JP2018168428A - 接合用粉末、接合用ペースト及びこれを用いた接合方法 - Google Patents

接合用粉末、接合用ペースト及びこれを用いた接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】組成の偏りのない接合組織を形成して、初期接合強度及び冷熱サイクル時の接合強度が高い接合を実現する。【解決手段】平均粒径が0.05〜1μmであって、Cuからなる中心核と前記中心核を被覆するCuとSnの金属間化合物であるCu6Sn5からなる被覆層とにより構成され、Cuを65〜95質量%の割合で、Snを35〜5質量%の割合でそれぞれ含有する接合用粉末である。この接合用粉末と有機溶剤とを混合してなる接合用ペーストを第1及び第2被接合部材間に介在させた後、窒素ガス雰囲気下又はギ酸ガス雰囲気下、第1及び第2被接合部材が互いに密着するように0.1〜50MPaの圧力を加えて250〜400℃の温度で5〜120分間加熱することにより、第1及び第2被接合部材を接合する方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、被接合部材である半導体チップ素子、LEDチップ素子等の電子部品と基板との間に介在させて、被接合部材である電子部品を基板に実装するのに好適に用いられる接合用粉末、接合用ペースト及びこれを用いた接合方法に関するものである。
近年、200℃を超える高温でも動作する、SiCのようなワイドギャップ半導体が注目されている。高温で動作する半導体チップ素子の接合方法として、CuとSnを含む接合材料を半導体チップ素子と基板との間に介在させ、Snの融点より高い温度で加熱し、前記接合材をCu6Sn5やCu3Snからなる組成の金属間化合物(Inter-Metallic Compound:IMC)とする遷移的液相焼結法(Transient Liquid Phase Sintering:TLP法)と呼ばれる接合方法が注目されている。この接合方法を用いた半導体モジュールの製造方法及び電子部品の実装方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1の半導体モジュールの製造方法は、半導体チップ素子又は基板の接合面に、Cu粒子とSn粒子を含む接合剤を塗布する工程と、半導体チップ素子の接合面と基板の接合面を接合剤を介在して合わせる工程と、Snの融点より高い温度で加熱し、接合剤のCuとSnを遷移的液相焼結させて、この接合剤をCu6Sn5とCu3Snを含む組成にする工程と、更に加熱し接合剤のCu6Sn5をCu3Snに変化させて、接合剤におけるCu3Snの比率を増やす工程とを有する。即ち、この製造方法では、粉末状のCuと粉末状のSnを混合し、この混合物に溶剤やフラックスを加えてペースト化し、このペーストを半導体チップ素子の電極と基板の電極に印刷する。この製造方法によれば、高温で動作する半導体チップ素子の接合に、従来のはんだを用いる方法を用いた場合、高温動作時に、はんだの再溶融、界面に金属間化合物(IMC)の形成などにより半導体チップ素子の性能が劣化していたが、これを解決できるとされる。
一方、特許文献2の電子部品の実装方法は、Cu及びCuとSnとのCu3Sn、Cu6Sn5等の金属間化合物からなる中心核とこの中心核を被覆するSnからなる被覆層で構成されたはんだ粉末とはんだ用フラックスを混合して作製されたはんだ用ペーストを用いて電子部品を実装する方法である。この実装方法によれば、リフロー後、再溶融及び接合強度の低下が起こりにくく、特に高温雰囲気に晒される電子部品を好適に実装できるとされる。
特開2014−199852号公報(請求項1、段落[0005]、段落[0006]) 特開2014−193473号公報(請求項1〜4)
しかしながら、特許文献1に記載された半導体モジュールの製造用の接合剤を作製するときにCu粒子表面に形成される酸化物の除去が難しいため、接合剤を加熱したときに、溶融した液相のSnがCu粒子表面に濡れにくく、高い強度で半導体チップ素子を基板に接合することが困難であった。その一方、特許文献2に記載された電子部品の実装方法では、中心核のCuはSnで被覆されているため、特許文献1のようにCu粒子表面に酸化物が形成される恐れがなく、加熱時にCu及びCuとSnとの金属間化合物からなる中心核を被覆するSnが液相になって、Snが中心核と一体化する利点はあるけれども、Sn液相は流動性があるためSn液相が局所的に偏り、均一な接合組織を形成できずに、接合強度が劣ることがあった。
本発明の目的は、上記課題を解決し、組成の偏りのない接合組織を形成して、初期接合強度及び冷熱サイクル時の接合強度が高い接合を実現する接合用粉末、接合用ペースト及びこれを用いた接合方法を提供することにある。
本発明者らは、外殻がSn層を有しないCuコアCu6Sn5シェル構造の接合用粉末であっても、この粉末を微細化し、この粉末同士を接触させて加熱すれば、外殻が凝固開始温度が415℃と高いCu6Sn5であっても、外殻の焼結が進行するという微細サイズ効果があることを知見し、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、平均粒径が0.05〜1μmであって、Cuからなる中心核と前記中心核を被覆するCuとSnの金属間化合物であるCu6Sn5からなる被覆層とにより構成され、Cuを65〜95質量%の割合で、Snを35〜5質量%の割合でそれぞれ含有することを特徴とする接合用粉末である。
本発明の第2の観点は、第1の観点の接合用粉末と有機溶剤とを混合してなる接合用ペーストである。
本発明の第3の観点は、第2の観点の接合用ペーストを第1及び第2被接合部材間に介在させた後、窒素ガス雰囲気下又はギ酸ガス雰囲気下、第1及び第2被接合部材が互いに密着するように少なくとも0.1MPaの圧力を加えて250〜400℃の温度で5〜120分間加熱することにより、前記第1及び第2被接合部材を接合することを特徴とする接合方法である。
本発明の第1の観点の接合用粉末は、所定量のCuを中心核とし、被覆層がCu6Sn5であるため、接合するための加熱(以下、接合加熱という。)をするときに、特許文献2のように流動性のあるSn液相が発生しないため、組成の偏りのない接合組織を形成することができる。被覆層のCu6Sn5は凝固開始温度が415℃と高いが、接合用粉末の平均粒径が0.05〜1μmと微細化しているため、微細サイズ効果により、接合加熱時に粉末接点で焼結が進行し、接合層を一体化することができる。即ち、Cu6Sn5の金属間化合物の内部にCu粒子が略均一に拡散して、凝固開始温度676℃のCu3Sn組織となる。この結果、初期接合強度及び冷熱サイクル時の接合強度が高い接合を実現することができる。
本発明の第2の観点の接合用ペーストは、上記接合用粉末と有機溶剤とを混合してなるため、例えば電子部品と基板のような被接合部材の接合面に塗布し、接合加熱すれば、初期接合強度及び冷熱サイクル時の接合強度が高い接合を実現することができる。
本発明の第3の観点の接合方法によれば、上記接合用ペーストを第1及び第2被接合部材間に介在させた後、窒素ガス雰囲気下又はギ酸ガス雰囲気下、第1及び第2被接合部材が互いに密着するように少なくとも0.1MPaの圧力を加えて250〜400℃の温度で5〜120分間加熱することにより、初期接合強度及び冷熱サイクル時の接合強度が高い接合を実現することができる。
本発明の実施形態の接合用ペーストを第1被接合部材の接合面に塗布して第2被接合部材を載せた状態の断面を示す模式図である。 図1に示した接合用ペーストの加熱初期状態の断面を示す模式図である。 図1に示した接合用ペーストを加熱完了後の状態の断面を示す模式図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
〔接合用粉末〕
図1に示すように、本実施形態の接合用粉末10は、Cuからなる中心核11と、この中心核11を被覆するCuとSnの金属間化合物であるCu6Sn5からなる被覆層12とにより構成された、CuコアCu6Sn5シェル構造の微細な粉末である。この接合用粉末10の平均粒径は0.05〜1μm、好ましくは0.2〜0.5μmである。平均粒径の下限値である0.05μm未満では、接合用粉末の製造が困難であるだけでなく、接合用ペーストにしたときにペーストの印刷性を付与するための溶剤量が多くなり、粉末同士が接触しにくく粉末の焼結が進行しない。また平均粒径の上限値である1μmを超えると、接合加熱時に粉末接点で焼結が進行しにくく、低温焼結性に劣る。ここで、粉末の平均粒径(体積基準)は平均粒径が0.2μmを超えるものは、レーザー回折散乱法(堀場製作所社製、LA960)により測定した値であり、平均粒径が0.2μm以下のものは動的光散乱法(堀場製作所社製、LB550)により測定した値である。
また接合用粉末10を100質量%とするとき、Cuを65〜95質量%の割合で、Snを35〜5質量%の割合でそれぞれ含有する。好ましい含有量はCuが70〜90質量%であり、Snが30〜10質量%である。Cuの含有量が95質量%を超えてSnの含有量が5質量%未満では、接合用粉末表面に高融点のCu3Snが生成されてしまい接合用粉末の低温焼結性が得られない。またCuの含有量が65質量%未満であってSnの含有量が30質量%を超えると、相対的にCu3Sn生成量が多くなり、Cu3Snの生成が遅いために短時間接合が実現できなくなるとともに熱伝導性に優れるCuが少なくなるため、接合後の接合層の熱伝導性に劣る。
〔接合用粉末の製造方法〕
接合用粉末を製造する方法としては、CuコアSnシェル構造の粉末のコアとシェルの双方を湿式法で製造する方法と、コアにCu微粉末を用いて、シェルのみを湿式法で製造する方法が挙げられる。前者の製造方法では、先ずCuイオン及びSnイオンが共存する水溶液に還元剤を投入し、酸化還元電位の貴なCuを還元析出させ、続いてこのCuを覆うように酸化還元電位の卑なSnを還元析出させることでCuコアSnシェル構造の接合用粉末前駆体を製造する。還元剤はCuのみを還元する弱還元剤とSnも還元する強還元剤を段階的に投入して、Cuの還元析出反応とSnの還元析出反応を分離した操作としてもよい。また後者の製造方法では、Cu微細粉末を予め準備し、これをSnイオンが含有する水溶液に高分散させ、ここに還元剤を投入して分散Cu微細粉末表面にSnを還元析出させてもよい。また水溶液には、合成したCuコアSnシェル構造の接合用粉末前駆体の凝集を防止する目的で、水溶液調製時にヒドロキシプロピルメチルセルロースやポリビニルピロリドンなどの分散剤を投入してもよい。合成したCuコアSnシェル構造の接合用粉末前駆体を洗浄した後、回収し乾燥して、これを乾燥機内で真空条件(200Pa以下)、50℃で24時間加温乾燥することで、CuコアCu6Sn5シェル構造の微細な接合用粉末が得られる。
〔接合用ペーストの調製方法〕
接合用ペーストを調製するには、上記CuコアCu6Sn5シェル構造の微細な接合用粉末と有機溶剤とを所定の割合で混合する。この有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、α−テルピネオール等の沸点が180℃以上である有機溶剤が挙げられる。この中でα−テルピネオールが好ましい。
上記接合用粉末と有機溶剤との混合は、遊星撹拌混合装置、例えばシンキー社製、あわとり練太郎R250を用い、接合用粉末と有機溶剤を軟膏瓶で初期混合する。初期混合したペースト前駆体を、三本ロールミル、例えばノリタケ社製、NR―2Aで適切なロール間隙、適切な回数及び適切なロール回転速度で処理することで、接合用ペーストが得られる。有機溶剤の量や、ロールミルの間隙及び処理回数は、CuコアCu6Sn5シェル構造の微細な接合用粉末の粒径や表面状態に応じて変化するため数値限定されるものではないが、適正な印刷性を得られるように調整する必要がある。接合用ペースト100質量%に対して有機溶剤が5〜20質量%含まれることが好ましい。また、ペーストには少量の活性剤が含まれていてもよい。活性剤にはシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩が好ましいが、これに限定されるものではなく、その添加量もペースト印刷性や接合性を考慮して決定するため限定するものではないが、概ね0.1〜1.0質量%の範囲である。
〔接合用ペーストを用いた接合方法〕
ここで、接合加熱により、接合用粉末を含む接合用ペーストが接合層に変わるまでの粉末の焼結過程を図1〜図3により説明する。図1の模式図に示すように、先ず接合加熱前の接合用粉末10(Cuからなる中心核11とCu6Sn5からなる被覆層12)と有機溶剤13とを混合してなる接合用ペースト14を用意した後、この接合用ペースト14を層状に第1被接合部材20の接合面上に塗布する。このとき、接合用粉末10は接合用ペースト14中でそれぞれ独立して存在している。
次いでこの状態で接合用ペースト14の層の上に第2被接合部材21を配置し、この第2被接合部材21の上から荷重Pを加えて加圧する。この加圧により接合用ペースト中の接合用粉末同士及び接合用粉末と被接合部材とが確実に接触する。この加圧した状態で、接合用ペースト14を加熱する。この加熱により有機溶剤13は揮発して消失し、図2の模式図に示すように、接合用粉末10のCu6Sn5からなる被覆層12の部分がネックを組んで一体化して、Cuの中心核11がCu6Sn5中に分散した焼結前駆体層15が形成される。
更に加圧しながら加熱を続けると、図3の模式図に示すように、焼結が進んで緻密化していき、厳密にはCu相とCu6Sn5相の相間にはCu3Snが形成され始める。焼結前駆体層15内のCuが拡散してCu6Sn5相の全量がCu3Sn相となったところで反応が終了し、中心部にCuが残り、外周部はCu3Snのみとなって、接合層16になる。この接合層16は、凝固開始温度が676℃のCu3Sn及び凝固開始温度が1083℃のCuからなる組織であるため、被接合部材20と21との初期接合強度を高くして、かつ冷熱サイクル時の接合強度を高くすることができる。
次に上記方法で調製された接合用ペーストを用いてシリコンチップ素子を銅板の基板に接合して、シリコンチップ素子を基板に実装する一例について説明する。先ず上記接合用ペーストを3mm□の開口部で厚さ50μmのメタルマスクを用いて、第1被接合部材である銅板上にメタルスキージを用いて印刷する。次いで印刷されたペースト上に2.5mm□の裏面をAuスパッタリングした第2被接合部材であるシリコンチップ素子を搭載する。次に接合炉、例えば加圧機構を備えたマルコム社製、SRS−1Cを用い、雰囲気を窒素ガス又はギ酸ガスにして、少なくとも0.1MPa(0.1MPa以上)の荷重を加えながら、250〜400℃で5〜120分間加熱処理し、シリコンチップ素子と銅板とを接合させる。加圧は前述したように、接合用ペースト中の接合用粉末同士及び接合用粉末と被接合部材を接触させるために行われる。加圧の上限は第2被接合部材の材質により変動し、最大で50MPaである。雰囲気を窒素ガス又はギ酸ガスにするのは窒素ガス雰囲気とすることで酸素の侵入を遮断し、粉末表面の酸化を防止して、表面酸化による焼結性の低下を防止するためであり、ギ酸ガス雰囲気とすることで、酸素の侵入を遮断して酸化を防止するとともに、粉末合成やペースト調整時に僅かに表面酸化した粉末表面の酸化物を還元除去し更に焼結性を高めるためである。
この接合加熱の条件は接合用粉末の平均粒径によって、上記加熱温度及び加熱時間が上記範囲から決められる。接合用粉末の平均粒径が小さい程、上記範囲内で低い加熱温度及び短い加熱時間が決められ、接合用粉末の平均粒径が大きい程、上記範囲内で高い加熱温度及び長い加熱時間が決められる。加熱温度が250℃未満又は加熱時間が5分未満では、平均粒径が0.01μmであっても、粉末の焼結が進行しない。また加熱温度が400℃を超える場合又は加熱時間が120分を超える場合には、被接合部材であるシリコンチップ素子に熱損傷を与えてしまう不具合がある。好ましい加熱温度は280〜350℃であり、好ましい加熱時間は10〜60分間である。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
平均粒径が0.05μmであって、Cuの割合が80質量%かつSnの割合が20質量%のCuコアCu6Sn5シェル構造の接合用粉末を用意した。ここで接合用粉末のCuとSnの組成割合は、ICP発光分光法(Thermo Fisher Scientific社製、iCAP-6500 Duo)により測定した。またコアシェル構造の結晶構造が主としてCu及びCu6Sn5から構成されることは、粉末X線回折法(PANalytical社製、多目的X線回折装置Empyrean)により確認した。
この接合用粉末80質量%に対し、有機溶剤のα−テルピネオールを20質量%混合し、遊星撹拌処理及びロールミル処理して接合用ペーストを調製した。この接合用ペーストを用い、厚さ50μmで開口部3mm□のメタルマスクを用いて、銅板上に印刷した。ここに裏面をAuスパッタリングした2.5mm□のシリコンチップ素子を搭載した。シリコンチップ素子に1MPaの荷重を加えて銅板に密着させた状態で、リフロー炉を用いて、窒素雰囲気下、最高温度300℃で30分間保持して、銅板とシリコンチップ素子を接合し、実施例1の接合サンプルを得た。
<実施例2〜22及び比較例1〜10>
実施例2〜22及び比較例1〜10では、表1に示すように、接合用粉末の平均粒径又はCuとSnの組成について、そのいずれか一方又は双方を実施例1とは異なるCuコアCu6Sn5シェル構造の接合用粉末を用意した。これらの接合用粉末を用いて実施例1と同一の方法で接合用ペーストを調製した。表1に示す条件で、これらの接合用ペーストにより、実施例2〜22及び比較例1〜10の接合サンプルを得た。
<比較例11>
比較例11では、CuコアSnシェル構造の接合用粉末を用意した。この接合用粉末を用いて実施例3と同一の方法で接合用ペーストを調製した。表1に示す条件で、この接合用ペーストにより、比較例11の接合サンプルを得た。
実施例1〜22及び比較例1〜11の接合用粉末及び接合サンプルの製造条件を以下の表1に示す。
Figure 2018168428
<比較評価>
実施例1〜22及び比較例1〜11で得られた23種類の接合サンプルについて、次に述べる方法により、初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行い、評価した。その評価結果を表1に示す。
(1)初期接合強度
接合強度はダイシェアテスタ(エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機RTF−1310)により、23種類の接合サンプルの銅板をそれぞれ固定し、シリコンチップ素子側面から銅板と平行方向に力を加え、シリコンチップ素子が剥がれる際の力又は破壊された際の力(単位はニュートン、N)を計測し、この値を接合面積2.5mm×2.5mm=6.25mm2で除した値を接合強度(単位はMPa)とした。
(2)冷熱サイクル
23種類の接合サンプルを冷熱サイクル試験機(エスペック社製、冷熱衝撃試験装置TSA―73ES)にそれぞれ入れ、下限温度−40℃、上限温度200℃に設定し、降温と昇温を1000回繰り返し、上記(1)の初期接合強度と同様の方法で接合強度を測定し、初期接合強度で除したものを冷熱サイクル特性とした。これは1.00であれば初期強度を維持したことを意味し、0.50であれば初期強度の半分に低下していることを意味する。
表1から実施例1〜22と比較例1〜11とを比較すると次のことが分かった。
比較例1では、平均粒径が0.03μmである微細過ぎる接合用粉末を用いたため、接合用ペースト中の溶剤量が多くなり過ぎ、銅板上に印刷できず、接合サンプルを作製できなかった。このため初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例2では、平均粒径が1.5μmである粗大過ぎる接合用粉末を用いたため、接合加熱時に粉末接点で焼結が進行せず、シリコンチップ素子が銅板に接合しなかった。このため初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例3では、接合用粉末中のCuの含有量が60質量%と少な過ぎ、Cu6Sn5の含有量が40質量%と多過ぎたため、初期接合強度は44MPaと高かったが、熱伝導性に優れる延性・展性のある金属Cu成分が少なく、また熱伝導性に乏しく脆性材料であるCu3Snが多かったため、熱を十分n逃がすことができずに高温に晒されたことと、銅板とシリコンチップ素子との熱膨張差に伴い発生する応力を緩和することができずに接合層の空隙から亀裂が進展し接合強度が低下した。その結果、冷熱サイクル試験では0.48と低かった。
比較例4では、接合用粉末中のCuの含有量が97質量%と多過ぎ、Cu6Sn5の含有量が3質量%と少な過ぎたため、接合加熱時に粉末接点で焼結が進行せず、シリコンチップ素子が銅板に接合しなかった。このため初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例5では、接合加熱時に圧力を加えなかったため、粉末同士や粉末と被接合面との接点が十分に確保できずに焼結が進行せず、シリコンチップ素子が銅板に接合しなかった。このため初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例6では、接合加熱時に100MPaの圧力を加えたため、シリコンチップ素子が破壊されてしまい、接合以前の問題となって取り組みを中止した。このため初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例7では、接合加熱時の温度が230℃と低過ぎたため、粉末同士や粉末と被接合面との接点は十分に確保できたが、焼結が進行するための駆動力が不足しているため焼結が進行せず、シリコンチップ素子が銅板に接合しなかった。このため初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例8では、接合加熱時の温度が450℃と高過ぎたため、シリコンチップ素子に熱損傷を与えてしまい、接合後の通電試験で不良判定となったため、接合強度を得ても素子が破壊されては無意味であるため、初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行わなかった。
比較例9では、粉末同士や粉末と被接合面との接点は確保でき、焼結の駆動力もあったが、接合加熱時の時間が3分間と短過ぎたため、焼結が十分に進まず、指で触れると容易にシリコンチップ素子が脱落する状態であった。このため、初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行うことができなかった。
比較例10では、接合加熱時の時間が150分間と長過ぎたため、シリコンチップ素子に熱損傷を与えてしまい、接合後の通電試験で不良判定となった。接合強度を得ても接合後の通電試験が不良になっては、初期接合強度試験と冷熱サイクル試験を行っても無意味であるため、これらの試験は行わなかった。
比較例11では、外殻をSn層で構成した接合用粉末を用いたため、加熱接合時に液相のSnが生成し被接合部材との界面に濡れ広がるため、初期接合性には優れたが、接合層内部で組成の偏りが生じるため、初期強度や冷熱サイクル試験における数値が安定せずに、この接合用粉末は不適であった。
これに対して、実施例1〜22の接合サンプルは、第1の観点の接合用粉末を用いて、第3の観点の接合方法で作製したため、初期接合強度は28〜58MPaと高く、また冷熱サイクルは0.80〜0.96の範囲にあり、冷熱サイクル試験による接合強度の低下はみられなかった。
本発明は、高温雰囲気に晒される電子部品の実装に好適に利用できる。
10 接合用粉末
11 中心核(Cu)
12 被覆層(Cu6Sn5
13 有機溶剤
14 接合用ペースト
16 接合層
20、21 被接合部材

Claims (3)

  1. 平均粒径が0.05〜1μmであって、Cuからなる中心核と前記中心核を被覆するCuとSnの金属間化合物であるCu6Sn5からなる被覆層とにより構成され、Cuを65〜95質量%の割合で、Snを35〜5質量%の割合でそれぞれ含有することを特徴とする接合用粉末。
  2. 請求項1記載の接合用粉末と有機溶剤とを混合してなる接合用ペースト。
  3. 請求項2記載の接合用ペーストを第1及び第2被接合部材間に介在させた後、窒素ガス雰囲気下又はギ酸ガス雰囲気下、第1及び第2被接合部材が互いに密着するように0.1〜50MPaの圧力を加えて250〜400℃の温度で5〜120分間加熱することにより、前記第1及び第2被接合部材を接合することを特徴とする接合方法。
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