以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。また、図中において、第1方向である後述する絶縁性樹脂体の長さ方向をL、第2方向である絶縁性樹脂体の高さ方向をT、第3方向である絶縁性樹脂体の幅方向をWで示している。第2方向は、第1方向と直交し、第3方向は、第1方向および第2方向の各々と直交している。
図1は、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサの斜視図である。図2は、図1に示すII−II線に沿った固体電解コンデンサの断面図である。図3は、図2に示すIII部を拡大して示す断面図である。図4は、図2に示すIV−IV線に沿った固体電解コンデンサの断面図である。図1から図4を参照して、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサ100について説明する。
図1から図4に示すように、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサ100は、略直方体状の外形を有している。固体電解コンデンサ100の外形寸法は、たとえば、長さ方向Lの寸法が3.5mm、幅方向Wの寸法が2.8mm、高さ方向Tの寸法1.9mmである。
固体電解コンデンサ100は、複数のコンデンサ素子170と、引出導体層180と、絶縁性樹脂体110と、第1外部電極120と、第2外部電極130とを備える。本発明の一実施の形態においては、固体電解コンデンサ100は、複数のコンデンサ素子170を備えているが、これに限られず、固体電解コンデンサ100は、少なくとも1つのコンデンサ素子170を備えていればよい。
絶縁性樹脂体110には、複数のコンデンサ素子170および引出導体層180が埋設されている。絶縁性樹脂体110は、略直方体状の外形を有している。絶縁性樹脂体110は、高さ方向Tにおいて相対する第1主面110aおよび第2主面110b、幅方向Wにおいて相対する第1側面110cおよび第2側面110d、並びに、長さ方向Lにおいて相対する第1端面110eおよび第2端面110fを有している。
上記のように絶縁性樹脂体110は、略直方体状の外形を有しているが、角部および稜線部に丸みがつけられている。角部は、絶縁性樹脂体110の3面が交わる部分であり、稜線部は、絶縁性樹脂体110の2面が交わる部分である。なお、絶縁性樹脂体110の詳細な形状については、図5から図7を用いて後述する。
第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c、第2側面110d、第1端面110eおよび第2端面110fの少なくともいずれか1つの面には、凹凸が形成されていてもよい。
絶縁性樹脂体110は、第2絶縁樹脂部としての基板111と、基板111上に設けられた第1絶縁樹脂部としてのモールド部112とから構成されている。
基板111は、たとえば、ガラスエポキシ基板であり、FRP(Fiber Reinforced Plastics)などの複合材料で構成されている。外部を向く基板111の表面は、絶縁性樹脂体110の第2主面110bを規定する。基板111を構成する材料として、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂中に、カーボン、ガラスまたはシリカなどで構成された織布または不織布が入れられた複合材料を用いることができる。基板111の厚さは、たとえば、100μmである。
モールド部112は、フィラーとしてガラスまたはSiの酸化物が分散混合されたエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂で構成されている。モールド部112は、複数のコンデンサ素子170および引出導体層180を覆うように基板111上に設けられている。基板111が位置する側と反対側に位置するモールド部112の表面は、絶縁性樹脂体110の第1主面110aを規定する。
絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々には、複数の導電性粒子が存在している。導電性粒子は、Pdを含んでいる。当該導電性粒子は、後述する第1外部電極120および第2外部電極130を形成する際に、めっきの核となる触媒金属として作用する。絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々の表面粗さ(Ra)が、2.2μm以上8.3μm以下であることが好ましい。
複数のコンデンサ素子170の各々は、陽極部140と、誘電体層150と、陰極部160とを含む。陽極部140は、長さ方向Lに延在する金属層141からなる。本実施の形態においては、陽極部140は、金属層141に設けられた第1めっき膜142および第2めっき膜143を含む。
金属層141は、複数の凹部が設けられた外表面を有している。金属層141の外表面は、多孔質状になっている。金属層141の外表面が多孔質状になっていることにより、金属層141の表面積が大きくなっている。なお、金属層141の表面および裏面の両方が多孔質状である場合に限られず、金属層141の表面および裏面の一方のみが多孔質状であってもよい。たとえば、絶縁性樹脂体110の第2主面110bと向かい合う側の金属層141の裏面のみが多孔質状であってもよい。
金属層141は、Alを含んでいる。金属層141は、たとえば多孔質状の外表面を有するアルミ箔で構成されている。
金属層141の第2端面110f寄りの端面は、第1めっき膜142に覆われている。第1めっき膜142は、第2めっき膜143に覆われている。第1めっき膜142は、Znを含んでいる。第2めっき膜143は、Niを含んでいる。なお、第1めっき膜142および第2めっき膜143は、必ずしも設けられていなくてもよい。
誘電体層150は、金属層141の外表面に設けられている。誘電体層150は、たとえばAlの酸化物で構成されている。具体的には、誘電体層150は、金属層141の外表面が酸化処理されて形成されたAlの酸化物で構成されている。
陰極部160は、固体電解質層161および集電体層を有している。固体電解質層161は、誘電体層150の外表面の一部に設けられている。陰極部160側とは反対側に位置する、金属層141の第2端面110f寄りの外表面に設けられた誘電体層150の外表面には、固体電解質層161は設けられていない。この部分の誘電体層150の外表面は、後述する絶縁性樹脂層151に覆われている。
図3に示すように、固体電解質層161は、金属層141の複数の凹部を埋めるように設けられている。ただし、固体電解質層161によって誘電体層150の外表面の上記一部が覆われていればよく、固体電解質層161によって埋められていない金属層141の凹部が存在していてもよい。固体電解質層161は、たとえば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などの導電性高分子を含むポリマーで構成されている。
集電体層は、固体電解質層161の外表面に設けられている。集電体層は、固体電解質層161の外表面に設けられた第1集電体層162と、第1集電体層162の外表面に設けられた第2集電体層163とから構成されている。第1集電体層162は、Cを含んでいる。第2集電体層163は、Agを含んでいる。
なお、集電体層は、必ずしも第2集電体層163を含んでいなくてもよい。集電体層が第2集電体層163を含んでいる場合、第2集電体層163は、Al、CuおよびNiなどのAg以外の金属の少なくとも1種の金属と、Agとを含んでいてもよい。若しくは、集電体層は、第1集電体層162と、第2集電体層163と、第2集電体層163の外表面に設けられた第3集電体層とから構成されていてもよい。この場合、第2集電体層163および第3集電体層の各々は、Al、CuおよびNiなどのAg以外の金属の少なくとも1種の金属と、Agとを含んでいる。
集電体層を構成する各層のうち、少なくとも第1集電体層162以外の層は、上記の金属を含有するペーストで構成されている。ペーストを構成する基材としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂またはエラストマーなどを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、または、テフロン(登録商標)樹脂などを用いることができる。エラストマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタン樹脂、または、ポリエステル樹脂などのゴム状弾性を有する材料を用いることができる。上記の基材は、複数種の材料の混合物であってもよい。第1集電体層162は、Cを含有する上記のペーストで構成されていてもよいし、グラファイトで構成されていてもよい。
集電体層を構成する各層が、熱可塑性樹脂またはエラストマーを基材とするペーストで構成されている場合、モールド部112の形成前の製造過程および形成時において加わる、衝撃、機械的ストレス、および、材料の熱膨張率の違いによって生じる応力を緩和し、亀裂が誘電体層150に生じるのを防ぐことにより、固体電解コンデンサの漏れ電流の増大を防止することが可能となる。
集電体層を構成する各層が熱硬化性樹脂を基材とするペーストで構成されている場合、集電体層を構成する各層が熱可塑性樹脂またはエラストマーを基材とするペーストで構成されている場合に比較して、固体電解コンデンサの漏れ電流が大きくなる傾向にあるが、固体電解コンデンサのESRの熱履歴による劣化を抑制することができる。なお、たとえば、第1集電体層162が熱可塑性樹脂またはエラストマーを基材とするペーストで構成され、第2集電体層163が熱硬化性樹脂を基材とするペーストで構成されていてもよい。集電体層を構成する各層の基材の組み合わせは、適宜選択可能である。
上記のように、陰極部160側とは反対側に位置して固体電解質層161が設けられていない、金属層141の第2端面110f寄りの外表面に設けられた誘電体層150の外表面は、絶縁性樹脂層151に覆われている。
図3に示すように、絶縁性樹脂層151は、金属層141の第2端面110f寄りの外表面の複数の凹部を埋めるように設けられている。絶縁性樹脂層151は、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂などの絶縁性樹脂を含んでいる。
長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層151の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.025倍以上0.5倍以下であることが好ましい。これにより、固体電解コンデンサ100の静電容量を維持してESRを低減しつつ、信頼性を確保することができる。
絶縁性樹脂層151の長さが、絶縁性樹脂体110の長さの0.025倍よりも小さくなる場合には、後述する製造工程(工程S10)にて、チップの端面に露出している金属層141の端面にめっきする際に、めっき液が、誘電体層150の外表面に沿って絶縁性樹脂体110の内部に浸入して短絡が発生する可能性がある。一方、絶縁性樹脂層151の長さが、絶縁性樹脂体110の長さの0.5倍よりも大きくなる場合には、固体電解コンデンサの静電容量が小さくなるとともにESRが高くなる場合がある。
絶縁性樹脂層151の厚さは、5μm以上30μm以下であることが好ましい。これにより、固体電解コンデンサ100の静電容量を維持してESRを低減しつつ、信頼性を確保することができる。
絶縁性樹脂層151の厚さが5μmより小さくなる場合には、後述する製造工程(工程S10)にて、チップの端面に露出している金属層141の端面にめっきする際に、めっき液が誘電体層150の外表面に沿って絶縁性樹脂体110の内部に浸入することを効果的に抑制することができなくなる場合がある。一方、絶縁性樹脂層151の厚さが30μmより厚い場合、複数のコンデンサ素子を積層した際に、隣接するコンデンサ素子同士の集電体層の接続が不安定になって固体電解コンデンサの信頼性が低下する場合がある。
図2に示すように、複数のコンデンサ素子170は、高さ方向Tに積層されている。互いに隣接しているコンデンサ素子170同士の集電体層が、接続導体層190によって互いに接続されている。幅方向Wにおける接続導体層190の幅は、幅方向Wにおける金属層141の幅と同等である。接続導体層190は、Agを含んでいる。
引出導体層180は、絶縁性樹脂体110の一部である基板111上に設けられている。引出導体層180は、絶縁性樹脂体110の内部において、第2主面110b寄りに位置している。
幅方向Wにおける引出導体層180の幅は、幅方向Wにおける金属層141の幅と同等である。長さ方向Lにおける引出導体層180の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.3倍以上0.8倍以下であることが好ましい。これにより、固体電解コンデンサのESRを低減しつつ、固体電解コンデンサの信頼性を確保することができる。
長さ方向Lにおける引出導体層180の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.3倍未満の場合、固体電解コンデンサのESRが30mΩより高くなってしまう。一方、長さ方向Lにおける引出導体層180の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.8倍より長い場合、引出導体層180と第2外部電極130との間で短絡する可能性が生じ、固体電解コンデンサの信頼性が低下する。
引出導体層180の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。これにより、固体電解コンデンサ100のESRを低減しつつ固体電解コンデンサ100を小型化できる。引出導体層180の厚さが10μm未満である場合、固体電解コンデンサのESRが30mΩより高くなる。引出導体層180の厚さが100μmより厚い場合、固体電解コンデンサの小型化が妨げられる。
引出導体層180と接続導体層190とが接続されている部分において最も第1端面110e寄りの位置と、第1端面110eとの間の長さ方向Lにおける距離は、87.5μm以上1750μm以下であることが好ましい。これにより、固体電解コンデンサ100を小型化しつつ、固体電解コンデンサの信頼性を確保することができる。
上記距離が87.5μm未満である場合、後述する製造工程(工程S10)において金属層141の端面にめっきする際のめっき液が、引出導体層180の外表面に沿って浸入した際に、めっき液がコンデンサ素子まで到達する可能性が生じ、固体電解コンデンサの信頼性が低下する。上記距離が1750μmより長い場合、固体電解コンデンサの小型化が妨げられる。
引出導体層180は、Cuを含んでいる。本実施の形態においては、引出導体層180の第1端面110e寄りの端面は、第3めっき膜181に覆われている。第3めっき膜181は、Niを含んでいる。なお、第3めっき膜181は、必ずしも設けられていなくてもよい。
引出導体層180は、複数のコンデンサ素子170のうちの1つのコンデンサ素子170の集電体層と接続されている。具体的には、複数のコンデンサ素子170のうち高さ方向Tにおいて第2主面110b寄りの一端側に位置するコンデンサ素子170が、引出導体層180に隣接している。引出導体層180に隣接しているコンデンサ素子170のみの集電体層が、接続導体層190によって引出導体層180と接続されている。
第1外部電極120は、絶縁性樹脂体110の第1端面110eから、第1主面110a、第2主面110b、第1側面110cおよび第2側面110dの各々に亘って設けられている。第1外部電極120は、引出導体層180を介して複数のコンデンサ素子170の各々の陰極部160と電気的に接続されている。
第1外部電極120は、絶縁性樹脂体110の第1端面110e上に設けられた少なくとも1層のめっき層で構成されている。具体的には、第1外部電極120は、絶縁性樹脂体110の第1端面110e上に設けられた第1めっき層121と、第1めっき層121上に設けられた第2めっき層122と、第2めっき層122上に設けられた第3めっき層123とから構成されている。第1めっき層121は、Cuを含んでいる。第2めっき層122は、Niを含んでいる。第3めっき層123は、Snを含んでいる。
第1外部電極120は、絶縁性樹脂体110の第1端面110eにおいて引出導体層180と直接的または間接的に接続されている。本実施の形態においては、第1外部電極120は、第3めっき膜181を互いの間に挟んで引出導体層180と接続されている。すなわち、第1外部電極120と引出導体層180との間に、第3めっき膜181が設けられている。
第2外部電極130は、絶縁性樹脂体110の第2端面110fから、第1主面110a、第2主面110b、第1側面110cおよび第2側面110dの各々に亘って設けられている。第2外部電極130は、複数のコンデンサ素子170の各々の陽極部140と電気的に接続されている。
第2外部電極130は、絶縁性樹脂体110の第2端面110f上に設けられた少なくとも1層のめっき層で構成されている。具体的には、第2外部電極130は、絶縁性樹脂体110の第2端面110f上に設けられた第1めっき層131と、第1めっき層131上に設けられた第2めっき層132と、第2めっき層132上に設けられた第3めっき層133とから構成されている。第1めっき層131は、Cuを含んでいる。第2めっき層132は、Niを含んでいる。第3めっき層133は、Snを含んでいる。
第2外部電極130は、絶縁性樹脂体110の第2端面110fにおいて複数のコンデンサ素子170の各々の金属層141と直接的または間接的に接続されている。第2外部電極130は、第1めっき膜142および第2めっき膜143を互いの間に挟んで複数のコンデンサ素子170の各々の金属層141と接続されている。すなわち、複数のコンデンサ素子170の各々の金属層141と第2外部電極130との間に、第1めっき膜142および第2めっき膜143が設けられている。
図5は、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサの第1端面の正面図である。図6は、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサの第2端面の正面図である。図7は、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサの底面図である。なお、図7においては、絶縁性樹脂体110を第2主面110b側から見て、引出導体層180が視認可能であり、引出導体層180を破線にて示している。図5から図7を用いて、固体電解コンデンサ100に含まれる絶縁性樹脂体110の形状について説明する。
図5から図7に示すように、絶縁性樹脂体110は、第1端面110eと第1主面110aとを繋ぐ第1接続部1101、第1端面110eと第2主面110bとを繋ぐ第2接続部1102、第2端面110fと第1主面110aとを繋ぐ第3接続部1103、および第2端面110fと第2主面110bとを繋ぐ第4接続部1104を有する。
絶縁性樹脂体110は、第1端面110eと第1側面110cとを繋ぐ第5接続部1105、第1端面110eと第2側面110dとを繋ぐ第6接続部1106、第2端面110fと第1側面110cとを繋ぐ第7接続部1107、および第2端面110fと第2側面110dとを繋ぐ第8接続部1108を有する。
第1接続部1101および第3接続部1103は、モールド部112に設けられている。第2接続部1102および第4接続部1104は、基板111に設けられている。
第1接続部1101、第2接続部1102、第3接続部1103、および第4接続部1104の各々は、第1面取り部を有する。第1面取り部は、第1側面110c側から第2側面110d側に亘って設けられることが好ましい。なお、第1端面110eと第1主面110aおよび第2主面110bとが部分的に交差する場合には、第1接続部1101、第2接続部1102は、第1端面110eと第1主面110aおよび第2主面110bとの稜線部を含む。第2端面110fと第1主面110aおよび第2主面110bとが部分的に交差する場合には、第3接続部1103、および第4接続部1104は、第2端面110fと第1主面110aおよび第2主面110bとの稜線部を含む。
第1面取り部は、図2に示すように、幅方向Wから見た断面視において、湾曲形状を有する。より具体的には、第1面取り部は、略円弧形状を有する。
ここで、図2に示すように、第1面取り部の曲率半径をrとし、曲率中心Oを中心とする曲率半径rの円上の点の座標を(x,y)とし、曲率中心Oの座標を(a,b)とした場合に、曲率中心Oを中心とする曲率半径rの円を以下の式(1)で示すことができる。
(x−a)2+(y−b)2=r2・・・式(1)
第1接続部1101において上記円上の任意の3点(たとえば図2中に示す、A点、B点、およびC点の座標の各々を、上記の式(1)に代入して、これらを連立方程式として解くことにより、上記曲率半径r、および曲率中心の座標(a,b)を算出することができる。
なお、上記A点、B点、およびC点の座標を測定する際には、絶縁性樹脂体110を幅方向Wの寸法の約1/2の位置まで研磨することにより、長さ方向Lおよび高さ方向Tに沿う断面を露出させて、その断面をSEM(Scanning Electron Microscope)等を用いて撮像することにより測定することができる。5つのコンデンサ素子から得られる曲率半径の平均値を固体電解コンデンサ100の曲率半径rとすることが好ましい。
第2絶縁樹脂部としての基板111は、第1絶縁樹脂部としてのモールド部112よりも固くなっており、第1接続部1101および第3接続部1103における第1面取り部は、第2接続部1102および第4接続部1104における第1面取り部よりも丸みを帯びている。より具体的には、第1接続部1101および第3接続部1103における第1面取り部の曲率半径は、第2接続部1102および第4接続部1104における第1面取り部の曲率半径よりも大きくなっている。
なお、モールド部112と基板111との固さの違いから第1接続部1101および第3接続部1103における第1面取り部の曲率半径は、第2接続部1102および第4接続部1104における第1面取り部の曲率半径よりも大きくなっている場合を例示して説明したが、これに限定されず、固さの違いによらず、第1面取り部の曲率半径は、第2接続部1102および第4接続部1104における第1面取り部の曲率半径よりも大きくなっていてもよい。たとえば、絶縁性樹脂体110がモールド部のみによって構成される場合であっても、第1面取り部の曲率半径は、第2接続部1102および第4接続部1104における第1面取り部の曲率半径よりも大きくなっていてもよい。
なお、第1面取り部は、幅方向Wから見た場合に、湾曲形状に限定されず、屈曲形状であってもよい。この場合においては、幅方向Wから見た場合に、長さ方向Lおよび高さ方向Tに沿う断面は、各内角が90度以上となる多角形形状を有する。
また、第5接続部1105、第6接続部1106、第7接続部1107、および第8接続部1108の各々は、第2面取り部を有する。第2面取り部は、図4に示すように、高さ方向Tから見た断面視において、湾曲形状を有する。より具体的には、第2面取り部は、略円弧形状を有する。
第2面取り部の曲率半径も、第1面取り部の曲率半径と同様の方法にて測定することができる。この場合には、測定に際して、絶縁性樹脂体110を高さ方向Tの寸法の約1/2の位置まで研磨することにより、長さ方向Lおよび幅方向Wに沿う断面を露出させる。
第2面取り部は、高さT方向から見た場合に、湾曲形状に限定されず、屈曲形状であってもよい。この場合においては、第2方向から見た場合に、長さ方向Lおよび幅方向Wに沿う断面は、各内角が90度以上となる多角形形状を有する。
第1外部電極120は、第1接続部1101、第2接続部1102、第5接続部1105、および第6接続部1106を跨いで、第1端面110eから、第1主面110aおよび第2主面110bならびに第1側面110cおよび第2側面110dに至るように設けられている。すなわち、第1外部電極120は、第1接続部1101および第2接続部1102に設けられた第1面取り部、ならびに第5接続部1105および第6接続部1106に設けられた第2面取り部に沿うように設けられる。
第1外部電極120が第1面取り部および第2面取り部に沿うことにより、第1端面110eと、第1主面110aおよび第2主面110bとの境界部において第1外部電極120に作用する応力を緩和できるとともに、第1端面110e側における絶縁性樹脂体110の表面に対する第1外部電極120の密着性を向上させることができる。これにより、第1外部電極120の密着強度が増加し、形成時または製造後において、第1外部電極120が絶縁性樹脂体110から剥がれることを抑制することができる。この結果、固体電解コンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
第2外部電極130は、第3接続部1103、第4接続部1104、第7接続部1107、および第8接続部1108を跨いで、第2端面110fから、第1主面110aおよび第2主面110bならびに第1側面110cおよび第2側面110dに至るように設けられている。すなわち第2外部電極130は、第3接続部1103および第4接続部1104に設けられた第1面取り部、ならびに、第7接続部1107および第8接続部1108に設けられた第2面取り部を沿うように設けられる。
第2外部電極130が第1面取り部および第2面取り部を沿うことにより、第2端面110fと、第1主面110aおよび第2主面110bとの境界部において第2外部電極130に作用する応力を緩和できるとともに、第2端面110f側における絶縁性樹脂体110の表面に対する第2外部電極130の密着性を向上させることができる。これにより、第2外部電極130の密着強度が増加し、形成時または製造後において、第2外部電極130が絶縁性樹脂体110から剥がれることを抑制することができる。この結果、固体電解コンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
また、絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々の表面粗さ(Ra)が、2.2μm以上8.3μm以下であることが好ましい。これにより、第1外部電極120および第2外部電極130の第1端面110eおよび第2端面110fに対する全体的な密着性を向上させることができる。
絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々は、表面が粗く、微細な凹凸が形成されている。Cuを含む第1めっき層121および第1めっき層131の各々は、この微細な凹凸に入り込むように形成されており、アンカー効果によって、絶縁性樹脂体110との付着力が高められている。このことによっても、第1外部電極120および第2外部電極130が絶縁性樹脂体110から剥がれることを抑制することができる。
固体電解コンデンサ100を実装基板に半田等の接合部材を用いて実装した場合には、実装基板から遠い側に位置する絶縁性樹脂体の主面側において、実装基板に近い側に位置する絶縁性樹脂体の主面側よりも、接合部材からの引張力が大きく作用する。
ここで、上述のように、第1接続部1101および第3接続部1103における第1面取り部が、基板111側に位置する第2接続部1102および第4接続部1104における第1面取り部よりも丸みを帯びていた構成とすることにより、基板111側を実装基板に実装した際に、より丸みを帯びる第1接続部1101および第3接続部1103における第1面取り部によって、接合部材からの引張力を大きく緩和させることができる。これにより、リフロー等によってクラックが発生することを抑制でき、実装性および実装時の電気特性を確保することができる。この結果、固体電解コンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
(固体電解コンデンサの製造方法)
図8は、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサの製造フローを示す図である。図8を参照して、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサ100の製造方法について説明する。
図8に示すように、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサ100を製造するに際して、まず、金属層141の外表面に誘電体層150を設ける(工程S1)。本実施の形態においては、金属層141であるアルミ箔をアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して酸化処理することにより、誘電体層150となるAlの酸化物を形成する。なお、すでにAlの酸化物が形成されているアルミ箔を切断して金属層141として用いる場合には、切断面にAlの酸化物を形成するために、切断後の金属層141をアジピン酸アンモニウム水溶液に再度浸漬して酸化処理する。
次に、金属層141の一部をマスキングする(工程S2)。このマスキングは、次工程で行なわれる固体電解質層161の形成領域を規定するために行なわれる。具体的には、金属層141の外表面の一部に、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂などの絶縁性樹脂からなるマスキング剤を塗布する。この工程により形成されたマスキング部の一部が、絶縁性樹脂層151となる。
次に、誘電体層150の外表面の一部に固体電解質層161を設ける(工程S3)。具体的には、工程S2において形成されたマスキング部によって規定された固体電解質層161の形成領域に位置する誘電体層150の外表面に、固体電解質分散体溶液を付着させて固体電解質層161を形成する。
次に、固体電解質層161の外表面に集電体層を設ける(工程S4)。具体的には、固体電解質層161の外表面に、Cを塗布することにより第1集電体層162を形成する。第1集電体層162の外表面に、Agを塗布することにより第2集電体層163を形成する。
第2集電体層163は、必ずしも形成されなくてもよい。第2集電体層163は、Al、CuおよびNiなどのAg以外の金属の少なくとも1種の金属と、Agとを含んでいてもよい。若しくは、第2集電体層163の外表面に第3集電体層がさらに形成されていてもよい。この場合、第2集電体層163および第3集電体層の各々は、Al、CuおよびNiなどのAg以外の金属の少なくとも1種の金属と、Agとを含んでいる。
集電体層を構成する各層が、上記の金属を含有するペーストで構成されている場合は、ペーストを塗布することにより各層を形成する。ペーストを構成する基材が熱硬化性樹脂または熱硬化性エラストマーの場合は、ペースト塗布後に加熱してペーストを熱硬化させる。第1集電体層162がグラファイトで構成されている場合には、グラファイトを塗布することにより第1集電体層162を形成する。
次に、引出導体層180が設けられた基板111上にコンデンサ素子170を積層する(工程S5)。具体的には、Agペーストなどの導電性接着剤によって、コンデンサ素子170の集電体層と引出導体層180とを接続するとともに、互いに隣接するコンデンサ素子170同士の集電体層を接続する。
次に、基板111とコンデンサ素子170とを熱圧着する(工程S6)。加熱されて硬化した導電性接着剤が、接続導体層190となる。
次に、熱圧着された基板111とコンデンサ素子170とを絶縁性樹脂でモールドする(工程S7)。具体的には、モールド法により、基板111を上金型に装着し、フィラーとしてガラスまたはSiの酸化物が分散混合されたエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂を下金型のキャビティ内で加熱溶融させた状態で上金型と下金型とを型締めし、絶縁性樹脂を固化させることによってモールド部112を形成する。
次に、工程S2において形成されたマスキング部を分断するように、基板111およびコンデンサ素子170を切断する(工程S8)。具体的には、押し切り、ダイシングまたはレーザカットによって、モールドされた状態の基板111およびコンデンサ素子170を切断する。この工程により、絶縁性樹脂体110を含むチップが形成される。
次に、チップをバレル研磨する(工程S9)。具体的には、チップが、バレルと呼ばれる小箱内に研磨材とともに封入され、当該バレルを回転させることにより、チップの研磨が行なわれる。これにより、チップの角部および稜線部に丸みがつけられる。
より具体的には、バレル研磨によって、第1端面110eと第1主面110aとを繋ぐ第1接続部1101、第1端面110eと第2主面110bとを繋ぐ第2接続部1102、第2端面110fと第1主面110aとを繋ぐ第3接続部1103、および第2端面110fと第2主面110bとを繋ぐ第4接続部1104に上述の第1面取り部が形成される。また、第1端面110eと第1側面110cとを繋ぐ第5接続部1105、第1端面110eと第2側面110dとを繋ぐ第6接続部1106、第2端面110fと第1側面110cとを繋ぐ第7接続部1107、および第2端面110fと第2側面110dとを繋ぐ第8接続部1108に上述の第2面取り部が形成される。
次に、チップの端面に露出している金属層141の端面にめっきする(工程S10)。具体的には、アルカリ処理剤によってチップの油分を除去する。アルカリエッチングすることにより、金属層141の端面上の酸化膜を除去する。スマット除去処理により、金属層141の端面上のスマットを除去する。ジンケート処理によりZnを置換析出させて金属層141の端面に第1めっき膜142を形成する。無電解Niめっき処理により、第1めっき膜142上に第2めっき膜143を形成する。このとき、引出導体層180の端面に第3めっき膜181が形成される。
次に、導電性を付与する液体をチップの両端部に付着させる(工程S11)。具体的には、チップの両端部以外の部分をマスキングする。チップの両端部の表面に対する導電性を付与する液体の濡れ性を向上するとともに、導電性を付与する液体に含まれる導電性粒子がチップの両端部に吸着されやすくするために、界面活性剤によってチップを脱脂する。脱脂力を兼ね備えるコンディショナーとして、導電性を付与する液体の種類に対応して、アニオン、カチオン、両性およびノニオンのいずれかの種類の界面活性剤が選択されて用いられる。
なお、導電性を付与する液体に含まれる導電性粒子は、めっきの核となる触媒金属として、Pdを含んでいるが、これに限られず、Pd、Sn、AgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含んでいればよい。導電性を付与する液体は、上記の金属のイオン含む溶液、または、上記の金属のコロイド溶液である。
導電性を付与する液体が両端部に付着したチップを、水または溶剤で洗浄した後、乾燥させることにより、チップの両端部に導電膜を形成する。これにより、絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々に、複数の導電性粒子が存在した状態となる。
次に、チップの両端部にめっきして第1外部電極120および第2外部電極130を形成する(工程S12)。具体的には、バレルめっき装置を用いて、電解めっきにより、チップの両端部の導電膜上に、Cuを含む第1めっき層121および第1めっき層131を形成する。第1めっき層121および第1めっき層131は、チップの両端部に付着した導電性粒子を核として形成される。
第1めっき層121は、上記第1面取り部および第2面取り部に沿うように、第1端面110eから、第1主面110aおよび第2主面110bならびに第1側面110cおよび第2側面110dに至るように設けられている。
第1めっき層131は、上記第1面取り部および第2面取り部に沿うように、第2端面110fから、第1主面110aおよび第2主面110bならびに第1側面110cおよび第2側面110dに至るように設けられている。
続いて、同様に、電解めっきにより、第1めっき層121上に、Niを含む第2めっき層122を形成し、第1めっき層131上に、Niを含む第2めっき層132を形成する。続いて、同様に、電解めっきにより、第2めっき層122上にSnを含む第3めっき層123を形成し、第2めっき層132上に、Snを含む第3めっき層133を形成する。
次に、チップにマーキングする(工程S13)。具体的には、第1外部電極120と第2外部電極130とを識別可能にするためのマークを、絶縁性樹脂体110の第1主面110aまたは第2主面110bに、レーザーマーカなどによってマーキングする。
再び図7に示すように、本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、絶縁性樹脂体110を第2主面110b側から見て、引出導体層180が視認可能である。そのため、固体電解コンデンサ100の製造工程において、工程S12にて第1外部電極120および第2外部電極130を形成した後、工程S13にて、絶縁性樹脂体110を第2主面110b側から見て、引出導体層180の配置を確認することによって第1外部電極120と第2外部電極130とを識別することができる。その識別された結果に基づいて、第1外部電極120と第2外部電極130とを識別可能にするためのマークを、絶縁性樹脂体110の第1主面110aまたは第2主面110bにマーキングすることができる。
仮に、絶縁性樹脂体110を第2主面110b側から見て、引出導体層180が視認不可能である場合、絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fが露出している状態にある、第1外部電極120および第2外部電極130を形成する前に、マーキングをしておかなければならない。第1外部電極120および第2外部電極130を形成する前にマーキングした場合、工程S11において行なわれるマイクロエッチングによってマークが消えてしまい、第1外部電極120と第2外部電極130とを識別できなくなる。そのため、この場合は、マイクロエッチングによって消えないマーキングをする必要があり、固体電解コンデンサの製造条件の制約が増える。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、絶縁性樹脂体110を第2主面110b側から見て、引出導体層180が視認可能であるため、固体電解コンデンサの製造条件の自由度を高くすることができる。
上述した一連の工程を経ることにより、固体電解コンデンサ100を製造することができる。なお、工程S13は、必ずしも行なわれなくてもよい。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、第1外部電極120および第2外部電極130の各々がめっき層で構成されていることにより、特許文献1に記載された固体電解コンデンサのように、陽極端子および陰極端子の各々を、樹脂の外側を引き回さなくてもよくなる。その結果、固体電解コンデンサ100のESRおよびESLを低減しつつ、固体電解コンデンサ100を小型化できる。また、固体電解コンデンサ100の単位体積当たりの静電容量を高くすることができる。
また、本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、第2外部電極130が第2端面110fにおいて金属層141と接続されており、陰極部160側とは反対側に位置して固体電解質層161が設けられていない、金属層141の第2端面110f寄りの外表面に設けられた誘電体層150の外表面が、絶縁性樹脂層151に覆われていることにより、特許文献1に記載された固体電解コンデンサのように、陽極端子を、樹脂の外側に引き出さなくてもよくなる。その結果、固体電解コンデンサ100の信頼性を維持しつつ固体電解コンデンサ100を小型化できる。
さらに、第1外部電極120および第2外部電極130の各々が、Niめっき層およびSnめっき層を有することにより、固体電解コンデンサ100の実装性が向上されている。具体的には、Niめっき層は、Cuめっき層が固体電解コンデンサ100を実装する際の半田によって浸食されることを防止する機能を有する。Snめっき層は、固体電解コンデンサ100を実装する際の半田との濡れ性を向上させ、固体電解コンデンサ100の実装を容易にする機能を有する。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々の表面粗さ(Ra)が、2.2μm以上8.3μm以下であることにより、第1外部電極120および第2外部電極130の絶縁性樹脂体110からの剥離を抑制できる。
図9は、本発明の一実施の形態に係る固体電解コンデンサの長さ方向の端部の一部を光学顕微鏡で観察した画像である。
図9に示すように、絶縁性樹脂体110の第1端面110eおよび第2端面110fの各々は、表面が粗く、微細な凹凸が形成されている。Cuを含む第1めっき層121および第1めっき層131の各々は、この微細な凹凸に入り込むように形成されており、アンカー効果によって、絶縁性樹脂体110との付着力が高められている。その結果、第1外部電極120および第2外部電極130の絶縁性樹脂体110からの剥離が抑制されている。
(実験例1)
ここで、絶縁性樹脂体の端面の表面粗さと外部電極の剥離発生率との関係を検証した実験例1について説明する。
絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)を、実施例1は8.3μm、実施例2は5.1μm、実施例3は2.2μm、比較例1は9.2μm、比較例2は0.4μm、比較例3は0.1μmとした。バレルめっきにより形成された外部電極の剥離の有無を確認した。実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の各々についてサンプルを100個作製した。なお、絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)は、エンストリップまたはメルストリップなどの剥離剤を用いて外部電極を除去して、絶縁性樹脂体の端面を露出させ、幅方向Wの中央部かつ高さ方向Tの中央部の位置において、レーザ顕微鏡を用いて表面粗さ(Ra)を測定した。
表1は、実験例1の実験結果を示す表である。表1に示すように、絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が8.3μmであった実施例1においては、外部電極が剥離した固体電解コンデンサは認められなかった。絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が5.1μmであった実施例2においては、外部電極の剥離の発生率が1%であり、5%以下であった。絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が2.2μmであった実施例3においては、外部電極の剥離の発生率が3%であり、5%以下であった。
一方、絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が9.2μmであった比較例1においては、外部電極の剥離の発生率が10%であり、5%より高かった。絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が0.4μmであった比較例2においては、外部電極の剥離の発生率が26%であり、5%より高かった。絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が0.1μmであった比較例3においては、外部電極の剥離の発生率が41%であり、5%より高かった。
実験例1の結果から、絶縁性樹脂体の端面の表面粗さ(Ra)が、2.2μm以上8.3μm以下である場合に、外部電極の剥離の発生率を5%以下に低減できることが確認できた。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、陰極部160側とは反対側に位置して固体電解質層161が設けられていない、金属層141の第2端面110f寄りの外表面に設けられた誘電体層150の外表面が、絶縁性樹脂層151に覆われていることにより、工程S10において金属層141の端面にめっきする際のめっき液が、誘電体層150の外表面に沿って絶縁性樹脂体110の内部に浸入することを絶縁性樹脂層151によって抑制することができる。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層151の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.025倍以上0.5倍以下であることにより、固体電解コンデンサ100の静電容量を維持してESRを低減しつつ、信頼性を確保することができる。
(実験例2)
ここで、絶縁性樹脂層の長さが、固体電解コンデンサの静電容量、ESRおよび信頼性に及ぼす影響を検証した実験例2について説明する。
長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層の長さの、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体の長さに対する割合を、実施例4は0.025、実施例5は0.05、実施例6は0.1、実施例7は0.15、実施例8は0.2、実施例9は0.25、実施例10は0.3、実施例11は0.35、実施例12は0.4、実施例13は0.45、実施例14は0.5、比較例4は0.01、比較例5は0.7、比較例6は0.9とした。固体電解コンデンサの静電容量(μF)、ESR(mΩ)およびリーク電流(μA)を測定した。
表2は、実験例2の実験結果を示す表である。表2に示すように、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体の長さの0.025倍以上0.5倍以下である実施例4〜実施例14においては、固体電解コンデンサの静電容量が30μF以上、ESRが30mΩ以下、リーク電流が0.2μA以下であった。
一方、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体の長さの0.05未満である比較例4においては、リーク電流が極めて高く、固体電解コンデンサの信頼性が低かった。すなわち、工程S10において金属層141の端面にめっきする際のめっき液が、誘電体層150の外表面に沿って絶縁性樹脂体110の内部に浸入した際に、短絡が発生する可能性がある。
長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体の長さの0.5倍より長い比較例5および比較例6においては、固体電解コンデンサの静電容量が30μF未満であり、ESRが30mΩより高かった。
実験例2の結果から、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層151の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.025倍以上0.5倍以下である場合に、固体電解コンデンサの静電容量を維持してESRを低減しつつ、信頼性を確保することができることが確認できた。
絶縁性樹脂層151の厚さが、5μm以上30μm以下であることにより、固体電解コンデンサの信頼性を確保できる。
(実験例3)
ここで、絶縁性樹脂層151の厚さが、絶縁性樹脂体110の外観および固体電解コンデンサの信頼性に及ぼす影響を検証した実験例3について説明する。
絶縁性樹脂層の厚さを、実施例15は5μm、実施例16は15μm、実施例17は30μm、比較例7は2μm、比較例8は100μmとした。工程S8において作製されたチップを観察し、絶縁性樹脂体のモールド部に覆われていないコンデンサ素子が確認された場合は、外観不良と判断した。固体電解コンデンサのリーク電流(μA)を測定した。
表3は、実験例3の実験結果を示す表である。表3に示すように、絶縁性樹脂層の厚さが5μm以上30μm以下である実施例15〜実施例17においては、絶縁性樹脂体の外観は良好であり、リーク電流が0.2μA以下であった。
一方、絶縁性樹脂層の厚さが5μm未満である比較例7においては、リーク電流が極めて高く、固体電解コンデンサの信頼性が低かった。すなわち、絶縁性樹脂層151の厚さが5μm未満である場合、工程S10において金属層141の端面にめっきする際のめっき液が、誘電体層150の外表面に沿って絶縁性樹脂体110の内部に浸入することを効果的に抑制することができない。
絶縁性樹脂層151の厚さが30μmより厚い比較例8においては、積層された複数のコンデンサ素子の厚さが、モールド部の厚さより厚くなり、絶縁性樹脂体のモールド部に覆われていないコンデンサ素子が確認され、絶縁性樹脂体の外観が不良であった。また、この場合、複数のコンデンサ素子を積層した際に、隣接するコンデンサ素子同士の集電体層の接続が不安定になって固体電解コンデンサの信頼性が低下する。
なお、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層の長さ、および、絶縁性樹脂層の厚さは、絶縁性樹脂体をW方向の寸法の約1/2の位置まで研磨することにより、長さ方向Lおよび高さ方向Tに沿う断面を露出させて、その断面をSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて撮像することにより測定することができる。実験例3においては、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂層の長さは、5つのコンデンサ素子の測定値の平均値とした。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、長さ方向Lにおける引出導体層180の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.3倍以上0.8倍以下であることにより、固体電解コンデンサのESRを低減しつつ、固体電解コンデンサの信頼性を確保することができる。
長さ方向Lにおける引出導体層180の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.3倍未満の場合、固体電解コンデンサのESRが30mΩより高くなる。長さ方向Lにおける引出導体層180の長さが、長さ方向Lにおける絶縁性樹脂体110の長さの0.8倍より長い場合、引出導体層180と第2外部電極130との間で短絡する可能性が生じ、固体電解コンデンサの信頼性が低下する。
引出導体層180の厚さが、10μm以上100μm以下であることにより、固体電解コンデンサ100のESRを低減しつつ固体電解コンデンサ100を小型化できる。引出導体層180の厚さが10μm未満である場合、固体電解コンデンサのESRが30mΩより高くなる。引出導体層180の厚さが100μmより厚い場合、固体電解コンデンサの小型化が妨げられる。
本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100においては、引出導体層180と接続導体層190とが接続されている部分において最も第1端面110e寄りの位置と、第1端面110eとの間の長さ方向Lにおける距離が、87.5μm以上1750μm以下であることにより、固体電解コンデンサ100を小型化しつつ、固体電解コンデンサの信頼性を確保することができる。
上記距離が87.5μm未満である場合、工程S10において金属層141の端面にめっきする際のめっき液が、引出導体層180の外表面に沿って浸入した際に、めっき液がコンデンサ素子まで到達する可能性が生じ、固体電解コンデンサの信頼性が低下する。上記距離が1750μmより長い場合、固体電解コンデンサの小型化が妨げられる。
なお、長さ方向Lにおける引出導体層の長さおよび上記距離、並びに、引出導体層の厚さは、絶縁性樹脂体をW方向の寸法の約1/2の位置まで研磨することにより、長さ方向Lおよび高さ方向Tに沿う断面を露出させて、その断面をSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて撮像することにより測定することができる。
図10は、実施例18から22に係る固体電解コンデンサの第1端面を正面から撮像した図および第2端面を正面から撮像した図である。図10を参照して、実施例18から22に係る固体電荷コンデンサの第1端面および第2端面について説明する。
実施例18から22に係る固体電解コンデンサとして、上述の本実施の形態における製造方法を用いて製造された本実施の形態と同様の構成を有する固体電解コンデンサを準備した。これら実施例18から22に係る固体電解コンデンサの各々の第1端面110e側の第1外部電極120および第2端面110f側の第2外部電極130を光学顕微鏡にて観察した。
図10における各観察結果においては、中央の明るい部分(白色の部分)が第1端面または第2端面上に設けられた外部電極となっており、明るい部分の周囲に位置する略灰色の部分が第1面取り部または第2面取り部上に設けられた外部電極となっている。なお、略灰色の周囲においては、背景として黒色の部分が設けられている。
実施例18から22に係る固体電解コンデンサのいずれにおいても、第1外部電極120および第2外部電極130が、第1端面110e側および第2端面110f側から剥がれた様子は見られず、良好な状態であった。
(比較例)
図11は、比較例9から13に係る固体電解コンデンサの第1端面を正面から撮像した図および第2端面を正面から撮像した図である。図11を参照して、比較例9から13に係る固体電解コンデンサの第1端面および第2端面について説明する。
比較例9から13に係る固体電解コンデンサとして、上述の本実施の形態における製造方法に準じて製造された固体電解コンデンサを準備した。具体的には、本実施の形態における製造方法において、切断されたチップをバレル研磨する工程S9を省略し、切断直後のチップの端面側に外部電極を形成することにより、固体電解コンデンサを製造した。すなわち、比較例9から13に係る固体電解コンデンサにおいては、第1面取り部および第2面取り部が形成されていない。
これら比較例9から13に係る固体電解コンデンサの各々の第1端面110e側の第1外部電極120および第2端面110f側の第2外部電極130を光学顕微鏡にて観察した。
図11における各観察結果においては、中央の明るい部分(白色の部分)が第1端面または第2端面上に設けられた外部電極となっている。図11においては、図9と比較して、明るい部分の周囲に略灰色の部分が観察されておらず、第1面取り部および第2面取り部は形成されていない。
比較例9から11に係る固体電解コンデンサにおいては、第1端面側および第2端面側のいずれかにおいて、端面の周囲にて外部電極の一部が剥がれていた。
比較例12に係る固体電解コンデンサにおいては、特に第1端面側において、第1外部電極120が大きく剥がれていた。
一方、比較例13に係る固体電解コンデンサにおいては、第1外部電極120および第2外部電極130が第1端面110e側および第2端面110f側から剥がれた様子は見られず、良好な状態であった。
(実施例18から22と比較例9から13との比較)
実施例の結果と比較例との結果を比較して、絶縁性樹脂体110に第1面取り部および第2面取り部を設け、これを覆うように第1外部電極および第2外部電極を設けることにより、第1外部電極および第2外部電極がコンデンサ素子を埋設する絶縁性樹脂体の端面側から剥がれることを抑制できることが実験的にも確認された。
以上のように、本実施の形態に係る固体電解コンデンサ100にあっては、第1外部電極120が、第1接続部1101、第2接続部1102、第5接続部1105および第6接続部1106を跨ぎ、第1面取り部および第2面取り部に沿うことにより、第1端面110eと、第1主面110aおよび第2主面110bとの境界部において第1外部電極120に作用する応力を緩和できるとともに、第1端面110e側における絶縁性樹脂体110の表面に対する第1外部電極120の密着性を向上させることができる。これにより、第1外部電極120の密着強度が増加し、形成時または製造後において、第1外部電極120が絶縁性樹脂体から剥がれることを抑制することができる。この結果、固体電解コンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
また、第2外部電極130が、第3接続部1103、第4接続部1104、第7接続部1107および第8接続部1108を跨ぎ第1面取り部および第2面取り部に沿うことにより、第2端面110fと、第1主面110aおよび第2主面110bとの境界部において第2外部電極130に作用する応力を緩和できるとともに、第2端面110f側における絶縁性樹脂体110の表面に対する第2外部電極130の密着性を向上させることができる。これにより、第2外部電極130の密着強度が増加し、形成時または製造後において、第2外部電極130が絶縁性樹脂体から剥がれることを抑制することができる。この結果、固体電解コンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1端面110e側において、第1接続部1101および第2接続部1102に第1面取り部が設けられ、第5接続部1105、および第6接続部1106に第2面取り部が設けられる場合を例示して説明したが、これに限定されず、少なくとも第1接続部1101および第2接続部1102に第1面取り部が設けられていればよい。この場合には、第1外部電極120は、第1接続部1101および第2接続部1102を跨いで少なくとも第1端面110eから第1主面110aおよび第2主面110bに至るように設けられていればよい。このような構成によっても、第1外部電極120が第1面取り部に沿うことにより、第1外部電極120と絶縁性樹脂体110との密着性を高めることができ、第1外部電極120の剥がれを抑制することができる。
同様に、上述した本実施の形態においては、第2端面110f側において、第3接続部1103および第4接続部1104に第1面取り部が設けられ、第7接続部1107、および第8接続部1108に第2面取り部が設けられる場合を例示して説明したが、これに限定されず、少なくとも第3接続部1103および第4接続部1104に第1面取り部が設けられていればよい。この場合には、第2外部電極130は、第3接続部1103および第4接続部1104を跨いで少なくとも第2端面110fから第1主面110aおよび第2主面110bに至るように設けられていればよい。このような構成によっても、第2外部電極130が第1面取り部に沿うことにより、第2外部電極130と絶縁性樹脂体110との密着性を高めることができ、第2外部電極130の剥がれを抑制することができる。
なお、本実施の形態のように、第1接続部1101および第2接続部1102に第1面取り部が設けられ、第5接続部1105、および第6接続部1106に第2面取り部が設けられ、第1外部電極120が、第1接続部1101、第2接続部1102、第5接続部1105、および第6接続部1106を跨いで、第1端面110eから第1主面110aおよび第2主面110bならびに第1側面110cおよび第2側面110dに至るように設けられることにより、第1外部電極120を絶縁性樹脂体110により強固に密着させることができる。第2端面110f側においても第1端面110e側と同様な構成とすることにより、第2外部電極130を絶縁性樹脂体110により強固に密着させることができる。
上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。