JP2018531027A6 - 多能性幹細胞からのヒト皮膚オルガノイドの誘導 - Google Patents

多能性幹細胞からのヒト皮膚オルガノイドの誘導 Download PDF

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Abstract

本明細書で提供するのは、表皮層、皮膚層、および機能的毛包を形成することができる複数の細胞を含む三次元多層皮膚組成物へのヒト多能性幹細胞の分化を誘導するための方法である。さらに本明細書で提供するのは、三次元多層工学操作皮膚組成物、ならびに薬物スクリーニング、毛髪成長に対する影響に関する化合物スクリーニング、および他の用途でのその使用法である。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、その全容を述べるが如く参照により本明細書に組み込まれている、2015年10月21日に出願された米国仮出願第62/244,612号の利益を主張するものである。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられたDC013294およびDC015624の下で政府の支援によってなされた。米国政府は本発明において確固たる権利を有する。
技術分野
本明細書で提供するのは、毛幹を含むヒト皮膚オルガノイドへのヒト多能性幹細胞の分化を誘導するための方法である。より詳細には、本明細書で提供するのは、機能的毛包を含有するヒト多能性幹細胞由来表皮および真皮層を含む三次元培養物を得るための方法である。
皮膚は身体と外界の間の主要な障壁であり、温度および水分保持を制御し、感染および異物侵入に対して防御し、接触および痛覚を媒介する。防御の第一線として、皮膚は、火傷ならびにがんおよび遺伝的欠陥を引き起こし得る極端な温度または放射線に影響されやすい。火傷は世界中で年間1100万を超える人に影響を及ぼす。米国内では、約7000万の外科手術手順が毎年実施されており、これらの手順の3分の1は瘢痕形成をもたらす。臨床的観点から、頭部と頚部の皮膚は特に影響を受けやすく、重大な損傷後に復元するのは困難である。今日、大量の皮膚を交換する必要がある場合、典型的な作業工程は身体の他の部分から皮膚を移植すること、または人工皮膚代用品を使用して創傷を塞ぐことである。しかしながら、自己移植に充分な組織の利用可能性、および皮膚代用品が毛(例えば、眉毛および頭皮毛根)または汗腺を生成できないことは重大な臨床的問題である。さらに、in vitro皮膚モデルが、毒物および薬物スクリーニングのため化粧品および製薬会社で数年にわたり使用されているが、これらのモデルは、汗腺または毛包をもたらさない未発達な表皮および真皮のみを含む。成人発症の脱毛は全てのヒト集団における広範囲の問題であり、主に男性に影響を与える。脱毛症などの極端な遺伝的脱毛状態は、男性と女性の両方に影響を与える。脱毛を治療するための薬理学的、遺伝子、または細胞療法はあまり存在しない。皮膚は複雑な細胞構成を有し、これが外部病原体および環境的外傷に対する機能的障壁をもたらす。1981年以来、研究者達は、ヒト皮膚相当物(HSE)in vitro培養を使用して皮膚の基本3D構造の再構築を可能にしている。Bell et al., Science 211, 1052-1054(1981);Oh et al., The Journal of investigative dermatology 133, e14(2013)を参照。HSEは少なくとも、コラーゲン系マトリックス中に包埋された皮膚線維芽細胞の層と表皮ケラチノサイトの上層からなる。今日、これらの基本成分を使用して作製されたHSEが、皮膚疾患またはスキンケア剤の調査を実施するため学界および産業界において広く使用されている。HSEは、単層(すなわち、二次元(2D))培養物と比較して、in vivo表現型、細胞シグナル伝達、細胞移動、および薬物応答の優れたモデルをもたらす。しかしながら、HSEを作製するために使用する細胞の供給元には慢性的技術制約がある。HSEは、皮膚生検材料または外科手術手順の残存皮膚由来の初代細胞で構成されることが多い。限定的または非標準的組織試料を使用した結果として、皮膚、ケラチノサイトおよび線維芽細胞の主要細胞成分を、HSE中での使用前の培養中に増殖させる必要がある。典型的に、このプロセスは、メルケル細胞または毛包バルジ幹細胞などの数のより少ない細胞を選択排除する。より標準化されてはいても、不死化ケラチノサイトまたは線維芽細胞で構築されたHSEは特化細胞型を同様に欠く。今日まで、正常皮膚と関連した付属器(例えば、毛包および汗腺)を首尾よく生成したHSEモデルは存在しない。
したがって、損傷したヒトの皮膚を修復および交換するための有効かつ再現可能な方法、および毛髪を生成できないヒト皮膚相当物を使用した医薬組成物および現況の組織工学操作および皮膚移植プロトコールなどの、現況技術の副作用と制約を被らない療法を開発するためのin vivo皮膚表現型の再現的モデル化に関する必要性が、当技術分野で依然として存在する。
第1の態様では、本明細書で提供するのは、三次元多層皮膚組成物を得る方法である。本明細書中に記載するように、この方法は(a)骨形成タンパク質4(BMP4)およびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)シグナル伝達の阻害剤を含む培養培地内で約8〜約10日間ヒト多能性幹細胞凝集体を培養し、それによって凝集体内で(表面外胚葉としても知られる)非神経上皮を形成すること、(b)細胞外マトリックス成分を含む半固体培養培地中に(a)の培養凝集体を包埋すること、および(c)包埋凝集体内の細胞の自己集合を促進する条件下で約25〜約30日間(b)の包埋凝集体を培養して、表皮層、皮膚層、および機能的毛包を形成することができる複数の細胞を含む三次元多層組成物を得ることを含む。TGFβ1媒介シグナル伝達の阻害剤は、SB431542およびA−83−01からなる群から選択することができる。細胞外マトリックスは基底膜抽出物(BME)であり得る。表皮層は皮膚層と直接接触し得る。表皮層はP63KRT5表皮ケラチノサイトを含むことができる。皮膚層は毛包を開始する毛乳頭細胞(follicle-initiating dermal papilla cells)を含む。機能的毛包を形成することができる複数の細胞は、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)、毛乳頭細胞(dermal papilla cells)、皮膚鞘細胞(dermal sheath cells)、および毛包表皮幹細胞(follicular epidermal stem cells)からなる群から選択される細胞を含むことができる。
別の態様では、三次元、多層工学操作皮膚組成物(three-dimensional, multilayered engineered skin composition)は、in vitro由来表皮ケラチノサイトを含む表皮層、in vitro由来皮膚線維芽細胞を含む皮膚層、および機能的毛包を形成することができる複数の細胞を含み、表皮層と皮膚層は直接接触している。機能的毛包を形成することができる複数の細胞は、間葉系幹細胞、毛乳頭細胞、皮膚鞘細胞、および毛包表皮幹細胞からなる群から選択される細胞を含むことができる。組成物は、少なくとも1つの機能的毛包と少なくとも1つの機能的皮脂腺をさらに含むことができる。組成物は足場(scaffold)をさらに含むことができる。足場は生分解性または生体吸収性であり得る。組成物はヒト対象に生体移植(viable transplantation)および生着(engraftment)可能である。
さらなる態様では、本明細書で提供するのは、毛髪成長または発育に対する影響に関して化合物を試験する方法であって、本明細書中で提供する工学操作皮膚組成物に試験化合物を曝すこと、および毛髪成長または発育の変化を検出することを含む方法である。
これら、および本明細書中に記載する他の特徴、態様、および利点は、以下の図面、詳細な説明、および添付の特許請求の範囲を考慮することによって、さらによく理解される。
ヒト多能性幹細胞(human pluripotent stem cells、hPSC)からのヒト皮膚オルガノイドの誘導に関する例示的プロトコールを例証する概略図である。hPSC凝集体は、細胞外マトリックス(ECM)成分の存在下において化学的に明確な(chemically-defined)培地内で培養して、(表面外胚葉としても知られる)非神経外胚葉上皮を生成する。表面外胚葉上皮は、表面上皮細胞と頭部神経堤様細胞(CNCC)の両方を誘発する。培養の第2期では、化学的に明確なオルガノイド培地内で浮遊しながら、CNCCと上皮は突出した毛包を有する嚢胞に自己組織化する。奨励する培養形式は各ステップの下に示す。「攪拌しながらの浮遊培養(floating culture with rotation)」は、インキュベーター内オービタルシェーカー上に置いたスピナーフラスコまたは24ウエルプレートを使用して実施することができる。 (図2A〜2I)マウス多能性幹細胞(mPSC)から作製した皮膚オルガノイドを記載した図である。(A)内耳および皮膚オルガノイド培養物の概略図。(B)抗サイトケラチン−5(Krt5)およびDAPIで免疫染色した皮膚オルガノイドの凍結切片。(C)発達中の毛球中のSox2毛乳頭細胞。(D)オルガノイドコアに延長した毛幹(矢じり)を有するクリアリングしたオルガノイド。(E)第30日の皮膚オルガノイドから突出した毛包。(F〜H)皮膚オルガノイドにおいて観察した毛包の一部。(I)培養中の経時的な凝集体あたりの毛包の定量化(エラーバー、最小/最大)。ETC、外胚葉;MES、中胚葉;NNE、非神経外胚葉;EPI、表皮;OTP/OTV、耳プラコード/小胞;DERM、真皮。スケールバー、100(B、D、H)、50(E、F、G)、25μm(C)。 (図3A〜3G)三次元(3D)培養におけるヒト多能性幹細胞(hPSC)凝集体からのケラチノサイト誘導を実証する図である。(A)ケラチノサイト誘導の概略図。(B〜D)第0日、第6日、および第20日の凝集物の微分干渉(DIC)顕微鏡画像。コアから上皮に移動する細胞を含有する細胞構造を記す。(E〜F)外側上皮およびその下の組織中の非神経TFAP2細胞を示す第3日凝集体の凍結切片。(G)第20日凝集体の上皮中のKRT5TFAP2ケラチノサイト様細胞。スケールバー、200(D)、100(C、E、F)、50μm(B)。 (図3A〜3G)三次元(3D)培養におけるヒト多能性幹細胞(hPSC)凝集体からのケラチノサイト誘導を実証する図である。(A)ケラチノサイト誘導の概略図。(B〜D)第0日、第6日、および第20日の凝集物の微分干渉(DIC)顕微鏡画像。コアから上皮に移動する細胞を含有する細胞構造を記す。(E〜F)外側上皮およびその下の組織中の非神経TFAP2細胞を示す第3日凝集体の凍結切片。(G)第20日凝集体の上皮中のKRT5TFAP2ケラチノサイト様細胞。スケールバー、200(D)、100(C、E、F)、50μm(B)。 (図4A〜4C)非神経外胚葉誘導が、ヒト胚性幹細胞(WA25)および人工多能性幹細胞(mND2−0)において中胚葉細胞のオフターゲット誘導なしで起こることを実証する図である。第0日に10ng/mlのBMP4(a)、10μMのSB(b)、および10μMのSB+2.5ng/mlのBMP4(c)で処理した第4日凝集体における代表的Brachyury(BRA)免疫組織化学染色。スケールバー、50μm。 (図5A〜5D)FGF−2およびBMP阻害剤(LDN)を用いた処理によって、後頭部表面外胚葉上皮を生成できることを実証する図である。A、誘導プロトコールの概略図。胚発生中の頭部領域では、前頭部表面外胚葉は転写因子PAX6を発現し、一方後頭部表面上皮はPAX8を発現する。非神経誘導凝集体は第4日にFGF−2およびLDNを用いて処理し、8〜12日間培養した。括弧内の培養試薬(すなわちBMP4)は使用する細胞株に応じて任意選択である。B、(SBとして示した)第0〜12日中に10μMのSB−431542および4ng/mlのFGF−2を用いて処理した凝集体は、後部マーカーPAX8ではなく、前部マーカーPAX6を発現するTFAP2+ECAD+非神経外胚葉上皮を生成する。C、(SBとして示した)第0〜12日中に10μMのSB−431542と4ng/mlのFGF−2、および第4〜12日中に50ng/mlのFGF−2と200nMのLDN−193189を用いて処理した凝集体は、前部マーカーPAX6ではなく、後部マーカーPAX8を発現するTFAP2+ECAD+非神経外胚葉上皮を生成した。D、身体前方−後方軸に沿った凝集体のパターン形成に関する、これらの結果の意味するところを示す概略図。FGF−2およびLDN濃度の調整によって、前方または後方外皮組織のいずれかが生成し得る。 (図6A〜6D)第0〜12日中にSB/FGF/LDNを用いて処理した非神経凝集体は、Matrigel小滴に包埋すると頭部神経堤細胞(CNCC)を生成することを実証する図である。第0日にSBおよび第4日にFGF/LDNを用いて処理した後、第12日凝集体をMatrigel小滴に包埋して自己組織化を促進した。c〜d、如何なる追加的処理もせずに、試料は中心から四方に広がるTFAP2+PDGFRa+、頭部神経堤様細胞(cncc)を生成した。この現象は試験した100%の細胞凝集体で観察した。 (図7A〜7C)表皮層および皮膚層を有する皮膚オルガノイドの形成を実証する図である。A、発生中の頭部領域におけるCNCC移動の概要。移動後CNCC細胞の一部分は、ケラチノサイト前駆体の表面層と接した皮膚線維芽細胞を形成する。B、分化第18〜50日中の皮膚オルガノイド形成の概略図。C、皮膚オルガノイド嚢胞形成のDIC画像。表皮および細胞残骸充填コアの内層は皮膚組織に覆われていることを記す。 (図8A〜8B)分化培地からインスリンを除去することによって、より大きな皮膚オルガノイドが生じることを実証する図である。A−b、第0〜12日中の処理条件は以下のとおりであった。処理なし(NT)、LDN(第4日〜第12日)、LDN/FGF(第4日〜第12日)、およびLDN/FGF(第4日〜第12日)+CHIR(第8日〜第12日)。第22〜55日から、インスリンを含むかまたは含まないLDN/FGFおよびLDN/FGF+CHIR条件で皮膚オルガノイドが形成された。しかしながら、インスリンを含まない条件で生じた皮膚オルガノイドは、インスリンを含む条件(n=6オルガノイド/条件)より約2.5〜3.5倍大きい長軸径を有していた。 (図9A〜9H)どのようにして毛包が皮膚オルガノイドから発芽し、in vivoで毛包発達の特徴を示すかを実証する図である。A、ヒト胚における毛包誘導の最初の3段階を示す概略図。このプロセスは受胎後10〜12週(70〜84日)頃始まる。B〜D、第80〜100日のヒト胎児発育にほぼ等しい、第65〜85日の間に皮膚オルガノイドの表皮から生じた毛包プラコード、胚芽、およびペグのDIC画像。E〜G、TFAP2+KRT5+ケラチノサイトを含む表皮はPDGRFa+皮膚層中でSOX2+毛乳頭細胞と連係して、毛包プラコード、胚芽、およびペグを形成する(図f中の星印)。H、第85日の皮膚オルガノイドの3D復元によって、SOX2+毛乳頭細胞のクラスターを有する多数の毛包の形成を示す。 (図10A〜10C)皮膚オルガノイドのCNCC集団中の細胞の組成を、分化第8〜12日中にCHIR処理を使用して制御できることを実証する図である。A、外胚葉性間葉と神経形成系の2つのCNCC集団が存在することを示す概略図。外胚葉性間葉CNCCは線維芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨および骨を生成し、一方で神経形成系CNCCはニューロン、グリア、およびメラノサイトを生成する。B〜C、第8〜12日中にCHIR99021、Wntシグナル伝達アゴニストで予め処理したオルガノイドのみが75%のオルガノイドにおいて色素沈着毛包を生成し、したがって、非CHIR処理試料からメラノサイトが欠けていた。 (図11A〜11E)皮膚オルガノイドが色素沈着皮膚および毛髪を生成し得ることを実証する図である。A〜B、第120日と140日の色素沈着毛包を含む皮膚オルガノイドの生存細胞画像。C、MITF+メラノサイトは、E−カドヘリン+(ECAD+)毛包表皮中および第120日オルガノイドの真皮中に位置した。P75は毛乳頭細胞中で発現された。D〜E、図B中のボックスによって強調した毛包の免疫染色。D、毛包マトリックス領域中のメラノサイトはgp100を発現し、メラニン生成を示した。E、毛包球領域中のKi67+ケラチノサイトおよび切断型カスパーゼ−3発現細胞の欠如は、このオルガノイドの毛包が成長段階にあることを示す。 (図12A〜12G)皮膚オルガノイドの毛包が皮脂腺、立毛筋、角質層、およびバルジ幹細胞を有し、胎児段階の毛髪と類似した完全な毛嚢皮脂単位を含むことを実証する図である。A、後期段階毛包発達を示す4つの特化した細胞区画を示す概略図。それぞれの細胞集団は皮膚オルガノイドにおいて自然に発生する。B〜C、色素沈着毛包を有する第115日皮膚オルガノイドのDIC画像。真珠様脂肪細胞がオルガノイド表面上に見られる。毛包の漏斗状領域近辺に(C)、毛幹から生じた皮脂腺様構造が見られる。D、図C中の毛包の断面図は、皮脂腺細胞は脂質が豊富であり(LipidTOX+)、皮脂腺(sg)様形態を有することを示す。脂肪細胞(ap)もLipidTOX+であり、典型的な皮下組織脂肪細胞の形態を有する。E、α−SMA+ITGA8+立毛筋様細胞はオルガノイドの毛包と共に発達する。F〜G、KRT15+パッチを有する数個の毛包が毛包バルジ幹細胞に類似していることを示す低倍率および高倍率画像。H、フィラグリンが第120日までに皮膚オルガノイド表皮の角質層(sc)において発現され、基底層表皮ケラチノサイトの分化が示された。 (図12A〜12G)皮膚オルガノイドの毛包が皮脂腺、立毛筋、角質層、およびバルジ幹細胞を有し、胎児段階の毛髪と類似した完全な毛嚢皮脂単位を含むことを実証する図である。A、後期段階毛包発達を示す4つの特化した細胞区画を示す概略図。それぞれの細胞集団は皮膚オルガノイドにおいて自然に発生する。B〜C、色素沈着毛包を有する第115日皮膚オルガノイドのDIC画像。真珠様脂肪細胞がオルガノイド表面上に見られる。毛包の漏斗状領域近辺に(C)、毛幹から生じた皮脂腺様構造が見られる。D、図C中の毛包の断面図は、皮脂腺細胞は脂質が豊富であり(LipidTOX+)、皮脂腺(sg)様形態を有することを示す。脂肪細胞(ap)もLipidTOX+であり、典型的な皮下組織脂肪細胞の形態を有する。E、α−SMA+ITGA8+立毛筋様細胞はオルガノイドの毛包と共に発達する。F〜G、KRT15+パッチを有する数個の毛包が毛包バルジ幹細胞に類似していることを示す低倍率および高倍率画像。H、フィラグリンが第120日までに皮膚オルガノイド表皮の角質層(sc)において発現され、基底層表皮ケラチノサイトの分化が示された。 (図13A〜13D)CNCC由来感覚ニューロンが、皮膚オルガノイド周辺の真皮中に神経回路網を形成することを実証する図である。A〜B、第60日皮膚オルガノイドのKRT5+表皮周辺を覆ったTUJ1+神経突起を示す3D復元。C、分化第35日までに、SOX10+P75+感覚ニューロン様細胞がCNCC由来間葉に出現する。D、(第100〜140日の)成熟皮膚オルガノイドにおいて、ニューロフィラメント−H+神経突起が毛包周辺で混交し、表皮および毛包上皮と接触するようである。 (図14A〜14G)皮膚オルガノイド表皮が、近隣の感覚ニューロンから神経支配を受けるメルケル細胞を生成することを実証する図である。A、表皮および毛包内のメルケル細胞の方向と配置を記載した概略図。B、毛包のバルジ領域内のメルケル細胞前駆体様細胞(eGFP+)を示すATOH1−2A−eGFP幹細胞株で作製した皮膚オルガノイドからの例示的データ。C〜E、eGFP+細胞は、基底層表皮および毛包外毛根鞘様天然メルケル前駆細胞中に分布する。eGFP+細胞はメルケル細胞発生と一致するIslet1+(ISL1+)でもある。F〜G、ISL1およびニューロフィラメント−L(NF−L)による第140日オルガノイドの同時標識によって、オルガノイド皮膚層中の感覚ニューロンからメルケル細胞が神経支配を受けることが明らかになる。 (図14A〜14G)皮膚オルガノイド表皮が、近隣の感覚ニューロンから神経支配を受けるメルケル細胞を生成することを実証する図である。A、表皮および毛包内のメルケル細胞の方向と配置を記載した概略図。B、毛包のバルジ領域内のメルケル細胞前駆体様細胞(eGFP+)を示すATOH1−2A−eGFP幹細胞株で作製した皮膚オルガノイドからの例示的データ。C〜E、eGFP+細胞は、基底層表皮および毛包外毛根鞘様天然メルケル前駆細胞中に分布する。eGFP+細胞はメルケル細胞発生と一致するIslet1+(ISL1+)でもある。F〜G、ISL1およびニューロフィラメント−L(NF−L)による第140日オルガノイドの同時標識によって、オルガノイド皮膚層中の感覚ニューロンからメルケル細胞が神経支配を受けることが明らかになる。 (図15A〜15B)組織化表皮および皮膚組織を形成する能力を損ねずに、皮膚オルガノイドを解離させ多孔質マトリックス中に包埋することができることを実証する図である。オルガノイドは第9日で完全に解離し、Matrigelの層上(A、条件1)または細胞とMatrigelの混合物の小滴内(B、条件2)に解離細胞を再度平板培養することによって、それぞれケラチノサイトまたは多くの個々のケラチノサイト嚢胞の大きな層の形成をもたらした。 (図15A〜15B)組織化表皮および皮膚組織を形成する能力を損ねずに、皮膚オルガノイドを解離させ多孔質マトリックス中に包埋することができることを実証する図である。オルガノイドは第9日で完全に解離し、Matrigelの層上(A、条件1)または細胞とMatrigelの混合物の小滴内(B、条件2)に解離細胞を再度平板培養することによって、それぞれケラチノサイトまたは多くの個々のケラチノサイト嚢胞の大きな層の形成をもたらした。 hPSC由来凝集体における表面外胚葉誘導(SEI)が、中胚葉誘導なしに起こることを実証する図である。ヒトPSCに関しては、TGFβ阻害および内在BMPシグナル伝達が、分化第3〜6日までにTFAP2+ECAD+表面外胚葉の形成を促進する。これらの凝集体は中胚葉を欠いており、一方BMP処理単独により凝集体中の(BRA+)細胞において中胚葉が誘導される。 FGFの時間処理およびBMPの阻害が、CNCCと表面外胚葉の同時誘導を促進することを実証する図である。BMPシグナル伝達の阻害は、FGF処理と合わさると、TFAP2+およびPDGFRa+CNCCとTFAP2+およびECAD+表面外胚葉を同時誘導する。最終的に、このような同時誘導は軟骨および皮膚オルガノイドを含むCNCC由来組織型を誘導した。
発明の詳細な説明
本明細書中に言及する全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、および特許出願が参照により組み込まれていることが具体的かつ個別に示されるが如く、それらの全容が参照により本明細書に組み込まれている。
本発明は、ヒト多能性幹細胞由来前駆細胞は、分化および再モデル化を許容する規定条件下においてin vitroで培養すると、ヒトの皮膚および毛幹の複雑性および組織化を再現する非常に均一なヒト皮膚オルガノイドを形成するという、本発明者らの発見に少なくとも一部分は基づく。本発明者らは、大規模な、定量的in vitroモデル化およびスクリーニング用途に必要な均一性を有する、複雑なヒト表皮および真皮層を生成することができることをさらに発見した。
したがって本発明は、三次元組織構築物および培養物を含む組成物、ならびにヒト組織の非常に均一なモデルとして、および薬物候補をスクリーニングするためにこのような組成物を使用する方法に関する。特に、本明細書で提供するのは、in vivo移植に適した機能的汗腺と毛包を含む複雑で組織化されたヒト表皮および真皮を効率よく再現的に生成および拡大し、遺伝的皮膚疾患およびがんをモデル化し、前臨床薬物試験のスクリーニングプラットフォームおよび他の研究用途として有用な方法である。
本明細書で提供する方法およびシステムの重要な利点は、単細胞供給源から毛髪を生成する能力である。in vitroで皮膚を再構成するための様々な細胞モデルが現在利用可能であるが、本明細書で提供する方法およびシステムは複雑で組織化された皮膚層のin vivo発生を忠実に再現し、ヒト細胞のみを使用してin vitroで毛髪を生成する。本発明は、in vitroヒトモデルにおいてこれらの細胞を研究する重要な機会を提供する。さらに本発明は、ヒト組織工学操作のための材料および組合せ戦略を確認するのに有用である。本発明は、ヒト組織の非常に均一なモデルとして皮膚オルガノイドおよび皮膚オルガノイドを含む三次元組織構築物を使用する方法、ならびに潜在的治療物質および毒性物質をスクリーニングする方法も提供する。本発明によって与えられる利点の中で、本発明の皮膚オルガノイドは、ヒト皮膚の複雑な環境内の様々な作用物質の影響に関して生物学的に関連した情報を提供する。さらに、本明細書で提供する皮膚オルガノイド誘導法は、化学的に明確であって、有効な方法であり(1つの細胞凝集体が10〜30またはそれより多くの毛包を生成し得る)、ヒト胚発生の第10週に等しい、毛包形成が培養中約60日後に起こる正常な胚発生時期を模倣する。さらに本発明の方法は、外胚葉胚芽層のみから皮膚オルガノイドを生成し、真皮は頭部神経堤細胞に由来するので、生成する皮膚は頭部の皮膚を表す。最後に、本発明は広く多様な皮膚細胞をサポートする材料を利用し、様々なin vitroヒト組織工学操作システムに関する組合せ戦略を与える。
方法
本明細書に記載するように、本開示は、ヒト多能性幹細胞から皮膚組織を生成するための方法を提供する。例示的実施形態では、本明細書で提供する方法は、in vivoの組織構造編成、複雑性、機能的分化、化学的および機械的シグナルを再現した皮膚オルガノイド培養物を生成し、したがって、初代または不死化細胞の2D培養より生理学的に適切であり得る。本明細書で使用する用語「皮膚オルガノイド」は、臓器全体に類似し、多能性幹細胞、胎児神経幹細胞、および単離臓器前駆細胞だけには限られないが、これらを含めた様々な細胞型の個別添加および自己組織化によってin vitroで構築される(すなわち、特定組織型の構造特性を示す)組織様構造を指す。例えば、Lancaster and Knoblich, Science 345(6194)(2014)を参照。本開示の方法によって得られる皮膚オルガノイドは、組織学的にも機能的にも天然皮膚にほぼ対応する(例えば、ヒト表皮と真皮を含む)多層in vitro皮膚モデルであることが好ましい。以下の段落中に記載するように、本開示の方法は、ヒト多能性幹細胞を、多能性幹細胞の分化を促進する条件下において、非神経上皮と頭部神経堤細胞、および次に毛髪生成移植片に適した表皮と真皮組織層に分化させることによって、ヒトの皮膚および毛幹の複雑性および組織化を再現する皮膚オルガノイド培養物を生成する。幾つかの場合、本開示の方法によって得られる皮膚オルガノイドは、皮脂腺、エクリン腺、メラノサイト、感覚ニューロン、皮下脂肪と類似した脂肪細胞、毛包バルジ幹細胞、およびメルケル前駆細胞などの1つまたは複数の特化した細胞区画または細胞型を有する毛包をさらに含む。
第1の態様では、ヒト皮膚オルガノイドを得る方法は、ヒト多能性幹細胞をスフェロイド凝集体に凝集させること、ならびに小分子および組換え転写因子および他のタンパク質の存在下でスフェロイド凝集体を培養し、それにより多能性細胞を誘導して毛髪を生成し得る表皮と真皮の多層組織に分化させることを含む。図1を参照すると、この方法は、ヒト多能性幹細胞をスフェロイド凝集体に凝集させること、および非神経誘導を促進する因子以外に、化学的に明確な培養培地と細胞外マトリックス(ECM)成分の存在下でスフェロイド凝集体を培養することを含む。このような場合、化学的培養培地は、以下の規定成分:化学的に明確な基礎細胞培養培地(段落00024中でさらに記載した)、骨形成タンパク質シグナル伝達のアゴニスト(アクチベーター)、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)シグナル伝達の阻害剤(図1中の「TGFi」参照)を含むか、またはこれらから本質的になる可能性がある。これらのステップに従い培養すると、少なくとも一部分の凝集したヒト多能性幹細胞が誘導され分化して、各凝集体内に中胚葉細胞のコアを形成する。中胚葉細胞のコアを含む凝集体は、BMPシグナル伝達のアゴニスト(例えば、骨形成タンパク質−4(BMP4))およびTGFβシグナル伝達の阻害剤(「TGFi」)の存在下で約8日〜約10日間培養することが好ましい。
約8日〜約10日間の培養後、中胚葉コアの細胞は凝集体の表面に移動し、凝集体のコア内を覆う非神経外胚葉と頭部神経堤様細胞(CNCC)の層を生成する。再度図1を参照すると、培養第12〜18日後、CNCCは凝集体の表面に移動し間葉を形成する。培養第30日までに、外胚葉および間葉系細胞は、基底層ケラチノサイトおよび皮膚線維芽細胞を含有する皮膚オルガノイドを生成する。特に、培養中約75日〜約120日後(例えば、約75、80、85、90、95、100、105、110、115、120日)に、誘導皮膚は外部に成長する毛包を生成する。正常胚の皮膚とは対照的に、本開示の方法によって得られる皮膚オルガノイドは、ケラチノサイト(内側層中)と線維芽細胞(外側層中)の同軸層を有する嚢胞を形成する。皮膚および毛包は、感覚ニューロン、皮脂腺、皮下脂肪、色素沈着メラノサイト、および接触受容性メルケル細胞などの、正常皮膚において見られる多くの特化した細胞区画を備えている。
例示的実施形態では、BMPシグナル伝達のアゴニストは、BMP4、BMP2、およびBMP7からなる群から選択される。あるいは、BMPシグナル伝達のアゴニストは、Smad1/5/8のリン酸化を引き起こすことによって、BMPとその受容体の結合の下流シグナル伝達カスケードを模倣する任意のタンパク質または小分子である。TGFβ−1およびアクチビンAはTGFβシグナル伝達のアゴニストである一方で、TGFβシグナル伝達は、ALK5の強力かつ選択的阻害剤である小分子阻害剤SB−431542(「SB」)を例えば使用してアンタゴナイズされ得る。TGFβシグナル伝達の他の阻害剤/アンタゴニストには、非制限的に、SB525334(TGFβ受容体Iの選択的阻害剤)、1つまたは複数のTGFβ受容体に特異的なRNAi核酸、および抗TGFβ抗体がある。
次のステップでは、BMPシグナル伝達のアゴニストとTGFβシグナル伝達の阻害剤の存在下で培養した凝集体を、細胞外マトリックス(ECM)成分を含む半固体培養培地中に包埋する。包埋凝集体は、皮膚線維芽細胞を含む表皮および間葉への非神経外胚葉上皮および脳神経堤様細胞の誘導的分化を促進する条件下で培養する。包埋凝集体は、包埋凝集体内の細胞の自己集合を促進し、表皮層、皮膚層、および機能的毛包を形成することができる複数の細胞を含む三次元多層皮膚組成物が得られる条件下で、約25〜約30日間培養することが好ましい。生成する皮膚組成物は、一緒に発達して機能的毛包を含む完全な厚さの皮膚を形成する2つの組織層(表皮と真皮)を含む。機能的毛包を形成することができる細胞には、非制限的に、毛包特異的間葉系幹細胞、毛乳頭細胞、皮膚鞘細胞、および毛包表皮幹細胞がある。
ヒト多能性幹細胞は、規定成分を含む化学的に明確な基礎培養培地配合物中で培養することが好ましい。幾つかの場合、化学的に明確な基礎培養培地は、その全容を言及するが如く参照により本明細書に組み込まれている、Chen et al., Nature Methods 8:424-429(2011)中で言及された培養培地「DF3S」である。他の場合、化学的に明確な基礎培養培地はE6、E7、またはE8培養培地である。本明細書で使用する用語「E7培養培地」と「E7」は互換的に使用し、補充されてインスリン(20μg/mL)、トランスフェリン(10.67ng/mL)およびヒト線維芽細胞増殖因子2(FGF2)(100ng/mL)をさらに含むDF3Sを含むか、またはこれらから本質的になる化学的に明確な培養培地を指す。本明細書で使用する用語「E8培養培地」と「E8」は互換的に使用し、インスリン(20μg/mL)、トランスフェリン(10.67ng/mL)、ヒトFGF2(100ng/mL)、およびヒトTGFβ1(トランスフォーミング増殖因子β1)(1.75ng/mL)の添加によって補充されたDF3Sを含むか、またはこれらから本質的になる化学的に明確な培養培地を指す。代替として、E8培地はEssential8としてThermal Fisher/Life Technologies Inc.から、または「TeSR(登録商標)−E8」としてStem Cell Technologiesから入手することもできる。本明細書で使用する用語「E6培養培地」と「E6」は互換的に使用し、インスリン(20μg/mL)、およびトランスフェリン(10.67ng/mL)の添加によって補充されたDF3Sを含むか、またはこれらから本質的になる化学的に明確な培養培地を指す。E6はE8培地と類似しているが、FGF2およびTGF−βを含まない。その培地は以前の刊行物(Chen et al., Nature Methods 8:424-429,2011)中の調合に基づいて調製することができる。同様の培地は、Essential6としてThermal Fisher/Life Technologies Inc.から、または「TeSR(登録商標)−E6」としてStem Cell Technologiesから入手可能である。
多能性幹細胞の集密培養物は、Matrigel(登録商標)または化学的に明確な基質(例えばハイドロゲル)などの表面から、細菌塊、凝集体、または単細胞に、化学的、酵素的または機械的に解離させることが可能である。例示的実施形態では、解離した細胞を(細菌塊、凝集体、または単細胞として)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12、mTeSR(商標)(Stem Cell Technologies;バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)、およびTeSR(商標)などのタンパク質を含まない基礎培地の表面上に平板培養する。TeSR(商標)の全構成要素および使用法は、Ludwig et al中に記載されている。例えば、その全容を言及するが如くそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている、Ludwig T, et al., “Feeder-independent culture of human embryonic stem cells,”Nat. Methods 3:637-646(2006);およびLudwig T, et al., “Derivation of human embryonic stem cells in defined conditions,” Nat. Biotechnol. 24:185-187(2006)を参照。本明細書で使用するのに適した他のDMEM配合物には、例えばX−Vivo(商標)(BioWhittaker、Walkersville、MD)およびStemPro(登録商標)(Invitrogen;Carlsbad、CA)がある。
近年、規定濃度の細胞外マトリックスタンパク質と架橋化したポリエチレングリコール(PEG)ベースのハイドロゲルが、Matrigel(登録商標)などの明確に規定されていないマトリックスに対する、化学的に明確な代替となっている。したがって、本発明の例示的実施形態では、本明細書で提供する方法は、ハイドロゲルなどの化学的に明確な、多孔質バイオマテリアルにおける細胞の包埋または被包を含み得る。用語「ハイドロゲル」は、有機ポリマー(天然または合成)が共有、イオン、もしくは水素結合により架橋化して、水分子を捕捉しゲルを形成する3D開放型格子構造をもたらすと形成される、合成または生物学的成分を含む、非常に水和した多孔質物質を指す。本発明の3D皮膚オルガノイドを構築するのに適したハイドロゲルには、非制限的に、合成ハイドロゲル、生体活性ハイドロゲル、生体適合性ハイドロゲル、細胞適合性ハイドロゲル、化学的に明確なハイドロゲル、化学的に明確な合成ハイドロゲル、およびタンパク質分解性ハイドロゲルがある。本明細書で使用する「生体活性」は、多能性幹細胞の分化、血管形成の誘導、神経幹細胞分化、細胞付着の促進、細胞自己集合の促進、および細胞−細胞相互作用の促進などの細胞または組織応答を容易にする能力を示すものとする。本明細書で使用する用語「生体適合性」は、組織形成、可溶性生体活性分子(例えば増殖因子)の生成、移動および繁殖などの特異的細胞挙動などの適切な細胞自己集合または細胞機能を可能にするために、分子間および機械的シグナル伝達系の簡素化を含めてポリマーまたはハイドロゲルが細胞活性を支持する基質として果たす能力を指す。幾つかの場合「生体適合性」は、細胞または組織損傷効果を有する成分が存在しないことを意味する。本明細書で使用する用語「細胞適合性」は、ハイドロゲル材料が実質的に非細胞毒性であり、細胞毒性分解産物を全く、またはほとんど生成しないことを意味し、一方本明細書で使用する用語「タンパク質分解性」は、架橋骨格を酵素的または非酵素的に切断して足場ネットワークを破壊し得ることを意味する。
本明細書で使用する用語「化学的に明確な(chemically defined)」は、組成物(例えばハイドロゲル)の各成分の素性および量が知られていることを意味する。多能性幹細胞培養および多能性幹細胞の誘導的分化の分野の重要な目標は、改善された性能一貫性と再現性をもたらす培養材料および培養培地を開発することである。幾つかの場合、本開示の皮膚オルガノイドを誘導する際に使用するための化学的に明確なハイドロゲルは、最小数の規定成分/原料を含む。
幾つかの場合、生成する組成物が、本開示の方法に従って誘導されないが、in vivo皮膚を再現し他の構造複雑性を有する皮膚オルガノイドを提供するのに有利である細胞型を含むように、皮膚オルガノイドまたは本明細書で提供する方法に従って得た皮膚オルガノイドを含むin vitro組織構築物に外来細胞を加えることは有利であり得る。例えば組織構築物を、表皮免疫細胞(例えば、ランゲルハンス細胞)、中胚葉由来細胞型(例えば、Prasain et al., Nature Biotech 32, 1151-1157(2014)により記載された血管形成に関するコロニー形成内皮細胞)、または内皮細胞と共に播種することができる。皮膚オルガノイド播種用の細胞は天然組織から得ることができ、または他のin vitro誘導プロトコールに従い誘導することができる。例えば、hiPSC由来の内皮コロニー形成細胞は、様々なin vitroおよびin vivo条件下で脈管構造を効率よく生成することが示されている(Dr.Mervin Yoder、パーソナル通信)。
本明細書で提供する方法に従い使用するのに適したハイドロゲルは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、および多糖を非制限的に含む様々なポリマーを使用して調製することができる。PEGは水中および多くの有機溶媒中での可溶性を有するポリマーであり、一般に毒性、抗原性、または免疫原性を欠いている。PEGは各末端で活性化して二官能性にすることができる。他の場合、反応部分を有するように一末端を修飾することができる。例えば、一末端に比較的不活性なメトキシ部分(例えば、メトキシ−PEG−OH)を有し、一方で他の末端が化学的に容易に修飾可能であるヒドロキシル基であるように、PEGモノマーを修飾することができる。多糖ハドロゲルは、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、およびキトサンなどの天然または半合成多糖の架橋化によって作製される。架橋反応は、ポリマー鎖間の共有結合で構成された三次元ネットワーク、生理的条件下で安定したネットワークの形成を可能にする。
幾つかの実施形態では、本明細書で提供する方法に従い使用するのに適したハイドロゲルは、三次元構造骨格内に少なくとも部分的に含有される。構造骨格は、バイオポリマーを含めた1つまたは複数のポリマー材料から調製された、三次元構造を含むことが好ましい。
本明細書で使用する、本発明の方法に従い使用するのに適した「多能性幹細胞」は、全3個の胚芽層の細胞に分化する能力を有する細胞である。本明細書で使用するのに適した多能性細胞には、ヒト胚性幹細胞(hESC)およびヒト人工多能性幹(iPS)細胞がある。本明細書で使用する「胚性幹細胞」または「ESC」は、胚盤胞の内部細胞塊から誘導された多能性細胞または多能性細胞の集団を意味する。Thomson et al., Science 282:1145-1147(1998)を参照。これらの細胞はOct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60、およびTRA−1−81を発現し、核と細胞質の高い比および顕著な核小体を有するコンパクトなコロニーとして出現する。ESCはWiCell Research Institute(Madison、Wis)などの供給業者から市販されている。本明細書で使用する「人工多能性幹細胞」または「iPS細胞」は、それらの元となる分化体細胞に関して異なり得る、特定組の発生能決定因子に関して異なり得る、かつそれらを単離するために使用する培養条件に関して異なり得るが、それにもかかわらずそれらの各分化体細胞系統と遺伝学的にほぼ同一であり、本明細書で記載するようなESCなどの高発生能細胞と類似した特徴を示す、多能性細胞または多能性細胞の集団を意味する。例えば、Yu et al., Science 318:1917-1920(2007)を参照。
人工多能性幹細胞は、ESCに類似した形態学的性質(例えば、丸い形状、大きな核小体とわずかな細胞質)および増殖特性(例えば、約17〜18時間の倍加時間)を示す。さらにiPS細胞は、多能性細胞特異的マーカー(例えば、SSEA−1ではなく、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60またはTRA−1−81)を発現する。しかしながら、人工多能性幹細胞は胚から直接誘導されない。本明細書で使用する「胚から直接誘導されない」は、iPS細胞を生成するための最初の細胞型が、非多能性細胞、例えば複能性細胞または分化末期細胞など、例えば出生後の個体から得た体細胞などであることを意味する。
ヒトiPS細胞を本明細書に記載する方法に従い使用して、特定ヒト対象の遺伝子補体を有する皮膚オルガノイドを得ることができる。例えば、特定哺乳動物対象の特定疾患または障害と関連があるかまたはそこから生じる、1つまたは複数の特異的表現型を示す皮膚オルガノイドを得ることは有利であり得る。このような場合、当技術分野で知られている方法に従った、特定ヒト対象の体細胞のリプログラミングによってiPS細胞が得られる。例えば、Yu et al., Science 324(5928):797-801(2009);Chen et al., Nat. Methods 8(5):424-9(2011); Ebert et al., Nature 457(7227):277-80(2009); Howden et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108(16):6537-42(2011)を参照。
特に、本明細書で提供する方法は、自家皮膚移植ならびに他の臨床および研究用途に適した人工多能性幹細胞(iPSC)誘導皮膚オルガノイドを得るのに有用である。例えば、本明細書で提供するように得たiPSC誘導表皮および真皮を使用して、例えば特定疾患を有する個体中の皮膚層を再現するin vitro皮膚オルガノイドを使用して薬物応答をモデル化することができる。したがって、対象特異的iPSC誘導皮膚オルガノイドには、ヒト対象間の様々な薬物応答に貢献する遺伝的要因および後天的影響を特定するための特定の効用がある。
人工多能性幹細胞へのリプログラミング用の対象特異的体細胞は、生検または他の組織サンプリング法によって、目的の標的組織から入手または単離することができる。幾つかの場合、本発明の三次元組織構築物での使用前にin vitroで対象特異的細胞を操作する。例えば、対象特異的細胞を増殖させる、分化させる、遺伝子改変する、ポリペプチド、核酸、または他の因子と接触させる、凍結保存することが可能であり、または他の場合、三次元組織構築物への導入前に修飾することが可能である。
ヒト多能性幹細胞(例えば、ヒトESCまたはiPS細胞)は、化学的に明確な条件下において、フィーダー層(例えば、線維芽細胞層)の非存在下で、条件付け培地、または明確に規定されていない成分または未規定成分を含む培養培地において培養することが好ましい。本明細書で使用する用語「化学的に明確な培地」および「化学的に明確な培養培地」は、その正確な量が既知または特定可能であり個別に制御可能である、完全に開示された配合または特定可能な成分を含有する培養培地も指す。このように、(1)全培地成分の化学的および構造的素性が知られていない、(2)培地が未知量の何らかの成分を含有する、または(3)この両方の場合、培養培地は化学的に明確ではない。化学的に明確な培養培地の使用による培養条件の標準化によって、細胞培養中に細胞が曝される物質のロット毎またはバッチ毎の変動に関する可能性が最も低くなる。したがって、化学的に明確な条件下で培養した細胞および組織に加えると、様々な分化因子の影響がさらに予想できる。本明細書で使用する用語「無血清」は、動物(例えば、ウシ胎児)の血液から得た血清を含まない細胞培養物質を指す。一般に、動物由来物質の非存在下(すなわち、異種物質を含まない条件下)での細胞または組織の培養は、異種間ウイルスまたはプリオン伝染に関する可能性を低減または排除する。
幾つかの場合、多能性幹細胞凝集体は、Rho−キナーゼ(ROCK)阻害剤などのキナーゼ阻害剤の存在下で培養する。ROCK阻害剤は、単細胞および細胞の小凝集体を保護することが知られている。例えば、その全容を言及するが如く参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2008/0171385号、およびWatanabe K, et al., ”A ROCK inhibitor permits survival of dissociated human embryonic stem cells,” Nat. Biotechnol. 25:681-686(2007)を参照。ROCK阻害剤は、化学的に明確な表面上での多能性細胞の生存寿命を有意に増大させることを以下に示す。本明細書で使用するのに適したROCK阻害剤には、(S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)スルホニル]ホモピペラジンジヒドロクロリド(非公式名:H−1152)、1−(5−イソキノリンスルホニル)ピペラジンヒドロクロリド(非公式名:HA−100)、1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン(非公式名:H−7)、1−(5−イソキノリンスルホニル)−3−メチルピペラジン(非公式名:イソH−7)、N−2−(メチルアミノ)エチル−5−イソキノリン−スルホンアミドジヒドロクロリド(非公式名:H−8)、N−(2−アミノエチル)−5−イソキノリンスルホンアミドジヒドロクロリド(非公式名:H−9)、N−[2−p−ブロモ−シンナミルアミノ]エチル]−5−イソキノリンスルホンアミドジヒドロクロリド(非公式名:H−89)、N−(2−グアニジノエチル)−5−イソキノリンスルホンアミドヒドロクロリド(非公式名:H−1004)、1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンジヒドロクロリド(非公式名:H−1077)、(S)−(+)−2−メチル−4−グリシル−1−(4−メチルイソキノリニル−5−スルホニル)ホモピペラジンジヒドロクロリド(非公式名:グリシルH−1152)および(+)−(R)−トランス−4−(1−アミノエチル)−N−(4−ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミドジヒドロクロリド(非公式名:Y−27632)があるが、これらだけには限られない。キナーゼ阻害剤は、細胞が生存し表面に付着し続けるほど充分高い濃度で、提供することができる。約3μMと約10μMの間の阻害剤濃度が適切であり得る。より低い濃度において、またはROCK阻害剤が提供されないとき、未分化細胞は典型的には剥離し、一方分化細胞は規定表面に付着し続ける。
別の態様では、本明細書で提供するのは、色素沈着がある毛包と色素沈着がない毛包を含む皮膚オルガノイドを生成するための方法である。以下の実施例中に記載するように、hPSC誘導皮膚オルガノイドにおけるメラノサイトの生成は、本開示中に記載する皮膚オルガノイド誘導法の第8日と第12日の間の、標準的活性Wntシグナル伝達の存在に依存する。したがって本開示は、色素沈着毛包を欠く(例えば、白子毛包を含む)皮膚オルガノイドを生成するための方法、および色素沈着毛包を有する皮膚オルガノイドを生成するための方法を提供する。第8日と第12日の間に標準的Wntシグナル伝達を活性化するのに適した任意の方法を使用することができる。例えば、その方法は、hPSC凝集体を標準的Wntシグナル伝達のアゴニストに接触させることを含むことができる。Wntアゴニストは、分子グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)の阻害剤を非制限的に含む。例えば、CHIR−99021は分子グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)の小分子阻害剤であり、したがって標準的Wntシグナル伝達の強力なアゴニストである。幾つかの場合、非色素沈着(白子)毛包を含む皮膚オルガノイドを得て、次いで様々な皮膚および毛色を有する1つまたは複数のドナーから得たメラノサイトを使用して、このような皮膚オルガノイドに播種することは有利なはずである。
別の態様では、本明細書で提供するのは、hPSCから表皮ケラチノサイトの純粋またはほぼ純粋な集団を得るための方法である。
さらなる態様では、本明細書で提供するのは、本明細書で記載する三次元皮膚オルガノイドモデルを使用して、異なる型のヒト皮膚組織を生成する方法である。
任意の適切な方法を使用して、本明細書で記載する細胞型に特徴的な生物学的マーカーの発現を検出することができる。例えば、1つまたは複数の生物学的マーカーの有無を、例えばRNA塩基配列決定、免疫組織化学法、ポリメラーゼ連鎖反応、qRT−PCR、または遺伝子発現を検出もしくは測定する他の技法を使用して検出することができる。例示的実施形態では、本明細書で提供する方法に従って得た細胞集団を、AP2などの前非神経外胚葉の生物学的マーカーの発現(またはその不在)に関して評価する。細胞集団においてタンパク質レベルでマーカーの発現を評価するための定量法も、当技術分野で知られている。例えば、フローサイトメトリーを使用して、目的の生物学的マーカーを発現するかまたは発現しない所与の細胞集団中のわずかな細胞を決定する。以下の実施例セクション中に記載するように、本発明の方法による多層皮膚オルガノイドへのヒト多能性幹細胞の分化は、軟骨細胞およびニューロンなどの非皮膚細胞型の不在、および表皮または皮膚素性を有する細胞の存在に基づいて確認することができる。分化細胞の素性は、(ヒトES細胞または人工多能性幹細胞に対する)NANOGおよびOCT4などの多能性マーカーの下方制御とも関連がある。
任意の適切な1つまたは複数の方法を使用して、本明細書で提供する皮膚オルガノイドまたは皮膚オルガノイド含有組織構築物中の特定成分の均一性と有無を確認することができる。例えば、本明細書で記載する細胞型に特徴的な生物学的マーカーの発現を検出することができる。生物学的マーカーの有無を検出するのに適した方法は当技術分野でよく知られており、RNAレベルで遺伝子発現を評価するための免疫組織化学法、qRT−PCR、RNA塩基配列決定などを非制限的に含む。幾つかの場合、免疫組織化学法などの方法を使用して、皮膚オルガノイドまたは皮膚オルガノイド含有組織構築物内の細胞型または生体分子を検出し特定する。例えば、組織構築物全体またはその一部分を、免疫組織化学法により特異的分化マーカーに関して染色することができる。幾つかの場合、二重標識免疫蛍光を実施して、個々のマーカータンパク質の相対的発現を評価すること、または構築物内の多数の前駆体もしくは分化細胞型を検出することは有利なはずである。適切な一次抗体および二次抗体は、当業者に知られており入手可能である。細胞集団においてタンパク質レベルでマーカーの発現を評価するための定量法も、当技術分野で知られている。例えば、フローサイトメトリーを使用して、目的の生物学的マーカーを発現するかまたは発現しない所与の細胞集団中のわずかな細胞を決定する。幾つかの場合、組織学的または顕微鏡観察用に、本発明の皮膚オルガノイドまたは組織構築物を固定または凍結することは有利なはずである。例えば、本発明の皮膚オルガノイドを、通常の方法を使用してプラスチック包埋および切片化用に、ホルマリンまたはパラホルムアルデヒド中に固定することができる。例示的実施形態では、共焦点顕微鏡によって、本発明の三次元組織構築物全体中の細胞の型および構造の分布を明らかにすることができる。幾つかの場合、共焦点顕微鏡によって得た画像の三次元構築を使用して、様々な細胞および構造の分布および組織化を分析する。
組成物
別の態様では、本明細書で提供するのは、本明細書で提供する方法に従って得る、三次元の、多層in vitro誘導皮膚オルガノイドである。本明細書で記載するように得た皮膚オルガノイドおよび工学操作物質を含む、三次元(3D)組織構築物または組織組成物も提供する。例えば、3D組織構築物は、コラーゲンベースの基質において本開示中に記載する方法に従い多能性幹細胞の凝集体を分化させることによって得ることができ、このような培養条件下で分化する細胞は、互いに接触し毛髪を生成し得る皮膚および表皮層に自己組織化する。幾つかの場合、本発明の3D組織構築物は単離した生物成分をさらに含む。本明細書で使用する「単離した」生物成分(タンパク質またはオルガネラなど)は、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、およびオルガネラなどの、成分が本来存在する生物の細胞中の他の生物成分から実質的に分離または精製されている。本明細書で使用する用語「単離タンパク質」は、標準的な精製法により精製されたタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞中での組換え発現により調製されたタンパク質、および化学合成タンパク質、またはこれらの断片も包含する。
幾つかの場合、皮膚オルガノイドまたは皮膚オルガノイドを含む3D組織構築物は、新組織の構築用の支持構造体の表面上もしくはその中に提供するかまたは組み込む。支持構造体は足場、メッシュ、固体支持体、チューブ、多孔質構造体、および/またはハイドロゲルであってよい。支持構造体は、組織工学操作足場、マトリックス、またはマトリックスを形成する材料であってよい。支持構造体は、全体または一部分が生分解性または非生分解性であり得る。本明細書で使用する用語「生分解性」は、材料が生化学的プロセスによりその成分サブユニットに分解または分裂することを意味する。支持体は、天然または合成ポリマー、チタンなどの金属、骨またはヒドロキシアパタイト、またはセラミックで形成され得る。天然ポリマーには、非制限的に、コラーゲン、ヒアルロン酸、多糖、およびグリコサミノグリカンがある。合成ポリマーには、非制限的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリヒドロキシ酸、およびこれらのコポリマー、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリウレタン、ポリカーボネート、およびポリエステルなどのポリヒドロキシアルカノエートがある。
ヒト細胞は本発明中で使用するのに好ましいが、本発明の組織構築物において使用する細胞はヒト供給源由来の細胞に限られない。ウマ科、イヌ科、ブタ科、ウシ科、ネコ科、ヤギ科、ネズミ科、およびヒツジ科供給源だけには限られないが、これらを含めた他の哺乳動物種由来の細胞を使用することができる。細胞ドナーは発生および年齢について様々であり得る。細胞は胚、新生児、または成体を含めたより高齢個体のドナー組織から誘導することができる。
幾つかの場合、本発明の皮膚オルガノイドは、非修飾もしくは野生型(「正常」)細胞の代わりまたはこれらに加えて、組換えまたは遺伝子改変細胞を含み得る。例えば幾つかの場合、培養中に存在する条件により生物学的、化学的、または熱学的シグナル伝達があると連続量の時間または必要に応じて、組換え細胞産物、増殖因子、ホルモン、ペプチドまたはタンパク質(例えば、検出可能なレポータータンパク質)を生成する組換えおよび遺伝子改変細胞を含むことは有利であり得る。組換えまたは遺伝子改変細胞を得るための手順は当技術分野で一般に知られており、参照により本明細書に組み込まれている、Sambrook et al, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)中に記載されている。
詳細な実施形態では、検出可能なレポーター遺伝子(例えば、蛍光レポーター遺伝子、比色定量検出用のレポーター遺伝子)を含むiPS細胞を使用して、例えば蛍光標識毛包バルジ幹細胞および毛乳頭細胞を有する皮膚オルガノイドを誘導することができる。このような皮膚オルガノイドは、薬物試験中に毛包サイクル段階を迅速に評価するのに有利なはずである。以下の実施例中に記載するように(図14B〜14D参照)、CRISPR/Cas9法を使用して標的レポーター構築物を含むiPS細胞を作製することができる。幾つかの場合、迅速な特定および細胞追跡のため異なる細胞型が異なるレポータータンパク質で標識されたデュアルレポーター系を含む、iPS細胞を得ることは有利である。例えば、改良型緑色蛍光タンパク質(eGFP)または別のGFPまたはGFP変異体を使用して毛包バルジ幹細胞を標識し、tdTomatoレポーター構築物を使用して毛乳頭細胞および/またはメルケル前駆細胞を標識し、iPS誘導皮膚オルガノイドを得ることができる。
別の態様では、本明細書で提供するのは、本開示の方法に従って得た1つ(または複数)の人工皮膚マトリックスおよび機械的または酵素により解離した皮膚オルガノイドを含む組成物である(図15A〜15B参照)。このような組成物を使用して毛髪含有皮膚移植片を作製することができる。これらの組成物において使用するのに適した人工皮膚マトリックスは、2層マトリックス創傷被覆材Integra(商標)(Integra LifeSciences Corp.)、およびブタ小腸粘膜下組織(SIS)から誘導するOasis(登録商標)創傷マトリックス(Smith & Nephew、Inc.)を非制限的に含む。このような組成物を得るため、任意の適切な方法を使用して、または機械的解離法と酵素解離法の組合せを使用して、皮膚オルガノイドを機械的または酵素により解離させることが可能である。皮膚オルガノイドの機械的解離または分離は、ピペット先端での粉砕、超音波処理、攪拌分離、セルスクレーパーの使用、またはメッシュもしくはシーブを介した強制濾過によって実施することができる。酵素による解離は、ディスパーゼ、アクターゼ、およびTrypLEなどの1つまたは複数の酵素ベース解離試薬の使用によって実施することができる。酵素ベース解離試薬は、アクターゼであることが好ましい。EDTA−PBS溶液を解離に使用することも可能である。
別の態様では、本発明は、特定哺乳動物対象(例えば、特定ヒト対象)から誘導された1つまたは複数の細胞型を含むヒト皮膚オルガノイドを提供する。幾つかの場合、誘導された1つまたは複数の細胞型は、特定哺乳動物対象の特定疾患または障害と関連があるかまたはそこから生じる1つまたは複数の特異的表現型を示す。対象特異的体細胞は、生検または他の組織サンプリング法によって、目的の標的組織から入手または単離することができる。幾つかの場合、本発明の組織構築物での使用前にin vitroで対象特異的細胞を操作する。例えば、対象特異的細胞を増殖させる、分化させる、遺伝子改変する、ポリペプチド、核酸、または他の因子と接触させる、凍結保存することが可能であり、または他の場合、本発明の組織構築物における使用前に修飾することが可能である。幾つかの場合、本明細書に記載する方法に従って得た皮膚オルガノイドの上または中への播種前、最中、またはその後に対象特異的細胞を分化させる。他の場合、本発明の皮膚オルガノイドにおいて使用するための対象特異的細胞は、当技術分野で知られている方法に従う対象の体細胞のリプログラミングによって得られる人工多能性幹細胞である。例えば、Yu et al., Science 324(5928): 797-801(2009); Chen et al., Nat. Methods 8(5): 424-9(2011);Ebert et al., Nature 457(7227):277-80(2009); Howden et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108(16):6537-42(2011)を参照。ヒト人工多能性幹細胞は、遺伝的疾患を有する個体を含めた遺伝的に多様な個体集団における薬物応答のモデル化を可能にする。最も安全な薬物でさえ、特異的遺伝背景または環境歴を有する特定個体において有害反応を引き起こす可能性がある。したがって、様々な薬物または疾患に対する既知の感受性または耐性を有する個体から得たiPSC細胞由来の細胞を含む皮膚オルガノイドは、様々な薬物応答に貢献する遺伝的要因および後天的影響を特定する際に有用なはずである。
本明細書で記載する組成物に関して、三次元皮膚オルガノイドおよび工学操作皮膚製品を、当技術分野で一般に知られる任意の移植法を使用して対象に移植することができる。皮膚片移植に関する使用以外に、本明細書で提供する方法に従って得るhPSC誘導皮膚オルガノイドは、潜在的治療剤のスクリーニング用のin vitroモデルとして有用である。本明細書で提供する方法に従って得るhPSC誘導皮膚オルガノイドの他の用途には、非制限的に、乾癬、脱毛症、外胚葉性異形成、連珠毛、ネザートン症候群、および皮膚癌(例えば、メルケル細胞癌腫)などの皮膚障害の病因を研究するため、および/またはそれらの状態の宿主用の新たな治療を特定するための、in vitroモデルとしての皮膚オルガノイドの使用がある。試験化合物が本発明の皮膚オルガノイドの特定生物活性に対してどのような影響があるかは、試験化合物の性質、皮膚オルガノイドまたは組織構築物の特定組成、およびアッセイする特定生物活性に依存する。しかしながら、本発明の方法は(a)試験化合物の存在下において本明細書で提供する皮膚オルガノイドを培養するステップ、(b)試験化合物に曝した後、皮膚オルガノイドの選択した構造または機能属性をアッセイするステップ、および(c)アッセイ中に測定した値と、試験化合物の存在下で培養したオルガノイドと同じ組成を有し、但し試験化合物の非存在下(または対照の存在下)で培養された皮膚オルガノイドを使用して実施した同じアッセイの値を比較するステップを一般に含む。皮膚オルガノイドの細胞の生物学的特性(構造または機能)のプラスまたはマイナスの変化の検出は、接触オルガノイド内の細胞または組織の形態または寿命に対する、試験化合物の少なくとも1つの影響の検出を含み得る。幾つかの場合、検出は、RNA塩基配列決定、遺伝子発現プロファイリング、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、レポーターまたはセンサーの検出、タンパク質発現プロファイリング、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、代謝プロファイリング、およびミクロ透析などの方法の実施を含む。接触組織構築物における遺伝子発現に対する影響に関して試験化合物をスクリーニングすることができ、この場合接触させていない(uncontacted)組織構築物と比較した差次的遺伝子発現(differential gene expression)が検出される。
さらなる態様では、本明細書で提供するのは製品等級のiPSC誘導皮膚組織であり、この製品等級の皮膚組織は本明細書で提供する方法によって得られる。製品等級組成物は、幾つかの場合、本明細書で記載する支持構造体(例えば、人工皮膚マトリックス)中またはその表面上に組み込まれた3D多層工学操作皮膚構築物であり得る。
本明細書で記載するヒト皮膚オルガノイドおよび製品等級iPSC誘導皮膚組織は、様々なin vitroおよびin vivo用途に有用であり得る。臨床用途で使用するための調製物は、アメリカ食品医薬品局などの政府機関によって課された規制に従い入手しなければならない。したがって例示的実施形態では、本明細書で提供する方法は、適正製造規範(GMP)、優良組織規範(GTP)、および優良試験所規範(GLP)に従って実施する。動物由来成分を含む試薬は使用せず、全ての試薬はGMPを遵守した供給業者から購入する。ヒトにおいて使用するための生物工学操作iPSC誘導皮膚組織の製造の状況では、GTPが細胞ドナーの同意、トレーサビリティー、および感染症スクリーニングを左右し、一方GMPは、ヒトに使用するための一貫して安全で有効な製品を製造するための設備、プロセス、試験、および実践と関連がある。Lu et al. Stem Cells 27: 2126-2135(2009)を参照。適切な場合、政府機関および研究所構成員(institutional panel)による患者プロトコールの管理を想定して、インフォームドコンセントが得られること、製品の安全性、生体活性、適切な用量、および有効性が段階的に試験されること、結果が統計学的に有意であること、および倫理的ガイドラインに従うことを保証する。
製造品
別の態様では、本明細書で提供するのは、三次元(3D)、多層in vitro皮膚組成物を得るのに有用な1つまたは複数の成分を含むキットである。キットの成分は、TGFβシグナル伝達経路などのシグナル変換経路の1つまたは複数の小分子阻害剤、および/または標準的Wntシグナル伝達経路などのシグナル変換経路の1つまたは複数小低分子アゴニストを含み得る。キットは、本明細書で記載する支持構造体(例えば、人工皮膚マトリックス)中またはその表面上に提供されたかまたは組み込まれた3D多層工学操作皮膚構築物を形成するための成分も含有し得る。一実施形態では、キットは本明細書で記載する皮膚組成物と使用するための1つまたは複数の支持構造体を含む。支持構造体は、組織工学操作足場、マトリックス(例えば、人工皮膚マトリックス)、またはマトリックス形成材料であってよい。キットは、皮膚線維芽細胞をトランスフェクトして目的の治療用タンパク質を分泌させる物質も含有し得る。幾つかの実施形態では、キット内の皮膚線維芽細胞を遺伝子工学操作して目的の治療用タンパク質を発現させる。
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で記載するものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実践または試験において使用することはできるが、好ましい方法および材料は本明細書で記載する。
本明細書で使用する語句「から本質的になる」は、方法または組成物が、指定のステップまたは成分、およびその基本特徴に著しく影響を与えないステップまたは成分を含むことを意味する。
本明細書で使用する「約」は、言及する濃度範囲、密度、温度、または時間枠の5%以内を意味する。
本発明は、以下の非制限的実施例を考慮することによって、さらに完全に理解される。開示する方法が多能性幹細胞に一般的に適していることは具体的に企図される。それぞれの言及する刊行物は、本明細書でその全容を言及するが如く参照により本明細書に組み込まれている。
[実施例]
外胚葉胚芽層と中胚葉胚芽層および皮膚オルガノイドへのマウス多能性幹細胞の誘導的分化に関するプロトコール
内耳オルガノイドの誘導を調べていた最中、本発明者らは表皮ケラチノサイトの存在に気付いた。Koehler, K.R., Mikosz, A.M., Molosh, A.I., Patel, D., and Hashino, E.(2013).Generation of inner ear sensory epithelia from pluripotent stem cells in 3D culture. Nature, 500(7461),217-221を参照。培養第3日までに、骨形成タンパク質−4(BMP4)、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)阻害剤、SB−431542(「SB」)を加えて上皮における非神経誘導を促進した。BMP4/SB処理は、各凝集体のコア内で中胚葉細胞の層も誘導したことを観察した(図2A)。第4〜5日に、凝集体をFGF−2(「FGF」)とBMP阻害剤(LDN−193189;「LDN」)で処理した。驚くことに、培養の約8〜10日後に、中胚葉細胞は凝集体の表面に移動して組織の層を形成し、その中では特定条件下において内耳オルガノイドが発生し得る。本発明者らは、BMP4濃度およびBMP4への露出時間の増大によって、凝集体の内耳感覚組織から皮膚への発達軌跡が変わり得ると判定した(図2A)。さらに、幾つかのマウス多能性幹細胞(mPSC)株は皮膚生成の素因をつくったと思われる。生成した皮膚オルガノイドは、毛包を開始する毛乳頭細胞を含有する表皮の内側層と真皮組織の外側層を含有していた(図2B〜C)。培養中第25〜30日までに、毛包は逆方向の組織層を反映する内生毛幹を生成した(図2D〜2E)。
SOX2+毛乳頭細胞、aSMA+立毛筋、およびOil Red O+皮下組織脂肪細胞などの、出生後の毛包と真皮の多くの重要な特徴は皮膚オルガノイドにおいて示された(図2F〜2I)。重要なことに、内耳オルガノイド培養中に生じる、軟骨細胞およびニューロンなどの非皮膚細胞は存在しなかった。したがって皮膚オルガノイドは、表皮と真皮のみを含んでいた(n=42皮膚オルガノイド;3実験)。多数の多能性幹細胞株を使用して、このプロトコールを反復し比較可能な結果を得た(図5A〜5I)。これらのデータは、in vitroの規定条件下で純粋な多能性幹細胞集団からの、毛髪生成皮膚の作製を最初に実証したと考えられる。
in vitroにおけるヒト多能性幹細胞からのケラチノサイトの生成
本発明者らは、皮膚オルガノイドを作製可能である、新規のヒト非神経誘導プロトコールを開発しようと努めた。WA25細胞株のヒト多能性幹細胞をEssential8(E8)培養培地中で単細胞に解離した。約5000個の細胞を、96ウエルV底プレートの各ウエル中に平板培養した。培養24時間後、形成された多能性幹細胞凝集体を96ウエルU底プレートに移し、Matrigelの存在下において分化培地中で培養した。これを分化の「第0日」と考えた(図1参照)。
本発明者らのマウス多能性幹細胞(mPSC)系と本発明者らのヒト(hPSC)系の比較において、mPSC培養の外性因子として加えられるべき異なる内在性シグナル伝達分子を、hPSCが生成するようであることを観察した。幾つかのアッセイを実施して、hPSC凝集体において非神経外胚葉誘導を指示する重要因子を特定した。低濃度(5ng/ml未満)のBMP4を含むかまたは含まない化学的に明確な培地(CDM;表1)においてTGFシグナル伝達阻害剤SB−431542でhPSC凝集体を処理すると、TFAP2(AP2)非神経外胚葉細胞の表面上皮を生成することを決定した(図3A〜3F)。10〜12日間のインキュベーション後、凝集体を低密度細胞付着プレート上での浮遊培養、オルガノイド成熟培地(OMM;表2参照)中に移した。非神経誘導凝集体はTFAP2KRT5ケラチノサイトを含む3Dスフェロイドを最終的にもたらし(図3A、3D、3G)、したがって皮膚の表皮成分を生成した。この現象は非常に確かであり、SBまたはSBとBMP4の組合せで処理したWA25hESCおよびmND2−0hiPSC凝集体の100%で起こった(4実験全体で細胞株あたりn=40凝集体)。
本発明者らは、低濃度のBMP−4を使用して非神経外胚葉上皮を誘導したときでさえ、表皮誘導プロセス中に中胚葉細胞(Brachyury+細胞)は誘導されなかったことを発見した(図4A〜4C)。
hPSCの培養:ヒトPSC(WA25hESC、継代22〜50;mND2−0iPSC、継代28〜46)を、確立されたプロトコールに従い組換えヒトビトロネクチン−N(Invitrogen)コーティング6ウエルプレートにおいて、100μg/mlノルモシン(Invitrogen)を補充したEssential8(E8)培地またはEssential8Flex培地(E8f)(Invitrogen)中で培養した12,13。80%の集密状態になったら、または4〜5日毎に、EDTA溶液を使用し1:10〜1:20の分割比で細胞を継代した。いずれの細胞株もWiCell Research Instituteから取得し、確実性と信憑性の申告の下で届いた。他の確認および試験情報は細胞株のウエブページ上で見ることができ、World Wide Webにおけるwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/wa25.cmsx およびwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/mirjt7i-mnd2-0.cmsxで入手可能である。MycoAlertマイコプラズマ検出キット(Lonza)を使用して、細胞株にマイコプラズマ汚染がないことを判定した。
hPSCの分化。分化を開始させるため、StemProアクターゼ(Invitrogen)を用いてhPSC細胞を解離させ、96ウエルV底プレート上、20μMのY−27632(Stemgent)およびノルモシンを含有するE8培地中にウエルあたり5,000個の細胞を分配した。48時間のインキュベーション後、凝集体を、4ng ml−1のFGF−2(Peprotech)、10μMのSB−431542(Stemgent)、および幾つかの実験に関して2.5ng ml−1のBMP4(Stemgent)、および2%増殖因子還元(GFR)Matrigel(Corning)を含有する100μlの化学的に明確な培地(CDM)を入れた96ウエルU底プレートに移して非神経誘導を開始した。すなわち分化第0日。CDMはF−12栄養素混合物とGlutaMAX(Gibco)およびイスコフ改変ダルベッコ培地とGlutaMAX(IMDM;Gibco)の50:50混合物を含有しており、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、1×化学的に明確な脂質濃縮物(Invitrogen)、7μg ml−1のインスリン(Sigma)、15μg ml−1のトランスフェリン(Sigma)、450μMのモノ−チオグリセロール、およびノルモシンを追加的に補充した(詳細な配合に関しては表1参照)。分化第12日に、凝集体を1つにプールし、0.5×N2サプリメント(Gibco)、ビタミンAを含まない0.5×B27(Gibco)、1×GlutaMAX(Gibco)、0.1mMのβ−メルカプトエタノール(Gibco)、およびノルモシンを補充したAdvanced DMEM:F12(Gibco)とNeurobasal培地(Gibco)の50:50混合物を含有する新たに調製したオルガノイド成熟培地(OMM)で洗浄した(詳細な配合に関しては表2参照)。
培地成分の選択:本発明者らは、規定されていない、またはヒト細胞との適合性が乏しいため結果の変動をもたらし得る2つの培地成分、GFRMatrigelとBSAを使用した。GFRMatrigelは、<0.1pg ml−1のFGF−2、<0.5ng ml−1のEGF、5ng ml−1のIGF−1、<5pg ml−1のPDGF、<0.2ng ml−1のNGF、および1.7ng ml−1のTGFβを含有する。特に、GFRMatrigel中のTGFβは第12日以降に細胞の運命決定に影響を与えた可能性がある。本発明者らは、培養のその時期に培地内にTGFβ阻害剤を含めなかったからである。それが3D培養において多能性幹細胞から上皮を自己組織化する確かなインデューサーであることが示されたため、GFRMatrigelを選択した26。精製ラミニン/エンタクチン複合体(Corning)は適切な、完全に化学的に明確な代替であり得る27。CDMでは、それぞれヒト血清アルブミンおよびポリビニルアルコール(PVA)に対してコスト効率がよく溶解が容易な代替としてBSAを選択した。CDMでは、PVAはBSAの適切な化学的に明確な代用品であることが示されている28。あるいは、E6培地(Life Technologies)などの既製品のGMP等級培地をCDMの代わりに使用することが可能である。
表3中に言及する配合は、2週間未満で使用しなければならない50mLの培地を示す。OMMは、脳および胃オルガノイドを作製するため以前から使用されている2培地の注文製作型ハイブリッドである6,7。ビタミンAを含まないB27を使用して内部で生成されたレチノイン酸の影響を限定した。
in vitroにおける表皮ケラチノサイトおよびCNCC誘導皮膚線維芽細胞の生成
実施例3は実施例2中の表皮誘導法には基づかない。頭部の皮膚は、身体の他の部分の皮膚と異なり、表面外胚葉と頭部神経堤細胞(CNCC)の間の相互作用から発生中に生じる。本発明者らのhPSCの3D培養において、本発明者らは、低分子および組換えタンパク質処理に培養細胞を曝す時間を注意深く測定して、TGFβ、BMP、FGF、およびWnt経路を調節し、これによって頭部表面外胚葉の発生を模倣した(図3a〜3f)。皮膚オルガノイドを誘導するため、本発明者らは、分化第4日にFGF−2とBMP阻害剤で(実施例2からの)非神経誘導凝集体を処理した(図5A〜5D)。この処理によって、発達中頭部の後頭部領域のそれと類似したPAX8+ECAD+上皮を誘導した(図5C)。処理しなかった非神経誘導凝集体は、前頭部表面上皮を示すPAX6+ECAD+PAX8−上皮を有していた(図5B)。したがって、FGF/LDN処理濃度の調整は、前頭部/後頭部軸に沿って様々な組織型の表面上皮を生成するのに適した方針であり得る(図5D)。
FGF/LDN処理によって表面外胚葉/神経板境界から組織誘導体(例えば、耳小胞)を生成することが以前から示されているので、本発明者らは第12日凝集体をMatrigel(登録商標)小滴中のOMMに移した。特に、この培養形式では、凝集体はTFAP2およびPDGFRaを発現した中心から四方に移動する頭部神経堤様細胞を生成した(図6A〜6D)。TFAP2+ECAD+上皮は凝集体中で中心に位置し続けた(図6A〜6D)。
本発明者らはプレートから小滴包埋凝集体を剥離させ、回転または攪拌浮遊培養中、OMM中に最大60日間それらを置いた。培養第30〜55日まで、皮膚オルガノイドはKRT5基底層ケラチノサイトとPDGFRa皮膚線維芽細胞からなっていた(図7A〜7C)。皮膚オルガノイドは、表皮の内側層と真皮の外側層を有する嚢胞として発達した。本発明者らは次に、どのメカニズムが皮膚オルガノイドの誘導を制御したのかに興味を持ち、分化第0〜12日の間CDM中にインスリンを含めるかまたは含めずに様々な処理方針を試験した(図8A〜8B)。12日後、前に言及したように凝集体をOMM中のMatrigel(登録商標)に移した。本発明者らは、インスリンレベルとは無関係に、FGF/LDN処理により誘導したオルガノイドによってのみ毛包が生成されたことを発見した(図8A〜8B)。(初期10μM SB+4ng/ml FGF処理後に)追加的処理を与えなかった凝集体、またはLDN処理のみの凝集体は、ケラチノサイト嚢胞を主に形成した(図8A〜8B)。興味深いことに、インスリンを含まない場合、皮膚オルガノイドはインスリン処理凝集体より平均して2.5〜3.5倍大きかった。本発明者らは、FGF/LDNおよびFGF/LDN/CHIR(無インスリン)処理凝集体を用いた本発明者らの分析を続けることを選択した。特に、胚毛髪発達の段階を60日より長く培養した皮膚オルガノイドにおいて観察した。胚毛髪発達の段階1、2、および3(プラコード、胚芽、およびペグ)は第60〜85日の間に起こった(図9A〜9H;比較可能な結果を両条件;示したFGF/LDN/CHIR条件で観察した)。
毛球と毛幹の明らかな色素沈着を第90〜140日の間に観察した(図10A〜10Cおよび11A〜11B)。本発明者らは、FGF/LDN凝集体由来の毛包は色素沈着がなく、一方FGF/LDN/CHIR凝集体由来の毛包には色素沈着があったことを発見した。一般にWnt活性化は神経堤誘導に重要であり、したがって、それはメラニン生成CNCCを特異的に促進する際に役割を果たし得る(図10A〜10C)。本発明者らは、毛球と表皮中にメラニン生成(gp100+MITF+)メラノサイトが存在したことを確認した(図11A〜11E)。
本発明者らは、完全な毛髪皮脂単位が存在したかどうか調べた(図12A)。培養中約100日で、本発明者らは、オルガノイド毛包の漏斗状領域近辺に皮脂腺様構造を検出することができた(図12B〜12C)。LipidTOX(Life Technologies)を用いた凍結切片試料の免疫染色によって、脂質が豊富な皮脂腺細胞が存在したことを確認した(図12D)。90日頃から始まり、延長型核を有するITGA8+aSMA+立毛筋様細胞および大きな真珠様脂肪細胞が毛包周辺で発生し、乳頭/網様のおよび皮下組織の真皮の発生を模倣する(図12A〜12G)。KRT15+毛包バルジ幹細胞も存在した(図12Fおよび12G)。基底層ケラチノサイトの分化の指標として、フィラグリン+鱗屑で皮膚オルガノイドコア層において角質層様層が形成された(図12G)。Driskell et al.,Experimental Dermatology 23,629-631(2014); Driskell et al., Nature 504,277-281(2013);およびDriskell and Watt, Trends in cell biology(2014).doi: 10.1016/j.tcb.2014.10.001を参照。
前述の必須毛髪皮脂単位の特徴以外に、本発明者らは、感覚ニューロンが皮膚オルガノイドと共に発達し、脳内感覚ニューロン(例えば顔面神経)に類似した複雑な多軸突起(小束)を形成したことを発見した。神経突起(ニューロフィラメント−H/LTUJ1)が第60日および第140日皮膚オルガノイドの表皮の周囲を覆った(図13A〜13D)。第35日に、本発明者らは、皮膚オルガノイド皮膚層の表面上にSOX10+P75+CNCC誘導神経前駆体様細胞の凝集体を観察した。これらの凝集細胞は発生中に形成される頭部神経節に類似していた。第140日までに、神経突起が皮膚オルガノイド上皮と接触し、天然ヒト毛包とよく似た毛包の周囲を覆うようである(図13D)。
メルケル細胞と呼ばれる表皮誘導機械受容細胞は、皮膚中の感覚ニューロンの主な標的である(図14A)。本発明者らは、新規なATOH1−2A−eGFPレポーターhESC株(WA25遺伝的背景;Drs.Eri HashinoおよびJing Nieと共同で開発)を使用しIHCおよび生存細胞画像の組合せを使用して、メルケル細胞の存在に関して皮膚オルガノイドを調べた。転写因子ATOH1は発生中メルケル前駆細胞内で高度に発現される。Narisawa, Y., Hashimoto, K. ,and Kohda, H.(1994).Merkel Cells of the Terminal Hair Follicle of the Adult Human Scalp. Journal of Investigative Dermatology, 102(4),506-510およびWright, M.C., Reed-Geaghan, E.G., Bolock, A.M., Fujiyama, T., Hoshino, M., & Maricich, S. M.(2015). Unipotent, Atoh1+progenitors maintain the Merkel cell population in embryonic and adult mice. The Journal of Cell Biology, 208(3), 367-379を参照。本発明者らは、ATOH1−2eGFP+細胞が表皮全体に均一に分布し、発達中の毛包のバルジ領域に集中していたことを発見した(図14B〜14D)。ATOH1−2A−eGFPメルケル様細胞はIsletSOX2でもあった(図14C〜14G)。特に、ISL1(メルケル細胞)とニューロフィラメント−L(メルケル細胞および感覚ニューロン)の同時免疫染色によって、分化第140日までに、感覚ニューロンは表皮中に突起を延長しメルケル細胞とシナプスで接触するようであることが明らかになった(図14F〜14G)。
本発明者らが知る限り、このオルガノイド系は、記載した任意のPSCベースモデルの最も広範囲の皮膚細胞型群を生成した。ヒト胚性幹細胞株(WA25、WiCell Institute)を使用して、本発明者らは、HF生成オルガノイドの96.4%(27/28)の成功率で、7つの別個の実験においてこれらの発見を再現し、この方法は再現性が高いことを示唆した。近年本発明者らは、この方法が同様の有効性(91.7%、11/12)でhiPSC株(mND2−0、WiCell Institute)において機能することを確認した。オルガノイドあたりの毛包の平均数は変化し、hESCに関して22±11毛包およびhiPSCに関して14±9毛包であった。
実施例2中に記載した分化手法の修正:インキュベーションの4日後、250ng ml−1のFGF−2(50ng/ml最終濃度)および1μMのLDN−193189(200nM最終濃度)を含有する25μlのCDMを、各ウエル中の既存の100μl培地に加えた。さらに4日後(合計8日)、25μlのCDMを培地に加えた。幾つかの実験に関しては、18μMのCHIR99021(3μM最終濃度;Stemgent)を含有するCDMを、各ウエル中の既存の125μl培地に加えた。第12日のOMMへの移動中、凝集体を氷冷非希釈GFR Matrigel中に再懸濁し、100mm細菌培養プレートの表面上の約25μl小滴中に置いた。37℃で少なくとも30分のインキュベーション後、小滴は10mlのOMM中に浸した。Matrigel小滴誘導を回避するため、凝集体を洗浄し、24ウエル低密度細胞付着プレートの各ウエル中、1%GFR Matrigelを含有するOMM中に個別に置くことができる。分化の18日後、CHIRを洗浄によって培地から除去し、小滴凝集体は浮遊培養に移した。小滴は広口の1000P先端を使用して注意深く取り除き、125ml使い捨てスピナーフラスコ(Corning)中の75mlの新たなOMMに移した。スピナーフラスコは、分化第180日まで65RPMでインキュベーター内の攪拌プレート(Thermo Scientific)上に保った。幾つかの実験に関しては、第140日までインキュベーター内のオービタルシェーカー(Thermo Scientific)上の1mlのOMM中、24ウエル低密度細胞付着プレートの各ウエル中に凝集体を維持した。
解離したマウス皮膚オルガノイドは気体−液体界面3D培養において表皮および皮膚層に再編する
皮膚オルガノイドが2層に再構成され得るかどうか試験するため、本発明者らは、毛包発生前にマウス皮膚オルガノイドを解離させ、気体−液体界面培養においてオルガノイド細胞を平板培養した。重要なことであるが、本発明者らは、典型的には必要とされる表皮集団と皮膚集団との分離を行わなかった。自己組織化するオルガノイド細胞の能力は経時的に低下するはずなので、解離のタイミングはおそらく重要である。本発明者らは、表皮中でのKRT5発現の開始直後に、第9日皮膚オルガノイドの解離を選択した。簡単に言うと、第9日において(条件あたり)45オルガノイドを、AccuMax(EMD Millipore、Darmstadt、ドイツ)を使用して単細胞に完全に解離させた。解離した細胞は、トランスウエル多孔質膜培養インサート(MilliCell、PTFE、0.4μm孔;条件1)内のMatrigel層の表面上に、または細胞とMatrigel混合物の小滴としてトランスウエル膜上に直接平板培養し(条件2)、ROCK阻害剤を含有するオルガノイド培地の存在下で培養した(図15A〜B)。第12日に使用済み培地を補充し、トランスウエル内の培地を除去して気体−液体界面培養環境をもたらし、細胞が皮膚の異なる層に再編および組織化すると予想した。第23日までに、厚さ約1mmの細胞層が条件1と2の両方で形成され、これらを免疫組織化学法用に固定し処理した。条件1で形成された層は、KRT5ケラチノサイト層とPDGFRa(CD140a)線維芽細胞層が並んで構成されていた。条件2で形成された層は、KRT5ケラチノサイト嚢胞とPDGFRa線維芽細胞で満たされていた。重要なことに、オルガノイド細胞は生存し、これらの条件下で自己組織化することができた。合わせて考えると、第9日でオルガノイドを完全に解離させ、解離した細胞を層中に再度平板培養するこの方法は、異なる層、およびおそらく皮膚付属器を有する完全な厚さの皮膚を生成する可能性を示す。
多能性幹細胞誘導オルガノイドにおける頭顔面部の発達の再現
頭顔面部の発達は生存および社会とのコミュニケーションに必須であるが、しかしながら数百万の個体が、遺伝子突然変異、皮膚腫瘍の除去、または重度の火傷が原因の、不適切に発生したかまたは手術により再構築された顔面部の特徴に悩んでいる。顔面部の発達をさらによく知り、顔面部欠陥に関する新規な細胞療法を特定するため、本発明者らは、胎児において頭顔面部コンプレックスが生じるメカニズムをモデル化したin vitro系から恩恵を得る。ヒトの顔と口は、外胚葉、内胚葉、中胚葉、および頭部神経堤細胞(CNCC)の混合から形成する。具体的には本発明者らは、顔面部真皮および軟骨などの顔面部の特徴への、CNCCの自己組織化を指示するメカニズムに興味を持った。本発明者らは、多能性幹細胞(PSC)を使用する三次元(3D)培養系を開発して、内耳オルガノイド、ならびに軟骨、皮膚、および筋肉などの多様な群の間葉系組織を得た。ここで本発明者らは、頭顔面部コンプレックスの2つの重要な成分、表面外胚葉とCNCCを3D培養においてヒトPSC(hPSC)から同時誘導できることを示す。本発明者らは、小分子および組換えタンパク質を使用して、分化中のhPSC凝集体におけるBMP、TGF−β、およびFGFシグナル伝達を制御した。図16中に示したように、TGFβ阻害および内在BMPシグナル伝達によって、分化の第3〜6日までにTFAP2+ECAD+表面外胚葉の形成が促進される。これらの凝集体は中胚葉を欠いており、一方中胚葉はBMP単独処理により凝集体中の(BRA+)細胞で誘導される。図17中に示したように、FGFの時間処理およびBMPの阻害はCNCCと表面外胚葉の同時誘導を促進した。BMPシグナル伝達の阻害はFGF処理と共に、TFAP2+およびPDGFRa+CNCCとTFAP2+およびECAD+表面外胚葉を同時誘導する。最終的に、このような同時誘導は、軟骨および皮膚オルガノイドを含めたCNCC由来組織型を誘導した。
誘導的分化の2週間後、頭部外胚葉系間充織に類似した、KRT5表面上皮の内側層とAP2PDGFRαCNCC様細胞の外側層を含有するオルガノイドが出現した。特に、これらの組織は層状表皮および真皮、ならびに軟骨塊に自己組織化し、胎児の脳発生をよく模倣する。したがって、本発明者らのヒトPSCベースのin vitro系は、頭顔面部発達の根底にあるメカニズムを徹底的に調査する機会を与え、ニューロクリストパチー(neurocristopathies)をモデル化し、新規な再生療法を特定する。

Claims (23)

  1. 三次元多層皮膚組成物を得る方法であって、
    (a)骨形成タンパク質4(BMP4)およびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)シグナル伝達の阻害剤を含む培養培地内で約8〜約10日間ヒト多能性幹細胞凝集体を培養し、それによって凝集体内で非神経上皮を形成すること、
    (b)細胞外マトリックス成分を含む多孔質基質中に(a)の培養凝集体を包埋すること、および
    (c)(b)の包埋凝集体を、包埋凝集体内の細胞の自己集合を促進し、表皮層、皮膚層、および機能的毛包を形成することができる複数の細胞を含む三次元多層組成物が得られる条件下で少なくとも約25〜約120日間培養すること
    を含む方法。
  2. 前記多孔質基質が半固体培養培地からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記多孔質基質が三次元(3D)多孔質バイオマテリアルである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記三次元(3D)多孔質バイオマテリアルが、化学的に明確なハイドロゲルである、請求項3に記載の方法。
  5. TGFβ1媒介シグナル伝達の前記阻害剤がSB431542およびA−83−01からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記細胞外マトリックスが基底膜抽出物(BME)である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記表皮層が前記皮膚層と直接接触している、請求項1に記載の方法。
  8. 前記表皮層がP63KRT5表皮ケラチノサイトを含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記皮膚層が、毛包を開始する毛乳頭細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記機能的毛包を形成することができる複数の細胞が、間葉系幹細胞、毛乳頭細胞、皮膚鞘細胞、および毛包表皮幹細胞からなる群から選択される細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  11. 表皮免疫細胞、中胚葉由来細胞、および内皮細胞からなる群から選択される1つまたは複数の細胞型を前記多孔質基質に播種することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記表皮免疫細胞がランゲルハンス細胞である、請求項12に記載の方法。
  13. ヒト多能性幹細胞由来表皮ケラチノサイトを含む表皮層、ヒト多能性幹細胞由来皮膚線維芽細胞を含む皮膚層、および機能的毛包を形成することができる複数のヒト多能性幹細胞由来細胞を含み、表皮層と皮膚層が直接接触している三次元、多層工学操作皮膚組成物。
  14. 前記機能的毛包を形成することができる複数の細胞が、間葉系幹細胞、毛乳頭細胞、皮膚鞘細胞、および毛包表皮幹細胞からなる群から選択される細胞を含む、請求項13に記載の工学操作皮膚組成物。
  15. 少なくとも1つの機能的毛包、機能的皮脂腺、または感覚ニューロンをさらに含む、請求項13に記載の工学操作皮膚組成物。
  16. 足場をさらに含む、請求項13に記載の工学操作皮膚組成物。
  17. 前記足場が生分解性または生体吸収性である、請求項16に記載の工学操作皮膚組成物。
  18. 前記足場が合成マトリックスである、請求項16に記載の工学操作皮膚組成物。
  19. ヒト対象に生体移植および生着可能である、請求項13に記載の工学操作皮膚組成物。
  20. 毛髪成長に対する影響に関して化合物を試験する方法であって、
    (a)請求項1に記載の方法に従って得た三次元多層皮膚組成物に試験化合物を接触させること、および
    (b)接触させた皮膚組成物内の1つまたは複数の細胞型に対する作用物質の影響を検出すること
    を含む方法。
  21. 前記検出が、RNA塩基配列決定、遺伝子発現プロファイリング、トランスクリプトーム解析、およびタンパク質発現解析からなる群から選択される方法の実施を含む、請求項20に記載の方法。
  22. 前記作用物質が、遺伝子発現に対する影響に関してスクリーニングされ、前記検出が、非接触皮膚組成物に対する差次的遺伝子発現に関するアッセイを含む、請求項20に記載の方法。
  23. 創薬スクリーニングにおける、請求項1に記載の方法に従って得た三次元多層皮膚組成物の使用。
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