JP2017002354A - 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板 - Google Patents

引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP2017002354A
JP2017002354A JP2015116654A JP2015116654A JP2017002354A JP 2017002354 A JP2017002354 A JP 2017002354A JP 2015116654 A JP2015116654 A JP 2015116654A JP 2015116654 A JP2015116654 A JP 2015116654A JP 2017002354 A JP2017002354 A JP 2017002354A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
vanadium oxide
steel sheet
molybdenum
delayed fracture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015116654A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6288471B2 (ja
Inventor
大塚 真司
Shinji Otsuka
真司 大塚
土本 和明
Kazuaki Tsuchimoto
和明 土本
弘之 増岡
Hiroyuki Masuoka
弘之 増岡
平 章一郎
Shoichiro Taira
章一郎 平
吉見 直人
Naoto Yoshimi
直人 吉見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2015116654A priority Critical patent/JP6288471B2/ja
Publication of JP2017002354A publication Critical patent/JP2017002354A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6288471B2 publication Critical patent/JP6288471B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、引張強度1180MPa以上である耐遅れ破壊特性に優れた鋼板を提供する。
【解決手段】引張強度が1180MPa以上の鋼板表面に、所定付着量のバナジウム酸化物を含有するFe皮膜若しくは所定付着量のバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を形成することにより、鋼板内部への水素侵入が抑制され、優れた耐遅れ破壊性が得られる。また、それらのFe皮膜を電気めっき法で形成するとともに、その上層に所定膜厚の有機樹脂層を形成することにより、優れた耐遅れ破壊性とともに、優れた耐食性および溶接性が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐遅れ破壊性に優れた鋼板に関するものであり、詳細には、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、耐遅れ破壊性に優れた引張強度1180MPa以上の高強度鋼板に関するものである。
自動車用鋼板には、板厚精度や平担度に関する要求から冷延鋼板が用いられているが、近年、自動車のCO排出量の低減および安全性確保の観点から、自動車用鋼板の高強度化が図られている。
しかしながら、鋼材の強度を高めていくと、遅れ破壊という現象が生じやすくなることが知られており、この遅れ破壊は鋼材強度の増大とともに激しくなり、特に引張り強さ1180MPa以上の高強度鋼で顕著となる。なお、遅れ破壊とは、高強度鋼材が静的な負荷応力(引張り強さ以下の負荷応力)を受けた状態で、ある時間が経過したとき、外見上はほとんど塑性変形を伴うことなく、突然脆性的な破壊が生じる現象である。
この遅れ破壊は、鋼板の場合、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることが知られている。この遅れ破壊の原因となる水素は、ほとんどの場合、外部環境から鋼中に侵入、拡散した水素であると考えられており、代表的には、鋼板の腐食の際に発生した水素が鋼中に侵入、拡散したものである。
高強度鋼板におけるこのような遅れ破壊を防止するために、例えば、特許文献1では、鋼板の組織や成分を調整することにより、遅れ破壊感受性を弱める検討がなされている。
特開2004−231992号公報
しかし、特許文献1の手法では、外部環境から鋼板内部に侵入する水素量は変化しないため、遅れ破壊の発生を遅らせることは可能であるが、遅れ破壊自体を防止することはできない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、引張強度1180MPa以上を有する耐遅れ破壊性に優れた鋼板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、耐遅れ破壊性に優れるとともに、耐食性および溶接性にも優れた鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋼板内部に侵入する水素を抑制することにより遅れ破壊を防止する手段について、鋭意検討および研究を重ねた。その結果、鋼板表面にバナジウム酸化物を含有するFe皮膜若しくはバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を形成することにより、鋼板内部への水素侵入を大幅に抑制し、鋼板の遅れ破壊を効果的に抑制できることを見出した。
また、自動車用鋼板として使用するためには、優れた耐食性や溶接性(導電性)が必要とされる。特に、自動車などの製造工程では塗装がなされない若しくは塗膜がほとんど形成されない部位が存在し、そのような部位では腐食が進行することにより遅れ破壊が発生する可能性がある。そこで、耐遅れ破壊性とともに、優れた耐食性および溶接性を得るために検討を行った結果、バナジウム酸化物を含有するFe皮膜若しくはバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を電気めっき法で形成するとともに、その上層に所定膜厚の有機樹脂層を形成することにより、上述したような優れた耐遅れ破壊性とともに、優れた耐食性および溶接性が得られることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、バナジウム酸化物を含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
[2]引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、電気めっき法で形成された皮膜であってバナジウム酸化物を含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜の上層に膜厚が0.3〜4.0μmの有機樹脂層を有し、前記Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
[3]上記[1]または[2]の高強度鋼板において、バナジウム酸化物を含有するFe皮膜におけるバナジウム酸化物の含有率が金属バナジウム換算で1〜40質量%であることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
[4]引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、バナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであり、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
[5]引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、電気めっき法で形成された皮膜であってバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜の上層に膜厚が0.3〜4.0μmの有機樹脂層を有し、前記Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであり、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
[6]上記[4]または[5]の高強度鋼板において、バナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜におけるバナジウム酸化物の含有率が金属バナジウム換算で1〜40質量%であり、モリブデンの含有率が金属モリブデン換算で1〜30質量%であることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
本発明の高強度鋼板は、鋼板内部への水素の侵入が抑制され、遅れ破壊が効果的に抑制される優れた耐遅れ破壊性を有する。また、鋼板の腐食しろの削減により鋼板の板厚も小さくすることができるので、自動車分野、建材分野に適用する強度部材の重量削減が可能となる。
また、バナジウム酸化物を含有するFe皮膜若しくはバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を電気めっき法で形成するとともに、その上層に所定の膜厚の有機樹脂層を形成した本発明の鋼板は、上述した優れた耐遅れ破壊性とともに、優れた耐食性と溶接性を有する。
実施例で用いた遅れ破壊評価用試験片を模式的に示す図面 実施例において行った複合サイクル腐食試験の工程を示す説明図 実施例で用いた耐食性評価用試験片を模式的に示す図面
以下、本発明の高強度鋼板のなかで、鋼板の表面にバナジウム酸化物を含有するFe皮膜が形成される第一の形態の高強度鋼板について説明する。
本発明の耐遅れ破壊性に優れた鋼板の基材となる鋼板は、引張強度が1180MPa以上の鋼板である。引張強度が1180MPa以上であれば、その化学組成や鋼組織は特に限定されず、また、圧延方法などについても特に限定されず、熱延鋼板、冷延鋼板のいずれでもよい。しかしながら、このうち、自動車分野や建材分野などで用いられる、特に自動車分野などで多く用いられる引張強度が1180MPa以上の高強度冷延鋼板が好ましく、引張強度が1340MPa以上の高強度冷延鋼板がさらに好ましい。引張強度が低い鋼板は、本質的に遅れ破壊が生じにくい。本発明の効果は、引張強度が低い鋼板でも発現されるが、引張強度が1180MPa以上の鋼板で顕著に発現され、引張強度が1340MPa以上の鋼板でより顕著に発現されるためである。
本発明において好ましく用いられる高強度冷延鋼板は、所望の引張強度を有するものであれば、いかなる組成および組織を有するものでもよく、機械特性などの諸特性を向上させるために、例えば、C、Nなどの侵入型固溶元素およびSi、Mn、P、Crなどの置換型固溶元素の添加による固溶体強化、Ti、Nb、V、Alなどの炭・窒化物による析出強化、W、Zr、Hf、Co、B、Cu、希土類元素などの強化元素の添加などの化学組成的改質、再結晶の起こらない温度で回復焼きなましすることによる強化あるいは完全に再結晶させずに未再結晶領域を残す部分再結晶強化、ベイナイトやマルテンサイト単相化あるいはフェライトとこれら変態組織の複合組織化といった変態組織による強化、フェライト粒径をdとしたときのHall-Petchの式:σ=σ+kd-1/2(式中σ:応力、σ,k:材料定数)で表される細粒化強化、圧延などによる加工強化といった組織的ないし構造的改質を単独でまたは複数を組み合わせて行うことができる。
このような高強度冷延鋼板の組成としては、例えば、C:0.1〜0.4質量%、Si:0〜2.5質量%、Mn:1〜3質量%、P:0〜0.05質量%、S:0〜0.005質量%、残部がFeおよび不可避的不純物であるもの、さらに、これにCu、Ti、V、Al、Crなどの1種または2種以上を添加したもの、などを例示できる。
また、高強度冷延鋼板として商業的に入手可能なものとしては、例えば、JFE−CA1180、JFE−CA1370、JFE−CA1470、JFE−CA1180SF、JFE−CA1180Y1、JFE−CA1180Y2(以上、JFEスチール(株)製)、SAFC1180D(新日鐵住金(株)製)などが非限定的に例示できる。
また、基材である鋼板の板厚も特に限定されないが、0.8〜2.5mm程度、より好ましくは1.2〜2.0mm程度が適当である。
一般に自動車や建材用の高強度部材には、耐食性を高める目的から亜鉛系めっき鋼板が採用されるが、亜鉛系めっきは腐食過程において多くの水素を発生させるため、遅れ破壊特性に悪影響を与える。このため、亜鉛系めっき鋼板は本発明の基材鋼板として好ましくない。
本発明者らの研究および検討結果によれば、腐食過程における鋼板内部への水素侵入は、乾燥湿潤が繰り返される腐食環境下において、鋼板の乾燥過程におけるpHの低下が大きく寄与していると考えられる。すなわち、水素侵入を抑制するためには、腐食過程でのpH低下を抑制することが重要である。
このため本発明の鋼板は、引張強度が1180MPa以上である鋼板表面に、バナジウム酸化物を含有するFe皮膜を有し、このFe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量を金属バナジウム換算で10〜2000mg/mとする。このバナジウム酸化物を含有するFe皮膜(以下、説明の便宜上「Fe−バナジウム酸化物皮膜」という)は、Feをベース成分とするFe−バナジウム酸化物複合皮膜である。
バナジウム酸化物の存在が水素侵入を抑制するメカニズムは必ずしも明確ではないが、バナジウムは複数の価数を有する金属であるため、水素発生反応であるカソード反応の一部を担い、バナジウムが還元されることで水素発生を抑制し、OHを生成する反応が引き起こされることでpHの低下を抑制するものと考えられる。
鋼板表面を、上記のような所定付着量のFe−バナジウム酸化物皮膜で被覆すると、バナジウム酸化物が鋼板表面に均一に存在する皮膜が形成される。ここで均一とは、例えば、鋼板表面の任意の30μm角の範囲にバナジウム酸化物が存在するような状態である。このような状態でバナジウム酸化物が存在することにより、腐食過程においてバナジウム酸化物の効果が発現することで水素侵入が抑制され、遅れ破壊が防止される。
より微視的、例えば、5μm角の範囲でのバナジウム酸化物の存在形態を観察した場合、バナジウム酸化物が鋼板表面に不連続に存在する皮膜、すなわち、バナジウム酸化物が不連続に島状に存在する皮膜、あるいはバナジウム酸化物が部分的に存在しないスポットが存在する皮膜、あるいはこれらが混在して存在する皮膜になる場合がある。鋼板の腐食反応は、鋼板表面に付着した塩分が湿度の影響により吸水することで引き起こされ、塩分が多いほど吸水量が多くなる。また、塩分量が多いほど腐食量が多くなり、水素侵入量が多いことが知られている。これらのことから、水素侵入量が多くなる場合は、鋼板表面の塩分量が多く、吸水量が多い、すなわち鋼板表面の液滴は大きいと考えられる。すなわち、前例のような5μm角の範囲でバナジウム酸化物が存在しない領域に水分が付着していた場合は、バナジウム酸化物の効果は発揮されないが、上述のとおりその領域では腐食環境も緩慢であるため、元来水素侵入量が少ない環境であり、遅れ破壊の危険性も低いと考えることができる。言い換えると、液滴が大きくなる場合、鋼板表面の塩化物量が多く、腐食が促進され水素侵入量が多くなるため遅れ破壊の危険性が高まると考えることができる。このような遅れ破壊の危険性が高い腐食環境において、遅れ破壊を発生させない技術が求められるものであり、本発明では、上記のような付着量でバナジウム酸化物を存在させることによりその効果を発現できる。
また、本発明は、鋼板表面に単にバナジウム酸化物を存在させるのではなく、バナジウム酸化物をFe皮膜中に含有させることが重要である。これは、Fe皮膜は基材である鋼板との密着性に優れているため、バナジウム酸化物をFe皮膜中に含有させることにより、加工時にバナジウム酸化物が欠落しにくくなるからである。さらに、Fe皮膜とすることにより、塗装前処理工程であるリン酸塩処理時に「スケ」と呼ばれるリン酸塩結晶の未形成部が生じにくくなるので、塗装品質を高めることができ、塗装が施される自動車や建材などの用途においては特に好ましい。
Fe皮膜とは、後述するようにめっき法や蒸着法で形成される皮膜である。
Fe皮膜中のバナジウム酸化物は、V、V、V、Vなどであり、これらの1種以上がFe皮膜中に含まれる。バナジウム酸化物はFe皮膜中に分散して存在している。
Fe−バナジウム酸化物皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであることにより、所望の効果が得られる。バナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10mg/m未満では、上述したようなバナジウム酸化物によるpH低下抑制効果が小さいため、遅れ破壊を防止することができない。一方、バナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で2000mg/mを超えると、遅れ破壊は防止できるが、加工時にFe−バナジウム酸化物皮膜が欠落し、プレス時の欠陥になるため好ましくない。上述したとおり、遅れ破壊は、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることから、加工時に欠陥が発生することは製品になり得ないことを意味する。
また、Fe−バナジウム酸化物皮膜中でのバナジウム酸化物の含有率は、上述した塗装前処理工程であるリン酸塩処理においてリン酸塩結晶を均一に形成するために、金属バナジウム換算で40質量%以下とすることが好ましい。一方、バナジウム酸化物の含有率が低いと、耐遅れ破壊性を発現させるために皮膜量を多くする必要があり、製造コストが高くなるため、Fe−バナジウム酸化物皮膜中でのバナジウム酸化物の含有率は、金属バナジウム換算で1質量%以上とすることが好ましい。また、以上の観点から、より好ましいバナジウム酸化物の含有率は、金属バナジウム換算で5〜30質量%である。
Fe−バナジウム酸化物皮膜中のバナジウム酸化物量(金属バナジウム換算量)は、例えば、蛍光X線を用い、既知のバナジウム量を検量板として算出する方法や、塩酸などに溶解させICPにより定量化する方法で測定することができる。具体的には、バナジウム量は、同一のFe−バナジウム酸化物皮膜を有する鋼板を塩酸に溶解させ、それぞれの断面を観察することで、下地鋼板に到達した段階での溶液のバナジウム量をICPで測定することにより、定量的に測定することができる。なお、断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、下地鋼板が有する組織と、Fe−バナジウム酸化物皮膜の組織形態は明らかに異なるため、皮膜と下地鋼板との判別は容易である。
また、インヒビターを入れた塩酸に浸漬し、所定時間ごとに質量変化を測定すると、皮膜の溶解と下地鋼板の溶解速度が大きく異なるため、溶解速度の変曲点の質量からバナジウム量を算出することができる。
Fe−バナジウム酸化物皮膜を鋼板表面に形成する方法は、特に制限はなく、公知の方法、例えば、電気めっき法、蒸着法(例えば、イオンプレーティング法、スパッタリング法、真空蒸着法)などを用いることができる。
電気めっき法では、バナジウム含有化合物である硫酸バナジル、バナジン酸アンモニウム、オルトバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウムなどや、酸化バナジウムのコロイド溶液などの1種以上と、Fe含有化合物である硫酸鉄、硝酸鉄、塩化鉄などの1種以上を添加した溶液を用いて通電することによりめっき皮膜を形成させることができる。皮膜中のバナジウム酸化物の付着量および含有率は、溶液中のバナジウム含有化合物の濃度を変えたり、通電する電流密度を変化させることで調整することができる。また、電解時間を変化させることでめっき量を調整することができる。
また、蒸着法では、Feターゲット基板やVターゲット基板へのスパッタリング条件を変化させることで、皮膜中のバナジウム酸化物の付着量および含有率を調整することができる。
Fe−バナジウム酸化物皮膜は、鋼板の片面のみに形成してもよいし、鋼板両面に形成してもよい。
本発明の鋼板は、Fe−バナジウム酸化物皮膜の上層に有機樹脂層を設けることができる。1180MPa以上の鋼板を自動車用に用いる場合、耐遅れ破壊性だけでなく、自動車部品を構成するための溶接性や、部品となった後の耐食性が必要特性として求められる。鋼板の耐食性を向上させるには有機樹脂層で被覆することが有効であり、有機樹脂層を厚くすることで耐食性は著しく向上するが、有機樹脂層を厚くすると導電性が低下するため溶接性が劣化する。耐食性に必要な有機樹脂層を設けつつ、十分な溶接性を確保するという観点から、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、鋼板表面に電気めっき法によりFe−バナジウム酸化物皮膜を形成し、このFe−バナジウム酸化物皮膜の上層に適正な厚さの有機樹脂層を形成することにより、耐食性と溶接性を両立できることを見出した。これは、電気めっき法により形成されるFe−バナジウム酸化物皮膜は凹凸が大きいため、耐食性を発現するための有機樹脂層をFe−バナジウム酸化物皮膜内に取り込むことができ、かつFe−バナジウム酸化物皮膜の凸部で導電性を確保できるため、溶接性を損なうことがないためであると考えられる。
さきに述べたように、Fe−バナジウム酸化物皮膜を形成する方法としては、電気めっき法以外に蒸着法があるが、この方法の場合は、形成されるFe−バナジウム酸化物皮膜は凹凸が小さいため、有機樹脂層を被覆した場合に十分な導電性が得られず、溶接性が低下してしまう。
このため、本発明においてFe−バナジウム酸化物皮膜の上層に有機樹脂層を設ける場合には、電気めっき法によりFe−バナジウム酸化物皮膜を形成する。
有機樹脂層に用いる有機樹脂の種類に特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系樹脂、エチレン樹脂(ポリオレフィン樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
有機樹脂層の膜厚は0.3〜4.0μmとする。膜厚が0.3μm未満では耐食性の向上効果が認められず、一方、4.0μmを超えるとFe−バナジウム酸化物皮膜の凸部が完全に有機樹脂層に覆われ、導電性が低下して溶接性が劣ったものとなる。
有機樹脂層をFe−V酸化物皮膜を有する鋼板表面に形成するには、有機樹脂を溶媒(水および/または有機溶剤)に溶解および/または分散させた処理液(樹脂溶液)を鋼板表面にコーティングした後、加熱乾燥させる方法が採られる。
有機樹脂を含む処理液を鋼板表面にコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等の手段を用いることができる。
有機樹脂層の膜厚の測定については、皮膜断面を観察し、任意視野の複数箇所(例えば、3箇所)で有機樹脂層の厚さ(基材鋼板面から有機樹脂層の表面までの厚さ)を測定し、それらの平均値を膜厚とする。断面加工の方法としては特に限定されないが、例えばFIB加工などが挙げられる。
なお、Fe−バナジウム酸化物皮膜とその上層の有機樹脂層は、鋼板の片面のみに形成してもよいし、鋼板両面に形成してもよい。
本発明において基材として使用される鋼板の製造方法は特に限定されない。本発明の理解を容易にするために、例えば、冷延鋼板の表面にFe−バナジウム酸化物皮膜を形成する場合における、製鋼からの一連のプロセスについて、一例を挙げて簡単に説明する。但し、基材となる鋼板の製造工程としては、以下の例示に限定されるものではない。
所定の成分組成の鋼を溶製し、常法に従い連続鋳造でスラブとする。次いで、得られたスラブを加熱炉中で1100〜1300℃の温度で加熱し、750〜950℃の仕上げ温度で熱間圧延を行い、500〜650℃にて巻き取る。これに続いて酸洗後、圧下率30〜70%の冷間圧延を行う。その後、必要に応じて、常法に従い、アルカリまたはアルカリと界面活性剤およびキレート剤との混合溶液による洗浄、電解洗浄、温水洗浄、乾燥を行う清浄化処理を行った後、650〜900℃にて加熱処理し、急速冷却を行い、鋼板の引張強度の調整を行う。さらに必要に応じて、常法に従い0.01〜0.5%程度の調質圧延を行うことで所望の引張強度を有する冷延鋼板を得る。
このようにして得られた冷延鋼板表面に、電気めっき法、蒸着法などの方法により、所定付着量のFe−バナジウム酸化物皮膜を形成する。また、Fe−バナジウム酸化物皮膜の上層に有機樹脂層を形成する場合には、電気めっき法により所定付着量のFe−バナジウム酸化物皮膜を形成し、さらにその上に処理液(樹脂溶液)をコーティングした後、加熱乾燥することにより有機樹脂層を形成する。以上により、本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼板を得ることができる。
なお、鋼板表面にFe−バナジウム酸化物皮膜を形成するのにめっき法、特に電気めっき法を用いた場合において、めっき処理時に鋼板およびFe−バナジウム酸化物皮膜中に水素が侵入するおそれがあるときは、必要に応じて、めっき処理後に100〜300℃程度の温度でベーキング処理を施し、鋼板およびFe−バナジウム酸化物皮膜中に侵入した水素を除去する処理を施してもよい。
次に、本発明の高強度鋼板のなかで、鋼板の表面にバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜が形成される第二の形態の高強度鋼板について説明する。
高強度鋼板の遅れ破壊への対応として、従来、高強度鋼板は加工の厳しくない部位に限定して使用されてきたが、近年では、高強度鋼板をより加工の厳しい部位に適用するニーズが高まっている。加工の厳しい部位は歪や応力が高くなるため、遅れ破壊も発生しやすい。鋼板の表面にバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜が形成される本発明の高強度鋼板は、このような課題に対して、特に好適な鋼板であると言える。すなわち、さきに説明した本発明の第一の形態の高強度鋼板に較べて、より優れた耐遅れ破壊性が得られる。
本発明の耐遅れ破壊性に優れた鋼板の基材となる鋼板は、引張強度が1180MPa以上の鋼板である。この基材鋼板については、さきに述べた本発明の第一の形態の高強度鋼板(鋼板の表面にバナジウム酸化物を含有するFe皮膜が形成される高強度鋼板)と同様であるので、詳細な説明は省略する。
さきに述べたように、本発明者らの研究および検討結果によれば、腐食過程における鋼板内部への水素侵入は、乾燥湿潤が繰り返される腐食環境下において、鋼板の乾燥過程におけるpHの低下が大きく寄与していると考えられる。すなわち、水素侵入を抑制するためには、腐食過程でのpH低下を抑制することが重要である。
このため本発明の鋼板は、引張強度が1180MPa以上である鋼板表面に、バナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を有し、このFe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量を金属バナジウム換算で10〜2000mg/m、モリブデンの付着量を金属モリブデン換算で10〜2000mg/mとする。このバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜(以下、説明の便宜上「Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜」という)は、Feをベース成分とするFe−バナジウム酸化物−モリブデン複合皮膜である。
鋼板表面にバナジウム酸化物とモリブデンを付着させることで耐遅れ破壊性が向上するメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下のように考えることができる。上述したとおり、鋼板の遅れ破壊は、腐食過程で生成した水素の一部が鋼板に侵入することにより引き起こされ、特に、腐食過程での鉄の腐食生成物の酸化還元反応によりpHが低下することにより水素侵入量が増加すると考えられる。バナジウムは複数の価数を有しているため、バナジウム酸化物自体の酸化還元反応が引き起こされることで、水素発生反応が抑制され、pHの低下が抑制されるものと考えられる。また、モリブデンも複数の価数を有する酸化物を形成するために、モリブデン自体の酸化還元反応によってもpHの低下が抑制されるものと考えられる。さらに、バナジウム酸化物とモリブデンを複合化することで、バナジウム酸化物とモリブデンとの電子授受が引き起こされることにより、さらに水素発生反応が起こりにくくなり、pHの低下が抑制されるものと考えられる。
鋼板表面を、上記のような所定付着量のFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜で被覆すると、バナジウム酸化物とモリブデンが鋼板表面に均一に存在する皮膜が形成される。ここで均一とは、例えば、鋼板表面の任意の30μm角の範囲にバナジウム酸化物とモリブデンが存在するような状態である。このような状態でバナジウム酸化物とモリブデンが存在することにより、腐食過程においてバナジウム酸化物とモリブデンの効果が発現することで水素侵入が抑制され、遅れ破壊が防止される。
より微視的、例えば、5μm角の範囲でのバナジウム酸化物とモリブデンの存在形態を観察した場合、バナジウム酸化物とモリブデンが鋼板表面に不連続に存在する皮膜、すなわち、バナジウム酸化物とモリブデンが不連続に島状に存在する皮膜、あるいはバナジウム酸化物とモリブデンが部分的に存在しないスポットが存在する皮膜、あるいはこれらが混在して存在する皮膜になる場合がある。鋼板の腐食反応は、鋼板表面に付着した塩分が湿度の影響により吸水することで引き起こされ、塩分が多いほど吸水量が多くなる。また、塩分量が多いほど腐食量が多くなり、水素侵入量が多いことが知られている。これらのことから、水素侵入量が多くなる場合は、鋼板表面の塩分量が多く、吸水量が多い、すなわち鋼板表面の液滴は大きいと考えられる。すなわち、前例のような5μm角の範囲でバナジウム酸化物とモリブデンが存在しない領域に水分が付着していた場合は、バナジウム酸化物とモリブデンの効果は発揮されないが、上述のとおりその領域では腐食環境も緩慢であるため、元来水素侵入量が少ない環境であり、遅れ破壊の危険性も低いと考えることができる。言い換えると、液滴が大きくなる場合、鋼板表面の塩化物量が多く、腐食が促進され水素侵入量が多くなるため遅れ破壊の危険性が高まると考えることができる。このような遅れ破壊の危険性が高い腐食環境において、遅れ破壊を発生させない技術が求められるものであり、本発明では、上記のような付着量でバナジウム酸化物とモリブデンを存在させることによりその効果を発現できる。
また、本発明は、鋼板表面に単にバナジウム酸化物とモリブデンを存在させるのではなく、バナジウム酸化物とモリブデンをFe皮膜中に含有させることが重要である。これは、Fe皮膜は基材である鋼板との密着性に優れているため、バナジウム酸化物とモリブデンをFe皮膜中に含有させることにより、加工時にバナジウム酸化物やモリブデンが欠落しにくくなるからである。さらに、Fe皮膜とすることにより、塗装前処理工程であるリン酸塩処理時に「スケ」と呼ばれるリン酸塩結晶の未形成部が生じにくくなるので、塗装品質を高めることができ、塗装が施される自動車や建材などの用途においては特に好ましい。
Fe皮膜とは、後述するようにめっき法や蒸着法で形成される皮膜である。
Fe皮膜中のバナジウム酸化物は、V、V、V、Vなどであり、これらの1種以上がFe皮膜中に含まれる。バナジウム酸化物はFe皮膜中に分散して存在していると考えられる。
また、Fe皮膜中のモリブデンは、MoO、MoOなどのMo酸化物や金属Moとして存在していると考えられ、これらの1種以上がFe皮膜中に含まれる。
Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/m、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で10〜2000mg/mであることにより、所望の効果が得られる。さきに述べた本発明の第一の形態の高強度鋼板のように、バナジウム酸化物のみを含むFe皮膜でも耐遅れ破壊性を向上させることができるが、モリブデンを複合化することにより、より厳しい加工条件であっても、優れた耐遅れ破壊性が得られる。
バナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10mg/m未満、または/および、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で10mg/m未満では、上述したようなバナジウム酸化物とモリブデンによるpH低下抑制効果、さらにはバナジウム酸化物とモリブデンとの相互作用によるpH低下抑制効果が小さいため、所望の耐遅れ破壊性が得られない。一方、バナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で2000mg/mを超え、または/および、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で2000mg/mを超えると、遅れ破壊は防止できるが、加工時にFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜が欠落し、プレス時の欠陥になるため好ましくない。上述したとおり、遅れ破壊は、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることから、加工時に欠陥が発生することは製品になり得ないことを意味する。
また、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜中でのバナジウム酸化物とモリブデンの含有率は、上述した塗装前処理工程であるリン酸塩処理においてリン酸塩結晶を均一に形成するために、バナジウム酸化物は金属バナジウム換算で40質量%以下、モリブデンは金属モリブデン換算で30質量%以下とすることが好ましい。一方、バナジウム酸化物やモリブデンの含有率が低いと、耐遅れ破壊性を発現させるために皮膜量を多くする必要があり、製造コストが高くなるため、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜中でのバナジウム酸化物の含有率は、金属バナジウム換算で1質量%以上、モリブデンの含有率は、金属モリブデン換算で1質量%以上とすることが好ましい。
Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜中のバナジウム酸化物量(金属バナジウム換算量)やモリブデン量(金属モリブデン換算量)は、例えば、蛍光X線を用い、既知のバナジウム量やモリブデン量を検量板として算出する方法や、塩酸などに溶解させICPにより定量化する方法で測定することができる。具体的には、バナジウム量やモリブデン量は、同一のFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を有する鋼板を塩酸に溶解させ、それぞれの断面を観察することで、下地鋼板に到達した段階での溶液のバナジウム量やモリブデン量をICPで測定することにより、定量的に測定することができる。なお、断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、下地鋼板が有する組織と、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の組織形態は明らかに異なるため、皮膜と下地鋼板との判別は容易である。
また、インヒビターを入れた塩酸に浸漬し、所定時間ごとに質量変化を測定すると、皮膜の溶解と下地鋼板の溶解速度が大きく異なるため、溶解速度の変曲点の質量からバナジウム量やモリブデン量を算出することができる。
Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を鋼板表面に形成する方法は、特に制限はなく、公知の方法、例えば、電気めっき法、蒸着法(例えば、イオンプレーティング法、スパッタリング法、真空蒸着法)などを用いることができる。
電気めっき法では、バナジウム含有化合物である硫酸バナジル、バナジン酸アンモニウム、オルトバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウムなどや、酸化バナジウムのコロイド溶液などの1種以上と、モリブデン含有化合物であるモリブデン酸、12モリブドりん酸、モリブデン酸バリウム、モリブデン(VI)酸二ナトリウム、7モリブデン酸6アンモニウム、りんモリブデン酸ナトリウム、チオモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウムなどや、酸化モリブデンのコロイド溶液などの1種以上と、Fe含有化合物である硫酸鉄、硝酸鉄、塩化鉄などの1種以上を添加した溶液を用いて通電することによりめっき皮膜を形成させることができる。皮膜中のバナジウム酸化物やモリブデンの付着量および含有率は、溶液中のバナジウム含有化合物やモリブデン含有化合物の濃度を変えたり、通電する電流密度を変化させることで調整することができる。また、電解時間を変化させることでめっき量を調整することができる。
また、蒸着法では、Feターゲット基板、Moターゲット基板、Vターゲット基板へのスパッタリング条件を変化させることで、皮膜中のバナジウム酸化物やモリブデンの付着量および含有率を調整することができる。
Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜は、鋼板の片面のみに形成してもよいし、鋼板両面に形成してもよい。
本発明の鋼板は、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の上層に有機樹脂層を設けることができる。1180MPa以上の鋼板を自動車用に用いる場合、耐遅れ破壊性だけでなく、自動車部品を構成するための溶接性や、部品となった後の耐食性が必要特性として求められる。鋼板の耐食性を向上させるには有機樹脂層で被覆することが有効であり、有機樹脂層を厚くすることで耐食性は著しく向上するが、有機樹脂層を厚くすると導電性が低下するため溶接性が劣化する。耐食性に必要な有機樹脂層を設けつつ、十分な溶接性を確保するという観点から、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、鋼板表面に電気めっき法によりFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成し、このFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の上層に適正な厚さの有機樹脂層を形成することにより、耐食性と溶接性を両立できることを見出した。これは、電気めっき法により形成されるFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜は凹凸が大きいため、耐食性を発現するための有機樹脂層をFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜内に取り込むことができ、かつFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の凸部で導電性を確保できるため、溶接性を損なうことがないためであると考えられる。
さきに述べたように、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成する方法としては、電気めっき法以外に蒸着法があるが、この方法の場合は、形成されるFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜は凹凸が小さいため、有機樹脂層を被覆した場合に十分な導電性が得られず、溶接性が低下してしまう。
このため、本発明においてFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の上層に有機樹脂層を設ける場合には、電気めっき法によりFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成する。
有機樹脂層に用いる有機樹脂の種類に特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系樹脂、エチレン樹脂(ポリオレフィン樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
有機樹脂層の膜厚は0.3〜4.0μmとする。膜厚が0.3μm未満では耐食性の向上効果が認められず、一方、4.0μmを超えるとFe−バナジウム酸化物皮膜の凸部が完全に有機樹脂層に覆われ、導電性が低下して溶接性が劣ったものとなる。
有機樹脂層をFe−V酸化物−モリブデン皮膜を有する鋼板表面に形成するには、有機樹脂を溶媒(水および/または有機溶剤)に溶解および/または分散させた処理液(樹脂溶液)を鋼板表面にコーティングした後、加熱乾燥させる方法が採られる。
有機樹脂を含む処理液を鋼板表面にコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等の手段を用いることができる。
有機樹脂層の膜厚の測定については、皮膜断面を観察し、任意視野の複数箇所(例えば、3箇所)で有機樹脂層の厚さ(基材鋼板面から有機樹脂層の表面までの厚さ)を測定し、それらの平均値を膜厚とする。断面加工の方法としては特に限定されないが、例えばFIB加工などが挙げられる。
なお、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜とその上層の有機樹脂層は、鋼板の片面のみに形成してもよいし、鋼板両面に形成してもよい。
本発明において基材として使用される鋼板の製造方法については、さきに述べた本発明の第一の形態の高強度鋼板(鋼板の表面にバナジウム酸化物を含有するFe皮膜が形成される高強度鋼板)と同様であるので、詳細な説明は省略する。
そのような製造方法で得られた冷延鋼板表面に、電気めっき法、蒸着法などの方法により、所定付着量のFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成する。また、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の上層に有機樹脂層を形成する場合には、電気めっき法により所定付着量のFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成し、さらにその上に処理液(樹脂溶液)をコーティングした後、加熱乾燥することにより有機樹脂層を形成する。以上により、本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼板を得ることができる。
なお、鋼板表面にFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成するのにめっき法、特に電気めっき法を用いた場合において、めっき処理時に鋼板およびFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜中に水素が侵入するおそれがあるときは、必要に応じて、めっき処理後に100〜300℃程度の温度でベーキング処理を施し、鋼板およびFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜中に侵入した水素を除去する処理を施してもよい。
[実施例1]
素材鋼板として、C:0.19質量%、Si:0.4質量%、Mn:1.53質量%、P:0.011質量%、S:0.001質量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有し、引張強度が1480MPa、板厚が1.6mmの冷延鋼板(冷間圧延ままの鋼板)を用いた。この冷延鋼板をトルエンに浸漬して5分間超音波洗浄を行った後、Fe−バナジウム酸化物皮膜を鋼板面に形成させた。皮膜の形成方法は、電気めっき法と蒸着法で実施した。
電気めっき法では、硫酸Fe:200g/L、硫酸バナジル濃度:5〜100g/Lとし、硫酸でpHを2に調整した溶液を用いて電気めっきを施した。その際、硫酸バナジルの濃度を変化させることでバナジウム酸化物の付着量と含有率を変化させるとともに、電解時間を変化させることでめっき量を変化させた。
また、蒸着法はイオンプレーティング法で実施し、Fe基材、V基材へのチャ−ジ量を変化させることで、バナジウム酸化物の付着量を変化させた。基材温度は100〜110℃で製膜した。
鋼板上に付着したバナジウム酸化物量は、Fe−バナジウム酸化物皮膜を形成した鋼板をインヒビターを入れた塩酸に浸漬し、所定時間ごとに質量変化を測定した場合の溶解速度の変曲点の質量を算出することで求めた。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下の特性を評価した。その結果を、皮膜構成とともに、表1に示す。なお、Fe−バナジウム酸化物皮膜を形成しない鋼板(比較例であるNo.1)、バナジウム酸化物を含まないFe皮膜を形成した鋼板(比較例であるNo.2)についても同様の特性評価を行った。
(1)加工性の評価
発明例および比較例の鋼板をそれぞれ幅35mm×長さ100mmにせん断した後、せん断時の残留応力を除去するために幅が30mmとなるまで研削加工を施し、試験片を作製した。この試験片に対して、3点曲げ試験機を用いて180°曲げ加工を施し、加工性を評価した。この180°曲げ加工での曲げの曲率半径は4mmRとした。加工性の評価は、曲げ加工後の加工部にダンプロンテープ(「ダンプロン」は登録商標)を接着・剥離し、そのテープを銅板に接着させた後に蛍光X線を用いてV強度を測定し、V強度変化からFe−バナジウム酸化物皮膜の剥れ量を求め、以下の基準により評価した。この評価では、○,△を良好とし、×はプレス欠陥となるため不良とした。なお、下記の皮膜量とはバナジウム酸化物を含むFe皮膜全体の付着量のことである。
〇:Fe−バナジウム酸化物皮膜の剥れなし
△:Fe−バナジウム酸化物皮膜の剥れ量が皮膜量の5%未満
×:Fe−バナジウム酸化物皮膜の剥れ量が皮膜量の5%以上
(2)耐遅れ破壊性の評価
上記(1)と同様にして研削加工を施して作製した試験片を曲率半径4mmRで180°曲げ加工して曲げ試験片とし、図1に示すように、この曲げ試験片1を内側間隔が8mmとなるようにしてボルト2とナット3で拘束して試験片形状を固定し、耐遅れ破壊性評価用試験片を得た。このようにして作製した耐遅れ破壊性評価用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を、最大40サイクルまで実施した。各サイクルの塩水浸漬の工程前に目視により割れの発生の有無を調査し、割れ発生サイクルを測定した。また、本試験は、各鋼板3検体ずつ実施し、その平均値をもって評価を行った。評価はサイクル数から、以下の基準により評価した。なお、表1中の割れサイクル数40超とは、本実施例の結果では、割れが発生しなかったことを示す。
〇:30サイクル以上
△:10サイクル以上30サイクル未満
×:10サイクル未満
Figure 2017002354
表1において、No.1の鋼板は、Fe−バナジウム酸化物皮膜(以下、「Fe−V酸化物皮膜」という)を形成していない比較例(冷延鋼板ままの比較例)、No.2の鋼板は、電気めっき法でバナジウム酸化物(V酸化物)を含まないFe皮膜を形成した比較例である。No.3〜15の鋼板は、電気めっき法でFe−V酸化物皮膜を形成したものである。そのうちNo.3〜9の鋼板は、V酸化物付着量(金属V換算)を変化させたものであるが、発明例であるNo.4〜8の鋼板は、いずれも皮膜剥れがなく、耐遅れ破壊性も良好である。これに対して、V酸化物付着量が本発明範囲を下回るNo.3の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜を形成していないNo.1の鋼板やFe皮膜がV酸化物を含まないNo.2の鋼板に較べて、耐遅れ破壊性が若干向上しているが、発明例であるNo.4〜8の鋼板に較べて耐遅れ破壊性が劣っている。また、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量が本発明範囲を超えるNo.9の鋼板は、曲げ加工で皮膜の剥れが認められることから、プレス加工がなされる鋼板として好適でなく、耐遅れ破壊性も劣っていることが判る。
No.10〜15の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量を約20mg/mとし、Fe−V酸化物皮膜中のV酸化物含有率(金属V換算)を変えた発明例である。これらのうち、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物含有率が40質量%を超えたNo.15の鋼板が37サイクル目で一部割れが発生したが、いずれの鋼板も良好な耐遅れ破壊性が得られている。また、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物含有率が30質量%を超えたNo.13〜15の鋼板は、プレス加工時には問題にならない程度ではあるが、一部皮膜の剥離が認められた。
No.16および17の鋼板は、蒸着法でFe−V酸化物皮膜を形成した発明例であるが、いずれも良好な耐遅れ破壊性と加工性が得られている。
[実施例2]
素材鋼板として、C:0.19質量%、Si:0.4質量%、Mn:1.53質量%、P:0.011質量%、S:0.001質量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有し、引張強度が1480MPa、板厚が1.6mmの冷延鋼板(冷間圧延ままの鋼板)を用いた。この冷延鋼板をトルエンに浸漬して5分間超音波洗浄を行った後、Fe−バナジウム酸化物皮膜を鋼板面に形成させた。皮膜の形成方法は、電気めっき法と比較法である蒸着法で実施した。
電気めっき法では、硫酸Fe:200g/L、硫酸バナジル濃度:5〜100g/Lとし、硫酸でpHを2に調整した溶液を用いて電気めっきを施した。その際、硫酸バナジルの濃度を変化させることでバナジウム酸化物の付着量と含有率を変化させるとともに、電解時間を変化させることでめっき量を変化させた。
また、蒸着法はイオンプレーティング法で実施し、Fe基材、V基材へのチャ−ジ量を変化させることで、バナジウム酸化物の付着量を変化させた。基材温度は100〜110℃で製膜した。
鋼板上に付着したバナジウム酸化物量は、Fe−バナジウム酸化物皮膜を形成した鋼板をインヒビターを入れた塩酸に浸漬し、所定時間ごとに質量変化を測定した場合の溶解速度の変曲点の質量を算出することで求めた。
次いで、Fe−バナジウム酸化物皮膜の上層に有機樹脂層を形成した。有機樹脂層用には下記A1〜A3の有機樹脂を用い、いずれかの有機樹脂を含む処理液をロール方式による塗布法で塗布した後、到達板温が120℃となるようにインダクションヒーターで加熱することで有機樹脂層を形成した。
A1:フッ素樹脂(旭硝子(株)製、商品名:ルミフロン LF552)
A2:ポリオレフィン樹脂(東邦化学工業(株)製、商品名:HYTEC S−3121)
A3:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:jER1009)
また、有機樹脂層の膜厚の測定は、FIB加工により得られた断面をSEM観察し、任意視野の3箇所で有機樹脂層の厚さ(基材鋼板面から有機樹脂層の表面までの厚さ)を測定し、それらの平均値を膜厚とした。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下の特性を評価した。その結果を、皮膜構成とともに、表2に示す。なお、Fe−バナジウム酸化物皮膜、有機樹脂層のいずれか一方または両方を形成しない鋼板(比較例であるNo.1〜3)についても同様の特性評価を行った。
(1)加工性の評価
実施例1と同様にして加工性を評価した。
(2)耐遅れ破壊性の評価
実施例1と同様にして耐遅れ破壊性を評価した。
(3)導電性の評価
溶接性の指標として導電性を評価した。発明例および比較例の鋼板の試験片について、三菱化学アナリテック(株)製「ロレスタGP ASP端子」を用い表面抵抗値を測定し、表面抵抗値が10−4Ω以下となる割合(%)により、以下の判定基準で評価した。
○:80%以上
△:60%以上80%未満
×:60%未満
(4)耐食性の評価
発明例および比較例の鋼板を130mm×70mmと40mm×110mmにせん断して平板試験片とし、この2枚の平板試験片の評価面どうしを重ね合わせてスポット溶接により接合し、図3に示すような耐食性試験用試験片とした。この耐食性試験用試験片に、日本パーカライジング(株)製「パルボンド」を用い、標準条件(35℃、120秒)で浸漬による化成処理を施し、次いで、関西ペイント(株)製の電着塗料「GT−10」を用いた電着塗装と焼付処理を行った。電着塗装の塗膜厚は15μmとし、市販の電磁膜厚計を用いて膜厚の測定を行った。
この電着塗装を施した耐食性試験用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を30サイクル実施し、下記の手順で耐食性の評価を行った。
(1)スポット溶接部を打ち抜き、合わせ構造部を分解する
(2)塗装の剥離(ネオス社製「デスコート300」15分浸漬)
(3)めっき・錆の除去(希薄塩酸浸漬)
(4)合わせ構造部に生じた最大侵食深さをポイントマイクロメーターで測定
耐食性は、冷延鋼板ままの最大侵食深さを1とした場合の最大侵食深さ比(A)を算出し、以下のように評価した。
◎:A≦0.6
○:0.6<A≦0.95
△:0.95<A≦1.2
×:1.2<A
Figure 2017002354
表2において、No.1の鋼板は、Fe−バナジウム酸化物皮膜(以下、「Fe−V酸化物皮膜」という)と有機樹脂層のいずれも形成していない比較例(冷延鋼板ままの比較例)、No.2は有機樹脂層のみを形成した比較例であるが、有機樹脂層のみを形成したNo.2の鋼板は、耐食性は良好であるが、耐遅れ破壊性が劣っている。
No.3の鋼板は、電気めっき法でFe−V酸化物皮膜のみを形成した比較例であるが、耐遅れ破壊性は良好であるが、耐食性が劣っている。
No.4〜24の鋼板は、電気めっき法でFe−V酸化物皮膜を形成し、その上層に有機樹脂層を形成したものである。
No.4〜10の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量(金属V換算)を変化させた例である。発明例であるNo.5〜9の鋼板は、いずれも皮膜剥れがなく、耐遅れ破壊性も良好であり、導電性と耐食性も良好である。これに対して、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量が本発明範囲を下回るNo.4の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜を形成していないNo.2の鋼板に較べて、耐遅れ破壊性が若干向上しているが、発明例であるNo.5〜9の鋼板に較べて耐遅れ破壊性が劣っている。また、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量が本発明範囲を超えるNo.10の鋼板は、曲げ加工で皮膜の剥れが認められることから、プレス加工がなされる鋼板として好適でなく、耐遅れ破壊性も劣っていることが判る。
No.11〜14の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量を約100mg/mとし、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物含有率(金属V換算)を変えた発明例であるが、いずれの鋼板も良好な耐遅れ破壊性が得られている。このなかで、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物含有率が40質量%を超えたNo.14の鋼板は、プレス加工時には問題にならない程度ではあるが、一部皮膜の剥離が認められた。また、耐食性の観点から、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物含有率は1〜40質量%が好適であることが判る。
No.7及びNo.15〜20の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量を約100mg/m、V酸化物含有率を9質量%とし、有機樹脂層の膜厚を変化させた例であるが、発明例の鋼板では良好な耐遅れ破壊性と、耐食性および導電性が得られている。
No.7、No.17、No.21〜24の鋼板は、Fe−V酸化物皮膜のV酸化物付着量を約100mg/m、V酸化物含有率を9質量%とし、有機樹脂層の有機樹脂種を変えた発明例であるが、いずれの有機樹脂種を用いた場合でも良好な耐遅れ破壊性と、耐食性および導電性が得られている。
No.25及び26の鋼板は、蒸着法でFe−V酸化物皮膜を形成し、その上層に
有機樹脂層を形成した比較例であるが、V酸化物付着量がいずれも好適な範囲であるため良好な耐遅れ破壊性と加工性が得られているが、導電性が低く溶接性が劣っている。
[実施例3]
素材鋼板として、C:0.19質量%、Si:0.4質量%、Mn:1.53質量%、P:0.011質量%、S:0.001質量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有し、引張強度が1480MPa、板厚が1.6mmの冷延鋼板(冷間圧延ままの鋼板)を用いた。この冷延鋼板をトルエンに浸漬して5分間超音波洗浄を行った後、電気めっき法により鋼板面にFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成させた。
Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成する電気めっきでは、硫酸Fe:200g/L、硫酸バナジル濃度:5〜100g/L、モリブデン酸Na濃度:5〜100g/L、クエン酸濃度:10〜50g/Lとし、硫酸でpHを2に調整した溶液を用いて電気めっきを施した。その際、硫酸バナジルとモリブデン酸Naの濃度を変化させることでバナジウム酸化物とモリブデンの付着量、含有率を変化させるとともに、電解時間を変化させることでめっき量を変化させた。
鋼板上に付着したバナジウム酸化物量とモリブデン量は、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成した鋼板をインヒビターを入れた塩酸に浸漬し、所定時間ごとに質量変化を測定した場合の溶解速度の変曲点の質量を算出することで求めた。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下の特性を評価した。その結果を、皮膜構成とともに、表3に示す。なお、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成しない鋼板(比較例であるNo.1)、バナジウム酸化物とモリブデンのいずれか一方または両方を含まないFe皮膜を形成した鋼板(比較例であるNo.2,3,10)についても同様の特性評価を行った。
(1)加工性の評価
発明例および比較例の鋼板をそれぞれ幅35mm×長さ100mmにせん断した後、せん断時の残留応力を除去するために幅が30mmとなるまで研削加工を施し、試験片を作製した。この試験片に対して、3点曲げ試験機を用いて180°曲げ加工を施し、加工性を評価した。この180°曲げ加工での曲げの曲率半径は4mmRとした。加工性の評価は、曲げ加工後の加工部にダンプロンテープ(「ダンプロン」は登録商標)を接着・剥離し、そのテープを銅板に接着させた後に蛍光X線を用いてV強度を測定し、V強度変化からFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の剥れ量を求め、以下の基準により評価した。この評価では、○,△を良好とし、×はプレス欠陥となるため不良とした。なお、下記の皮膜量とはバナジウム酸化物とモリブデンを含むFe皮膜全体の付着量のことである。
〇:Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の剥れなし
△:Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の剥れ量が皮膜量の5%未満
×:Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の剥れ量が皮膜量の5%以上
(2)耐遅れ破壊性の評価
上記(1)と同様にして研削加工を施して作製した試験片を曲率半径3.5mmRで180°曲げ加工して曲げ試験片とし、図1に示すように、この曲げ試験片1を内側間隔が7mmとなるようにしてボルト2とナット3で拘束して試験片形状を固定し、耐遅れ破壊性評価用試験片を得た。このようにして作製した耐遅れ破壊性評価用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を、最大40サイクルまで実施した。各サイクルの塩水浸漬の工程前に目視により割れの発生の有無を調査し、割れ発生サイクルを測定した。また、本試験は、各鋼板3検体ずつ実施し、その平均値をもって評価を行った。評価はサイクル数から、以下の基準により評価した。
〇:30サイクル以上
△:10サイクル以上30サイクル未満
×:10サイクル未満
Figure 2017002354
表3において、No.1の鋼板は、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜(以下、「Fe−V酸化物−Mo皮膜」という)を形成していない比較例(冷延鋼板ままの比較例)、No.2の鋼板は、バナジウム酸化物(V酸化物)とモリブデン(Mo)を含まないFe皮膜を形成した比較例であるが、いずれも早期に遅れ破壊が発生している。
No.3〜9の鋼板は、Fe−V酸化物−Mo皮膜のV酸化物付着量(金属V換算)を100mg/mとし、Mo付着量(金属Mo換算)を0〜3000mg/mの範囲で変化させた例であるが、発明例であるNo.4〜8の鋼板は、良好な加工性と耐遅れ破壊性が得られている。一方、Fe皮膜がMoを含まないNo.3の鋼板は、耐遅れ破壊性が劣っている。また、Fe−V酸化物−Mo皮膜のMo付着量が本発明範囲を超えているNo.9の鋼板は、加工性が劣るためプレス加工がなされる鋼板として好適でなく、耐遅れ破壊性も劣っていることが判る。
No.6、No.10〜16の鋼板は、Fe−V酸化物−Mo皮膜のMo付着量を100mg/mとし、V酸化物付着量を0〜3000mg/mの範囲で変化させた例であるが、発明例であるNo.6、No.11〜15の鋼板は、良好な加工性と耐遅れ破壊性が得られている。一方、Fe皮膜がV酸化物を含まないNo.10の鋼板は、耐遅れ破壊性が劣っている。また、Fe−V酸化物−Mo皮膜のV酸化物付着量が本発明範囲を超えているNo.16の鋼板は、加工性が劣るためプレス加工がなされる鋼板として好適でなく、耐遅れ破壊性も劣っていることが判る。
[実施例4]
素材鋼板として、C:0.19質量%、Si:0.4質量%、Mn:1.53質量%、P:0.011質量%、S:0.001質量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有し、引張強度が1480MPa、板厚が1.6mmの冷延鋼板(冷間圧延ままの鋼板)を用いた。この冷延鋼板をトルエンに浸漬して5分間超音波洗浄を行った後、鋼板面にFe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成させた。皮膜の形成方法は、電気めっき法と比較法である蒸着法で実施した。
電気めっき法では、硫酸Fe:200g/L、硫酸バナジル濃度:5〜100g/L、モリブデン酸Na濃度:5〜100g/L、クエン酸濃度:10〜50g/Lとし、硫酸でpHを2に調整した溶液を用いて電気めっきを施した。その際、硫酸バナジルとモリブデン酸Naの濃度を変化させることでバナジウム酸化物とモリブデンの付着量、含有率を変化させるとともに、電解時間を変化させることでめっき量を変化させた。
また、蒸着法はイオンプレーティング法で実施し、Fe基材、V基材へのチャ−ジ量を変化させることで、バナジウム酸化物の付着量を変化させた。基材温度は100〜110℃で製膜した。
鋼板上に付着したバナジウム酸化物量とモリブデン量は、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜を形成した鋼板をインヒビターを入れた塩酸に浸漬し、所定時間ごとに質量変化を測定した場合の溶解速度の変曲点の質量を算出することで求めた。
次いで、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜の上層に有機樹脂層を形成した。有機樹脂層用には下記A1〜A3の有機樹脂を用い、いずれかの有機樹脂を含む処理液をロール方式による塗布法で塗布した後、到達板温が120℃となるようにインダクションヒーターで加熱することで有機樹脂層を形成した。
A1:フッ素樹脂(旭硝子(株)製、商品名:ルミフロン LF552)
A2:ポリオレフィン樹脂(東邦化学工業(株)製、商品名:HYTEC S−3121)
A3:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:jER1009)
また、有機樹脂層の膜厚の測定は、FIB加工により得られた断面をSEM観察し、任意視野の3箇所で有機樹脂層の厚さ(基材鋼板面から有機樹脂層の表面までの厚さ)を測定し、それらの平均値を膜厚とした。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下の特性を評価した。その結果を、皮膜構成とともに、表4および表5に示す。なお、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜、有機樹脂層のいずれか一方または両方を形成しない鋼板(比較例であるNo.1、2、22)、バナジウム酸化物とモリブデンのいずれか一方または両方を含まないFe皮膜を形成した鋼板(比較例であるNo.3,4,12)についても同様の特性評価を行った。
(1)加工性の評価
実施例3と同様にして加工性を評価した。
(2)耐遅れ破壊性の評価
実施例3と同様にして耐遅れ破壊性を評価した。
(3)導電性の評価
溶接性の指標として導電性を評価した。発明例および比較例の鋼板の試験片について、三菱化学アナリテック(株)製「ロレスタGP ASP端子」を用い表面抵抗値を測定し、表面抵抗値が10−4Ω以下となる割合(%)により、以下の判定基準で評価した。
○:80%以上
△:60%以上80%未満
×:60%未満
(4)耐食性の評価
発明例および比較例の鋼板を130mm×70mmと40mm×110mmにせん断して平板試験片とし、この2枚の平板試験片の評価面どうしを重ね合わせてスポット溶接により接合し、図3に示すような耐食性試験用試験片とした。この耐食性試験用試験片に、日本パーカライジング(株)製「パルボンド」を用い、標準条件(35℃、120秒)で浸漬による化成処理を施し、次いで、関西ペイント(株)製の電着塗料「GT−10」を用いた電着塗装と焼付処理を行った。電着塗装の塗膜厚は15μmとし、市販の電磁膜厚計を用いて膜厚の測定を行った。
この電着塗装を施した耐食性試験用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を30サイクル実施し、下記の手順で耐食性の評価を行った。
(1)スポット溶接部を打ち抜き、合わせ構造部を分解する。
(2)塗装の剥離(ネオス社製「デスコート300」15分浸漬)
(3)めっき・錆の除去(希薄塩酸浸漬)
(4)合わせ構造部に生じた最大侵食深さをポイントマイクロメーターで測定
耐食性は、冷延鋼板ままの最大侵食深さを1とした場合の最大侵食深さ比(A)を算出し、以下のように評価した。
◎:A≦0.6
○:0.6<A≦0.95
△:0.95<A≦1.2
×:1.2<A
Figure 2017002354
Figure 2017002354
表4および表5において、No.1の鋼板は、Fe−バナジウム酸化物−モリブデン皮膜(以下、「Fe−V酸化物−Mo皮膜」という)と有機樹脂層を形成していない比較例(冷延鋼板ままの比較例)、No.2は有機樹脂層のみを形成した比較例、No.3の鋼板は、電気めっき法によりバナジウム酸化物(V酸化物)とモリブデン(Mo)を含まないFe皮膜を形成した比較例であるが、いずれも早期に遅れ破壊が発生している。
No.4〜32の鋼板は、電気めっき法によりV酸化物および/またはMoを含むFe皮膜を形成し、その上層に有機樹脂層を形成した(但し、No.22は有機樹脂層を形成しない)ものである。
No.5〜11の鋼板は、Fe−V酸化物−Mo皮膜のMo付着量(金属Mo換算)を50mg/mとし、V酸化物付着量(金属V換算)を10〜3000mg/mの範囲で変化させた例であるが、発明例であるNo.5〜10の鋼板は、加工性、耐遅れ破壊性、導電性、耐食性がいずれも良好である。一方、Fe皮膜がV酸化物を含まないNo.4の鋼板は、耐遅れ破壊性が劣っている。また、Fe−V酸化物−Mo皮膜のV酸化物付着量が本発明範囲を超えているNo.11の鋼板は、加工性が劣るためプレス加工がなされる鋼板として好適でなく、耐遅れ破壊性も劣っていることが判る。
No.8、No.13〜21の鋼板は、Fe−V酸化物−Mo皮膜のV酸化物付着量を100mg/mとし、Mo付着量を8〜3000mg/mの範囲で変化させた例であるが、発明例であるNo.8、No.14〜20の鋼板は、加工性、耐遅れ破壊性、導電性、耐食性がいずれも良好である。一方、Fe皮膜がMoを含まないNo.12の鋼板、Fe−V酸化物−Mo皮膜のMo付着量が本発明範囲を下回るNo.13の鋼板は、耐遅れ破壊性が劣っている。また、Fe−V酸化物−Mo皮膜のMo付着量が本発明範囲を超えているNo.21の鋼板は、加工性が劣るためプレス加工がなされる鋼板として好適でなく、耐遅れ破壊性も劣っていることが判る。
No.8、No.22〜28の鋼板は、Fe−V酸化物−Mo皮膜のV酸化物付着量を100mg/m、Mo付着量を50mg/mとし、有機樹脂層を形成しない例および有機樹脂層の膜厚を変化させた例であるが、有機樹脂層を形成しないNo.22の鋼板と、有機樹脂層の膜厚が本発明範囲を下回るNo.23の鋼板は、耐食性が原板(比較例1)と同等であり、耐食性が劣っている。一方、有機樹脂層の膜厚が本発明範囲を超えるNo.28の鋼板は、導電性が悪く、スポット溶接性が劣っている。
No.8、No.25、No.29〜No.32の鋼板は、有機樹脂層の有機樹脂種を変えた例であるが、いずれの有機樹脂種を用いても加工性、耐遅れ破壊性、導電性、耐食性はいずれも良好である。
No.33、No.34の鋼板は、蒸着法でFe−V酸化物−Mo皮膜を形成し、その上層に有機樹脂層を形成した例であるが、いずれも導電性が悪く、スポット溶接性が劣っている。
1 試験片
2 ボルト
3 ナット

Claims (6)

  1. 引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、バナジウム酸化物を含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
  2. 引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、電気めっき法で形成された皮膜であってバナジウム酸化物を含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜の上層に膜厚が0.3〜4.0μmの有機樹脂層を有し、前記Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
  3. バナジウム酸化物を含有するFe皮膜におけるバナジウム酸化物の含有率が金属バナジウム換算で1〜40質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
  4. 引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、バナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであり、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
  5. 引張強度が1180MPa以上の鋼板の表面に、電気めっき法で形成された皮膜であってバナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜を有し、該Fe皮膜の上層に膜厚が0.3〜4.0μmの有機樹脂層を有し、前記Fe皮膜におけるバナジウム酸化物の付着量が金属バナジウム換算で10〜2000mg/mであり、モリブデンの付着量が金属モリブデン換算で10〜2000mg/mであることを特徴とする引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
  6. バナジウム酸化物とモリブデンを含有するFe皮膜におけるバナジウム酸化物の含有率が金属バナジウム換算で1〜40質量%であり、モリブデンの含有率が金属モリブデン換算で1〜30質量%であることを特徴とする請求項4または5に記載の引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
JP2015116654A 2015-06-09 2015-06-09 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板 Active JP6288471B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015116654A JP6288471B2 (ja) 2015-06-09 2015-06-09 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015116654A JP6288471B2 (ja) 2015-06-09 2015-06-09 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017002354A true JP2017002354A (ja) 2017-01-05
JP6288471B2 JP6288471B2 (ja) 2018-03-07

Family

ID=57753339

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015116654A Active JP6288471B2 (ja) 2015-06-09 2015-06-09 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6288471B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018168467A (ja) * 2017-03-29 2018-11-01 Jfeスチール株式会社 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板
JP2019132943A (ja) * 2018-01-30 2019-08-08 セイコーエプソン株式会社 投写レンズおよびプロジェクター
WO2021241338A1 (ja) 2020-05-27 2021-12-02 Jfeスチール株式会社 亜鉛めっき鋼板

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1017985A (ja) * 1996-06-27 1998-01-20 Kobe Steel Ltd 耐水素脆化特性に優れた高強度鋼およびその製法
JP2013108119A (ja) * 2011-11-18 2013-06-06 Doshisha 複合めっき方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1017985A (ja) * 1996-06-27 1998-01-20 Kobe Steel Ltd 耐水素脆化特性に優れた高強度鋼およびその製法
JP2013108119A (ja) * 2011-11-18 2013-06-06 Doshisha 複合めっき方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018168467A (ja) * 2017-03-29 2018-11-01 Jfeスチール株式会社 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板
JP2019132943A (ja) * 2018-01-30 2019-08-08 セイコーエプソン株式会社 投写レンズおよびプロジェクター
WO2021241338A1 (ja) 2020-05-27 2021-12-02 Jfeスチール株式会社 亜鉛めっき鋼板
KR20230005876A (ko) 2020-05-27 2023-01-10 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 아연 도금 강판
EP4134469A4 (en) * 2020-05-27 2023-08-23 JFE Steel Corporation ZINC COATED STEEL SHEET

Also Published As

Publication number Publication date
JP6288471B2 (ja) 2018-03-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6048525B2 (ja) 熱間プレス成形品
JP6042445B2 (ja) 熱間プレス用めっき鋼板、めっき鋼板の熱間プレス方法及び自動車部品
TWI447261B (zh) 熔融Al-Zn系鍍敷鋼板
KR101772308B1 (ko) 핫 스탬프 성형체 및 핫 스탬프 성형체의 제조 방법
EP2808417B1 (en) Steel sheet for hot press-forming, method for manufacturing the same and method for producing hot press-formed parts using the same
KR102418286B1 (ko) 핫 스탬프 성형체
WO2012070694A1 (ja) 溶融Al-Zn系めっき鋼板およびその製造方法
EP3088558A1 (en) Steel sheet for hot press forming with excellent corrosion resistance and weldability, forming member, and manufacturing method therefor
JP6406475B1 (ja) 焼入れ用Alめっき溶接管、並びにAlめっき中空部材及びその製造方法
JP6288471B2 (ja) 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板
JP2018168467A (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板
WO2017017905A1 (ja) 熱間プレス部材の製造方法
JP6638694B2 (ja) 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板
JP5625442B2 (ja) 耐遅れ破壊性に優れた引張強度1180MPa以上を有する高強度鋼板
JP6699633B2 (ja) 塗装後耐食性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法
JPWO2020121899A1 (ja) 1180MPa以上の引張強度を有する高強度亜鉛めっき鋼板およびその製造方法並びに表面処理液
JP6358451B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板
WO2023135981A1 (ja) ホットスタンプ成形品
JP5446499B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板およびその製造方法
TWI637069B (zh) Surface treated steel
WO2023074115A1 (ja) 熱間プレス部材
EP4206363A1 (en) Hot-pressed member and steel sheet for hot-pressing, and manufacturing method for hot-pressed member
JPWO2020213201A1 (ja) 熱間プレス用鋼板および熱間プレス部材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170124

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20171004

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171102

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180110

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180123

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6288471

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250