JP2013108119A - 複合めっき方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】めっき浴に分散される分散粒子を、マトリックス金属のナノ結晶より小さな微細粒子の状態にしてマトリックス金属中のナノ結晶粒界に分散状態で共析させることができる複合めっき方法を提供することを目的としている。
【解決手段】分散粒子をマトリックス金属めっき浴中に分散させ、マトリックス金属とともに共析させる複合めっき方法において、前記めっき浴中に相変態可能な金属酸化物からなる分散粒子を分散させ、前記分散粒子をめっき電位によって相変態させて、相変態によるひずみにより分散粒子をめっき浴中で微細化してマトリックス金属と共析させるようにした。
【選択図】 図9
【解決手段】分散粒子をマトリックス金属めっき浴中に分散させ、マトリックス金属とともに共析させる複合めっき方法において、前記めっき浴中に相変態可能な金属酸化物からなる分散粒子を分散させ、前記分散粒子をめっき電位によって相変態させて、相変態によるひずみにより分散粒子をめっき浴中で微細化してマトリックス金属と共析させるようにした。
【選択図】 図9
Description
本発明は、複合めっき方法に関する。
結晶粒径が100nm以下の金属のナノ結晶組織は、ホール・ペッチの法則からその強度が著しく高く、構造材料や硬質膜として有望である。しかし、上記ナノ結晶は、熱的安定性が低く、比較的低温で粒成長して軟化することが問題であった。たとえば、ナノ結晶ニッケルは、たかだか200℃で粒成長してしまう。したがって、高温度条件での使用は不可能である問題がある。
一方、上記問題を解決するには、酸化物等の10nm以下の微細分散粒子を粒界・粒内に均一分散させることが有効である。すなわち、ナノ結晶の粒界に酸化物等の微細粒子を分散させて、そのピン留め効果(Zenner効果)により粒界移動を防止する。
一方、上記問題を解決するには、酸化物等の10nm以下の微細分散粒子を粒界・粒内に均一分散させることが有効である。すなわち、ナノ結晶の粒界に酸化物等の微細粒子を分散させて、そのピン留め効果(Zenner効果)により粒界移動を防止する。
このようなピン留め効果を備えた組織を作る方法として、これまでに(1)高エネルギーボールミリングやメカニカルアロイングなどの粉末冶金、(2)急速冷却によるアモルファス化とその結晶化、(3)超強加工による微細化と時効析出、などが報告されている。
しかし、粒子の分散性やコスト、材料の大きさの制約、時効析出粒子の熱的安定性の問題などがあり、実現に至っていない。
しかし、粒子の分散性やコスト、材料の大きさの制約、時効析出粒子の熱的安定性の問題などがあり、実現に至っていない。
一方、電解析出法は、基本的に直流電源やパルス電源と電解槽が主たる装置であり、上記のような安価な設備で生産が可能であるばかりでなく、製造可能な材料の大きさに制約がない。この電解析出法により安定な酸化物をめっき中に共析出させる技術は複合めっきまたは共析めっき(非特許文献1,2参照)と呼ばれて従来から利用されてきたが、分散性の問題から 10μm以上の粒子が一般的であった。すなわち、分散粒子の粒子径を小さくしすぎると、凝集が起こり、分散粒子を細かい状態でマトリックス(母相)金属のナノ結晶の粒界に分散させることができない。
したがって、従来の複合めっきにおいては、分散粒子を多量に分散させてメッキ層中の分散粒子量を増やして硬度を得るようにするが、分散粒子量を増やすと、メッキ表面状態に問題が生じるため、限界がある。すなわち、複合めっき方法を用いたのでは、まだまだ十分な硬さのめっきが得られないのが現状である。
したがって、従来の複合めっきにおいては、分散粒子を多量に分散させてメッキ層中の分散粒子量を増やして硬度を得るようにするが、分散粒子量を増やすと、メッキ表面状態に問題が生じるため、限界がある。すなわち、複合めっき方法を用いたのでは、まだまだ十分な硬さのめっきが得られないのが現状である。
1977年「金属表面技術」Vol.28,No.10,P490-497
2009年 Journal of Materials Science 44 P2725-2735
本発明は、上記事情に鑑みて、めっき浴に分散される分散粒子を、マトリックス金属のナノ結晶より小さな微細粒子の状態にしてマトリックス金属中のナノ結晶粒界に分散状態で共析させることができる複合めっき方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明にかかる複合めっき方法は、分散粒子をマトリックス金属めっき浴中に分散させ、マトリックス金属とともに共析させる複合めっき方法において、前記めっき浴中に相変態可能な金属酸化物からなる分散粒子を分散させ、前記分散粒子をめっき電位によって相変態させて、相変態によるひずみにより分散粒子をめっき浴中で微細化してマトリックス金属と共析させることを特徴としている。
本発明において、上記相変態可能な金属酸化物としては、特に限定されないが、たとえば、タングステン酸化物(WO3等)、バナジウム酸化物(V2O4 等),ニオブ酸化物(Nb2O5等), モリブテン酸化物(MoO3等), チタン酸化物(TiO2等), ジルコニウム酸化物(ZrO2等)など遷移元素を含む酸化物で可能性が高い。
また、マトリックス金属については、一般的に電解めっきが行われているCu、Ni、Cr、 Fe、Zn、 Sn、Ag、Ptなどのすべての金属で可能性があると考えられるが、マトリックス金属と酸化物の組み合わせについては以下の条件を満たす必要がある。
(1)マトリックス金属の酸化還元平衡電位と酸化物が相転移する酸化還元平衡電位が比較的近いこと。
(2)めっき浴中で酸化物が安定であること。(pH、液温など)
また、マトリックス金属については、一般的に電解めっきが行われているCu、Ni、Cr、 Fe、Zn、 Sn、Ag、Ptなどのすべての金属で可能性があると考えられるが、マトリックス金属と酸化物の組み合わせについては以下の条件を満たす必要がある。
(1)マトリックス金属の酸化還元平衡電位と酸化物が相転移する酸化還元平衡電位が比較的近いこと。
(2)めっき浴中で酸化物が安定であること。(pH、液温など)
たとえば、分散粒子としてWO3を用いる場合は、マトリックス金属としては、Ni、Fe、Sn、CuとMoO3の組み合わせは酸化還元電位が近いので同様の効果が期待できる。バナジウム酸化物は広い電位で相転移を生じるため、上述の多数の母相金属で同様の効果が期待できる。ただし、酸化物の溶解を避けるためにpH、液温等の調整が必要な場合がある。
分散粒子として用いるWO3粒子は、特に限定されないが、平均1μm未満、好ましくは100nm以下のものを用いることが好ましい。ただし、あまり粒径が小さくなると凝集が起きて逆効果をもたらすおそれがあるので、30nm以上とすることが好ましい。
分散粒子として用いるWO3粒子は、特に限定されないが、平均1μm未満、好ましくは100nm以下のものを用いることが好ましい。ただし、あまり粒径が小さくなると凝集が起きて逆効果をもたらすおそれがあるので、30nm以上とすることが好ましい。
マトリックス金属としては、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)などが挙げられ、ニッケルが好ましい。
マトリックス金属がニッケルの場合、用いるめっき浴は、特に限定されないが、たとえば、スルファミン酸浴、ワット浴が挙げられ、スルファミン酸浴が好ましい。
マトリックス金属がニッケルの場合、用いるめっき浴は、特に限定されないが、たとえば、スルファミン酸浴、ワット浴が挙げられ、スルファミン酸浴が好ましい。
めっき浴中に分散させる分散粒子の量は、特に限定されないが、スルファミン酸浴にWO3粒子を分散させる場合、0.5〜20g/Lが好ましい。
すなわち、分散粒子の分散量が少なすぎると、十分の量の粒子が分散されためっき層が形成されないおそれがあり、分散粒子の分散量が多すぎると、凝集して析出するおそれがある。
また、スルファミン浴のpHは、特に限定されないが、2〜4が好ましい。
すなわち、分散粒子の分散量が少なすぎると、十分の量の粒子が分散されためっき層が形成されないおそれがあり、分散粒子の分散量が多すぎると、凝集して析出するおそれがある。
また、スルファミン浴のpHは、特に限定されないが、2〜4が好ましい。
電析方法としては、直流電源装置を用いためっき法、ポテンショスタットを用いた定電圧めっき法のいずれでも構わない。
直流電源装置を用いためっき法の場合、電流密度は、特に限定されないが、20〜 200A/cm2が好ましく、100〜150A/cm2がより好ましい。
一方、電圧めっき法でのめっき電圧は、マトリックス金属が析出するとともに、酸化物粒子が相変態を起こす電位であれば、特に限定されないが、マトリックス金属がニッケルであり、分散粒子がWO3である場合、ニッケルおよびWO3の両方を還元し、水素の発生をできるだけ抑えることを目的として−0.7V前後が好ましい。
本発明にかかる複合めっき方法は、めっき浴中に相変態可能な金属酸化物からなる分散粒子を分散させ、前記分散粒子をめっき電位によって相変態させて、相変態によるひずみにより分散粒子をめっき浴中で微細化してマトリックス金属と共析させるようにしたので、凝集の少ない大きな分散粒子をめっき浴に均一分散することができる。そして、分散粒子が相変態時に変態ひずみにより破砕して微細化するので、得られるめっき層は、マトリックス金属中に、分散粒子より微細な金属酸化物粒子の状態で共析されたものとなる。したがって、高硬度な硬質膜やバルク材料を得ることができる。また、より微細な金属酸化物粒子が、マトリックス金属とともに共析されることによって、より高いピン留め効果が得られ、マトリックス金属のナノ結晶の熱安定性を高めることができると考えられる。
なお、電解析出過程において、ナノスケールの酸化物がマトリックス金属に取り込まれる機構は明らかではないが、半導体的性質を有する酸化物が電極との反応過程で、電子の授受により部分的な構造変化(たとえば、単斜晶系から正方晶系への変化)が起きて、体積変化する。そして、体積変化によって酸化物粒子に歪みが生じ、この歪みによってナノスケールに分解すると考えられる。
なお、電解析出過程において、ナノスケールの酸化物がマトリックス金属に取り込まれる機構は明らかではないが、半導体的性質を有する酸化物が電極との反応過程で、電子の授受により部分的な構造変化(たとえば、単斜晶系から正方晶系への変化)が起きて、体積変化する。そして、体積変化によって酸化物粒子に歪みが生じ、この歪みによってナノスケールに分解すると考えられる。
以下に、本発明を、その実施例を参照しつつ詳しく説明する。
(実施例1)
図1に示す陽極として純ニッケル板(純度99.9 %)1と、陰極にステンレス鋼(SUS304)板2を1cmの間隔で配置しためっき電解めっき槽3中に、電解めっき槽3中に、以下表1に示す配合のスルファミン酸めっき液4を建浴した。
なお、建浴されたスルファミン酸めっき液4は、電析を行う前に30 minマグネットスターラーと,超音波ホモジナイザー(SMI社製UH-50)を用いて攪拌を行った。
また、ステンレス鋼板2は#240-#1200まで湿式研磨したのち、研磨クロスに0.3μmのアルミナパウダーを用いて試験面を鏡面に加工した。さらに、これをアセトン超音波洗浄、脱脂を行って陰極として用いた。
図1に示す陽極として純ニッケル板(純度99.9 %)1と、陰極にステンレス鋼(SUS304)板2を1cmの間隔で配置しためっき電解めっき槽3中に、電解めっき槽3中に、以下表1に示す配合のスルファミン酸めっき液4を建浴した。
なお、建浴されたスルファミン酸めっき液4は、電析を行う前に30 minマグネットスターラーと,超音波ホモジナイザー(SMI社製UH-50)を用いて攪拌を行った。
また、ステンレス鋼板2は#240-#1200まで湿式研磨したのち、研磨クロスに0.3μmのアルミナパウダーを用いて試験面を鏡面に加工した。さらに、これをアセトン超音波洗浄、脱脂を行って陰極として用いた。
スターラー5を200rpmで回転させて攪拌するとともに、窒素ガスによってスルファミン酸めっき液4の脱気処理をしながらスルファミン酸めっき液4中にWO3粒子(和研薬社製 一次粒径平均70nm(SEMにて確認)、二次粒径が30〜40μm)を1.34g/Lの濃度で分散させた。
そして、直流電源装置(松定プレシジョン社製PLE-36-3)を用いて電流密度30mA/cm2の電解条件で3時間めっきを行って、めっきサンプルAを得た。
そして、直流電源装置(松定プレシジョン社製PLE-36-3)を用いて電流密度30mA/cm2の電解条件で3時間めっきを行って、めっきサンプルAを得た。
(実施例2)
WO3粒子の分散量を1g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルBを得た。
WO3粒子の分散量を1g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルBを得た。
(実施例3)
WO3粒子の分散量を2g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルCを得た。
WO3粒子の分散量を2g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルCを得た。
(実施例4)
WO3粒子の分散量を2.67g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルDを得た。
WO3粒子の分散量を2.67g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルDを得た。
(実施例5)
WO3粒子の分散量を10g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルEを得た。
WO3粒子の分散量を10g/Lとした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルEを得た。
(実施例6)
電流密度を50mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルFを得た。
電流密度を50mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルFを得た。
(実施例7)
電流密度を70mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルGを得た。
電流密度を70mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルGを得た。
(実施例8)
電流密度を90mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルHを得た。
電流密度を90mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルHを得た。
(実施例9)
電流密度を110mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルIを得た。
電流密度を110mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルIを得た。
(実施例10)
電流密度を130mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルJを得た。得られためっきサンプルJの表面硬さHv(マイクロビィッカース)を測定したところ、平均562(最高603、最低533)であった。
電流密度を130mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルJを得た。得られためっきサンプルJの表面硬さHv(マイクロビィッカース)を測定したところ、平均562(最高603、最低533)であった。
(実施例11)
電流密度を150mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルKを得た。得られためっきサンプルKの表面硬さHv(マイクロビィッカース)を測定したところ、平均526(最高552、最低474)であった。
なお、上記表面硬さHvは、マイクロビッカース硬さ試験機(島津製作所:HMV2 )を用いた。硬さ試験に用いたサンプルはフエノール樹脂で樹脂埋めし、側面の硬さを測定した。硬さ測定においては荷重 980 . 7 mN ,荷重保持時間 20sとし、5 回計測した平均の値をそのサンプルの硬さとして評価した。
電流密度を150mA/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてめっきを行なって、めっきサンプルKを得た。得られためっきサンプルKの表面硬さHv(マイクロビィッカース)を測定したところ、平均526(最高552、最低474)であった。
なお、上記表面硬さHvは、マイクロビッカース硬さ試験機(島津製作所:HMV2 )を用いた。硬さ試験に用いたサンプルはフエノール樹脂で樹脂埋めし、側面の硬さを測定した。硬さ測定においては荷重 980 . 7 mN ,荷重保持時間 20sとし、5 回計測した平均の値をそのサンプルの硬さとして評価した。
上記実施例1で得られためっきサンプルJの電析物をステンレス板4から剥がし、アセトン超音波洗浄をしたのち、薄膜サンプルを作製し、この薄膜サンプルを、電界放出型透過電子顕微鏡(日本電子社製 JEM-2100F、以下、「TEM」と記す、)を使用し加速電圧200 kVで明視野画像を撮像し、その結果を図3に示した。
なお、上記薄膜サンプルは、上記電析物を、ツインジェット電解研磨装置(丸本ストルアス社製TenuPol-5)を用いて以下の電解研磨条件で電解研磨して作製した。
なお、上記薄膜サンプルは、上記電析物を、ツインジェット電解研磨装置(丸本ストルアス社製TenuPol-5)を用いて以下の電解研磨条件で電解研磨して作製した。
(電解研磨条件)
電解研磨液:メタノール75 %,酢酸15 %,過塩素酸10 %の混液
研磨温度:電解研磨液を、液体窒素を用いて−30 ℃以下に冷却
電流密度:10-20 A/cm2
電圧:15 V
電解研磨液:メタノール75 %,酢酸15 %,過塩素酸10 %の混液
研磨温度:電解研磨液を、液体窒素を用いて−30 ℃以下に冷却
電流密度:10-20 A/cm2
電圧:15 V
図2に示すように、めっき層は、100nm以下のニッケルナノ結晶中に、ニッケルナノ結晶より小さい黒点が多数みられた。
そこで、図2中の01〜03の各点部分について上記走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型測定装置(EDS、日本電子社製JED2300F)による成分分析を行い、その結果を、図3〜図5に示した。
図3〜図5から、黒点部分は、いずれもタングステンの酸化物であることがわかった。
図3〜図5から、黒点部分は、いずれもタングステンの酸化物であることがわかった。
また、上記実施例1のめっきサンプルAについてX線回折(XRD)を用いて分析し、その結果を図6に示し、分散粒子として用いたWO3粒子を、X線回折を用いて分析し、その結果を図7に示した。
図6に示すように、黒点部分は、タングステン酸化物が正方晶であることを示すピークがあらわれているに対し、図7に示すように、タングステン酸化物が単斜晶であることを示すピークがあらわれている。
図6に示すように、黒点部分は、タングステン酸化物が正方晶であることを示すピークがあらわれているに対し、図7に示すように、タングステン酸化物が単斜晶であることを示すピークがあらわれている。
すなわち、図6および図7からWO3粒子がめっきされる際に相変態を起こしていることがわかる。
したがって、上記結果からWO3粒子が相変態する際の体積変化により、WO3粒子に歪みが生じ、この歪みによってナノニッケル結晶より小さなナノスケールの酸化タングステン粒子に分解(元の粒子が細かく割れる)していると推測される。
なお、通常Ni析出域では,WO3はW2O5ではなくWとなるはずだが,本研究ではW域まで電位を落としてもWO3→Wへの反応は非常に遅いため、準安定状態として正方晶系のWO3の状態でNi内に析出したものと考えられる。
したがって、上記結果からWO3粒子が相変態する際の体積変化により、WO3粒子に歪みが生じ、この歪みによってナノニッケル結晶より小さなナノスケールの酸化タングステン粒子に分解(元の粒子が細かく割れる)していると推測される。
なお、通常Ni析出域では,WO3はW2O5ではなくWとなるはずだが,本研究ではW域まで電位を落としてもWO3→Wへの反応は非常に遅いため、準安定状態として正方晶系のWO3の状態でNi内に析出したものと考えられる。
なお、25℃でのW−H2O系の電位―pH平衡状態図を図8に示す。
また、以下の化学平衡式(1)〜(4)の右方向への反応(還元反応)が進行する上限界電位を表2に示す。
また、以下の化学平衡式(1)〜(4)の右方向への反応(還元反応)が進行する上限界電位を表2に示す。
Ni2++2e-⇔Ni (1)
2H++2e-⇔H2 (2)
2WO3+2H++2e-⇔W2O5+H2O (3)
2W2O5+2H++2e-⇔2WO2+H2O (4)
2H++2e-⇔H2 (2)
2WO3+2H++2e-⇔W2O5+H2O (3)
2W2O5+2H++2e-⇔2WO2+H2O (4)
また、実施例10で得られためっきサンプルJのTEMの明視野観察結果を図9に示し、暗視野観察結果を図10に示した。そして、実施例11で得られためっきサンプルKのTEMの明視野観察結果を図11に示し、暗視野観察結果を図12に示した。
上記図9〜図12に示すように、いずれのめっきサンプルもマトリックス金属であるニッケル結晶粒子より小さい数nmの粒径の酸化タングステン粒子が分散状態で存在していることがわかる。
上記図9〜図12に示すように、いずれのめっきサンプルもマトリックス金属であるニッケル結晶粒子より小さい数nmの粒径の酸化タングステン粒子が分散状態で存在していることがわかる。
(実施例12)
上記直流電源装置に代えてポテンショスタット装置(北斗電工社製HA-151A)を用い、陰極を−0.7Vの定電圧にして24時間めっきを行った以外は、上記実施例2と同様の条件で、めっきサンプルLを得た。
なお、参照電極としては、飽和KCl銀塩化銀参照電極を用いた。用いた寒天橋は、蒸留水100 mlに寒天粉末3gと塩化カリウム(KCl)20 gを加え加熱し沸騰させた後,ガラス管に寒天溶液を充填させ冷却し固めて作製した。
上記直流電源装置に代えてポテンショスタット装置(北斗電工社製HA-151A)を用い、陰極を−0.7Vの定電圧にして24時間めっきを行った以外は、上記実施例2と同様の条件で、めっきサンプルLを得た。
なお、参照電極としては、飽和KCl銀塩化銀参照電極を用いた。用いた寒天橋は、蒸留水100 mlに寒天粉末3gと塩化カリウム(KCl)20 gを加え加熱し沸騰させた後,ガラス管に寒天溶液を充填させ冷却し固めて作製した。
(比較例1)
酸化タングステン粒子を分散させなかった以外は、実施例11と同様の条件で、ニッケルめっきサンプルを得た。
酸化タングステン粒子を分散させなかった以外は、実施例11と同様の条件で、ニッケルめっきサンプルを得た。
上記実施例12で得られためっきサンプルLおよび比較例1で得られたニッケルめっきサンプルをそれぞれ1cm角ほどに切り、試験片を得た。
そして、各試験片を小型電気ボックス炉(光洋サーモシステム: KBF748N1)を用いて熱処理を行った.熱処理は200 ℃-400 ℃を50℃間隔で行い,それぞれ300s加熱した後空冷した。熱処理後の試験片の硬さ試験を行い、その結果を図14に示した。
図13に示すように、実施例12で得られた試験片は、温度を上げても硬さの低下が少なく熱安定性に優れていることがわかる。
そして、各試験片を小型電気ボックス炉(光洋サーモシステム: KBF748N1)を用いて熱処理を行った.熱処理は200 ℃-400 ℃を50℃間隔で行い,それぞれ300s加熱した後空冷した。熱処理後の試験片の硬さ試験を行い、その結果を図14に示した。
図13に示すように、実施例12で得られた試験片は、温度を上げても硬さの低下が少なく熱安定性に優れていることがわかる。
(実施例13)
スターラーの回転数および電流密度を以下の表3に示す条件1〜8でめっきを行った以外は、実施例1と同様の条件でめっきを行い、得られためっきサンプル1〜8について、それぞれX線回折を用いて測定し、その結果を図14に合わせて示した。
スターラーの回転数および電流密度を以下の表3に示す条件1〜8でめっきを行った以外は、実施例1と同様の条件でめっきを行い、得られためっきサンプル1〜8について、それぞれX線回折を用いて測定し、その結果を図14に合わせて示した。
図14から、いずれの条件でも正方晶のWO3のピーク(PDF#05-0388)が確認されるが、特に電流密度30mA/cm2、スターラーの回転数が200rpmで多くのWO3が析出していることがわかる。
本発明の複合めっき方法は、特に限定されないが、たとえば、航空機のFRP表面のめっき、自動車エンジンの内壁面のめっきなどに好適である。
1 純ニッケル板(陽極)
2 SUS304板(陰極)
3 電解めっき槽
4 スルファミン酸めっき液
5 スターラー
2 SUS304板(陰極)
3 電解めっき槽
4 スルファミン酸めっき液
5 スターラー
Claims (3)
- 分散粒子をマトリックス金属めっき浴中に分散させ、マトリックス金属とともに共析させる複合めっき方法において、
前記めっき浴中に相変態可能な金属酸化物からなる分散粒子を分散させ、前記分散粒子をめっき電位によって相変態させて、相変態によるひずみにより分散粒子をめっき浴中で微細化してマトリックス金属と共析させることを特徴とする複合めっき方法。 - 相変態可能な金属酸化物がWO3であり、マトリックス金属がニッケルである請求項1に記載の複合めっき方法。
- 分散されるWO3が平均粒径1μm未満である請求項2に記載の複合めっき方法。
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015106642A (ja) * | 2013-11-29 | 2015-06-08 | 日亜化学工業株式会社 | 発光装置用反射膜、並びに、それを備えるリードフレーム、配線基板、ワイヤ、及び発光装置 |
JP2016183393A (ja) * | 2015-03-26 | 2016-10-20 | Jfeスチール株式会社 | 電解研磨装置および電解研磨方法 |
JP2017002354A (ja) * | 2015-06-09 | 2017-01-05 | Jfeスチール株式会社 | 引張強度が1180MPa以上である耐遅れ破壊性に優れた鋼板 |
JP2017118080A (ja) * | 2015-12-26 | 2017-06-29 | 日亜化学工業株式会社 | 発光素子及びその製造方法 |
CN112812749A (zh) * | 2020-12-31 | 2021-05-18 | 北京理工大学珠海学院 | 一种具有胶囊式复合型有机相变材料的金属箔及制备方法 |
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2011
- 2011-11-18 JP JP2011252612A patent/JP2013108119A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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