JP2018188706A - 酸化物スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、上述の熱アシスト磁気記録媒体においては、例えば特許文献1に記載されているように、記録後の磁気記録層の熱を速やかに基板方向に放出するために、磁気記録層と基板との間に熱伝導率が高い金属膜(熱伝導層)を配置することが行われている。
ここで、特許文献1には、拡散バリア層を、窒化チタン、窒化タンタル、タングステン、ルテニウム等を含む材料で構成することが記載されている。
ここで、特許文献1に記載された熱アシスト磁気記録媒体において、拡散バリア層として例示されている窒化チタン、窒化タンタル、タングステン、ルテニウムといった材料は、磁気記録層を製造する際の例えば600〜700℃の熱処理、または、書き込み時に加えられる熱による300〜400℃の温度上昇により結晶成長し、拡散バリア層の表面粗さが増大する。すると、拡散バリア層の上に積層された磁気記録層の表面粗さも増大することになる。
また、Nb酸化物を含有しており、このNb酸化物を若干還元させることで、導電性が確保され、比抵抗値が1Ω・cm以下となり、DC(直流)スパッタ法によって成膜することができる。
さらに、Siを主体とするSi酸化物粒子の最大長が50μm以下とされているので、絶縁体であるSi酸化物粒子の大きさが小さく、スパッタ時における異常放電の発生を抑制し、この異常放電に起因するパーティクルの発生を抑制できる。
本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、金属元素としてNbとZrを含む酸化物の焼結体からなり、全金属元素に対して、Nbの原子比が30原子%以上85原子%以下とされ、残部がZr及び不可避不純物とした組成とされている。また、さらにSiを、全金属元素に対して45原子%以下含有していてもよい。
なお、さらにSi酸化物を含有している場合には、上述のZr酸化物粒子及びNb酸化物粒子に加えて、Siを主体とするSi酸化物粒子を有しており、このSi酸化物粒子の最大長(粒子の輪郭線上の任意の2点間の最大距離)が50μm以下とされている。
また、「Zrを主体とするZr酸化物粒子」は、酸化物粒子中の全金属元素においてZrを最も多く含む酸化物粒子である。
さらに、「Siを主体とするSi酸化物粒子」は、酸化物粒子中の全金属元素においてSiを最も多く含む酸化物粒子である。
なお、酸化物粒子中の各金属元素の割合は、酸化物粒子の断面観察を行い、EPMAを用いて分析することによって測定することができる。
Nbを主とする酸化物(例えばNb2O5)は、化学量論比から若干還元された状態(例えばNb2O4.8等)とすることで、導電性を有することになる。また、Nbの残部として含有されるZr(Zr酸化物)及びSi(Si酸化物)は、成膜されたスパッタ膜の耐熱性を向上させ、熱を加えた場合でも膜の平滑性を維持することが可能となる。
ここで、全金属元素に対するNbの原子比が30原子%未満では、酸化物スパッタリングターゲットの導電性が低下し、DC(直流)スパッタを行うことができないおそれがある。一方、全金属元素に対するNbの原子比が85原子%を超えると、Nbの残部として含有されるZr(及びSi)の含有量が不足し、成膜されたスパッタ膜に熱を加えた際に、スパッタ膜の結晶が成長しやすくなり、スパッタ膜の平滑性が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、全金属元素に対するNbの原子比を30原子%以上85%原子%以下の範囲内としている。
Zrを主体とするZr酸化物(例えばZrO2)は、成膜されたスパッタ膜の耐熱性を向上させ、結晶粒の成長を抑制する作用効果を有し、熱を加えた際のスパッタ膜の平滑性の維持に寄与する。しかしながら、Zr酸化物は絶縁体であるため、酸化物スパッタリングターゲット中に粗大なZr酸化物粒子が分散していると、スパッタ時に異常放電が生じやすく、この異常放電によってパーティクルが発生しやすくなる。
なお、異常放電の発生をさらに抑制するためには、Zrを主体とするZr酸化物粒子の最大長を40μm以下とすることが好ましく、25μm以下とすることがさらに好ましい。
Siを主とする酸化物(例えばSiO2)は、成膜されたスパッタ膜を非晶質とし、スパッタ膜の平滑性を向上させる作用効果を有する。一方、全金属元素に対するSiの含有量が45原子%を超えると、酸化物スパッタリングターゲットの導電性が低下し、DC(直流)スパッタを行うことができないおそれがある。
なお、成膜されたスパッタ膜の平滑性をさらに向上させるためには、全金属元素に対するSiの原子比の下限を15原子%以上とすることが好ましく、20原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、酸化物スパッタリングターゲットにおける導電性を確実に確保するためには、全金属元素に対するSiの原子比の上限を40原子%以下とすることが好ましく、35原子%以下とすることがさらに好ましい。
Si酸化物は絶縁体であるため、酸化物スパッタリングターゲット中に粗大なSi酸化物粒子が分散していると、スパッタ時に異常放電が生じやすく、この異常放電によってパーティクルが発生しやすくなる。
以上のことから、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットにおいては、Siを主体とするSi酸化物粒子の最大長(粒子の輪郭線上の任意の2点間の最大距離)を50μm以下に制限している。
なお、異常放電の発生をさらに抑制するためには、Siを主体とするSi酸化物粒子の最大長を40μm以下とすることが好ましく、25μm以下とすることがさらに好ましい。
上述のように、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットにおいては、化学量論比から若干還元されたNb酸化物粒子が導電性を確保することになる。ここで、Nb酸化物粒子のうち、その周囲が絶縁体であるZr酸化物粒子及びSi酸化物粒子によって取り囲まれたNb酸化物孤立粒子は、導電性の向上に寄与しないため、Nb酸化物孤立粒子の観察領域全体に占める面積割合を30%以下とすることにより、酸化物スパッタリングターゲットの導電性を確保でき、DC(直流)スパッタを安定して行うことができる。
なお、酸化物スパッタリングターゲットの導電性をさらに向上させるためには、Nb酸化物孤立粒子の観察領域全体に占める面積割合を20%以下とすることが好ましく、15%以下とすることがさらに好ましい。
酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗値が1Ω・cmを超えると、DC(直流)スパッタを安定して行うことができなくおそれがあった。また、異常放電が発生しやすくなり、これに起因してパーティクルが発生するおそれがあった。
以上のことから、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットにおいては、比抵抗値を1Ω・cm以下としている。
なお、DC(直流)スパッタをさらに安定して実施するためには、比抵抗値を1×10−1Ω・cm以下とすることが好ましい。
次に、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットの製造方法について、図1に示すフロー図を参照して説明する。
まず、酸化Nb粉末と酸化Zr粉末と必要に応じて酸化Si粉末とを含む原料粉末を準備する(原料粉末準備工程S01)。
また、原料粉末として酸化Si粉末を用いる場合には、酸化Zr粉末と同様に、酸化Nb粉末の平均粒径DNbと酸化Si粉末の平均粒径DSiの比率DSi/DNbが0.2以上2.5以下の範囲内であることが好ましい。
この焼結工程S02により、酸化Nb粉末の一部が還元され、かつ、Nb酸化物粒子が孤立せずに焼結体全体において繋がった構造となる。これにより、焼結体の導電性が確保されることになる。
ここで、Siを主体とするSi酸化物粒子の最大長が50μm以下とされているので、絶縁体であるSi酸化物粒子の大きさが小さく、スパッタ時における異常放電の発生を抑制し、この異常放電に起因するパーティクルの発生を抑制できる。
原料粉末として、酸化Zr粉末(ZrO2粉末:純度99.9mass%以上、平均粒径10μm)と、酸化Si粉末(SiO2粉末:純度99.8mass%以上、平均粒径2μm)と、酸化Nb粉末(Nb2O5粉末:純度99.9mass%以上、平均粒径0.2μm)と、を準備した。これらの原料粉末を、表1に示す原子比となるように秤量した。
得られた焼結体に対して機械加工を施して、直径152.4mm、厚さ6mmの円板状の酸化物スパッタリングターゲットをそれぞれ2枚作製した。
作製した2枚の酸化物スパッタリングターゲットのうちの1枚を比抵抗の測定に用い、残りの1枚をスパッタ試験に用いた。また、比抵抗の測定を実施した後、この酸化物スパッタリングターゲットから試料片を採取し、金属元素の分析及び組織観察を実施した。
上述の酸化物スパッタリングターゲットから採取した試料片を酸に溶解し、得られた溶液の組成を、アジレントテクノロジー株式会社製誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)装置(Agilent 5100)により分析して、Nb,Siの原子比を分析した。分析結果を表1に示す。
比抵抗は、四探針法により測定した。測定は、ターゲットスパッタ面(円)の中心点で実施した。測定結果を表2に示す。
ターゲットスパッタ面(円)の中心部分から試料片を採取し、これを樹脂に埋め、樹脂埋めした試料片のターゲットスパッタ面を研磨装置により鏡面研磨した。そして、研磨面について、EPMA(日本電子株式会社製JXA−8500F)により観察ならびに面分析による元素マッピングを、以下の条件で実施した。
加速電圧:15kV
照射電流:5×10−8A
ビーム径:100μm
また、同様の画像処理により、主にNbからなるNb酸化物粒子の全領域の面積を算出し、そのうちの最大の面積を有する領域以外を孤立した領域とみなし、その面積の合計を画像処理の対象とした領域全体の面積で割った値(%)を算出した。これを他の酸化物粒子により囲まれて孤立したNb酸化物孤立粒子の面積率とした。測定結果を表2に示す。
酸化物スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これをマグネトロン式のスパッタ装置(株式会社ULVAC製SIH−450H)内に装着した。次いで、真空排気装置にてスパッタ装置内を5×10−5Pa以下にまで排気した後、Arガスを導入して、スパッタガス圧を0.67Paに調整し、直流にて500Wの電力を投入して1時間のプレスパッタリングを実施し、ターゲットスパッタ面の加工層を除去した。また、これによりDC(直流)スパッタの可否を判断した。
上記のプレスパッタリングにおいてDC(直流)スパッタが可能であった酸化物スパッタリングターゲットについて、上記と同条件にて、1時間の連続スパッタリングを行った。この1時間の間に発生した異常放電回数を、使用したスパッタ装置の直流電源に備えられたアーキングカウント機能を用いて計測した。その結果を表3に示す。
上記の異常放電回数の測定後、当該酸化物層と熱伝導層に相当する膜との積層成膜試験を実施した。熱伝導層に相当する材料としてAg−Cu合金(Ag−1mass%Cu)を用いた。上述の酸化物スパッタリングターゲットと同寸法のスパッタリングターゲットを準備し、無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、上記スパッタリング装置に装着した。なお当該スパッタ装置はチャンバー内にカソードが3基装備されており、3つのスパッタリングターゲットを装着することで真空を破らずに一度に3種類までの膜を積層することができる。
上記とは別に直径6インチのSi基板上にAg−Cu合金膜の単層500nm、および酸化物層の単層500nmをそれぞれ成膜し、得られた各膜を酸で溶解した溶液の組成を、アジレントテクノロジー株式会社製誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)装置(Agilent 5100)により分析した。その結果、Ag−Cu合金膜、酸化物膜ともに、ほぼスパッタリングターゲットの組成と同じであることを確認した。
積層膜の表面粗さRaを、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製SPI3800N)により測定した。得られた成膜直後の表面粗さRa(JIS B0601:2001)を、表3に示す。
次に積層膜を、600℃の温度で熱処理した。熱処理は、窒素雰囲気中で、1℃/秒の速度にて600℃まで昇温し、600℃の温度で1分間保持した後、室温まで放冷することによって行った。
熱処理後の積層膜について、表面粗さを上記の方法を用いて測定した。得られた熱処理後の表面粗さRaを、表3に示す。
熱処理後の積層膜について、X線光電子分光(XPS)法により積層構造体(積層膜)の表面、すなわち酸化物膜の表面における定性分析を実施し、熱処理により酸化物膜の表面にAgが拡散してきているかを確認した。表面におけるAgの検出有無を表3に示す。
全金属元素に対するNbの原子比が90原子%と本発明の範囲よりも多い比較例2においては、成膜した膜の表面粗さRaが大きくなり、膜の平滑性が不十分であった。
全金属元素に対するSiの原子比が50原子%と本発明の範囲よりも多い比較例3においては、比抵抗が高く、DC(直流)スパッタを行うことができなかった。
組織観察において、Si酸化物粒子の最大長が51μmと本発明の範囲よりも大きい比較例7においては、異常放電回数が多く、安定してスパッタ成膜をすることができなかった。
また、本発明例1−6においては、熱処理前後において膜の表面粗さRaが十分に小さく、平滑なスパッタ膜を成膜可能であった。また、熱処理後においても、酸化物表面にAgが検出されておらず、Agの拡散が抑制されており、酸化物膜が拡散バリア層として機能することが確認された。
Claims (2)
- 金属元素としてNbとZrを含む酸化物の焼結体からなる酸化物スパッタリングターゲットであって、
全金属元素に対して、Nbの原子比が30原子%以上85原子%以下とされ、残部がZr及び不可避不純物とされており、
Zrを主体とするZr酸化物粒子とNbを主体とするNb酸化物粒子とを有しており、前記Zr酸化物粒子の最大長が50μm以下とされ、
比抵抗値が1Ω・cm以下であることを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。 - さらに、Siを全金属元素に対して45原子%以下含有しており、
Siを主体とするSi酸化物粒子の最大長が50μm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物スパッタリングターゲット。
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