JP2018177892A - セルロース誘導体の製造方法 - Google Patents

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信介 赤尾
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Abstract

【課題】置換度のばらつきを抑えた嵩高い有機シリル基を有するシリルエーテルセルロース誘導体の製造において、反応途中で生成物の析出を抑制することが可能な工業プロセスに適した前記シリルエーテルセルロース誘導体の新規製造方法の提供。【解決手段】シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法であって、(1)セルロースを非プロトン性溶媒(A)に溶解させ、セルロース溶液を得る工程;(2)工程(1)で得られたセルロース溶液に、有機シリル化剤を添加することにより、シリルエーテルセルロース誘導体を得る工程;工程(2)の反応中において、セルロース及びシリルエーテルセルロース誘導体のいずれも溶媒から析出しない、シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法。工程(2)において、セルロースへのシリル基置換度が1.0〜1.5において、非プロトン性溶媒(B)を添加する、シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、有機シリル基を有するシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法に関する。
近年の電子材料関連市場、中でもフレキシブルディスプレイやタッチパネル市場において、耐熱性と透明性を兼ね備え、さらに形状自由度が高く薄型・軽量化が容易なプラスチックフィルムは、従来のガラス基板の代替材料として市場拡大が期待される。
中でも各種画像表示機器に使用される光学フィルムは、次世代のモデルを含めた電子デバイス機器の構成要素として重要であり、要求される光学特性に応じて、様々な材料設計思想に基づく多くのフィルムや材料が開発されている。
その一つとして、例えば、逆波長分散性や低光弾性係数を有するセルロース誘導体の検討がなされている。また、表示装置の薄型化に鑑みた場合、当該フィルムの厚みも薄くすることが求められる。
これらの目的に対して種々のアプローチが検討されており、例えば、特許文献1のように、有機シリル基を有するセルロース誘導体が開発されている。
シリル基を有するセルロースの製造方法としては、例えば、非特許文献1、2の合成方法がある。
WO2008/143322号公報
Macromol.Symp.,120,115−125(1997) BioResources,3(1),79−90(2008)
しかしながら、本発明者らの検討によれば、非特許文献1の方法は、不均一系の反応では有機シリル基の導入率に限界があり、置換度を制御できないことがわかった。また均一系の反応であっても置換度が1.5を超えると反応液中でシリルエーテルセルロースが析出する、という課題があることがわかった。
同様に均一系の反応である非特許文献2の方法も、反応中にシリルエーテルセルロースがゲル状になり、特に高温で反応させた場合に分子内、あるいは分子間のグルコース単位毎に置換度がばらつき、逆波長分散性や低光弾性係数などの目的とする特性に影響がでることがわかった。
さらに、反応中にシリルエーテルセルロースが析出する場合、析出物の形状によっては反応装置の撹拌設備を傷めたり、反応槽からの払い出しが困難になり、工業的な利用には課題となることも判明した。
本発明はこのような事情に鑑みて成されたものであり、置換度のばらつきを抑えた嵩高い有機シリル基をもつシリルエーテルセルロースの製造方法であって、反応途中で生成物の析出を抑制できる工業プロセスに適した製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、反応溶媒中にセルロースを溶解させて均一系で有機シリル化反応を開始し、有機シリル基の導入量を制御する、あるいは反応途中に特定のタイミングで新たな溶媒を添加することで、シリルエーテルセルロースの反応中の析出を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
<1>
シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法であって、
(1)セルロースを非プロトン性溶媒(A)に溶解させ、セルロース溶液を得る工程(1)、
(2)前記工程(1)で得られたセルロース溶液に、有機シリル化剤を添加することにより、シリルエーテルセルロース誘導体を得る工程(2)、
を含み、
工程(2)の反応中において、セルロースおよびシリルエーテルセルロース誘導体のいずれも溶媒から析出しないことを特徴とする、シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法に関する。
<2>
前記工程(2)において、セルロースへのシリル基置換度が1.0〜1.5において、さらに非プロトン性溶媒(B)を添加することを特徴とする、<1>に記載のシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法に関する。
<3>
前記非プロトン性溶媒(A)が、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、<1>または<2>に記載のシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法に関する。
前記非プロトン性溶媒(B)が、ピリジン、トルエン、キシレン、ジオキサン、クロロベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、<1>〜<3>のいずれ1項に記載にシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法に関する。
本発明の目的は、セルロース分子内あるいは分子間における有機シリル基の置換度のばらつきを低減した嵩高い有機シリル基をもつシリルエーテルセルロースの、生産性の高い工業プロセスに適した製造方法を提供することである。
本発明の実施例に係るプロセスフローを示す。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
本明細書中、数値範囲に関して「A〜B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
(セルロース誘導体)
本発明は、セルロースに有機シリル基を導入したセルロース誘導体(以下、シリルエーテルセルロース誘導体、またはセルロース誘導体Aとも記載する)の製造方法に関する。本発明のシリルエーテルセルロース誘導体にさらにアシル基を導入したセルロース誘導体(以下、シリルエーテルセルロースエステル誘導体、またはセルロース誘導体Bとも記載する)を製造することも可能である。また、セルロースエステル誘導体に有機シリル基を導入して、シリルエーテルセルロースエステル誘導体を製造する際に、本発明を適用することも可能である。
例えば、下記一般式(1)に記載のように、セルロースを構成する単量体であるβ-グルコース骨格が有する3つのヒドロキシル基を、公知の各種変換反応によりアルコール誘導体(OR)に変換したものである。
Figure 2018177892
[一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、有機シリル基(当該有機シリル基は、脂肪族基、不飽和脂肪族基又は芳香族基を有する)、及びアシル基(当該アシル基は、脂肪族基、不飽和脂肪族基又は芳香族基を有する)からなる群より選択され、かつ、前記セルロース誘導体中には、(a)前記有機シリル基、又は、(a)前記有機シリル基及び(b)前記アシル基が含まれ、nは正の整数である]
なお、本明細書において、前記一般式(1)において括弧内に描かれている、セルロース誘導体の重合単位のことを「セルロースユニット」とも称する。
(セルロースに有機シリル基を導入したセルロース誘導体の製造方法)
次に、セルロースに有機シリル基を導入したセルロース誘導体の好ましい製造方法について説明する。
本発明のセルロース誘導体Aは下記製造方法によって得られるのが好ましいが、他の製造方法によって同様のセルロース誘導体Aが得られるなら、製造方法は下記に限定されない。また、より具体的な製造方法については、後述の合成例において開示されている。
例えば、、セルロース誘導体Aの製造方法は
(1)セルロースを非プロトン性溶媒(A)に溶解させ、セルロース溶液を得る工程(1)、
(2)前記工程(1)で得られたセルロース溶液に、有機シリル化剤を添加させることにより、シリルエーテルセルロース誘導体を得る工程(2)、
を含み、工程(2)の反応中において、セルロースおよびシリルエーテルセルロース誘導体のいずれも溶媒から析出しないことを特徴とする。
(工程(1))
本発明における工程(1)は、セルロースを非プロトン性溶媒(A)に溶解させ、セルロース溶液を得る工程(1)であることを特徴とする。
(セルロース)
本発明に用いるセルロースについては特に制限がなく、種々のセルロースを使用することができる。例えば、綿リンタ、コーンスターチ、デンプン等を原料とするセルロースを挙げることができる。また、セルロースの分子量も特に制限がないが、フィルム等に成形した後の特性、特に機械強度や耐熱性等に影響を及ぼすことがある。例えば、数平均分子量であれば、10,000〜400,000が好ましく、20,000〜300,000がより好ましい。なお、本発明においては、セルロースは各種置換基を含まない原料のセルロースのことをいい、粉体であるため粉末セルロースとも記載することがある。
(非プロトン性溶媒(A))
本発明に用いる非プロトン性溶媒(A)とは、原料となるセルロースを溶解させる溶媒である。非プロトン性溶媒(A)としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒を、単独であるいは2種類以上の混合物として用いることができる。
(溶解助剤)
本発明の好ましい実施形態としては、工程(1)において溶解助剤を共存させることが望ましい。溶解助剤とは、原料となるセルロースを溶媒に溶解させる際に共存させることにより、セルロースの溶解性を向上させる物質である。溶解助剤としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物からなるイオン液体などを挙げることができるがこれに限定されない。これらの中で経済性や工業的な入手性の観点からは塩化リチウムが好ましい。塩化リチウムの使用量はセルロースが溶解する限りは特に限定されないが、セルロースのβ-グルコース単位に対し、2〜6当量が好ましく、4〜6当量がさらに好ましい。
(工程(1)の製造条件)
本発明の工程(1)において、例えば、粉末セルロースをジメチルアセトアミドと混合し、撹拌懸濁下、100℃〜150℃の温度条件下、1時間〜5時間加熱することが好ましい。例えば、130℃程度で約2時間加熱した後、塩化リチウムを加えてさらに撹拌を続け室温に戻すことで、セルロース溶液を得ることができる。
(工程(1)の水分量制御)
セルロースおよび塩化リチウムは吸湿性が高く、通常それぞれ数%の水分を保持しているため、調製したセルロース溶液にはセルロースおよび塩化リチウムからの水分が持ち込まれるおそれがある。しかしながら、有機シリル化反応に用いる有機シリル化剤は水分により失活し、反応率が低下したり、不純物として反応系中に残存したりするため、有機シリル化剤の使用量低減や後工程での精製負荷低減の観点から、セルロース溶液中の水分量は低い方が好ましい。具体的には2,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。
そのため、セルロースおよび塩化リチウムから混入する水分を除去することが好ましい。最も単純には、使用前にセルロースおよび塩化リチウムを常圧下、あるいは減圧下において加熱することで水分量を約1%以下に除去することができる。また、セルロース、ジメチルアセトアミド、塩化リチウムを混合した後でも水分を除去することができる。具体的には、セルロースとジメチルアセトアミドのスラリー、あるいは塩化リチウムを用いてセルロースを溶かしたセルロース溶液を撹拌下減圧加熱して、微量の水分を含むジメチルアセトアミドを揮発留去させることで、セルロース溶液中の水分量を低減させることができる。セルロース溶液から水分を除去する場合は、溶液の粘度が高く、効率が悪いため、薄膜蒸発機などを用いることが好ましい。
(セルロース溶液の濃度)
セルロース溶液中のセルロース濃度は特に限定されないが、撹拌効率や生産性の観点から、1重量%〜20重量%が好ましく、3重量%〜15重量%がより好ましく、5重量%〜10重量%がさらに好ましい。使用するセルロースの分子量によっても最適なセルロース濃度は変動しても構わない。
(工程(2))
本発明における工程(2)は、前記工程(1)で得られたセルロース溶液に、有機シリル化剤を添加させることにより、シリルエーテルセルロース誘導体を得る工程(2)を含み、工程(2)の反応中において、セルロースおよびシリルエーテルセルロース誘導体のいずれも溶媒から析出しないことを特徴とする。
(酸補捉剤)
本発明の好ましい実施形態としては、工程(2)において酸捕捉剤を共存させることが望ましい。酸補捉剤は、シリル化反応により副生する塩化水素を中和することができれば特に制限はなく、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。酸補捉剤の量は溶液pHの観点から、加える有機シリル化剤に対して当量以上が好ましいが、その限りではない。
(求核触媒)
本発明の好ましい実施形態としては、工程(2)において、求核触媒を添加してもよい。求核触媒は前記有機シリル化反応を活性化することができれば特に限定されない。例えば、N,N−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジンなどが例示される。
(有機シリル化剤)
本発明に用いる有機シリル化剤は、セルロースに有機シリル基を導入できれば、特に限定されない。例えば、セルロース誘導体の耐熱性の高さおよび有機溶剤に対する可溶性付与の観点から脂肪族基又は芳香族基を有していることが好ましく、更に嵩高い置換基を少なくとも1つ有していることがより好ましい。このため、有機シリル基の中でも、2級又は3級の置換基を少なくとも1つ有する3置換有機シリル基をもった有機シリル化剤が好適である。
前記有機シリル基が有している前記嵩高い置換基としては、3級ブチル基、3級ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、フェニル基、ナフチル基等が該当し、特には限定されないが、3級ブチル基、3級ヘキシル基又はイソプロピル基を有していることが特に好ましい。セルロース骨格への導入を管理しやすい点から、前記有機シリル基は、3級ブチルジメチルシリル基(以下、TBDMS基と記載することがある)、3級ブチルジフェニルシリル基(以下、TBDPS基と記載することがある)、3級ヘキシルジメチルシリル基(以下、THDMS基と記載することがある)、トリイソプロピルシリル基(以下、TIPS基と記載することがある)のいずれかであることが好ましい。すなわち、本発明に用いる有機シリル化剤としては、特に限定されないが、3級ブチルジメチルクロロシラン、3級ブチルジフェニルクロロシラン、3級ヘキシルジメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシランなどが挙げられる。これらの中で経済性や工業的な入手性の観点から、3級ブチルジメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシランが特に好ましい。
有機シリル化剤の使用量は目的とする特性を発現できれば、つまり目的とする有機シリル基置換度を達成できれば、特に制限されない。セルロースと有機シリル化剤が化学量論的に反応するとし、系中の水分と反応する量(詳細は後述する)を加味して、使用する有機シリル化剤量を決定する。有機シリル化剤の使用量は有機シリル化剤の構造、特に嵩高さにも依存することがある。例えば、嵩高さが大きいTIPS基は置換度が上がりにくい傾向にあり、ある一定の置換度を超える場合、その置換度に対して過剰量を使用してもそれ以上のTIPS基が導入されることはない。しかしながら、経済性の観点から、必要最小量の有機シリル化剤を使用することが好ましい。
(工程(2)の製造条件)
本発明の工程(2)において、例えば、工程(1)で得られたセルロース溶液に、酸補捉剤としてトリエチルアミンを加えて撹拌しながら、再度80℃に昇温し、別途ジメチルアセトアミドに溶解した、有機シリル化剤である3級ブチルジメチルクロロシランを添加して反応させる。反応の均一性確保、過剰な発熱抑制、置換度の制御などの観点からは有機シリル化剤溶液を逐次添加することが好ましい。添加量制御の観点から、3級ブチルジメチルクロロシランのように常温で固体の有機シリル化剤は溶媒に溶解させることが好ましく、溶媒は他の非プロトン性溶媒(A)や後述する非プロトン性溶媒(B)でも構わない。トリイソプロピルクロロシランのように常温で液体のものはそのまま添加してもよい。反応温度には特に制限はないが、好ましくは20℃〜120℃、より好ましくは50℃〜100℃、さらに好ましくは70℃〜90℃の範囲である。反応温度が20℃より高い場合、セルロース溶液の粘度が低くなって撹拌モーターへの負荷が小さくなり好ましい。また、必要な反応時間も短くなり生産性が良好である。一方、反応温度が120℃より低い場合は原料の揮発を抑制でき、好ましい。反応雰囲気は空気でも構わないが、外部からの水分の混入や酸化による樹脂への着色を防ぐために窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。また、圧力は通常大気圧以上が好ましい。
有機シリル化反応の進行に伴い、セルロースへ有機シリル基が導入され、ジメチルアセトアミドへの溶解性が低下する。3級ブチルジメチルシリル基の場合、置換度1.5を超えると一気にシリルエーテルセルロース誘導体が析出する。この時の置換度は全体の平均値であり、グルコース単位毎の置換度にはムラが生じるため、析出するタイミングは置換度1.5から±0.02程度前後する可能性がある。析出したセルロース誘導体はよほど撹拌のせん断力が大きくない限り凝集し、ひどい場合は一つの塊へと成長する。この現象は制御が難しく、撹拌装置への過剰トルク負荷により装置を傷める可能性がある。また、樹脂生成物は通常、装置下部のバルブを通して排出されるが、本例のように過剰に凝集した樹脂は排出できず、上部マンホールからの抜き出し対応などが必要になるため、工業プロセス上、好ましくない。
シリルエーテルセルロース誘導体の析出を抑制するためには、例えば、
(a)有機シリル基の置換度を制御し、析出する前、つまり置換度が1.5に到達する前に反応を停止する
(b)前記工程(2)において、さらに析出を抑制するための非プロトン性溶媒(B)を添加する方法がある。
まず(a)については、逐次添加する有機シリル化剤の量を管理することで達成することができる。例えば、有機シリル化剤として有機クロロシランを使用する場合、セルロース溶液中に存在する水分が優先的に有機クロロシランと反応し、副生成物としてシラノールあるいはシロキサンが生成するため、副反応で消費される有機クロロシラン量を考慮し、残りの有機クロロシランがセルロースと化学量論的に反応するとして添加する有機クロロシラン量を決定する。副反応で消費される有機クロロシラン量はセルロース溶液中の水分濃度を測定することで、算出することができる。例えば、3級ブチルジメチルクロロシランの場合、実施例に記載するように、水分に対して1.0モル倍量〜1.4モル倍量の有機クロロシランが副反応で消費されることが経験的に分かっているため、セルロース溶液中の水分濃度を測定し、水分量を定量することで、副反応で消費される有機クロロシランの量を見積もることができる。なお、セルロース溶液中の水分濃度はカールフィッシャー法などの公知の技術によって測定することができる。
次に(b)については反応の途中、つまり目的の置換度に達する前に、シリルエーテルセルロース誘導体に対して良溶媒である非プロトン性溶媒(B)を添加することで達成することができる。
(非プロトン性溶媒(B))
本発明において使用することができる非プロトン性溶媒(B)としては、シリルエーテルセルロース誘導体を溶かし、かつ反応を阻害しない限り特に制限はない。例えば、ピリジン、トルエン、キシレン、ジオキサン、クロロベンゼンなどを例示でき、これらを単独であるいは2種類以上の混合物として用いることができる。非プロトン性溶媒(B)の添加量はシリルエーテルセルロース誘導体の析出を抑制できる限り特に制限はないが、通常セルロースに対して3倍量以上が好ましい。しかしながら、有機シリル基およびアシル基の置換基の構造(立体障害や極性など)や、非プロトン性溶媒(A)の量、さらには系中に存在する水分量などの影響を受けることも多いため、状況に応じて検討する必要がある。なお、ピリジンなどの塩基性溶媒の場合は、酸補捉剤としても作用するため、必ずしも別の酸補捉剤を添加する必要はない。非プロトン性溶媒(B)は反応の途中に添加することで初めて有効に作用する。非プロトン性溶媒(B)を反応の途中で添加しない場合、セルロース誘導体が反応中にゲル状になることがある。
本発明の工程(2)において、例えば、工程(1)で得られたセルロース溶液にトリエチルアミンを加えて撹拌しながら80℃に昇温し、別途ジメチルアセトアミドに溶解した3級ブチルジメチルクロロシランを添加して、置換度1.4まで反応を進める。その後ピリジンを添加し、さらに3級ブチルジメチルクロロシランを添加して目的の置換度、例えば1.6まで反応させる。従来のピリジンを添加しない場合はシリルエーテルセルロース誘導体が析出、凝集するのに対し、反応の途中でピリジンを添加することにより、反応中におけるシリルエーテルセルロース誘導体の析出を抑制することができ、かつ、グルコース単位毎の置換度のばらつきが少ないシリルエーテルセルロース誘導体を合成することができる。非プロトン性溶媒(B)の添加量は目的の置換度に応じても変動し、置換度が高くなるにつれて析出を抑制するために多く必要となる傾向にある。
一方、本発明の工程(2)において、例えば、工程(1)で得られたセルロース溶液にトリエチルアミンおよびピリジンを加えて撹拌しながら80℃に昇温し、別途ジメチルアセトアミドに溶解した3級ブチルジメチルクロロシランを添加して反応させた場合、つまり、非プロトン性溶媒(B)を反応前に添加した場合も、置換度が1.6に達したとしても、前記同様、シリルエーテルセルロース誘導体の析出は抑制される。しかしながら、得られるシリルエーテルセルロース誘導体のグルコース単位毎の置換度のばらつきは、非プロトン性溶媒(B)を反応途中に添加した場合と比較して大きくなり、目的とする特性に影響ができることが予想される。置換度のばらつきを抑える観点から、置換度が1.0に到達した後に非プロトン性溶媒(B)を添加することが好ましい。つまり、非プロトン性溶媒(B)はシリル基置換度1.0〜1.5において添加することが好ましい。
(グルコース単位毎の有機シリル基置換度のばらつき)
本発明において、セルロース分子内あるいは分子間における有機シリル基の置換度のばらつきを小さくすることが重要である。有機シリル基の置換度のばらつきが小さいことにより、例えば、種々の溶媒への溶解性や、逆波長分散性や低光弾性係数などの目的とする特性を改善することができ、好ましい。
ここで、グルコース単位毎の有機シリル基置換度のばらつきはガスクロマトグラフィーによる置換度の分析結果と、シリルエーテルセルロース誘導体のクロロホルムへの溶解性から判断する。
ガスクロマトグラフィーによる置換度の定量方法の詳細については後述するが、まず、ガスクロマトグラフィーからセルロースと反応した有機シリル化剤の量を定量し、置換度を算出する。前記例においては、ピリジンを反応途中に添加した場合も、反応前に添加した場合も、どちらもTBDMS基の置換度は1.6と算出される。次にシリルエーテルセルロース誘導体のクロロホルムへの溶解性を確認するが、3級ブチルジメチルシリルエーテルセルロースの場合、置換度が1.2を超えると通常はクロロホルムへ溶解する。前記例において、ピリジンを反応途中に添加した場合は、シリルエーテルセルロース誘導体は従来通りクロロホルムへ溶解する。当然ながら、ピリジンを加えずに、シリルエーテルセルロースが析出する前に反応を停止した場合も、シリルエーテルセルロースはクロロホルムへ溶解する。しかしながら、前記例において、ピリジンを反応前に添加した場合は、シリルエーテルセルロース誘導体はクロロホルムへ溶解しない。この結果から、シリルエーテルセルロース全体としての平均置換度は1.6であるが、グルコース単位毎の置換度のばらつきが大きく、置換度が1.2を下回る割合が多くなっていると判断できる。
本発明の工程(2)の後工程として、シリルエーテルセルロース誘導体に対して貧溶媒として作用する溶媒を添加して、反応系中からシリルエーテルセルロース樹脂を沈殿させる。貧溶媒としては、反応溶媒と混和する極性の高いものが好ましい。例えば、水、アルコールが好ましいが、これに限定されない。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが挙げられる。経済性やハンドリング性の観点から、メタノールがより好ましい。沈殿した樹脂の回収方法としては特に限定されないが、濾過や遠心分離などの公知の固液分離法により、液相を除去後、得られた樹脂を上記有機溶剤で洗浄して、残存する反応溶媒や不純物を除去し、さらに有機溶剤を乾燥により除去し、樹脂粉体として回収するのが最も簡便であり好ましい。樹脂の洗浄溶媒は、樹脂を溶かさず、不純物を溶かす限り上記有機溶媒に限定されない。もちろん有機溶媒の水溶液でも構わない。経済性、ハンドリング性、沸点の観点からメタノールが好ましい。樹脂の洗浄性は樹脂の形状に依存するが、反応系中から樹脂を沈殿させる際の撹拌せん断を強くすることで、洗浄性に優れた細かい樹脂を得ることができる。有機溶剤の乾燥方法としては、特に限定されないが、各種装置を用いた真空乾燥、加熱乾燥、風乾などを用いることができる。
(アシル化工程)
次に本発明の、シリルエーテルセルロース誘導体に、さらにアシル基を導入したセルロース誘導体Bを製造することができる。アシル基を導入する方法、つまりアシル化工程の好ましい製造方法について説明する。本発明のセルロース誘導体Bは下記製造方法によって得られるのが好ましいが、他の製造方法によって同様のセルロース誘導体Bが得られるなら、製造方法は下記に限定されない。
(アシル化剤)
本発明に用いるアシル化剤は、シリルエーテルセルロースへアシル基を導入することができれば特に制限されない。例えば、各種カルボン酸、カルボン酸無水物等が挙げられる。具体的には、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩化物等が挙げられる。これらの中でも、嵩高さの付与による逆波長分散性、低光弾性係数、耐熱性等の観点から、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸が好ましい。
(アシル化工程における反応助剤)
本発明に用いる反応助剤は、アシル基を導入するアシル化工程を促進させることができれば特に制限されない。例えば、触媒、縮合剤、活性化剤等が挙げられる。
(アシル化工程における縮合剤)
本発明に用いる縮合剤も公知のものを使用することができる。例えば、カルボジイミド系縮合剤、イミダゾール系縮合剤、トリアジン系縮合剤、ホスホニウム系縮合剤、ウロニウム系縮合剤、ハロウロニウム系縮合剤等が挙げられる。
(アシル化工程における活性化剤)
本発明に用いる活性化剤も公知のものを使用することができる。例えば、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等のスルホン酸誘導体が挙げられる。これらの中でも、本反応においては、経済性やハンドリング性の観点から、p−トルエンスルホニルクロリドがより好ましい。
(アシル化工程における溶媒)
本発明のアシル化工程に用いる溶媒は、前記シリルエーテルセルロースを溶解することができれば特に制限されない。例えば、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン等が例示される。
(アシル化工程における溶媒)
シリルエーテルセルロースの溶解温度およびアシル化反応温度には特に制限はないが、好ましくは20〜120℃、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃の範囲である。反応温度が20℃より高い場合、セルロース溶液の粘度が低くなって撹拌モーターへの負荷が小さくなり好ましくない。また、必要な反応時間も短くなり生産性が良好である。一方、反応温度が120℃より低い場合は原料の揮発を抑制でき、好ましい。反応雰囲気は空気でも構わないが、外部からの水分の混入や酸化による樹脂への着色を防ぐために窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。また、圧力は通常大気圧以上が好ましい。
本発明のアシル化反応に用いる活性化剤は水分により失活し、反応率が低下したり、不純物として反応系中に残存したりするため、活性化化剤の使用量低減や後工程での精製負荷低減の観点から、シリルエーテルセルロース溶液中の水分量は低い方が好ましい。具体的には1,500ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。
本発明におけるエステル化後のセルロース誘導体Bは、前記セルロース誘導体Aの場合と全く同様の方法で回収することができる。
(セルロース置換度)
本発明においては、セルロース分子中の2、3、6位に存在する3個の水酸基が置換基によってどれだけ置換されているかを示す値を置換度D(具体的には、DおよびD)と呼ぶ。
本発明における置換度DまたはDは、セルロース分子中の2、3、6位に存在する3個の水酸基が、置換位置に関係なく、平均してどれだけ有機シリル化またはアシル化されているかを表し、それぞれの最大値は3である。また、有機シリル基とアシル基の置換度の合計(D+D)の最大値も3である。置換度Dを特に「有機シリル基の置換度」、置換度Dを特に「アシル基の置換度」と呼称する場合がある。
置換度DおよびDの値は、H−NMR測定によって計算することができる。具体的には、導入した有機シリル基が有する脂肪族基プロトンの積分値、または、アシル基が有する脂肪族基または芳香族基プロトンの積分値と、セルロース骨格由来のプロトンの積分値との比を取ることで、セルロースユニット当りに導入された有機シリル基及びアシル基の個数を置換度としてそれぞれ算出することができる。
置換度(D)は、0.10〜2.00であり、好ましくは0.15〜1.00である。
(第三成分)
本発明の一実施形態に係るフィルムは、ポリマー材料からフィルムを製造する際に、必要に応じて可塑剤や熱安定剤、紫外線安定剤、面内レタデーション上昇剤、フィラー等の添加剤を第三成分として加えてもよい。特に、得られたフィルムの脆さを補う目的、又は延伸等の加工特性を改善する目的で、可塑剤を加えることは有効である。第三成分の配合量は、所望の光学特性を損なわない範囲で任意である。
(セルロース誘導体の分子量)
本発明で使用されるセルロース誘導体(樹脂)の分子量は、フィルム成形が可能な限り特に限定されるものではない。例えば、靱性に優れたフィルムを得るためには、樹脂の数平均分子量が、10,000〜400,000であることが好ましい。天然樹脂を原料とした樹脂を用いる場合、入手性の観点から、樹脂の数平均分子量が、20,000〜200,000であることが更に好ましい。数平均分子量が10,000以上である場合、フィルムに十分な靱性が与えられる。一方、数平均分子量が400,000以下である場合、溶媒に樹脂が十分に溶解し、樹脂溶液の固形分濃度が低くなることによる溶液キャスト時の溶剤使用量の増加を防げるため、製造上好ましい。
(製膜方法)
本発明の一実施形態に係るフィルムは、未延伸である製膜フィルム(未延伸フィルムとも呼ぶ)を延伸することにより製造されることが好ましい。未延伸である製膜フィルムは、周知の方法にしたがって作製することができる。
未延伸フィルムの代表的な成形方法としては、溶融した樹脂をTダイ等から押出してフィルム化する溶融押出法、及び、樹脂を溶解した有機溶剤を支持体上にキャストし加熱により有機溶剤を乾燥してフィルム化するソルベントキャスト法を挙げることができる。厚み精度の良いフィルムが比較的容易に得られるという理由から、ソルベントキャスト法を用いることが好ましい。
(延伸)
本発明の一実施形態に係るフィルムは、前記で得られた未延伸フィルムを公知の延伸方法にしたがって、少なくとも1軸に延伸して配向処理を行うことにより得られるフィルム(延伸フィルムとも呼ぶ)であることが好ましい。延伸方法としては、1軸又は2軸の熱延伸法を採用することができる。本発明のフィルムを得るためには、縦1軸延伸を採用することが好ましい。また、反射防止層として本発明の一実施形態に係るフィルムを使用する場合には、1軸性が重要となるため、自由端1軸延伸が好ましい。
<1.測定方法>
本明細書に記載の特性値等は、以下の評価法によって得られたものである。
(1)置換度
ブルカー製400MHz−H−NMRを用いて、各置換基に帰属されるスペクトルの積分値を用いて定量した。具体的には、置換度Dにおける有機シリル基の導入量は、有機シリル基が有する脂肪族基に帰属されるプロトンの−0.3〜1.5ppmの積分値と、セルロース骨格のプロトンに帰属される3.0〜5.2ppmの積分値との比から求めた。置換度Dにおけるアシル基についても同様の手法を用い、芳香族アシル基の場合は、アシル基が有する芳香環上のプロトンに帰属される6.8〜9.0ppmの積分値と、セルロース骨格のプロトンに帰属される3.0〜5.2ppmの積分値との比から求めた。
サンプルの有機シリル基の導入率をNMRによって定量できない場合は、島津製作所製ガスクロマトグラフGC−2010Plus(カラム:CBP−1、注入量:0.4μL、スプリット比:50、インジェクション温度:250℃、カラム温度:80℃5分→20℃/分→200℃5分→20℃/分→250℃5分、キャリアガス:窒素、キャリアガス流量:圧力100kPa一定)を用い、副反応により消費される有機シリル化剤の量を定量することで、有機シリル化に消費された有機シリル化剤量を計算し、置換度を算出した。有機シリル化剤が有機クロロシランの場合、[有機シリル化に消費された有機クロロシラン=添加したクロロシラン−(副反応により生成したシラノール+副反応により生成したシロキサン+再沈時のメタノールとの反応により生成したメトキシシラン+未反応のクロロシラン)]である。クロロシラン、シラノール、シロキサン、メトキシシランの量はピーク面積から定量した。有機クロロシランが3級ブチルジメチルクロロシランの場合、クロロシラン、シラノール、シロキサン、メトキシシランの保持時間はそれぞれ3.2分、3.6分、8.8分、3.0分である。
(2)モル収率
得られたセルロース誘導体の有機シリル基の置換度より分子量及び理論収量を算出し、実際に回収したセルロース誘導体の重量との比較により、モル収率を算出した。
(3)水分測定
京都電子工業社製カールフィッシャー水分計を使用し、セルロース溶液の水分量を算出した。具体的には、所定濃度に調製したセルロース溶液を所定量採取し、専用の脱水溶剤(三菱化学製アクアミクロン脱水溶剤CM、メタノール12%/クロロホルム87%)に滴下して分散させ、滴定剤(三菱化学製アクアミクロン滴定剤SS1mg、クロロホルム83%/ピリジン12%/ヨウ素1%〜5%/二酸化硫黄1%〜5%)を徐々に添加し、消費された滴定剤の量から水分量を換算して算出した。
<2.セルロース誘導体の製造方法>
(参考例1)
粉末セルロース(日本製紙ケミカルズ製W−06MG)25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g)、ジメチルアセトアミド(和光純薬製特級)402.7gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム(本荘ケミカル製、LiCl)38.2gを加えてさらに70℃で撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン(和光純薬製特級)30.9gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド101.3gに3級ブチルジメチルクロロシラン(南通宝晟得精細化工製、TBDMSCl)40.6gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール(和光純薬製特級)400.2g、純水201.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。樹脂を減圧ろ過により回収した後、メタノール400.0g中にリスラリーして減圧ろ過する洗浄作業を合計5回繰り返した。続いて、樹脂を80℃で10時間乾燥させ、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体のH−NMR測定を行い、目的のセルロース誘導体であることを確認するとともに、有機シリル基置換度を算出した結果、D=1.48であった(収量39.5g、モル収率79.2%)。
(実施例1)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g、グルコース単位0.15mol)、ジメチルアセトアミド(DMAc)394.6gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.3gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。セルロース溶液の水分濃度は1135ppm(水分0.029mol)であった。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン(TEA)30.4gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド90.8gに3級ブチルジメチルクロロシラン36.3g(0.24mol)を溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、35分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.37であった。すなわち、セルロースの有機シリル化に消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.206mol、副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.035molであり、水分に対する[副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシラン]の比率は1.20であった。
サンプリング後、さらにピリジン(Py)119.0gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルアセトアミド17.6gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.56であった(収量40.8g、モル収率79.6%)。
(実施例2)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g、グルコース単位0.15mol)、ジメチルアセトアミド394.4gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.3gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。セルロース溶液の水分濃度は1116ppm(水分0.028mol)であった。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.4gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド90.8gに3級ブチルジメチルクロロシラン36.5(0.24mol)gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、35分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.39であった。すなわち、セルロースの有機シリル化に消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.209mol、副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.033molであり、水分に対する[副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシラン]の比率は1.16であった。
サンプリング後、別途、ピリジン119.0gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した(タイミング(4))。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.56であった(収量41.1g、モル収率80.2%)。
(実施例3)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g)、ジメチルアセトアミド394.7gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.3gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.5gを加え、70℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド90.8gに3級ブチルジメチルクロロシラン36.5gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、35分かけて添加した。5時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.39であった。
サンプリング後、さらにピリジン120.0gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルアセトアミド17.7gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.7gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。5時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.57であった(収量41.6g、モル収率80.9%)。
(実施例4)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.3g、グルコース単位0.15mol)、ジメチルアセトアミド400.5gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.3gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。セルロース溶液の水分濃度は1492ppm(水分0.038mol)であった。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.4gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド101.3gに3級ブチルジメチルクロロシラン40.5g(0.27mol)を溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.45であった。すなわち、セルロースの有機シリル化に消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.217mol、副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.051molであり、水分に対する[副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシラン]の比率は1.34であった。
サンプリング後、さらにピリジン178.0gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルアセトアミド17.6gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.64であった(収量45.3g、モル収率86.5%)。
(実施例5)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.3g)、ジメチルアセトアミド397.6gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.5gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.4gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド90.9gに3級ブチルジメチルクロロシラン36.4gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、35分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.39であった。
サンプリング後、さらにトルエン(和光純薬製特級、Tol)119.3gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルアセトアミド17.0gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.57であった(収量41.0g、モル収率80.1%)。
(実施例6)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.3g)、ジメチルアセトアミド397.6gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.5gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.4gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド107.0gに3級ヘキシルジメチルクロロシラン(アルドリッチ製、THDMSCl)42.8gを溶解した3級ヘキシルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.37であった。
サンプリング後、さらにピリジン178.0gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルアセトアミド20.0gに3級ヘキシルジメチルクロロシラン8.1gを溶解した3級ヘキシルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.63であった(収量50.5g、モル収率85.5%)。
(実施例7)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g、グルコース単位0.15mol)、ジメチルスルホキシド(和光純薬製特級、DMSO)395.6gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、テトラブチルアンモニウムアセタート(東京化成工業製、TBAA)212.5gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.4gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルスルホキシド91.0gに3級ブチルジメチルクロロシラン36.5gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、35分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.39であった。
サンプリング後、さらにピリジン119.0gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルスルホキシド17.6gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.53であった(収量40.0g、モル収率78.9%)。
(比較例1)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g)、ジメチルアセトアミド402.7gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.2gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.9gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド106.9gに3級ブチルジメチルクロロシラン42.9gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、45分かけて添加した。10分後、反応液中で樹脂が析出し、5cm程度の凝集体に成長した。3時間後、メタノール400.5g、純水200.3gを加えて反応を停止し、室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.56であった(収量41.8g、モル収率81.6%)。
(比較例2)
粉末セルロース25.5gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.2g)、ジメチルアセトアミド400.6gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.0gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.8gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド101.3gに3級ブチルジメチルクロロシラン40.5gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した。2時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、反応液5.0gをサンプリングした。サンプリングした反応液にメタノール5.0g、純水3.0gを加えて樹脂を沈殿させ、メタノールで洗浄、乾燥し、反応途中のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.44であった。
サンプリング後、さらにピリジン118.3gを加え(タイミング(3))、別途、ジメチルアセトアミド16.9gに3級ブチルジメチルクロロシラン6.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、10分かけて添加した。10分後、反応液中で樹脂が析出したが、凝集はしなかった。3時間後、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.63であった(収量46.2g、モル収率88.9%)。
(比較例3)
粉末セルロー25.6gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.3g)、ジメチルアセトアミド402.5gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.2gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にピリジン59.4gを加え(タイミング(1))、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド101.2gに3級ブチルジメチルクロロシラン40.8gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した。10分後、反応液中で樹脂が析出したが、凝集はしなかった。3時間後、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.52であったが、クロロホルムには溶解しなかった(収量39.5g、モル収率78.4%)。
(比較例4)
粉末セルロース25.6gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.3g、グルコース単位0.15mol)、ジメチルアセトアミド402.5gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.2gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。セルロース溶液の水分濃度は1377ppm(水分0.036mol)であった。次に、得られたセルロース溶液にピリジン119.0gを加え(タイミング(1))、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド101.6gに3級ブチルジメチルクロロシラン41.0g(0.27mol)を溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.53であったが、クロロホルムには溶解しなかった(収量39.9g、モル収率79.0%)。すなわち、セルロースの有機シリル化に消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.229mol、副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.043molであり、水分に対する[副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシラン]の比率は1.20であった。
(比較例5)
粉末セルロース25.6gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g、グルコース単位0.15mol)、ジメチルアセトアミド507.2gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.3gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。。セルロース溶液の水分濃度は1197ppm(水分0.038mol)であった。次に、上記フラスコに窒素ガスを流しながら、再度80℃まで昇温した。別途、ピリジン118.6gに3級ブチルジメチルクロロシラン40.7g(0.27mol)を溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、40分かけて添加した(タイミング(2))。3時間後、反応液中に樹脂の析出がないことを確認し、メタノール400.0g、純水200.0gを加えて反応を停止し、樹脂を沈殿させて室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.52であったが、クロロホルムには溶解しなかった(収量39.7g、モル収率78.5%)。すなわち、セルロースの有機シリル化に消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.229mol、副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシランは0.041molであり、水分に対する[副反応で消費された3級ブチルジメチルクロロシラン]の比率は1.09であった。
(比較例6)
粉末セルロース25.7gをセパラブルフラスコに計量し、120℃で5時間乾燥した。乾燥したセルロース重量を測定し(24.4g)、ジメチルアセトアミド402.7gを添加した。上記フラスコに冷却管を接続し、窒素ガスを流して、三方後退翼を用いてスラリーを撹拌しながら、還流下130℃で2時間加熱した。その後70℃まで放冷したところで、塩化リチウム38.2gを加えてさらに撹拌を続け、セルロース溶液を得た。次に、得られたセルロース溶液にトリエチルアミン30.9gを加え、80℃まで昇温した。別途、ジメチルアセトアミド125.0gに3級ヘキシルジメチルクロロシラン50.0gを溶解した3級ブチルジメチルクロロシラン溶液を上記フラスコに接続した滴下ロートに仕込んで、50分かけて添加した。10分後、反応液中で樹脂が析出し、5cm程度の凝集体に成長した。3時間後、メタノール400.5g、純水200.3gを加えて反応を停止し、室温まで放冷した。その後、参考例1と同様の方法で後処理を実施し、白色のシリルエーテルセルロース誘導体を得た。シリルエーテルセルロース誘導体の有機シリル基置換度はD=1.57であった(収量47.0g、モル収率81.0%)。
Figure 2018177892
Figure 2018177892

Claims (4)

  1. シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法であって、
    (1)セルロースを非プロトン性溶媒(A)に溶解させ、セルロース溶液を得る工程(1)、
    (2)前記工程(1)で得られたセルロース溶液に、有機シリル化剤を添加することにより、シリルエーテルセルロース誘導体を得る工程(2)、
    を含み、
    工程(2)の反応中において、セルロースおよびシリルエーテルセルロース誘導体のいずれも溶媒から析出しないことを特徴とする、シリルエーテルセルロース誘導体の製造方法。
  2. 前記工程(2)において、セルロースへのシリル基置換度が1.0〜1.5において、さらに非プロトン性溶媒(B)を添加することを特徴とする、請求項1に記載のシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法。
  3. 前記非プロトン性溶媒(A)が、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法。
  4. 前記非プロトン性溶媒(B)が、ピリジン、トルエン、キシレン、ジオキサン、クロロベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれ1項に記載にシリルエーテルセルロース誘導体の製造方法。


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