も維持されるため、乗り心地の低下も抑えられ、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能との両立が実現されると考えられる。
また、上記タイヤは、内側サイド部の硬度Hiが外側サイド部の硬度Hoの0.84倍以上である。そのため、内側サイド部が軟らかすぎることによる乗り心地低下及びコーナリング性能の低下が抑制され、かつ、外側サイド部が硬すぎることによる乗り心地低下が抑制されると考えられる。
以上のように、内側サイド部の硬度Hiが外側サイド部の硬度Hoの0.84倍以上1.00倍未満であることにより、乗り心地と急なコーナリング時におけるコーナリング性能とが両立されると推測される。
なお、内側サイド部の硬度Hiは、外側サイド部の硬度Hoの0.84倍以上0.98倍以下が好ましく、0.84倍以上0.95倍以下がより好ましく、0.84倍以上0.93倍以下がさらに好ましい。
上記タイヤにおいては、内側サイド部の硬度Hiと外側サイド部の硬度Hoとの平均値(以下「Hi−Ho平均値」ともいう)が、30度以上60度以下であることが好ましい。Hi−Ho平均値が上記範囲であることにより、上記範囲から外れる場合に比べて、タイヤ骨格体が適度な柔軟性を有し、乗り心地が良好となる。なお、Hi−Ho平均値は、36度以上56度以下がより好ましく、42度以上52度以下がさらに好ましい。
なお、サイド部の硬さを調整する方法としては、例えば、サイド部の厚みを変える方法、サイド部を構成する樹脂材料の組成を変える方法等が挙げられる。
具体的には、サイド部の厚みを厚くするほどサイド部の硬さが高くなり、サイド部の厚みを薄くするほどサイド部の硬さが低くなる。
なお、トレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって3/5Lの位置における厚みとしては、例えば1mm以上3mm以下が挙げられ、1mm以上2mm以下が好ましい。
一方、タイヤ骨格体が複数種の樹脂材料で構成されている場合、内側サイド部の硬度と外側サイド部の硬度とが異なる値となるように、内側サイド部と外側サイド部とを異なる組成の樹脂材料で構成してもよい。また、異なる組成の樹脂材料で構成して厚みを異なる値とする方法により、内側サイド部の硬度と外側サイド部の硬度とを異なる値としてもよい。
なお、サイド部を構成する樹脂材料の組成を変えることでサイド部の硬度を調整する方法としては、例えば、硬度を上昇させる成分の有無や含有量を変える方法が挙げられる。また、樹脂材料の主成分がハードセグメントとソフトセグメントとを有する熱可塑性エラストマーの場合は、ハードセグメントとソフトセグメントとの含有比を変えることによって、サイド部の硬度を調整してもよい。具体的には、例えば、ハードセグメントの比率を多くするほどサイド部の硬度が高くなり、ハードセグメントの比率を少なくするほどサイド部の硬度が低くなる。
なお、タイヤ骨格体が複数種の樹脂材料で構成されている場合、例えば、各樹脂材料で構成された部位同士を接合させることで、タイヤ骨格体を得る。各樹脂材料で構成された部位同士の接合部の強度を上げる方法としては、例えば、溶接用樹脂材料等を用いて溶接する方法、溶接用樹脂材料等を用いずに各部位を直接接触させて溶接する方法、接着剤により接着させる方法等が挙げられる。
タイヤの耐久性の観点からは、タイヤ骨格体における接合箇所が少ないほうが好ましい。特に、接合部における強度の観点から、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の種類は少ないほうが好ましく、具体的には、タイヤ骨格体が3種以内の樹脂材料で構成されていることが好ましく、2種以内の樹脂材料で構成されていることがより好ましい。
上記タイヤは、少なくともタイヤ骨格体を有し、タイヤ骨格体以外の部材をさらに有していてもよい。タイヤ骨格体以外の部材としては、例えば、タイヤの強度を補強する補強部材、タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に設けられるゴム部材、タイヤ骨格体におけるリムと接する場所に設けられる外装部材等が挙げられる。その中でも、タイヤの耐久性の観点から、上記補強部材として、タイヤ骨格体におけるタイヤ径方向外側にタイヤ周方向に沿って巻回された補強コード部材を有することが望ましい。
以下、タイヤ骨格体及びタイヤ骨格体以外の部材について、それぞれ説明する。
<タイヤ骨格体>
タイヤ骨格体は、複数種の樹脂材料で構成されている。
ここで、本明細書において「樹脂材料」とは、主成分が樹脂である樹脂組成物を意味する。樹脂材料に含まれる樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
(樹脂材料に含まれる樹脂)
樹脂材料に含まれる樹脂としては、熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂材料に含まれる樹脂は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
なお、上記「ポリアミド系熱可塑性樹脂」は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む概念であり、以下同様である。また、上記「ポリエステル系熱可塑性樹脂」は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む概念であり、以下同様である。また、上記「オレフィン系熱可塑性樹脂」は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む概念であり、以下同様である。また、上記「ポリスチレン系熱可塑性樹脂」は、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む概念であり、以下同様である。また、上記「ポリウレタン系熱可塑性樹脂」は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含む概念であり、以下同様である。
熱可塑性エラストマーとしては、前記のように、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂、主成分である熱可塑性樹脂と添加剤であるゴムとの混合物である熱可塑性ゴム架橋体(TPV)が挙げられる。
ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂としては、例えば、結晶性で融点の高いハードセグメント又は高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、の共重合体等が挙げられる。
なお、上記ハードセグメントは、具体的には、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ−π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。また、ソフトセグメントは、例えば、主鎖に長鎖の基(例えば長鎖のアルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、JIS K6418に規定されるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系熱硬化性樹脂、ユリア系熱硬化性樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂等が挙げられる。
走行時に必要とされる弾性、製造時の成形性等を考慮すると、樹脂材料に主成分として含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、さらにその中でも熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。
また、樹脂材料に主成分として含まれる樹脂は、これらの中でも、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、及びポリウレタン系熱可塑性樹脂が好ましい。特に、タイヤ骨格体が複数種の樹脂材料で構成される場合、すべての樹脂材料が、それぞれポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、又はポリウレタン系熱可塑性樹脂を主成分として含むことが、低ロス性の観点から好ましい。
タイヤ骨格体が複数種の樹脂材料で構成されている場合、前記複数種の樹脂材料に主成分として含まれる樹脂のすべてが同系の樹脂であることが好ましい。同系の樹脂同士の接着性が良好であるため、複数種の樹脂材料に主成分として含まれる樹脂のすべてが同系の樹脂であれば、各樹脂材料で構成された部位の接着性が良好となり、タイヤの耐久性が向上する。
なお、同系の樹脂は、樹脂の特徴となる分子構造のうち、主鎖を構成する構成単位の結合部における構造が同一である樹脂である。具体的には、例えば、前記結合部がアミド結合であるポリアミド系熱可塑性樹脂同士はいずれも同系の樹脂である。すべてが同系の樹脂である場合としては、例えば、すべてがポリアミド系熱可塑性樹脂である場合、すべてがポリエステル系熱可塑性樹脂である場合、すべてがポリウレタン系熱可塑性樹脂である場合等が挙げられる。なお、すべてが同系の樹脂である場合には、すべてが同一の樹脂である場合のほか、熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂とが混在する場合も含む。
すなわち、タイヤ骨格体は、タイヤの耐久性の観点から、同系の樹脂を主成分として含有する2種以上の樹脂材料で構成されていることが好ましい。
また、タイヤ骨格体が複数種の樹脂材料で構成されている場合、前記複数種の樹脂材料に主成分として含まれる樹脂のすべてが、それぞれ、ポリアミド系熱可塑性樹脂又はポリウレタン系熱可塑性樹脂である形態も好ましい。同系の樹脂同士と同様に、ポリアミド系熱可塑性樹脂とポリウレタン系熱可塑性樹脂との接着性も良好である。そのため、すべての樹脂材料における主成分がポリアミド系熱可塑性樹脂又はポリウレタン系熱可塑性樹脂であれば、各樹脂材料で構成された部位の接着性が良好となり、タイヤの耐久性が向上する。
すなわち、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料は、タイヤの耐久性の観点から、同系の樹脂を主成分として含有する2種以上の樹脂材料、又はポリアミド系熱可塑性樹脂を主成分として含有する樹脂材料とポリウレタン系熱可塑性樹脂を主成分として含有する樹脂材料とからなる2種以上の樹脂材料であることが好ましい。
以下、各熱可塑性エラストマー及び熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂における具体例について説明する。
−ポリアミド系熱可塑性エラストマー−
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを形成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
上記一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数2〜20のアルキレン基)を表す。
上記一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数3〜20のアルキレン基)を表す。
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドン等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2〜20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC−(R)m−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等も用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
上記一般式(3)中、x及びzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。
一般式(3)において、x及びzは、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数がより好ましく、1〜14の整数が更に好ましく、1〜12の整数が特に好ましい。また、一般式(3)において、yは、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数がより好ましく、7〜35の整数が更に好ましく、8〜30の整数が特に好ましい。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、又はラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せがより好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20がより好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2等)等を用いることができる。
−ポリスチレン系熱可塑性エラストマー
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリスチレンがハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法等で得られるものが好ましく用いられ、具体的には、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、又はポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量は、5000〜500000が好ましく、10000〜200000がより好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000がより好ましく、30000〜500000が更に好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30がより好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体(ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)]等が挙げられる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272等)、(株)クラレ製の「SEBS」シリーズ(8007、8076等)、「SEPS」シリーズ(2002、2063等)等を用いることができる。
−ポリウレタン系熱可塑性エラストマー−
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを形成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
上記式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。
式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500〜5000のものを使用することができる。Pは、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル及び長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジベート)ジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式A及び式B中、Rは、Rで表される脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジイソシアネート化合物を用いて導入された部分構造である。Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、例えば、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
さらに、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリウレタン)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜1500が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性及び熱安定性の観点から、500〜20000が好ましく、500〜5000が更に好ましく、500〜3000が特に好ましい。また、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、15:85〜90:10が好ましく、30:70〜90:10が更に好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256号公報に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントとの組合せが好ましく、より具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、BASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890等)、(株)クラレ社製「クラミロンU」シリーズ(例えば、2000番台、3000番台、8000番台、9000番台等)、日本ミラクトラン(株)製の「ミラクトラン」シリーズ(例えば、XN−2001、XN−2004、P390RSUP、P480RSUI、P26MRNAT、E490、E590、P890等)等を用いることができる。
−オレフィン系熱可塑性エラストマー−
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、具体的には、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びプロピレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のオレフィン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー中のオレフィン樹脂含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、5000〜10000000であることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が5000〜10000000であると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、7000〜1000000であることが更に好ましく、10000〜1000000が特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂材料の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜95:15が好ましく、50:50〜90:10が更に好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーを酸変性してなるものを用いてもよい。
「オレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。
オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する不飽和化合物としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する不飽和化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、三井化学(株)製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S、A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、XM−7070、XM−7080、BL4000、BL2481、BL3110、BL3450、P−0275、P−0375、P−0775、P−0180、P−0280、P−0480、P−0680等)、三井・デュポンポリケミカル(株)製の「ニュクレル」シリーズ(例えば、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0903HC、N0908C、AN42012C、N410、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1525、N1560、N0200H、AN4228C、AN4213C、N035C)等、「エルバロイAC」シリーズ(例えば、1125AC、1209AC、1218AC、1609AC、1820AC、1913AC、2112AC、2116AC、2615AC、2715AC、3117AC、3427AC、3717AC等)、住友化学(株)の「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ等、東ソー(株)製の「ウルトラセン」シリーズ等、プライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
−ポリエステル系熱可塑性エラストマー−
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。芳香族ポリエステルは、好ましくは、テレフタル酸及びジメチルテレフタレートの少なくとも1種と、1,4−ブタンジオールと、から誘導されるポリブチレンテレフタレートである。また、芳香族ポリエステルは、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、若しくはこれらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニル等の芳香族ジオール;等)と、から誘導されるポリエステル、又はこれらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分、多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量は、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)とソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70が更に好ましい。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、例えば、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテルである組み合わせが好ましく、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントがポリ(エチレンオキシド)グリコールである組み合わせが更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047、4767等)、東洋紡(株)製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、P450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
−熱可塑性エラストマー以外のポリアミド系熱可塑性樹脂−
熱可塑性エラストマー以外のポリアミド系熱可塑性樹脂としては、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。
熱可塑性エラストマー以外のポリアミド系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ε−カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
アミド6は、例えば、{CO−(CH−NH}で表すことができる。アミド11は、例えば、{CO−(CH10−NH}で表すことができる。アミド12は、例えば、{CO−(CH11−NH}で表すことができる。アミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。アミドMXは、例えば、下記構造式(A−1)で表すことができる。ここで、nは繰り返し単位数を表す。
−熱可塑性エラストマー以外のポリエステル系熱可塑性樹脂−
熱可塑性エラストマー以外のポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリエステルを挙げることができる。
熱可塑性エラストマー以外のポリエステル系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ−3−ブチル酪酸、ポリヒドロキシ−3−ヘキシル酪酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルなどを例示することができる。
−熱可塑性エラストマー以外のオレフィン系熱可塑性樹脂−
熱可塑性エラストマー以外のオレフィン系熱可塑性樹脂としては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンを挙げることができる。
熱可塑性エラストマー以外のオレフィン系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、プロピレンホモ重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィン等が挙げられる。
(樹脂材料に含まれる樹脂以外の成分)
樹脂材料は、所望に応じて、樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等の各種添加剤が挙げられる。
添加剤の樹脂材料中の含有量は特に限定はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
(樹脂材料の特性)
樹脂材料の融点は、例えば100℃〜350℃が挙げられ、タイヤの耐久性及び生産性の観点から、100℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。
樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率は、50MPa〜1000MPaが好ましく、50MPa〜800MPaが更に好ましく、50MPa〜700MPaが特に好ましい。樹脂材料の引張弾性率が、50MPa〜1000MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつ、リム組みを効率的に行なうことができる。
樹脂材料のJIS K7113(1995)に規定される引張強さは、例えば15MPa〜70MPaが挙げられ、17MPa〜60MPaが好ましく、20MPa〜55MPaが更に好ましい。
樹脂材料のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5MPa〜20MPaが更に好ましく、5MPa〜17MPaが特に好ましい。樹脂材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時等にタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
樹脂材料のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10%〜70%が更に好ましく、15%〜60%が特に好ましい。樹脂材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性を良好にすることができる。
樹脂材料のJIS K7113(1995)に規定される引張破断伸びは、50%以上が好ましく、100%以上が更に好ましく、150%以上が特に好ましく、200%以上が最も好ましい。樹脂材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性が良好であり、衝突に対して破壊し難くすることができる。
樹脂材料のISO 75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)は、50℃以上が好ましく、50℃〜150℃が更に好ましく、50℃〜130℃が特に好ましい。樹脂材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制するこができる。
(タイヤ骨格体の特性)
上記タイヤ骨格体においては、外側サイド部の硬度Hoが内側サイド部の硬度Hiよりも高いが、それに加えてクラウン部においても、車両幅方向外側の硬度が車両幅方向内側の硬度よりも高いことが好ましい。具体的には、車両幅方向内側のトレッド端と車両幅方向外側のトレッド端との距離をLとしたとき、トレッド中心線から車両幅方向外側に向かって1/3LにおけるアスカーD硬度Ho’が、トレッド中心線から車両幅方向内側に向かって1/3LにおけるアスカーD硬度Hi’よりも高いことが好ましい。また、上記硬度Hi’は上記硬度Ho’の0.84倍以上1.00倍未満がより好ましく、0.84倍以上0.95倍以下がさらに好ましく、0.84倍以上0.93倍以下が特に好ましい。
また、硬度Hi’と硬度Ho’との平均値は、30度以上60度以下が好ましく、36度以上56度以下がより好ましく、42度以上52度以下がさらに好ましい。
さらに、上記タイヤ骨格体においては、トレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって3/5LにおけるアスカーD硬度について上記関係を満たすが、トレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって1/5LにおけるアスカーD硬度についても、同様の関係を満たすことが好ましい。すなわち、トレッド中心線から車両幅方向外側に向かって1/5LにおけるアスカーD硬度Ho’’が、トレッド中心線から車両幅方向内側に向かって1/5LにおけるアスカーD硬度Hi’’よりも高いことが好ましい。また、硬度Hi’’は、硬度Ho’’の0.84倍以上1.00倍未満がより好ましく、0.84倍以上0.95倍以下がさらに好ましく、0.84倍以上0.93倍以下が特に好ましい。
また、硬度Hi’’と硬度Ho’’との平均値は、30度以上60度以下が好ましく、35度以上55度以下がより好ましく、40度以上50がさらに好ましい。
上記タイヤ骨格体においては、外側サイド部の密度が、内側サイド部の密度の0.90倍以上1.10倍以下であることが好ましく、0.95倍以上1.05倍以下であることがより好ましい。
外側サイド部の密度と内側サイド部の密度との比が1に近いと、タイヤの重量が車両幅方向外側又は車両幅方向内側に偏りにくく、タイヤにかかる荷重のバランスも良くなるため、タイヤの接地形状が良好となる。
また、外側サイド部及び内側サイド部の密度は、それぞれ0.80g/cm以上1.35g/cm以下が好ましく、1.00g/cm以上1.20g/cm以下がより好ましい。
ここで、上記サイド部の密度は、トレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって3/5Lの位置における樹脂材料片(例えば、5.0mm×5.0mm×1.0mm)を切り出し、アルキメデス法により測定する。
<補強部材>
補強部材としては、例えば、コード状の補強コード部材が挙げられる。
補強コード部材としては、例えば、従来のゴム製タイヤに用いられるコード状の金属部材が挙げられる。コード状の金属部材としては、例えば、金属繊維のモノフィラメント(単線)、スチール繊維を撚ったスチールコード等のマルチフィラメント(撚り線)等が挙げられる。タイヤの耐久性をより向上させる観点からは、マルチフィラメントが好ましい。
金属部材の断面形状(例えば、円形、楕円形、多角形等)、サイズ(直径)等は、特に限定されるものではなく、所望のタイヤに適したものを適宜選定して用いることができる。
また、タイヤの耐内圧性と軽量化とを両立する観点からは、金属部材の太さは、0.2mm〜2mmであることが好ましく、0.8mm〜1.6mmであることがより好ましい。金属部材の太さは、任意に選択した5箇所において測定した太さの数平均値とする。
また、補強コード部材の太さは、0.2mm〜2mmであることが好ましく、0.8mm〜1.6mmであることがより好ましい。補強コード部材の太さは、任意に選択した5箇所において測定した太さの数平均値とする。太さの測定値は、補強コード部材の断面の最大径(補強コード部材の断面の輪郭線上で任意に選択される2点間の距離が最大となるときの当該2点間の距離)とする。
金属部材の引張弾性率は、通常、100000MPa〜300000MPa程度であり、120000MPa〜270000MPaであることが好ましく、150000MPa〜250000MPaであることが更に好ましい。なお、金属部材の引張弾性率は、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力-歪曲線を描き、その傾きから算出する。
金属部材自体の破断伸び(引張破断伸び)は、通常、0.1%〜15%程度であり、1%〜15%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。金属部材の引張破断伸びは、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、歪から求めることができる。
補強コード部材は、タイヤ骨格体におけるタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に沿って巻回されてもよく、タイヤの周方向に対して角度を有するように配置されてもよいが、製造容易性及び耐久性の観点で、タイヤ周方向に沿って巻回されていることが好ましい。また、複数の補強コード部材がタイヤ厚み方向に重なるように配置されてもよい。その場合、タイヤ厚み方向に重なった複数の補強コード部材が、平行に近い状態で配置されてもよく、互いに交差するように配置されてもよい。
補強コード部材は、被覆樹脂材料により被覆されていてもよい。
被覆樹脂材料としては、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と同様のものが挙げられ、耐久性の観点から、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の主成分と同系の樹脂を主成分として含有することが好ましい。
被覆樹脂材料の弾性率(JIS K7113:1995に規定される引張弾性率)は、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料の弾性率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。被覆樹脂材料の弾性率がタイヤ骨格体を形成する樹脂材料の弾性率の10倍以下であることにより、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、被覆樹脂材料の弾性率がタイヤ骨格体を形成する樹脂材料の弾性率の0.1倍以上であることにより、被覆樹脂材料が柔らかすぎず、コーナリング性能が向上する。
補強コード部材は、補強コード部材の引き抜き性(引き抜かれにくさ)を高める観点から、表面が20%以上被覆樹脂材料で覆われていることが好ましく、50%以上覆われていることが更に好ましい。
また、被覆樹脂材料で被覆された層(以下「被覆樹脂層」ともいう)の厚みは、特に限定されないが、耐久性の観点から、10μm以上1000μm以下が好ましく、50μm以上700μm以下がより好ましい。なお、被覆樹脂層の厚みは、被覆樹脂材料で被覆された補強コード部材の断面のSEM画像から測定され、最も厚みの小さい部分の値とする。
補強コード部材は、例えば接着層(接着剤を用いて形成された層)等の他の層を介して被覆樹脂材料で被覆されていてもよい。
接着層の形成に用いる接着剤の種類としては、例えば、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等が挙げられる。接着層の形成に用いる接着剤は、1種のみでもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、接着層の形成に用いる接着剤が非反応性の接着剤である場合、接着層は前記非反応性の接着剤を含む層であり、接着層の形成に用いる接着剤が反応性の接着剤である場合、接着層は前記反応性の接着剤の反応生成物を含む層である。
接着層の平均厚みは、特に制限されないが、走行時の乗り心地及びタイヤの耐久性の観点で、5μm〜500μmであることが好ましく、20μm〜150μmであることがより好ましく、20μm〜100μmであることが更に好ましい。
接着層は、接着剤以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、ラジカル捕捉剤、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる。
<ゴム部材>
ゴム部材は、例えば、タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に設けられる。
なお、タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に補強コード部材が巻回されている場合、ゴム部材は、補強コード部材を介して、タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に設けられる。
ゴム部材は、ゴムを含む部材であればとくに限定されないが、例えば、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているトレッドゴムと同種のものを用いることができる。
なお、ゴム部材のタイヤ径方向の外周面には、例えば、タイヤ周方向に延びる排水用の溝が形成されていてもよい。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図を参照して説明する。第1実施形態は、タイヤ骨格体におけるタイヤ径方向外側に、被覆樹脂材料で被覆された補強コード部材がタイヤ周方向に沿って巻回された形態である。
図1は、第1実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
図1中、矢印Wはタイヤ回転軸と平行な方向(以下、「タイヤ幅方向」と称する場合がある)を示し、矢印Sはタイヤの回転軸を通りタイヤ幅方向と直交する方向(以下、「タイヤ径方向」と称する場合がある)を示す。さらに、一点鎖線CLは、タイヤのセンターライン(以下「タイヤ赤道面」ともいう)を示す。
図1に示すように、第1実施形態に係るタイヤ10は、樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格体の一例であるタイヤケース17と、補強部材として補強コード部材の一例である補強コード24を含むベルト層12と、ゴム部材の一例であるトレッド30と、を備えている。また、補強コード24は被覆樹脂26で被覆されている。すなわち、ベルト層12は、被覆樹脂26で被覆された複数の補強コード24を備えている。
タイヤケース17は、タイヤ幅方向に間隔をあけて配置された一対のビード部14と、これら一対のビード部14からタイヤ径方向外側へそれぞれ延出する一対のサイド部16と、一対のサイド部16を連結するクラウン部18と、を含んで構成されている。ビード部14は、リム(図示せず)に接触する部位である。また、サイド部16は、タイヤ10の側部を形成し、ビード部14からクラウン部18に向かってタイヤ幅方向外側に凸となるように緩やかに湾曲している。
クラウン部18は、一方のサイド部16のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部16のタイヤ径方向外側端とを連結する部位であり、タイヤ径方向外側に配設されるトレッド30を支持する。
また、本実施形態では、クラウン部18は、略一定厚みとされている。タイヤケース17のクラウン部18における外周面18Aは、タイヤ幅方向断面において平坦状に形成されていてもよいし、またタイヤ径方向外側に膨らんだ湾曲形状であってもよい。なお、本実施形態のクラウン部18の外周面18Aは、ベルト層12が設けられるタイヤケース17の外周である。
また、本実施形態では、それぞれ1つのビード部14、一つのサイド部16、及び半幅のクラウン部18を有する半割体17A及び半割体17Bでタイヤケース17が構成されている。タイヤケース17は、半割体17A及び半割体17Bを互いに向かい合わせ、各々の半幅のクラウン部18の端部同士をタイヤ赤道面CLで接合して形成されている。この端部同士は、例えば溶接用樹脂材料17Cを用いて接合されている。
ビード部14には、タイヤ周方向に沿って延びる円環状のビードコア20が埋設されている。このビードコア20は、ビードコード(図示せず)で構成されている。このビードコードは、スチールコード等の金属コード、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成される。なお、ビード部14の剛性を十分に確保できれば、ビードコア20自体を省略してもよい。
本実施形態では、半割体17Aと半割体17Bとが異なる組成の樹脂材料で構成されている。そして、タイヤ10を車両に装着したときに車両幅方向内側となる半割体17Bのサイド部16の硬度Hiが、タイヤ10を車両に装着したときに車両幅方向外側となる半割体17Aのサイド部16の硬度Hoの0.84倍以上1.00未満となっている。
なお、タイヤケース17を一体成型品としてもよく、タイヤケース17を3以上の樹脂部材に分けて製造し、これらを接合して形成してもよい。例えば、タイヤケース17を各部位(例えば、ビード部14、サイド部16、クラウン部18)ごとに分けて製造し、これらを接合して形成してもよい。
ベルト層12は、タイヤケース17の外周に設けられている。本実施形態におけるタイヤケース17の外周とは、クラウン部18の外周面18Aである。
ベルト層12は、樹脂被覆コード28がタイヤケース17の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれてタイヤケース17に接合されると共に、樹脂被覆コード28におけるタイヤ幅方向に互いに隣接する部分同士が接合されることで構成されている。なお、樹脂被覆コード28は、補強コード24を被覆樹脂26で被覆して構成されている
また、タイヤケース17のクラウン部18における外周面18Aには、樹脂被覆コード28のタイヤ径方向の内周面が接合されている。
なお、樹脂被覆コード28は、被覆樹脂26の中に1本の補強コード24を含んでいてもよく、被覆樹脂26中に複数本の補強コード24を含んでもよい。
また、樹脂被覆コード28の断面形状は、矩形でもよく、円弧状であってもよい。
また、図1に示すベルト層12では、樹脂被覆コード28の層が単層であり、補強コード24がタイヤ幅方向に一列に並んだ構成となっているが、これに限られない。ベルト層12は、樹脂被覆コード28がタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて層を形成した後に、前記層の外周面にさらに樹脂被覆コード28が巻かれた積層構造のベルト層であってもよい。
また、ベルト層12の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2mm以上1.2mm以下の範囲が挙げられ、タイヤの耐久性の観点から、0.3mm以上1.0mm以下の範囲が好ましく、0.3mm以上0.8mm以下の範囲がより好ましい。
図1に示すように、ベルト層12のタイヤ径方向外側に、トレッド30が配置されている。なお、トレッド30は、タイヤケース17上のベルト層12に積層された後、加硫接着されている。
トレッド30は、タイヤケース17を形成している樹脂材料よりも耐摩耗性に優れたゴムを含んで形成されており、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているトレッドゴムと同種のものを用いることができる。
また、トレッド30のタイヤ径方向の外周面には、タイヤ周方向に延びる排水用の溝30Aが形成されている。本実施形態では、2本の溝30Aが形成されているが、これに限らず、さらに多くの溝30Aを形成してもよい。また、トレッドパターンとしては、公知のものを用いることができる。
(タイヤの製造方法)
次に、本実施形態のタイヤ10の製造方法について説明する。まず、樹脂材料を用いた射出成型により、ビードコア20を含む半割体17A及び半割体17Bをそれぞれ形成する。
タイヤ10では、半割体17A及び半割体17Bが射出成形により成形されているが、これに限定されず、例えば、真空成形、圧空成形、メルトキャスティング等により成形されていてもよい。
次に、一対の半割体17A及び半割体17Bを互いに向かい合わせ、クラウン部18となる部分の端部同士を突き合わせ、突き合わせ部分に溶融状態の溶接用樹脂材料17Cを付着させて一対の半割体17A及び半割体17Bを接合する。このようにして、円環状のタイヤケース17が形成される。
なお、溶接用樹脂材料17Cを用いずに、例えば、半割体17Aと半割体17Bとの接合部周辺を樹脂材料の融点以上に加熱しながら押圧することで、半割体17Aと半割体17Bとを融着させ、タイヤケース17を形成してもよい。
次に、タイヤケース17の外周に樹脂被覆コード28を巻き付ける工程について説明する。まず、タイヤケース17を回転可能に支持するタイヤ支持装置(図示せず)に該タイヤケース17を取り付け、図2に示されるように、タイヤケース17の外周近傍にコード供給装置40、加熱装置50、押付器としての押付ローラ60、及び冷却器としての冷却ローラ70を移動させる。
コード供給装置40は、樹脂被覆コード28を巻き付けたリール42と、ガイド部材44とを含んで構成されている。ガイド部材44は、リール42から巻き出された樹脂被覆コード28をタイヤケース17の外周(クラウン部18の外周面18A)に案内するための部材である。ガイド部材44は筒状とされ、内部を樹脂被覆コード28が通過するようになっている。また、ガイド部材44の口部46からは、クラウン部18の外周面18Aに向かって樹脂被覆コード28が送り出される。
加熱装置50は、熱可塑性樹脂に熱風を吹き当てて、吹き当てた部分を加熱し溶融させるものである。この熱風が吹き当てられる箇所は、クラウン部18の外周面18Aに押し当てられる樹脂被覆コード28の内周面、及びクラウン部18の外周面18Aにおける樹脂被覆コード28が配設される部分である。なお、樹脂被覆コード28がクラウン部18の外周面18Aに1周以上巻き付けられ、該外周面18Aに押し当てられた樹脂被覆コード28が存在する場合、その側面に対しても熱風が吹き当てられる。
加熱装置50は、電熱線(図示せず)で加熱した空気をファン(図示せず)で発生させた気流で吹出し口52から吹き出すようになっている。なお、加熱装置50の構成は、上記構成に限定されず、熱可塑性樹脂を加熱溶融できれば、どのような構成であってもよい。例えば、溶融させる箇所に熱鏝を接触させて接触部分を加熱溶融させてもよい。また、溶融させる箇所を、輻射熱で加熱溶融させてもよく、赤外線を照射して加熱溶融させてもよい。
図2において、冷却ローラ70は、押付ローラ60よりもタイヤケース17の回転方向(矢印A方向)下流側に配置されている。この冷却ローラ70は、樹脂被覆コード28をタイヤケース17の外周(クラウン部18の外周面18A)に押し付けつつ、樹脂被覆コード28及びこの樹脂被覆コード28を介してクラウン部18側を冷却するものである。また、冷却ローラ70は、押付ローラ60と同様に、押付力を調整でき、かつ、ローラ表面に溶融状態の樹脂材料の付着を防ぐための加工が施されている。更に、冷却ローラ70は、押付ローラ60と同様に回転自在となっており、樹脂被覆コード28をタイヤケース17の外周に押し付けている状態では、タイヤケース17の回転方向(矢印A方向)に対して従動回転するようになっている。また、冷却ローラ70は、ローラ内部を液体(例えば、水など)が流通するようになっており、この液体の熱交換により、ローラ表面に接触した樹脂被覆コード28を冷却することができる。なお、溶融状態の樹脂材料を自然冷却させる場合には、冷却ローラ70を省略してもよい。
図2に示されるように、タイヤケース17の外周に樹脂被覆コード28を巻き付ける際には、タイヤ支持装置(図示せず)に取り付けたタイヤケース17を矢印A方向に回転させると共に、コード供給装置40の口部46から樹脂被覆コード28をクラウン部18の外周面18Aに向けて送り出す。
また、加熱装置50の吹出し口52から熱風を吹き出して、樹脂被覆コード28の内周面、クラウン部18の樹脂被覆コード28が配設される部分を加熱し溶融させながら、樹脂被覆コード28の内周面をクラウン部18の溶融部分に付着させる。そして、樹脂被覆コード28を押付ローラ60でクラウン部18の外周面18Aに押し付ける。このとき、タイヤ軸方向に互いに隣り合う樹脂被覆コード28の側面同士も互いに接合される。その後、クラウン部18の溶融部分及び樹脂被覆コード28の溶融部分は、樹脂被覆コード28の外周面が冷却ローラ70に接触し、この樹脂被覆コード28を介して冷却されることで固化する。これにより、樹脂被覆コード28とクラウン部18とが溶着される。
このようにして、樹脂被覆コード28をクラウン部18の外周面18Aにタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けると共に外周面18Aに押し付けていくことで、タイヤケース17の外周、具体的には、クラウン部18の外周に樹脂被覆コード28の層が形成される。なお、樹脂被覆コード28を螺旋状に巻き付けるには、コード供給装置40の口部46の位置を、タイヤケース17の回転に伴ってタイヤ軸方向に移動させたり、タイヤケース17をタイヤ軸方向に移動させたりすればよい。
なお、コード供給装置40のリール42にブレーキを掛けたり、樹脂被覆コード28の案内経路中にテンション調整用のローラ(図示せず)などを設けたりして樹脂被覆コード28のテンションを調整してもよい。テンションを調整することで、樹脂被覆コード28の蛇行配置を抑制することができる。
次に、ベルト層12の外周面に、加硫前のトレッドを巻き付ける。具体的には、例えば、ベルト層12が設けられたタイヤケース17を回転させながら、帯状の加硫前のトレッドを1周分巻き付ける。
そして、ベルト層12及び加硫前のトレッドが積層されたタイヤケース17を加硫する。具体的には、例えば、タイヤケース17を加硫缶やモールドに収容して加熱することで、加硫前のトレッドが加硫されてトレッド30が形成される。加硫温度としては、例えば150℃〜220℃が挙げられ、加硫時間としては、例えば1分間〜10分間が挙げられる。
以上のようにして、第1実施形態のタイヤ10が得られる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、タイヤケースの半割体17Aと半割体17Bとが、溶接用樹脂材料を用いずに、接合部周辺を加熱しながら押圧することで溶接されている。また、第2実施形態では、タイヤ骨格体におけるタイヤ径方向外側に直接、被覆されていない補強コード部材がタイヤ周方向に沿って巻回され、タイヤ骨格体に埋設されている。その他の構成等は、第1実施形態と同様である。
図3に示すように、第2実施形態に係るタイヤ100では、タイヤケース17のタイヤ径方向外側(すなわちクラウン部)の面に、直接、補強コード24がタイヤ周方向に沿って巻回されている。補強コード24は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がタイヤケース17のクラウン部に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。補強コード24が巻回されているタイヤケース17のタイヤ径方向外側には、ゴム部材の一例であるトレッド30が配置されている。
その他の構成及び製造方法については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
以上、実施形態を挙げて本発明を実施するための形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4)
上述の第2実施形態と同様のタイヤを、表1及び表2に示す材料を用いて作製した。
具体的には、まず、タイヤを車両に装着したときに車両幅方向外側となるタイヤ骨格体の半割体17Aと、タイヤを車両に装着したときに車両幅方向内側となるタイヤ骨格体の半割体17Bと、を射出成形により別々に製造した。そして、半割体17Aと半割体17Bとを加熱及び加圧により押圧して融着させてタイヤ骨格体を得た後、被覆されていない補強コード部材を巻回し、さらにタイヤ径方向外側にトレッド(ゴム部材)を配置することで、タイヤを製造した。
各材料の詳細は、次の通りである。
(タイヤ骨格体を構成する樹脂材料)
「TPC1」:ポリエステル系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)製 ハイトレルシリーズ、品番:5557
「TPC2」:ポリエステル系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)製 ハイトレルシリーズ、品番:4767N
「TPC3」:ポリエステル系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)製 ハイトレルシリーズ、品番:6347
「TPC4」:ポリエステル系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)製 ハイトレルシリーズ、品番:7247
「TPC5」:ポリエステル系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)製 ハイトレルシリーズ、品番:4047N
「TPA1」:ポリアミド系熱可塑性エラストマー、宇部興産(株)製、品名:UBESTA XPAシリーズ、品番:XPA9055X1
「TPA2」:ポリアミド系熱可塑性エラストマー、宇部興産(株)製、品名:UBESTA XPAシリーズ、品番:XPA9048X1
「TPA1/TPA2=60/40」:上記TPA1(60質量%)と上記TPA2(40質量%)との混合樹脂
「TPA1/TPA2=50/50」:上記TPA1(50質量%)と上記TPA2(50質量%)との混合樹脂
「TPU1」:ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、大日精化工業(株)製 レザミンPシリーズ、品番:P2564
(その他の材料)
補強コード部材:平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)
ゴム部材(トレッド):(株)ブリヂストン ECOPIA EX20のトレッドゴム
(硬度の測定)
各実施例及び比較例において、車両幅方向外側となる半割体17Aの硬度Ho、硬度Ho’、及び硬度Ho’’、並びに車両幅方向内側となる半割体17Aの硬度Hi、硬度Hi’、及び硬度Hi’’を前述の方法により求めた。結果を表1及び表2に示す。
ただし、硬度Ho及び硬度Hiはトレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって3/5Lの距離におけるサイド部のアスカーD硬度である。また、硬度Ho’及び硬度Hi’はトレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって1/3Lにおけるクラウン部のアスカーD硬度である。また、硬度Ho’’及び硬度Hi’’はトレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって1/5Lにおけるクラウン部のアスカーD硬度である。
(厚み及び密度の測定)
各実施例及び比較例における半割体17A及び半割体17Bのそれぞれにおいて、トレッド中心線から車両幅方向外側及び車両幅方向内側それぞれに向かって3/5Lの距離におけるサイド部の厚み及び密度を前述の方法で測定した。結果を表1及び表2に示す。
(コーナリング性能の評価)
各実施例及び比較例で製造されたタイヤ(タイヤサイズ195/65R14、210kPaの内圧)を車両に装着し、テストコースにてベテランテストドライバーが走行した。
上記ベテランテストドライバーによって、急なコーナリング時(具体的には、速度120km/h、ハンドル60°切った時)におけるコーナリング性能を、下記基準に従って官能評価した。結果を表1及び表2に示す。
A: ハンドルを切った時に素早くタイヤ入力が加わり、操作性良好であった。
B:若干のタイムラグがあるものの、操作性は良好であった。
C:ハンドルを切った後にふらつきを感じたが、操作性は許容範囲であった。
D: タイヤとして成り立たない。若しくはハンドルを切った時にタイヤへ伝わるまでの時間およびふらつきが大きく、悪かった。
(乗り心地の評価)
各実施例及び比較例で製造されたタイヤ(タイヤサイズ195/65R14、210kPaの内圧)を車両に装着し、テストコースにてベテランテストドライバーが走行した。
上記ベテランテストドライバーによって、乗り心地(具体的には、速度60km/hにおける走行時の乗り心地)を、下記基準に従って官能評価した。結果を表1及び表2に示す。
A:体感する路面からの振動がほとんどなく、乗り心地が良好であった。
B:路面からの振動をわずかに体感したが、乗り心地は許容範囲であった。
C:路面からの振動を体感したが、乗り心地は許容範囲であった。
D:路面からの振動をはっきりと体感したが、乗り心地は許容範囲であった。
E:タイヤとして成り立たない、若しくは体感する路面からの振動が大きく、乗り心地が許容範囲を超えて悪かった。
表1及び表2の結果に示すように、「Hi/Ho」の値が0.84以上1.00未満である実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、急なコーナリングにおけるコーナリング性能と乗り心地とが両立されていた。
10…タイヤ、12…ベルト層、14…ビード部、16…サイド部、17…タイヤ骨格体(タイヤケース)、17A…半割体、17B…半割体、17C…溶接用樹脂材料、18…クラウン部、18A…外周面、20…ビードコア、24…補強コード、26…被覆樹脂、28…樹脂被覆コード、30…トレッド、100…タイヤ
ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドン等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジアミン及び炭素数6〜20の芳香族ジアミン等が挙げられる。炭素数2〜20の脂肪族ジアミン及び炭素数6〜20の芳香族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC−(R)m−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500〜5000のものを使用することができる。Pは、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル及び長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

Claims (6)

  1. 複数種の樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格体を有し、
    車両に装着したときに車両幅方向内側となる前記タイヤ骨格体のサイド部におけるアスカーD硬度Hiは、車両に装着したときに車両幅方向外側となる前記タイヤ骨格体のサイド部におけるアスカーD硬度Hoの0.84倍以上1.00倍未満であるタイヤ。
  2. 前記アスカーD硬度Hoに対する前記アスカーD硬度Hiの比(Hi/Ho)は、0.84倍以上1.00倍未満である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記タイヤ骨格体におけるタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に沿って巻回された補強コード部材をさらに有する請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記タイヤ骨格体は、3種以内の樹脂材料で構成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記複数種の樹脂材料は、それぞれ、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、又はポリウレタン系熱可塑性樹脂を主成分として含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記タイヤ骨格体は、同系の樹脂を主成分として含有する2種以上の樹脂材料で構成されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
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