JP2018158618A - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】インホイールモータ駆動装置の軸線方向寸法を小さくする技術を提供する。【解決手段】インホイールモータ駆動装置の車輪ハブ軸受部(11)において、外輪(13)は、転動体(14)が転走する外側軌道面(13m,13n)を有する外輪筒部材(13b)と、外輪筒部材を受け入れる貫通孔を有し外輪筒部材の外周面に所定の軸線方向寸法(Ls)で嵌合する外輪アタッチメント部材(13c)と、外輪アタッチメント部材に設けられてケーシング(38b)と車体側メンバ(102)の両方またはどちらか一方と結合するための外輪アタッチメント部材座部(13f,13h)を含み、内輪(12)は外輪から突出する軸線方向一方端部に内輪座部(12c)を含み、外側軌道面および転動体(14m,14n)は軸線(O)方向に間隔を空けて複列で配置される。【選択図】図3

Description

本発明は、インホイールモータ駆動装置の車輪ハブ軸受(ハブベアリング)に関する。
インホイールモータ駆動装置は、車輪の内空領域に配置されて、当該車輪を駆動するところ、サスペンション装置を介して車体に連結される。インホイールモータ駆動装置をサスペンション装置に連結する技術として、例えば特許第5565388号公報(特許文献1)に記載の技術が知られる。特許文献1のサスペンション装置は、その段落0062,0063に記載され、その図9に示すように、車両の車幅方向に延びるクロスビームと、クロスビームの端部から車両前側へ延びるトレーリングアームと、クロスビームの端部から車幅方向外側かつ車両後側へ斜めに延びるハブアームと、ハブアームの先端に固着された板状の接合部を有するものである。
特許文献1のインホイールモータ駆動装置は、その段落0076に記載されその図9に示すように、サスペンション装置のうち上述した接合部に固定される。理解を容易にするため、かかる接合部の構造を本件の図8に簡略化して示すと、インホイールモータ駆動装置200のハブベアリング211は、内輪212、外輪213、および玉214を有する。ハブベアリング211の内輪212は、車幅方向に延びる円筒部分212bと、円筒部分212bの車幅方向外側端に一体形成される内輪フランジ212cを有する。内輪212の円筒部分212bは外輪213の中心孔に挿通される。内輪フランジ212cは、外輪213よりも大径に形成される。
またハブベアリング211の外輪213は、円筒部分213bと、円筒部分213bの外周面から突出する外輪フランジ213cを有する。かかる外輪フランジ213cは、ボルトスペースSを残すよう、内輪フランジ212cよりも車幅方向内側に離隔して配置される。サスペンション装置の接合部220は外輪フランジ213cよりも車幅方向内側に配置され、両者はハブベアリング211の軸線方向に隣接する。ボルト221は、ハブベアリング211の軸線と平行に延び、ボルトスペースSから外輪フランジ213cの貫通孔に差し込まれ、これら外輪フランジ213cおよび接合部220を貫通して締結する。
特許第5565388号公報
ところが特許文献1においては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見出した。すなわち、外輪フランジ213cをサスペンション装置の接合部220に連結するボルト221を差し込むため、ボルト221よりも長いボルトスペースSが必要となり、円筒部分213bが外輪フランジ213cから軸線方向外側へ突出していた。このためインホイールモータ駆動装置200の軸線方向寸法が大きくなっていた。ハブベアリング211を含むインホイールモータ駆動装置200は小型であることが好ましく、特許文献1では軸線方向寸法において改善の余地がある。
本発明は、上述の実情に鑑み、インホイールモータ駆動装置の軸線方向寸法を小さくするための技術を提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるインホイールモータ駆動装置は、外輪、外輪の中心孔に通されて外輪から軸線方向一方側へ突出する内輪、および外輪と内輪との間の環状空間に配置される複数の転動体を有する車輪ハブ軸受部と、内輪を駆動するモータ部と、モータ部から内輪までの駆動伝達経路を覆うケーシングとを備える。これらのうち外輪は、転動体が転走する外側軌道面を有する外輪筒部材と、外輪筒部材を受け入れる貫通孔を有し外輪筒部材の外周面に所定の軸線方向寸法で嵌合する外輪アタッチメント部材と、外輪アタッチメント部材に設けられてケーシングと車体側メンバの両方またはどちらか一方と結合するための外輪アタッチメント部材座部を含む。また内輪は、外輪から突出する軸線方向一方端部に、車輪と結合するための内輪座部を有する。車輪ハブ軸受部の軸線方向に関し、モータ部は車輪ハブ軸受部の軸線方向他方側に配置される。上述した外側軌道面は複列であって軸線方向に間隔を空けて配置される。上述した転動体は外側軌道面の各列を転走するよう軸線方向に間隔を空けて複列で配置される。
かかる本発明によれば、車輪ハブ軸受部の外輪が一体物ではなく、外輪筒部材と外輪アタッチメント部材の2部材を含む。そして外輪アタッチメント部材は圧入等の嵌合によって外輪筒部材の外周に取付固定される。したがって特許文献1のようなボルトを使用する必要が無く、従来のようなボルトスペースを解消することができる。また本発明によれば、外輪アタッチメント部材の形状を自由に作成し得て、外輪アタッチメント部材座部のレイアウト自由度が大きくなり、このレイアウト次第でインホイールモータ駆動装置の軸線方向寸法を小さくすることが可能になる。なお外輪筒部材と外輪アタッチメント部材の嵌合とは、外輪筒部材を受け入れる貫通孔の内径が相対的に小さく、外輪筒部材の外径が相対的に大きく、これら内外径の寸法差が径方向の締め代となって、外輪筒部材の外周面が外輪アタッチメント部材の貫通孔に密着して固定されると理解されたい。また外輪アタッチメント部材が外輪アタッチメント部材座部で車体側メンバに連結されることにより、輪重がインホイールモータ駆動装置のケーシングに作用することを回避することができる。また車幅方向外側から外輪アタッチメント部材座部とケーシングの連結を解除して、車輪ハブ軸受部をケーシングから車幅方向外側へ分離することが可能となり、インホイールモータ駆動装置の点検および車輪ハブ軸受部の整備交換が容易になる。
本発明の好ましい実施形態として、外輪筒部材の内周面に設けられる外側軌道面のうち最も軸線方向一方側の外側軌道面から最も軸線方向他方側の外側軌道面までを含む領域の軸線方向中心位置を、車輪ハブ軸受部の軸線方向センタ位置とすると、外輪アタッチメント部材は軸線方向センタ位置よりも軸線方向一方側に偏って配置される。かかる実施形態によれば、外輪筒部材が外輪アタッチメント部材から軸線方向一方へ突出する長さが小さくなることから、インホイールモータ駆動装置の軸線方向寸法を従来よりも小さくできる。この実施形態の一例として、外輪アタッチメント部材と外輪筒部材の嵌合面が軸線方向センタ位置よりも軸線方向一方側に偏って配置される。この実施形態の他の例として、外輪アタッチメント部材座部が軸線方向センタ位置よりも軸線方向一方側に偏って配置される。
車輪ハブ軸受部は、外輪と内輪と転動体のいずれも、所定の強度を満足し所定範囲の炭素量を含む鋼で形成される。これに対しケーシングと車体側メンバは軽金属で形成されることが好ましい。車体側メンバとは、説明される部材からみて車体側に取り付けられる部材をいう。具体的には本発明のインホイールモータ駆動装置からみて、サスペンション装置のサスペンション部材であったり、サスペンション装置とインホイールモータ駆動装置の連結を仲介する懸架ブラケットであったりする。車輪ハブ軸受部の内輪は中心孔を有してもよいし、あるいは中実の軸であってもよい。モータ部から内輪までの駆動伝達経路は減速機構を含んでもよい。車体側メンバと、外輪アタッチメント部材と、ケーシングからなる3部材の結合関係は、3部材のうちのいずれか2部材同士が直接結合し、3部材のうちの残りの部材が上述した2部材のいずれかに直接結合すれば足りる。これにより、2部材同士が間接的に結合する。
一例として、外輪アタッチメント部材は一群の外輪アタッチメント部材座部でサスペンション部材などの車体側メンバと直接結合するとともに、他の群の外輪アタッチメント部材座部でケーシングと直接結合する。これにより車体側メンバはケーシングと間接的に結合する。他の例として、ケーシングは車体側メンバと直接結合するとともに一群の外輪アタッチメント部材座部で外輪アタッチメント部材と直接結合するが、外輪アタッチメント部材と車体側メンバは直接結合しないで単に密着する。さらに他の例として、車体側メンバはケーシングと直接結合するとともに一群の外輪アタッチメント部材座部で外輪アタッチメント部材と直接結合するが、ケーシングと外輪アタッチメント部材は直接結合しないで単に係合する。
本発明の一実施形態として、外輪筒部材の軸線方向一方端には、外径側に突出する突起が形成され、外輪筒部材の軸線方向他方側の外周面には規制部材が附設され、外輪アタッチメント部材は、突起および規制部材間に介在する。かかる実施形態によれば、外輪アタッチメント部材は、外輪筒部材からみて相対移動を規制される。規制部材は特に限定されないが、例えばスナップリングである。
本発明の好ましい実施形態として、外輪アタッチメント部材の外輪アタッチメント部材座部は、内輪座部よりも外径側に設けられる。かかる実施形態によれば、内輪座部と外輪アタッチメント部材の間に、外輪アタッチメント部材座部に螺合するボルト等を受け入れるためのボルトスペースを確保する必要がなくなる。したがって従来よりも内輪座部を外輪アタッチメント部材に近づけるように配置して、外輪から軸線方向一方へ突出する内輪の突出長を小さくし、従来よりも小型化されたインホイールモータ駆動装置を提供することができる。
本発明のさらに好ましい実施形態として、ケーシングは外輪を受け入れる開口とこの開口を区画する環状領域を含み、環状領域の一部が外輪アタッチメント部材の外輪アタッチメント部材座部と結合し、環状領域の他の一部には車体側メンバと連結するための連結座部が設けられる。かかる実施形態によれば、輪重がケーシングのうちの環状領域に作用するが、ケーシングのうちの他の部分には作用しない。したがってケーシングにリブ等を設けて補剛する必要がなく、インホイールモータ駆動装置の軽量化に資する。
外輪アタッチメント部材の形状は特に限定されないが本発明の一実施形態として外輪アタッチメント部材は、軸線方向他方側に突出してケーシングと嵌合する筒状部を含む。かかる実施形態によれば、ケーシングを外輪に確りと取付固定することができる。好ましくは筒状部とケーシングの間にシール材を介在させるとよい。これによりケーシングの密封性が向上する。
筒状部の配置は特に限定されないが本発明の一実施形態として筒状部は、外輪アタッチメント部材の内周面に沿って配置され、筒状部の内周面が外輪筒部材と外輪アタッチメント部材の嵌合面の軸線方向寸法に含まれて外輪筒部材に嵌合する。かかる実施形態によれば外輪筒部材と外輪アタッチメント部材の嵌合面が広くなることから、外輪アタッチメント部材を外輪筒部材に確りと取付固定することができる。他の実施形態として、外輪アタッチメント部材は筒状部を有さない円板であってもよい。
このように本発明によれば、外輪アタッチメント部材座部のレイアウト自由度が大きくなり、従来のようなボルトスペースを解消して、インホイールモータ駆動装置の軸線方向寸法を従来よりも小さくできる。また輪重がインホイールモータ駆動装置のケーシングに作用することを回避することができる。また車輪ハブ軸受部をケーシングから車幅方向外側へ分離することが可能となり、インホイールモータ駆動装置の点検および修理が容易になる。
本発明の第1実施形態になるインホイールモータ駆動装置を示す模式図であり、車幅方向外側からみた状態を表す。 同実施形態のインホイールモータ駆動装置を示す展開断面図である。 同実施形態の車輪ハブ軸受部を拡大して示す縦断面図である。 同実施形態の外輪アタッチメント部材を取り出して示す斜視図である。 同実施形態の外輪アタッチメント部材を取り出して示す斜視図である。 本発明の第2実施形態になるインホイールモータ駆動装置を示す展開断面図である。 本発明の第3実施形態になるインホイールモータ駆動装置を示す展開断面図である。 従来のインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態になるインホイールモータ駆動装置を示す模式図であり、車幅方向外側からみた状態を表す。図1では、紙面上側を車両上方とし、紙面下側を車両下方とし、紙面左側を車両前方とし、紙面右側を車両後方とする。車両前方とは車両の前進方向である。車両後方とは車両の後退方向である。図2は、同実施形態のインホイールモータ駆動装置を示す展開断面図である。図2で表される切断面は、図1に示す軸線Mおよび軸線Nを含む平面と、軸線Nおよび軸線Oを含む平面とを、この順序で接続した展開平面である。図2では、紙面左側を車幅方向外側とし、紙面右側を車幅方向内側とする。以下の説明では、車幅方向外側(アウトボード側)を軸線方向一方ともいい、車幅方向内側(インボード側)を軸線方向他方ともいう。第1実施形態のインホイールモータ駆動装置10は、図2に示すように車輪ホイールWの内空領域に配置され、車輪ホイールWとともに図示しない車体のホイールハウスに収容される。
車輪ホイールWのリム部Wrおよびスポーク部Wsは、車輪の内空領域を区画する。リム部Wrの外周には図示しないタイヤが嵌合する。車輪ホイールWおよびタイヤは車輪を構成する。車輪ホイールWおよびインホイールモータ駆動装置10は、図示しない車体の車幅方向両側に左右対称に配置され、電動車両を構成する。インホイールモータ駆動装置10は、電動車両を時速0〜180km/hで走行させることができる。
インホイールモータ駆動装置10はサスペンション装置70を介して図示しない車体に取り付けられる。サスペンション装置70はストラット式サスペンション装置であり車幅方向に延びるロアアーム71と、ロアアーム71よりも上方に配置されて上下方向に延びるストラット73を含む。ストラット73はインホイールモータ駆動装置10の軸線Oよりも上方にあって、車輪ホイールWよりも車幅方向内側に配置されるサスペンション部材である。またストラット73の車幅方向位置は、インホイールモータ駆動装置10の車幅方向内側部分と重なる。
ストラット73の下端領域は、詳しくは後述するが、懸架ブラケット102と結合する。図1ではストラット73の下端領域のみ示し、ストラット73の上端領域を省略する。かかる上端領域は車輪ホイールWよりも上方で車体と連結する。
ストラット73の下端領域は、具体的にはダンパ74の外筒である。ダンパ74の図示しないシャフトは、外筒の上端から上方へ真っ直ぐに延びる。ダンパ74の外周面には鍔状のロアコイルスプリングシート75が設けられる。ロアコイルスプリングシート75はダンパ74を包囲するように同軸配置されるコイルスプリング(図示せず)下端を支持する。コイルスプリングおよびダンパ74はショックアブソーバを構成する。このためストラット73は上下方向に伸縮可能であって、ストラット73に作用する軸力を減衰させる。
ロアアーム71は、インホイールモータ駆動装置10の軸線Oよりも下方に配置されるサスペンション部材であって、車幅方向外側端71a(図1)および車幅方向内側端(図示せず)を含む。ロアアーム71は、車幅方向外側端71aで、図示しないボールジョイントを介して懸架ブラケット102に連結される。ロアアーム71は車幅方向内側端で図示しない車体に連結される。車幅方向内側端を基端とし、車幅方向外側端71aを遊端として、ロアアーム71は上下方向に揺動可能である。車幅方向外側端71aとストラット73の上端を結ぶ直線は、上下方向に延びて転舵軸線Kを構成する。転舵軸線Kは基本的には上下方向に延びるが、車幅方向および/または車両前後方向に若干傾斜してもよい。
懸架ブラケット102は図1に示すようにインホイールモータ駆動装置10に附設される部材である。懸架ブラケット102は1部材であって、上側懸架ブラケット102b、中央部102a、下側懸架ブラケット102dを含む。中央部102a(図2の符号102)は後述のように外輪13に取付固定される。中央部102aは開口102cを有する。開口102cはインホイールモータ駆動装置10の外輪13を受け入れ、中央部102aはボルト15で外輪13に締結される。内輪12は開口102cを貫通する。上側懸架ブラケット102bは、中央部102aから上方へ突出し、モータ部21(図1に軸線Mのみ示す)よりも上方で車幅方向外側から内側へ延び、車幅方向内側の先端部でダンパ74と結合する。下側懸架ブラケット102dは、中央部102aから下方へ突出し、先端部でロアアーム71と連結する。
仮想線で示すようにロアアーム71よりも上方にはタイロッド80が配置される。タイロッド80は車幅方向に延び、タイロッド80の車幅方向外側端が懸架ブラケット102と回動可能に連結する。タイロッド80の車幅方向内側端は図示しない操舵装置と連結する。操舵装置はタイロッド80を車幅方向に進退動させて、インホイールモータ駆動装置10および車輪ホイールWを転舵軸線K回りに転舵させる。懸架ブラケット102の開口102cには、詳しくは後述するが、インホイールモータ駆動装置10が通されて固定される。
インホイールモータ駆動装置10は、図2に示すように車輪ホイールWの中心と連結する車輪ハブ軸受部11と、車輪の車輪ホイールWを駆動するモータ部21と、モータ部の回転を減速して車輪ハブ軸受部11に伝達する減速部31を備える。モータ部21および減速部31は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oと同軸に配置されるのではなく、車輪ハブ軸受部11の軸線Oからオフセットして配置される。軸線Oは車幅方向に延び、車軸に一致する。軸線O方向位置に関し、車輪ハブ軸受部11はインホイールモータ駆動装置10の軸線方向一方(アウトボード側)に配置され、モータ部21はインホイールモータ駆動装置10の軸線方向他方(インボード側)に配置され、減速部31はインホイールモータ駆動装置10の軸線方向中央部に配置される。車輪ハブ軸受部11および減速部31は、車輪ホイールWのリム部Wrおよびスポーク部Wsに区画される車輪内空領域に収容される。モータ部21は、車輪内空領域から軸線方向他方へ突出する。
車輪ハブ軸受部11は、車輪ホイールWと結合する回転輪としての内輪12と、固定輪としての外輪13と、内輪12と外輪13との環状隙間に配置される複数の転動体14とを有し、内輪12を回転自在に支持する。内輪12は車輪ハブ軸受部11の中心を通る車軸としての軸線Oに一致する。なお転動体14を特に区別したい場合、転動体14m,14nともいう。
図3は図2中の車輪ハブ軸受部を取り出して示す拡大縦断面図である。図4および図5は、車輪ハブ軸受部から外輪アタッチメント部材を取り出して示す斜視図であり、図4は軸線O方向一方側を表し、図5は軸線O方向他方側を表す。外輪13は、外輪筒部材13bおよび外輪アタッチメント部材13cを含む。外輪筒部材13bおよび外輪アタッチメント部材13cは別部材である。外輪アタッチメント部材13cは中央部に貫通孔13sを有する鋼製の板材であり、貫通孔13sに鋼製の外輪筒部材13bが差し込まれる。外輪筒部材13bの外径は、貫通孔13sの内径よりも大きく、これら内外径の差分(径方向の締め代)により、外輪筒部材13bは所定の軸線O方向寸法Lsに亘って外輪アタッチメント部材13cに圧入固定される。これにより外輪アタッチメント部材13cは、外輪フランジとして機能する。外輪アタッチメント部材13cの中央部には、貫通孔13sの内周面に沿って軸線O方向他方へ突出する円筒の筒状部13eが形成される。筒状部13eを含め、外輪アタッチメント部材13cの内周面は外輪筒部材13bと嵌合する。
内輪12および外輪筒部材13bは例えば、耐摩耗性に優れた軸受鋼SUJ1〜SUJ5から選ばれる高炭素クロム軸受鋼、またはS53C等のS○○Cから選ばれる機械構造用炭素鋼、あるいは機械構造用合金鋼からなる。外輪アタッチメント部材13cは例えば、S53C等のS○○Cから選ばれる機械構造用炭素鋼、あるいは機械構造用合金鋼からなる。
嵌合面の軸線O方向寸法Lsは、すきま嵌めでもなく、中間嵌めでもなく、圧入嵌めである。つまり貫通孔13sの内径が外輪筒部材13bの外径よりも僅かに小さい。また嵌合面の軸線O方向寸法Lsにおいて、貫通孔13sの内径および外輪筒部材13bの外径はそれぞれ一定に形成される。嵌合面の軸線O方向寸法Lsは外輪アタッチメント部材13cの本体と、この本体に突設される筒状部13eを含む。つまり嵌合面の軸線O方向寸法は、外輪アタッチメント部材13cの軸線O方向寸法に等しい。
筒状部13eは、外周面で後述する正面部分38fに形成される開口38hに差し込まれて嵌合する。開口38hの内周面と筒状部13eの外周面には環状のシール材38dが介在する。シール材38dは例えばOリングであり、筒状部13eの外周面に形成される周溝に配置される。シール材38dによって外輪13は本体ケーシング38に隙間なく連結される。
外輪筒部材13bの軸線O方向一方端には、外径側に突出する突起13dが形成される。突起13dは外輪アタッチメント部材13cが軸線O方向一方へ相対移動することを規制する。なお突起13dは、周方向に間隔を空けて配置されるものであってもよく、あるいは周方向に連続して延びるものであってよく、全周に亘って延びるフランジであってもよい。
外輪筒部材13bの外周面には、周方向に延びる周溝が形成され、該周溝にC字状のスナップリング13rが嵌合する。軸線O方向一方側の突起13dと軸線O方向他方側のスナップリング13rの間には外輪アタッチメント部材13cが介在する。さらに突起13dは外輪アタッチメント部材13cの一方端面と当接し、スナップリング13rは筒状部13eの先端と当接し、外輪アタッチメント部材13cが軸線O方向他方へ相対移動することを規制する。つまり外輪アタッチメント部材13cは、突起13dおよびスナップリング13rの双方に挟まれて、軸線O方向の移動を禁止される。
外輪フランジとしての外輪アタッチメント部材13cには周方向に間隔を空けて雌ねじ孔13fおよび貫通孔13hが複数穿設される。例えば雌ねじ孔13fおよび貫通孔13hは、周方向所定間隔に交互に設置される。各雌ねじ孔13fおよび各貫通孔13hは軸線Oと平行に延び、軸線O方向一方側からボルト15,17がそれぞれ通される。各ボルト15の軸部は、懸架ブラケット102の貫通孔102hを貫通し、雌ねじ孔13fに螺合する。各ボルト15の頭部は、懸架ブラケット102から軸線O方向一方へ突出する。なお外輪アタッチメント部材13cの外縁には、懸架ブラケット102を受け入れて係合する所定形状の切欠き13g,13jが形成される。切欠き13gは外輪アタッチメント部材13cの軸線方向一方端面に形成される。雌ねじ孔13fは切欠き13gの内部に形成されて軸線O方向一方を指向する。これにより外輪13は懸架ブラケット102に取付固定される。雌ねじ孔13fは図3に示すように無底の貫通孔であるが、図示しない変形例として有底の穴であってもよい。理解を容易にするため図2では、懸架ブラケット102の一部のみを表し、残部を図略する。
本体ケーシング38の正面部分38fは外輪アタッチメント部材13cの軸線O方向他方端面に面接触する。貫通孔13hは外輪アタッチメント部材13cの外縁に形成された切欠き13jの内部に形成されて軸線O方向に延びる。各ボルト17の軸部は、貫通孔13hを貫通し、正面部分38fに穿設される雌ねじ孔38gに螺合する。これにより外輪13は本体ケーシング38に取付固定される。各ボルト17の頭部は、切欠き13jの内部に位置する。また本体ケーシング38は外輪13を介して懸架ブラケット102に支持される。
なお正面部分38fは減速部31の軸線O方向一方端を覆うケーシング壁部である。懸架ブラケット102は、外輪13および本体ケーシング38と同様、非回転部材である。これに対し内輪12は、車輪ホイールWと一体回転する回転部材である。
切欠き13jと、貫通孔13hと、正面部分38fと面接触する外輪アタッチメント部材13cの軸線O方向他方端面と、外輪アタッチメント部材13c表面のうちボルト17頭部と面接触する平坦なボルト座面は、ケーシングになる正面部分38fと結合するための外輪アタッチメント部材座部である。
切欠き13gと、雌ねじ孔13fと、外輪アタッチメント部材13c表面のうち懸架ブラケット102と軸線方向に密着する平坦面は、車体側メンバになる懸架ブラケット102と結合するための外輪アタッチメント部材座部である。車体側メンバとは、説明する部材からみて車体側に取り付けられる部材をいい、外輪13からみて懸架ブラケット102、サスペンション装置、車体等を含む。
内輪12は内輪筒部12bおよび内輪フランジ12cを含む。内輪筒部12bは外輪13よりも長い円筒体であり、外輪筒部材13bの中心孔に通される。外輪13からインホイールモータ駆動装置10の外部へ突出する内輪筒部12bの軸線O方向一方端部には、内輪フランジ12cが形成される。内輪フランジ12cは円形ではなく、周方向所定間隔で切欠かれる。内輪12は内輪フランジ12cで車輪ホイールWと結合して、車輪と一体回転する。内輪フランジ12cは、ブレーキディスク55および車輪(車輪ホイールW)と同軸に結合するための車輪座部を構成する。
内輪筒部12bは、内輪フランジ12cから軸線O方向他方へ突出する。内輪筒部12bの軸線O方向他方領域外周面と外輪筒部材13b内周面との間の環状空間には、複数列の転動体14m,14nが配置される。内輪筒部12bの軸線O方向中央部の外周面は、第1列の転動体14mの内側軌道面を構成する。内輪筒部12bの軸線O方向他方端部外周には内側軌道輪12rが嵌合する。内側軌道輪12rの外周面は、第2列の転動体14nの内側軌道面を構成する。内輪筒部12bおよび外輪筒部材13b間の環状空間には、シール材16がさらに介在する。シール材16は環状空間の両端を封止して、塵埃および異物の侵入を阻止する。内輪筒部12bの軸線O方向他方端の中心孔には減速部31の出力軸37が差し込まれてスプライン嵌合する。
ここで最も軸線O方向一方側(車幅方向外側)に配置される第1列の転動体14mと、最も軸線O方向他方側(車幅方向内側)に配置される第2列の転動体14nについて附言する。外輪筒部材13bの軸線O方向他方端部は、外輪アタッチメント部材13cから軸線O方向他方へ突出する。かかる外輪筒部材13bの軸線O方向他方端部における内周面は、第2列の転動体14nの外側軌道面13nを構成する。つまり第2列の転動体14nの軸線O方向位置は、外輪アタッチメント部材13cの軸線O方向位置と重ならない。これに対し第1列の転動体14mの軸線O方向位置は、外輪アタッチメント部材13cの軸線O方向位置と重なる。
図3を参照して、転動体14の複列の外側軌道面のうち、最も軸線O方向一方側の外側軌道面13mから最も軸線O方向他方側の外側軌道面13nまでを含む領域を、車輪ハブ軸受部11の軸受領域Lbという。また軸受領域Lbの軸線O方向中心位置を、車輪ハブ軸受部11の軸線方向センタ位置CLという。本実施形態の嵌合面の軸線O方向寸法Lsは、軸線方向センタ位置CLよりも軸線方向一方側(車幅方向外側)に偏って配置される。換言すると、嵌合面の軸線O方向寸法Lsの軸線方向センタ位置CSは、軸受領域Lbの軸線方向センタ位置CLよりも内輪フランジ12cに近くされる。
図2に示すようにモータ部21は、モータ回転軸22、ロータ23、ステータ24、およびモータケーシング25を有し、この順序でモータ部21の軸線Mから外径側へ順次配置される。モータ部21は、インナロータ、アウタステータ形式のラジアルギャップモータであるが、他の形式であってもよい。例えば図示しなかったがモータ部21はアキシャルギャップモータであってもよい。
モータ回転軸22およびロータ23の回転中心になる軸線Mは、車輪ハブ軸受部11の軸線Oと平行に延びる。つまりモータ部21は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oから離れるようオフセットして配置される。具体的には図1に示すようにモータ部の軸線Mは、軸線Oよりも車両前方に配置される。モータ部21の上部には、インホイールモータ駆動装置10の外部から延びる動力線82の一端部が接続固定される。モータ部21は三相交流電動機であり、本実施形態では3本の動力線82が配置される。ただしモータ部21の型式および動力線82の本数はこれに限定されない。
モータケーシング25は略円筒形状であり、図2に示すように軸線M方向一方端で本体ケーシング38の背面部分38bと一体に結合し、軸線M方向他方端を板状のモータケーシングカバー25vで封止される。モータ回転軸22の両端部は、転がり軸受27,28を介して、本体ケーシング38の背面部分38bと、モータ部21のモータケーシングカバー25vに回転自在に支持される。本体ケーシング38、モータケーシング25、およびモータケーシングカバー25vは、インホイールモータ駆動装置10のケーシングを構成する。モータ部21は内輪12を駆動する。
減速部31は、3軸の平行軸歯車減速機であって、モータ部21のモータ回転軸22と同軸に結合する入力軸32sと、入力軸32sの外周面に同軸に設けられる入力歯車32と、複数の中間歯車33,35と、これら中間歯車33,35の中心と結合する中間軸34と、車輪ハブ軸受部11の内輪12と同軸に結合する出力軸37と、出力軸37の外周面に同軸に設けられる出力歯車36と、これら複数の歯車および回転軸を収容する本体ケーシング38を有する。入力軸32sは軸線Mに沿って延び、中間軸34は軸線Nに沿って延び、出力軸37は軸線Oに沿って延びる。
入力歯車32は小径の外歯歯車であり、軸線Mに沿って配置される入力軸32sの軸線M方向他方端部外周に形成される多数の歯である。入力軸32sの軸線方向他方端部には軸線Mに沿って延びる中心穴が形成され、モータ回転軸22の軸線方向一方端部を差し込まれて相対回転不可能に嵌合する。入力軸32sは入力歯車32の両端側で、転がり軸受32m,32nを介して、本体ケーシング38の正面部分38fおよび背面部分38bに回転自在に支持される。
減速部31の中間軸34は軸線Oと平行に延び、中間軸34の両端は、軸受34m,34nを介して、本体ケーシング38の正面部分38fおよび背面部分38bに回転自在に支持される。中間軸34の中央部には第1中間歯車33および第2中間歯車35が、中間軸34の軸線Nと同軸に設けられる。第1中間歯車33および第2中間歯車35は、外歯のはすば歯車であり、第1中間歯車33の径が第2中間歯車35の径よりも大きい。第1中間歯車33は、第2中間歯車35よりも軸線N方向他方側に配置されて、入力歯車32と噛合する。第2中間歯車35は、第1中間歯車33よりも軸線N方向一方側に配置されて、出力歯車36と噛合する。
中間軸34の軸線Nは、図1に示すように、軸線Oおよび軸線Mよりも上方に配置される。また中間軸34の軸線Nは、軸線Oよりも車両前方、軸線Mよりも車両後方に配置される。減速部31は、互いに平行に延びる軸線O,N,Mを有する3軸の平行軸歯車減速機であることが理解される。
図2に示す出力歯車36は外歯歯車であり、出力軸37の中央部に同軸に設けられる。出力軸37は軸線Oに沿って延びる。出力軸37の軸線O方向一方端部は、内輪12の中心孔に差し込まれて相対回転不可能に嵌合する。かかる嵌合は、スプライン嵌合あるいはセレーション嵌合である。出力歯車36の歯先および歯底は、内輪12の内輪フランジ12cよりも大径であるが、出力歯車36の歯先円は外輪アタッチメント部材13cよりも小さい。出力歯車36の軸線O方向一方端部は、転がり軸受36mを介して、本体ケーシング38の正面部分38fに回転自在に支持される。出力軸37の軸線O方向他方端部は、転がり軸受36nを介して、本体ケーシング38の背面部分38bに回転自在に支持される。
減速部31は、小径の駆動歯車と大径の従動歯車の噛合、即ち入力歯車32と第1中間歯車33の噛合、また第2中間歯車35と出力歯車36の噛合、によりモータ回転軸22の回転を減速して出力軸37に伝達する。
本体ケーシング38は、筒状部分と、当該筒状部分の両端を覆う正面部分38fおよび背面部分38bを含む。筒状部分は、互いに平行に延びる軸線O、N、Mを取り囲むように減速部31の内部部品を覆う。正面部分38fは、減速部31の内部部品を軸線方向一方側から覆う。正面部分38fには開口38hが形成される。開口38hは外輪アタッチメント部材13cの筒状部13eを受け入れるように嵌合する。開口38hを区画する環状領域38cは、軸線O方向一方を指向する平坦面を含み、この平坦面から軸線O方向他方へ延びる雌ねじ孔38gが穿設される。環状領域38cは、半径方向寸法が軸線方向厚みよりも大きい。また環状領域38cの軸線方向厚みは、本体ケーシング38の他の部分よりも厚肉にされる。
雌ねじ孔38gは、軸線Oを中心として周方向に間隔を空けて複数配置され、当該配置は前述した外輪アタッチメント部材13cの貫通孔13hに対応する。なお雌ねじ孔38gは、有底の穴である。これにより本体ケーシング38の密封性に資する。
背面部分38bは、減速部31の内部部品を軸線方向他方側を覆う。本体ケーシング38の背面部分38bは、モータケーシング25と結合し、減速部31およびモータ部21を仕切る隔壁でもある。モータケーシング25は本体ケーシング38に支持されて、本体ケーシング38から軸線方向他方側へ突出する。かくして本体ケーシング38は、減速部31の全ての回転要素(回転軸および歯車)を収容し、モータ部21から内輪12までの駆動伝達経路を覆う。
入力軸32sと、中間軸34と、出力軸37は、上述した転がり軸受によって両持ち支持される。互いに平行な軸線M,N,Oの軸線方向位置に関し、軸線方向一方側の転がり軸受32m,34m,36mの軸線方向位置は、互いに重なる。より好ましくは図2に示すように、これら転がり軸受32m,34m,36mの軸線方向寸法が同一にされてこれらの軸線方向位置はすべて一致する。軸線方向他方側の転がり軸受32n,34n,36nの軸線方向位置は、互いに重なる。より好ましくは、これら転がり軸受32n,34n,36nの軸線方向寸法が同一にされてこれらの軸線方向位置はすべて一致する。第2中間歯車35および出力歯車36は、軸線方向一方側に配置され、これら歯車の軸線方向位置は、互いに重なる。より好ましくは、これら歯車の軸線方向寸法が同一にされてこれらの軸線方向位置は一致する。入力歯車32および第1中間歯車33は、軸線方向他方側に配置され、これら歯車の軸線方向位置は、互いに重なる。より好ましくは、これら歯車の軸線方向寸法が同一にされてこれらの軸線方向位置は一致する。これにより減速部31の軸線方向寸法を小さくすることができる。
ところで第1実施形態によれば、外輪13、外輪13の中心孔に通されて外輪13から軸線O方向一方側へ突出する内輪12、および外輪13と内輪12との間の環状空間に配置される複数の転動体14を有する車輪ハブ軸受部11と、内輪12を駆動するモータ部21と、モータ部21から内輪12までの駆動伝達経路を覆う本体ケーシング38とを備える。外輪13は、転動体14が転走する外側軌道面13m,13nを有する外輪筒部材13bと、外輪筒部材13bを受け入れる貫通孔を有し外輪筒部材13bの外周面に所定の軸線O方向寸法Lsで嵌合する外輪アタッチメント部材13cと、外輪アタッチメント部材13cに設けられて本体ケーシング38または懸架ブラケット102と結合するための外輪アタッチメント部材座部(雌ねじ孔13f,貫通孔13h,切欠き13g,13j)を含む。内輪12は、外輪13から突出する軸線O方向一方端部に、車輪ホイールWと結合するための車輪座部(内輪フランジ12c)を有する。車輪ハブ軸受部11の軸線O方向に関し、本体ケーシング38およびモータ部21は車輪ハブ軸受部11の軸線O方向他方側に配置される。車輪ハブ軸受部11の転動体14は軸線O方向に間隔を空けて複列で配置され、複列の外側軌道面13m,13nのうち最も軸線O方向一方側の外側軌道面13mから最も軸線O方向他方側の外側軌道面13nまでを含む領域Lbの軸線O方向中心位置を車輪ハブ軸受部11の軸線方向センタ位置CLとして、嵌合面の軸線O方向寸法Lsは、軸線方向センタ位置CLよりも軸線O方向一方側(車幅方向外側)に偏って配置される。
かかる第1実施形態によれば、外輪13が従来のようなフランジを含む一体物ではなく、外輪筒部材13bとは別部材の外輪アタッチメント部材13cとして外輪筒部材13bの外周に取り付け固定される。これにより外輪アタッチメント部材13cの形状を自由に作成し得て、外輪アタッチメント部材座部(雌ねじ孔13f,貫通孔13h,切欠き13g,13j)のレイアウト自由度が大きくなり、従来のようなボルトスペースを解消してインホイールモータ駆動装置10の軸線O方向寸法を従来よりも小さくできる。また外輪アタッチメント部材13cが車体側メンバになる懸架ブラケット102に連結されることにより、輪重がインホイールモータ駆動装置10の本体ケーシング38に作用することを回避することができる。また車幅方向外側からボルト17を緩めて、車輪ハブ軸受部11を本体ケーシング38から車幅方向外側へ分離することが可能となり、インホイールモータ駆動装置10の点検および車輪ハブ軸受部11の整備交換が容易になる。
第1実施形態では、外輪アタッチメント部材13cがボルト15で懸架ブラケット102と直接結合し、ボルト17で本体ケーシング38と直接結合する。ただし懸架ブラケット102は本体ケーシング38から離隔しており、両者は直接結合しない。このように外輪アタッチメント部材13cが外輪アタッチメント部材座部で車体側メンバになる懸架ブラケット102と連結されることにより、輪重がインホイールモータ駆動装置10の本体ケーシング38に作用することを回避することができる。
また第1実施形態によれば、外輪筒部材13bの軸線O方向一方端には外径側に突出する突起13dが形成され、外輪筒部材13bの軸線O方向他方側の外周面には規制部材としてのスナップリング13rが附設され、外輪アタッチメント部材13cは、突起13dおよびスナップリング13r間に介在する。これにより外輪アタッチメント部材13cは、外輪筒部材13bからみて相対移動を規制される。
また第1実施形態によれば、外輪アタッチメント部材13cの外輪アタッチメント部材座部(雌ねじ孔13f,貫通孔13h,切欠き13g,13j)は、内輪座部(内輪フランジ12c)よりも外径側に設けられる、これにより内輪座部(内輪フランジ12c)と外輪アタッチメント部材13cの間にボルト15,17を受け入れるためのボルトスペースを確保する必要がなくなる。したがって従来よりも内輪座部(内輪フランジ12c)を外輪アタッチメント部材13cに近づけるように配置して、外輪13から突出する内輪12の突出長を短くし、従来よりも小型化されたインホイールモータ駆動装置10を提供することができる。
また第1実施形態によれば、外輪アタッチメント部材13cは軸線O方向他方側に突出して本体ケーシング38と嵌合する筒状部13eを含む。これにより本体ケーシング38を外輪13に確りと取付固定することができる。
また第1実施形態によれば、筒状部13eは外輪アタッチメント部材13cの貫通孔13sの内周面に沿って配置され、筒状部13eの内周面が嵌合面の軸線O方向寸法Lsに含まれる。これにより嵌合面の軸線O方向寸法Lsを十分確保して、外輪アタッチメント部材13cを外輪筒部材13bに確りと取付固定することができる。
次に本発明の第2実施形態を説明する。図6は本発明の第2実施形態を示す展開断面図である。この第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この第2実施形態では、ボルト19で懸架ブラケット102を本体ケーシング38の環状領域38cに結合する。
環状領域38cの厚みt2は、本体ケーシング38の他の部分の厚みt1よりも厚肉にされる。また環状領域38cには、外輪アタッチメント部材13cよりもさらに外径側で軸線O方向一方に突出する座面38aが、周方向に間隔を空けて複数形成される。各座面38aには雌ねじ孔38iが穿設される。座面38aおよび雌ねじ孔38iは、懸架ブラケット102の貫通孔102hに対応する配置とされ、雌ねじ孔38iと貫通孔102hは一致して、軸線Oと平行に延びる。ボルト19は軸線方向一方から貫通孔102hに差し込まれ、雌ねじ孔38iに螺合する。
第2実施形態によれば、本体ケーシング38が外輪13を受け入れる開口38hと、開口38hを区画する環状領域38cを含み、環状領域38cの一部で外輪アタッチメント部材13cの外輪アタッチメント部材座部(貫通孔13hおよび他方端面)と結合し、他の一部には懸架ブラケット102と連結するための連結座部(雌ねじ孔38i)が設けられる。これにより輪重は本体ケーシング38のうち厚肉の環状領域38cに作用するが、本体ケーシング38のうち薄肉の他の部分には作用しない。したがって本体ケーシング38にリブ等を設けて補剛する必要がなく、インホイールモータ駆動装置10の軽量化に資する。なお第2実施形態では、本体ケーシング38がボルト17で外輪アタッチメント部材13cと直接結合し、ボルト19で懸架ブラケット102と直接結合するが、外輪アタッチメント部材13cと懸架ブラケット102は直接結合しない。懸架ブラケット102は外輪アタッチメント部材13cと単に接触する。
次に本発明の第3実施形態を説明する。図7は本発明の第3実施形態を示す展開断面図である。この第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この第3実施形態は、図3に示すボルト15の締結構造と、図6に示すボルト19の締結構造を組み合せたものである。
第3実施形態によれば、本体ケーシング38が外輪13を受け入れる開口38hと、開口38hを区画する環状領域38cを含み、環状領域38cの一部で外輪アタッチメント部材13cの外輪アタッチメント部材座部(貫通孔13hおよび他方端面)と結合し、他の一部には懸架ブラケット102と連結するための連結座部(雌ねじ孔38i)が設けられる。これにより輪重は本体ケーシング38のうち厚肉の環状領域38cに作用するが、本体ケーシング38のうち薄肉の他の部分には作用しない。したがって本体ケーシング38にリブ等を設けて補剛する必要がなく、インホイールモータ駆動装置10の軽量化に資する。なお第3実施形態では、懸架ブラケット102がボルト15で外輪アタッチメント部材13cと直接結合し、ボルト19で本体ケーシング38と直接結合する。ただし前述したボルト17のような外輪アタッチメント部材13cと本体ケーシング38と直接結合する締結構造を有しない。外輪アタッチメント部材13cと本体ケーシング38は直接嵌合するが、両者の固定はボルト15により行う。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば、本実施形態に係る車輪ハブ軸受部11は、内輪筒部12bの軸線O方向中央部の外周面に第1列の転動体14mの内側軌道面を構成し、内輪筒部12bの軸線O方向他方端部外周には内側軌道輪12rが嵌合する構造として説明していたがこれに限定されるものではなく、内輪筒部12bの軸線O方向中央部の外周面に第1列の転動体14mの内側軌道面を構成せず、別部材に第1列の転動体14mの内側軌道面を構成し、当該別部材を内輪筒部12bの軸線O方向中央部に嵌合する構造としてもよい。
この発明になるインホイールモータ駆動装置は、電気自動車およびハイブリッド車両において有利に利用される。
10 インホイールモータ駆動装置、 11 車輪ハブ軸受部、
12 内輪、 12b 内輪筒部、 12c 内輪フランジ、
12r 内側軌道輪、 13 外輪、 13b 外輪筒部材、
13c 外輪アタッチメント部材、 13d 突起、
13e 筒状部、 13f 雌ねじ孔(結合座部)、
13r スナップリング(規制部材)、 13h 貫通孔(結合座部)、
13s 貫通孔、 13m,13n 外側軌道面、
14,14m,14n 転動体、 15,17,19 ボルト、
21 モータ部、 31 減速部、 32 入力歯車、
32s 入力軸、 36 出力歯車、 37 出力軸、
38 本体ケーシング、 38a 座面、 38b 背面部分、
38c 環状領域、 38f 正面部分、 38h 開口、
55 ブレーキディスク、 70 サスペンション装置、
71 ロアアーム、 71a 車幅方向外側端、 73 ストラット、
74 ダンパ、 75 ロアコイルスプリングシート、
80 タイロッド、 82 動力線、 102 懸架ブラケット、
102a 中央部、 102b 上側懸架ブラケット、
102c 開口、 102d 下側懸架ブラケット、
CL 軸線方向センタ位置、 Lb 軸受領域、
Ls 嵌合面の軸線方向寸法、 M,N,O 軸線、 S ボルトスペース、
W 車輪ホイール。

Claims (7)

  1. 外輪、前記外輪の中心孔に通されて前記外輪から軸線方向一方側へ突出する内輪、および前記外輪と前記内輪との間の環状空間に配置される複数の転動体を有する車輪ハブ軸受部と、
    前記内輪を駆動するモータ部と、
    前記モータ部から前記内輪までの駆動伝達経路を覆うケーシングとを備え、
    前記外輪は、前記転動体が転走する外側軌道面を有する外輪筒部材と、前記外輪筒部材を受け入れる貫通孔を有し前記外輪筒部材の外周面に所定の軸線方向寸法で嵌合する外輪アタッチメント部材と、前記外輪アタッチメント部材に設けられて前記ケーシングと車体側メンバの両方またはどちらか一方と結合するための外輪アタッチメント部材座部を含み、
    前記内輪は、前記外輪から突出する軸線方向一方端部に、車輪と結合するための内輪座部を有し、
    前記車輪ハブ軸受部の軸線方向に関し、前記モータ部は前記車輪ハブ軸受部の軸線方向他方側に配置され、
    前記外側軌道面は複列であって軸線方向に間隔を空けて配置され、
    前記転動体は前記外側軌道面の各列を転走するよう軸線方向に間隔を空けて複列で配置される、インホイールモータ駆動装置。
  2. 複列の前記外側軌道面のうち最も軸線方向一方側の外側軌道面から最も軸線方向他方側の外側軌道面までを含む領域の軸線方向中心位置を、前記車輪ハブ軸受部の軸線方向センタ位置とし、
    前記外輪アタッチメント部材は前記軸線方向センタ位置よりも軸線方向一方側に偏って配置される、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記外輪筒部材の軸線方向一方端には、外径側に突出する突起が形成され、前記外輪筒部材の軸線方向他方側の外周面には規制部材が附設され、
    前記外輪アタッチメント部材は、前記突起および前記規制部材間に介在する、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
  4. 前記外輪アタッチメント部材座部は、前記内輪座部よりも外径側に設けられる、請求項1〜3のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
  5. 前記ケーシングは、前記外輪を受け入れる開口と、前記開口を区画する環状領域を含み、
    前記環状領域の一部が前記外輪アタッチメント部材座部と結合し、前記環状領域の他の一部には車体側メンバと連結するための連結座部が設けられる、請求項1〜4のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
  6. 前記外輪アタッチメント部材は、軸線方向他方側に突出して前記ケーシングと嵌合する筒状部を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
  7. 前記筒状部は、前記外輪アタッチメント部材の内周面に沿って配置され、
    前記筒状部の内周面が前記所定の軸線方向寸法に含まれて前記外輪筒部材に嵌合する、請求項6に記載のインホイールモータ駆動装置。
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