JP7315184B2 - 多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法 - Google Patents
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Description
通常であれば細胞培養器材から細胞剥離剤で剥離させた剥離細胞を選別採取し、採取された剥離細胞を用いて培養を行うため、細胞培養器材に細胞剥離剤で剥離できず残った非剥離細胞は細胞培養器材ごと処分されていた。しかしながら、本発明者らは、分化誘導工程において、あえてこのような非剥離細胞を引き続きコンフルエントになるまで培養を行い細胞群として得、この細胞群を基に得られた表皮角化細胞を、3次元培養皮膚モデルに適用した際に、角層が連続的に重層化した3次元培養皮膚モデルが得られることを本発明者らは新たに見出した。これにより、本発明者らは、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法、表皮角化細胞の製造方法及び3次元培養皮膚モデルの製造方法等を提供するに至った。本発明は、以下の〔1〕~〔12〕のとおりである。
多能性幹細胞からの誘導工程において、細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法であり、
表皮角化細胞を3次元培養皮膚モデルへ適用した際に、角層が重層化した3次元培養皮膚モデルが得られることを特徴とする、前記分化誘導方法。
〔2〕
多能性幹細胞を播種後、3~6日経過後に誘導を開始する、前記〔1〕に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔3〕
前記細胞剥離剤は、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼから選択される1種又は2種以上を含むものである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔4〕
前記細胞剥離剤は、トリプシン、及び/又は、微生物由来のトリプシン様プロテアーゼを含むものである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔5〕
前記非剥離細胞は、前記細胞剥離剤で処理する前に、細胞培養器材上を培養基質で処理した後に細胞を播種して培養を行い、その後細胞剥離剤で処理した後の細胞である、前記〔1〕~〔4〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔6〕
前記非剥離細胞は、前記細胞剥離剤で処理する前に、細胞培養器材上を培養基質で処理した後に細胞を播種して培養を行い、その後細胞剥離剤で処理した後の細胞であり、
当該培養基質は、ラミニン又はその断片である、前記〔1〕~〔5〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔7〕
前記非剥離細胞は、誘導開始後に培養を行い、当該培養の際に細胞剥離剤で剥離処理した後に回収された剥離細胞を基にするものである、前記〔1〕~〔6〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔8〕
前記非剥離細胞を用いて次の培養を行う、前記〔1〕~〔7〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔9〕
前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、前記〔1〕~〔8〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔10〕
前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞であり、
当該人工多能性幹細胞が、表皮角化細胞由来の人工多能性幹細胞である、前記〔1〕~〔9〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
〔11〕
細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導工程を含む、表皮角化細胞の製造方法。
〔12〕
前記〔1〕~〔11〕の何れか一つに記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法を用いて製造された、表皮角化細胞を用いる、3次元培養皮膚モデルの製造方法。
本発明における実施形態は、多能性幹細胞からの誘導工程において、細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法を提供するものであり、好適には表皮角化細胞を3次元培養皮膚モデルへ適用した際に、角層が重層化した3次元培養皮膚モデルが得られることを特徴とするものである。また、本実施形態は、表皮角化細胞を3次元培養皮膚モデルへ適用した際に、角層が重層化した3次元培養皮膚モデルを得るための、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法であってもよい。
また、本実施形態では、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導することを少なくとも含む、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法であってもよい。当該多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法は、さらに、多能性幹細胞の未分化維持の状態で培養又は継代操作後の培養を行うことと、当該未分化維持後の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導することを少なくとも含むことが好適である。また、本実施形態における分化誘導方法は、多能性幹細胞からの表皮角化細胞の製造方法であってもよい。
なお、本明細書では、「継代操作」とは培養した細胞の一部を採取し、新たな別の培養容器に移す操作を意味するものであり、「培養」とは、特に限定される意味ではないが、例えば、培養足場に細胞を播種し、維持又は分裂増殖、若しくは分化させることをいう。
さらに、本発明における別の実施形態として、細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導工程を含む、表皮角化細胞の製造方法を提供することもできる。
また、本発明における別の実施形態として、前記多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法を用いて製造された、表皮角化細胞又は当該表皮角化細胞の製造方法を提供することもできる。
1-1-1.多能性幹細胞
本実施形態では、多能性幹細胞を用いる。
本発明に用いる多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ増殖能を併せ持つ幹細胞であり、特に限定されないが、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植によるクローン胚由来の胚性幹細胞(ntES細胞)、精子幹細胞(GS細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)人工多能性幹細胞(iPS細胞)、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞等を由来とする体細胞性幹細胞(Muse細胞や間葉系幹細胞等)等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。これら細胞は、公知の製造方法にて製造したり、市場や公的機関等から取得したりすることができる。当該細胞は、好適には哺乳動物の細胞、特にヒト細胞を由来にすることが好適である。
本実施形態では、培養基質を含むコート剤を用い、当該コート剤を用いて細胞培養器材と細胞とが接する部分を培養基質でコートすることが好適である。当該培養基質により細胞培養器材の表面をコートすることで、細胞培養器材の表面に対する細胞の接着性を向上又は改善することができる。コーティング処理は、培養基質を含む溶液を細胞培養器材に入れた後、当該溶液を適宜除去すること等が挙げられるが、これに特に限定されず、公知のコーティング処理を適宜採用することができる。
培養基質のうち、ラミニン及びその断片が好適である。
さらに、ラミニンは、変異体であってもよく、インテグリン結合活性を有している変異体であれば、特に限定されない。ラミニンはヒト由来のものが好適である。ラミニン及びその断片は、インテグリンα6B1との結合活性が解離定数10nM以下を示すものが好適である。ラミニン又はラミニン断片は、市販品を用いることが好適である。
ラミニン及びその断片のうち、ラミニン断片が好適であり、より好適にはラミニン511断片、さらに好適にはラミニン511E8断片であり、さらにヒト由来が好適である。
本実施形態では、細胞剥離剤を用い、当該細胞剥離剤として、一般的に動物細胞培養の際に細胞培養器材と培養細胞とを剥離するために用いる細胞剥離成分又は当該成分を含む剤が好適である。
細胞剥離に用いる成分としては、トリプシン系プロテアーゼ(トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ等)及びキモトリプシン等のセリンプロテアーゼ;ディスパーゼ等の金属プロテアーゼ;アクチナーゼ等のCa依存性プロテアーゼ;中性プロテアーゼ;プロテアーゼ及びコラゲナーゼ活性を有するプロテアーゼ等の酵素剥離系と、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウム等の酵素フリー剥離系;TrypLE(商標)等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができるが、これらに特に限定されない。細胞剥離剤として、市販の細胞剥離剤を用いてもよい。また、細胞剥離手段として、物理的な細胞剥離手段を使用してもよく、例えば、セルスクレーパー(コーニング社製)等の培養細胞の剥離器材を使用してもよい。
「トリプシン様」とは、トリプシンと同様又は類似の動態及び切断特性を示すものが好適であり、より好適には、細胞剥離において、プロトコールの変更を行うことなく、トリプシンを直接置き換え可能である。トリプシンの切断特性としては、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン)のカルボキシ基側のペプチド結合を加水分解することができる特性である。
また、酵素の由来は、動物由来、微生物由来のいずれでもよいが、微生物由来が好適であり、プロテアーゼ又はトリプシンを産生可能なように遺伝子組換えされた遺伝子組換え微生物由来がより好適であり、さらに遺伝子組換え真菌由来がさらに好適である。
また、回収した剥離細胞は、遠心分離等の分離手段を行ってもよく、これによりさらに単一細胞を回収して次の細胞培養に用いてもよい。
多能性幹細胞の培養培地としては、一般的に多能性幹細胞の培養に用いている公知の培養培地又は市販の培養培地を用いることができる。多能性幹細胞の培養培地としては、血清を含む又は無血清、オンフィーダー又はフィーダーフリー等から選択される1種又は2種以上を含む培養培地が挙げられる。
また、フィーダー細胞とは、増殖や分化を起こさせようとする目的の細胞の培養条件を整えるために用いる、補助役を果たす他の細胞種をいう。通常、フィーダー細胞は増殖しないようにあらかじめガンマ線照射や抗生物質によって処理されている。
例えば、未分化維持工程に用いる培地として、一般的に用いられている多能性幹細胞の培養培地(好適には未分化維持用培地)を用いることができ、これに、例えばiPS細胞の分散時に生じるアポトーシスを抑制する成分を配合してもよく、例えば「Y-27632」(CAS RN(R). 331752-47-7;C14H21N3O・2HCl・H2O=338.27)」が挙げられる。 例えば、分化誘導工程に用いる培地として、一般的に用いられているような、表皮角化細胞の培養培地(好適には分化用培地)を用いることができ、分化誘導開始する際に、多能性幹細胞の分化誘導開始用の成分を配合してもよい。
さらに、多能性幹細胞の表皮角化細胞への分化と細胞維持のための培地(分化用培地)に、表皮角化細胞の分化維持用の成分を配合してもよく、当該分化維持用の成分として、特に限定されないが、例えば、ヒト上皮細胞成長因子及びY-27632が、表皮角化細胞を得る場合には好適である。
また、例えば、表皮角化細胞の増殖促進用の成分としては、例えば、ペプチドホルモン、サイトカイン、リガンド-受容体複合体等の可用性成長因子;産生FGF(FGF1)、BMP-4、EGF等の増殖因子等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
このときの増殖又は分化を促進させるための成分の有効な濃度として、好適には、約0.01~約500μg/mL、より好適には約0.1~約500ng/mL又は約1~100ng/mLの範囲であってよい。
本実施形態では、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導工程を少なくとも含むことが好適である。さらに、多能性幹細胞の未分化維持の状態で培養又は継代培養を行う未分化維持工程と、当該未分化維持工程を経た多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導工程を少なくとも含むことが好適である。本実施形態における分化誘導方法は、多能性幹細胞からの表皮角化細胞の製造方法であってもよい。
また、本実施形態における分化誘導方法の説明において、上述した「1-1.」等と重複する、多能性幹細胞剥離剤、培養基質、細胞培養器材などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1-1.」等の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。また、本実施形態において、後述する「2.」「3.」等の説明も、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
本実施形態では、分化誘導工程の前に、多能性幹細胞維持工程を行ってもよいし、取得又は作製された多能性幹細胞を用いて、この未分化維持工程を省略して直ちに分化誘導工程を行ってもよい。
本実施形態では、分化誘導工程の前に、多能性幹細胞を播種後、一定期間、未分化状態を維持する培養を行うことが好適であり、これにより、分化誘導開始後の細胞状態(単一細胞の数及び形状)を良好にすることができるので、重層化した角層を有する3次元培養皮膚モデルをより良好に製造できる表皮角化細胞を、多能性幹細胞からより効率よく誘導することができる。
また、細胞状態(単一細胞の数及び形状等)をより好適にして、次工程である分化誘導を行うために、未分化維持工程において、複数回の培養を行ってもよく、例えば、「継代操作後の培養」を単数又は複数行ってもよい。当該培養期間は、特に限定されないが、多能性幹細胞維持のための細胞培養で行われている期間及び回数が好適であり、例えば、細胞を培養(例えば6~8日程度)後に、細胞剥離剤を用いて剥離し、剥離した細胞にて培養を行うこと等が挙げられる。多能性幹細胞維持工程にて用いる細胞剥離剤は、一般的に用いられている成分を用いることができ、例えば、上記「1-1-3.」等を適宜採用でき、プロテアーゼが好適であり、より好適には、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、微生物由来トリプシン様プロテアーゼ、TrypLE(商標)セレクト酵素から選択される1種又は2種以上であり、より好適には、トリプシン、遺伝子組換え真菌由来トリプシン様プロテアーゼ、又はTrypLE(商標)セレクト酵素であり、市販品としては、例えば、後記〔実施例〕にて使用した細胞剥離剤が挙げられる。
また、細胞剥離前及び/又は剥離後に、細胞をROCK阻害剤(例えば、Y-27632等)又はミオシンII阻害剤で処理しても良い。
本実施形態における分化誘導工程では、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導することを行うことが好適である。より好適な態様として、多能性幹細胞を分化誘導開始用培地にて分化誘導を開始又は促進するために培養すること、及び/又は、分化誘導開始後の多能性幹細胞を分化維持用培地にて分化維持又は分化促進をするために培養又は継代培養を行うこと、が好適である。さらに、前記分化維持又は分化促進のための培養又は継代操作後の培養では、コンフルエントに達した細胞を細胞剥離剤を用いて剥離した、剥離細胞を次の培養に用いることが好適である。
本実施形態の好適な態様として、分化誘導工程における培養工程又は継代操作後の培養を複数回行うことが好適である。
また、本実施形態のより好適な態様として、分化誘導工程における培養工程又は継代操作後の培養工程を複数回行う際に、このうち少なくとも1回の培養工程又は継代操作後の培養工程では、細胞剥離剤を用いて細胞培養器材から剥離されずに細胞培養器材に接着している非剥離細胞に、培養培地(好適には分化維持用培地)を添加して、引き続き培養を行うことであり、より好適には非剥離細胞を接着している細胞培養器材に、培養培地を添加して引き続き培養を行うことである。
前記剥離細胞を分化維持用培地にて培養し、継代操作のときに細胞剥離剤を用いて細胞培養器材から剥離できずに細胞培養器材に接着している非剥離細胞を保持する培養工程(第2次培養工程)(例えば、図1のP=1残り:継代25日)、
前記非剥離細胞に、培養培地(好適には分化維持用培地)を添加して、引き続き培養し、継代操作のときに細胞剥離剤を用いて剥離した剥離細胞を回収する培養工程(第3次培養工程)(例えば、図1のP=1残り:継代29日)、
前記剥離細胞を分化維持用培地にて培養し、細胞剥離剤を用いて剥離した剥離細胞を回収する培養工程(第4次工程)(例えばP=2-B)を含むことが好適である。なお、第4次培養工程にて回収された剥離細胞は、多能性幹細胞由来の表皮角化細胞として用いることができる。なお、細胞剥離剤は、細胞を培養後にコンフルエントに達した後に用いることが好適である。また、本明細書において、1次、2次、3次、・・・、n次は、説明の便宜上、順番を付したものであり、これにより本実施形態における培養条件(例えば培養回数や他の工程の追加又は挿入など)が限定されるものではない。
前記非剥離細胞を取得するために用いられる前記細胞剥離剤は、上記「1-1-3.」等を適宜採用でき、プロテアーゼを含む細胞剥離剤が好適であり、当該プロテアーゼは、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、微生物由来トリプシン様プロテアーゼ、遺伝子組換え真菌由来トリプシン様プロテアーゼ、及びTrypLE(商標)セレクト酵素から選択される1種又は2種であることが好適であり、より好適には、トリプシン、遺伝子組換え真菌由来トリプシン様プロテアーゼ、又はTrypLE(商標)セレクト酵素である。また、当該非剥離細胞を取得するための細胞剥離剤は、TrypLE(商標)セレクト酵素を含む細胞剥離剤、又は当該TrypLE(商標)セレクト酵素及び0.5~1.5mMEDTAを含む細胞剥離剤であってもよく、TrypLE(商標)セレクト酵素に代えて、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、微生物由来トリプシン様プロテアーゼ、又は遺伝子組換え真菌由来トリプシン様プロテアーゼのいずれか又は組み合わせを配合してもよい。本実施形態では、プロテアーゼ、細胞剥離剤などは、細胞を剥離するために用いることができ、また、非剥離細胞を取得する際に使用することができる。
前記非剥離細胞を取得するために用いられるコート剤に含まれる培養基質は、上記「1-1-2.」等を適宜採用することができ、このうち、ラミニン又はその断片であることが好適であり、より好適にはラミニン断片であり、さらに好適にはラミニン511E8断片である。また、細胞培養器材は上記「1-1-2.」等を適宜採用することができ、より好適にはポリスチレン製細胞培養器材である。
一般的な細胞培養の態様として、細胞培養器材内がいっぱいになると、剥離に適した任意の方法にて、コロニーを凝集した細胞又は単一の細胞に分割し、継代のために新しい細胞培養器材に入れて培養を行う。この培養は、細胞を生存状態に保ち、培養条件下で長時間増殖させることができるようにするための技術である。細胞は、それらが約70~100%コンフルエントに達したときに、通常、次に培養される。当該コンフルエントは、より好適には90%以上、さらに好適には100%以上である。
また、前記非剥離細胞を用いて培養を行った後に、次の培養に用いる細胞は、細胞剥離剤を用いて剥離された剥離細胞であることが好適である。
また、分化誘導工程において、剥離細胞を取得する際に細胞培養器材をコートするコート剤は、通常のコート剤を用いることができるが、当該コート剤に含まれる培養基質は、ラミニン又はその断片であることが好適であり、より好適にはラミニン断片であり、さらに好適にはラミニン511E8断片である。また、このときの細胞培養器材の材質は、好適にはプラスチック、より好適にはスチレン系樹脂(より好適にはポリスチレン)である。
前記回収された剥離細胞に基づき培養(第2次培養)を行いコンフルエントに達したときに細胞剥離剤で剥離されなかった非剥離細胞を細胞培養器材に残すこと;
前記残した非剥離細胞に基づきコンフルエントに達するまで培養し、細胞剥離剤で剥離した細胞を回収すること;
前記回収された剥離細胞に基づき培養(第3次培養)を行いコンフルエントに達したときに細胞剥離剤で剥離された細胞を回収すること;を含む。
さらに、最終的に(例えば第3次培養のときに)回収された細胞を、本実施形態における表皮角化細胞として、3次元培養皮膚モデルの製造に用いることがより好適である。
本実施形態における表皮角化細胞の製造方法の説明において、上述した「1.」等と重複する、多能性幹細胞剥離剤、培養基質、細胞培養器材などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1.」等の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。また、本実施形態において、後述する「3.」等の説明も、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
さらに、本発明における別の実施形態として、細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導工程を含む、表皮角化細胞の製造方法を提供することもできる。当該表皮角化細胞は、多能性幹細胞からより良好に誘導することができた細胞であり、細胞状態も良好であり、さらに、重層化した角層を有する3次元培養皮膚モデルをより良好に製造できるという利点を有する。
本実施形態における3次元培養皮膚モデルの製造方法の説明において、上述した「1.」「2.」等と重複する、多能性幹細胞剥離剤、培養基質、細胞培養器材などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「2.」等の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。また、本実施形態において、後述する説明も、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
このとき、本実施形態における3次元培養皮膚モデルの製造方法は、本実施形態における表皮角化細胞を用いる以外は、公知の3次元培養皮膚モデルの製造方法又は培養方法を採用することができる。本実施形態では、公知の製造方法又は培養方法を採用しても、本実施形態の表皮角化細胞を用いることで、効率よく、3次元培養皮膚モデルを得ることができるという利点がある。
上層の原料に、本実施形態の多能性幹細胞由来の表皮角化細胞を用いる以外は、公知の3次元培養皮膚モデルの製造方法を適宜採用して、本実施形態の3次元培養皮膚モデルを製造することができる。
培養条件は、由来のとなる動物細胞の培養可能な条件を適宜選択することができ、培養温度の場合、例えば、ヒト由来の場合、好適は37℃程度の36~38℃であり、培養時の雰囲気において、当該雰囲気中の二酸化炭素濃度は例えば、2~5%や5%CO2濃度が挙げられ、当該雰囲気中の酸素濃度は特に限定されないが、例えば3~20%O2濃度が挙げられ、これら以外は空気又は窒素ガスで当該雰囲気を適宜調整してもよい。また、使用する培地は、工程ごとに及び時期ごとに適した市販品を適宜採用することができる。
播種する細胞数は、1ウェルあたり、好適には103~106cellsであり、より好適には1~5×105cellsである。
本実施形態における哺乳動物は、特に限定されず、ヒト、ブタ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。このうち、ヒト、ブタが好適であり、より好適はヒトである。
本実施形態の3次元培養皮膚モデルは、動物実験の代替法の1つの実験モデル(皮膚モデル)として用いることもできる。
また、本実施形態の3次元培養皮膚モデルは、健常者や患者等の対象者から採取した体細胞から多能性幹細胞を作製し、それから誘導された表皮角化細胞を用いて、製造することにより、対象者に適用する技術(オーダーメイドの化粧品やスキンケア等)にも利用可能である。対象者の細胞から作製された多能性幹細胞から、本実施形態の方法にて製造された3次元培養皮膚モデルは、その対象者自身の皮膚(肌状態、代謝機構等)により近い状態のものとして利用することも可能となる。このため、有効成分の適正、使用量や副作用等の予測、対象者に関する肌の状態等の予防、改善又は治療等に利用することができる。さらには特定の遺伝子に対して遺伝子編集を施した多能性幹細胞から、本実施形態の方法にて3次元培養皮膚モデルを作製することにより、皮膚における特定の遺伝子の機能を解析することも可能となる。
投与方法のより好適な態様は、3次元培養皮膚に対する塗布が好適であり、塗ることによる塗布、噴霧による塗布、皮膚貼り付け等の浸透性による塗布等が挙げられるが、これらに限定されない。
試験例1における多能性幹細胞からの表皮角化細胞への分化誘導条件の検討について、<試験例1-1:用いるiPS細胞の種類の検討>、<試験例1-2:プレート(細胞培養器材)のコート剤(培養基質)の種類の検討>、<試験例1-3:播種から誘導開始までの期間の好適化の検討>、<試験例1-4:剥離細胞/非剥離細胞の選択の検討>、<試験例1-5:継代操作時の細胞剥離剤の種類の検討>を行った。
ヒトケラチノサイト由来iPS細胞(日本薬科大学より入手)を、37℃で5%CO2の下で、StemFit(R)AK02N(味の素ヘルシーサプライ株式会社)で培養した。培養にはiMatrix-511 silk(製造・開発:株式会社ニッピ、販売:株式会社マトリクソーム ヒトラミニン511E8断片を精製して作られた培養基質)をコートしたポリスチレン製の組織培養プレートを用いた。1日毎にStemFit(R)AK02Nで培地交換を行った。継代のために7日毎にiPS細胞を、TrypLETM Select Enzyme(細胞剥離剤)(Gibco;トリプシンに代わる組換え細胞解離酵素(「細胞剥離酵素」ともいう)を含む製品):PBS=1:1溶液で剥離し、1μM Y-27632(Wako)を補充したStemFit(R)AK02Nで1日培養した。
StemFit(R)AK02Nに補充する「Y-27632」(CAS RN(R). 331752-47-7;C14H21N3O・2HCl・H2O=338.27)」は、選択的かつ強力なROCK阻害剤であり、多能性幹細胞の細胞分散時に細胞死を抑制する、また凍結保存後の細胞生存率が向上するために使用することができる。
TrypLETM Select Enzyme(細胞剥離剤)は、ブタトリプシンの非動物代替品であり、微生物発酵(具体的には真菌)に由来する組換え酵素(具体的にはトリプシン様プロテアーゼ)を含み、当該酵素はブタトリプシンと同等程度の除去速度と回復生残率を有するものであり、当該製品は、1mMEDTAを含むDPBS(ダルベッコPBS(Dulbecco's Phosphate Buffered Saline)で処方された1Xストック溶液である。
ヒトケラチノサイト由来iPS細胞を上述した未分化維持培養にて増殖させ、iMatrix-511 silkをコートしたポリスチレン製の組織培養プレートに播種し、その後1日毎にStemFit(R)AK02Nで培地交換を行った。対数増殖期になったら、表皮角化細胞への分化誘導のために、1μMレチノイン酸(Sigma-Aldrich)、25ng/mL BMP-4(Wako)の補充されたCnT-07(CELLnTEC)培地で培地を置き換え、37℃で5%O2及び5%CO2の下で4日間培養した。その後、20ng/mL EGF(MACS)、10μM Y-27632の補充されたCnT-07(CELLnTEC)培地(以下、分化維持培地と記載)で培地を置き換えた(誘導開始:培養0日:P=0)。以降は1日毎に培地を交換した。
このときの播種から誘導開始までの培養日数は、5日であった。
なお、このときのピペッティング操作は、1mL容ピペットを用いて、吸引と噴射を約1~5回繰り返し行って培養培地に水流を発生させて、水流にて細胞を剥離させ、剥離細胞を吸引し回収した。
「1μMレチノイン酸、25ng/mL 骨形成因子4(BMP-4)の補充されたCnT-07(CELLnTEC)培地」は、表皮角化細胞への分化誘導のための培地として使用する培地である。
「20ng/mL 上皮細胞成長因子(EGF(MACS(R)GMP Recombinant Human EGF(組換ヒト上皮細胞成長因子)))、10μM Y-27632の補充されたCnT-07(CELLnTEC)培地」は、多能性幹細胞の表皮角化細胞への分化と細胞維持のための培地として使用する分化維持培地であり、完全合成、動物由来成分不含(全ての動物、ヒト由来成分が含まれていない)の分化維持培地である。
<製造例3-1.線維芽細胞包埋コラーゲンゲルの作製>
氷冷下で、0.3%Cellmatrix TypeI-A(新田ゼラチン株式会社)(A液)、5倍濃縮DMEM培地(B液)、260mmol/l NaHCO3及び200mmol/L HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)(同仁化学研究所)を含む50mmol/L NaOH溶液(C液)を7:2:1の割合で混合した後、6ウェルマルチプレートに1mLずつ分注し、室温(20℃)でゲル化させた。次に回収した正常ヒト皮膚線維芽細胞(KF-4009:新生児包皮皮膚線維芽細胞:クラボウより入手)を5×105cells/mLになるようにBに懸濁した後に、A:B:Cを7:2:1の割合で混合し、先にゲル化させたコラーゲンゲル上に2mLずつ分注し、37℃でゲル化させた。ゲルの上に10%FBSを補充したDMEM培地を添加した。24時間経過後にプレートからゲルを剥離し、以降は1日毎に培地を交換した。7日間経過後に次工程へ移行した。
なお、「Cellmatrix TypeI-A」は、ブタ腱由来酸可溶性のType-Iコラーゲンである。
細胞数は、自動細胞カウンターにて計算した。
なお、皮膚モデルの作製は、特に言及しない場合には、37℃で5%O2及び5%CO2の下で行った。
播種に用いるケラチノサイトは、上記<製造例2>で得られた、剥離細胞系のiPS細胞由来表皮角化細胞(P=3)、非剥離細胞系のiPS細胞由来表皮角化細胞(P=2-B)を、それぞれ用い、同時期に2種の3次元培養皮膚モデルの培養を行った。
具体的には、6ウェルマルチプレートに皮膚組織培養用セルカルチャーインサート(Greiner、ポア径0.4μm:ポリカーボネート製細胞培養器材)を設置し、上記コラーゲンゲルをインサートの上に乗せた。コラーゲンゲルの上に内径10mmのクローニングリングを設置し、その内部に回収したiPS細胞由来表皮角化細胞を2×105cells播種し、1μM Y-27632含有CnT-07培地で培養した。インサート外部にはCnT-07培地を添加した。播種から24時間後、ガラスリング内の培地を1.73mM CaCl2を補充したCnT-07培地で、インサート外部の培地を1.73mM CaCl2を補充したCnT-07培地:10%FBSを補充したDMEM培地=1:1とした培地で交換した。16~20時間経過後、クローニングリング内の培地を除去して表皮角化細胞を空気暴露し、インサート外の培地を交換した。以降は、1日毎にインサート外の培地を交換した。
表皮角化細胞の空気暴露から12~14日経過後、クローニングリングを取り外し、皮膚モデルを4% PFA-PBSに浸した。10~12時間後、皮膚モデルを20%スクロース溶液に浸し、9時間後に30%スクロース溶液に浸すことでスクロース置換を行った。皮膚モデルを包埋し、10μm厚の切片にして、HE染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)を行い、光学顕微鏡で、真皮、表皮及び角層の観察を行った。観察した際、エオジンで赤色に染色される角層が皮膚モデルの上部80%以上にわたって形成されているものを合格、いずれかがそれ以下であるものを不合格とした。
3次元培養皮膚モデルの合否判定については、スクロース置換後に、3次元培養皮膚モデルを凍結切片作製装置で垂直方向に切断して10μm厚切片にして、HE染色及び顕微鏡観察により、切片部分の線維芽細胞層及び角層の2層がみえるように側面方向から観察し撮像した。撮像後の撮像画像において、HE染色された角層において、X軸方向(縦長の水平方向)で撮像画面における3次元培養皮膚モデルの両端の長さを測定する一方で、当該撮像画面における連続的に重層化されている角層部分の長さを測定した。
<製造例1>~<製造例2>にて得られた、ケラチノサイト由来iPS細胞から製造された非剥離細胞系のiPS細胞由来表皮角化細胞を用いて、<製造例3.皮膚モデルの作製>に従って、3次元培養皮膚モデルを製造した。
図2に示すように、ケラチノサイト由来のiPS細胞に基づいた3次元培養皮膚モデルでは、全体に角層が重層化しており、重層化の厚みもあるため、角層及び真皮層を有する3次元皮膚培養モデルを製造することができた。すなわち、ケラチノサイト由来iPS細胞から製造された非剥離細胞系のiPS細胞由来表皮角化細胞を用いることで、表皮角化細胞を3次元培養皮膚モデルへ適用した際に、角層が重層化した3次元培養皮膚モデルが得られるという目的を達成することができた。
さらに、誘導工程における、培養において、複数回、細胞剥離剤を用いて継代を行う際に、非剥離細胞系として、少なくとも1回は、細胞剥離剤で処理しても剥離されなかった細胞を用いることが好適であると考えた。
さらに、多能性幹細胞のなかでも、iPS細胞が好適であり、その由来はケラチノサイト由来のiPS細胞であることが好適であると考えた。
さらに、用いるコート剤(培養基質)について、iMatrixに代えて、Vitronectin又はVitronectin+Col Iを用いた以外は、上記<製造例1>~<製造例2>を行った。この結果、分化誘導工程のときの細胞の状態が、細胞培養器材(ポリスチレン製)に使用するこれら3種のコート剤(培養基質)のうち、ラミニン511E8断片(細胞外マトリックス)を含むiMatrix試薬が、最も良かった。図3に示すように、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化工程において、ラミニン又はその断片を用いることで、光学顕微鏡観察において、細胞の形状及び増殖速度も良好で、さらに次の継代のときの細胞も良好に生存していた。
よって、細胞外マトリックスとして、ラミニンを細胞培養器材のコート剤(培養基質)として使用することが好適であることが確認できた。Vitronectin又はVitronectin+Col Iはコラーゲン系のコート剤(培養基質)と考えるため、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導には、ラミニン又はラミニン断片(より好適にはラミニン511E8断片)が好適と考えた。
<製造例2>の誘導工程の前の<製造例1>の多能性幹細胞の培養維持工程において、播種日から誘導開始前までの期間日数を、3日、4日、5日、6日にして、それぞれ<製造例2>の誘導期間(P=0)でコンフルエント100%に達成したかどうかを基準○(A)として判断した。
誘導開始を基準日として、前日を-1日前等とした場合には、表1の「誘導開始までの日数」の欄は、上から-3日、-4日、-5日、-6日となる。
表1に示すように、播種日から誘導開始までの日数が3~6日(より好適には3~5日)の細胞を用いて誘導を行った場合、光学顕微鏡の観察にて、細胞の形状及び数が良好であることが確認できた。(図4参照)。
<製造例2>における、剥離細胞系と非剥離細胞系とに分ける継代P=1に使用する細胞剥離剤について、表2の細胞剥離剤を用いて処理した後に、光学顕微鏡を用いて、細胞剥離剤の処理直後の剥離状況及び処理後の細胞の状態について検討を行った。表2中の、細胞剥離剤は、TrypLE(商標)セレクト、アクチナーゼ(合同酒精社製)、トリプシン(トリプシン/EDTA溶液:クラボウ社製)、ディスパーゼ(科研製薬社製)、Accutase(イノベーティブ セル テクノロジーズ社製)、ReLeSR(ベリタス社製)である。なお、トリプシン(trypsin, EC.3.4.21.4)はエンドペプチダーゼ、セリンプロテアーゼの一種であり、膵液に含まれる消化酵素の一種で、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン)のカルボキシ基側のペプチド結合を加水分解する酵素である。
さらに、TrypLE(商標)セレクト酵素に関し、多能性幹細胞維持工程期間が、4日、5日及び6日の場合でも、ほとんど又は適度に剥がすことができ、さらに、細胞剥離剤で処理した後4時間経過後も細胞の状態は良好であった。また、トリプシンに関し、多能性幹細胞維持工程期間が、5日の場合でも、ほとんど又は適度に剥がすことができ、さらに、細胞剥離剤で処理した後4時間経過後も細胞の状態は良好であった。
なお、本発明者らは、TrypLE(商標)セレクト酵素は、ブタトリプシンの代替品であり、また、トリプシン様プロテアーゼに分類されるのではないかと考えている。
これらのうちで、最もよい酵素はトリプシン系酵素であると確認でき、より具体的には、TrypLE(商標)セレクト酵素及びトリプシンであった。
このことから、本発明者らは、細胞剥離剤は、トリプシン系酵素が好適であり、より具体的にはプロテアーゼ、TrypLE(商標)セレクト酵素が好適であり、より好適はトリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、TrypLE(商標)セレクト酵素であり、さらに好適にはトリプシン、及び、TrypLE(商標)セレクト酵素の各酵素であると考えた。
Claims (9)
- 多能性幹細胞からの誘導工程において、細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法であり、
前記非剥離細胞は、細胞培養器材の表面に対する細胞の接着性を向上又は改善する培養基質で処理した細胞培養器材上に細胞を播種して培養を行い、誘導開始後に細胞剥離剤で剥離処理した後に回収された剥離細胞を基にするものであり、
前記細胞剥離剤は、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼから選択される1種又は2種を含むものであり、当該トリプシン様プロテアーゼとは、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン)のカルボキシ基側のペプチド結合を加水分解することができる切断特性を示すプロテアーゼである、
表皮角化細胞を3次元培養皮膚モデルへ適用した際に、角層が重層化した3次元培養皮膚モデルが得られることを特徴とする、前記分化誘導方法。 - 多能性幹細胞を播種後、3~6日経過後に誘導を開始する、請求項1に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
- 前記誘導工程において用いる前記非剥離細胞は、前記剥離細胞に基づき、細胞培養器材の表面に対する細胞の接着性を向上又は改善する培養基質で処理した細胞培養器材上に細胞を播種し、前記細胞剥離剤を用いて剥離されなかった細胞を当該細胞培養器材に残して培養し、前記細胞剥離剤を用いて剥離した剥離細胞を回収したものである、請求項1又は2に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
- 前記培養基質は、ラミニン又はその断片である、請求項1~3の何れか一項に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
- 前記非剥離細胞を用いて次の培養を行う、請求項1~4の何れか一項に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
- 前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、請求項1~5の何れか一項に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。
- 前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞であり、
当該人工多能性幹細胞が、表皮角化細胞由来の人工多能性幹細胞である、請求項1~6の何れか一項に記載の多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導方法。 - 細胞剥離剤で処理した後の非剥離細胞を用いる、多能性幹細胞から表皮角化細胞への分化誘導工程を含み、
前記非剥離細胞は、細胞培養器材の表面に対する細胞の接着性を向上又は改善する培養基質で処理した細胞培養器材上に細胞を播種して培養を行い、誘導開始後に細胞剥離剤で剥離処理した後に回収された剥離細胞を基にするものであり、
前記細胞剥離剤は、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼから選択される1種又は2種を含むものであり、当該トリプシン様プロテアーゼとは、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン)のカルボキシ基側のペプチド結合を加水分解することができる切断特性を示すプロテアーゼである、
表皮角化細胞の製造方法。 - 請求項8に記載の表皮角化細胞の製造方法で得られた表皮角化細胞を用いる、3次元培養皮膚モデルの製造方法。
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