JP6645318B2 - 接合用粉末及びこの粉末の製造方法並びにこの粉末を用いた接合用ペーストの製造方法 - Google Patents

接合用粉末及びこの粉末の製造方法並びにこの粉末を用いた接合用ペーストの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子部品等の実装に用いられる接合用粉末及びこの粉末の製造方法並びにこの粉末を用いた接合用ペーストの製造方法に関する。更に詳しくは、接合完了後、再溶融及び接合強度の低下が起こりにくく、特に高温雰囲気に晒される電子部品等の実装に好適な接合用粉末及びこの粉末の製造方法並びにこの粉末を用いた接合用ペーストの製造方法に関するものである。
近年、200℃を超える高温で動作する半導体チップの接合方法として、銅(Cu)と錫(Sn)を含む接合用材料を半導体チップと基板との間に介在させ、Snの融点より高い温度で加熱し、上記接合用材料をCuSnやCuSnからなる組成の金属間化合物(Inter-Metallic Compound:IMC)に変化させる遷移的液相焼結法(Transient Liquid Phase Sintering:TLPS法)と呼ばれる接合方法が注目されている。
この接合方法には、シート状のCuとシート状のSnを積層して接合層を形成して、半導体チップと基板の間に接合層を介在させる方法や、生産性を高めるために、Cu粒子とSn粒子を混合し、この混合粉末を溶剤やフラックスを用いてペースト状の接合剤にして、印刷法でこの接合剤を半導体チップと基板の接合面に塗布する方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
またハンダ粉単体又はハンダ粉と銅粉との混合粉との混合粉をプリント配線板へのIC部品等の部品実装時の位置決めに用いる導電性接着剤の構成粉体として用いて、ハンダの接合温度(200℃〜300℃)でハンダを溶融させて部品を実装するときに、部品実装のアライメント精度を向上させるために、ハンダ粉の代替粉として、融点の高いCuからなる銅粉の粒子をコア材にして、その表面に錫のような低融点金属コート層を形成した錫コート銅粉が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この錫コート銅粉では、部品実装時の接合温度で溶融する可能性のある層を表面層のみに制限して、溶融による表面層の形状変形や部品の位置ズレを最小限に抑制している。
一方、本出願人は、中心核と前記中心核を被覆する被覆層で構成され、前記中心核がCuSnのような銅と錫との金属間化合物からなり、前記被覆層が錫からなるハンダ粉末において、前記ハンダ粉末の平均粒径が5μm以下であり、前記ハンダ粉末の全体量100質量%に対し、銅の含有割合が0.1質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とするハンダ粉末を特許出願した(特許文献3参照。)。
また本出願人は、中心核と前記中心核を被覆する被覆層で構成され、前記中心核が銅及びCuSnのような銅と錫との金属間化合物からなり、前記被覆層が錫からなるハンダ粉末において、前記ハンダ粉末の平均粒径が30μm以下であり、前記ハンダ粉末の全体量100質量%に対し、銅の含有割合が2.0質量%を超え40質量%以下であることを特徴とするハンダ粉末を特許出願した(特許文献4参照。)。
特開2014−199852号公報(請求項1、段落[0010]) 特開2006−225692号公報(請求項1、段落[0003]、段落[0004]) 特開2012−157869号公報(請求項1、請求項2、段落[0020]) 特開2014−193473号公報(請求項1、請求項2、段落[0021])
上記従来の特許文献1では、低融点のSn粒子と、高融点のCu粒子とを混合して得られた接合用材料を使用し、上記従来の特許文献2では、高融点のCu粒子を低融点のSnで被覆した錫コート銅粉を使用している。これらの従来の接合用粉末では、ペースト組成物を調製して接合に供する際にSnの融点より高い温度で加熱するとSn粒子もしくはCu粒子を被覆したSn相が液相になり、Sn液相とCu固体粒子の液固界面で金属間化合物が形成される。接合層は接合完了時において、含有するCu量とSn量によって決定されるCu相とCuSn相の2相の組合せからなることが望ましい。
上記従来の接合用粉末を用いたペースト組成物を加熱すると、Snの融点以上の温度で生成したSnの液相はCuと比較的速やかに反応して金属間化合物CuSnを形成し易いが、Sn液相が消滅した段階では、多くの金属間化合物はCuSn相であり、Cu粒子の中心部にはCuが残存し、CuとCuSnの界面には僅かにCuSn相が形成されるに過ぎない。このため、上記従来の接合用粉末では、接合完了時において、Cu相とCuSn相とCuSn相の3つの相が共存し、十分な接合強度が得られない問題があり、また含有するCu量とSn量によって決定される上記望ましい2つの相の組合せにするためには、CuSn相とCu相と反応させてCuSn相に変化させ、Cu相とCuSn相のいずれかの相を消滅させる必要があった。そしてこの消滅のためには、接合時において上述した遷移的液相焼結法で必要とされる、例えば350℃以上の高温かつ60分以上の長時間の加熱をするため、基板や素子に熱的ダメージを与えるおそれがあった。
更に、従来の特許文献1及び2で示される融点や組成等が異なる粒子を混合して得られる接合用粉末では、粒子の混ざり具合に不均一さが生じやすい。不均一さが生じると、接合時に、部分的な溶融ムラや組成ズレが生じ、これにより、接合部位において十分な強度が得られないおそれがあった。
上記従来の特許文献3及び4で示される接合用粉末では、粒子の混ざり具合の不均一さは解消されるけれども、特許文献3のハンダ粉末のようにハンダ粉末100質量%に対し、銅の含有割合が0.1質量%以上2.0質量%以下の含有割合では、或いは特許文献4のハンダ粉末のようにハンダ粉末100質量%に対し、銅の含有割合が2.0質量%を超え40質量%以下の含有割合では、それぞれ接合時にハンダ粉末が溶融し易い利点はある一方、接合完了後の高温雰囲気下で再溶融及び接合強度の低下が起こり易い問題が依然として未解決であった。
また特許文献4の比較例2において、中心核を塩化銅(II)及び塩化錫(II)の溶解液に還元剤を加えて銅イオンを還元して中心核を作り、その周囲に錫イオンを還元して被覆層を作る方法(以下、中心核と錫被覆層の湿式逐次析出法という。)で、銅の含有割合を60質量%程度に高めたときには、所定の粒径への制御が困難であった。また粒径制御の困難さに付随して、ハンダ粉末の各粒子中の錫と銅の含有割合のばらつきも大きくなり易く、接合時にハンダ粉末が均一に溶融せず、結果的に接合部位において十分な接合強度が得られない問題があった。
本発明の目的は、従来の遷移的液相焼結接合法で必要とされる温度と時間よりも低い温度と短い時間で接合可能であって、接合完了後、再溶融及び接合強度の低下が起こりにくく、特に高温雰囲気に晒される電子部品等の実装に好適な接合用粉末及びこの粉末の製造方法を提供することにある。本発明の別の目的は、接合部位において十分な接合強度が得られる、接合用粉末を用いた接合用ペーストを製造する方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、銅の上限値の含有割合を40質量%を超える割合にしても、錫を少なくとも20質量%含ませて、接合すると、接合時の接合用粉末を十分に溶融させて、Cu相とCuSn相の2相の組合せ又はCuSn相とCuSn相の2相の組合せからなる接合層で基板等に接合でき、しかもCuSnの融点は676℃で、CuSnの融点は415℃であるため高温雰囲気に晒されても実装後の接合用材料が再溶融せずに、又は接合用材料の一部において液相が生じることなく、基板等との接合不良を発生させないことを見い出し、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、図1に示すように、中心核11と中心核11を被覆する被覆層12で構成される接合用粉末10において、中心核11が銅と錫との金属間化合物であるCuSnからなり、被覆層12が中心核11から順に銅からなる第1被覆層12aと錫からなる第2被覆層12bの二層により構成され、接合用粉末10の平均粒径が1μm以上30μm以下であり、接合用粉末10の全体量100質量%に対して銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のCu3Sn粉末を水に分散させて第1分散液を得る工程と、銅の金属塩と第1還元剤を同時に前記第1分散液に添加混合して前記銅の金属塩が溶解して生成される銅イオンが前記第1還元剤で還元されることにより析出した銅が前記Cu3Sn粉末を被覆して形成された銅被覆粉末を得る工程と、前記銅被覆粉末が分散した第2分散液を固液分離し、前記固液分離した固形分の銅被覆粉末を乾燥する工程と、前記乾燥した銅被覆粉末を水に分散させて第3分散液を得る工程と、錫の金属塩と第2還元剤を同時に前記第3分散液に添加混合して前記錫の金属塩が溶解して生成される錫イオンが前記第2還元剤で還元されることにより析出した錫が前記銅被覆粉末を被覆して形成された接合用粉末前駆体を得る工程と、前記接合用粉末前駆体が分散した第4分散液を固液分離し、前記固液分離した固形分の接合用粉末を乾燥する工程とを含む接合用粉末の製造方法であって、前記接合用粉末は、平均粒径が1μm以上30μm以下であり、前記接合用粉末の全体量100質量%に対して前記銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下であることを特徴とする
本発明の第3の観点は、第1の観点の接合用粉末又は第2の観点の方法により製造された接合用粉末と接合用フラックスを混合して接合用ペーストを製造する方法である。
本発明の第4の観点は、第3の観点の方法で製造された接合用ペーストを用いて電子部品を実装する方法である。
本発明の第1の観点の接合用粉末は、中心核と中心核を被覆する被覆層で構成され、中心核が銅と錫との金属間化合物であるCuSnからなり、被覆層が中心核から順に銅からなる第1被覆層と錫からなる第2被覆層の二層により構成され、接合用粉末の平均粒径が1μm以上30μm以下であり、接合用粉末の全体量100質量%に対して銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下である。このように、本発明の接合用粉末では、粉末表面が融点の低い錫から構成されることにより、錫の含有割合が特許文献3又は4の含有割合と比べて減少しても、接合時の溶融性、焼結性等に優れる一方、接合完了後は、融点が高い金属間化合物CuSnとCuとからなる接合層又は金属間化合物CuSnとCuSnとからなる接合層で構成され、かつ銅の含有割合が特許文献3及び4記載の接合用粉末の含有割合と比べて増加するため、特許文献3及び4記載の接合用粉末と異なり、耐熱性のある接合が可能となる。また中心核が予めCuSnから構成されているため、前述した遷移的液相焼結接合法で実施されるような高温又は長時間を要することなく、接合することができる。更に、粉末を構成する一つの金属粒子内において、銅と錫が含まれるため、接合時の溶融ムラや組成ズレによる接合強度の低下を防止できる。
特に中心核を融点が676℃であるCuSnにより構成し、第1被覆層を銅により構成することにより、中心核を融点が415℃であるCuSnのような銅と錫との金属間化合物により構成し、被覆層を錫のみで構成した特許文献3の接合用粉末と比較して接合完了後の耐熱性が高く接合強度も高くなる。また中心核を銅及び銅と錫との金属間化合物CuSnにより構成し、被覆層を錫により構成した特許文献4の接合用粉末では、Cu相とCuSn相とCuSn相の3つの相が共存し、十分な接合強度が得られないものが、第1の観点の接合用粉末では、Cu相とCuSn相の2相の組合せからなる接合層又はCuSn相とCuSn相とからなる接合層で基板等に接合でき、接合完了後の耐熱性が高く接合強度も高くなる。更に、第1の観点の接合用粉末では、従来の遷移的液相焼結接合法で必要とされる温度と時間よりも低い温度と短い時間で接合できる。例えば350℃以上の高温かつ60分以上の長時間の加熱が必要とされる遷移的液相焼結接合法を、無鉛ハンダSAC305(組成比 Sn:Ag:Cu=96.5:3:0.5質量%)の接合条件である最大温度250℃で60秒間加熱するのと同程度の接合条件で達成できる。
本発明の第2の観点の接合用粉末の製造方法では、所定の平均粒径を有する中心核のCuSn粉末を出発原料とするため、最終的に製造される接合用粉末の平均粒径の制御が容易であって所望の平均粒径の接合用粉末が得られる利点がある。また中心核をCuSn粉末としてこの中心核にSnを被覆する方法では、接合用粉末中のCuの質量比を高めることが困難である一方、本発明ではCuSn粉末に第1被覆層としてCuを被覆するため、第2被覆層としてSnを被覆するときに、接合用粉末中のCuの質量比率を高めることができる。
また本発明の接合用粉末と同様のCuとSnの質量比とするために、中心からCu、CuSn、Snになるように接合用粉末を製造する方法と比較して、本発明では、中心からCuSn、Cu、Snになるように接合用粉末を製造することにより、接合時にはCuとSnが速やかに反応し、接合が容易になる利点がある。
更に中心核のCuSnから第1被覆層のCuと第2被覆層のSnまでを湿式逐次析出法で製造する方法では、中心核と被覆層を形成するのに用いる還元剤がそれぞれ異なり、Cu層とSn層の析出が同時に起きて、Cu層とSn層の境界が不明瞭になり易く、それぞれの層の緻密さが劣るのに対して、本発明の製造方法では、粉末のCuSnを中心核にしてそこから湿式逐次析出法で第1被覆層のCuと第2被覆層のSnを形成するため、Cu層とSn層の境界がより一層明瞭になり、それぞれの層がより一層緻密になる利点がある。
本発明の第3の観点の接合用ペーストの製造方法は、上記本発明の接合用粉末を用いて作ることができる。得られた接合用ペーストは、接合時の溶融が速く、溶融性に優れる一方、接合完了後は、特許文献3及び4記載の接合用粉末と異なり、金属間化合物及び銅からなる接合層を形成し、耐熱性が更に上昇するため、特許文献3及び4記載の接合用粉末よりも、熱による再溶融が起こりにくい。このため、本発明の方法で得られた接合用ペーストは、特に200℃以上の高温雰囲気に晒される電子部品等の実装に好適に用いることができる。
本発明の第4の観点の電子部品を実装する方法では、上記本発明の接合用ペーストを用いるため、接合時には接合用ペーストの溶融の速さ、優れた溶融性により、簡便に、かつ高い精度で実装することができるとともに、実装後においてより一層高い耐熱性を付与できる。
本発明実施形態の接合用粉末の断面構造の一例を模式的に表した図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
〔接合用粉末〕
本発明の接合用粉末は、図1に示すように、中心核11と中心核11を被覆する被覆層12で構成され、この中心核11が銅と錫との金属間化合物であるCuSnからなり、被覆層12が中心核から順に銅からなる第1被覆層11aと錫からなる第2被覆層12bの二層により構成される。そして本発明の接合用粉末は、その全体量100質量%に対して銅の含有割合は52質量%以上80質量%以下、好ましくは56質量%以上70質量%以下である。
従来の接合用粉末では、Sn−Pb系共晶ハンダ(組成比 Sn:Pb=63:37質量%)の代替として使用されるため、融点が近く、共晶組成が求められるという理由から、銅の割合を0.7質量%程度と、比較的少なめに含有させている。一方、本発明の接合用粉末では、錫リッチである特許文献3及び4と比較して、銅の割合を52質量%以上80質量%以下と多く配合し、銅リッチにしている。このように銅リッチにすることにより、接合完了後に、300〜640℃程度の高い凝固開始温度を有するSn−Cu合金を形成する。こうして形成される接合層は、耐熱性が大幅に向上し、再溶融及び接合強度の低下を防止することができる。このため、特に200℃以上の高温雰囲気に晒される電子部品等の実装に用いられる高温接合用材料として好適に用いることができる。
接合用粉末中の銅の含有割合が下限値未満では、被覆層のSnがSn相として残存し、Cu−Snの金属間化合物相のみからなる接合層を形成できない。この結果、接合層には十分な耐熱性が得られず、200℃以上の高温雰囲気での使用の際にSn成分の溶融が起こり、高温接合用材料として適しない。また銅の含有割合が上限値を超えると、被覆層のSnが少なくなり過ぎ、溶融するSn相を確保することが難しく、溶融不良を起こし、接合不良を発生する。
また、接合用粉末中の錫の含有割合は、粉末中の上記銅以外の残部、即ち接合用粉末の全体量100質量%に対して20質量%以上48質量%以下、好ましくは30質量%以上44質量%以下である。錫の含有割合が下限値未満では、接合時において、溶融する錫が不足し、溶融不良を起こし、接合不良を発生する。また錫の含有割合が上限値を超えると、結果的に銅の含有割合が少なくなり、接合層にSn成分が残留し耐熱性が低下し、200℃以上の高温雰囲気下において基板等との接合強度が低下する。
また、本発明の接合用粉末10は、平均粒径が1μm以上30μm以下である。接合用粉末の平均粒径を30μm以下に限定したのは、30μmを超えると、接合パターン表面を接合用ペーストで印刷する場合に塗布ムラが生じ、パターン全面を均一に印刷できないという不具合を生じるからである。また1μm以上に限定したのは、1μm未満になると、比表面積が高くなり、粉末の表面酸化層の影響により接合用粉末の溶融性が低下する傾向があるためである。接合用粉末の平均粒径は3μm以上20μm以下の範囲とするのが好ましい。なお、本明細書において、粉末の平均粒径とは、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置(堀場製作所社製、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950)にて測定した体積累積中位径(Median径、D50)をいう。
〔接合用粉末の製造方法〕
続いて、上記本発明の接合用粉末を製造する方法について説明する。先ず、水に、CuSn粉末を添加して、好ましくは分散剤も一緒に添加して、混合することにより、第1分散液を調製する。水としては、イオン交換水、蒸留水などの純水、又は超純水が挙げられる。分散剤としては、セルロース系、ビニル系、多価アルコール等が挙げられ、その他にゼラチン、カゼイン等を用いることができる。上記CuSn粉末は、アトマイズ法により製造した後、この粉末を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で50〜100℃の温度で粉末全体がCuSn相になるまで加熱した後、0.5μm以上15μm以下の平均粒径を有するように分級して得られる。またこれに限らず、湿式逐次析出法で、塩化銅(II)及び塩化錫(II)の溶解液に還元剤を加えて銅イオンを還元して中心核を作り、その周囲に錫イオンを還元して被覆層を形成して粉末を作った後、この粉末を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で50〜100℃の温度で粉末全体がCuSn相になるまで加熱した後、0.5μm以上15μm以下の平均粒径を有するようにこのCuSn粉末を分級して得てもよい。第1分散液中のCuSn粉末の濃度は2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。下限値を2質量%とするのは、2質量%未満でも性能に問題はないけれども、2質量%まで高濃度化しても品質に差異がなく生産性の観点から好ましいからである。また上限値を10質量%にするのは、10質量%を越えると粉末の凝集が認められ、ペースト印刷時に膜均一性が劣るためである。
CuSn粉末の平均粒径を0.5μm以上15μm以下に限定するのは、この下限値未満では、接合用粉末の平均粒径が1μm未満になり易く、上述した不具合を生じ、また接合用粉末を構成する銅の含有量52質量%を超えることが困難になる。また上限値を超えると、接合用粉末の平均粒径が30μmを超え易くなり、上述した不具合を生じる。CuSn粉末の平均粒径は2.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
次いで、CuSn粉末が分散した第1分散液に、銅の金属塩と第1還元剤を同時に添加混合する(以下、この混合液を第2分散液という。)。この場合に第1分散液に添加する銅の金属塩の割合は、後述する錫の添加量を考慮して、接合用粉末製造後に、銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下の範囲になるように調整する。銅の金属塩としては、塩化銅(II)、硫酸銅(II)又は酢酸銅等が挙げられる。第1還元剤としては、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン等のホウ素水素化物、ヒドラジン等の窒素化合物、3価のチタンイオンや2価のクロムイオン等の金属イオン等、ホルマリンが挙げられる。銅の金属塩が第1分散液に溶解して銅イオンが生成される。この銅イオンは第1還元剤により還元される。これにより析出した銅が上記CuSn粉末を被覆した粉末(以下、銅被覆粉末という。)が第2分散液中に形成される。
次に、銅被覆粉末が分散した第2分散液をデカンテーション、遠心分離機などにより固液分離し、回収した固形分を水又はpHを0.5〜2に調整した塩酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液、或いはメタノール、エタノール、アセトン等で洗浄する。洗浄後は、再度固液分離して固形分を回収する。洗浄から固液分離までの工程を、好ましくは2〜5回繰り返した後、回収した固形分の銅被覆粉末を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で15〜80℃の温度で30〜120分間乾燥した後、乾燥した銅被覆粉末を水に分散させて第3分散液を調製する。銅被覆粉末の分散性を高めるために、分散剤を用いることが好ましい。分散剤は、第1分散液の調製時に用いたものと同一又は異なるものが用いられる。第3分散液中の銅被覆粉末の濃度は5〜15質量%であることが好ましい。下限値を5質量%にするのは、5質量%未満では銅被覆粉末に被覆される錫の均一性が低下するためである。また上限値を15質量%にするのは、15質量%を越えると粉末の凝集が認められペースト印刷時に膜均一性が劣るためである。
続いて、銅被覆粉末が分散した第3分散液に、錫の金属塩と第2還元剤を同時に添加混合する(以下、この混合液を第4分散液という。)。この場合に第3分散液に添加する錫の金属塩の割合は、接合用粉末製造後に、錫の含有割合が20質量%以上48質量%以下の範囲になるように調整する。錫の金属塩としては、塩化錫(II)、硫酸錫(II)、酢酸錫(II)、シュウ酸錫(II)等が挙げられる。第2還元剤としては、前述した第1還元剤と同一又は異なる還元剤が用いられる。錫の金属塩が第3分散液に溶解して錫イオンが生成される。この錫イオンは第2還元剤により還元される。これにより析出した錫が上記銅被覆粉末を被覆して接合用粉末前駆体が第4分散液中に形成される。
更に続いて、接合用粉末前駆体が分散した第4分散液をデカンテーション、遠心分離機などにより固液分離し、必要に応じて回収した固形分を水又はpHを0.5〜2に調整した塩酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液、或いはメタノール、エタノール、アセトン等で洗浄する。洗浄後は、再度固液分離して固形分を回収する。洗浄から固液分離までの工程を、好ましくは2〜5回繰り返した後、回収した固形分を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で−20〜5℃の温度で120〜600分間乾燥して、接合用粉末を得る。
〔接合用ペースト及びその調製方法〕
以上の工程により、得られた本発明の接合用粉末は、接合用フラックスと混合してペースト化して得られる接合用ペーストの材料として好適に用いられる。接合用ペーストの調製は、接合用粉末と接合用フラックスとを所定の割合で混合してペースト化することにより行われる。接合用ペーストの調製に用いられる接合用フラックスは、特に限定されないが、溶剤、ロジン、チキソ剤及び活性剤等の各成分を混合して調製されたフラックスを用いることができる。
上記接合用フラックスの調製に好適な溶剤としては、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、α−テルピネオール等の沸点が180℃以上である有機溶剤が挙げられる。また、ロジンとしては、ガムロジン、水添ロジン、重合ロジン、エステルロジン等が挙げられる。
また、チキソ剤としては、硬化ひまし油、脂肪酸アマイド、天然油脂、合成油脂、N,N’−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、12−ヒドロキシステアリン酸、1,2,3,4−ジベンジリデン−D−ソルビトール及びその誘導体等が挙げられる。
また、活性剤としては、ハロゲン化水素酸アミン塩が好ましく、具体的には、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、エタノールアミン、ブチルアミン、アミノプロパノール、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウレルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、エチルヘキシルアミン、エトキシプロピルアミン、エチルヘキシルオキシプロピルアミン、ビスプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、アニリン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、3−アミノ−1−プロペン、イソプロピルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン等のアミンの塩化水素酸塩又は臭化水素酸塩が挙げられる。
接合用フラックスは、上記各成分を所定の割合で混合することにより得られる。フラックス全体量100質量%中に占める溶剤の割合は30〜60質量%、チキソ剤の割合は1〜10質量%、活性剤の割合は0.1〜10質量%とするのが好ましい。溶剤の割合が下限値未満では、フラックスの粘度が高くなりすぎるため、これを用いた接合用ペーストの粘度も応じて高くなり、接合用粉末の充填性低下や塗布ムラが多発する等、印刷性が低下する不具合を生じる場合がある。一方、上限値を越えるとフラックスの粘度が低くなりすぎるため、これを用いた接合用ペーストの粘度も応じて低くなることから、接合用粉末とフラックス成分が沈降分離する不具合を生じる場合がある。また、チキソ剤の割合が下限値未満では、接合用ペーストの粘度が低くなりすぎるため、接合用粉末とフラックス成分が沈降分離するという不具合を生じる場合がある。一方、上限値を越えると接合用ペーストの粘度が高くなりすぎるため、接合用粉末の充填性や塗布ムラ等の印刷性低下という不具合を生じる場合がある。また、活性剤の割合が下限値未満では、接合用粉末が溶融せず、十分な接合強度が得られないという不具合を生じる場合があり、一方、上限値を越えると保管中に活性剤が接合用粉末と反応し易くなるため、接合用ペーストの保存安定性が低下するという不具合を生じる場合がある。この他、接合用フラックスには、粘度安定剤を添加しても良い。粘度安定剤としては、溶剤に溶解可能なポリフェノール類、リン酸系化合物、硫黄系化合物、トコフェノール、トコフェノールの誘導体、アルコルビン酸、アルコルビン酸の誘導体等が挙げられる。粘度安定剤は、多すぎると接合用粉末の溶融性が低下する等の不具合が生じる場合があるため、10質量%以下とするのが好ましい。
接合用ペーストを調製する際の接合用フラックスの混合量は、調製後のペースト100質量%中に占める該フラックスの割合が5〜30質量%になる量にするのが好ましい。下限値未満ではフラックス不足でペースト化が困難になり、一方、上限値を越えるとペースト中のフラックスの含有割合が多すぎて金属の含有割合が少なくなってしまい、接合用粉末の溶融時に所望のサイズの接合バンプを得るのが困難になるからである。
この接合用ペーストは、上記本発明の接合用粉末を材料としているため、接合時の溶融が速く、溶融性に優れる一方、接合完了後は、溶融する接合用粉末が融点の高い金属間化合物を形成し、耐熱性が上昇するため、熱による再溶融が起こりにくい。このため、本発明の接合用ペーストは、特に200℃以上の高温雰囲気に晒される電子部品等の実装に好適に用いることができる。
〔接合用ペーストを用いた電子部品の実装方法と接合体〕
上記方法で調製された接合用ペーストを用いてシリコンチップ、LEDチップ等の電子部品を各種放熱基板、FR4(Flame Retardant Type 4)基板、コバール等の基板に実装するには、ピン転写法にて上記基板の所定位置に接合用ペーストを転写するか、又は印刷法により所定位置に接合用ペーストを印刷する。次いで、転写又は印刷されたペースト上に電子部品であるチップ素子を搭載する。この状態で、接合炉にて窒素雰囲気中、従来の昇温速度より高速の1〜20℃/secの昇温速度にて、最高温度250〜400℃の温度で、30秒間〜120分間保持して、接合用粉末を接合する。場合によっては、チップと基板とを加圧しながら接合してもよい。これにより、チップ素子と基板とを接合させて接合体を得て、電子部品を基板に実装する。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
アトマイズ法により製造したCuSn組成の金属粉末20kgを真空加熱炉において80℃で6時間加熱処理してCuSn金属間化合物とした。これを風力分級処理することにより平均粒径0.5μmのCuSn金属間化合物粉末を50g以上得た。このCuSn金属間化合物粉末50gを、イオン交換水1000mLに分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース1gを溶解した溶液に、添加混合して第1分散液を調製した。
この第1分散液に、硫酸銅5水和物(CuSO・5HO)を490gと37質量%ホルムアルデヒド水溶液(35質量%HCHOaq)を320g投入し、60℃で10時間加熱撹拌することで、銅被覆粉末を作製した。次に、銅被覆粉末が分散した第2分散液を3時間静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去して固液分離し、回収した固形分をイオン交換水1000gで洗浄する。洗浄後は、再度3時間静置して、デカンテーションにより固液分離して固形分を回収する。洗浄から固液分離までの工程を、3回繰り返した後、回収した固形分の銅被覆粉末を真空雰囲気下で50℃の温度で60分間乾燥し、乾燥した銅被覆粉末175g超を得た。乾燥した銅被覆粉末170gを1.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解したイオン交換水1500gに分散させて第3分散液を調製した。
続いて、銅被覆粉末が分散した第3分散液に、塩化第一錫2水和物(Sn(II)Cl・2HO)を240gを撹拌溶解し、更に2.1mol濃度の2価のクロムイオン水溶液(2.1mol Cr(II)aq)を1200mL投入撹拌し、析出した錫が上記銅被覆粉末を被覆した接合用粉末前駆体を第4分散液中に形成させた。更に続いて、接合用粉末前駆体が分散した第4分散液を2時間静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去して固液分離し、回収した固形分をイオン交換水1500gで洗浄した。洗浄後は、再度2時間静置して、デカンテーションにより固液分離して固形分を回収した。洗浄から固液分離までの工程を、3回繰り返した後、回収した固形分を真空雰囲気下で0℃で300分間乾燥して接合用粉末250g超を得た。
<比較例1>
アトマイズ法により製造したCu粉末20kgを風力分級処理することにより平均粒径8.2μmのCu粉末を50g以上得た。このCu粉末50gを、イオン交換水1000mLに分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース1gを溶解した溶液に、添加混合して第1分散液を調製した。
続いて、第1分散液に、塩化第一錫2水和物(Sn(II)Cl・2HO)を64gを撹拌溶解し、更に2.1mol濃度の2価のクロムイオン水溶液(2.1mol Cr(II)aq)を320mL投入撹拌し、析出した錫が上記Cu粉末を被覆した接合用粉末前駆体を第2分散液中に形成させた。
更に続いて、接合用粉末前駆体が分散した第2分散液を2時間静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去して固液分離し、回収した固形分をイオン交換水1000gで洗浄した。洗浄後は、再度2時間静置して、デカンテーションにより固液分離して固形分を回収した。洗浄から固液分離までの工程を、3回繰り返した後、回収した固形分を真空雰囲気下で0℃で300分間乾燥して接合用粉末80g超を得た。
<比較例2>
アトマイズ法により製造したCu粉末20kgを風力分級処理することにより平均粒径10μmのCu粉末を100g以上得た。一方、アトマイズ法により製造したSn粉末20kgを風力分級処理することにより平均粒径10μmのSn粉末を100g以上得た。上記平均粒径10μmのCu粉末60gと上記平均粒径10μmのSn粉末40gを混合し比較例2の接合用粉末を得た。
<実施例2〜25、比較例3〜6>
以下の表1及び表2に示すように、平均粒径が異なるCuSn粉末を用いるか、又はCuSn粉末の添加量、塩化銅(II)及び塩化錫(II)の添加量を調整することにより、接合用粉末100質量%中に含まれる銅の割合を変更したこと、接合用粉末の平均粒径を所定の粒径に制御したこと以外は、実施例1と同様にして接合用粉末を得た。
<比較例7>
特許文献3の実施例1に準じた方法で接合用粉末を作製した。即ち、先ず、水50mLに塩化銅(II)を3.45×10−4mol、塩化錫(II)を2.62×10−2mol加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し、溶解液を調製した。この溶解液を塩酸にてpHを0.5に調整した後、分散剤としてポリビニルアルコール500(平均分子量が500のポリビニルアルコール)を0.5g加え、更に回転速度300rpmにて10分間攪拌した。次いで、この溶解液にpHを0.5に調整した1.58mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mLを、添加速度50mL/secにて加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌して各金属イオンを還元し、液中に金属粉末が分散する分散液を得た。
この分散液を60分間静置して生成した金属粉末を沈降させた後、上澄み液を捨て、ここに水100mLを加えて回転速度300rpmにて10分間攪拌する操作を4回繰返し、洗浄を行った。その後、エチレングリコール100mLを加えて分散させ、回転速度300rpmにて攪拌しながら120℃で30分加熱を行った。加熱後、再び分散液を60分間静置して加熱した金属粉末を沈降させた後、上澄み液を捨て、ここに水100mLを加えて回転速度300rpmにて10分間攪拌する操作を4回繰返し、洗浄を行った。最後にこれを真空乾燥機にて乾燥することにより、金属間化合物CuSnを中心核、Snを被覆層とする接合用粉末を得た。
<比較例8>
特許文献4の比較例2に準じた方法で接合用粉末を作製した。即ち、先ず、水50mLに塩化銅(II)を7.48×10−2mol、塩化錫(II)を2.56×10−2mol加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し、溶解液を調製した。この溶解液を塩酸にてpHを0.5に調整した後、分散剤としてポリビニルアルコール500(平均分子量が500のポリビニルアルコール)を0.5g加え、更に回転速度300rpmにて10分間攪拌した。次いで、この溶解液にpHを0.5に調整した1.58mol/Lの2価クロムイオン水溶液400mLを、添加速度50mL/secにて加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌して各金属イオンを還元し、液中に金属粉末が分散する分散液を得た。
この分散液を60分間静置して生成した金属粉末を沈降させた後、上澄み液を捨て、ここに水100mLを加えて回転速度300rpmにて10分間攪拌する操作を4回繰返し、洗浄を行った。その後、エチレングリコール100mLを加えて分散させ、回転速度300rpmにて攪拌しながら120℃で30分加熱を行った。加熱後、再び分散液を60分間静置して加熱した金属粉末を沈降させた後、上澄み液を捨て、ここに水100mLを加えて回転速度300rpmにて10分間攪拌する操作を4回繰返し、洗浄を行った。最後にこれを真空乾燥機にて乾燥することにより、Cu及び金属間化合物CuSn、CuSnを中心核、Snを被覆層とする接合用粉末を得た。
<比較試験及び評価>
実施例1〜25及び比較例1〜8で得られた接合用粉末について、次に述べる方法により、接合用粉末を構成する金属粒子の構造、接合用粉末の平均粒径、組成の分析又は測定を行った。これらの結果を以下の表1及び表2に示す。また、これらの接合用粉末を用いて接合用ペーストをそれぞれ調製し、接合時の最大保持温度を250℃と300℃に変えて接合体をそれぞれ作製した後の各接合体について、200℃における接合強度と−40℃〜150℃間の冷熱サイクル後の接合強度を評価した。また接合層に含まれる相を次の方法により測定した。これらの結果を以下の表3〜表6に示す。
Figure 0006645318
Figure 0006645318
(1) 接合用粉末の構造分析その1:粉末X線回折装置(リガク社製:RINT Ultima+/PC)にて、接合用粉末の結晶構造がCu相、CuSn相、CuSn相又はSn相であるかを同定する構造分析を行った。
(2) 接合用粉末の構造分析その2:集束イオンビーム(Forcused Ion Beam:FIB)により、接合用粉末を断面加工し、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)にて、接合用粉末の中心核と被覆層の各元素の同定及び定量をそれぞれ行った。
(3) 接合用粉末の平均粒径:レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置(堀場製作所社製、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950)にて粒径分布を測定し、その体積累積中位径(Median径、D50)を接合用粉末の平均粒径とした。
(4) 接合用粉末の組成:誘導結合プラズマ発光分光分析(島津製作所社製 ICP発光分析装置:ICPS−7510)により金属元素含有量を測定した。
(5) 接合強度:溶剤として50質量%のジエチレングリコールモノヘキシルエーテルと、ロジンとして46質量%の重合ロジン(軟化点95℃)と、活性剤としてシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩1.0質量%と、チキソ剤として硬化ひまし油3.0質量%とを混合してフラックスを調製した。次に、このフラックスと、実施例1〜25及び比較例1〜8で得られた接合用粉末とを、フラックスを12質量%、接合用粉末を88質量%の割合で混合して接合用ペーストをそれぞれ調製した。
3mm□の開口部を有する厚さ50μmのメタルマスクとメタルスキージを用いて、銅板上に上記調製したペーストを印刷した。続いて、印刷されたペースト上に、裏面がAuスパッタリングされた2.5mm□のシリコンチップ素子を搭載した。更に接合炉(SIKAMA社製 Falcon8500)にて窒素雰囲気中、5℃/secで昇温し、所定の最大保持温度で60秒間加熱処理し、シリコンチップ素子と銅板とを接合させることにより、接合サンプルを得た。なお、上記接合時の最大保持温度を250℃と300℃の異なる温度に設定し、実施例又は比較例ごとにそれぞれ2つずつ接合サンプルを得た。
(5-1) 200℃における接合強度
上記接合した銅板とシリコンチップ素子との接合強度について、室温及び200℃での接合シェア強度をそれぞれ測定した。室温における接合シェア強度を100としたときの200℃での接合シェア強度から相対的シェア強度を求めた。表中、「優」は、相対的シェア強度が95以上であった場合を示し、「良」は、95未満から80以上であった場合を示し、「可」は、80未満から60以上であった場合を示し、「不可」は、60未満であった場合を示す。
(5-2) −40℃〜150℃間の冷熱サイクル後の接合強度
上記接合した銅板とシリコンチップ素子との接合強度について、接合直後の室温における接合シェア強度を100としたときに、−40℃〜150℃の温度範囲で1000サイクル繰返し冷熱処理した後の室温における接合シェア強度を測定し、相対的シェア強度を求めた。表中、「優」は、相対的シェア強度が95以上であった場合を示し、「良」は、95未満から90以上であった場合を示し、「可」は、90未満から85以上であった場合を示し、「不可」は、85未満であった場合を示す。
(6) 接合層に含まれる相の構造解析
X線回折装置(リガク社製:RINT Ultima+/PC)にて、接合サンプル内の接合層の結晶構造がCu相、CuSn相、CuSn相又はSn相であるかを同定する構造分析を行った。
Figure 0006645318
Figure 0006645318
Figure 0006645318
Figure 0006645318
表3〜表6から実施例1〜25と比較例1〜8とを比較すると次のことが分かった。
(1) 接合用粉末の構造
中心核がCuであって被覆層がSnの単一層で構成された比較例1の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu相とCuSn相とCuSn相とからなるため、200℃での接合強度が86又は90と高く、200℃での接合強度の評価判定が全て「良」であった。その理由は、接合層にはCuが残存しても、200℃の条件で接合強度を大幅に低下させるSnは消滅しており、最も融点の低い構成材でも融点が415℃のCuSnであり、高温下でも接合強度を発揮したことによると考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は80又は82と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、冷熱サイクルを繰り返すと接合層に残存していたCuとCuSnが反応してCuSnを形成するが、CuSnは高密度であるため、反応に伴い接合層内部に空隙が発生し接合強度は低下するためと考えられる。
またCu粉末とSn粉末を混合して作製された比較例2の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu相とCuSn相とCuSn相とSn相からなるため、200℃での接合強度が45又は50と低く、200℃での接合強度の評価判定は全て「不可」であった。その理由は、接合層にはCuとSnが残存し、CuとCuSnの2相、又はCuSnとCuSnの2相の金属間化合物のみからなる接合層を形成できず、特に高温耐性の乏しいSnが残存しているためと考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は72又は75と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、比較例1の冷熱サイクル後の接合強度が低い理由と同じと考えられる。
更に中心核がCu、CuSn、CuSnからなり被覆層がSnの単一層で構成された比較例8の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu相とCuSn相とCuSn相とSn相からなるため、200℃での接合強度が55又は56と低く、200℃での接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、比較例2の200℃での接合強度が低い理由と同じと考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は84又は79と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、比較例1の冷熱サイクル後の接合強度が低い理由と同じと考えられる。
(2) 接合用粉末の平均粒径
平均粒径が0.9μmである比較例5の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCuSn相とCuSn相からなるものの、接合用粉末の比表面積が高くなって粉末の表面酸化層の影響により、溶融不良を起こし、200℃での接合強度は接合不良であって、200℃での接合強度の評価判定が全て「不可」であった。一方、冷熱サイクル後の接合強度は測定不能であって、評価判定ができなかった。
平均粒径が32.0μmである比較例6の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCuSn相とCuSn相とSn相からなるため、200℃での接合強度が51又は59と低く、200℃での接合強度の評価判定は全て「不可」であった。その理由は、接合層にはSnが残存し、CuとCuSnの2相、又はCuSnとCuSnの2相の金属間化合物のみからなる接合層を形成できず、特に高温耐性の乏しいSnが残存しているためと考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は73又は80と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、比較例1の冷熱サイクル後の接合強度が低い理由と同じと考えられる。
(3) 銅(Cu)の含有割合
Cuの含有割合が50質量%である比較例3の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCuSn相とCuSn相とSn相からなるため、200℃での接合強度が55又は56と低く、200℃での接合強度の評価判定は全て「不可」であった。その理由は、比較例6の200℃での接合強度が低い理由と同じと考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は76又は80と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、比較例1の冷熱サイクル後の接合強度が低い理由と同じと考えられる。
またCuの含有割合が0.7質量%である比較例7の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCuSn相とSn相からなるため、200℃での接合強度が30と低く、200℃での接合強度の評価判定は全て「不可」であった。その理由は、比較例6の200℃での接合強度が低い理由と同じと考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は81又は83と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、高温耐性の乏しいSnが多量に残存しているためと考えられる。
更にCuの含有割合が85質量%である比較例4の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu相とCuSn相からなり、CuとCuSnの2相の金属間化合物のみからなる接合層を形成可能であったが、被覆層のSnが少なくなり過ぎたため、溶融不良を起こし、200℃での接合強度は接合不良であって、200℃での接合強度の評価判定が全て「不可」であった。一方、冷熱サイクル後の接合強度は測定不能であって、評価判定ができなかった。
これに対して、中心核がCuSnからなり第1被覆層がCu、第2被覆層がSnの二層で構成され、接合用粉末の平均粒径が1〜30μmの範囲にあり、かつCuの含有割合が52〜80質量%の範囲にある実施例1〜25では、従来の遷移的液相焼結接合法で必要とされる温度と時間よりも低い温度と短い250℃又は300℃で60秒間で接合しても接合層に含まれる相がCu相とCuSn相の2相の組合せからなるか、又はCuSn相とCuSn相とからなるため、200℃での接合強度が向上するとともに、冷熱サイクル後の接合強度も向上し、これらの接合強度の評価判定は全て「可」、「良」又は「優」と良好な結果が得られた。
本発明は、電子部品の実装、特に200℃以上の高温雰囲気に晒される電子部品の実装に好適に利用できる。
10 接合用粉末
11 中心核(CuSn)
12 被覆層
12a 第1被覆層(Cu)
12b 第2被覆層(Sn)

Claims (4)

  1. 中心核と前記中心核を被覆する被覆層で構成される接合用粉末において、
    前記中心核が銅と錫との金属間化合物であるCu3Snからなり、前記被覆層が前記中心核から順に銅からなる第1被覆層と錫からなる第2被覆層の二層により構成され、前記接合用粉末の平均粒径が1μm以上30μm以下であり、前記接合用粉末の全体量100質量%に対して前記銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下であることを特徴とする接合用粉末。
  2. 平均粒径が0.5μm以上15μm以下のCu3Sn粉末を水に分散させて第1分散液を得る工程と、
    銅の金属塩と第1還元剤を同時に前記第1分散液に添加混合して前記銅の金属塩が溶解して生成される銅イオンが前記第1還元剤で還元されることにより析出した銅が前記Cu3Sn粉末を被覆して形成された銅被覆粉末を得る工程と、
    前記銅被覆粉末が分散した第2分散液を固液分離し、前記固液分離した固形分の銅被覆粉末を乾燥する工程と、
    前記乾燥した銅被覆粉末を水に分散させて第3分散液を得る工程と、
    錫の金属塩と第2還元剤を同時に前記第3分散液に添加混合して前記錫の金属塩が溶解して生成される錫イオンが前記第2還元剤で還元されることにより析出した錫が前記銅被覆粉末を被覆して形成された接合用粉末前駆体を得る工程と、
    前記接合用粉末前駆体が分散した第4分散液を固液分離し、前記固液分離した固形分の接合用粉末を乾燥する工程と
    を含む接合用粉末の製造方法であって、
    前記接合用粉末は、平均粒径が1μm以上30μm以下であり、前記接合用粉末の全体量100質量%に対して前記銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下であることを特徴とする接合用粉末の製造方法。
  3. 請求項1記載の接合用粉末又は請求項2記載の方法で製造された接合用粉末と接合用フラックスを混合して接合用ペーストを製造する方法。
  4. 請求項3記載の方法で製造された接合用ペーストを用いて電子部品を実装する方法。
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