JP2018166017A - 塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気記録媒体に加工された際に、ハンドリング性を保ちつつ、良好な磁気層を形成させることが可能な塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】2層以上の層構成を有する塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、磁性層を塗布する側の面をA面、他方の側の面をB面としたとき、前記A面の3次元中心線表面粗さSRa−Aが0.5〜10nmであり、前記B面についてナノインデンテーション法で測定した弾性率が1.5GPa以上4.5GPa以下である。
【選択図】なし
【解決手段】2層以上の層構成を有する塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、磁性層を塗布する側の面をA面、他方の側の面をB面としたとき、前記A面の3次元中心線表面粗さSRa−Aが0.5〜10nmであり、前記B面についてナノインデンテーション法で測定した弾性率が1.5GPa以上4.5GPa以下である。
【選択図】なし
Description
本発明は、塗布型磁気記録媒体用として好適に使用できるポリエステルフィルムに関する。
近年、データストレージやデジタルビデオテープ用等の磁気記録媒体においては、高密度化や高容量化が進んでいる。例えば、LTO(Linear Tape Open)やSDLT(Super Digital Linear Tape)等のリニア記録方式の磁気記録媒体では、1巻で7TBの高容量を有するものが開発されている。
高容量化のために、延伸倍率アップによるベースフィルムの高強度化、テープ幅方向の温度膨張係数や湿度膨張係数の最適化、添加粒子の小粒径化等、これまで数多くの検討がなされてきた(特許文献1〜5)。しかしながら、これらの技術を用いても1巻で7TBより高容量を有する磁気記録媒体用としては十分な特性が得られなかった。
これらの磁気記録媒体においては、高容量化を実現するために記録媒体磁性面の欠陥を最小限に抑制することが不可欠である。磁性面欠陥の代表例として、バックコート層の凹凸形状が転写することにより磁性面に発生する陥没が挙げられる。バックコート層は、磁気層と反対の面に設けられるものであり、主としてテープの走行性を向上させる役割を担う。この層は、磁気層が設けられる面と反対側の表面に、バックコート層を形成させる塗材を塗布してこれを乾燥させることで形成された塗膜である。生産工程におけるハンドリング性向上のために、バックコート層はある程度粗面であることが好ましいが、粗すぎるとロールに巻き取った後の後処理工程でバックコート層の突起が磁気層表面に転写し、ミッシングパルス(MP)のようなデータエラーの原因となる。バックコート層の凹凸はベースフィルムの寄与が大きいため、ベースフィルム平滑化の要求が高まっている。
磁気記録媒体の記録容量の増加に伴い、データエラー抑制に対する要求が高まっている。データエラーの代表であるミッシングパルス(MP)を低減させるためには、磁気層の欠陥を低減させることが不可欠である。磁気層欠陥の代表的原因として挙げられるのは、バックコート層の凹凸形状の転写である。バックコート層は生産工程でのハンドリング性向上のためにある程度粗面であることが好ましいが、粗すぎるとロールに巻き取った後の後処理工程でバックコート層の突起が磁気層表面に転写してしまう。バックコート層の凹凸は、支持体として用いられるベースフィルムの表面形状の寄与が大きいため、ベースフィルムの平滑化への要求が高まっている。一方で、ベースフィルムを平滑化すると、ハンドリング性が低下し、ベースフィルム生産工程の歩留まりが悪化するという課題があった。
後述する本発明の塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを用いると、ベースフィルム表面が従来同等の粗さであっても、フィルム表面の弾性率や硬さが低いことによってクッション作用が働き、磁気層への転写が最小限に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、2層以上の層構成を有する塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、磁性層を塗布する側の面をA面、他方の側の面をB面としたとき、前記A面の3次元中心線表面粗さSRa−Aが0.5〜10nmであり、前記B面についてナノインデンテーション法で測定した弾性率が1.5GPa以上4.5GPa以下である塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを特徴とする。
本発明によれば、磁気記録媒体に加工された際に、ハンドリング性を保ちつつ、良好な磁気層を形成させることが可能な塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムが提供される。
以下、本発明の塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの一実施形態について説明する。塗布型磁気記録媒体とは、製造過程において、支持体上に塗布された塗材(例えば磁気記録用の磁性粉を含有した分散体など)を乾燥させることにより塗膜を形成させる工程を有する磁気記録媒体である。
本発明の塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム(以下、単に「本発明のフィルム」と呼ぶことがある。)は、塗布型磁気記録媒体の支持体として好ましく用いられる。本発明のフィルムは磁気層を塗布しない側の面(B面)表面の押し込みに対する弾性率が低いことにより、磁気記録媒体の加工工程でB面側の凹凸形状が磁気層に転写しにくくなり、データエラーが少なく良好な電磁変換特性を得ることができる。
本発明のフィルムは磁性層を塗布する側の面をA面、他方の面をB面としたとき、前記B面についてナノインデンテーション法で測定した弾性率が1.5GPa以上4.5GPa以下であることを特徴とする。
磁気記録媒体の製造工程においては、支持体のフィルムの両面に磁気層、バックコート層をそれぞれ塗布した後、塗膜の硬化を行う。その際、ロールに巻き取られた状態で加熱を行うため、巻き取られたフィルムが応力緩和によって巻き締まり、ロールの径方向に応力が発生する。ロール径方向の応力によって、特にロール巻芯側では磁気層とバックコート層(B面)が強く圧縮される。その際、バックコート層(B面)側の表面に凹凸形状があると、磁気層表面にその凹凸が転写する。転写した凹凸は、磁気記録媒体としたときに、読み取りヘッドと磁気層の間隙を不安定にさせ、ミッシングパルスと呼ばれる出力低下に繋がり、磁気記録媒体の性能低下をもたらす。
磁気層への凹凸の転写を防ぐためには、バックコート層の凹凸を軽減することが有効である。バックコート層の凹凸は支持体として用いるフィルムの表面形状の影響を大きく受けるため、フィルムの表面を平滑にすることが有効である。しかしながら、フィルム表面を平滑にしすぎると、ハンドリング性が低下し、フィルム製造工程での歩留まりが低下する。したがって、B面表面は磁気層への転写が許容される範囲内で適度に粗面であることが好ましい。しかしながら、近年記録媒体の高容量化の要求が高まっており、フィルム製造工程の歩留まり維持と表面平滑性の両立が困難な状況となっている。
そこで、B面表面がハンドリング性を維持できる程度粗面でありながら、磁気記録媒体への加工時に、磁気層への転写が抑制される本発明のフィルムが有効である。本発明のフィルムは、B面表面の厚み方向の弾性率が低いことにより、磁気層と圧着してもB面表面からの転写が緩和される。本発明のフィルムにおけるナノインデンテーション法で測定したB面の弾性率は、1.5GPa以上4.5GPa以下である。弾性率は、耐キズ性といった観点から1.5GPa以上であることが好ましい。また、転写を抑制する観点から4.5GPa以下であることが好ましい。なお、耐キズ性と転写抑制のバランスから、3.0GPa以上4.5GPa以下であることが好ましく、3.0GPa以上4.0GPa以下であることがより好ましい。
本発明のフィルムにおいて、ナノインデンテーション法による弾性率を調節する手法はB面側の配向度を低くすることである。配向度を低くするためには、B面側に主として用いるポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂を添加すればよい。異種のポリマーが混合されると、ポリエステル鎖による微結晶形成が阻害され配向度が低下する。
塑性変形に対する抵抗力である硬さについても同様のことが言え、本発明のフィルムは、B面表面の厚み方向の弾性率が低いことにより、磁気層と圧着してもB面表面からの転写が緩和される。本発明のフィルムにおけるナノインデンテーション法で測定したB面の硬さは、0.1GPa以上0.5GPa以下であることが好ましい。硬さも、耐キズ性といった観点から0.1GPa以上であることが好ましい。また、転写を抑制する観点から0.5GPa以下であることが好ましい。なお、耐キズ性と転写抑制のバランスから、0.3GPa以上0.5GPa以下であることが好ましく、0.3GPa以上0.45GPa以下であることがより好ましい。
本発明に用いることができるポリエステルとしては、分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであれば特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを構成成分とすることが好ましい。
本発明では、外観、耐熱性、寸法安定性、経済性の点から、ポリエステルを構成するグリコール単位の60モル%以上がエチレングリコール由来の構造単位であり、ジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸由来の構造単位であることが好ましい。なお、ここで、ジカルボン酸単位(構造単位)あるいはジオール単位(構造単位)とは、重縮合によって除去される部分が除かれた2価の有機基を意味し、要すれば、以下の一般式で表される。
ジカルボン酸単位(構造単位): −CO−R−CO−
ジオール単位(構造単位): −O−R’―O−
(ここで、R、R’は二価の有機基)
なお、トリメリット酸単位やグリセリン単位など3価以上のカルボン酸あるいはアルコール並びにそれらの誘導体が含まれる場合は、3価以上のカルボン酸あるいはアルコール単位(構造単位)についても、同様に、重縮合によって除去される部分が除かれた3価以上の有機基を意味する。
ジオール単位(構造単位): −O−R’―O−
(ここで、R、R’は二価の有機基)
なお、トリメリット酸単位やグリセリン単位など3価以上のカルボン酸あるいはアルコール並びにそれらの誘導体が含まれる場合は、3価以上のカルボン酸あるいはアルコール単位(構造単位)についても、同様に、重縮合によって除去される部分が除かれた3価以上の有機基を意味する。
本発明に用いるポリエステルを与える、グリコールあるいはその誘導体としては、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。中でも、耐熱性、取り扱い性の点で、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。
また、本発明に用いるポリエステルを与えるジカルボン酸あるいはその誘導体としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体としてはたとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。中でも、耐熱性、取り扱い性の点で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および、それらのエステル化物が好ましく用いられる。
また本発明では、寸法安定性の低下を防ぐために、または配向度を調整するために、ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂(以下、耐熱性熱可塑性樹脂ということがある)を含有することが好ましい。耐熱性熱可塑性樹脂としては、ポリイミド系樹脂(ポリエーテルイミドを含む)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレートが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルとの親和性及び溶融成形性の観点から、ポリイミド系樹脂、特にポリエーテルイミドが好ましく例示される。
本発明のフィルムは、2層以上の層構成を有することが好ましい。これは、磁気記録媒体の支持体として用いたときに、一方の表面(A面)には優れた電磁変換特性を得るための平滑さを、他方の表面(B面)には製膜及び加工工程での優れた搬送性やテープの走行性を付与するための適度な粗さを両立させることが容易になるからである。
既に述べたように、本発明のフィルムを塗布型磁気記録媒体用支持体として用いる場合、表面A(A面)は、磁気層を設ける側の表面とされ、反対側の表面B(B面)は、バックコート層等を設ける、走行面側の表面となる。
表面A側(A面側)に磁性層を設ける場合、ポリエステルフィルムの3次元中心線表面粗さSRa−Aは、0.5〜10nmであることが好ましい。表面A(A面)のSRa−Aが0.5nm以上であれば、フィルム製造、加工工程等で、搬送ロール等との摩擦係数が大きくなることに伴う工程トラブルが抑制されるので好ましい。また、SRa−Aが10nm以下であれば、高密度記録の磁気テープとして用いる場合に、適切な電磁変換特性を維持できるので好ましい。表面A側に磁性層を設ける場合、SRa−Aの下限は、より好ましくは1nm、さらに好ましくは2nmであり、SRa−Aの上限は、より好ましくは9nm、さらに好ましくは8nmである。
一方、表面B側(B面側)にバックコート層を設ける場合、その3次元中心線表面粗さSRa−Bは、2〜30nmであることが好ましい。表面B(B面)のSRa−Bが2nm以上であれば、搬送ロール等との摩擦係数が小さくなり、工程トラブルの発生が抑制されるので好ましい。また、SRa−Bが30nm以下であれば、フィルムロールやパンケーキとして保管する際に、表面突起が反対側の表面に転写されることに伴う電磁変換特性の低下を抑制できるので好ましい。表面B側にバックコート層を設ける場合、SRa−Bの下限は、より好ましくは3nm、さらに好ましくは4nmであり、SRa−Bの上限は、より好ましくは20nm、さらに好ましくは15nmである。
SRaを上記の範囲とするには、層内に不活性粒子を添加することが好ましく、本発明において表面Aを構成する層Aに不活性粒子Iを用いる場合、その平均粒径dIは、0.04〜0.30μmであるのが好ましく、0.05〜0.15μmであるのがより好ましく、その含有量は、0.001〜0.30質量%であるのが好ましく、0.01〜0.25質量%であるのがより好ましい。磁気記録用媒体支持体においては、平均粒径が0.30μm以下の粒子を用いれば電磁特性の悪化を抑制できるので好ましい。一般に、添加する不活性粒子の平均粒径及び添加量を小さくするほどSRaが小さくなり、添加する不活性粒子の平均粒径及び添加量を大きくするほどSRaが大きくなる。
表面Bを構成する層Bに粒子を含有させる場合、その粒子は1種類であっても2種類以上であってもよい。層Bに含有させる最も平均粒径の大きい不活性粒子を不活性粒子IIとしたとき、その平均粒径dIIは、0.1〜1.0μmであるのが好ましく、0.4〜0.9μmであるのがより好ましく、その含有量は、0.002〜0.10質量%であるのが好ましく、0.005〜0.05質量%であるのがより好ましい。層Bにさらに不活性粒子IIIを含有させる場合、その平均粒径dIIIはdIIよりも小さく、dIIIは、0.05〜0.5μmであるのが好ましく、0.2〜0.4μmであるのがより好ましく、その含有量は、0.1〜1.0質量%であるのが好ましく、0.2〜0.4質量%であるのがより好ましい。
なお、本発明のフィルムでは、前述の通り2層であることが好ましいが、3層、4層、又はそれ以上の構成であってもよい。
本発明のフィルムに添加される不活性粒子としては、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等の有機系高分子粒子等を好ましく挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明のフィルムに添加される不活性粒子は、粒子径状及び粒子分布の均一なものが好ましく、その体積形状係数fが、0.3〜π/6であることが好ましく、0.4〜π/6であることがより好ましい。体積形状係数fは、次式で表される。
f=V/Dm3
ここで、Vは粒子体積(μm3)であり、Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
ここで、Vは粒子体積(μm3)であり、Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
なお、体積形状係数fは、粒子が球のときに最大のπ/6(=0.52)となる。不活性粒子は、必要に応じて、粗大粒子や介在物を除去するために濾過等を行われることが好ましい。また、不活性粒子の中でも、球状シリカは、単分散性に優れるためフィルムの表面突起の形成を容易に制御でき、本発明において好ましく用いられる。また、地肌補強の観点から、必要に応じて、一次粒径が0.005〜0.10μm、好ましくは0.01〜0.05μmのα型アルミナ、γ型アルミナ、δ型アルミナ、θ型アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタン粒子等から選ばれる不活性粒子を表面突起の生じない範囲でポリエステルフィルムの層に添加してもよい。ただし、B面側に地肌補強を目的として不活性粒子を添加すると、B面側の厚み方向の弾性率が高くなってしまい、本発明の範囲外となり得るため注意が必要である。
本発明のフィルムにおいて長手方向のヤング率は、4〜13GPaであることが好ましい。長手方向のヤング率が4GPa以上であれば、テープドライブ内での長手方向への張力によってフィルムが長手方向に伸び、この伸び変形によりフィルムが幅方向に収縮することによる記録トラックずれを抑制できるので好ましい。長手方向のヤング率の下限は、4.3GPaであるのがより好ましく、4.5GPaであるのがさらに好ましい。また、長手方向のヤング率が13GPa以下であれば、十分なヤング率が得られることにより、エッジダメージを抑制できるので好ましい。長手方向のヤング率の上限は、10GPaであるのがより好ましく、8GPaであるのがさらに好ましい。
本発明のフィルムにおいて幅方向のヤング率は、4〜13GPaであることが好ましい。幅方向のヤング率が4GPa以上であれば、エッジダメージを抑制できるので好ましい。幅方向のヤング率の下限は、5GPaであるのがより好ましく、6GPaであるのがさらに好ましい。また、幅方向のヤング率が13GPa以下であれば、十分な長手方向のヤング率が得られるので好ましい。幅方向のヤング率の上限は、11GPaであるのが好ましく、10GPaであるのがさらに好ましい。
なお、本発明において長手方向とは、一般的にMD方向と呼ばれる方向であって、ポリエステルフィルム製造工程時の長手方向と同じ方向を指す。また、本発明において幅方向とは、一般的にTD方向と呼ばれる方向であって、ポリエステルフィルム製造工程時の幅方向と同じ方向(MD方向と直交する方向)を指す。
また、本発明のフィルムの厚さは、2〜10μmであることが好ましい。フィルムの厚さが2μm以上であることにより、磁気記録媒体として必要なこしが得られるので好ましい。フィルムの厚さの下限は、3μmであるのが好ましく、4μmであるのがより好ましい。また、フィルムの厚さが10μm以下であることにより、テープ1巻あたりのテープ長さを十分に確保できるので、磁気テープの小型化、高容量化を実現でき好ましい。フィルムの厚さの上限は、8μmであるのが好ましく、6μmであるのがより好ましい。
本発明のフィルムは、例えば次のように製造される。以下、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた例を代表例として説明するが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。
ポリエステルに不活性粒子を含有させる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子Iを所定の割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加することを挙げられる。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成した際に得られる水ゾルやアルコールゾルを乾燥させることなくポリエステル重合完結前の任意段階で添加すると粒子の分散性が良好であり、フィルムの滑り性や電磁変換特性等を良好にすることができる。また、粒子の水スラリーを所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の二軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も有効な手法である。これらの方法により、粒子を含有したポリエステルペレットを調製する。
以上のようにして準備した、粒子を含有したポリエステルペレット、及び粒子等を実質的に含有しないポリエステルペレットを所定の割合で混合し、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、ポリマーをフィルターにより濾過する。
また、非常に薄い磁性層が塗布される塗布型の高密度磁気記録媒体用途においては、ごく小さな異物も磁気記録欠陥であるDO(ドロップアウト)の原因となるため、フィルターには例えば1.5μm以上の異物を95%以上捕集することのできる高精度の繊維焼結ステンレスフィルターを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状にポリマーを押し出し、キャスティングロール上でこのポリマーを冷却固化させて未延伸フィルムとする。すなわち、複数の押出機、複数のマニホールド又は合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて必要な層数を積層させ、口金からシートを押し出して、キャスティングロールで冷却させて未延伸フィルムを得る。この場合、背圧の安定化及び厚さ変動の抑制の観点からは、ポリマー流路にスタティックミキサーやギアポンプを設置することが有効である。
続いて、上記未延伸フィルムを長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。延伸工程は、特に限定されないが、各方向において2段階以上に分けて延伸することが好ましい。すなわち、再縦、再横延伸を行うことが高密度記録の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られやすいため好ましい。
延伸方法は、同時二軸延伸であっても、逐次二軸延伸であってもよい。同時二軸延伸においてはロールによる延伸を伴わないため、フィルム表面の局所的な加熱が発生せず、表面性が制御しやすく、延伸方法としてより好ましい。同時二軸延伸においては、未延伸フィルムを、まず長手方向及び幅方向に、延伸温度を例えば80〜160℃、好ましくは85〜130℃、さらに好ましくは90〜110℃として同時に延伸する。延伸温度を80℃以上とすることによりフィルムの破断を抑制できるので好ましく、延伸温度を160℃以下とすることにより磁気記録媒体として用いたときに十分な強度が得られるので好ましい。また、延伸ムラを防止する観点から、長手方向及び幅方向の合計延伸倍率は、例えば8〜30倍、好ましくは9〜25倍、さらに好ましくは10〜20倍とすることが好ましい。延伸倍率を8倍以上とすることにより、高密度磁気記録媒体用として十分な強度が得られるので好ましい。また、延伸倍率を30倍以下とすることにより、製造過程でフィルムが破れてしまうのを抑制できるので好ましい。高密度磁気記録媒体に必要な強度を得るとの観点からは、必要に応じて、好ましくは温度140〜210℃で、より好ましくは160〜200℃で、再度長手方向及び/又は幅方向に、好ましくは1.05〜1.8倍、より好ましくは1.2〜1.6倍で延伸を行うことが好ましい。延伸倍率が1.05倍以上であることにより十分な強度が得られるので好ましく、延伸倍率が1.8倍以下であることにより製造過程でフィルムが破れてしまうのを抑制できるので好ましい。その後、例えば180〜235℃で、好ましくは190〜220℃で、例えば0.5〜20秒間、好ましくは1〜15秒間熱固定を行う。熱固定温度が180℃以上であることにより、フィルムの結晶化が進んで構造を安定にできるので好ましい。また、熱固定温度を235℃以下とすることにより、ポリエステル非晶鎖部分の緩和が進むことに伴うヤング率の低下を抑制できるので、磁気記録媒体用途として十分な強度を得るとの観点から好ましい。その後長手方向及び/又は幅方向に0.5〜7.0%の弛緩処理を施す。
本発明のフィルムは、バックコートを施すB面側が適度に粗いことでフィルムおよびテープの走行性や滑り性を十分に確保し、ハンドリング性に優れる。したがって、ベースフィルムの製造工程での歩留まりの向上が期待される。一方で、B面側の表面の弾性率が低いことでクッション効果が期待され、バックコート層の凹凸が磁性層側に転写するのを防ぐことができる。このため、本発明のフィルムは、塗布型磁気記録媒体の支持体として好ましく用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、特に磁気記録媒体としての特性、並びに塗布型磁気記録媒体への加工性が良好であり、該用途のベース基材として好適に使用することができる。
具体的に好ましい用途としては、民生用、業務用を問わず、デジタルビデオカセット、データストレージ、DLT、LTO、デジタルAIT、AITターボ等のデジタルデータ記録方式の磁気テープ用ベースフィルムに好適に用いられ、特に、記録層としてメタル磁性体等の磁性金属薄膜を塗布せしめた、データストレージ用のベース基材として最も好ましく用いられる。
[物性の測定方法及び効果の評価方法]
本発明における特性値の測定方法及び効果の評価方法は次の通りである。
(1)フィルム全体の厚み(総厚み)、およびA層、B層の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いた。1点の測定に当たっては10枚を採取した試験片を全て重ねた状態で測定した。最終的に平均値を試験片の重ね合わせ枚数(10)で除した値をフィルム全体厚みとした。
本発明における特性値の測定方法及び効果の評価方法は次の通りである。
(1)フィルム全体の厚み(総厚み)、およびA層、B層の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いた。1点の測定に当たっては10枚を採取した試験片を全て重ねた状態で測定した。最終的に平均値を試験片の重ね合わせ枚数(10)で除した値をフィルム全体厚みとした。
また、A層、B層の厚みについては、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により20,000倍で観察した。TEMの切片厚さは約100nmとし、含有粒子径及び粒子濃度をもとに界面の観察結果から各層の厚みを評価した。
なお、上記による観察が困難な場合、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて評価した。表面からエッチングしながら、粒子又は耐熱性熱可塑性樹脂に起因する元素濃度のデプスプロファイルを測定し、各層の厚みを評価した。SIMSでの測定が難しい(例えば、シリコーン樹脂以外のポリマー粒子)場合は、表面をエッチング処理しながらフーリエ変換顕微赤外分光法(顕微FT−IR法)、あるいはX線光電分光法(XPS法)等を使用する。
(2)ナノインデンテーション弾性率
弾性率測定は、ナノインデンテーション法(連続剛性測定法)により行った。ナノインデンテーション法とは、押し込み試験中に圧子を微小振動させ、振動に対する応答振幅、位相差を時間の関数として取得し、押し込み深さの連続的変化に対応して、圧子除荷時の初期勾配を連続的に算出する方法である。下記の測定装置、測定条件で得られた硬さ−押し込み深さ線図における押し込み深さ=約90nm〜約110nm(弾性率)の領域のデータを平均して算出した。
・測定装置 :MTSシステムズ社製 超微小硬度計 Nanoindenter XP
・測定方法 :ナノインデンテーション法(連続剛性測定法)
・使用圧子 :ダイヤモンド製正三角錐圧子
・測定雰囲気 :室温・大気中
(3)ナノインデンテーション硬さ
MTSシステムズ社製の超微小硬度計「Nano Indenter XP」を用いてナノインデンテーション法によって測定をおこなった。ダイヤモンド製正三角錐圧子を用いて押し込み負荷/除荷試験を行い、荷重−押し込み深さ線図を取得した。この時、最大荷重Pmaxにおける硬さHは下記式より算出される。
弾性率測定は、ナノインデンテーション法(連続剛性測定法)により行った。ナノインデンテーション法とは、押し込み試験中に圧子を微小振動させ、振動に対する応答振幅、位相差を時間の関数として取得し、押し込み深さの連続的変化に対応して、圧子除荷時の初期勾配を連続的に算出する方法である。下記の測定装置、測定条件で得られた硬さ−押し込み深さ線図における押し込み深さ=約90nm〜約110nm(弾性率)の領域のデータを平均して算出した。
・測定装置 :MTSシステムズ社製 超微小硬度計 Nanoindenter XP
・測定方法 :ナノインデンテーション法(連続剛性測定法)
・使用圧子 :ダイヤモンド製正三角錐圧子
・測定雰囲気 :室温・大気中
(3)ナノインデンテーション硬さ
MTSシステムズ社製の超微小硬度計「Nano Indenter XP」を用いてナノインデンテーション法によって測定をおこなった。ダイヤモンド製正三角錐圧子を用いて押し込み負荷/除荷試験を行い、荷重−押し込み深さ線図を取得した。この時、最大荷重Pmaxにおける硬さHは下記式より算出される。
H=Pmax/A (GPa)
上記式中のAは圧痕の投影面積であり、荷重‐押しこみ深さ線図から算出される有効接触深さを用いて算出される値である。測定は下記条件で10回行い、押し込み深さ50nmのときの硬さの平均値を求めた。
上記式中のAは圧痕の投影面積であり、荷重‐押しこみ深さ線図から算出される有効接触深さを用いて算出される値である。測定は下記条件で10回行い、押し込み深さ50nmのときの硬さの平均値を求めた。
(4)不活性粒子I、II、IIIの平均粒径(dI、dII、dIII)
ポリエステルフィルムの表面A(A層側表面)および表面B(B層側表面)から、ポリエステル樹脂をプラズマ低温灰化処理法(たとえばヤマト科学製PR-503型)で除去し粒子を露出させる。処理条件は、ポリエステル樹脂は灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを白金/パラジウム=85/15(質量比)のイオンコーティング処理を施した上で、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製S−3400N形走査電子顕微鏡)を用いて10,000倍で観察し、観察箇所を変えて粒子数が合計で1,000個以上となるよう撮影した。得られた粒子の画像写真に、OHPフィルムを重ねて、写真の粒子部分を黒マジックで塗りつぶしてマーキングした。このOHPフィルムを、イメージアナライザー(シーオン社製画像解析ソフト)で数値処理を行い、得られた各粒子の面積データ(μm2)を等価円相当径に換算した。さらに全粒子の数平均径を平均粒径とした。
ポリエステルフィルムの表面A(A層側表面)および表面B(B層側表面)から、ポリエステル樹脂をプラズマ低温灰化処理法(たとえばヤマト科学製PR-503型)で除去し粒子を露出させる。処理条件は、ポリエステル樹脂は灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを白金/パラジウム=85/15(質量比)のイオンコーティング処理を施した上で、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製S−3400N形走査電子顕微鏡)を用いて10,000倍で観察し、観察箇所を変えて粒子数が合計で1,000個以上となるよう撮影した。得られた粒子の画像写真に、OHPフィルムを重ねて、写真の粒子部分を黒マジックで塗りつぶしてマーキングした。このOHPフィルムを、イメージアナライザー(シーオン社製画像解析ソフト)で数値処理を行い、得られた各粒子の面積データ(μm2)を等価円相当径に換算した。さらに全粒子の数平均径を平均粒径とした。
なお、不活性粒子B1、B2のように粒径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合には、上記の等価円相当径の粒子個数分布が2個以上のピークを有する分布となる。そのため、等価円相当径換算で得たデータを、X軸を粒径(0.01μm単位)、Y軸を個数としてプロットし、粒子個数が最大値となる粒径を第1のピークとして不活性粒子B1の平均粒径dB1とした。次に第1のピークよりも粒径が大きい側について、粒子個数がピークとなる粒径の中で粒子個数が第1のピークに次いで多い粒径を不活性粒子B2の平均粒径dB2とした。
(5)3次元中心線表面粗さSRa−A、SRa−B
3次元粗さ計((株)小坂研究所製 ET-4000A)を用い、スタイラスモード(針接触式粗さ測定)で、フィルムの平滑面(表面A、A層側表面)のSRa−Aと粗面(表面B、B層側表面)のSRa−Bについて測定した(単位:nm)。なお、測定条件は以下の通りとし、フィルムA層側表面(表面A)、B層側表面(表面B)から各々任意に選んだ5箇所で測定した平均値をSRa−A、SRa−Bとした。
走査速度 0.02mm/sec
測定長 0.2mm
cut off 0.08mm
針圧 6 mgr
針径 2 μm
走行ピッチ(Xピッチ) 0.40μm
送りピッチ(Yピッチ) 2μm
縦倍率(Z測定倍率) 100,000倍
測定本数 100本
(6)ヤング率
ヤング率は、JIS−K7161(1994)に準拠して測定した。なお、測定に際しては、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件を下記の通りとした。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とした。
3次元粗さ計((株)小坂研究所製 ET-4000A)を用い、スタイラスモード(針接触式粗さ測定)で、フィルムの平滑面(表面A、A層側表面)のSRa−Aと粗面(表面B、B層側表面)のSRa−Bについて測定した(単位:nm)。なお、測定条件は以下の通りとし、フィルムA層側表面(表面A)、B層側表面(表面B)から各々任意に選んだ5箇所で測定した平均値をSRa−A、SRa−Bとした。
走査速度 0.02mm/sec
測定長 0.2mm
cut off 0.08mm
針圧 6 mgr
針径 2 μm
走行ピッチ(Xピッチ) 0.40μm
送りピッチ(Yピッチ) 2μm
縦倍率(Z測定倍率) 100,000倍
測定本数 100本
(6)ヤング率
ヤング率は、JIS−K7161(1994)に準拠して測定した。なお、測定に際しては、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件を下記の通りとした。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とした。
試料サイズ :幅10mm×試長間100mm
引張り強度 :200mm/分
測定環境 :温度23℃、湿度65%RH
測定回数 :5回測定し、平均値から算出
(7)磁気テープの作製
実施例、比較例で得た二軸配向積層ポリエステルフィルムを1m幅にスリットした後、張力200Nで搬送させ、支持体としてフィルムの平滑面(表面A、A層側表面)に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより塗布し(上層が磁性塗料で乾燥後の塗布厚み0.1μm、下層が非磁性塗料で塗布厚み1.0μm)、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させた。次いで反対側のB層側表面(表面B)に下記組成のバックコートを塗布し(乾燥後の塗布厚み0.5μm)、乾燥温度100℃で乾燥させた後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×105N/mでカレンダー処理した後、巻き取った。上記テープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、パンケーキを作成し、次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
〔Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)〕
〔長軸長:0.09μm、軸比:6、保磁力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁化:146Am2/kg(146emu/g)、BET比表面積:53m2/g、X線粒径:15nm〕
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ : 0.1質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
(8)エラーレート
上記(7)の方法で作製したカセットテープを、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて、25℃・65%RHの環境下で記録・再生(記録波長0.55μm)を50回繰り返した後、下記の基準で評価した。
引張り強度 :200mm/分
測定環境 :温度23℃、湿度65%RH
測定回数 :5回測定し、平均値から算出
(7)磁気テープの作製
実施例、比較例で得た二軸配向積層ポリエステルフィルムを1m幅にスリットした後、張力200Nで搬送させ、支持体としてフィルムの平滑面(表面A、A層側表面)に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより塗布し(上層が磁性塗料で乾燥後の塗布厚み0.1μm、下層が非磁性塗料で塗布厚み1.0μm)、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させた。次いで反対側のB層側表面(表面B)に下記組成のバックコートを塗布し(乾燥後の塗布厚み0.5μm)、乾燥温度100℃で乾燥させた後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×105N/mでカレンダー処理した後、巻き取った。上記テープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、パンケーキを作成し、次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
〔Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)〕
〔長軸長:0.09μm、軸比:6、保磁力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁化:146Am2/kg(146emu/g)、BET比表面積:53m2/g、X線粒径:15nm〕
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ : 0.1質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
(8)エラーレート
上記(7)の方法で作製したカセットテープを、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて、25℃・65%RHの環境下で記録・再生(記録波長0.55μm)を50回繰り返した後、下記の基準で評価した。
◎:エラーレートが1.0×10−6未満(最も望ましい)
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満(望ましい)
△:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満(実用的に使用可能)
×:エラーレートが1.0×10−4以上(使用不可)
エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満(望ましい)
△:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満(実用的に使用可能)
×:エラーレートが1.0×10−4以上(使用不可)
エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料−1)。
平均粒径0.10μm、体積形状係数f=0.51の球状シリカ粒子を含有するポリエチレンテレフタレートのペレットと、実質上粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレットとを、球状シリカ粒子の含有量が0.05質量%、さらに耐熱性熱可塑性樹脂として、SABICイノベーティブプラスチック社製“ウルテム”1010を4質量%となるように混合して熱可塑性樹脂Aを調製した。
また、平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.52のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するポリエチレンテレフタレート、平均粒径0.8μm、体積形状係数f=0.52のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するポリエチレンテレフタレートを、0.3μmの粒子含有量が0.26質量%、0.8μmの粒子含有量が0.01質量%、さらに耐熱性熱可塑性樹脂として、SABICイノベーティブプラスチック社製“ウルテム”1010を4質量%になるように混合し熱可塑性樹脂Bを得た。
熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して高精度濾過した後、矩形の2層用合流ブロックで積層厚み比(A層|B層)=7|1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流積層し、2層積層とした。その後、295℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化し、未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを逐次二軸延伸機により95℃で長手方向及び幅方向にそれぞれ3.5倍、トータルで12.3倍延伸し、定長下、205℃で3秒間熱処理した。その後、幅方向に2%の弛緩処理を施し、全厚み5μmのポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの製造条件について、原料組成および厚み関係を表に示す。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示す通り、長手方向のヤング率は4.5GPa、幅方向のヤング率は6.5GPa、表面粗さSRaは層A側が4nm、層B側が8nmであった。また磁気テープとして使用した際に、エラーレートに優れた特性を有していた。
[実施例2〜6]
耐熱性熱可塑性樹脂およびB層中の不活性粒子の添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように各特性に優れており、磁気テープとして使用した際のエラーレートに優れた特性を有していた。
耐熱性熱可塑性樹脂およびB層中の不活性粒子の添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように各特性に優れており、磁気テープとして使用した際のエラーレートに優れた特性を有していた。
[比較例1〜5]
耐熱性熱可塑性樹脂およびB層中の不活性粒子の添加量を変更したこと、更にB層中に平均粒径0.02μmのδアルミナを10質量%添加したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1〜5の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際のエラーレートに劣る結果であった。
耐熱性熱可塑性樹脂およびB層中の不活性粒子の添加量を変更したこと、更にB層中に平均粒径0.02μmのδアルミナを10質量%添加したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1〜5の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際のエラーレートに劣る結果であった。
[比較例6]
熱可塑性樹脂Aの球状シリカ粒子の平均粒径を0.15μm、含有量を0.2質量%としたこと以外は比較例4と同様にして、比較例6の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際のエラーレートに劣る結果であった。
熱可塑性樹脂Aの球状シリカ粒子の平均粒径を0.15μm、含有量を0.2質量%としたこと以外は比較例4と同様にして、比較例6の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際のエラーレートに劣る結果であった。
[比較例7]
耐熱性熱可塑性樹脂の含有量を4質量%添加したこと以外は比較例6と同様にして、比較例7の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
耐熱性熱可塑性樹脂の含有量を4質量%添加したこと以外は比較例6と同様にして、比較例7の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
Claims (4)
- 2層以上の層構成を有する塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、磁性層を塗布する側の面をA面、他方の側の面をB面としたとき、前記A面の3次元中心線表面粗さSRa−Aが0.5〜10nmであり、前記B面についてナノインデンテーション法で測定した弾性率が1.5GPa以上4.5GPa以下である塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- 前記B面について、ナノインデンテーション法で測定した硬さが0.1GPa以上0.5GPa以下である、請求項1に記載の塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂を含有する、請求項1または2に記載の塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂がポリエーテルイミドである、請求項3に記載の塗布型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
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