JP2018160597A - 有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置、照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置、照明装置 Download PDF

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Tasuku Sasaki
翼 佐々木
拓 大野
Hiroshi Ono
拓 大野
弘彦 深川
Hirohiko Fukagawa
弘彦 深川
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Takahisa Shimizu
貴央 清水
森井 克行
Katsuyuki Morii
克行 森井
健二 ▲桑▼田
健二 ▲桑▼田
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Abstract

【課題】連続駆動させても発光特性が劣化しにくい有機EL素子およびその製造方法を提供する。【解決手段】陰極3と陽極9との間に発光層6が設けられ、陰極3と発光層6との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層1が設けられている有機エレクトロルミネッセンス素子10とする。電子注入層1は、平均厚さが1〜1000nmであることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)およびその製造方法、表示装置、照明装置に関する。
有機EL素子は、低電圧で駆動できる、薄型化、軽量化、フレキシブル化が可能であるなどの特徴を有している。このため、有機EL素子は、画像表示装置および照明装置に好適に用いられている。
有機EL素子は、陰極と陽極との間に、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の複数の層が積層された構造を有している。有機EL素子としては、基板と発光層との間に陽極が配置された順構造のものと、基板と発光層との間に陰極が配置された逆構造のものとがある。逆構造の有機EL素子では、これを画像表示装置などに用いる場合に、陰極とトランジスタなどとを容易に接続できる。
近年、大気中で安定かつ仕事関数が小さい金属酸化物を、陰極表面に成膜した逆構造の有機−無機ハイブリッド有機EL素子(Hybrid Organic Inorganic LED:HOILED)が提案されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
金属酸化物としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化鉄(Fe)、酸化錫(SnO)等が使用可能である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特開2012−4492号公報 特開2007−53286号公報 特開2013−239961号公報 特開2014−168014号公報 特開2011−184430号公報 特開2012−151148号公報
APPLIED PHYSICS LETTERS Volume89,183510(2006) Advanced Materials Volume23,page1829-1845(2011) Scientific Reports Volume5,Article number 13211(2015) Physical Chemistry Chemical Physics Volume16,page18926-18932(2014) H.Choら、Science,vol.350,p.1222-1225(2015)
従来の有機EL素子では、連続駆動させると短時間で発光特性が劣化して、発光輝度が低下することが問題となっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、連続駆動させても発光特性が劣化しにくい有機EL素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、上記の有機EL素子を含み、長期間安定して使用できる表示装置および照明装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、有機EL素子の陰極と発光層との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層を設ければよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わる。
〔1〕 陰極と陽極との間に発光層が設けられ、
前記陰極と前記発光層との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層が設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔2〕 前記電子注入層は、平均厚さが1〜1000nmであることを特徴とする〔1〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔3〕 前記電子注入層の前記発光層側の面に接してバッファ層が設けられていることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔4〕 前記発光層と前記陽極との間に正孔注入層が設けられていることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔5〕 前記発光層と前記正孔注入層との間に正孔輸送層が設けられていることを特徴とする〔4〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする表示装置。
〔7〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする照明装置。
〔8〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットを用い、アルゴンと酸素とを導入しながら、スパッタ法により電子注入層を形成する電子注入層形成工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明の有機EL素子では、陰極と発光層との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層が設けられている。仕事関数の高い酸化亜鉛膜は、仕事関数の低い酸化亜鉛膜と比較して、酸素欠損が少なく、過剰な亜鉛が少ない。このため、本発明の有機EL素子では、連続駆動させることにより、電子注入層中の酸化亜鉛膜に存在する酸素欠損が、電子注入層の発光層側に接する層を劣化させて生じる発光特性の劣化を抑制できる。したがって、本発明の有機EL素子は、連続駆動させても発光特性が劣化しにくく、発光輝度の低下が生じにくい。
また、本発明の表示装置および照明装置は、本発明の有機EL素子を含むため、長期間安定して使用できる。
また、本発明の有機EL素子の製造方法では、表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットを用い、アルゴンと酸素とを導入しながら、スパッタ法により電子注入層を形成する。このため、本発明の有機EL素子の製造方法によれば、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層が設けられている本発明の有機EL素子が得られる。
本実施形態の有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。 実施例1、実施例2、比較例の酸化亜鉛膜表面について、紫外線光電子分光測定を行った結果を示すグラフである。 有機EL寿命測定装置を用い、一定電流での駆動を開始してからの経過時間と、相対輝度との関係を示したグラフである。
本発明者は、連続駆動させても発光特性が劣化しにくい有機EL素子を得るために、電子注入層に着目して、鋭意検討を重ねた。
従来、金属酸化物膜からなる電子注入層を有する有機EL素子を連続駆動させると、短時間で発光特性が劣化する。これは、以下に示す理由によるものであると推定される。すなわち、有機EL素子を連続駆動させることにより、電子注入層を形成している金属酸化物膜に存在する酸素欠損が、電子注入層の発光層側に接する層を劣化させる。このことにより、有機EL素子の発光特性が劣化するものと推定される。
したがって、有機EL素子を連続駆動させることによる発光特性の劣化を抑制するには、電子注入層を形成している金属酸化物膜の酸素欠損を少なくし、電子注入層の安定性を高めればよい。
しかし、従来、酸素欠損の少ない金属酸化物膜を、電子注入層の材料として使用することは検討されていなかった。これは、一般に、電子注入層の材料には、良好な電子注入機能が得られるように、仕事関数の小さいものが用いられるためである。
具体的には、従来、電子注入層の材料として酸化亜鉛膜が用いられている。しかし、従来の電子注入層では、良好な電子注入機能が得られるように、仕事関数の小さい酸化亜鉛膜が用いられており、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜は用いられていなかった。また、従来、電子注入層の材料として用いる酸化亜鉛膜として、仕事関数の高いものを用いることは想定されていなかった。
一方、仕事関数の高い酸化亜鉛膜は、仕事関数の低い酸化亜鉛膜と比較して、酸素欠損が少なく、過剰な亜鉛が少ない状態であると考えられる(例えば、非特許文献3および非特許文献4参照。)。そこで、本発明者は、電子注入層を形成する金属酸化物の酸素欠損を少なくするために、仕事関数の高い酸化亜鉛膜を用いることを検討した。
従来、酸化亜鉛膜からなる電子注入層を形成する方法として、金属亜鉛ターゲットを用いて酸素を含む雰囲気中でスパッタ法により、被形成面上に酸化亜鉛膜を形成する方法がある。しかし、この方法では、3.9eV以上の高い仕事関数を有する酸化亜鉛膜は得られなかった。
そこで、本発明者は、スパッタ法に用いる金属亜鉛ターゲットに着目して、鋭意検討した。金属亜鉛ターゲットは、通常、チャンバー内で真空保管し、アルゴンガス雰囲気中でスパッタを行って、表面を削り取ってから用いる。これに対し、本発明者は、酸素を含む雰囲気中に金属亜鉛ターゲットの表面を暴露させる方法などにより、金属亜鉛ターゲットの表面を酸化させた。そして、表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットを用い、アルゴンと酸素とを導入しながらスパッタを行った。その結果、被形成面に3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む層が得られた。
さらに、本発明者は、鋭意検討し、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層を設けた有機EL素子とすることで、連続駆動させることによる発光特性の劣化を抑制できることを確認し、本発明を想到した。
以下、本発明の有機EL素子およびその製造方法、表示装置、照明装置について、図面を用いて詳細に説明する。
「有機EL素子」
図1は、本実施形態の有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。図1に示す本実施形態の有機EL素子10は、陽極9(電極)と陰極3(電極)との間に、発光層6を含む積層構造が形成されているものである。
本実施形態の有機EL素子10における積層構造は、電子注入層1と、バッファ層4と、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8とがこの順に形成されたものである。本実施形態の有機EL素子10は、基板2と発光層6との間に陰極3が配置された逆構造ものである。また、本実施形態の有機EL素子10は、電子注入層1として無機材料である酸化亜鉛膜が設けられた逆構造の有機−無機ハイブリッド有機EL素子である。
図1に示す有機EL素子10は、基板2と反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよいし、基板2側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
(基板)
基板2の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。基板2の材料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
基板2に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板2の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機EL素子10が得られるため好ましい。
基板2に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
有機EL素子10がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板を用いる。
有機EL素子10がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
基板2の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10mmである。
基板2の平均厚さはデジタルマルチメーター、ノギスなどにより測定できる。
(陰極)
陰極3の材料としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、InSnZnO(インジウム酸化亜鉛錫、ITZO)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物の導電材料を用いることが好ましい。これらの中でも特に、陰極3の材料としてITO、IZO、FTOを用いることが好ましい。
陰極3の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。
(電子注入層)
電子注入層1は、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜からなり、4.2eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜からなるものであることが好ましい。電子注入層1に含まれる酸化亜鉛膜の仕事関数が3.9eV未満であると、有機EL素子を連続駆動させることにより生じる発光特性の劣化を抑制する効果が十分に得られない。一方、電子注入層1に含まれる酸化亜鉛膜の仕事関数が4.5eVを超えると、電子注入性が悪くなり、良好な発光特性が得られなくなるため、酸化亜鉛膜の仕事関数は4.5eV以下であることが好ましい。
本実施形態における電子注入層1は、酸化亜鉛膜のみで形成されていることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲でインジウム、ガリウム、マンガン、チタン、モリブデン、カルシウム、マグネシウムなどを含有していてもよい。
電子注入層1の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは2〜100nmである。電子注入層1の平均厚さが1nm以上であると、有機EL素子を連続駆動させることにより生じる発光特性の劣化を、より効果的に抑制できる。また、電子注入層1の平均厚さが1000nm以下であると、電子注入層1を効率よく形成できる。
電子注入層1の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
(バッファ層)
バッファ層4は、電子注入層1の表面に存在する凹凸を平滑化する機能を有する。
バッファ層4の材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレンのようなポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物や、特許文献3に記載のホウ素含有化合物や、特許文献4に記載のポリアミン類等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、バッファ層4の材料としては、塗布により形成可能な材料を用いることが好ましい。
バッファ層4の平均厚さは5〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜60nmである。バッファ層4の平均厚さが上記範囲であると、発光層6を含む低分子化合物層の結晶化を抑制する効果を充分に発揮することができる。バッファ層4の平均厚さが5nm未満であると、電子注入層1の表面に存在する凹凸を十分に平滑化できず、リーク電流が大きくなって、バッファ層4を有することの効果が充分に得られないおそれがある。また、バッファ層4の平均厚さが100nmを超えると、駆動電圧が上昇し、実用上好ましくない。
バッファ層4は電子輸送層としての機能を有するものであってもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層5の材料としては、電子輸送層5の材料として通常用いることができるいずれの材料も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層5の材料として用いることができる低分子化合物の例としては、ビス[2−(o−ヒドロキシフェニルベンゾチアゾール]亜鉛(II)(ZnBTZ2)、ホウ素含有化合物、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)等に代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
これらの中でも、ZnBTZ2が好ましい。
電子輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、より好ましくは、40〜100nmである。
電子輸送層5の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定できる。
(発光層)
発光層6を形成する材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよいし、これらを混合して用いてもよい。
発光層6を形成する高分子化合物としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキルフェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特許文献5および特許文献6に記載のホウ素化合物系高分子化合物等が挙げられる。
発光層6を形成する低分子化合物としては、リン光発光材料の他、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、トリス[1−フェニルイソキノリン−C2,N]イリジウム(III)(Ir(piq))、ビス[2−(o−ヒドロキシフェニルベンゾチアゾール]亜鉛(II)(ZnBTZ2)トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィンプラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、4,4’−ビス[9−ジカルバゾリル]−2,2’−ビフェニル(CBP)、4、4’−ビス(9−エチルー3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)のようなカルバゾール系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
発光層6としては、可視光を発光する材料以外にも、例えば赤外の発光を示す有機材料を用いることもできる。また、発光層6の材料としては、有機材料以外にも、例えば量子ドットやCHNHPbBrに代表されるようなペロブスカイト構造の材料(例えば、非特許文献5参照。)を用いてもよい。発光層6の材料としては、蛍光材料やリン光材料に加え、熱活性化遅延蛍光材料を用いてもよい。
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましくより好ましくは20〜100nmである。
発光層6の平均厚さは、発光層6の材料が低分子化合物である場合、水晶振動子膜厚計により測定できる。発光層6の材料が高分子化合物である場合、接触式段差計により測定できる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層7の材料としては、正孔輸送層7の材料として通常用いることができるいずれの材料も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
正孔輸送層7の材料としては、N4,N4’−ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−N4,N4’−ジフェニルビフェニルー4,4’−ジアミン(DBTPB)、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フルオレンのようなフルオレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
これらの中でも、DBTPB、α−NPD、TPTEのようなアリールアミン系化合物が好ましい。
正孔輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、40〜100nmである。
正孔輸送層7の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定できる。
(正孔注入層)
正孔注入層8は、無機材料からなるものであってもよいし、有機材料からなるものであってもよい。
正孔注入層8が有機材料である場合、正孔注入層8の材料として、例えばテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)および/または1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)等を用いることができる。
正孔注入層8が無機材料である場合、正孔注入層8の材料として、酸化バナジウム(V)、三酸化モリブデン(酸化モリブデン:MoO)、酸化ルテニウム(RuO)等のうち、1種または2種以上の酸化物を用いることが好ましい。これらの中でも特に、酸化バナジウムまたは酸化モリブデンを主成分とすることが好ましい。
正孔注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましい。
正孔注入層8の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
(陽極)
陽極9の材料としては、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられる。この中でも陽極9の材料として、Au、Ag、Alのいずれかを用いることが好ましい。
陽極9の平均厚さは、特に限定されないが、例えば10〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30〜150nmである。
有機EL素子10がトップエミッション型のものである場合には、陽極9の材料として、透明な材料を用いることが好ましい。有機EL素子10がトップエミッション型のものであって、陽極9の材料として照射光に不透明な材料を用いる場合、平均厚さを10〜30nm程度にすることで、透明な陽極9として使用できる。
陽極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定できる。
「有機EL素子の製造方法」
図1に示す有機EL素子10は、基板2上に、陰極3と、電子注入層1と、バッファ層4と、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9とをこの順に形成することにより製造できる。
本実施形態では、電子注入層1は、表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットを用い、アルゴンと酸素とを導入しながら、スパッタ法により形成する(電子注入層形成工程)。このことにより、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層が得られる。
表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットは、例えば、酸素を含む雰囲気中に金属亜鉛ターゲットの表面を暴露させる方法などにより得られる。表面を酸化させる雰囲気中における酸素濃度は、例えば、0.1〜15%とすることができ、好ましくは3〜7%である。また、表面を酸化させる雰囲気中に金属亜鉛ターゲットを暴露させる時間は、例えば、15分〜2時間とすることができ、好ましくは20分〜40分である。
スパッタ法により電子注入層1を形成する際のアルゴンと酸素との割合は、例えば、酸素濃度が0.1〜60%とすることができ、1〜20%とすることが好ましい。
図1に示す有機EL素子10の陰極3と、バッファ層4と、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9の各層の形成方法は、特に限定されず、各層に用いられる材料の特性に合わせて、従来公知の種々の形成方法を適宜用いて形成できる。
具体的には、例えば、図1に示す有機EL素子10の陰極3、陽極9を形成する方法として、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等が挙げられる。
バッファ層4、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8の各層を形成する方法として、各層となる有機化合物を含む有機化合物溶液を塗布する塗布法、真空蒸着法、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra−dilute Solution)法などが挙げられる。これらの形成方法の中でも、塗布法を用いることが好ましい。
特に、バッファ層4は、電子注入層1上に、塗布法を用いて形成する(バッファ層形成工程)ことが好ましい。具体的には、電子注入層1上に、有機化合物を含む溶液を塗布することにより、バッファ層4を形成することが好ましい。電子注入層1上に塗布法を用いてバッファ層4を形成することで、電子注入層1の表面に存在する凹凸が平滑化され、バッファ層4上に低分子化合物層を形成する場合に、低分子化合物の結晶化を効果的に抑制できる。
上記各層を形成する方法として塗布法を用いる場合、スピンコート法、キャスティング法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布方法を用いることができる。この中でも、スピンコート法が好ましい。
塗布法により塗布する塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機化合物を溶解できるものである限り特に制限されないが、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、シクロペンタノン等から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、THF、トルエン、クロロホルム、ジクロロエタン、シクロペンタノンが好ましい。
上記塗布液は、溶媒中の有機化合物の濃度が0.05〜10質量%であることが好ましい。このような濃度であると、塗布した時の塗りムラや凹凸の発生を抑えることができる。溶媒中の有機化合物の濃度は、より好ましくは0.1〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。
また、バッファ層4、電子輸送層5、正孔輸送層7、正孔注入層8のうちいずれかの層が無機材料からなるものである場合、無機材料からなる層は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等の方法を用いて形成できる。
なお、図1に示す有機EL素子10を形成している各層の厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーを用いて測定できる。また、各層を真空蒸着法で形成する場合、各層の厚さは、水晶振動子膜厚計を用いて製膜時に測定できる。
本実施形態の有機EL素子10では、陰極3と陽極9との間に発光層6が設けられ、陰極3と発光層6との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層1が設けられている。仕事関数の高い酸化亜鉛膜は、仕事関数の低い酸化亜鉛膜と比較して、酸素欠損が少なく、過剰な亜鉛が少ない。このため、本実施形態の有機EL素子10では、連続駆動させることにより、電子注入層1中の酸化亜鉛膜に存在する酸素欠損が、電子注入層1の発光層6側に接する層(図1ではバッファ層4)を劣化させて生じる発光特性の劣化を抑制できる。したがって、本実施形態の有機EL素子10は、連続駆動させても発光特性が劣化しにくく、発光輝度の低下が生じにくい。よって、本実施形態の有機EL素子10は、表示装置や照明装置の材料等として好適に用いることができる。
本実施形態の有機EL素子10の電子注入層1は、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む。この電子注入層1は、酸素耐性および水分耐性が良好であり、大気中での安定性が良好である。よって、図1に示す有機EL素子10は、長期間安定して使用できるし、必ずしも厳密な封止をする必要はない。
本実施形態の有機EL素子10において、各層を形成する材料は低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
本発明において低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない材料を意味し、必ずしも分子量が低い有機化合物を意味するものではない。
本実施形態の有機EL素子10は、発光層6を含む低分子化合物層を含むことが好ましい。発光層6を含む低分子化合物層とは、低分子化合物によって形成される発光層6、または、低分子化合物によって形成される発光層6と低分子化合物によって形成されるその他の層とが積層されたもの、のいずれかである。低分子化合物によって形成されるその他の層は、1層であってもよいし2層以上であってもよい。また、発光層6とその他の層との積層順序は特に制限されない。
本実施形態の有機EL素子10が、電子注入層1上に発光層6を含む低分子化合物層を有する場合、低分子化合物層の低分子化合物は結晶化していないことが好ましい。低分子化合物層の低分子化合物が結晶化していると、リーク電流が増大し、有機EL素子10の電流効率が不十分となる恐れがある。また、低分子化合物が結晶化していると、均一な面発光が得られにくい。
有機EL素子10において、電子注入層1上に配置された低分子化合物層が結晶化する原因は、以下のように考えられる。
本実施形態の有機EL素子10では、スパッタ法により電子注入層1を成膜するため、電子注入層1の表面に凹凸が形成されやすい。このため、電子注入層1上に接して発光層6を含む低分子化合物層を形成すると、電子注入層1の表面に存在する凹凸が、低分子化合物層となる低分子化合物の結晶核となり、結晶化が促進されやすい。
図1に示す有機EL素子10では、電子注入層1の発光層6側の面に接してバッファ層4が配置されている。上述したように、電子注入層1上に有機化合物を含む溶液を塗布する方法によりバッファ層4を形成することで、電子注入層1の表面に存在する凹凸が平滑化される。その結果、バッファ層4上に形成される発光層を含む低分子化合物層における低分子化合物の結晶化が抑制される。このことにより、低分子化合物層の低分子化合物の結晶化に起因するリーク電流を抑制でき、均一な面発光が得られる。
なお、十分に平滑な表面を有する陰極3は容易に形成できる。このため、例えば、電子注入層1を設けず、陰極3上に接して発光層6を含む低分子化合物層を形成した場合、低分子化合物の結晶化は生じにくい。すなわち、発光層6を含む低分子化合物層を形成した場合における低分子化合物の結晶化の問題は、電子注入層1上に接して発光層6を含む低分子化合物層を形成する場合に特有の課題である。
「他の例」
本発明の有機EL素子は、上述した実施形態において説明した有機EL素子に限定されるものではない。
図1に示す有機EL素子10においては、バッファ層4、電子輸送層5、正孔輸送層7、正孔注入層8は、必要に応じて形成すればよく、設けられていなくてもよい。
また、陰極3、電子注入層1、バッファ層4、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層は、1層で形成されているものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
また、図1に示す有機EL素子10は、陰極3、電子注入層1、バッファ層4、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層の間に、他の層を有するものであってもよい。具体的には、有機EL素子の特性をさらに向上させる等の理由から、必要に応じて、電子阻止層などを有していてもよい。
「表示装置」
本実施形態の表示装置は、有機EL素子を複数配列した素子配列群を用いて画像を表示するものである。本実施形態の表示装置は、連続駆動させても発光特性が劣化しにくく、発光輝度の低下が生じにくい有機EL素子を備える。このため、長期間安定して使用できる。
「照明装置」
本実施形態の照明装置は、有機EL素子を複数配列した素子配列群を用いて面発光を行うものである。本発明の照明装置は、連続駆動させても発光特性が劣化しにくく、発光輝度の低下が生じにくい有機EL素子を備える。このため、長期間安定して使用できる。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
<実施例1、実施例2、比較例>
以下に示す方法により、図1に示す逆構造の有機EL素子10を製造した。
[1]ITO膜(膜厚150nm、幅3mmにパターニング済)からなる陰極3を有する平均厚さ0.7mmの市販されているガラス製透明基板(以下、単に基板とも称する)2を用意した。
[2]次に、陰極3を有する基板2を、アセトン中およびイソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄し、さらにイソプロパノール中で5分間煮沸した。その後、基板2をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を15分間行った。
[3]次に、陰極3を有する基板2を、金属亜鉛ターゲットを有するマグネトロンスパッタ装置のチャンバー内の基板ホルダーに固定した。チャンバー内を約1×10−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でZnOのスパッタリング処理を実行した。これにより、陰極3上に膜厚5nmの酸化亜鉛膜からなる電子注入層1を形成した。
なお、実施例1および実施例2における電子注入層1の成膜には、酸素濃度5.2%の雰囲気中に30分暴露させて、表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットを用いた。また、電子注入層1を形成する際のアルゴンと酸素との割合を、実施例1では酸素濃度10%(Ar:O=36:4)とし、実施例2では酸素濃度14%(Ar:O=43:7)とした。
比較例における電子注入層1の成膜には、金属亜鉛ターゲットとして、チャンバー内で真空保管し、アルゴンガス雰囲気中でスパッタを行って、表面を削り取ったものを用いた。また、比較例では電子注入層1を形成する際のアルゴンと酸素との割合を酸素濃度14%(Ar:O=43:7)とした。
[4]次に、成膜した実施例1、実施例2、比較例の電子注入層1(酸化亜鉛膜)の表面について、紫外線光電子分光測定を行い、その仕事関数を求めた。なお、紫外線光電子分光測定には、PHI社製(VersaProbe)の測定装置を用いた。また、紫外光としてHe I線(21.22eV)を用い、フェルミ準位は金を基準とした。
その結果を図2に示す。図2は、実施例1、実施例2、比較例の酸化亜鉛膜表面について、紫外線光電子分光測定を行った結果を示すグラフである。図2に示すように、立ち上がりの束縛エネルギーの値は、比較例では17.6eV、実施例1では17.3eV、実施例2では17.0eVであり、大きな状態密度を示唆する光電子が観測された。また、この立ち上がりの束縛エネルギーの値と紫外光He I線のエネルギーの値の差から仕事関数を求めた。
その結果、仕事関数は、比較例では3.6eV、実施例1では3.9eV、実施例2では4.2eVであった。すなわち、実施例1および実施例2では、比較例よりも仕事関数が高かった。
[5]次に、下記一般式(1)で示されるホウ素含有化合物の1.0重量%のシクロペンタノン溶液を作成した。実施例1、実施例2、比較例の電子注入層1まで形成した基板2をスピンコーターにセットし、上記ホウ素含有化合物のシクロペンタノン溶液を滴下し、毎分3000回転で30秒間回転させて塗布した。さらに、上記ホウ素含有化合物のシクロペンタノン溶液を塗布した基板2を、窒素雰囲気中で150℃にセットしたホットプレートを用いて、1時間アニールした。これにより、平均膜厚が30nmのホウ素含有化合物からなるバッファ層4を形成した。
Figure 2018160597
[6]次に、バッファ層4まで形成した基板2を、真空蒸着装置のチャンバー内の基板ホルダーに固定した。下記一般式(2)で示されるビス[2−(o−ヒドロキシフェニルベンゾチアゾール]亜鉛(II)(ZnBTZ2)、下記一般式(3)で示されるトリス[1−フェニルイソキノリン−C2,N]イリジウム(III)(Ir(piq)3)、下記一般式(4)で示されるN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、下記一般式(5)で示されるN4,N4’−ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−N4,N4’−ジフェニルビフェニルー4,4’−ジアミン(DBTPB)、下記一般式(6)で示される1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)、Alをそれぞれルツボに入れて蒸着源にセットした。
Figure 2018160597
[7]真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、ZnBTZ2を10nm成膜して電子輸送層5とした。さらに、ZnBTZ2をホスト、(Ir(piq)3)をドーパントとして20nm共蒸着し、発光層6を製膜した。この時、(Ir(piq)3)のドープ濃度が発光層6全体に対して6%となるようにした。次に、DBTPBを10nm成膜し、さらにα−NPDを40nm成膜することにより、正孔輸送層7を製膜した。次に、HAT−CNを膜厚10nm蒸着し、正孔注入層8とした。最後に、Alを膜厚100nmになるように蒸着し、陽極9を形成した。以上の工程により、実施例1、実施例2、比較例の有機EL素子10を得た。
なお、陽極9を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅3mmの帯状になるようにした。このことにより、有機EL素子10の発光面積を9mmとした。
(有機EL素子の寿命特性測定)
実施例1、実施例2、比較例の有機EL素子10について、EHC社製の「有機EL寿命測定装置」により、一定電流での駆動を開始してからの経過時間と、相対輝度との関係を調べた。具体的には、有機EL素子に一定電流が流れるように電圧を自動的に調整し、一定電流での駆動を開始してからの経過時間に対する相対輝度の測定を行った。なお、電流値は、測定開始時の輝度が1000cd/mになるように、実施例1、実施例2、比較例の各有機EL素子ごとに設定した。その結果を図3に示す。
図3は、有機EL寿命測定装置を用い、一定電流での駆動を開始してからの経過時間と、相対輝度との関係を示したグラフである。図3に示すように、実施例1、実施例2、比較例のいずれの有機EL素子においても、経過時間に伴って輝度が低下している。しかし、仕事関数3.9eVの実施例1、仕事関数4.2eVの実施例2では、仕事関数3.6eVの比較例と比較して輝度の低下が抑制されている。例えば、経過時間1000時間の時点で、比較例では150cd/m程度輝度が減少している。これに対し、実施例1では70cd/m程度(輝度劣化が1000時間で10%以下)、実施例2では45cd/m程度(輝度劣化が1000時間で5%以下)しか減少していない。
このことから、陰極3と発光層6との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層を設けることで、連続駆動させた場合の発光特性の劣化を抑制できることが確認できた。また、実施例1と実施例2の結果から、電子注入層の仕事関数が高いほど、連続駆動による輝度の劣化が抑制されることが分かった。
1 電子注入層
2 基板
3 陰極
4 バッファ層
5 電子輸送層
6 発光層
7 正孔輸送層
8 正孔注入層
9 陽極
10 有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)

Claims (8)

  1. 陰極と陽極との間に発光層が設けられ、
    前記陰極と前記発光層との間に、3.9eV以上の仕事関数を有する酸化亜鉛膜を含む電子注入層が設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記電子注入層は、平均厚さが1〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記電子注入層の前記発光層側の面に接してバッファ層が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記発光層と前記陽極との間に正孔注入層が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記発光層と前記正孔注入層との間に正孔輸送層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする表示装置。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする照明装置。
  8. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    表面を酸化させた金属亜鉛ターゲットを用い、アルゴンと酸素とを導入しながら、スパッタ法により電子注入層を形成する電子注入層形成工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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