JP6645318B2 - 接合用粉末及びこの粉末の製造方法並びにこの粉末を用いた接合用ペーストの製造方法 - Google Patents
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本発明の接合用粉末は、図1に示すように、中心核11と中心核11を被覆する被覆層12で構成され、この中心核11が銅と錫との金属間化合物であるCu3Snからなり、被覆層12が中心核から順に銅からなる第1被覆層11aと錫からなる第2被覆層12bの二層により構成される。そして本発明の接合用粉末は、その全体量100質量%に対して銅の含有割合は52質量%以上80質量%以下、好ましくは56質量%以上70質量%以下である。
続いて、上記本発明の接合用粉末を製造する方法について説明する。先ず、水に、Cu3Sn粉末を添加して、好ましくは分散剤も一緒に添加して、混合することにより、第1分散液を調製する。水としては、イオン交換水、蒸留水などの純水、又は超純水が挙げられる。分散剤としては、セルロース系、ビニル系、多価アルコール等が挙げられ、その他にゼラチン、カゼイン等を用いることができる。上記Cu3Sn粉末は、アトマイズ法により製造した後、この粉末を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で50〜100℃の温度で粉末全体がCu3Sn相になるまで加熱した後、0.5μm以上15μm以下の平均粒径を有するように分級して得られる。またこれに限らず、湿式逐次析出法で、塩化銅(II)及び塩化錫(II)の溶解液に還元剤を加えて銅イオンを還元して中心核を作り、その周囲に錫イオンを還元して被覆層を形成して粉末を作った後、この粉末を真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で50〜100℃の温度で粉末全体がCu3Sn相になるまで加熱した後、0.5μm以上15μm以下の平均粒径を有するようにこのCu3Sn粉末を分級して得てもよい。第1分散液中のCu3Sn粉末の濃度は2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。下限値を2質量%とするのは、2質量%未満でも性能に問題はないけれども、2質量%まで高濃度化しても品質に差異がなく生産性の観点から好ましいからである。また上限値を10質量%にするのは、10質量%を越えると粉末の凝集が認められ、ペースト印刷時に膜均一性が劣るためである。
以上の工程により、得られた本発明の接合用粉末は、接合用フラックスと混合してペースト化して得られる接合用ペーストの材料として好適に用いられる。接合用ペーストの調製は、接合用粉末と接合用フラックスとを所定の割合で混合してペースト化することにより行われる。接合用ペーストの調製に用いられる接合用フラックスは、特に限定されないが、溶剤、ロジン、チキソ剤及び活性剤等の各成分を混合して調製されたフラックスを用いることができる。
上記方法で調製された接合用ペーストを用いてシリコンチップ、LEDチップ等の電子部品を各種放熱基板、FR4(Flame Retardant Type 4)基板、コバール等の基板に実装するには、ピン転写法にて上記基板の所定位置に接合用ペーストを転写するか、又は印刷法により所定位置に接合用ペーストを印刷する。次いで、転写又は印刷されたペースト上に電子部品であるチップ素子を搭載する。この状態で、接合炉にて窒素雰囲気中、従来の昇温速度より高速の1〜20℃/secの昇温速度にて、最高温度250〜400℃の温度で、30秒間〜120分間保持して、接合用粉末を接合する。場合によっては、チップと基板とを加圧しながら接合してもよい。これにより、チップ素子と基板とを接合させて接合体を得て、電子部品を基板に実装する。
アトマイズ法により製造したCu3Sn組成の金属粉末20kgを真空加熱炉において80℃で6時間加熱処理してCu3Sn金属間化合物とした。これを風力分級処理することにより平均粒径0.5μmのCu3Sn金属間化合物粉末を50g以上得た。このCu3Sn金属間化合物粉末50gを、イオン交換水1000mLに分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース1gを溶解した溶液に、添加混合して第1分散液を調製した。
アトマイズ法により製造したCu粉末20kgを風力分級処理することにより平均粒径8.2μmのCu粉末を50g以上得た。このCu粉末50gを、イオン交換水1000mLに分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース1gを溶解した溶液に、添加混合して第1分散液を調製した。
アトマイズ法により製造したCu粉末20kgを風力分級処理することにより平均粒径10μmのCu粉末を100g以上得た。一方、アトマイズ法により製造したSn粉末20kgを風力分級処理することにより平均粒径10μmのSn粉末を100g以上得た。上記平均粒径10μmのCu粉末60gと上記平均粒径10μmのSn粉末40gを混合し比較例2の接合用粉末を得た。
以下の表1及び表2に示すように、平均粒径が異なるCu3Sn粉末を用いるか、又はCu3Sn粉末の添加量、塩化銅(II)及び塩化錫(II)の添加量を調整することにより、接合用粉末100質量%中に含まれる銅の割合を変更したこと、接合用粉末の平均粒径を所定の粒径に制御したこと以外は、実施例1と同様にして接合用粉末を得た。
特許文献3の実施例1に準じた方法で接合用粉末を作製した。即ち、先ず、水50mLに塩化銅(II)を3.45×10−4mol、塩化錫(II)を2.62×10−2mol加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し、溶解液を調製した。この溶解液を塩酸にてpHを0.5に調整した後、分散剤としてポリビニルアルコール500(平均分子量が500のポリビニルアルコール)を0.5g加え、更に回転速度300rpmにて10分間攪拌した。次いで、この溶解液にpHを0.5に調整した1.58mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mLを、添加速度50mL/secにて加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌して各金属イオンを還元し、液中に金属粉末が分散する分散液を得た。
特許文献4の比較例2に準じた方法で接合用粉末を作製した。即ち、先ず、水50mLに塩化銅(II)を7.48×10−2mol、塩化錫(II)を2.56×10−2mol加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し、溶解液を調製した。この溶解液を塩酸にてpHを0.5に調整した後、分散剤としてポリビニルアルコール500(平均分子量が500のポリビニルアルコール)を0.5g加え、更に回転速度300rpmにて10分間攪拌した。次いで、この溶解液にpHを0.5に調整した1.58mol/Lの2価クロムイオン水溶液400mLを、添加速度50mL/secにて加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌して各金属イオンを還元し、液中に金属粉末が分散する分散液を得た。
実施例1〜25及び比較例1〜8で得られた接合用粉末について、次に述べる方法により、接合用粉末を構成する金属粒子の構造、接合用粉末の平均粒径、組成の分析又は測定を行った。これらの結果を以下の表1及び表2に示す。また、これらの接合用粉末を用いて接合用ペーストをそれぞれ調製し、接合時の最大保持温度を250℃と300℃に変えて接合体をそれぞれ作製した後の各接合体について、200℃における接合強度と−40℃〜150℃間の冷熱サイクル後の接合強度を評価した。また接合層に含まれる相を次の方法により測定した。これらの結果を以下の表3〜表6に示す。
上記接合した銅板とシリコンチップ素子との接合強度について、室温及び200℃での接合シェア強度をそれぞれ測定した。室温における接合シェア強度を100としたときの200℃での接合シェア強度から相対的シェア強度を求めた。表中、「優」は、相対的シェア強度が95以上であった場合を示し、「良」は、95未満から80以上であった場合を示し、「可」は、80未満から60以上であった場合を示し、「不可」は、60未満であった場合を示す。
上記接合した銅板とシリコンチップ素子との接合強度について、接合直後の室温における接合シェア強度を100としたときに、−40℃〜150℃の温度範囲で1000サイクル繰返し冷熱処理した後の室温における接合シェア強度を測定し、相対的シェア強度を求めた。表中、「優」は、相対的シェア強度が95以上であった場合を示し、「良」は、95未満から90以上であった場合を示し、「可」は、90未満から85以上であった場合を示し、「不可」は、85未満であった場合を示す。
X線回折装置(リガク社製:RINT Ultima+/PC)にて、接合サンプル内の接合層の結晶構造がCu相、Cu3Sn相、Cu6Sn5相又はSn相であるかを同定する構造分析を行った。
中心核がCuであって被覆層がSnの単一層で構成された比較例1の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu相とCu3Sn相とCu6Sn5相とからなるため、200℃での接合強度が86又は90と高く、200℃での接合強度の評価判定が全て「良」であった。その理由は、接合層にはCuが残存しても、200℃の条件で接合強度を大幅に低下させるSnは消滅しており、最も融点の低い構成材でも融点が415℃のCu6Sn5であり、高温下でも接合強度を発揮したことによると考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は80又は82と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、冷熱サイクルを繰り返すと接合層に残存していたCuとCu6Sn5が反応してCu3Snを形成するが、Cu3Snは高密度であるため、反応に伴い接合層内部に空隙が発生し接合強度は低下するためと考えられる。
平均粒径が0.9μmである比較例5の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu3Sn相とCu6Sn5相からなるものの、接合用粉末の比表面積が高くなって粉末の表面酸化層の影響により、溶融不良を起こし、200℃での接合強度は接合不良であって、200℃での接合強度の評価判定が全て「不可」であった。一方、冷熱サイクル後の接合強度は測定不能であって、評価判定ができなかった。
Cuの含有割合が50質量%である比較例3の接合用粉末では、接合層に含まれる相がCu3Sn相とCu6Sn5相とSn相からなるため、200℃での接合強度が55又は56と低く、200℃での接合強度の評価判定は全て「不可」であった。その理由は、比較例6の200℃での接合強度が低い理由と同じと考えられる。一方、冷熱サイクル後の接合強度は76又は80と低くなったことから、この接合強度の評価判定が全て「不可」であった。その理由は、比較例1の冷熱サイクル後の接合強度が低い理由と同じと考えられる。
11 中心核(Cu3Sn)
12 被覆層
12a 第1被覆層(Cu)
12b 第2被覆層(Sn)
Claims (4)
- 中心核と前記中心核を被覆する被覆層で構成される接合用粉末において、
前記中心核が銅と錫との金属間化合物であるCu3Snからなり、前記被覆層が前記中心核から順に銅からなる第1被覆層と錫からなる第2被覆層の二層により構成され、前記接合用粉末の平均粒径が1μm以上30μm以下であり、前記接合用粉末の全体量100質量%に対して前記銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下であることを特徴とする接合用粉末。 - 平均粒径が0.5μm以上15μm以下のCu3Sn粉末を水に分散させて第1分散液を得る工程と、
銅の金属塩と第1還元剤を同時に前記第1分散液に添加混合して前記銅の金属塩が溶解して生成される銅イオンが前記第1還元剤で還元されることにより析出した銅が前記Cu3Sn粉末を被覆して形成された銅被覆粉末を得る工程と、
前記銅被覆粉末が分散した第2分散液を固液分離し、前記固液分離した固形分の銅被覆粉末を乾燥する工程と、
前記乾燥した銅被覆粉末を水に分散させて第3分散液を得る工程と、
錫の金属塩と第2還元剤を同時に前記第3分散液に添加混合して前記錫の金属塩が溶解して生成される錫イオンが前記第2還元剤で還元されることにより析出した錫が前記銅被覆粉末を被覆して形成された接合用粉末前駆体を得る工程と、
前記接合用粉末前駆体が分散した第4分散液を固液分離し、前記固液分離した固形分の接合用粉末を乾燥する工程と
を含む接合用粉末の製造方法であって、
前記接合用粉末は、平均粒径が1μm以上30μm以下であり、前記接合用粉末の全体量100質量%に対して前記銅の含有割合が52質量%以上80質量%以下であることを特徴とする接合用粉末の製造方法。 - 請求項1記載の接合用粉末又は請求項2記載の方法で製造された接合用粉末と接合用フラックスを混合して接合用ペーストを製造する方法。
- 請求項3記載の方法で製造された接合用ペーストを用いて電子部品を実装する方法。
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