JP2018193611A - 発熱組成物用鉄粉及び発熱組成物 - Google Patents

発熱組成物用鉄粉及び発熱組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】発熱特性及びハンドリング性に優れる発熱組成物用鉄粉及び発熱組成物を提供すること。【解決手段】本発明の発熱組成物用鉄粉は、かさ密度が0.3g/cm3以上1.5g/cm3以下である。また、本発明の発熱組成物は、かさ密度が0.3g/cm3以上1.5g/cm3以下の鉄粉、炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水を含有する。前記鉄粉は、平均粒子径が好ましくは20μm以上150μm以下、金属鉄分の含有量が好ましくは60質量%以上95質量%以下、BET比表面積が好ましくは0.1m2/g以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、発熱組成物用鉄粉及びそれを用いた発熱組成物に関する。
従来、通気性を有する包材内に発熱体を封入した発熱具が、使い捨てカイロなどとして、人体に温熱を付与するために広く利用されている。このような発熱体は、それに含有されている鉄粉の酸化反応によって生じる反応熱を利用して発熱するが、単に鉄粉と大気中の酸素だけでは発熱温度や発熱の持続性が充分でないことから、一般には、発熱体には、鉄粉に加えてさらに、食塩や水等の反応助剤や、さらにこれらの物質を担持する、活性炭、吸水性ポリマー等の保水剤が含有される。特許文献1には、このような組成を有しインキ状ないしクリーム状に粘稠化させた発熱組成物を、フィルム状ないしシート状の基材に塗工する工程を経て、発熱体を製造することが記載されている。
使い捨てカイロの如き発熱体を利用した製品においては、発熱開始初期の昇温速度が高く、開封後速やかに昇温することが要求され、さらに一定温度に達した後は長時間安定して発熱し、その一定温度の状態が継続することが必要とされる。発熱体の発熱特性は、特に鉄粉自体の特性に大きく左右されるため、このような要求に対しては、活性の高い鉄粉を使用すればよいとされている。特許文献2には、発熱体における鉄粉の酸化反応効率を向上させるために、活性炭に適量の水分を含有させたものを鉄粉と混合することが記載されている。また、特許文献2の段落〔0020〕には、鉄粉の見かけ密度を1.5〜3.5Mg/mの範囲とすることが好ましい旨記載され、斯かる好ましい範囲の下限値を1.5Mg/mとした理由として、鉄粉の見かけ密度がこれよりも低くなると、嵩が増加してカイロの小型化が達成できないためとされている。
特許文献3には、見かけ密度が0.5〜1.5g/ccの低密度還元鉄粉が、高成形性を要求される複雑形状の焼結部品用途や、低加圧力で成形する摩擦材用焼結部品用途など、圧縮性や成形性が要求される成形用途に有用である旨記載され、該低密度還元鉄粉の製造方法が記載されている。尚、鉄粉に関して特許文献3に記載されているのは、成形品用途のみであり、発熱組成物用途については何等記載されていない。
特開平9−75388号公報 特開2001−254101号公報 特開昭52−24247号公報
発熱組成物用鉄粉には、発熱特性に優れることに加えてさらに、ハンドリング性に優れることも要求される。発熱組成物用鉄粉がハンドリング性に優れるものであると、これに活性炭、水などを加えて塗工可能な流動性を有する塗料とした場合に、該塗料の保存安定性に優れ、発熱組成物用鉄粉の沈降、該塗料の粘度増大やゲル化などの不都合が生じ難いため、発熱体を効率よく製造することができる。しかしながら、発熱特性及びハンドリング性が高いレベルで両立した発熱組成物用鉄粉及び発熱組成物は未だ提供されていない。
従って本発明の課題は、発熱特性及びハンドリング性に優れる発熱組成物用鉄粉及び発熱組成物を提供することに関する。
本発明は、かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の発熱組成物用鉄粉である。
また本発明は、かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の鉄粉、炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水を含有する発熱組成物である。
また本発明は、前記の本発明の発熱組成物を含む発熱体である。また本発明は、前記の本発明の発熱組成物用鉄粉の発熱体への使用である。
本発明によれば、発熱特性及びハンドリング性に優れる発熱組成物用鉄粉及び発熱組成物が提供される。
図1は、本発明が適用可能な発熱具の一実施形態の模式図であり、図1(a)は、該発熱具の平面図、図1(b)は、図1(a)のI−I線断面図、図1(c)は、図1(b)に示す発熱具における発熱体を拡大して示す断面の模式図である。 図2(a)は、本発明の発熱組成物用鉄粉の一例の電子顕微鏡写真(1000倍)、図2(b)は、従来の発熱組成物用鉄粉の一例の電子顕微鏡写真(1000倍)である。
本発明の発熱組成物用鉄粉は、発熱組成物の材料として使用される。発熱組成物は、鉄粉(被酸化性金属)と空気中の酸素との酸化反応に伴う発熱を利用して発熱するものであり、典型的には、使い捨てカイロなどの発熱具における発熱体として使用される。本発明が適用可能な発熱具は、人体に直接適用されるか、又は衣類に適用されて、人体の加温に好適に用いられる。人体における適用部位としては例えば肩、首、顔、目、腰、肘、膝、太腿、下腿、腹、下腹部、手、足裏等が挙げられる。また、本発明が適用可能な発熱具は、人体の他に、各種の物品に適用されてその加温や保温等にも好適に用いられる。
以下、本発明の発熱組成物及び鉄粉を、その好ましい実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明が適用可能な発熱具の一実施形態である発熱具1が示されている。発熱具1は、図1(a)に示すように、発熱体2と、該発熱体2を包囲する包材3とを含んで構成されている。発熱体2は、発熱具1において熱を生じさせる部材であり、本発明の発熱組成物用鉄粉を含む、発熱組成物20を含んで構成されている。包材3は、発熱体2の全体を包囲し、発熱具1の外面をなす部材であり、その一部又は全体に通気性を有する。発熱具1においては、発熱体2は、包材3に対して非固定状態になっており、それ故、包材3とは別個独立に移動することが可能になっている。
包材3は、図1(b)に示すように、第1の被覆シート30と第2の被覆シート31とを備えている。第1の被覆シート30と第2の被覆シート31とは、発熱体2の周縁から外方に延出する延出域をそれぞれ有し、その延出域どうしが接合されている。この接合は、発熱体2を取り囲む環状の連続した気密の接合であることが好ましい。両被覆シート30,31の接合によって形成された包材3は、その内部に発熱体2を収容するための空間を有し、この空間内に発熱体2が収容されている。
発熱体2は、図1(c)に示すように、2枚の基材シート21,22間に発熱組成物20が介在配置された構成を有している。基材シート21,22としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを用いることができ、例えば、合成樹脂フィルム等の不透気性材料、不織布や紙等の繊維シートからなる透気性材料、あるいは該不透気性材料と該繊維シートとのラミネート等が挙げられる。また、基材シート21,22は高い吸水性を有していても良く、その場合は例えば、親水性繊維を含む繊維シート、吸水性ポリマーの粒子及び親水性繊維を含む繊維シート等が挙げられる。基材シート21,22は、互いに同じでも良く、異なっていても良い。
発熱組成物20は、鉄粉(本発明の発熱組成物用鉄粉)、炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水を含有する。このように、発熱体2における発熱組成物20は水を含んでいる含水層であり、発熱組成物20に含有されているハロゲン化物の塩即ち電解質は、発熱組成物20中の水に溶解した状態になっている。発熱組成物20は、鉄粉と空気中の酸素との酸化反応に伴う発熱を利用して発熱する。
発熱組成物20に含有されている本発明の発熱組成物用鉄粉は、かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の範囲にある点で特徴付けられる。従来多用されている発熱組成物用鉄粉のかさ密度は、一般的には1.5g/cmを超えて1.8〜2.5g/cmの範囲にあるから、本発明の発熱組成物用鉄粉は、従来品に比してかさ密度が低く、嵩高いと言える。
本発明でいう、鉄粉(発熱組成物用鉄粉)のかさ密度は、かさ密度測定器(JISカサ比重測定器JISZ−2504、筒井理化学器械(株)製)を用い、JIS Z−2504金属粉−見掛密度測定方法に従って測定される。
本発明の発熱組成物用鉄粉は、かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の特定範囲にあることで、これを含む発熱組成物の発熱特性を大幅に向上させ得る。具体的には、本発明の発熱組成物用鉄粉は、かさ密度が1.5g/cmを超える従来の発熱組成物用鉄粉との対比において、鉄粉の酸化反応における反応率を飛躍的に向上させることができ、発熱組成物における発熱量が大きくなる。すなわち本発明の発熱組成物用鉄粉は、例えば従来品と同等の鉄粉量で、従来品と同等の温度の発熱を、従来品よりも長時間継続することができ、また、例えば従来品よりも少ない鉄粉量で、従来品と同等の温度の発熱を継続することができる。このように本発明の発熱組成物用鉄粉は、鉄粉の酸化反応における反応率が高く、発熱組成物における発熱量が大きいことから、例えば発熱組成物あるいはこれを用いた発熱体の薄型化を図るのに有用であり、また、例えば発熱時間の制御が比較的容易に行えるため、発熱体の設計の自由度を向上させ得る。発熱組成物用鉄粉のかさ密度が1.5g/cmを超えると、このような優れた発熱特性を得ることは難しくなる。また、発熱組成物用鉄粉のかさ密度が0.3g/cm未満では、当該鉄粉のハンドリングが困難となるおそれがあり、さらに発熱体などの発熱組成物の薄型化も難しくなる。本発明の発熱組成物用鉄粉のかさ密度は、好ましくは0.4g/cm以上、さらに好ましくは0.5g/cm以上、そして、好ましくは1.4g/cm以下、さらに好ましくは1.3g/cm以下である。なお、発熱組成物あるいは発熱体の発熱特性は、例えば後述するように、発熱組成物を発熱させた際の温度と時間とからなる発熱プロファイルによっても評価でき、温度を時間で積分した面積により評価できる。
この種の発熱体の発熱特性を向上させる方法としては従来、発熱組成物用鉄粉として粒子径が比較的小さいものを使用する方法が知られている。しかしながら一般には、発熱組成物用鉄粉の粒子径が小さくなると、これに炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水などを加えて調製した塗料(スラリー状の発熱組成物)の保存安定性が低下し、さらには鉄粉の沈降、塗料の粘度増大やゲル化などが起こりやすくなり、スラリーとしての送液、塗工が困難になるなどハンドリング性が低下する。このようなハンドリング性の低い塗料を、発熱体の工業的な製造に適用することは困難である。
この点、本発明の発熱組成物用鉄粉は、粒子径ではなく、かさ密度が前記特定範囲にあることで、発熱組成物のハンドリング性の低下を招かずに、発熱特性を向上させ得る。具体的には、本発明の発熱組成物用鉄粉に炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水を加えて塗料(スラリー状の発熱組成物)とした場合、その塗料は保存安定性に優れ、鉄粉の沈降、塗料の粘度増大やゲル化などが起こり難いため、発熱体を効率よく、工業的な製造に適用することができる。
特許文献3に記載されているように、かさ密度が1.5g/cm以下の範囲にある鉄粉自体は公知である。しかしながら、特許文献3に記載されているのは、成形用途にかさ密度の低い鉄粉を用いるということであり、特許文献3には発熱組成物については何等記載されておらず、自ずと、本発明の技術思想、即ちかさ密度の低い鉄粉を発熱組成物に用いることによって発熱組成物の発熱特性及びハンドリング性を向上させることについては何等の記載も示唆もない。一方、使い捨てカイロなどの発熱体の技術分野においては、発熱体の小型化が従来主要な課題となっているところ、特許文献2の段落〔0020〕に記載されているように、発熱組成物用鉄粉のかさ密度が1.5g/cm未満となるような低いものであると、発熱体の嵩が増加して発熱体の小型化に支障をきたす、というのが技術常識であることから、本発明の発熱組成物用鉄粉の如き、かさ密度が1.5g/cm以下の範囲にある発熱組成物用鉄粉は、発熱体用途では実質的に使用されていないのが現状である。
本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の平均粒子径は、好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、そして、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。発熱組成物用鉄粉の平均粒子径が斯かる範囲にあることで、前述した効果(発熱組成物あるいは発熱体の発熱特性及びハンドリング性の向上効果)がより確実に奏されるようになる。鉄粉の平均粒子径としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積基準のメジアン径を用いる。具体的には例えば、株式会社堀場製作所製LA‐950V2を用い、標準の湿式循環セルを利用し、鉄粉の屈折率を実数部3.5、虚数部3.8iとし、分散媒として水を用い屈折率を1.33とし、循環速度を15に、撹拌を5にそれぞれ設定し、体積基準のメジアン径をもって、鉄粉の平均粒子径の測定結果とする方法が用いられる。
また、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉のBET比表面積は、好ましくは0.1m/g以上、さらに好ましくは0.2m/g以上である。発熱組成物用鉄粉のBET比表面積が斯かる範囲にあることで、前述した効果(発熱組成物あるいは発熱体の発熱特性及びハンドリング性の向上効果)がより確実に奏されるようになる。本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉のBET比表面積の上限値は特に制限されないが、使用する際の酸化反応の活性が高くなることと、使用するまでの保存時に酸化して発熱性が低下しないこと、この両点を考慮して、好ましくは50m/g以下、さらに好ましくは40m/g以下である。鉄粉のBET比表面積は、公知のBET法によって測定される。BET法は、窒素やアルゴン等の粉体表面への吸着量を測定することにより、粉体の比表面積を測定する方法である。
また、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の水銀圧入法による細孔容量は、1μm以上の範囲で、好ましくは0.3cm/g以上、さらに好ましくは0.5cm/g以上である。本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の水銀圧入法による細孔容量は、1μm以上の範囲で前記特定範囲にあることに加えてさらに、全細孔容量が好ましくは0.3cm/g以上、さらに好ましくは0.5cm/g以上であるとより好ましい。発熱組成物用鉄粉の水銀圧入法による細孔容量が斯かる範囲にあることで、前述した効果(発熱組成物あるいは発熱体の発熱特性及びハンドリング性の向上効果)がより確実に奏されるようになる。本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の水銀圧入法による細孔容量の上限値は特に制限されないが、鉄粉の該細孔容量が大きすぎることにより、かさ密度を低下させず、また鉄粉のハンドリングを容易にし、さらに発熱体などの発熱組成物の薄型化も容易になるため、この点を考慮して、1μm以上の範囲では、好ましくは4.0cm/g以下、さらに好ましくは3.0cm/g以下であり、また全細孔容量が、好ましくは4.0cm/g以下、さらに好ましくは3.0cm/g以下である。鉄粉の水銀圧入法による細孔容量は、例えばJIS R1655に規定される方法等によって測定される。
本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は、原料となる還元鉄の粉砕工程を経て製造されるところ、前記の平均粒子径、BET比表面積、水銀圧入法による細孔容量は、それぞれ、この粉砕工程における粉砕の程度を適宜調整することで調整可能である。
本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は、金属鉄分の含有量が、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。発熱組成物用鉄粉における金属鉄分の含有量が斯かる範囲にあることで、前述した効果(発熱組成物あるいは発熱体の発熱特性及びハンドリング性の向上効果)がより確実に奏されるようになる。鉄粉における金属鉄分の含有量は、例えばISO5416に規定される臭素−メタノール溶解法などによって測定される。鉄粉における金属鉄分の含有量の調整は、還元条件や、還元後の熱処理条件等を適宜調整することで実施可能である。
尚、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は、金属鉄分以外の他の成分として、例えば、シリカ(SiO)を3質量%以下程度、炭素(C)を15質量%以下程度、アルミナ(Al)を3質量%以下程度含有し得る。また通常、この種の鉄粉は、大気中の酸素と常温で反応して幾分かが不可避的に酸化されるため、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は酸素(O)を10質量%以下程度含有し得る。これら金属鉄分以外の他の成分は、主として、発熱組成物用鉄粉の製造工程において不可避的に混入するもので、本発明の前述した所定の効果を奏する上で特段重要というものではない。
本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は、前記の各種物性のみならず、その外観も特徴的である。図2(a)には、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の一例の電子顕微鏡写真、図2(b)には、従来の発熱組成物用鉄粉(かさ密度が1.5g/cmを超える鉄粉)の電子顕微鏡写真が示されている。本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は、図2(a)に示す通り、表層部が、多数の繊維状物が3次元的にランダムに配置されて構成されているのが特徴的である。図2(b)に示す従来の発熱組成物用鉄粉の表層部には、そのような繊維状物の集合体はほとんど確認できない。このような、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉が有する外観上の特徴が、該鉄粉による前述した作用効果の発現とどのような関わりがあるのかは不明であるが、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉が従来の発熱組成物用鉄粉とは明らかに異なるものであることは、このような電子顕微鏡による観察によっても明白である。本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉を構成する前記繊維状物の繊維径は、概ね10μm以下である。前記繊維状物の繊維径は、例えば電子顕微鏡写真を画像解析し、2点間の距離を測定することによって測定される。
本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉は、酸化鉄(III)を含む鉄鉱石を原料として、これをロータリーキルンなどの還元炉にて固体還元剤を用いて還元処理して還元鉄を得、該還元鉄を粉砕機で粉砕し、必要に応じ所望の粒度に篩い分けすることで得られ、この一連の工程は、従来の発熱組成物用鉄粉の製造方法と基本的に同じである。本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉を得る上で特に重要なのは、還元鉄の粉砕条件である。即ち、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉を得るためには、還元鉄の粉砕の程度を、従来の発熱組成物用鉄粉の製造におけるそれよりも弱くすることが好ましい。例えば、従来の発熱組成物用鉄粉の製造においては、一般的には、1.0kgの還元鉄に対して、振動式ロッドミル(例えば、中央化工機株式会社製、商品名「MB−1」)を用いて、8〜12分程度の粉砕処理を実施するのに対し、本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の製造においては、0.1kgの還元鉄に対して、振動式ディスクミル(例えば、ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製、商品名「RS200」)を用いて、回転数700〜1000rpmで5〜30秒程度の粉砕処理を実施する。このような比較的弱い粉砕処理を還元鉄に施すことで、かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の範囲にある鉄粉が得られる。
図1に示す発熱具1についてさらに説明すると、発熱組成物20における鉄粉(本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉)の含有量は、長時間にわたり安定な発熱を維持する観点から、発熱組成物20の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。同様の観点から、発熱組成物20における鉄粉(本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉)の坪量は、好ましくは80g/m以上、さらに好ましくは120g/m以上、そして、好ましくは1400g/m以下、さらに好ましくは1200g/m以下である。
発熱組成物20は、前述した本発明の好ましい発熱組成物用鉄粉の他に、さらに炭素材料を含有する。炭素材料としては、水分保持剤、鉄粉への酸素保持/供給剤として機能し得るものが用いられ、例えば、活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラファイト、石炭、石炭チャー等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの炭素材料の中でも特に活性炭は、高い比表面積を有するため好ましい。発熱組成物20における炭素材料の含有量は、発熱組成物20中の鉄粉100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、そして、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下である。
発熱組成物20は、さらにハロゲン化物の塩を含有する。ハロゲン化物の塩としては、鉄粉の表面に形成された酸化物の溶解が可能な電解質として機能し得るものが用いられ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのハロゲン化物の塩の中でも特に塩化ナトリウムは、導電性、化学的安定性、生産コストなどに優れるため好ましい。発熱組成物20におけるハロゲン化物の塩の含有量は、発熱組成物20中の鉄粉100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、そして、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下である。
発熱組成物20は、さらに水を含有する。前述したように、発熱組成物20は含水状態にあり、前記のハロゲン化物の塩はこの水に溶解した状態になっている。含水状態の発熱組成物は、流動性を有するスラリー組成物である。発熱組成物における水の含有量は、反応性の観点から、発熱組成物20の全質量に対して、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
発熱組成物20には、前記成分(鉄粉、炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水)の他に、必要に応じ、前記炭素材料と類似の機能を持つ反応促進剤として、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ、アルミナ、チタニア等を含有させることができる。また、塗料としての適性向上の観点から、発熱組成物20には各種の増粘剤や界面活性剤を含有させることができる。増粘剤としては、例えば、主として、水や金属の塩化物水溶液を吸収し、稠度を増大させるか、又はチキソトロピー性を付与する物質が挙げられ、ベントナイト、ステアリン酸塩、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸塩;ゼラチン、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、アルギン酸ソーダ等のアルギン酸塩;ペクチン、カルボキシビニルボリマー、デキストリン、α化澱粉及び加工用澱粉などの澱粉系吸水剤;カラギーナン及び寒天などの多糖類系増粘剤;カルボキシメチルセルロース、酢酸エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体系増粘剤などを用いることができる。界面活性剤としては、例えば芳香族スルホン酸とホルマリンの縮合物、又は特殊カルボン酸型高分子界面活性剤を主成分とする陰イオン性界面活性剤などを用いることができる。
発熱体2は、典型的には、ハロゲン化物の塩を除く、他の成分(鉄粉、炭素材料、及び水など)を混合して塗料を調製し(塗料調製工程)、この塗料を基材シート21に塗工した後(塗工工程)、さらに、その塗工された塗料にハロゲン化物の塩を添加し(電解質添加工程)、該塗料に他方の基材シート22を重ねる(シート積層工程)ことで製造される。前記電解質添加工程において、基材シート21上の塗料にハロゲン化物の塩を添加することで、スラリー状の発熱組成物20が得られる。
前記塗料調製工程において、塗料にハロゲン化物の塩即ち電解質を添加しない理由は、塗料成分の分散性向上のためであり、また、塗料の保管中における鉄粉の酸化を防止して発熱ロスを低減するためである。
前記電解質添加工程では、ハロゲン化物の塩即ち電解質を固体状態で添加する。ハロゲン化物の塩を固体状態で添加することで、水溶液で添加する場合に比較して機器の腐食を抑制でき、また機器及び/又はその周囲へのハロゲン化物の塩の飛散を抑制できるという有利な効果が奏される。
前記塗工工程において、塗料が塗工される基材シート21としては、吸水性ポリマーを含まずに親水性繊維を含む繊維シート(例えば不織布、紙)が好ましく用いられ、また、前記シート積層工程において、塗工後の塗料に積層される基材シート22としては、吸水性ポリマーを含む繊維シート(高吸水性シート)が好ましく用いられる。このように、塗工後の塗料に高吸水性シートを重ねることで、発熱組成物20の水分量を発熱可能な程度に調整することが容易になる。前記高吸水性シートにおける吸水性ポリマーの含有量は、該高吸水性シートの全質量に対して通常10〜70質量%程度である。
発熱体2の坪量は、発熱具1の用途等に応じて適宜調整され、好ましくは100g/m以上、さらに好ましくは150g/m以上、そして、好ましくは2500g/m以下、さらに好ましくは2000g/m以下である。
発熱組成物20の坪量は、好ましくは50g/m以上、さらに好ましくは100g/m以上、そして、好ましくは1200g/m以下、さらに好ましくは1000g/m以下である。
基材シート21,22の坪量は、好ましくは10g/m以上、さらに好ましくは20g/m以上、そして、好ましくは200g/m以下、さらに好ましくは150g/m以下である。
図1に示す発熱具1において、発熱体2は、第1の被覆シート30と第2の被覆シート31とからなる包材3内に封入される。第1の被覆シート30及び第2の被覆シート31の何れか一方は、その一部が通気性を有するものであるか、又はその全体が通気性を有している。第1の被覆シート30及び第2の被覆シート31の両方が通気性を有していても良い。包材3が通気性を有することで、発熱体2における発熱組成物20への酸素の供給が円滑に行われ、安定した発熱が長時間にわたって維持される。包材3(被覆シート30,31)として使用可能な通気性を有するシートとしては、例えば透湿性は有するが透水性は有さない合成樹脂製の多孔性シートを用いることが好適である。斯かる多孔性シートを用いる場合には、該多孔性シートの外面(外方を向く面)にニードルパンチ不織布やエアスルー不織布等の不織布を始めとする各種の繊維シートをラミネートして、包材3の風合いを高めても良い。
一方の被覆シート(例えば第1の被覆シート30)が通気性を有している場合、他方の被覆シート(例えば第2の被覆シート31)は、第1の被覆シート30よりも通気性の低いシートであっても良く、その場合、第1の被覆シート30を通じて水蒸気をより安定して発生させることが可能となる。ここで言う「通気性の低いシート」とは、一部に通気性を有するが、通気性の程度が第1の被覆シート30よりも低い場合と、通気性を有さない非通気性シートである場合との双方を包含する。第2の被覆シート31が非通気性シートである場合、該非通気性シートとしては、合成樹脂製のフィルムや、該フィルムの外面(外方を向く面)にニードルパンチ不織布やエアスルー不織布等の不織布を始めとする各種の繊維シートをラミネートした複合シートを用いることができる。
包材3はその外面に、粘着剤が塗工されて形成された粘着層(図示せず)を有していても良い。粘着層は、本発明の発熱具を人体の肌や衣類等に取り付けるために用いられる。粘着層を構成する粘着剤としては、ホットメルト粘着剤を始めとする当該技術分野においてこれまで用いられてきたものと同様のものを用いることができる。通気性を阻害しない点からは、包材3の周縁部に粘着層を設けることが好ましい。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
本発明が適用可能な発熱具の形態は特に制限されず、発熱体とこれを包囲する包材とを含んで構成されている一般的な発熱具は勿論のこと、例えば、包材を含んでおらず発熱体のみからなる発熱具にも、本発明は適用可能である。また、発熱体は、鉄粉を含む発熱組成物が一体となって所定形状(例えばシート形状)をなしている一体化物であっても良く、あるいは該発熱組成物が一体化していない流動物であっても良い。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の発熱組成物用鉄粉。
<2>
かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の鉄粉、炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水を含有する発熱組成物。
<3>
かさ密度が、好ましくは0.4g/cm以上、さらに好ましくは0.5g/cm以上、そして、好ましくは1.4g/cm以下、さらに好ましくは1.3g/cm以下である前記<2>に記載の発熱組成物。
<4>
前記鉄粉の平均粒子径が、20μm以上150μm以下である前記<2>又は<3>に記載の発熱組成物。
<5>
前記鉄粉の平均粒子径が、好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、そして、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である前記<2>〜<4>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<6>
前記鉄粉の金属鉄分の含有量が、60質量%以上95質量%以下である前記<2>〜<5>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<7>
前記鉄粉の金属鉄分の含有量が、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である前記<2>〜<6>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<8>
前記鉄粉のBET比表面積が、0.1m/g以上である前記<2>〜<7>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<9>
前記鉄粉のBET比表面積が、好ましくは0.1m/g以上、さらに好ましくは0.2m/g以上、そして、好ましくは50m/g以下、さらに好ましくは40m/g以下である前記<2>〜<7>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<10>
流動性を有するスラリー組成物である前記<2>〜<9>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<11>
水の含有量が、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である前記<2>〜<10>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<12>
前記鉄粉の水銀圧入法による細孔容量が、1μm以上の範囲で、0.3cm/g以上である前記<2>〜<11>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<13>
前記鉄粉の水銀圧入法による細孔容量が、1μm以上の範囲で、好ましくは0.3cm/g以上、さらに好ましくは0.5cm/g以上、そして、好ましくは4.0cm/g以下、さらに好ましくは3.0cm/g以下である前記<2>〜<12>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<14>
前記鉄粉の表層部は、多数の繊維状物が3次元的にランダムに配置されて構成されている前記<2>〜<13>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<15>
坪量が、好ましくは50g/m以上、さらに好ましくは100g/m以上、そして、好ましくは1200g/m以下、さらに好ましくは1000g/m以下である前記<2>〜<14>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<16>
前記鉄粉の含有量が、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である前記<2>〜<15>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<17>
前記鉄粉の坪量が、好ましくは80g/m以上、さらに好ましくは120g/m以上、そして、好ましくは1400g/m以下、さらに好ましくは1200g/m以下である前記<2>〜<16>の何れか1項に記載の発熱組成物。
<18>
前記<2>〜<17>の何れか1項に記載の発熱組成物を含む発熱体。
<19>
坪量が、好ましくは100g/m以上、さらに好ましくは150g/m以上、そして、好ましくは2500g/m以下、さらに好ましくは2000g/m以下である前記<18>に記載の発熱体。
<20>
2枚の基材シート間に前記発熱組成物が介在配置された構成を有し、該基材シートの坪量が、好ましくは10g/m以上、さらに好ましくは20g/m以上、そして、好ましくは200g/m以下、さらに好ましくは150g/m以下である前記<18>又は<19>に記載の発熱体。
<21>
前記<1>に記載の発熱組成物用鉄粉の発熱体への使用。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
酸化鉄(III)(純正化学株式会社製32225−0401)を鉄源、やし殻炭(大阪ガスケミカル株式会社製LP16−042)を固体還元剤として用いた。ポリエチレン製の袋(株式会社生産日本社製ユニパックF−8)に鉄源6gと固体還元剤2gとを入れて振り混ぜることで混合粉末を得、該混合粉末を、内径20mm、長さ50mmのSUS303製のチューブに充填高さが35mmになるように充填し、その充填された状態の鉄源に対し、雰囲気炉(株式会社デンケン製KDF−900GL)を用いて還元処理を実施し、還元鉄ブロックを得た。還元処理は、窒素雰囲気下で、常温から15℃/minで950℃まで昇温し、950℃を1時間保持した後、常温まで徐冷することで行った。チューブから還元鉄ブロックを取り出し、振動式ディスクミル(ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製、RS200、SUS製標準粉砕セット)を用い、回転数700rpmで10秒間粉砕することによって粗鉄粉を得た。得られた粗鉄粉を、目開き250μmの試験ふるい(東京スクリーン株式会社製JTS−250−60−37)を用いて、ロータップ試験機(株式会社吉田製作所製1038−A)によって5分間ふるい分けを行って粗粉を除去し、目的とする発熱組成物用鉄粉を得た。
〔実施例2〕
鉄源16g、固体還元剤4gとし、内径48mm、長さ150mmのSUS303製のチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして、発熱組成物用鉄粉を得た。
〔実施例3〕
還元処理を1000℃まで昇温、1時間保持した以外は、実施例2と同様にして、発熱組成物用鉄粉を得た。
〔比較例1〕
従来使用されている高反応性タイプ発熱組成物用鉄粉(かさ密度2.0g/cm3、平均粒子径45μm、BET比表面積2.80m/g、金属鉄分の含有量76質量%)を比較例1として用いた。
〔比較例2及び3〕
汎用発熱組成物用鉄粉(かさ密度2.9g/cm3、平均粒子径127μm、BET比表面積0.17m/g、金属鉄分の含有量94質量%)を比較例2とした。また、比較例2の鉄粉をコトブキ技研株式会社製ローラーミル、RM36型を用いて粉砕したものを比較例3とした。
〔比較例4〕
純鉄(和光純薬工業株式会社製、アトマイズ鉄粉−180μm)を比較例4とした。
(塗料の調製)
各実施例及び比較例の鉄粉を用いて塗料を調製した。塗料の組成は、鉄粉100質量部、炭素材料(活性炭)8質量部、増粘剤(グアーガム)0.3質量部、水60質量部、電解質(塩化ナトリウム)5質量部とした。塗料の調整は、先ず、鉄粉と炭素材料とを混合した後、その混合物に、水及び増粘剤を混合した液を加え、これらを均一に混合することで行った。
(発熱体の製造)
各実施例及び比較例の鉄粉を用いて調製した塗料を用い、図1(c)に示す発熱体2と同様の構成の発熱体を製造した。基材シート21として坪量70g/mの木材パルプ繊維からなる紙を用い、基材シート22として坪量80g/mの下記高吸水性シートを用いた。基材シート21の一面に塗料を均一に塗工して塗工層を形成し、該塗工層の全体にハロゲン化物の塩の粉体(塩化ナトリウム)を均一に添加した後、基材シート22を重ねることで、発熱体2と同様の構成の発熱体を製造した。発熱組成物におけるハロゲン化物の塩の含有量は、該発熱組成物中の鉄粉100質量部に対して5質量部とした。発熱体における発熱組成物の坪量は587g/mであった。
(高吸水性シートの準備)
基材シート22として用いた高吸水性シートは、特許5894747号の明細書に記載の方法に従い製造した。この高吸水性シートは、ポリアクリル酸ナトリウム系の高吸収性ポリマーの粒子が、該シートの厚み方向略中央域に主として存在しており、且つ該シートの表面には該粒子が実質的に存在していない構造を有する1枚のシートである。高吸水性シートは、高吸収性ポリマーの粒子の存在部位を挟んで表裏に親水性の架橋嵩高セルロース繊維の層を有している。架橋嵩高セルロース繊維は、その繊維粗度が0.22mg/mであり、繊維長さの平均値は2.5mmであった。架橋嵩高セルロース繊維の層はさらに、針葉樹晒クラフトパルプ、紙力増強剤(PVA)を含んでいるものであった。高吸収性ポリマーの粒子は平均粒径340μmのものを使用した。高吸収性ポリマー粒子の坪量は30g/mであり、高吸水性シート即ち基材シート22の坪量は80g/mであった。
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の鉄粉を用いて調製した塗料の保存安定性(ハンドリング性)を下記方法により評価した。また、斯かる塗料を用いて製造した発熱体の発熱特性を下記方法により評価した。それらの結果を下記表1に示す。
<塗料の保存安定性の評価方法>
塗料の保存安定性は、塗料作製直後と、塗料作製直後から24時間静置後の固形分とを比較して評価した。塗料の固形分は、塗料の水分を加熱除去し、その残分質量を測定することで評価した。例えばメトラートレド株式会社製水分率計HR83を用い、1gの塗料を120℃、30分間乾燥させ、その残分質量を測定した。作成直後の固形分に対し、24時間静置後の固形分が変わらないものをGoodとし、24時間後に2%以上固形分が変化するものをNot Good(NG)とした。塗料の保存安定性はハンドリング性と密接に関連し、保存安定性の高い塗料は、ハンドリング性に優れ、扱いやすく塗工適性に優れると評価できる。
<発熱体の発熱特性の評価方法>
JIS S4100に記載の、使い捨てカイロ温度特性測定試験法により温度測定を行った。得られた発熱具を、坪量100g/mのニードルパンチ不織布製の袋に挿入し、これを40℃の恒温槽の上に置き発熱特性を評価した。この袋は、ニードルパンチ不織布の三方をシールすることで袋状に形成したものである。温度計は発熱具と恒温槽表面との間に配置した。発熱具は、非肌側のシート状被覆材の側を温度計に向くように載置した。発熱特性は時間に対する温度の変化をプロットし、温度が45℃を上回る領域を時間で積分し、その面積(K・min)で比較した。比較例1で示した既存の高反応性タイプ発熱組成物用鉄粉の値156K・minの約2倍300K・minを上回るものをGoodとし、それ以下のものをNGとした。
1 発熱具
2 発熱体
20 発熱組成物
21,22 基材シート
3 包材
30,31 被覆シート

Claims (10)

  1. かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の発熱組成物用鉄粉。
  2. かさ密度が0.3g/cm以上1.5g/cm以下の鉄粉、炭素材料、ハロゲン化物の塩及び水を含有する発熱組成物。
  3. 前記鉄粉の平均粒子径が、20μm以上150μm以下である請求項2に記載の発熱組成物。
  4. 前記鉄粉の金属鉄分の含有量が、60質量%以上95質量%以下である請求項2又は3に記載の発熱組成物。
  5. 前記鉄粉のBET比表面積が、0.1m/g以上である請求項2〜4の何れか1項に記載の発熱組成物。
  6. 流動性を有するスラリー組成物である請求項2〜5の何れか1項に記載の発熱組成物。
  7. 前記鉄粉の水銀圧入法による細孔容量が、1μm以上の範囲で、0.3cm/g以上である請求項2〜6の何れか1項に記載の発熱組成物。
  8. 前記鉄粉の表層部は、多数の繊維状物が3次元的にランダムに配置されて構成されている請求項2〜7の何れか1項に記載の発熱組成物。
  9. 請求項2〜8の何れか1項に記載の発熱組成物を含む発熱体。
  10. 請求項1に記載の発熱組成物用鉄粉の発熱体への使用。
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