JP7078925B2 - 毛包上皮幹細胞の培養方法及び培養キット - Google Patents
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Description
本発明の第1態様に係る毛包上皮幹細胞の培養方法は、細胞培養容器に、毛包上皮幹細胞を播種し、集積体を形成させる集積工程と、前記毛包上皮幹細胞の集積体に細胞外マトリックス成分を加え、前記細胞外マトリックス成分と前記毛包上皮幹細胞の集積体との混合物を作製する混合工程と、前記混合物に培地を加えて培養する培養工程と、を備える方法である。
上記第1態様に係る毛包上皮幹細胞の培養方法において、前記細胞外マトリックス成分がI型コラーゲンであってもよい。
上記第1態様に係る毛包上皮幹細胞の培養方法において、前記細胞培養容器が酸素透過性を有する材質からなってもよい。
上記第1態様に係る毛包上皮幹細胞の培養方法において、前記酸素透過性を有する材質がポリジメチルシロキサンであってもよい。
本実施形態の毛包上皮幹細胞の培養方法は、集積工程と、混合工程と、培養工程と、を備える方法である。
前記集積工程では、細胞培養容器に、毛包上皮幹細胞を播種し、集積体を形成させる。
前記混合工程では、前記毛包上皮幹細胞の集積体に細胞外マトリックス成分を加え、前記細胞外マトリックス成分と前記毛包上皮幹細胞の集積体との混合物を作製する。
前記培養工程では、前記混合物に培地を加えて培養する。
従来の毛包上皮幹細胞の培養方法では、細胞を播種する時点から、毛包上皮幹細胞とマトリゲル等の細胞外マトリックス成分とを混合し、毛包上皮幹細胞を分散させた状態で培養を行う。
一方、毛包上皮幹細胞は、生体内において細胞が密集した環境で存在しており、さらに、細胞間には細胞外マトリックス成分が存在している。そのため、本実施形態の培養方法における集積工程で、細胞集積体を形成させた後に、続く混合工程において、細胞集積体に細胞外マトリックス成分を混合することで、生体内に近しい環境を再現することができる。これにより、後述の実施例に示すように、従来の毛包上皮幹細胞の培養方法よりも、優れた毛髪再生能を有する毛包上皮幹細胞を得ることができる。
なお、ここでいう「細胞集積体」とは、細胞培養容器内に播種された細胞が、重力等により底面に積み重なって集まったものを意味する。
本実施形態の培養方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
まず、毛包上皮幹細胞を細胞培養容器に播種し、静置培養する。細胞を重力で沈殿させることで、細胞の集積体を形成させる。播種する細胞数は細胞培養容器の大きさに応じて適宜調整することができる。
本実施形態の培養方法で用いられる毛包上皮幹細胞の由来としては、動物であり、脊椎動物が好ましく、哺乳動物がより好ましい。哺乳動物としては、例えば、ヒト、チンパンジー及びその他の霊長類;イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ラット(ヌードラットも包含する)、マウス(ヌードマウス及びスキッドマウスも包含する)、モルモット等の家畜動物、愛玩動物及び実験用動物等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、細胞の由来としては、ヒトであることが好ましい。
毛包上皮幹細胞は、被検動物の皮膚組織から単離されたものであってもよく、万能細胞から誘導されたものであってもよい。万能細胞としては、例えば、胚性幹(ES)細胞、胚性生殖(EG)細胞、人工多能性(iPS)幹細胞等が挙げられる。
また、本実施形態の培養方法で用いられる毛包上皮幹細胞は、単一細胞であってもよく、皮膚組織において毛包上皮幹細胞の周囲に存在する細胞(例えば、色素幹細胞、表皮細胞等)を含む混合細胞であってもよい。
毛包上皮幹細胞であることは、毛包上皮幹細胞のマーカータンパク質(例えば、CD34等)を発現しているか否かで確認することができる。具体的には、例えば、CD34を発現している細胞は、公知の方法(例えば、抗CD34抗体を用いたFluorescence activated cell sorting(FACS)分析、Magnetic cell sorting(MACS)分析、及び、免疫染色法等)を用いて、確認することができる。
細胞培養容器は、観察のしやすさ、スクリーニング効率から、複数のウェルが規則的に1つの基板に配置されているものが好ましい。本明細書においては、基板に配置された個々のウェルを細胞培養容器と想定する。このようなものとしては、市販のものを用いてもよいし、特許文献3(国際公開第2017/073625号)に記載の方法等で作製してもよい。
培地としては、特別な限定はなく、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン)等を含む基本培地とすることができる。
無機塩としては、特別な限定はなく、例えば、カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が挙げられる。塩は、通常、塩化物、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及び、重炭酸塩の形で用いられる。
一般的に、培地中の無機塩の重量オスモル濃度は、例えば200mOsm/kg以上400mOsm/kg以下とすることができ、例えば280mOsm/kg以上350mOsm/kg以下とすることができ、例えば280mOsm/kg以上310mOsm/kg以下とすることができ、例えば280mOsm/kg以上300mOsm/kg未満とすることができ、例えば280mOsm/kgとすることができる。
一般的に、培地中の炭水化物(好ましくは、D-グルコース)の濃度としては、0.5g/L以上2g/L以下であることが好ましい。
一般的に、培地に含まれるグルタミンの濃度は0.05g/L以上1g/L以下(通常、0.1g/L以上0.75g/L以下) とすることができる。培地に含まれるグルタミン以外の各アミノ酸は、0.001g/L以上1g/L以下(通常、0.01g/L以上0.15g/L以下) とすることができる。アミノ酸は合成由来でもよい。
一般的に、培地に含まれる抗生物質の濃度は、特別な限定はなく、例えば0.1μg/mL以上100μg/mL以下とすることができる。
一般的に、培地に含まれる血清の濃度は、例えば2質量%以上10質量%以下とすることができる。
成長因子としてより具体的には、例えば、上皮成長因子(Epidermal growth factor:EGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic fibroblast growth factor:aFGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、インスリン様成長因子-1(Insulin―like growth factor-1:IGF-1)、マクロファージ由来成長因子(Macrophage-derived growth factor:MDGF)、血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor:PDGF)、腫瘍血管新生因子(Tumor angiogenesis factor:TAF)、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)等が挙げられる。これらの成長因子を単独で含んでいてもよく、複数組み合わせて含んでいてもよい。
一般的に、培地に含まれる成長因子の濃度は、特別な限定はなく、例えば1ng/mL以上10μg/mL以下とすることができる。
一般的に、培地に含まれるホルモンの濃度は、特別な限定はなく、例えば1ng/mL以上10μg/mL以下とすることができる。
前記公知の上皮系細胞用基本培地としては、例えば、HuMedia-KB2(クラボウ社製)、角化細胞基本培地2(Keratinocyte Basal Medium 2)(Promo Cell社製)、EpiLife(登録商標) Medium(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製)等が挙げられる。
また、上皮成長因子、任意の抗生物質、及び、任意のホルモンを含む上皮系細胞増殖用培地としては、例えば、HuMedia-KG2(クラボウ社製)、角化細胞増殖培地2(Keratinocyte Growth Medium 2)(Promo Cell社製)等が挙げられる。また、これら上皮成長因子、任意の抗生物質、及び、任意のホルモンを含む上皮系細胞増殖用培地に、さらに、任意の成長因子及び任意のROCK阻害剤等を添加してもよい。
次いで、毛包上皮幹細胞の集積体に、細胞外マトリックス成分を加えて、前記細胞外マトリックス成分と前記毛包上皮幹細胞の集積体との混合物を作製する。これにより、続く培養工程において、毛包上皮幹細胞を生体内と近しい環境で培養することができる。混合工程において、細胞外マトリックス成分をゲル化させてもよく、ゲル化させなくてもよい。
細胞外マトリックス成分としては、例えば、コラーゲン(I型、II型、III型、IV型、V型、XI型、XVII型等)、マウスEHS腫瘍抽出物(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン等を含む)より再構成された基底膜成分(商品名:マトリゲル)、フィブリン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン等が挙げられる。その他天然物由来の高分子として、ゼラチン、寒天、アガロース等を使用することもできる。それぞれのゲル化に至適な塩等の成分、その濃度、pH等を選択しハイドロゲルを作製することが可能である。また、これらの天然物由来の高分子を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
次いで、混合工程で作製された混合物に培地を加えて培養する。培養工程で用いられる細胞培養容器及び培地としては、上記「[集積工程]」において例示されたものと同様のものが挙げられる。培養条件としては、培養時間は、3日間以上21日間以下(好ましくは、10日間以上14日間以下)とすることができ、培養温度は25℃以上40℃未満(好ましくは、37℃)とすることができる。また、例えば約5%のCO2条件下であってもよい。
培養工程において、後述の実施例に示すように、培養日数を経るにつれて、毛包上皮幹細胞同士が接着及び凝集し、一つの凝集体を形成する。
この培養工程を経ることで、毛髪再生能に優れる毛包上皮幹細胞を大量に得ることができる。
また、本実施形態の培養方法は、培養工程の後に、さらに、毛包上皮幹細胞のマーカータンパク質の発現を確認する確認工程等を備えてもよい。
毛包上皮幹細胞のマーカータンパク質の発現の確認方法としては、上記「(毛包上皮幹細胞)」において例示された方法と同様の方法が挙げられる。
本実施形態の毛包上皮幹細胞の培養キットは、酸素透過性を有する材質からなる細胞培養容器と、細胞外マトリックス成分と、培地と、を備える。
本実施形態の培養キットは、上記酸素透過性を有する材質からなる細胞培養容器、上記細胞外マトリックス成分及び上記培地に加えて、さらに、毛包上皮幹細胞のマーカータンパク質に対する抗体(例えば、抗CD34抗体)等を備えていてもよい。これにより、培養して得られた細胞が毛包上皮幹細胞であるか否か(毛髪再生能を維持しているか否か)を確認することができる。
また、本実施形態の培養方法は、上記酸素透過性を有する材質からなる細胞培養容器、上記細胞外マトリックス成分及び上記培地に加えて、さらに、トリプシン等の酵素を備えてもよい。これにより、本実施形態の培養キットを用いて得られた毛包上皮幹細胞を1細胞ずつに単離することができる。
本実施形態の培養方法及び培養キットを用いて得られた毛包上皮幹細胞は、例えば、毛乳頭細胞等の間葉系細胞と共培養することで毛包原基を構築することができる。この毛包原基を移植することで、毛髪を再生できる。
まず、成体マウスから皮膚細胞を採取し、毛包上皮幹細胞の存在率を評価した後に、単離して続く試験に用いた(図1参照)。
(1)マウス上皮細胞の採取
6~8週齢の雄の成体マウス(C57BL/6jjcl、チャールズリバー社より購入)より背部皮膚を採取し、100mg/Lのペニシリン-ストレプトマイシン(Penicillin-Streptomycin:P/S)(GIBCO社製)を含むダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(Dulbecco’s phosphate-buffered saline:DPBS)(GIBCO社製)で洗浄した。次いで、脂肪組織をメスで外科的に除去し、皮膚組織を得た。この皮膚組織を1~1.5cm角に細断し、真皮側を下にして0.25%トリプシン(GIBCO社製)を用いて、37℃で70分間インキュベートした。次いで、ピンセットを用いて真皮層を外科的に除去した。50mL遠心管に皮膚組織を酵素処理した溶液とともに加え、ピペッティングすることで細胞をバラバラにした。次いで、細胞を含む溶液ごと、70μmセルストレイナー(BD falcon社製)を通し、さらに40μmセルストレイナーを通した(BD falcon社製)。次いで、1000rpmで3分間遠心することで、細胞を回収した。回収した細胞はHumedia-KG2培地(KURABO社製)に懸濁した。
(1)で調製した細胞懸濁液を1000rpmで3分間遠心し、上清を取り除いた。次いで、5mLのPBSに懸濁し、1000rpmで3分間遠心し、上清を取り除く操作を2回行うことで培地を完全に除去した。ここにPBSを加え、1×106cells/500mLになるように1.5mLチューブに分注した。次いで、Fluorescence activated cell sorting(FACS)用抗体としてFITC標識抗CD34抗体(BD社製)及びPE標識抗CD49f抗体(R&D Systems社製)を添加し、暗所、on iceで30分間染色した。染色後、1000rpmで、3分間遠心し上清を取り除いた。次いで、5mLのPBSに懸濁し、1000rpm、3分間遠心し、上清を取り除く操作を2回行うことでFACS用抗体を含む溶液を完全に除去した。死細胞の核染色を行うために、7-Amino-Actinomycin D(7-AAD)を添加した。次いで、30μmフィルター付きの試験管に通した後、自動細胞解析分離装置(FACS装置)(ベックマン・コールター社製)を用いて分析を行った。結果を図2示す。
また、図2の「4」の範囲にあたるCD34(+)、CD49f(-)細胞の存在率は0.66%であり、無視できるほど小さいと判断した。そのため、以降の実験において、CD34陽性(+)細胞(図2中の「1」及び「4」の範囲に分類された細胞)を用いるとした。
次いで、以下の手順でCD34陽性(+)細胞の回収を行った。全ての操作は氷上で行った。
(3-1)採取したマウス上皮細胞1.0~1.5×107cellsを含む細胞懸濁液を1000rpmで、3分間遠心した後、上清を除去した。次いで、300μLのMACS(Magnetic cell sorting)/FACS buffer(Miltenyl Biotec社製)を加えた。
(3-2)5mLチューブを3つ用意し、(3-1)で調製した細胞懸濁液をそれぞれに10~15μLずつ分注した。各チューブをチューブ1、チューブ2及びチューブ3とし、以下、「(4)各チューブに関する手順)」に記載の操作を行った。
(3-3)次いで、(3-2)の分注後、残った細胞懸濁液に3mLのMACS/FACS bufferを加え、1000rpmで3分間遠心し、上清を取り除いた。次いで、300μLのMACS/FACS bufferを加えた。その後、抗マウスCD34抗体(eBioscience社製)を30μL加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(3-4)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、300μLのMACS/FACS bufferに再懸濁した後、30μLのFITC標識抗ラットIgG抗体(Jackson Immuno Research社製)を加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(3-5)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで、3分間遠心し、上清を取り除く操作を2回行うことでFITC標識抗ラット抗体を完全に除去した。次いで、300μLのMACS/FACS bufferに再懸濁した後、30μLの抗FITC抗体結合マイクロビーズ(Miltenyl Biotec社製)を加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(3-6)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、500μLのMACS/FACS bufferに再懸濁した後、4℃で保管した。磁気細胞分離装置(MACS装置)(Miltenyl Biotec社製)でサンプルを流す前に、15μLのサンプルを15mLチューブに移動し、600μLまでMACS/FACS bufferを加えてメスアップした(以下、このサンプルを含むチューブを「チューブ4」と称する場合がある)。以下、「(4)各チューブに関する手順)」に記載の操作を行った。
(3-7)Miltenyi Biotec社の手順書に従って、(3-6)で調製したサンプルからラベリングした細胞とラベリングされなかった細胞とに分離した。
(3-8)ラベリングされなかった細胞懸濁液600μLを15mLチューブに回収し、4℃で保存した(以下、このラベリングされなかった細胞懸濁液を含むチューブを「チューブ5」と称する場合がある)。以下、「(4)各チューブに関する手順)」に記載の操作を行った。
(3-9)ラベリングされた細胞懸濁液400μLを15mLチューブに回収し、4℃で保存した(以下、このラベリングされた細胞懸濁液を含むチューブを「チューブ6」と称する場合がある)。以下、「(4)各チューブに関する手順)」に記載の操作を行った。
(4-1)チューブ1(未染色コントロールの調製)
チューブ1に600μLのMACS/FACS bufferを加えて、4℃で保存した。
(4-2-1)チューブ2の細胞懸濁液が50μLになるようにMACS/FACS bufferを加え、さらに5μLのFITC標識抗ラットIgG抗体を加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(4-2-2)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、50μLのMACS/FACS bufferに再懸濁した後、5μLの抗FITC抗体結合マイクロビーズを加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(4-2-3)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、600μLのMACS/FACS bufferを加えて、4℃で保存した。
(4-3-1)チューブ3の細胞懸濁液が50μLになるようにMACS/FACS bufferを加え、さらに5μLのラットIgGアイソタイプ抗体(PE標識ラットIgG抗体)(R&D Systems社製)を加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(4-3-2)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、50μLのMACS/FACS bufferに再懸濁した後、5μLのFITC標識抗ラットIgG抗体を加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(4-3-3)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、50μLのMACS/FACS bufferに再懸濁した後、5μLの抗FITC抗体結合マイクロビーズを加え、暗所にて4℃で30分間静置した。
(4-3-4)5mLのMACS/FACS bufferを加えた後、1000rpmで3分間遠心した。上清を取り除き、600μLのMACS/FACS bufferを加えて、4℃で保存した。
チューブ4に600μLのMACS/FACS bufferを加えて、4℃で保存した。
チューブ5に400μLのMACS/FACS bufferを加えて、4℃で保存した。
チューブ6に600μLのMACS/FACS bufferを加えて、4℃で保存した。
次いで、(4)で調製したチューブ1~6のFACS分析用の各サンプルを用いて、FACS装置を用いて分析し、蛍光強度ごとの細胞数をカウントした。結果を以下の表1及び図3A(ラベリングされた細胞のFACS解析結果のグラフ)に示す。
また、チューブ6の細胞懸濁液を用いて、CD34の免疫蛍光染色を行い、倒立型位相差蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX-71)を用いて観察した。結果を図3Bに示す。
また、図3Bから、細胞は培養皿上で接着し生存しており、細胞接着後もCD34の発現を維持していた。
以上のことから、マウス皮膚組織からCD34の発現が維持された毛包上皮幹細胞が単離できたことが確認された。
(1)上皮系細胞培養培地の調製
Humedia-KG2培地(KURABO社製)に、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum:FBS)(SIGMA社製)を5mL、L-グルタミン(和光純薬工業社製)を16mg、10ng/μLの組換えマウス繊維芽細胞成長因子2(Fibroblast growth factor 2:FGF2)(R&D Systems社製)を100μL、100μg/mLの血管内皮細胞成長因子A(Vascular Endothelial Growth Factor-A:VEGF-A)(R&D Systems社製)を10μL及び1mMのY-27632(和光純薬工業社製)を275μL加え、よく攪拌した。次いで、滅菌フィルターに通して、20ng/mLのFGF2、20ng/mLのVEGF-A及び5μMのY-27632を含むHumedia-KG2培地(以下、「上皮系細胞培養培地」と称する場合がある)を調製した。
「1.」で得られた8.0×104cellsの毛包上皮幹細胞を100μLの(1)で調製した上皮系細胞培養培地に懸濁して細胞懸濁液を調製した。次いで、細胞懸濁液を非接着96Uウェルプレート(住友ベークライト社製、曲率半径:4.5mm)の各ウェルに分注し、37℃で30分間以上24時間以下程度インキュベートし、重力によって細胞が培養容器の底面に沈殿し、細胞の集積体が形成されたのを確認した(図4参照)。
次いで、培地のみを静かに除去し、細胞の集積体の上からマトリゲル(登録商標)(なお、以下、「登録商標」との記載を省略する)(CORNING社製)を静かに加え、37℃で30分間インキュベートすることでゲルを硬化させてマトリゲルと毛包上皮幹細胞の集積体との混合物を得た。
次いで、マトリゲルと毛包上皮幹細胞の集積体との混合物に上皮系細胞培養培地を加え、14日間培養することで、細胞の密度が毛包上皮幹細胞の再生効率の維持に有用であるかどうかを評価した。経時的な(培養1、4、7、11及び14日目の)細胞の形態変化は倒立型位相差蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX-71)を用いて観察した。結果を図5に示す。
次いで、培養14日目の細胞を回収し、CD34の遺伝子発現量をRT-PCR法により、リアルタイムPCRシステムStep OneTM(Applied Biosystems社製)及びSYBR(登録商標) Green Real-Time PCR Master Mixes(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、測定した。手順は、SYBR(登録商標) Green Real-Time PCR Master Mixesのプロトコルに従って行った。また、以下の表2に示すプライマーを用いた。結果を図6に示す。図6において、後述の比較例1(低密度)でのCD34の遺伝子発現量を1としたときの、実施例1(高密度)での相対的なCD34の遺伝子発現量を示している。なお、図6に示す実施例1でのCD34の遺伝子発現量の考察は、後述する比較例1に記載する。
1.毛包上皮幹細胞の調製
実施例1の「1.」と同様の方法を用いて、毛包上皮幹細胞を調製した。
(1)上皮系細胞培養培地の調製
実施例1の「2.(1)」と同様の方法を用いて、上皮系細胞培養培地を調製した。
「1.」で得られた8.0×104cellsの毛包上皮幹細胞を20μLの(1)で調製した上皮系細胞培養培地に懸濁し、さらにマトリゲル20μLを加えて、合計40μLの細胞-ゲル混合液を調製した。次いで、細胞-ゲル混合液を24ウェルプレート(BD falcon社製)に滴下し、37℃で30分間インキュベートすることでマトリゲルを硬化させた(図4参照)。次いで、上皮系細胞培養培地を500μL加えて、14日間培養した(以下、「従来のマトリゲル包埋培養法」と称する場合がある)。対象として、マトリゲルで包埋せずに24ウェルプレート(BD falcon社製)に毛包上皮幹細胞を播種して、同様に14日間培養した(以下、「平面培養法」と称する場合がある)。経時的な(培養1、4、7、11及び14日目の)細胞の形態変化は倒立型位相差蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX-71)を用いて観察した。結果を図7A(平面培養法)及び図7B(従来のマトリゲル包埋培養法)に示す。
一方、図7A及び図7Bから、平面培養法で培養した毛包上皮幹細胞は、従来のマトリゲル包埋培養法で培養した毛包上皮幹細胞と比較して、細胞増殖が早かった。
試料として、培養前の毛包上皮幹細胞、並びに、従来のマトリゲル包埋培養法及び平面培養法で培養した培養14日目の毛包上皮幹細胞を用いた以外は、実施例1の「2.(5)」と同様の方法を用いて、CD34の遺伝子発現量を解析した。結果を図6及び図8に示す。図6において、比較例1(低密度)は、マトリゲル包埋培養法で培養した培養14日目の毛包上皮幹細胞でのCD34の遺伝子発現量を示す。また、図8において、平面培養法で培養した培養14日目の毛包上皮幹細胞でのCD34の遺伝子発現量を1としたときの、マトリゲル包埋培養法で培養した培養14日目の毛包上皮幹細胞及び培養前の毛包上皮幹細胞の相対的なCD34の遺伝子発現量を示している。
以上のことから、マトリゲルを用いて、上皮幹細胞を培養する場合には、細胞を均一に分散させた状態でマトリゲルを用いるよりも、細胞を一か所に集積させた後にマトリゲルを用いて培養したほうが機能維持に有効であることが明らかとなった。
1.毛包上皮幹細胞の調製
実施例1の「1.」と同様の方法を用いて、毛包上皮幹細胞を調製した。
図9は、酸素透過性細胞培養容器(ポリジメチルシロキサン(PDMS)スフェロイドチップ)の作製方法を示す概略工程図である。図9を参照しながら、酸素透過性細胞培養容器の作製方法について、以下に詳細を説明する。
まず、CADソフト、V Carve Pro 6.5を用いて、作製するスフェロイド容器のパターンをコンピューターで設計した。次いで、切削機を用いて、設計したパターンどおりにオレフィン系基板を切削することで、パターンをもつ凹鋳型を作製した。この凹鋳型にエポキシ樹脂(クリスタルリジン:日新レジン社製)を流しこみ、1日硬化させた。次いで、凹鋳型を離型することで、パターンをもつ凸鋳型を形成した。次いで、形成した凸鋳型を24ウェルプレート(BD falcon社製)の底面に固定し、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を流し込み、固化した。次いで、凸鋳型を離型することで、酸素透過性細胞培養容器として、PDMSに規則的なパターンが形成されたPDMSスフェロイドチップを作製した。得られたPDMSスフェロイドチップにおいて、ウェルの深さ(図9中の「H」)は0.5mm、ウェル開口部の直径(図9中の「Φ」)は1.0mm、ウェル開口部の中心部から隣接するウェル開口部の中心部までの距離(図9中の「P」)は1.5mm、曲率半径(図示せず)は0.5mmであった。
(1)上皮系細胞培養培地の調製
実施例1の「2.(1)」と同様の方法を用いて、上皮系細胞培養培地を調製した。
細胞培養容器として、「2.」で作製した酸素透過性細胞培養容器(PDMSスフェロイドチップ)を用いた以外は、実施例1の「2.(2)~(4)」と同様の方法を用いて、毛包上皮幹細胞を14日間培養した。経時的な(培養1、4、7、11及び14日目の)細胞の形態変化は倒立型位相差蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX-71)を用いて観察した。結果を図10に示す。
試料として、上記(2)で培養した培養14日目の毛包上皮幹細胞を用いた以外は、実施例1の「2.(5)」と同様の方法を用いて、CD34の遺伝子発現量を解析した。結果を図11に示す。図11において、上述の比較例1(低密度)でのCD34の遺伝子発現量を1としたときの、実施例1、実施例2及び後述する比較例2での相対的なCD34の遺伝子発現量を示している。なお、図11に示す実施例2でのCD34の遺伝子発現量の考察は、後述する比較例2に記載する。
1.毛包上皮幹細胞の調製
実施例1の「1.」と同様の方法を用いて、毛包上皮幹細胞を調製した。
実施例2の「2.」と同様の方法を用いて、酸素透過性細胞培養容器(PDMSスフェロイドチップ)を作製した。
3.毛包上皮幹細胞の培養
(1)上皮系細胞培養培地の調製
実施例1の「2.(1)」と同様の方法を用いて、上皮系細胞培養培地を調製した。
細胞培養容器として、「2.」で作製した酸素透過性細胞培養容器(PDMSスフェロイドチップ)を用いた以外は、比較例1の「2.(2)」に記載の従来のマトリゲル包埋培養法と同様の方法を用いて、毛包上皮幹細胞を14日間培養した(図12参照)。経時的な(培養1、4、7、11及び14日目の)細胞の形態変化は倒立型位相差蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX-71)を用いて観察した。結果を図13に示す。
試料として、上記(2)で培養した培養14日目の毛包上皮幹細胞を用いた以外は、実施例1の「2.(5)」と同様の方法を用いて、CD34の遺伝子発現量を解析した。結果を図11に示す。図11において、上述の比較例1(低密度)でのCD34の遺伝子発現量を1としたときの、実施例1、実施例2及び比較例2での相対的なCD34の遺伝子発現量を示している。
しかしながら、図11に示す比較例1及び比較例2でのCD34の遺伝子発現量の比較から、CD34の遺伝子発現量に大きな差が出ることが分かった。このことから、より酸素が豊富に供給される高酸素環境の方が、毛包上皮幹細胞の機能維持に有効であることが分かった。
一方、通常の培養環境下では、細胞は培地から酸素を受け取るが、その培地への酸素供給は培養上面の気液界面からのみであるため、物質収支が間に合わず酸素は培養とともに消費される。実施例2及び比較例2で用いられたPDMSスフェロイドチップは酸素透過性材料であるため、培養器全体から培地への酸素供給が可能となる。そのため、毛包上皮幹細胞を酸素透過性の高いPDMSスフェロイドチップで培養することで、培養培地への酸素供給を増加させ、細胞の増殖や機能維持に必要な十分なエネルギーを細胞が産生できるようになったのではないかと考えられる。
以上のことから、PDMSスフェロイドチップは毛包上皮幹細胞の培養に有用である可能性が示された。
Claims (4)
- 毛包上皮幹細胞が懸濁された細胞懸濁液を細胞培養容器に入れることにより、前記毛包上皮幹細胞を播種し、前記毛包上皮幹細胞が前記細胞培養容器の底面に積み重なって集まった集積体を形成させる集積工程と、
前記毛包上皮幹細胞の集積体に、前記集積体を懸濁することなく細胞外マトリックス成分を加え、前記細胞外マトリックス成分と前記毛包上皮幹細胞の集積体との混合物を作製する混合工程と、
前記混合物に培地を加えて培養する培養工程と、
を備える毛包上皮幹細胞の培養方法(上皮系細胞及び間葉系細胞を含む毛包原基を形成する方法を除く。)。 - 前記細胞外マトリックス成分がI型コラーゲンである請求項1に記載の毛包上皮幹細胞の培養方法。
- 前記細胞培養容器が酸素透過性を有する材質からなる請求項1又は2に記載の毛包上皮幹細胞の培養方法。
- 前記混合工程において、前記毛包上皮幹細胞の播種から10分間以上24時間以下の時点で前記集積体に前記細胞外マトリックス成分を加える、
請求項1乃至3のいずれかに記載の毛包上皮幹細胞の培養方法。
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