JP2018168467A - 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板 - Google Patents

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【課題】主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、引張り強度1180MPa以上を有する耐遅れ破壊特性に優れた鋼板を提供する。【解決手段】引張り強度が1180MPa以上の冷延鋼板の表面に、Ca塩、Be塩の中から選ばれる1種以上の金属塩とP化合物を含有し、前記金属塩の金属(Ca、Be)換算での合計付着量が10〜500mg/m2、好ましくは、50〜500mg/m2、前記P化合物のP換算での付着量が10〜1000mg/m2である皮膜(A)を形成する。また、必要に応じて、皮膜(A)の上層に膜厚が0.3μm以上4.0μm未満の有機樹脂層(B)を形成する。【選択図】なし

Description

本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた鋼板に関するものであり、詳細には、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、耐遅れ破壊特性が要求される、引張り強度1180MPa(約120kgf/mm)以上を有する高張力鋼板に関するものである。
従来、自動車用鋼板としては、その板厚の精度や平担度に関する要求から冷延鋼板が用いられているが、近年、自動車のCO排出量の低減及び安全性確保の観点から、自動車用鋼板の高強度化が図られている。
しかしながら、鋼材の強度を高めていくと、遅れ破壊という現象が生じやすくなることが知られており、この現象は強度の増大とともに激しくなり、特に引張り強さ1180MPa以上の高強度鋼で顕著となる。なお、遅れ破壊とは、高強度鋼材が静的な負荷応力(引張り強さ以下の負荷応力)を受けた状態で、ある時間が経過したとき、外見上はほとんど塑性変形を伴うことなく、突然脆性的な破壊が生じる現象である。
この遅れ破壊は、鋼板の場合、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、このような応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることが知られている。この水素脆性の起因となる水素は、ほとんどの場合、外部環境から鋼中に侵入し、それが拡散するものと考えられており、代表的には、鋼材の腐食に伴い侵入する水素が挙げられる。
高強度鋼板におけるこのような遅れ破壊を防止するために、例えば特許文献1に記載のように、鋼板の組織や成分を調整することにより、遅れ破壊感受性を弱める検討がなされている。しかしながら、このような手法を用いた場合には、外部環境から鋼板内部に侵入する水素量には変化がなく、遅れ破壊発生を遅らせることは可能であるとしても、遅れ破壊自体を抑制することはできない。すなわち、遅れ破壊を本質的に改善するためには、鋼板内部への水素侵入量自体を制御することが必要である。このような観点から、特許文献2には、冷延鋼板にNi又はNi基合金メッキを施すことにより、鋼板内部への水素侵入量を抑制することで遅れ破壊を抑制する技術が開示されている。また、特許文献3には、鋼板表面にTiなどの水素吸蔵性粒子を分散させた皮膜(めっき皮膜、化成処理皮膜など)を形成することで鋼板内部への水素の侵入を抑えることにより、遅れ破壊を抑制する技術が開示されている。
特開2004−231992号公報 特開平6−346229号公報 特開2003−41384号公報
しかしながら、特許文献2に記載のようにNi又はNi基合金を電気メッキした場合、メッキ時に発生する水素が鋼板内に残存することで、遅れ破壊を引き起こすことが考えられる。さらに、鋼板表面にメッキしたままで、プレス加工に供した場合、メッキ層と鋼板との密着性が弱く、加工時にメッキ層が損傷し、目的とする効果が得られない可能性も高い。また、特許文献3に記載のように鋼板表面の皮膜で水素をトラップする手法では、腐食初期においては水素の侵入を抑制できるが、侵入する水素量が吸蔵能力を超えた場合に遅れ破壊を引き起こすことが考えられる。
また、自動車用鋼板として使用するためには、耐遅れ破壊特性だけでなく、優れた一次防錆性が必要とされる。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、主として自動車、建材用の強度部材に好適な引張り強度1180MPa以上を有する鋼板であって、耐遅れ破壊特性に優れ、さらに一次防錆性にも優れた鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋼板内に侵入する水素を抑制することにより遅れ破壊を防止する手段について、鋭意検討および研究を重ねた。その結果、冷延鋼板表面にCa塩、Be塩の中から選ばれる1種以上の金属塩とP化合物を含む皮膜を形成することにより、鋼板への水素侵入量を大幅に抑制し、鋼板の遅れ破壊を効果的に抑制できることを見出した。また、同時に優れた一次防錆性を発揮できることも判った。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]引張り強度が1180MPa以上の冷延鋼板の表面に、Ca塩、Be塩の中から選ばれる1種以上の金属塩とP化合物を含有し、前記金属塩の金属(Ca、Be)換算での合計付着量が10〜500mg/m、前記P化合物のP換算での付着量が10〜1000mg/mである皮膜(A)を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
[2]上記[1]の鋼板において、さらに、皮膜(A)の上層に膜厚が0.3μm以上4.0μm未満の有機樹脂層(B)を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
[3]上記[1]又は[2]の鋼板において、皮膜(A)における金属塩の金属(Ca、Be)換算での合計付着量が50〜500mg/mであることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
本発明の鋼板は、遅れ破壊が効果的に抑制される優れた耐遅れ破壊特性を有し、しかも優れた一次防錆性を有している。このため自動車や建材に高強度材を使用することができ、それらの重量削減が可能となる。
実施例で用いた遅れ破壊評価用試験片を模式的に示す図面 実施例において行った複合サイクル腐食試験の工程を示す説明図
本発明の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板において、基質となる鋼板(素材鋼板)は、化学組成、金属組織、圧延方法などについては特に限定されるものではなく、任意のものとすることができるが、そのなかで、自動車分野や建材分野などにおいて用いられ、特に自動車分野などにおいて多く用いられる冷延鋼板が望ましく、なかでも大気腐食環境下で遅れ破壊発生の懸念が生じる引張り強度が1180MPa(約120kgf/mm)以上の高張力冷延鋼板であることが重要である。引張り強度が1180MPa未満の鋼板に対して本発明を適用し、表面に特定の金属塩とP化合物を含む皮膜を形成しても、当該鋼板の各種特性には影響はしないが、引張り強度の低い鋼板は本質的に遅れ破壊が生じにくいため、本発明に係る皮膜を形成することでコスト増加につながる。
なお、高強度冷延鋼板では、機械特性などの諸特性を向上させるために、例えば、C、Nなどの侵入型固溶元素やSi、Mn、P、Crなどの置換型固溶元素の添加による固溶体強化、Ti、Nb、Vなどの炭・窒化物による析出強化、その他、W、Zr、Hf、Co、B、希土類元素などの強化元素の添加といった化学組成的改質、再結晶の起こらない温度で回復焼きなましすることによる強化あるいは完全に再結晶させずに未再結晶領域を残す部分再結晶強化、ベイナイトやマルテンサイト単相化あるいはフェライトとこれら変態組織の複合組織化といった変態組織による強化、フェライト粒径をdとしたときのHall-Petchの式:σ=σ+kd-1/2(式中σ:応力、σ,k:材料定数)で表される細粒化強化、圧延などによる加工強化といった組織的ないし構造的改質が、単独ないし複数組み合わせて行われているが、上述したように本発明において用いられる鋼板の化学組成および金属組織は特に限定されるものではなく、所定の引張り強度を有するものであれば、いかなる化学組成、金属組織を有するものでもよい。
このような高強度冷延鋼板の組成としては、例えば、C:0.1〜0.4mass%、Si:0〜2.5mass%、Mn:1〜3mass%、P:0〜0.05mass%、S:0〜0.005mass%、残部がFeおよび不可避的不純物であるもの、これにCu、Ti、V、Al、Crなどの1種又は2種以上を添加したもの、などを例示できるが、勿論これらに限定されるものではない。
また、高強度冷延鋼板として商業的に入手可能なものとしては、例えば、JFE−CA1180、JFE−CA1370、JFE−CA1470、JFE−CA1180SF、JFE−CA1180Y1、JFE−CA1180Y2(以上、JFEスチール(株)製)、SAFC1180D(新日鐵住金(株)製)などが非限定的に例示できる。
また、基質となる冷延鋼板の板厚も特に限定されないが、例えば、0.8〜2.5mm程度、より好ましくは1.2〜2.0mm程度のものが適当である。
本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板は、上記したような冷延鋼板の表面に、Ca塩、Be塩の中から選ばれる1種以上の金属塩とP化合物を含有する皮膜(A)を有する。
Ca塩、Be塩としては、例えば、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、リン酸カルシウム、塩素酸カルシウム、硫酸ベリリウム、硝酸ベリリウム、酢酸ベリリウム、臭化ベリリウムなどが挙げられ、これらの1種以上を含有することができる。
また、P化合物としては、リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、次亜リン酸などが挙げられ、これらの1種以上を含有することができる。
皮膜(A)中での金属塩の金属(Ca、Be)換算での合計付着量は10〜500mg/mとする。付着量が10mg/m未満では、水素発生量を低下させる効果が小さく、耐遅れ破壊特性を発揮することができない。この観点から付着量の好ましい下限は50mg/mである。一方、500mg/mを超える付着量であっても耐遅れ破壊特性のための機能が低下することはないが、コスト高となるため好ましくない。
また、皮膜(A)中でのP換算でのP化合物の付着量は10〜1000mg/mとする。付着量が10mg/m未満では、鋼板との反応層の形成が十分でないため、長期にわたる耐遅れ破壊特性の向上が見られない。一方、1000mg/mを超える付着量であっても耐遅れ破壊特性のための機能が低下することはないが、コスト高となるため好ましくない。
本発明において、Ca塩、Be塩の中から選ばれる1種以上の金属塩とP化合物を含有する皮膜(A)を形成することにより耐遅れ破壊特性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、以下のような機構によるものと考えられる。
乾湿腐食環境の乾燥過程において、鋼板表面のpHは低下する。その結果、腐食反応のカソードでの水素発生量が増加し、鋼板内に侵入する水素量が増加して遅れ破壊の原因となる。一方、Ca、Beは溶解した際に溶液のpHを上昇させることが知られている。上述の構成成分を含む皮膜が表層に存在することで界面のpH低下を抑制し、水素発生量が減少していると考えられる。そのため、鋼板内部への水素侵入量が低下し、結果的に耐遅れ破壊特性が向上するものと考えられる。
さらに、皮膜(A)がP化合物を含むことにより、鋼板表面と反応層を形成するため、強固な皮膜とすることができる。上述したようにCa塩やBe塩は、腐食過程での水素侵入量の低下に効果があるが、それら単独では溶解性が高く、腐食試験の湿潤時に皮膜が溶出してしまい、長期にわたる耐遅れ破壊特性の向上効果が見られないが、P化合物を含有することで、長期にわたって優れた耐遅れ破壊特性が得られる。同時に、鋼板表面に強固な皮膜を形成することで、優れた一次防錆性を得ることができる。
冷延鋼板表面の皮膜(A)の形成方法については特に限定されないが、例えば、上述の構成成分(金属塩、P化合物)を含む表面処理液を冷延鋼板の表面にコーティングした後加熱乾燥させる方法が挙げられる。
冷延鋼板表面にコーティングする表面処理液は、溶媒(水及び/又は有機溶剤)に上述した構成成分(金属塩、P化合物)を溶解又は分散させることにより調製することができる。
表面処理液を冷延鋼板表面にコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
上記のように表面処理液をコーティングした後、通常、水洗することなく加熱乾燥を行うが、処理後に水洗を行ってもよい。コーティングした表面処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などの手段を用いることができる。この加熱乾燥処理は、到達板温で40〜300℃、望ましくは40〜160℃の範囲で行うことが好ましい。加熱乾燥温度が40℃未満では、乾燥時間が長くなり、皮膜ムラとなる恐れがある。一方、加熱乾燥温度が高くなると、焼鈍工程で制御した材質を変化させることで強度が低下するなど、本来の高強度鋼板としての機能が減少する恐れがある。このような観点から短時間の熱処理時間であることが好ましく、温度範囲は300℃以下であることが好ましい。
本発明の鋼板は、上記皮膜(A)の上層に有機樹脂層(B)を形成することができる。この有機樹脂層(B)は、腐食因子のバリア層となり、腐食を抑制するとともに、加工時にめっき層の剥がれを防止する機能を有する。
この有機樹脂層(B)の膜厚は0.3μm以上4.0μm未満とする。膜厚が0.3μm未満では、バリア層による耐食性向上効果が十分に得られない。一方、膜厚が4.0μm以上では導電性が低下し、溶接性が劣る。
有機樹脂層(B)を構成する有機樹脂としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン樹脂(ポリオレフィン樹脂)、アルキド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
有機樹脂層(B)を形成するには、有機樹脂を溶媒(水及び/又は有機溶剤)に溶解及び/又は分散させた処理液(樹脂溶液)を皮膜(A)が形成された鋼板表面にコーティングした後、加熱乾燥させる方法が採られる。
有機樹脂を含む処理液をコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等の手段を用いることができる。
有機樹脂層(B)の膜厚は、皮膜断面を観察し、任意視野の複数箇所(例えば、3箇所)で有機樹脂層の厚さ(皮膜(A)の表面から有機樹脂層の表面までの厚さ)を測定し、それらの平均値を膜厚とする。断面加工の方法は、特に限定されないが、例えばFIB加工などが採ることができる。
[実施例1]
素材鋼板として、C:0.191mass%、Si:0.4mass%、Mn:1.56mass%、P:0.011mass%、S:0.001mass%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有し、引張り強度が1520MPa、板厚が1.5mmの冷延鋼板(冷間圧延ままの鋼板)を用いた。
冷延鋼板の表面に付着した油をトルエン−エタノールの混合液で超音波脱脂した。コーティング法では、表1に示す各配合成分(金属塩、P化合物)を水(純水)に溶解させて皮膜形成用の表面処理液を調製し、この表面処理液を鋼板表面に塗布した後、高周波誘導加熱炉で加熱乾燥を実施し、発明例及び比較例の鋼板を得た。皮膜中の各金属成分の付着量は、蛍光X線により、既知の各金属成分付着量の鋼板を標準板として用いることで測定した。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下に示す手法で耐遅れ破壊特性と一次防錆性を評価した。その結果を、皮膜構成とともに、表1に示す。なお、皮膜を形成しない鋼板(比較例であるNo.1)についても同様の特性評価を行った。
・耐遅れ破壊特性の評価
発明例及び比較例の鋼板をそれぞれ幅35mm×長さ100mmにせん断し、幅が30mmになるまで研削加工を施し、試験片を作製した。図1に示すように、この試験片1をU字形状に曲げて、ボルト2とナット3で拘束して試験片形状を固定し、遅れ破壊評価用試験片を得た。このようにして作製した遅れ破壊評価用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を、最大20サイクルまで実施した。各サイクルの塩水浸漬の工程前に目視により割れの発生の有無を調査し、割れ発生サイクル数を測定した。また、本試験は、各鋼板3検体ずつ実施し、その平均値をもって評価を行った。評価は割れ発生サイクル数から、以下の基準により評価した。なお、表1中に示しているが、皮膜を付与しない比較例の場合は4サイクルであったことから、◎、○を好適範囲とした。表1中の割れサイクル数20以上とは、本実施例の結果では、割れが発生しなかったことを示す。
◎:15サイクル以上
○:10サイクル以上15サイクル未満
×:10サイクル未満
・一次防錆性の評価
発明例及び比較例の鋼板をそれぞれ50mm×50mmのサイズにせん断し、この試験片に対して上記の複合サイクル腐食試験(図2参照)を実施し、1サイクル後の赤錆発生面積率から、以下の基準により評価した。
○:赤錆発生面積率50%未満
×:赤錆発生面積率50%以上
Figure 2018168467
表1において、No.3、5〜13の発明例は皮膜中にCa塩とP化合物を、No.14〜19の発明例は皮膜中にBe塩とP化合物を、それぞれ本発明の範囲で含有するものであるが、いずれの発明例も優れた耐遅れ破壊特性と一次防錆性が得られている。
[実施例2]
実施例1と同様の冷延鋼板を素材鋼板とし、この冷延鋼板の表面に付着した油をトルエン−エタノールの混合液で超音波脱脂した。コーティング法では、表2及び表3に示す各配合成分(金属塩、P化合物)を水(純水)に溶解させて皮膜形成用の表面処理液を調製し、この表面処理液を鋼板表面に塗布した後、高周波誘導加熱炉で加熱乾燥を実施して第一層皮膜を形成した。この皮膜中の各金属成分の付着量は、蛍光X線により、既知の各金属成分付着量の鋼板を標準板として用いることで測定した。
次いで、第一層皮膜の上層に第二層皮膜として有機樹脂層を形成した。有機樹脂層用には下記A1〜A4の有機樹脂を用い、いずれかの有機樹脂を含む処理液をロール方式による塗布法で塗布した後、到達板温が120℃となるようにインダクションヒーターで加熱することで有機樹脂層を形成した。
A1:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:jER1009)
A2:ポリオレフィン樹脂(東邦化学工業(株)製、商品名:HYTEC S−3121)
A3:ウレタン樹脂(メーカー名:第一工業製薬(株)製 型番:スーパーフレックスE−2000)
A4:フッ素樹脂(旭硝子(株)製、商品名:ルミフロン LF552)
また、有機樹脂層の膜厚の測定は、FIB加工により得られた断面をSEM観察し、任意視野の3箇所で有機樹脂層の厚さ(第一層皮膜面から有機樹脂層の表面までの厚さ)を測定し、それらの平均値を膜厚とした。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下に示す手法で耐遅れ破壊特性、一次防錆性及び導電性を評価した。その結果を、皮膜構成とともに、表2及び表3に示す。なお、皮膜を形成しない鋼板(比較例であるNo.1)についても同様の特性評価を行った。
・耐遅れ破壊特性の評価
発明例及び比較例の鋼板に対して実施例1と同様の試験条件と評価基準で試験を実施した。
・一次防錆性の評価
発明例及び比較例の鋼板に対して実施例1と同様の試験を実施し、1サイクル後の赤錆発生面積率から、以下の基準により評価した。
◎:赤錆発生面積率5%未満
○:赤錆発生面積率5%以上20%未満
×:赤錆発生面積率20%以上
・導電性の評価
溶接性の指標として導電性を評価した。発明例および比較例の鋼板の試験片について、三菱化学アナリテック(株)製「ロレスタGP ASP端子」を用い表面抵抗値を測定し、表面抵抗値が10−4Ω以下となる割合(%)により、以下の判定基準で評価した。
○:80%以上
×:80%未満
Figure 2018168467
Figure 2018168467
表2において、No.3、5〜8、10、11、13〜25の発明例は皮膜中にCa塩とP化合物を、No.26〜31の発明例は皮膜中にBe塩とP化合物を、それぞれ本発明の範囲で含有し、かつ上層に本発明条件を満たす有機樹脂層を有するものであるが、いずれの発明例も優れた耐遅れ破壊特性と一次防錆性、さらには導電性が得られている。
1 試験片
2 ボルト
3 ナット

Claims (3)

  1. 引張り強度が1180MPa以上の冷延鋼板の表面に、Ca塩、Be塩の中から選ばれる1種以上の金属塩とP化合物を含有し、前記金属塩の金属(Ca、Be)換算での合計付着量が10〜500mg/m、前記P化合物のP換算での付着量が10〜1000mg/mである皮膜(A)を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
  2. さらに、皮膜(A)の上層に膜厚が0.3μm以上4.0μm未満の有機樹脂層(B)を有することを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
  3. 皮膜(A)における金属塩の金属(Ca、Be)換算での合計付着量が50〜500mg/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
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