JP6226148B2 - 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた鋼板に関するものであり、詳細には、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、耐遅れ破壊特性が要求される、引張り強度1180MPa(約120kgf/mm)以上を有する高張力鋼板に関するものである。
従来、自動車用鋼板としては、その板厚の精度や平担度に関する要求から冷延鋼板が用いられているが、近年、自動車のCO排出量の低減及び安全性確保の観点から、自動車用鋼板の高強度化が図られている。
しかしながら、鋼材の強度を高めていくと、遅れ破壊という現象が生じやすくなることが知られており、この現象は強度の増大とともに著しく激しくなり、特に引張り強さ1180MPa以上の高強度鋼で顕著となる。なお、遅れ破壊とは、高強度鋼材が静的な負荷応力(引張り強さ以下の負荷応力)を受けた状態で、ある時間が経過したとき、外見上はほとんど塑性変形を伴うことなく、突然脆性的な破壊が生じる現象である。
この遅れ破壊は、鋼板の場合、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、このような応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることが知られている。この水素脆性の起因となる水素は、ほとんどの場合、外部環境から鋼中に侵入し、それが拡散するものと考えられており、代表的には、鋼材の腐食に伴い侵入する水素が挙げられる。
高強度鋼板におけるこのような遅れ破壊を防止するために、例えば特許文献1に記載のように、鋼板の組織や成分を調整することにより、遅れ破壊感受性を弱める検討がなされている。しかしながら、このような手法を用いた場合には、外部環境から鋼板内部に侵入する水素量には変化がなく、遅れ破壊発生を遅らせることは可能であるとしても、遅れ破壊自体を抑制することはできない。すなわち、遅れ破壊を本質的に改善するためには、鋼板内部への水素侵入量自体を制御することが必要である。このような観点から、特許文献2には、冷延鋼板にNi又はNi基合金メッキを施すことにより、鋼板内部への水素侵入量を抑制することで遅れ破壊を抑制する技術が開示されている。
特開2004−231992号公報 特開平6−346229号公報
しかしながら、特許文献2に記載のようにNi又はNi基合金を電気メッキした場合、メッキ時に発生する水素が鋼板内に残存することで、遅れ破壊を引き起こすことが考えられる。さらに、鋼板表面にメッキしたままで、プレス加工に供した場合、メッキ層と鋼板との密着性が弱く、加工時にメッキ層が損傷し、目的とする効果が得られない可能性も高い。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、主として自動車、建材用の強度部材に好適な鋼板であって、引張り強度1180MPa以上を有する耐遅れ破壊特性に優れた鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋼板内に侵入する水素を抑制することにより遅れ破壊を防止する手段について、鋭意検討および研究を重ねた。その結果、冷延鋼板表面にバナジウム化合物と及びSi化合物を含有する皮膜を形成することにより鋼板への水素侵入量を大幅に抑制し、鋼板の遅れ破壊を効果的に抑制できることを見出した。また、皮膜中にさらにMn化合物を複合添加することにより、鋼板の遅れ破壊をより効果的に抑制できることが判った。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]引張り強度が1180MPa以上の冷延鋼板の表面に、VOSO 、V 、V 、NH VO 、VO(C の中から選ばれる1種以上のバナジウム化合物と、コロイダルシリカ、乾式シリカ、カルシウムイオン交換シリカ、シランカップリング剤の中から選ばれる1種以上のSi化合物を主成分とし、バナジウム化合物の付着量がV換算で1mg/m以上、Si化合物の付着量がSi換算で0.5mg/m以上、皮膜厚が5μm未満の皮膜(a)を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
[2]上記[1]の鋼板において、皮膜(a)におけるバナジウム化合物の付着量がV換算で10〜300mg/m、Si化合物の付着量がSi換算で10〜1000mg/mであることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
[3]上記[1]又は[2]の鋼板において、皮膜(a)が、さらに、Mn化合物を含有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
[4]上記[3]の鋼板において、皮膜(a)におけるMn化合物の付着量がMn換算で5〜800mg/mであることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
本発明の鋼板は、遅れ破壊が効果的に抑制される優れた耐遅れ破壊特性を有する。このため、腐食しろの削減により鋼板の板厚も小さくすることができるので、自動車や各種構造物の重量削減が可能となり、工業的に極めて価値の高いものであると言える。
実施例で用いた遅れ破壊評価用試験片を模式的に示す図面 実施例において行った複合サイクル腐食試験の工程を示す説明図
本発明の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板において、基質となる鋼板(素材鋼板)は、化学組成、金属組織、圧延方法などについては特に限定されるものではなく、任意のものとすることができるが、そのなかで、自動車分野や建材分野などにおいて用いられ、特に自動車分野などにおいて多く用いられる冷延鋼板が望ましく、なかでも大気腐食環境下で遅れ破壊発生の懸念が生じる引張り強度が1180MPa(約120kgf/mm)以上の高張力冷延鋼板であることが重要である。引張り強度が1180MPa未満の鋼板に対して本発明を適用し、表面にバナジウム化合物とSi化合物からなる皮膜を形成しても、当該鋼板の各種特性には影響はしないが、引張り強度の低い鋼板は本質的に遅れ破壊が生じにくいため、本発明に係る皮膜を形成することでコスト増加につながる。
なお、高強度冷延鋼板では、機械特性などの諸特性を向上させるために、例えば、C、Nなどの侵入型固溶元素やSi、Mn、P、Crなどの置換型固溶元素の添加による固溶体強化、Ti、Nb、Vなどの炭・窒化物による析出強化、その他、W、Zr、Hf、Co、B、希土類元素などの強化元素の添加といった化学組成的改質、再結晶の起こらない温度で回復焼きなましすることによる強化あるいは完全に再結晶させずに未再結晶領域を残す部分再結晶強化、ベイナイトやマルテンサイト単相化あるいはフェライトとこれら変態組織の複合組織化といった変態組織による強化、フェライト粒径をdとしたときのHall-Petchの式:σ=σ+kd-1/2(式中σ:応力、σ,k:材料定数)で表される細粒化強化、圧延などによる加工強化といった組織的ないし構造的改質が、単独ないし複数組み合わせて行われているが、上述したように本発明において用いられる鋼板の化学組成および金属組織は特に限定されるものではなく、所定の引張り強度を有するものであれば、いかなる化学組成、金属組織を有するものでもよい。
このような高強度冷延鋼板の組成としては、例えば、C:0.1〜0.4mass%、Si:0〜2.5mass%、Mn:1〜3mass%、P:0〜0.05mass%、S:0〜0.005mass%、残部がFeおよび不可避的不純物であるもの、これにCu、Ti、V、Al、Crなどの1種又は2種以上を添加したもの、などを例示できるが、勿論これらに限定されるものではない。
また、高強度冷延鋼板として商業的に入手可能なものとしては、例えば、JFE−CA1180、JFE−CA1370、JFE−CA1470、JFE−CA1180SF、JFE−CA1180Y1、JFE−CA1180Y2(以上、JFEスチール(株)製)、SAFC1180D(新日鐵住金(株)製)などが非限定的に例示できる。
また、基質となる冷延鋼板の板厚も特に限定されないが、例えば、0.8〜2.5mm程度、より好ましくは1.2〜2.0mm程度のものが適当である。
本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板は、上記したような冷延鋼板の表面にバナジウム化合物とSi化合物を主成分とする(すなわちバナジウム化合物とSi化合物を50mass%以上含有する)皮膜(a)を有する。皮膜(a)に配合するバナジウム化合物、Si化合物の種類に特別な制限はない。
バナジウム化合物としては、例えば、バナジウムの酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸物、ハロゲン化物、窒化物、リン酸物及びこれらの塩などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。バナジウム化合物の具体例としては、VOSO、V、V、NHVO、VO(Cなどが挙げられる。
Si化合物としては、例えば、微粒子シリカ、シランカップリング剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
微粒子シリカとしては、コロイダルシリカ、乾式シリカ、カルシウムイオン交換シリカなどが挙げられる。
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学(株)製のスノーテックスO、スノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスS、スノーテックス20、スノーテックスOS、スノーテックスOXSなどを用いることができる。
乾式シリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL50、AEROSIL130、AEROSIL200、AEROSIL300、AEROSIL380などを用いることができる。
カルシウムイオン交換シリカは、微粒子シリカの表面にカルシウムを結合させたものであり、このカルシウムイオン交換シリカとしては、例えば、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEXC303、SHIELDEXAC3、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEXSY710などを用いることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメエキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジルアミン)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
皮膜(a)は、皮膜厚が5μm未満であることが必要である。ここで、本発明では、皮膜(a)の板厚方向断面において、任意に選択された観察視野5点で測定された皮膜厚の平均値をもって、皮膜(a)の皮膜厚とする。走査型電子顕微鏡(SEM)により皮膜断面を観察(例えば倍率5000倍)することにより、皮膜厚を測定することができる。皮膜(a)の皮膜厚が5μm以上では、自動車分野や建材分野などで所定の形状を得るために行われるプレス加工において皮膜が脱離しやすくなり、本発明の目的である耐遅れ破壊特性が劣化するだけでなく、脱離した皮膜がプレス金型に残存・堆積し、次の鋼板のプレス時に表面形状上の欠陥となるおそれがあるため好ましくない。このような観点から、より好ましい皮膜厚は2μm以下である。
本発明において、バナジウム化合物とSi化合物からなる皮膜(a)により耐遅れ破壊特性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、以下のような機構によるものと考えられる。
バナジウム化合物の中で一般的な5価のバナジウム化合物は、腐食過程において自身は還元され、環境の違いによって、2価、3価、4価の化合物が混在したものになると考えられる。前記バナジウム化合物の価数は、大気腐食環境の変化である乾燥過程、湿潤過程で変化すると考えられ、初期の価数に関わらず腐食過程における水素発生反応であるカソード反応をバナジウム化合物が担うことによって、鋼板表面の水素発生量を低下させているものと考えることができる。さらに、このようにして形成した2価、3価、4価のバナジウム化合物が混在した皮膜は、鋼板の腐食を抑制するバリア皮膜として寄与するものと考えられる。バナジウム化合物がより高い腐食抑制機能を発揮するためには、環境が高pHである方が不働態皮膜を形成するために効果が高いと考えられる。Si化合物は高pHに保持する機能を有するため、バナジウム化合物との複合添加によって、耐遅れ破壊特性が向上するものと考えられる。
上記の機能をより効果的に発揮するために、皮膜(a)におけるバナジウム化合物の付着量はV換算で1mg/m以上300mg/m以下が好ましく、10mg/m以上300mg/m以下がより好ましい。同じくSi化合物の付着量はSi換算で0.5mg/m以上1000mg/m以下が好ましく、10mg/m以上1000mg/m以下がより好ましい。
バナジウム化合物の付着量(V換算)が1mg/m未満では、上述した水素発生量を低下させる効果が小さく、長期の耐遅れ破壊特性を保持することが難しくなる。一方、300mg/mを超える高付着量であっても耐遅れ破壊特性のための機能が低下することはないが、コスト高となるため好ましくない。
また、Si化合物の付着量(Si換算)が0.5mg/m未満では、上述したpHを高く保持する効果が小さく、バナジウム化合物の効果を十分に発現できないため、長期の耐遅れ破壊特性を保持することが難しくなる。一方、1000mg/mを超える高付着量であっても耐遅れ破壊特性のための機能が低下することはないが、コスト高となるため好ましくない。
バナジウム化合物とSi化合物からなる皮膜(a)に、さらに、Mn化合物を複合添加することで、耐遅れ破壊特性をさらに向上させることができる。
皮膜(a)に配合するMn化合物の種類に特別な制限はない。Mn化合物としては、例えば、Mnの酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸物、硝化物、ハロゲン化物、窒化物、リン酸物及びこれらの塩などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。Mn化合物の具体例としては、リン酸Mn、硝酸Mn、酢酸Mnなどが挙げられる。
皮膜(a)中にMn化合物を複合添加することで耐遅れ破壊特性がさらに向上する理由についても必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、Mn化合物は腐食環境に対するバリア性を有するため、腐食を抑制することで水素発生量を低下させる効果を有するとともに、Mn化合物とバナジウム化合物が複合化することによって、緻密かつ難溶性の皮膜が形成され、これにより高い腐食抑制機能を発揮するためであると考えられる。
Mn化合物が上記の機能を効果的に発揮するために、皮膜(a)におけるMn化合物の付着量はMn換算で0.5mg/m以上が好ましく、5mg/m以上がより好ましい。また、付着量の上限については特に制限はないが、付着量が多すぎると形成した皮膜が脆弱になり、プレス加工時に皮膜の脱離を引き起こしやすくなるため、Mn換算で800mg/m以下が好ましい。
冷延鋼板表面の皮膜(a)の形成方法については特に限定されないが、上述の構成成分を含む処理液を冷延鋼板の表面に塗布した後、加熱乾燥させる方法が一般的である。
処理液は、水(通常、純水)にバナジウム化合物とSi化合物を溶解させ、さらに必要に応じてMn化合物を溶解させることにより調製することができる。
処理液を冷延鋼板表面にコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
上記のように処理液をコーティングした後、通常、水洗することなく加熱乾燥を行うが、処理後に水洗を行ってもよい。コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などの手段を用いることができるが、耐食性の観点からは高周波誘導加熱炉が特に好ましい。この加熱乾燥処理は、到達板温で50〜300℃、望ましくは80〜200℃、さらに望ましくは80〜160℃の範囲で行うことが好ましい。加熱乾燥温度が50℃未満では皮膜中に溶媒が多量に残り、溶媒が残存した部位が製造工程中のロールなどに付着し、局部的に耐遅れ破壊特性を有しない部位が形成されやすくなる。一方、加熱乾燥温度が高くなると、焼鈍工程で制御した材質が変化することで強度が低下するなど、本来の高強度鋼板としての機能が低下するおそれがある。このような観点から短時間の熱処理時間であることが好ましく、温度範囲は300℃以下であることが好ましい。
素材鋼板として、C:0.191mass%、Si:0.4mass%、Mn:1.56mass%、P:0.011mass%、S:0.001mass%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有し、引張り強度が1470MPa、板厚が1.6mmの冷延鋼板(冷間圧延ままの鋼板)を用いた。表1に示す条件で各化合物を水(純水)に溶解させて皮膜形成用の処理液を調製した。
冷延鋼板の表面に付着した油をトルエン-エタノールの混合液で超音波脱脂した後、表1に示す処理液を塗布し、次いで、高周波誘導加熱炉で加熱乾燥を実施し、発明例および比較例の鋼板を得た。皮膜中の各成分の付着量は、蛍光X線により、既知のV、Si及びMn付着量の鋼板を標準板として用いることで測定した。皮膜厚は、以下のようにして求めた。試験片の中央部から15mm×18mmを切り出し、樹脂に埋め込んだ後、機械研磨を行うことで断面SEM観察用試験片を作成し、SEMによる観察で幅3mm以上離れた5視野の皮膜厚を測定し、それらの平均値を皮膜厚とした。
以上のようにして得られた各鋼板について、以下の特性を評価した。それらの結果を、皮膜中の各成分の付着量及び皮膜厚とともに、表1に示す。なお、皮膜を形成しない鋼板(比較例1)についても同様の特性評価を行った。
(1)加工性
得られた鋼板をそれぞれ幅35mm×長さ100mmにせん断し、幅が30mmになるまで研削加工を施し、試験片を作製した。この試験片に対して、3点曲げ試験機を用いて曲げ加工を施した。この曲げ加工では、曲げの曲率を4Rとし、加工性を評価した。すなわち、曲げ加工後の加工部に粘着テープを貼着・剥離し、粘着テープに付着した皮膜分のV量を蛍光X線で測定し、加工による皮膜脱離量(V脱離率)を下式、
V脱離率={(粘着テープに付着したV量)/(全量剥離した場合に粘着テープに付着するV量)}×100
により求め、このV脱離率に基づいて、以下の基準により加工性を評価した。この評価では○,△を好適範囲とした。
〇:V脱離率10%未満
△:V脱離率10%以上、30%以下
×:V脱離率30%超
(2)耐遅れ破壊特性
上記と同様にして研削加工を施した試験片を作製し、図1に示すように、この試験片1をU字形状に曲げて、ボルト2とナット3で拘束して試験片形状を固定し、遅れ破壊評価用試験片を得た。このようにして作製した遅れ破壊評価用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を、最大20サイクルまで実施した。各サイクルの塩水浸漬の工程前に目視により割れの発生の有無を調査し、割れ発生サイクルを測定した。また、本試験は、各鋼板3検体ずつ実施し、その平均値をもって評価を行った。評価はサイクル数から、以下の基準により評価した。なお、表1中に示しているが、皮膜を付与しない比較例の場合は4サイクルであったことから、○、△を好適範囲とした。表1中の割れサイクル数20とは、本実施例の結果では、割れが発生しなかったことを示す。
〇:15サイクル以上
△:10サイクル以上15サイクル未満
×:10サイクル未満
Figure 0006226148
表1において、発明例1〜5はバナジウム化合物の種類を変えた例、発明例5〜7はSi化合物の種類を変えた例であるが、いずれの発明例においても、耐遅れ破壊特性に優れており、且つ加工性も良好である。発明例5〜9はSi化合物の種類を変えた例であるが、いずれの発明例においても、耐遅れ破壊特性に優れており、且つ加工性も良好である。
発明例5、発明例10〜14、比較例2〜4は、バナジウム化合物とSi化合物の付着量を変化させた例である。比較例2は皮膜厚が5μm以上(6μm)の例であるが、加工性が低く且つ耐遅れ破壊特性が低下している。これは、皮膜が脱離することで、皮膜による耐遅れ破壊特性が発現しなかったためと考えられる。比較例3,4は、それぞれバナジウム化合物、Si化合物の付着量が少ない例であるが、遅れ破壊特性が良好でないことが判る。一方、発明例はいずれも良好な遅れ破壊特性と加工性を示すが、V付着量が10〜300mg/m且つSi付着量が10〜1000mg/mの場合、加工性、耐遅れ破壊特性ともに良好な評価結果であることから、さらに好適であることが判る。
また、発明例15〜19はバナジウム化合物及びSi化合物にMn化合物を複合添加した例であるが、耐遅れ破壊特性と加工性はいずれも良好な評価結果が得られている。また、Mn化合物の付着量が好適な範囲である発明例16〜19の場合、耐遅れ破壊特性の割れ発生サイクルは、いずれも20サイクルでの評価結果内では1検体も割れが発生しなかったことから、Mn化合物を複合添加することにより耐遅れ破壊特性がさらに向上したといえる。
1 試験片
2 ボルト
3 ナット

Claims (4)

  1. 引張り強度が1180MPa以上の冷延鋼板の表面に、VOSO 、V 、V 、NH VO 、VO(C の中から選ばれる1種以上のバナジウム化合物と、コロイダルシリカ、乾式シリカ、カルシウムイオン交換シリカ、シランカップリング剤の中から選ばれる1種以上のSi化合物を主成分とし、バナジウム化合物の付着量がV換算で1mg/m以上、Si化合物の付着量がSi換算で0.5mg/m以上、皮膜厚が5μm未満の皮膜(a)を有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
  2. 皮膜(a)におけるバナジウム化合物の付着量がV換算で10〜300mg/m、Si化合物の付着量がSi換算で10〜1000mg/mであることを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
  3. 皮膜(a)が、さらに、Mn化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
  4. 皮膜(a)におけるMn化合物の付着量がMn換算で5〜800mg/mであることを特徴とする請求項3に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板。
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