A.実施形態:
図1および図2は、本発明の一実施形態におけるカートリッジ100を示す斜視図である。図1には、斜め下方から見たときのカートリッジ100が示されている。図2には、斜め上方から見たときのカートリッジ100が示されている。図1および図2には、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向の3つの方向が示されている。図1に示したX方向、Y方向、Z方向は、図2以降に示されているX方向、Y方向、Z方向に対応している。
カートリッジ100は、液体供給口120(図4)を有するカートリッジ本体101と、カートリッジ本体101に対して液体供給口120を覆うように着脱自在に装着される保護部材102と、を備えている。カートリッジ本体101は、液体噴射装置500(図22)に着脱可能に装着される。カートリッジ本体101には、液体噴射装置500に供給される液体が収容されている。本実施形態では、カートリッジ本体101にはインクが収容されている。本実施形態のカートリッジ本体101は、いわゆる半密閉型のカートリッジであり、インクの消費にともなって、外部の空気が間欠的に内部に導入される構成を有している。なお、保護部材102のことを、保護キャップと呼ぶこともできる。
図3は、カートリッジ本体101の正面側を斜め上方から見たときの斜視図である。図4は、カートリッジ本体101の背面側を斜め下方から見たときの斜視図である。図5は、カートリッジ本体101の左側面図である。図6は、カートリッジ本体101の右側面図である。図7は、回路基板125の拡大図である。図8は、カートリッジ本体101の底面図である。
カートリッジ本体101は、7つの壁部111〜117によって構成される略多面体形状を有している(図3,4)。本明細書において、「壁部」は、平坦なものに限定されず、湾曲していてもよいし、屈曲部や段差部を有していてもよく、その表面に凹部や凸部、溝、傾斜面などを有していてもよい。
第1壁部111(図4,8)は、液体噴射装置500に装着されたときにカートリッジ本体101の底面を構成する壁部である。第1壁部111のことを、「第1面」とも呼ぶ。第2壁部112(図3,5)は、第1壁部111に対向する位置にあり、液体噴射装置500に装着されたときにカートリッジ本体101の上面を構成する壁部である。第2壁部112のことを、「第2面」とも呼ぶ。本実施形態において、壁部同士あるいは面同士が「対向する」とは、壁部同士あるいは面同士が互いに直接的に向き合っている状態と、壁部同意あるいは面同士の間に他のものが介在して間接的に向き合っている状態の両方を意味する。
第3壁部113(図3,5)は、第1壁部111と第2壁部112との間において延在し、第1壁部111と第2壁部112とに交差する壁部である。本実施形態において「延在する」とは、ある方向に切れ間なく連続して延びている状態を意味する。延在している状態には、ある方向に延びている途中において折れ曲がっている状態や、湾曲している状態も含まれる。また、本実施形態において、2つの壁部あるいは面が「交差する」とは、2つの壁部あるいは面同士が相互に実際に交差する状態と、一方の壁部あるいは面が延在している方向の先に他方の壁部あるいは面が位置している状態と、2つの壁部あるいは面のそれぞれの延在している方向同士が交差する状態と、のいずれかの状態であることを意味する。
第4壁部114(図4,6)は、第2壁部112から、第1壁部111側に向けて延在しており、第3壁部113と対向するとともに、第1壁部111と第2壁部112とに交差する壁部である。第5壁部115(図3)は、第1壁部111と第2壁部112と第3壁部113と第4壁部114に交差する壁部である。第6壁部116(図4)は、第5壁部115に対向し、第1壁部111と第2壁部112と第3壁部113と第4壁部114に交差する壁部である。第7壁部117(図4,6)は、第1壁部111と第4壁部114との間において斜めに延在し、第1壁部111と第2壁部112と第5壁部115と第6壁部116とに交差している壁部である。第7壁部117のことを、「回路基板載置面」とも呼ぶ。
本実施形態では、カートリッジ本体101において、第5壁部115によって構成されている面を「正面」と呼び、第6壁部116によって構成されている面を「背面」と呼ぶ。また、第5壁部115に正対したときに右側に位置する第4壁部114および第7壁部117によって構成される面を「右側面」と呼び、第5壁部115に正対したときに左側に位置する第3壁部113によって構成される面を「左側面」と呼ぶ。
各図に示したX方向は、第3壁部113から第4壁部114に向かう方向を示している。Y方向は、第6壁部116から第5壁部115に向かう方向を示している。Z方向は、第1壁部111から第2壁部112に向かう方向を示している。以下では、これらの方向において、矢印が指し示す方向を「+」で表し、矢印が指し示す方向と反対の方向を「−」で表す。そのため、例えば、+Z方向は、第1壁部111から第2壁部112に向かう方向であり、−Z方向は、第2壁部112から第1壁部111に向かう方向である。また、矢印が向く方向を特に区別しない場合には、単に、「X方向」、「Y方向」、「Z方向」と表す。また、以下では、カートリッジ本体101に関して「上」または「下」と呼ぶときは、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着された状態のときの重力方向を基準とする上下方向を意味している。カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着された状態において、X方向およびY方向は、水平に平行な方向であり、+Z方向は鉛直上向きの方向であり、−Z方向は鉛直下向きの方向である。
第1壁部111(図4,8)には、液体供給口120が設けられている。液体供給口120の詳細については後述する。液体供給口120の外周には、外周壁部121が設けられている。外周壁部121に囲まれた領域内において、液体供給口120の左側面側には、連通口122が設けられている。外周壁部121および連通口122の機能については後述する。
第1壁部111には、さらに、位置決め部123が設けられている。本実施形態では、位置決め部123は、+Z方向に向けて窪んでいる凹部として形成されている。位置決め部123には、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着される際に、液体噴射装置500側に設けられている突起部が嵌合する(詳細は後述)。本実施形態では、位置決め部123は、液体供給口120と回路基板125との間に設けられている。位置決め部123は、第1壁部111において、液体供給口120よりも回路基板125に近い位置に設けられている。このように、回路基板125に近い位置に位置決め部123が設けられていれば、回路基板125上の端子125tと液体噴射装置500側の端子632(図23)との位置ずれを抑制することができる。
第7壁部117(図4,6〜8)には、回路基板125が設けられている。回路基板125は、第7壁部117に沿って配置されており、斜め下方を向いている。本実施形態では、回路基板125は、第7壁部117から垂直に延びたボスを回路基板125に設けられた孔部に挿通させて熱カシメすることにより第7壁部117に固定されている。なお、回路基板125は、第7壁部117に接着されていてもよい。
回路基板125(図7)は、複数の端子125tを有している。本実施形態では、複数の端子125tがY方向に所定の間隔をあけて配列されている列が、回路基板125の表面に上下に2列、並列に形成されている。各端子125tは、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着されたときに液体噴射装置500側の対応する端子632のひとつに電気的に接続される。回路基板125において、各端子125tが液体噴射装置500側の端子632と電気的に導通する部位を「接触部CP」とも呼ぶ。つまり、回路基板125は、複数の接触部CPを有している。
液体噴射装置500は、回路基板125から、カートリッジ本体101に収容されているインクの色や残量などのインクに関する情報を取得する。本実施形態では、インクに関する情報は、回路基板125の裏面に設けられている記憶素子125s(図9)に記憶されている。
カートリッジ本体101(図3,4)には、4つの被係合部131〜134が設けられている。4つの被係合部131〜134は、保護部材102に設けられている係合部(後述)が係合可能な部位である。本実施形態では、Z方向に見たときに、4つの被係合部131〜134は、それぞれ第1壁部111の角部に位置している(図8)。
本実施形態では、第1被係合部131および第2被係合部132は、第1壁部111と第7壁部117とが交差している角部に設けられている(図4)。第1被係合部131および第2被係合部132は、カートリッジ本体101を+X方向側から見たときに、回路基板125の下側に位置しており、Y方向において、回路基板125の両側に位置している(図6)。第1被係合部131は、第5壁部115側に設けられており、第2被係合部132は、第6壁部116側に設けられている。
本実施形態では、第1被係合部131および第2被係合部132は、−X方向に窪み、+X方向に開口する凹部として形成されている。また、第1被係合部131は、+Y方向にも開口しており、第2被係合部132は、−Y方向にも開口している(図4,6)。第1被係合部131および第2被係合部132はそれぞれ、保護部材102の対応する係合部が接触可能な+Z方向を向く係合面131s,132sを有している。
本実施形態では、第3被係合部133および第4被係合部134は、第3壁部113の下端に設けられている(図3)。Y方向において、第3被係合部133は、第5壁部115側の端部に設けられており、第4被係合部134は、第6壁部116側の端部に設けられている。本実施形態では、第3被係合部133および第4被係合部134は、+X方向に窪み、−X方向に開口する凹部として構成されている。第3被係合部133は、+Y方向にも開口しており、第4被係合部134は、−Y方向にも開口している(図3,5)。第3被係合部133および第4被係合部134はそれぞれ、保護部材102の対応する係合部が接触可能な+Z方向を向く係合面133s,134sを有している。
第3壁部113(図3,5)には、リブ部135が設けられている。リブ部135は、第3壁部113の壁面から−X方向に突起し、第3壁部113の壁面に沿ってY方向に延びている。リブ部135は、液体噴射装置500に備えられたリブ受入部650(図24)に嵌まる。
第4壁部114(図4,6)には、嵌合部137が設けられている。本実施形態では、嵌合部137は、第4壁部114の壁面から+X方向に突起するリブ状の凸部として構成されている。嵌合部137の外周輪郭形状は、液体噴射装置500に設けられているレバー660の形状に対応している。嵌合部137は、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着される場合には、当該レバー660に係合する。
第5壁部115(図3)には、カートリッジ本体101の内部に空気を導入するための通気孔140が形成されている。通気孔140は、カートリッジ本体101の内部に連通する貫通孔である。カートリッジ本体101では、通気孔140を介して内部に空気が導入される(詳細は後述)。
第2壁部112(図3)には、ラベル145が貼付されている。ラベル145には、例えば、カートリッジ本体101の製造者や型番が表示される。ラベル145が貼付される位置は任意であり、ラベル145は、第2壁部112以外の壁部に貼付されてもよい。ラベル145は、例えば、第1壁部111や、第3壁部113、第4壁部114、第5壁部115、第6壁部116、第7壁部117のうちのひとつに貼付されてもよいし、7つの壁部111〜117のうちの2以上の壁部に跨がって貼付されてもよい。また、複数の壁部に複数のシールが貼付されてもよい。
図9は、カートリッジ本体101の分解斜視図である。カートリッジ本体101の外殻は、本体部材150と、蓋部材151と、で構成される。本体部材150は、+Y方向に開口している箱状の部材である。本体部材150の外壁部が、カートリッジ本体101の第1壁部111と、第2壁部112と、第3壁部113と、第4壁部114と、第6壁部116と、第7壁部117とを構成している。
蓋部材151は、板状の部材である。蓋部材151は、本体部材150の開口部を閉塞するように取り付けられてカートリッジ本体101の第5壁部115を構成する。本体部材150と蓋部材151とは、ポリプロピレン等の合成樹脂によって作製される。本体部材150の外壁面には、上述した回路基板125や、ラベル145が取り付けられる。また、蓋部材151には、上述した通気孔140が形成されている。
本体部材150の凹部は、インクを収容する液体収容部152を構成する。液体収容部152の第5壁部115側は、本体部材150と蓋部材151との間に配置されるシート部材153によって閉塞される。シート部材153は、例えば、ナイロンとポリプロピレンを含む材料等の合成樹脂など、可撓性を有する膜状の樹脂部材によって構成される。
シート部材153は、外周縁部153fと、本体部153bと、を有する。外周縁部153fは、枠状の平板な部位であり、本体部材150の開口端部に溶着または接着によって接合される。外周縁部153fには、貫通孔153hが形成されている。貫通孔153hは、後述するように、空気室170と空気導入口174とを連通する。本体部153bは、外周縁部153fによって囲まれているシート部材153の本体部位であり、外周縁部153fから第6壁部116側に全体が突出して、−Y方向に窪んでいる凹部を形成している。
液体収容部152には、液体収容部152内を所定の圧力状態にするための圧力調整機構155が設けられている。圧力調整機構155は、受圧板156と、付勢部材157と、を備える。受圧板156は、液体収容部152においてシート部材153の本体部153bに接触して配置される平板な板状部材である。受圧板156は、ポリプロピレン等の合成樹脂や、ステンレス等の金属によって構成される。受圧板156は、シート部材153の本体部153bの底に接合される。
付勢部材157は、例えば、コイルばねによって構成される。付勢部材157は、受圧板156と第6壁部116との間に配置され、液体収容部152内の容積が拡大される方向である+Y方向に受圧板156を付勢する。付勢部材157によって受圧板156が第5壁部115側へと押されることによって、受圧板156の外周縁においてシート部材153が撓み、シート部材153の凹部が第5壁部115側に潰れた状態になる。これによって、液体収容部152にインクが充填されているときには、液体収容部152内は負圧の状態となる。
液体収容部152の底面を構成している第1壁部111には、開口部160が設けられている。開口部160は、第1壁部111のほぼ中央の位置において第1壁部111をZ方向に貫通する貫通孔として形成されている。開口部160に、フィルター部161と、フォーム部162と、板バネ部163と、が下方から取り付けられることによって、液体供給口120が構成される。
図10は、液体供給口120の構成を説明するための概略断面図である。図10では、液体収容部152内における他の構造の図示は、便宜上、省略されている。フィルター部161は、開口部160を覆うように配置されており、カートリッジ本体101の外側において開口部160の周縁部に溶着されている。フィルター部161は、インクが透過可能な透液性を有する膜状の部材によって構成されている。フィルター部161は、例えば、織布や不織布、発泡性樹脂(フォーム)によって構成される。
フォーム部162は、フィルター部161の液体収容部152側の面上に配置されている。フォーム部162は、多孔質部材によって構成されており、内部に、インクが含浸する。フォーム部162は、インクを自身の内部において全体に拡散させつつ、フィルター部161に供給する。フォーム部162は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂により構成される。
板バネ部163は、金属板によって構成されており、液体収容部152とフォーム部162との間に配置されている。板バネ部163は、2枚の板バネが交差している形状を有している。板バネ部163は、上端が開口部160の内周面に形成された段差部に係合するように配置され、下端がフォーム部162に接触することによって、フィルター部161およびフォーム部162を−Z方向に付勢する。板バネ部163は、開口部160からフォーム部162へのインクの流通を妨げないような形状を有している。
液体供給口120のフィルター部161は、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着されたときには、接触領域ARにおいて、液体噴射装置500側の液体導入部620(図23)に接触する。液体収容部152のインクは、フィルター部161の接触領域ARを通過して、液体噴射装置500へと供給される。本実施形態において、液体供給口120とは、狭義にはこのインクが通過する接触領域ARのことを指す。
液体供給口120の外周には、外周壁部121が形成されている。カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着されたときには、外周壁部121が、液体噴射装置500に設けられているシール部622(図23)と接触し、液体供給口120の外周にシールラインが形成される。当該シールラインに囲まれた閉空間内には、液体供給口120とともに、連通口122が位置する。連通口122は、第1壁部111内に形成されている連通路166を介して空気室170(図9)に連通している。これによって、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着されているときに、シールラインに囲まれた閉空間と外部との圧力差が略一定に維持される。従って、当該閉空間内の圧力変動に起因する液体供給口120からのインクの漏洩が抑制される。
カートリッジ本体101では、シート部材153と第5壁部115との間の空間が、空気を収容する空気室170として機能する(図9)。空気室170には、第5壁部115に設けられている通気孔140の通気孔140を介して外部の大気が導入される。カートリッジ本体101には、液体収容部152におけるインクの消費にともなって、空気室170の空気を液体収容部152内に導入するための大気弁171が設けられている。大気弁171は、弁座173と、弁部材175と、コイルばね178と、を備える。
弁座173は、受圧板156とは干渉しないように、液体収容部152における第2壁部112と第4壁部114とが交わる角部に配置される。弁座173は、シート部材153側に凹部173cを有し、凹部173cの開口端面173tは、シート部材153の外周縁部153fの角部に気密に貼り付けられている。凹部173cは、シート部材153の貫通孔153hと連通している。弁座173の凹部173cの底部には、弁座173をY方向に貫通する空気導入口174が形成されている。弁座173は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂により構成される。
弁部材175は、弁体部176と、レバー部177と、を有する。弁体部176は、弁部材175の端部部位であり、弁座173の空気導入口174と対向する位置に配置される。レバー部177は、弁体部176から略L字状に延びている延伸部位である。レバー部177は、弁体部176から−Y方向に延びた後に屈曲して、受圧板156とY方向において対向する位置まで延びている。弁部材175は、弁体部176側を支点としてレバー部177が回転移動するように取り付けられている。弁部材175は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂によって構成される。弁部材175は、エラストマー等の弾性部材とポリプロピレン等の合成樹脂とを用いて2色成型により構成されてもよい。
コイルばね178は、弁部材175の弁体部176と第6壁部116との間に配置され、弁体部176を弁座173の空気導入口174に押しつけるように付勢する。コイルばね178に付勢されることによって、弁部材175の弁体部176は、弁座173の空気導入口174の周縁部に接触し、空気導入口174を気密に閉塞する。
図11は、カートリッジ本体101において外部の空気が取り入れられるメカニズムを説明するための図である。図11の上段、中段、下段にはそれぞれ、+Z方向側からカートリッジ本体101の内部を見たときの構造が模式的に示されている。図11では、便宜上、液体供給口120の図示は省略されている。
液体収容部152に規定量のインクが収容されている満タンの状態では、上述したように、付勢部材157によって、受圧板156が第5壁部115側に押圧されて、液体収容部152の容積が拡大された状態となる(図11の上段)。このとき、受圧板156は、第5壁部115に最も接近した位置に位置している。この状態においては、弁部材175の弁体部176によって弁座173の空気導入口174が閉塞されて、液体収容部152は空気室170に対して気密に封止されている。また、弁部材175のレバー部177は受圧板156から離間した位置にある。
開口部160を介して液体供給口120から液体噴射装置500にインクが供給され、液体収容部152内のインクが消費されていくと、受圧板156は第6壁部116側へと移動し、付勢部材157が第6壁部116側に押されることより、内部の負圧が大きくなっていく(図11の中段)。受圧板156が、弁部材175のレバー部177の先端部の位置まで到達し、レバー部177を第6壁部116側に押すと、弁部材175が回転移動して、弁体部176による空気導入口174の封止状態が解除され、大気弁171が開弁状態になる。これによって、空気室170の空気が液体収容部152に導入される。
液体収容部152内に空気が導入されると、付勢部材157により、受圧板156は第5壁部115側へと押し戻される(図11の下段)。そして、受圧板156が弁部材175のレバー部177から離間すると、コイルばね178の付勢力によって、空気導入口174が再び弁体部176に封止され、大気弁171が閉弁状態に戻る。
このように、カートリッジ本体101では、液体収容部152のインクの消費に伴って、液体収容部152内の負圧が大きくなったときには、一時的に大気弁171が開弁状態になる。そして、液体収容部152に空気が導入されて、液体収容部152内が適切な負圧状態になったときに、大気弁171が再び閉弁状態に戻る。これによって、液体収容部152内の圧力が適切な圧力範囲内に維持されるため、液体収容部152内の負圧が大きくなりすぎることによるインクの供給不良の発生が抑制される。
図12は、保護部材102の上面側を示す斜視図である。図13は、保護部材102の下面側を示す斜視図である。図14は、保護部材102の上面図である。図14には、参考のため、保護部材102がカートリッジ本体101に取り付けられたときの液体供給口120と外周壁部121と連通口122との位置を一点鎖線によって示した。図15は、保護部材102の正面図である。図16は、保護部材102の背面図である。図17は、保護部材102の左側面図である。図18は、保護部材102の右側面図である。図19は、保護部材102の下面図である。保護部材102の「上面」は、カートリッジ本体101が装着される側の面を意味しており、「下面」はその反対側の面を意味している。
保護部材102(図12,13)は、底壁部200と、4つの側壁部201,202,203,204と、レバー206と、を備える。保護部材102は、ポリプロピレンなどの合成樹脂によって作製される。
底壁部200は、略長方形形状を有する板状の部位である。底壁部200は、保護部材102がカートリッジ本体101に取り付けられた状態において、カートリッジ本体101の第1壁部111と対向する。以下では、保護部材102がカートリッジ本体101に取り付けられた状態のことを、「取付状態」という。図14に示すように、底壁部200は、取付状態において、液体供給口120を覆う。また、本実施形態では、底壁部200は、取付状態において、位置決め部123も覆う。底壁部200のことを、「底面」とも呼ぶ。
第1側壁部201および第2側壁部202(図12)はそれぞれ、底壁部200の長辺を構成している端部から+Z方向に延びる壁部である。本実施形態では、第1側壁部201は略長方形であり、第2側壁部202は、略台形である。第1側壁部201および第2側壁部202は、底壁部200の長辺に沿って、X方向に並列に延びている。第1側壁部201は、カートリッジ本体101の第5壁部115の下端部と対向し、第2側壁部202は、カートリッジ本体101の第6壁部116の下端部と対向する(図1,2)。
第3側壁部203(図12)は、底壁部200の短辺を構成している+X方向側の端部から+Z方向に延びる壁部である。取付状態において、第3側壁部203は、Z方向においてカートリッジ本体101の第7壁部117の下端に対向する位置に設けられている(図1)。第3側壁部203は、底壁部200と交差し、取付状態において回路基板125側に位置する。第3側壁部203のことを、「基板側側面」とも呼ぶ。第4側壁部204(図12)は、底壁部200の短辺を構成している−X方向側の端部から+Z方向に延びている壁部である。取付状態において、第4側壁部204は、Z方向において、カートリッジ本体101における第1壁部111の−X方向側の端部と対向する位置に設けられている(図2)。第3側壁部203および第4側壁部204の高さは、いずれも、第1側壁部201および第2側壁部202の高さよりも低い。
第4側壁部204のY方向における両端は、第1側壁部201および第2側壁部202の下端部に連結されている。一方、第3側壁部203のY方向における両端は、第1側壁部201および第2側壁部202から離間している。つまり、第1側壁部201と第3側壁部203との間、および、第2側壁部202と第3側壁部203との間、には、それぞれ隙間が設けられている(図12,15,16)。これらの隙間は、保護部材102をカートリッジ本体101に装着する際に、保護部材102がこれらの隙間付近において弾性変形することを許容して取り付けやすくするために設けられている。
図20は、取付状態において回路基板125に対して垂直な方向から第3側壁部203を見た図である。取付状態において回路基板125に対して垂直な方向から第3側壁部203を見たときのカートリッジ100の状態を、以下では、「基板観察状態」という。第3側壁部203は、基板観察状態において回路基板125を間に挟むように設けられた一対の突出部207,208を備えている。突出部207,208は、それぞれ、+Z方向に向けて突出している。突出部207,208は、それぞれ、第3側壁部203のY方向の両端部に設けられている。これら一対の突出部207,208は、基板観察状態において回路基板125の一対の側面SS1,SS1を挟む一対の端面EF1,EF2を備えている。回路基板125の一対の側面SS1,SS1とは、回路基板125の+Y方向側の側面と−Y方向側の側面である。基板観察状態では、一対の端面EF1,EF2と回路基板125の一対の側面SS1,SS2との間には、それぞれ隙間がある。そして、基板観察状態においてカートリッジ本体101の第1壁部111(図4参照)に近い側の一対の端面EF1、EF2間の距離D1よりも、カートリッジ本体101の第2壁部112(図4参照)に近い側の一対の端面EF1、EF2間の距離D2の方が大きい。すなわち、基板観察状態において−Z方向側の一対の端面EF1,EF2間の距離D1よりも、+Z方向側の一対の端面EF1,EF2間の距離の方が大きい。本実施形態では、距離D1は、回路基板125のY方向に沿った幅よりも小さい。また、距離D2は、回路基板125のY方向に沿った幅よりも大きい。このような構成では、基板観察状態において、回路基板125は、保護部材102によって覆われず、露出した状態になる。
図14に示すように、一対の突出部207、208のカートリッジ本体101と対向する側の面、つまり、−X方向側の面には、取付状態においてカートリッジ本体101と係合する係合部207t,208tが設けられている。係合部207t,208tは、それぞれ、−X方向に突出した突起状の形状を有しており、−Z方向を向く平面である係合面207s,208sを有している(図12)。図19に示すように、底壁部200には、Z方向において係合面207s,208sに対向する位置に貫通孔h1,h2が形成されており、これらの貫通孔h1,h2を通じて、−Z方向側から係合面207s,208sを観察できる。取付状態では、第1係合部207tは、カートリッジ本体101の第1被係合部131に係合し、第2係合部208tは、カートリッジ本体101の第2被係合部132に係合する。
図20に示すように、本実施形態では、基板観察状態において、一対の突出部207,208の一対の端面EF1,EF2は、それぞれ直線SL1,SL2を含んでいる。本実施形態における「直線」とは、二点を結ぶ最短の線のことを意味する。本実施形態において、2つの直線SL1,SL2の成す角は、基板観察状態において90度以上である。より具体的には、基板観察状態において2つの直線SL1,SL2が成す角のうち、回路基板125を挟む角の成す角A1が、90度以上である。図20に示した直線SL1,SL2は、端面EF1,EF2に含まれる直線SL1,SL2を、図の便宜上、それぞれ延長した直線である。なお、一対の端面EF1,EF2は、直線SL1,SL2以外に、基板観察状態において曲線を含んでもよい。直線SL1,SL2がそれぞれZ方向に存在する範囲は、少なくとも一部が重複しており、本実施形態では、それぞれ同じ範囲に存在する。直線SL1の+Y方向からの立ち上がり角度A2と、直線SL2の−Y方向からの立ち上がり角度A3は、これらの角度の差の絶対値が30度以内であることが好ましく、10度以内であることがより好ましい。本実施形態では角度A2,A3の大きさは同じである。なお、2つの直線SL1,SL2の成す角は、基板観察状態において90度未満であってもよい。
保護部材102の第3側壁部203と対向する側、すなわち、第4側壁部204側には、保護部材102をカートリッジ本体101から取り外すためのレバー206が設けられている。このレバー206は、第4側壁部204よりも−X方向側に設けられている(図15,16)。
レバー206は、板状部210と、連結部211と、操作部212と、を有する(図12)。板状部210は、Y方向およびZ方向の二方向に延在しており、取付状態において、カートリッジ本体101の第3壁部113の下端部に対向する。
板状部210のカートリッジ本体101と対向する側の面には、第3係合部213と第4係合部214とが設けられている。第3係合部213と第4係合部214とはそれぞれ、板状部210の壁面から+X方向に突出する突起部として形成されており、−Z方向を向く平面である係合面213s,214sを有している。取付状態において、第3係合部213は、カートリッジ本体101の第3被係合部133に係合し、第4係合部214は、第4被係合部134に係合する。
板状部210は、連結部211を介して、底壁部200に連結されている(図14,15)。本実施形態では、連結部211のY方向における幅は、底壁部200の幅およびレバー206の幅よりも小さい。連結部211は、底壁部200と第4側壁部204との間の角部から、−X方向かつ+Z方向に延びて、板状部210の下端に連結されている。本実施形態では、連結部211は、弾性変形が可能であり、板状部210は、連結部211の湾曲部を支点として、所定の角度範囲において回転動作が可能である。
操作部212は、板状部210のZ方向における略中央部分から−X方向かつ+Z方向に延びる壁部として形成されている(図15,16)。操作部212のY方向における幅は、板状部210のY方向における幅とほぼ同じに構成されている。操作部212は、ユーザーが保護部材102をカートリッジ本体101から取り外す際に利用される。ユーザーは、操作部212に指をかけて、板状部210を連結部211を支点として−Z方向側かつ−X方向側に回転動作させることによって、保護部材102をカートリッジ本体101から取り外すことができる。ユーザーが指をかけやすいように、操作部212の上面側に滑り止めとして機能するリブ状の凸部が形成されている。なお、レバー206の構成はこのような構成に限られない。例えば、操作部212は、板状部210の+Z方向の端部に設けられていてもよい。また、係合部213,214が操作部212に設けられ、操作部212が連結部211に直接的に接続された構成、つまり、板状部210が省略された構成であってもよい。
4つの側壁部201〜204に囲まれている底壁部200の上面側の凹部には、シール部220が配置されている(図12)。シール部220は、底壁部200や側壁部201〜204よりも軟らかく、弾性を有する樹脂材料によって構成されている。シール部220は、例えば、エラストマーなどによって構成される。シール部220は、枠状部位221と、仕切壁部222と、を有する(図12,14)。
枠状部位221は、カートリッジ本体101の第1壁部111に設けられている外周壁部121に対応する略四角枠形状を有する(図14)。取付状態において、枠状部位221が外周壁部121の−Z方向側の端面に当接することによって、液体供給口120の外周にシールラインが形成される。これによって、カートリッジ100の外部にインクが漏洩してしまうことが抑制される。
仕切壁部222は、枠状部位221内の領域を2つに仕切るように、Y方向に沿って延びる壁部である(図14)。仕切壁部222は、枠状部位221よりも+Z方向に突出している(図12)。取付状態において、仕切壁部222の上端面は、液体供給口120を構成するフィルター部161に接触する。取付状態において、液体供給口120からインクが保護部材102側に漏れた場合であっても、その漏れたインクは、仕切壁部222の上端面とフィルター部161とが接触している部分を通じて、カートリッジ本体101内に戻ることが可能である。
図14に示すように、枠状部位221の枠内の領域のうち、仕切壁部222よって仕切られた+X方向側の領域に、液体供給口120が位置し、−X方向側の領域に、連通口122が位置している。従って、たとえ液体供給口120からインクが漏洩したとしても、そのインクが連通口122に流入して連通口122を閉塞することが抑制される。
図21は、カートリッジ本体101に対する保護部材102の取付手順を示す説明図である。つまり、図21は、カートリッジ100の製造方法を示している。まず、第1工程では、保護部材102の第1突出部207および第2突出部208に設けられた係合部207t,208tを、それぞれ、カートリッジ本体101に設けられた第1被係合部131と第2被係合部132とに引っかける。このとき、カートリッジ本体101の第7壁部117の壁面に、保護部材102の第1突出部207および第2突出部208を接触させた状態で、保護部材102を第7壁部117の壁面に沿って、下方へと滑らせていくと、保護部材102の係合部207t,208tを、それぞれ、カートリッジ本体101に設けられた第1被係合部131と第2被係合部132とに容易に引っかけることができる。
第2工程では、保護部材102の係合部207t,208tを、それぞれ、カートリッジ本体101に設けられた第1被係合部131と第2被係合部132とに引っかけた状態において、第1係合部207tおよび第2係合部208tを支点として、保護部材102のレバー206側をカートリッジ本体101に向かって回転させる。すると、レバー206に設けられた第3係合部213および第4係合部214が、カートリッジ本体101の第3被係合部133および第4被係合部134に嵌まる。このようにして、保護部材102の4つの係合部207t,208t,213,214がそれぞれ被係合部131〜134のうちの対応するひとつに係合し、保護部材102がカートリッジ本体101に取り付けられた状態になる。
保護部材102がカートリッジ本体101に取り付けられると、液体供給口120内の板バネ部163の付勢力およびシール部220の弾性力によって保護部材102は−Z方向側に押される。すると、カートリッジ本体101側の係合面131s,132s,133s,134sと、保護部材102側の係合面207s,208s,213s,214sとが接触して、保護部材102がカートリッジ本体101に安定して固定される。なお、本実施形態における「取付状態」とは、保護部材102の4つの係合部207t,208t,213,214がカートリッジ本体101の被係合部131〜134に嵌まった状態であればよく、カートリッジ本体101側の係合面131s,132s,133s,134sと、保護部材102側の係合面207s,208s,213s,214sとが接触した状態でなくてもよい。
保護部材102をカートリッジ本体101から取り外す際には、レバー206の操作部212を−Z方向側かつ−X方向側に押すことにより、レバー206の板状部210が連結部211を支点として回転移動し、板状部210に設けられた第3係合部213および第4係合部214が、カートリッジ本体101の第1被係合部131および第2被係合部132から外れる。そうすると、保護部材102とカートリッジ本体101とは、図21の第1工程に示すような状態になる。そしてそのまま、保護部材102を+X方向に移動させることにより、保護部材102の第1係合部207tおよび第2係合部208tが、カートリッジ本体101の第3被係合部133および第4被係合部134から外れ、保護部材102がカートリッジ本体101から取り外される。
図22は、カートリッジ本体101が装着される液体噴射装置500の一例を示す斜視図である。本実施形態における液体噴射装置500は、インクジェットプリンターである。液体噴射装置500には、ユーザーによって、保護部材102が取り外されたカートリッジ本体101が着脱可能に装着される。以下では、カートリッジ本体101が液体噴射装置500に装着された状態のことを、単に、「装着状態」という。
液体噴射装置500は、制御部510と、キャリッジ520と、を備える。制御部510は、CPUとメモリーを有するコンピューターによって構成される。制御部510のCPUは、メモリーに記憶されたプログラムを実行することにより、液体噴射装置500の各部を制御して、印刷処理などを実行する。
キャリッジ520は、ホルダー530と、印刷ヘッド540と、を備える。ホルダー530は、複数のカートリッジ本体101を並列に装着可能に構成されている。本実施形態では、カートリッジ本体101はY方向に一列に配列された状態でホルダー530に装着される。
印刷ヘッド540は、ホルダー530の下面に設けられている。印刷ヘッド540は、ホルダー530に装着されているカートリッジ本体101からインクの供給を受ける。印刷ヘッド540は、制御部510からの制御信号に基づいて、インクを印刷媒体に向けて吐出する。
液体噴射装置500は、キャリッジ520を直線的に往復移動させるためのキャリッジ駆動機構を備える(図示は省略)。キャリッジ駆動機構は、キャリッジ520が移動するレールと、駆動力を発生するモーターと、その駆動力を伝達するプーリーと、を備える。キャリッジ駆動機構は、制御部510の制御下において、キャリッジ520を往復移動させる。キャリッジ520が往復移動する方向が主走査方向である。本実施形態では、主走査方向は、X方向に平行な方向である。液体噴射装置500は、その他に、印刷媒体を搬送する搬送機構を備える(図示は省略)。搬送機構は、搬送モーターと、搬送ローラーと、を備え、制御部510の制御下において駆動する。液体噴射装置500では、印刷媒体は、搬送機構によって、キャリッジ520の搬送路の下方において、主走査方向にほぼ直交する方向に搬送される。印刷媒体の搬送方向が副走査方向である。本実施形態では、副走査方向は、Y方向である。
制御部510とキャリッジ520とは、フレキシブルケーブル517を介して電気的に接続されている。制御部510は、フレキシブルケーブル517を介して、カートリッジ本体101の回路基板125と、インクに関する情報などをやりとりする。また、制御部510は、フレキシブルケーブル517を介して、印刷ヘッド540に対して、インクの吐出を制御する制御信号を送信する。
図23は、ホルダー530の平面図である。図24は、ホルダー530にカートリッジ本体101が取り付けられた状態の断面図である。ホルダー530は、+Z方向が開口している略直方体形状の箱体として構成されている。本実施形態では、ホルダー530には、異なる色インクを収容する複数のカートリッジ本体101が装着される。より具体的には、ブラック、イエロ、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアンおよびライトシアンの各色のインクを収容する6つのカートリッジ本体101が装着される。
ホルダー530内の空間は、X方向に沿った複数の仕切り壁607によって、複数のカートリッジ本体101を受け入れ可能な複数の領域(スロット)に分割されている。仕切り壁607は、各スロットにカートリッジ本体101を挿入する際のガイドとして機能する。各スロットには、液体導入部620と、電極部630と、突起部640と、リブ受入部650(図24)と、レバー660と、が1つずつ設けられている。
液体導入部620は、+Z方向に開口する略楕円形状の開口部として構成されている。液体導入部620は、2つの隣り合う仕切り壁607に挟まれる位置に設けられている。ホルダー530にカートリッジ本体101が装着されたときには、液体導入部620が液体供給口120のフィルター部161に接触する(図24)。カートリッジ本体101のインクは、液体導入部620を介して、ホルダー530内に形成されている流路621に流入し、印刷ヘッド540へと供給される。
液体導入部620の周囲には、シール部622が設けられている。シール部622は、例えば、弾性ゴムによって形成される。シール部622は、カートリッジ本体101が装着されたときに、カートリッジ本体101の外周壁部121の端面と接触して、液体導入部620を囲むシールラインを形成する。
電極部630は、複数の端子632が配列されることによって構成されている。複数の端子632のそれぞれは、カートリッジ本体101の回路基板125における対応するひとつの端子125tの接触部CPに電気的に接触する。各端子632は、液体噴射装置500のフレキシブルケーブル517と電気的に接続されている。
突起部640は、液体導入部620と電極部630との間に設けられている(図24)。突起部640は、ホルダー530の底部から+Z方向に突起している。カートリッジ本体101がホルダー530に装着されたときには、突起部640は、カートリッジ本体101の第1壁部111に設けられている位置決め部123に嵌まる。これによって、カートリッジ本体101のホルダー530内における位置が規定される。
リブ受入部650(図24)は、ホルダー530の内壁の凹部として設けられている。カートリッジ本体101がホルダー530に装着されたときには、リブ部135がリブ受入部650に嵌まる。
レバー660は、電極部630の上方に位置している。レバー660は、所定の角度範囲で回転動作可能なように設けられている。装着状態において、レバー660の下端部は、カートリッジ本体101に設けられた嵌合部137に係合する。
ホルダー530にカートリッジ本体101が装着されるときには、まず、カートリッジ本体101のリブ部135がリブ受入部650に挿入される。その後、リブ部135を支点として、カートリッジ本体101の第7壁部117側を下方に回転移動させて、突起部640を位置決め部123に嵌合させつつ、回路基板125の各端子125tを電極部630の対応する端子632に接触させる。その上で、レバー660を、カートリッジ本体101の嵌合部137に係合させる。すると、液体供給口120が液体導入部620に接触し、カートリッジ本体101から印刷ヘッド540にインクが供給可能になる。
以上で説明した本実施形態では、図20に示すように、カートリッジ本体101に取り付けられる保護部材102の第3側壁部203は、基板観察状態において回路基板125を間に挟むように設けられた一対の突出部207,208を備えている。これらの突出部207,208は、基板観察状態において回路基板125の一対の側面SS1,SS1を挟む一対の端面EF1,EF2を備え、一対の端面EF1、EF2と回路基板125の一対の側面SS1,SS2との間には、それぞれ隙間がある。そして、本実施形態では、基板観察状態においてカートリッジ本体101の第1壁部111(第1面)に近い側の一対の端面EF1、EF2間の距離D1よりも、第2壁部112(第2面)に近い側の一対の端面EF1、EF2間の距離D2の方が大きい。すなわち、基板観察状態において−Z方向側の一対の端面EF1,EF2間の距離D1よりも、+Z方向側の一対の端面EF1,EF2間の距離D2の方が大きい。そのため、本実施形態の保護部材102によれば、カートリッジ本体101に設けられた液体供給口120を保護しつつ、保護部材102の取り外し時において保護部材102が回路基板125に接触することを抑制できる。この結果、保護部材102の取り外し時に、保護部材102が回路基板125に接触することによって、回路基板125上の端子125tや接触部CPが損傷することを抑制できる。
また、本実施形態では、一対の突出部207,208のカートリッジ本体101と対向する側の面に、カートリッジ本体101と係合する係合部207t,208tが設けられている。このような構成では、保護部材102の取り外し時に、これらの係合部のうちの一方が支点となって保護部材102をひねるように動作させられる場合がある。しかし、本実施形態では、保護部材102の第3側壁部203が上記のように構成されているので、係合部を中心にひねるようにして保護部材102が取り外された場合でも、保護部材102が回路基板125に接触することを抑制できる。
図25は、比較例における保護部材102Aをカートリッジ本体101から取り外す様子を示す図であり、図26は、本実施形態における保護部材102をカートリッジ本体101から取り外す様子を示す図である。図25には、比較例として、保護部材102Aの一対の端面EF1,EF2の距離が一定、つまり、図20における距離D1と距離D2とが同じ長さの保護部材102Aを示している。図25,26では、カートリッジ本体101と回路基板125とを、回路基板125の表面に平行な方向から見た状態を簡易的に示している。図25に示した比較例では、取付状態にある保護部材102Aをカートリッジ本体101から取り外す際に、第1突出部207Aおよび第2突出部208Aのうちの一方の突出部を支点としてひねるように保護部材102を移動させた際に、他方の突出部の先端部が回路基板125の裏面側の角部に引っかかり、回路基板125がカートリッジ本体101から引き剥がされる可能性がある。これに対して、本実施形態の保護部材102は、図26に示すように、カートリッジ本体101の第1壁部111(第1面)に近い側の一対の端面EF1、EF2間の距離D1よりも、第2壁部112(第2面)に近い側の一対の端面EF1、EF2間の距離D2の方が大きくなっている。そのため、保護部材102の取り外し時に、第1突出部207および第2突出部208のうちの一方の突出部を支点として保護部材102をひねるように動作させたとしても、他方の突出部の先端部が回路基板125の裏面側の角部に引っかかる可能性が低い。従って、本実施形態によれば、保護部材102の取り外し時に、回路基板125がカートリッジ本体101から脱落することを効果的に抑制することができる。特に本実施形態では、保護部材102の一対の端面EF1,EF2に含まれる一対の直線SL1,SL2(図20)の成す角が基板観察状態において90度以上であるため、突出部の先端部が回路基板125の裏面側の角部に引っかかる可能性がより低くなる。
また、本実施形態では、保護部材102の第3側壁部203と対向する側に、保護部材102をカートリッジ本体101から取り外すためのレバー206が設けられている。そのため、レバー206を操作することによって保護部材102をカートリッジ本体101から容易に取り外すことができる。
また、本実施形態では、基板観察状態において、回路基板125が保護部材102から露出している。そのため、カートリッジ100の製造時において、保護部材102をカートリッジ本体101に装着させたまま、回路基板125を第7壁部117に容易に取り付けることができる。
B.変形例:
<変形例1>
上記実施形態では、保護部材102の突出部207,208のカートリッジ本体101と対向する側の面に、カートリッジ本体101と係合する係合部207t,208tが設けられている。しかし、これらの係合部207t,208tは、突出部207,208のカートリッジ本体101と対向する側の面以外の部分に設けられてもよい。例えば、第1側壁部201や第2側壁部202の第3側壁部203側の端部に係合部が設けられていてもよい。また、第3側壁部203のうち、突出部207,208が設けられていない部分に係合部が設けられてもよい。
<変形例2>
上記実施形態では、保護部材102の第3側壁部203と対向する側に、保護部材102をカートリッジ本体101から取り外すためのレバー206が設けられている。これに対して、保護部材102は、レバー206を他の位置に備えてもよく、また、レバー206を備えていなくてもよい。保護部材102がレバー206を備えていない場合、例えば、保護部材102をカートリッジ本体101から取り外すために、専用あるいは汎用の工具を用いて保護部材102を取り外してもよい。また、カートリッジ本体101側に、保護部材102を取り外すためのレバーを設けることも可能である。
<変形例3>
保護部材102の形態は上記実施形態に限定されない。例えば、保護部材102は、第1側壁部201や第2側壁部202を備えていなくてもよい。また、第3側壁部203は、底壁部200から離間した位置に設けられていてもよい。また、上記実施形態では、保護部材102は、X方向に沿った長さがY方向に沿った長さよりも長くなっているが、X方向に沿った長さとY方向に沿った長さとは同じでもよいし、Y方向に沿った長さの方がX方向に沿った長さよりも長くてもよい。
<変形例4>
上記実施形態において、保護部材102の第3側壁部203は、底壁部200の端部から+Z方向に延びている。これに対して、第3側壁部203は、底壁部200から斜め上方に向けて延びていてもよい。
<変形例5>
上記実施形態において、カートリッジ本体101の回路基板125は、傾斜した第7壁部117に設けられている。これに対して、回路基板125は、取付状態において、保護部材102側を向く面に設けられてもよいし、保護部材102の第3側壁部203に平行な面に設けられてもよい。
<変形例6>
上記実施形態においては、保護部材102の各係合部207t,208t,213,214は凸部として構成されており、カートリッジ本体101の各被係合部131〜134は凹部として構成されている。これに対して、例えば、保護部材102の各係合部207t,208t,213,214が凹部として構成され、カートリッジ本体101の各被係合部131〜134が凸部として構成されてもよい。また、各係合部207t,208t,213,214と各被係合部131〜134とは係合面同士の面接触によって係合しなくてもよい。各係合部207t,208t,213,214と各被係合部131〜134とは、例えば、互いの線接触や点接触によって係合してもよい。
<変形例7>
上記実施形態においては、カートリッジ本体101に1つの液体供給口120が設けられている。これに対して、カートリッジ本体101に2つ以上の液体供給口が設けられてもよい。2つ以上の液体供給口が設けられた場合、保護部材102は、2つ以上の液体供給口を覆うように構成されてもよい。2つ以上の液体供給口が設けられた場合、回路基板は、1つまたは2つ以上設けられてもよい。2つ以上の液体供給口が設けられた場合、突出部207,208は3つ以上、あるいは2対以上設けられてもよい。
<変形例8>
上記実施形態において、カートリッジ本体101は、7つの壁部111〜117を有している。これに対して、カートリッジ本体101は、7つの壁部111〜117を有していなくてもよく、例えば、6つの壁部を有する略直方体形状によって構成されていてもよい。その他に、カートリッジ本体101は、円柱形状や、略三角錐形状を有していてもよい。
<変形例9>
上記実施形態では、カートリッジ本体101は半密閉型のカートリッジとして構成されている。これに対して、カートリッジ本体101は、例えば、インクの消費にともなって、随時、外部の空気が取り込まれる大気開放型のカートリッジとして構成されていてもよい。また、カートリッジ本体101は、インクが収容された可撓性の袋を内部に有する密閉型のカートリッジとして構成されていてもよい。
<変形例10>
上記実施形態における液体噴射装置500は、主走査方向に往復移動するキャリッジ520のホルダー530にカートリッジ本体101が装着される、いわゆるオンキャリッジタイプである。これに対して、カートリッジ本体101は、いわゆるオフキャリッジタイプの液体噴射装置に搭載されてもよい。オフキャリッジタイプの液体噴射装置では、カートリッジ本体101は、キャリッジから離間して設けられた不動のホルダーに装着され、ホルダーに接続されているフレキシブルチューブを介して、キャリッジが有する印刷ヘッドにインクを供給する。
<変形例11>
本発明は、インク以外の他の液体を収容するカートリッジや、そのカートリッジに取り付けられる保護部材、そのカートリッジが装着される任意の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の装置に用いられるカートリッジおよびその保護部材として本発明は適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置。
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置。
(6)潤滑油の噴射装置。
(7)樹脂液の噴射装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体噴射装置。
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が消費できるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態や変形例の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。