JP2018169437A - 光分配器および光アンテナ - Google Patents

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Abstract

【課題】小型でかつ容易に分岐比を変えることが可能であるとともに、製造誤差による分岐比の変動が低減され、光アンテナを構成した場合にも各伝播光の位相変調が容易である光分配器および光アンテナを提供する。【解決手段】光分配器10は、予め定められた方向に屈曲された屈曲部C1、C2を含むとともに、一端が光が入力される入力部INとされかつ他端が光が出力される第1の出力部OUT2とされた曲げ導波路と、屈曲部C1、C2の内部に位置する一端が入力部INに入力された光を分岐光として分岐する分岐端とされるとともに屈曲部C1、C2の外部に位置する他端が分岐光を出力する第2の出力部OUT1とされ、分岐端を通る接線が屈曲部における予め定められた接線と共通となるようにして予め定められた方向とは逆方向に曲げられるとともに形状が第1の多項式で示される形状となっている分岐導波路B1と、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、光分配器および光アンテナに関する。
光分配器とは、光伝播媒体を伝播する光を1つまたは複数に分割する機能を備えた光デバイスをいう。光分配器は、構造的に、ミラーやプリズム等の微小な光学部品を用いたバルク型の光分配器、光ファイバを融着延伸した光ファイバ型の光分配器、光集積回路技術を用いた光導波路型の光分配器に分類されるが、中でも光導波路型は、光集積回路の一部として組み込むことが可能であり、また光導波路型は多対多の大規模な光分配器がフォトリソグラフィ技術等によって一括製造されるので、特に量産化、低価格化等の面で注目度が高い。
光導波路型の光分配器を含む技術として、例えば特許文献1に開示された光フェーズドアレイが知られている。特許文献1に開示された光フェーズドアレイは、光導波路によって接続された多数のナノフォトニックアンテナ素子から形成されている。光導波路とアンテナ素子は空間結合型の方向性結合器によって接続されている。空間結合型の方向性結合器とは、2本の光導波路同士を所定の間隔を設けて対向させ、一方の光導波路からの光を他方の光導波路にエバネッセント結合させて光を分配する方式の光分配器である。特許文献1では、この空間結合型の光分配器を用いて多数のアンテナ素子を効率よくアレイ状に配置している。
また、分岐比の精度の向上を目的とした空間結合型の光分配器として、特許文献2に開示された方向性結合器が知られている。特許文献2に開示された方向性結合器は、基板と、該基板上に構成された2本の光導波路とを備えた光方向性結合器において、2本の光導波路は、光結合を生じる光結合領域における直線部分の長さがゼロであることを特徴としている。光導波路型の光分配器には、光導波路の製造誤差により設計した通りの分岐比が得られないという課題がある。特許文献2に開示された方向性結合器では、方向性結合器を構成する光導波路部分に直線導波路を用いないことで、方向性結合器の歩留まり低下の主要因である光導波路幅の変動および光導波路の比屈折率の変動を含む製造誤差に対する許容範囲を大きくしている。
一方、光を分岐する他のエレメントとしてY分岐が知られており、該Y分岐を用いた光分配器も知られている。Y分岐を用いた光分配器として、例えば特許文献3に開示された光カプラが知られている。特許文献3に開示された光カプラでは、非対称Y字型分岐路とエバネッセント光カプラとが直列に接続され、エバネッセント光カプラよって分岐比の制御が行われ、非対称Y字型分岐路によって合波損失の発生を防いでいる。Y分岐を用いた光分配器では、Y分岐の各々の枝を伝播する光の位相のずれなどにより、2つの波が打ち消されて損失が大きくなるという課題がある。特許文献3に開示された光カプラでは非対称なY分岐を採用することで位相が同相になるよう制御しており、分岐後の平行導波路で空間結合により分岐量を制御している。
米国特許出願公開第2015/0346340号明細書 特開2006−065089号公報 特開平06−235842号公報
ところで、光導波路型の光学素子においては、プロセスが微細であることにも起因して、特に光導波路の製造誤差による該光学素子の特性の変動が問題となる場合がある。そのため、例えば空間結合型の光分配器では、製造誤差による空間結合の分岐量のずれが問題となる場合がある。空間結合型の光分配器では、近接させて配置された2本の導波路の導波路間の間隔、近接領域の長さにより分岐量が決定される。従って製造誤差により導波路間の間隔が設計値通りでない場合や、製造誤差により導波路の側壁に凹凸が形成されたような場合には、設計した分岐量が得られないという問題がある。
一方、Y分岐等に代表される分岐構造を複数用いて位相変調させる場合には、光集積回路の大規模化が避けられないという問題がある。特許文献2に開示された方向性結合器や、特許文献3に開示された光カプラのような構造を用いて光フェーズドアレイのような回路を構成する場合、複数の分岐を配置し、さらに位相変調回路を分岐間に直列につなぐ必要が生じ、そのため光集積回路の面積が増大してしまうという問題がある。
本発明は、上記諸問題に鑑みてなされたものであり、小型でかつ容易に分岐比を変えることが可能であるとともに、製造誤差による分岐比の変動が低減され、光アンテナを構成した場合にも各伝播光の位相変調が容易である光分配器および光アンテナを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の光分配器は、予め定められた方向に屈曲された屈曲部を含むとともに、一端が光が入力される入力部とされかつ他端が光が出力される第1の出力部とされた曲げ導波路と、前記屈曲部の内部に位置する一端が前記入力部に入力された光を分岐光として分岐する分岐端とされるとともに前記屈曲部の外部に位置する他端が前記分岐光を出力する第2の出力部とされ、前記分岐端を通る接線が前記屈曲部における予め定められた接線と共通となるようにして前記予め定められた方向とは逆方向に曲げられるとともに形状が第1の多項式で示される形状となっている分岐導波路と、を含むものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記分岐導波路は、前記分岐端から前記第2の出力部にかけて幅が漸増しており、かつ漸増する幅が第2の多項式で示される幅となっているものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1の多項式はクロソイド曲線を示す多項式であるものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記屈曲部の形状は、クロソイド曲線で示される形状となっているものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記屈曲部の曲げ方向内側の幅が、前記クロソイド曲線の始点から前記クロソイド曲線の中央部まで漸増し、前記クロソイド曲線の中央部から前記クロソイド曲線の終点まで漸減するように構成されているものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5いずれか1項に記載の発明において、前記曲げ導波路が窒化ケイ素で形成され、前記分岐導波路がケイ素または窒化ケイ素で形成され、前記曲げ導波路および分岐導波路の周囲を覆う二酸化ケイ素の層をさらに含むものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記屈曲部が複数であり、前記曲げ導波路は、複数の前記屈曲部の隣接する屈曲部同士の屈曲方向が互いに反対でありかつ隣接する屈曲部同士の折り曲げ角が各々180度より大きくなるようにして前記複数の屈曲部が接続されて構成され、かつ前記分岐導波路は前記曲げ導波路の前記入力部を備える屈曲部に配置されているものである。
上記の目的を達成するために、請求項8に記載の光アンテナは、複数の請求項7に記載の光分配器と、前記第1の出力部および複数の前記第2の出力部の各々に接続された複数のアンテナ素子と、前記複数の光分配器の各々の前記分岐導波路が配置された屈曲部以外の前記屈曲部に対向して配置された加熱部と、を含むものである。
本発明によれば、小型でかつ容易に分岐比を変えることが可能であるとともに、製造誤差による分岐比の変動が低減され、光アンテナを構成した場合にも各伝播光の位相変調が容易である光分配器および光アンテナを提供することができるという効果を奏する。
第1の実施の形態に係る光分配器の構成の一例を示す、(a)は平面図、(b)はブロック図である。 第1の実施の形態に係る光分配器を説明するための、(a)は平面図、(b)は断面図である。 第1の実施の形態に係る光分配器の導波路の分岐構造の詳細を説明するための平面図である。 第1の実施の形態に係る光分配器の接線角度を変えた場合の形状の変化を示す図である。 第1の実施の形態に係る光分配器の、(a)は分岐端幅をパラメータとした 接線角度に対する分岐比の変化、(b)は分岐端幅をパラメータとした接線角度に 対する透過率の変化を示すグラフである。 第2の実施の形態に係る光分配器の構成の一例を示す平面図である。 第3の実施の形態に係る光分配器の構成の一例を示す平面図である。 第4の実施の形態に係る光アンテナの構成の一例を示す平面図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1から図5を参照して、本実施の形態に係る光分配器10について説明する。本実施の形態では、本発明に係る光分配器を、光の伝播路であるコアと、コアの周囲を覆うクラッドを含んで構成される光導波路(矩形光導波路)で構成した形態を例示して説明する。
しかしながら、本実施の形態に係る光導波路は、矩形光導波路に限られず、他の形態の光導波路、例えばリブ型の光導波路で構成した形態としてもよい。光分配器10は、一端から入力された光を2つに分岐して出力させる1:2カプラとしての機能を有する。以下で詳細に説明するように、光分配器10では2つの出力間の分岐比を容易に、かつ精度よく設定することが可能となっている。
図1(a)に示すように、光分配器10は、直線導波路S1、屈曲導波路C1、屈曲導波路C2、直線導波路S2がこの順に接続されて構成されている。また、屈曲導波路C1の内部の1点から分岐導波路B1が分岐されている。図1に示すように、直線導波路S1の一端が入力部IN、分岐導波路B1の一端が出力部OUT1、直線導波路S2の一端が出力部OUT2とされている。
以上の構成を有する光分配器10を機能的に表したのが図1(b)である。図1(b)に示すように、光分配器10は機能的には1:2カプラとみなすことができる。そして、本実施の形態に係る光分配器10では、分岐比Br(本実施の形態では、Br=OUT1の出力パワー/(OUT1の出力パワー+OUT2の出力パワー)で定義する)を任意の値に設定することが可能となっている。
図2を参照して、光分配器10の構成についてより詳細に説明する。図2(a)において境界D1は直線導波路S1と屈曲導波路C1との境界を、境界D2は屈曲導波路C1と屈曲導波路C2との境界を、境界D3は屈曲導波路C2と直線導波路S2との境界を、各々示している。点P1は境界D1上の点であり、屈曲導波路C1の始点を示している。また、点P3は境界D2上の点であり、屈曲導波路C1の終点を示すと同時に、屈曲導波路C2の始点を示している。さらに、点P5は境界D3上の点であり、屈曲導波路C2の終点を示している。一方、点P2は屈曲導波路C1の頂点を、点P4は屈曲導波路C2の頂点を、各々示している。以上を考慮し、以下では、点P1を「始点P1」、点P2を「頂点P2」、点P3を「終点P3」、点P4を「頂点P4」、点P5を「始点P5」という場合がある。なお、本実施の形態に係る光分配器10では、直線導波路S1、S2、屈曲導波路C1、C2の幅はいずれもW1とされている。
図2(a)に示すように屈曲導波路C1は、頂点P2を境とする始点P1の側の形状と終点P3の側の形状とが同じ形状、すなわち頂点P2を通る直線に対して線対称である形状とされている。本実施の形態では、屈曲導波路C2も屈曲導波路C1と同様の形状とされ、平面視での向きを逆にして、終点P3で接続されている。
本実施の形態に係る屈曲導波路C1、C2の形状は、クロソイド曲線を用いて設計されている。クロソイド曲線とは、始点における曲率が0であり、線路長(導波路に沿った道のり)の増大に伴って曲率(曲率半径Rの逆数1/Rで表される)が徐々に増え(漸増し)、頂点で曲率が最大曲率となり、その後曲率は徐々に減少し(漸減し)、終点における曲率が0となるような曲線である。クロソイド曲線では、全線路長が短いと最大曲率は大きくなり、全線路長が長いと最大曲率は小さくなる。
屈曲導波路C1を例にとってより詳細に説明すると、図2(a)に示すように、始点P1における曲率が0であり、線路長の増大に伴って曲率が徐々に増え(漸増し)、頂点P2で最大曲率となり、終点P3で曲率が0となる。屈曲導波路C2は、屈曲導波路C1に対して曲げ方向(屈曲部を円弧とした場合に、光導波路から該円弧の中心を見る方向と定義する)を逆にした屈曲導波路であり、形状は屈曲導波路C1と同一のものである。
すなわち、本実施の形態では、屈曲導波路C1と屈曲導波路C2とで構成される曲げ導波路CGは、終点P3に対して点対称となっている。なお、本実施の形態では、屈曲導波路C1とC2とが同一形状である形態を例示して説明するが、これに限られず、屈曲導波路C1とC2とを別の形状(すなわち、全線路長および最大曲率が異なる屈曲導波路)としてもよい。
さらに、本実施の形態に係る曲げ導波路CGを構成する屈曲導波路C1およびC2の各々の折り曲げ角θは、180度を越える角度とされている。本実施の形態における「折り曲げ角θ」は、光導波路に沿って進む伝播光の進行方向を移動ベクトルで表した場合に、図2(a)に示す始点P1における移動ベクトルV1と、終点P3における移動ベクトルV2とのなす角度で定義される。図2(a)は、この折り曲げ角θが、θ=220度の場合を例示している。
本実施の形態のように、折り曲げ角θを180度を越える角度とすることにより、図2(a)に示すように、屈曲導波路C1とC2とが、Y軸方向ではなく、Z軸方向に配列されるため、折り曲げ角θが180度以下の屈曲導波路を配列する場合と比較して、直線導波路S1と直線導波路S2との間隔を狭くすることができる。このことにより、光アンテナ等の光集積回路をより小型化することが可能となる。また、本実施の形態に係る光分配器10の曲げ導波路CGでは、曲率の向きが変わる境界である終点P3において必ず曲率が0になるため、曲げ導波路CGが連続的でスムースに構成されており、より低損失化に寄与している。
なお、本実施の形態では、屈曲導波路C1、C2の形状として、線路長に対して曲率が線形に変化する(比例関係にある)クロソイド曲線を例示して説明するが、必ずしも比例関係で変化する必要はなく、線路長に対して曲率が単調増加するような屈曲導波路であれば、クロソイド曲線でなくとも本発明の効果を発揮することができる。なお、本実施の形態に係る「単調増加」とは広義の単調増加を意味し、増加量が0の場合を含む。すなわち、本実施の形態に係る屈曲導波路は、例えば、曲線の開始近傍と終了近傍とがクロソイド曲線であり、その間が円弧であるような形態を含む。
図2(a)におけるA−A断面図である図2(b)に示すように、本実施の形態に係る光分配器10は、基板12、クラッド14、およびコア16を含んで構成される矩形光導波路を用いて構成されている。基板12には、一例としてSi(シリコン、ケイ素)が用いられ、コア16は、一例として比較的屈折率の高い材料であるSiで形成され、クラッド14は、一例としてSiよりも屈折率の低い材料であるSiO2(二酸化ケイ素)で形成されている。コア16はクラッド14で覆われており、屈折率の違いに起因して、光は主としてコア16の内部を伝播する。コア16の寸法は、コア16およびクラッド14の各々の屈折率、および伝播させる光の波長に基づいて設定される。なお、コア16と、クラッド14とを含んで光導波路と呼称される場合もあるが、本実施の形態では、図1(a)に示すように、コア16の部分を光導波路と称することにする。
再び図2(a)を参照して、直線導波路S1は、入力光Pinを入力部INから入力する光導波路(入力導波路)であり、屈曲導波路C1、C2を透過した伝播光の一部は、出力導波路である直線導波路S2の出力部OUT2から出力光Pout2として出力される。なお、本実施の形態では、入力導波路および出力導波路を直線導波路で構成する形態を例示して説明するが、入力導波路、出力導波路は必ずしも直線導波路で構成する必要はなく、他の様々な形状の光導波路を用いてよい。
さらに、本実施の形態では、入力部INから入力された入力光Pinの一部は分岐導波路B1で分岐され、分岐された光は出力光Pout1として出力部OUT1から出力される。本実施の形態に係る光分配器10では、以下の(式1)で定義される分岐比Brが簡易にかつ精度よく設定される。
Br=Pout1/(Pout1+Pout2)=Pout1/Pin ・・・(式1)
次に、図3を参照して、屈曲導波路C1と分岐導波路B1との接続部の構成、および分岐導波路B1の形状についてより詳細に説明する。図3は、分岐導波路B1について、屈曲導波路C1との接続部を含めた全体の形状を表した図である。
分岐導波路B1の分岐においては、まず屈曲導波路C1上の1点である「分岐点Ps」を指定する。分岐点Psの屈曲導波路C1上の位置については、曲率=0となる位置(すなわち、始点P1、頂点P2)以外であれば特に制限はない。また、分岐点Psの屈曲導波路C1の幅方向の位置についても制限がないが、本実施の形態では中央としている。同時に、分岐導波路B1の分岐点Psにおける幅である分岐端幅Ws(0<Ws≦W1)と分岐長Ysを設定する。本実施の形態において分岐長Ysとは、分岐点Psと終点Peとの間のY軸方向の距離、すなわち分岐導波路B1のY軸方向の長さである。一方、分岐点Psにおける屈曲導波路C1の接線を接線tで表すと、分岐導波路B1の分岐点Psにおける接線も接線tと共通になるように設定する。このとき、Y軸から測った接線tの角度を接線角度θsとする。以上の考え方で構成された分岐導波路B1の形状は、接線角度θs、分岐端幅Ws、分岐長Ysで決定される。
本実施の形態では、分岐導波路B1の形状をクロソイド曲線で示される形状としている。すなわち、分岐点Psにおいて曲率が0であり、分岐点Psから終点Peに向かうにつれて曲率が増加し、曲率のピークを経て終点Peで再び曲率が0となっている。なお、本実施の形態では、分岐導波路B1の形状としてクロソイド曲線を例示して説明するが、必ずしもクロソイド曲線である必要はない。
さらに本実施の形態に係る分岐導波路B1の幅は、分岐点PsでWsとされ、終点Peに向かうにつれて拡大し、終点Peでは直線導波路S1、S2と同じ幅W1となっている。つまり、本実施の形態に係る分岐導波路B1の幅は、分岐点Psから終点Peにかけて広がるように構成され、しかもその幅の広がり分は、分岐点Psからの線路長に従って高次の多項式で表されるように構成されている。多項式に特に制限はないが、分岐点Psと終点Peにおいて微分値が0となる多項式が好ましい。以下に示す(式2)はその多項式の一例を示している。

ただし、αは、分岐導波路B1の分岐端幅Wsと終点Peにおける幅Wbとの差である増加幅(Wb−Ws)、hはL/2、Lは分岐点Psから終点Peまでの線路長、Φは線路上の任意の点(−h≦Φ≦h)である。ただし、本実施の形態ではWb=W1としている。なお、本実施の形態では、分岐導波路B1の終点Peにおける幅をW1としているが、必ずしもW1とする必要はなく、W1より小さくてもよいし、大きくてもよい。
図4は、接線角度θsを変化させた場合の光分配器の形状の変化を示している。図4(a)はθs=5deg(度)とした場合の光分配器10Aを、図4(b)はθs=30degとした場合の光分配器10Bを、図4(c)はθs=60degとした場合の光分配器10Cを、図4(d)はθs=90degとした場合の光分配器10Dを、各々示している。なお、図4では、接線角度θs以外のパラメータ(分岐端幅Ws、分岐長Ys)を固定している。ここで、本実施の形態において、分岐点Psの屈曲導波路C1上の位置を指定することと、接線角度θsを指定することとは等価である。
以下で説明するように、本実施の形態に係る光分配器では、図4に示すように接線角度θsを変えることによって分岐比Brを容易に変えることができる。なお、図1(a)に示す光分配器10の接線角度θsは、図4(b)に示す光分配器10Bと同じ接線角度(θs=30deg)である。
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る光分配器10の分岐比Brの特性、および透過率Trの特性について説明する。本実施の形態でいう透過率Trは以下に示す(式3)で与えられる。
(Pout1+Pout2)/Pin ・・・ (式3)
図5(a)は、分岐端幅Wsをパラメータとした接線角度θsに対する分岐比Brの変化を、図5(b)は、分岐端幅Wsをパラメータとした接線角度θsに対する透過率Trの変化を、各々シミュレーションした結果を示している。なお、図5におけるシミュレーションでは分岐長Ysを固定している。図5では、分岐端幅Wsの初期値をA(例えばW1)とし、一定量βずつ細らせて分岐端幅Wsを変えている。
図5(a)に示すように、接線角度θsが大きくなると分岐比Brは低下する。つまり、図4でいうと、(a)から(d)に向かうにつれて分岐比Brが低下する。また、分岐端幅Wsが狭くなると分岐比Brが低下する。すなわち本実施の形態に係る光分配器10は、接線角度θs、あるいは分岐端幅Wsを変えることにより容易に分岐比を変えることが可能となっている。
一方、図5(b)は示すように、接線角度θsが大きくなると透過率Trは低下する。
つまり、図4でいうと、(a)から(d)に向かうにつれて透過率Trが低下する。また、分岐端幅Wsが広いほど透過率Trが低下する。これは、分岐端幅Wsが広いほど分岐導波路B1の分岐点での散乱が発生しやすくなり、そのため出力部OUT1、OUT2に向かう伝播光の光量が減少するからである。以上のように、本実施の形態に係る光分配器10では、接線角度θs、分岐端幅Ws、あるいは分岐長Ysを変えることにより容易に分岐比を変えることが可能となっている。
以上のように、本実施の形態に係る光分配器10によれば、分岐導波路B1の形状パラメータ(接線角度θs、分岐端幅Ws、分岐長Ys)を変えることにより、所望の分岐比Br、あるいは透過率Trを得ることができる。なお、異なる形状パラメータを用いても同じ分岐比Brが得られる場合がある。例えば図5(a)の点Q1と点Q2とは異なる接線角度θs(図5(a)に示すθ1およびθ2)であるにも関わらず同じ分岐比Brが得られる。このような場合は、点Q1、Q2の条件における透過率Trをみてどちらのパラメータを選択するか決めてもよい。つまり、点Q1を図5(b)に示す透過率Trのグラフ上にプロットすると点Q3(θs=θ1)となり、点Q2をプロットすると点Q4(θs=θ2)となる。図5(b)から明らかなように、点Q3の方が透過率Trが大きいので、接線角度θsはθ1を選択するようにする。
以上詳述したように、本実施の形態に係る光分配器は、分岐導波路の位置や形状で分岐を行う方式を採用しており、空間結合は用いていない。このため、空間結合を用いた場合に問題となる、製造誤差により2本の導波路の間隔が変動することによる分岐比の変動、あるいは導波路間の側壁に発生する凹凸に起因する分岐比の変動が抑制される。
また、本実施の形態に係る光分配器は、入力された光を分岐導波路によって分岐して2つめの出力を得ると同時に、該分岐導波路の各形状パラメータを変更することにより、分岐量(分岐比)を任意の比率に設定することが可能となっている。
[第2の実施の形態]
図6を参照して、本実施の形態に係る光分配器10Eについて説明する。光分配器10Eは、上記実施の形態に係る光分配器10における一方の屈曲導波路の形状を変更したものである。すなわち、図1(a)に示すように、光分配器10においては、光導波路の幅は、直線導波路S1から直線導波路S2にかけて一定の幅W1であった。これに対し、光分配器10Eの屈曲導波路C2Aでは、図6に示すように、幅が線路長に応じて変化している。すなわち、屈曲導波路C2Aの幅は、終点P3から頂点P4に向けて、光導波路の曲げ方向内側の幅が徐々に広くなっており、また、頂点P4から始点P5に向けて、光導波路の曲げ方向内側の幅が徐々に狭くなっている。なお、屈曲導波路C1およびC2Aもクロソイド曲線を用いている点は、屈曲導波路C1およびC2と同じである。
線路長に対して幅を変化させる手法としては高次の多項式による手法を用いることができ、多項式の一例として(式2)を挙げることができる。すなわち、(式2)において、Lを屈曲開始位置(始点P5)から最も屈曲した位置(頂点P4)までの線路長とし、αを最も屈曲した位置での幅の増加分(増加分の最大値)とする。最も屈強した位置(頂点P4)から屈曲終了位置(終点P3)までは、屈曲開始位置(始点P5)から最も屈曲した位置(頂点P4)までの増加分の逆の減少量となる。始点P5における屈曲導波路C2Aの幅は直線導波路S2と同じ幅W1であり、終点P3における屈曲導波路C2Aの幅は屈曲導波路C1と同じ幅W1である。
以上の構成を有する光分配器10Eによれば、光導波路の幅が屈曲導波路C1の幅から急激に変化せず、また光導波路の幅が直線導波路S2から幅が急激に変化しないため、コア内の反射や散乱を抑えることができ、伝播光の損失を抑制することができる。また、屈曲導波路では、一般に、伝播する光が曲げ方向内側に染み出すが、屈曲導波路C2Aのように、光導波路の幅を曲げ方向内側に拡張することにより、その染み出した光も含めて伝播させることができるので、光損失がより低減される。
[第3の実施の形態]
図7を参照して、本実施の形態に係る光分配器10Fについて説明する。光分配器10Fは、上記各実施の形態において光導波路のコアを形成する材料を変更したものである。
上記各実施の形態では、光導波路のコア16の材料としてSiを用いた形態を例示して説明した。ここで、次の実施の形態に係る光アンテナのように、複数の光分配器を直列に接続し、複数の分岐出力を用いる形態では、入力する光強度が弱いと末端のグレーティングカプラまで光が届かない。このため、強度の強い光をコア16に入力する必要があるが、Siによる光導波路(コア)は入力できる光強度に限界がある。
上記問題を解決するため、光分配器10Fでは、直線導波路S1A、S2A、屈曲導波路C1A、C2Bの光導波路(コア)を、一例としてSiN(窒化ケイ素)で形成している。SiNはSiよりも、より強い光を通すことができる。なお、本実施の形態では直線導波路S1A、S2A、屈曲導波路C1A、C2Bの光導波路(コア)をSiNで形成する形態を例示して説明するが、Siよりも強い光を通すことができる他の材料を用いた形態としてもよい。また、本実施の形態では、上記実施の形態と同様に分岐導波路B1はSiで形成しているが、これに限られず、分岐導波路B1もSiNで形成してもよい。
以上の構成を有する本実施の形態に係る光分配器10Fによれば、分岐導波路B1をSiで形成し、分岐導波路B1以外の部分をより強い光を伝播させることができる材料であるSiNで形成したので、光分配器10Fを直列に接続した場合でも、少しずつ光を分岐しながら、末端のグレーティングカプラまで光を伝搬させることができる。
[第4の実施の形態]
図8を参照して、本実施の形態に係る光アンテナ50について説明する。図8に示すように、光アンテナ50は、光分配器アレイ60、グレーティングカプラアレイ40、およびヒータ30を含んで構成されている。光アンテナ50は、グレーティングカプラアレイ40を光の出射部とするフェーズドアレイアンテナである。すなわち、ヒータ30により光分配器アレイ60を構成する各光分配器の一部に熱を付与し、各光分配器を伝播する光の位相を変調させ、チャンネル間の位相を制御して光の放射方向を制御するフェーズドアレイアンテナとなっている。
光分配器アレイ60は、複数の、上記各実施の形態に係る光分配器(10、10A〜10F)のいずれかを直列に接続(カスケード接続)したものであるが、本実施の形態ではN個の光分配器10Fを直列に接続したものを用いている。すなわち、光分配器10F−1、10F−2、10F−3、・・・、10F−Nが入力部INと出力部OUT2とを介して直列に接続されて構成されている。
各光分配器10F−1、10F−2、10F−3、・・・、10F−Nの分岐導波路B1は、各々光導波路によってグレーティングカプラ42−1、42−2、42−3、・・・42−N(アンテナ素子。以下、総称する場合は「グレーティングカプラ42」)に接続されている。従って、光分配器10F−1の入力部INに入力された入力光Pinは、各光分配器10Fの出力部OUT1から一部が分岐されて各グレーティングカプラ42に伝播される。
ヒータ30は、抵抗体34および抵抗体34の両端に電気的に接続された電極32−1、32−2を含んで構成されている。抵抗体34はクラッド14に不純物が添加(ドープ)されて形成された発熱体であり、電極32−1と32−2とはビアを介して接続されている。電極32−1と32−2との間に電源を接続して電流を流すことによって抵抗体34が発熱する。抵抗体34は、各光分配器10Fの屈曲導波路C2Bに対向して配置されており、ヒータ30で発生した熱は各屈曲導波路C2Bに付与される。この際、抵抗体34と各屈曲導波路C2Bとの距離は略等しくされている。
屈曲導波路C2Bに熱が付与されると、熱が付与された部分の屈折率が変化し、光導波路のみかけの長さが変化する。このことにより、屈曲導波路C2B内を伝搬する光の位相を変調することができる。各光分配器10Fは等間隔に配置されているため、光アンテナ50を構成する各グレーティングカプラ42から出力される光の位相は、隣り合うグレーティングカプラ42間で等位相差となっている。
光アンテナ50(グレーティングカプラアレイ40)から出力される光の波面の進行方向、すなわち等位相面の進行方向はこの各グレーティングカプラ42間の位相差によって定まる。この際、各光分配器10Fと抵抗体34との距離が略等しくされていることにより、各グレーティングカプラ42間の位相変化量も略等しくなる。従って、ヒータ30により光分配器アレイ60を構成する各光分配器10Fに付与する熱量を変化させ、各光分配器10Fを位相変調するとこの位相差が変化し、光アンテナ50から出射される光の波面の進行方向、すなわち等位相面の進行方向を変えることができる。その結果、光アンテナ50から放射される光ビームの方向が、電極32−1、32−2間に流す電流によって制御することが可能となる。
本実施の形態に係る光アンテナ50は、各光分配器10FがS字型の折り曲げ構造となっており、折り曲げ構造の一部に対向させて熱印加手段(加熱部)を配置して各グレーティングカプラに伝播させる光の位相を変調する構造となっているので、光アンテナを小型に構成することが可能となっている。さらに、上述したように光導波路同士の空間結合を用いずに直接導波路を分岐させることで製造誤差の影響が低減可能な構造となっている。
なお、本実施の形態では、各光分配器10Fにおける分岐導波路として、形状パラメータ(Ws、θs、Ys)を同じとする分岐導波路を用いる形態を例示して説明したが、これに限られない。直列に接続される光分配器10Fの損失を補償するように各分岐導波路の分岐比を変え、各グレーティングカプラ42に同じ光パワー(電力)が伝播されるように構成してもよい。
また、各光分配器10Fにおける分岐比を変えることにより、光アンテナ50から出射される光パワーのプロファイルを調整することもできる。例えば、光アンテナ50から放射されるビームに発生するサイドローブを極力低減することを目的に、光アンテナ50の両端付近で光パワーが弱く、中央付近で光パワーが強い分布、例えば2次関数曲線で示される分布をもつように設定することができる。図8には、2次関数曲線で示される光パワーIのプロファイルの一例を示している。
また、本実施の形態では位相を変調させる方法としてヒータ30(抵抗体34)を用いる形態を例示して説明したが、これに限られず、光導波路の部分的な箇所の屈折率を制御することが可能な構造であればいずれの方法を用いてもよい。
なお、上記各実施の形態では1つの屈曲導波路(例えば、図1(a)に示す屈曲導波路C1)から1つの分岐導波路(例えば、図1(a)に示す分岐導波路B1)が分岐する形態を例示して説明したが、これに限られず、1つの屈曲導波路から複数の分岐導波路が分岐する形態としてもよい。このような形態によれば、小型の1:Nカプラを構成することができる。
また、上記各実施の形態では入力部INに近い側の屈曲導波路(例えば、図1(a)に示す屈曲導波路C1)に分岐導波路(例えば、図1(a)に示す分岐導波路B1)を設ける形態を例示して説明したが、これに限られず、出力部OUT2に近い側の屈曲導波路(例えば、図1(a)に示す屈曲導波路C2)に分岐導波路を設ける形態としてもよい。このような形態によれば、光分配器の出力部を入力部と同じ側に配置することができる。
また、上記各実施の形態では2つの直線導波路の間に2つの屈曲導波路を配置する形態を例示して説明したが、これに限られず、1を含む任意の数の屈曲導波路を配置する形態としてもよい。例えば、2つの直線導波路の間に3つの屈曲導波路(あるいは一般に3以上の奇数個の屈曲導波路)を屈曲方向を異ならせて配置することにより、入力部INと出力部OUT2を光分配器の同じ側に配置することができる。
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10F−1、10F−2、10F−3、・・・、10F−N 光分配器
12 基板
14 クラッド
16 コア
30 ヒータ
32−1、32−2 電極
34 抵抗体
40 グレーティングカプラアレイ
42、42−1、42−2、・・・、42−N グレーティングカプラ
50 光アンテナ
60 光分配器アレイ
B1、B1A 分岐導波路
C1、C2、C2A、C2B 屈曲導波路
CG 曲げ導波路
S1、S2 直線導波路
IN 入力部
OUT1、OUT2 出力部
D1〜D3 境界
P1、P5 始点
P2、P4 頂点
P3 終点
Pin 入力光
Pout1、Pout2 出力光
t 接線
Ws 分岐端幅
Ys 分岐長
Ps 分岐点
Pe 終点
W1 幅
Br 分岐比
Tr 透過率
θs 接線角度

Claims (8)

  1. 予め定められた方向に屈曲された屈曲部を含むとともに、一端が光が入力される入力部とされかつ他端が光が出力される第1の出力部とされた曲げ導波路と、
    前記屈曲部の内部に位置する一端が前記入力部に入力された光を分岐光として分岐する分岐端とされるとともに前記屈曲部の外部に位置する他端が前記分岐光を出力する第2の出力部とされ、前記分岐端を通る接線が前記屈曲部における予め定められた接線と共通となるようにして前記予め定められた方向とは逆方向に曲げられるとともに形状が第1の多項式で示される形状となっている分岐導波路と、
    を含む光分配器。
  2. 前記分岐導波路は、前記分岐端から前記第2の出力部にかけて幅が漸増しており、かつ漸増する幅が第2の多項式で示される幅となっている
    請求項1に記載の光分配器。
  3. 前記第1の多項式はクロソイド曲線を示す多項式である
    請求項2に記載の光分配器。
  4. 前記屈曲部の形状は、クロソイド曲線で示される形状となっている
    請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光分配器。
  5. 前記屈曲部の曲げ方向内側の幅が、前記クロソイド曲線の始点から前記クロソイド曲線の中央部まで漸増し、前記クロソイド曲線の中央部から前記クロソイド曲線の終点まで漸減するように構成されている
    請求項4に記載の光分配器。
  6. 前記曲げ導波路が窒化ケイ素で形成され、前記分岐導波路がケイ素または窒化ケイ素で形成され、前記曲げ導波路および分岐導波路の周囲を覆う二酸化ケイ素の層をさらに含む
    請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光分配器。
  7. 前記屈曲部が複数であり、前記曲げ導波路は、複数の前記屈曲部の隣接する屈曲部同士の屈曲方向が互いに反対でありかつ隣接する屈曲部同士の折り曲げ角が各々180度より大きくなるようにして前記複数の屈曲部が接続されて構成され、かつ前記分岐導波路は前記曲げ導波路の前記入力部を備える屈曲部に配置されている
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光分配器。
  8. 複数の請求項7に記載の光分配器と、
    前記第1の出力部および複数の前記第2の出力部の各々に接続された複数のアンテナ素子と、
    前記複数の光分配器の各々の前記分岐導波路が配置された屈曲部以外の前記屈曲部に対向して配置された加熱部と、
    を含む光アンテナ。
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