JP2018150986A - 動力装置 - Google Patents

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Kenji Honda
健司 本多
中山 茂
Shigeru Nakayama
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Abstract

【課題】動力源からのトルクを前記第1及び第2被駆動部に、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1動作モードと、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達する第2動作モードを選択でき、それにより運転性を向上させることができる動力装置を提供する。【解決手段】動力装置は、回転動力を出力可能な動力源3と、動力源3からのトルクを第1及び第2被駆動部WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1伝達経路、及び、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達する第2伝達経路を有する動力伝達装置41と、動力源3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断する第1接断機構10と、動力源3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断する第2接断機構11と、を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、第1被駆動部及び第2被駆動部を駆動するための動力装置に関する。
従来、この種の動力装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この動力装置は、動力源としての回転電機と、ベベルギヤタイプの差動装置と、シングルピニオンタイプの第1遊星歯車装置及び第2遊星歯車装置を備えている。第1遊星歯車装置は、互いに同軸状に回転自在に設けられた第1サンギヤ及び第2サンギヤと、第1及び第2サンギヤに噛み合う第1ダブルピニオンギヤと、第1ダブルピニオンギヤを回転自在に支持する第1キャリヤを有している。第2遊星歯車装置は、第1サンギヤ、第2サンギヤ、第1ダブルピニオンギヤ、及び第1キャリヤとそれぞれ同様に構成された第3サンギヤ、第4サンギヤ、第2ダブルピニオンギヤ、及び第2キャリヤを有している。
差動装置の左サイドギヤ及び第1サンギヤは、左車輪に一体に回転するように連結されており、差動装置の右サイドギヤは、右車輪に一体に回転するように連結されている。また、第2及び第4サンギヤは、互いに一体に回転するように連結されており、第1キャリヤは、回転電機のロータに一体に回転するように連結されている。さらに、第3サンギヤ及び差動装置のデフケースは、互いに一体に回転するように連結されており、第2キャリヤは、不動のケースに固定されている。
以上の構成の動力装置では、回転電機からのトルクは、第1及び第2遊星歯車装置ならびに差動装置を介して、左右の車輪に伝達される。この場合、回転電機から正転方向のトルクが出力されているときには、左車輪には逆転方向のトルクが、右車輪には正転方向のトルクが、それぞれ作用する一方、回転電機から逆転方向のトルクが出力されているときには、左車輪には正転方向のトルクが、右車輪には逆転方向のトルクが、それぞれ作用する。
特開2010−210055号公報
上述したように、従来の動力装置では、回転電機からのトルクが左右の車輪に常に、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達されるにすぎないため、高い運転性を得ることができない。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、動力源からのトルクを前記第1及び第2被駆動部に、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1動作モードと、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達する第2動作モードを選択でき、それにより運転性を向上させることができる動力装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、第1被駆動部(実施形態における(以下、本項において同じ)左車輪WL)及び第2被駆動部(右車輪WR)を駆動するための動力装置であって、回転動力を出力可能な動力源(回転電機3)と、動力源からのトルクを第1及び第2被駆動部に、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1伝達経路、及び、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達する第2伝達経路を有する動力伝達装置41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221と、動力源と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断する第1接断機構(第1クラッチ10)と、動力源と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断する第2接断機構(第2クラッチ11)と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、第1接断機構で動力源と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2接断機構で動力源と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、動力源からのトルクを第1及び第2被駆動部に、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1動作モードが選択される。また、第1接断機構で動力源と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2接断機構で動力源と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、動力源からのトルクを第1及び第2被駆動部に、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達する第2動作モードが選択される。このように、第1動作モードと第2動作モードを選択でき、それにより運転性を向上させることができる。
本発明の第1実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図1の動力装置の回転電機などを制御するためのECUなどを示すブロック図である。 図1の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図1の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図1の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図1の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 本発明の第2実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図7の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図7の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第3実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図10の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図10の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第4実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図13の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図13の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図13の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図13の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 本発明の第5実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図18の動力装置の回転電機などを制御するためのECUなどを示すブロック図である。 図18の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図18の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第6実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図22の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図22の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図22の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図22の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 本発明の第7実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図27の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図27の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第8実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図30の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図30の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図30の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図30の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 第8実施形態の変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第9実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図36の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図36の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 第9実施形態の第1変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 第9実施形態の第2変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 第9実施形態の第3変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第10実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図42の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図42の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図42の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図42の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 第10実施形態の変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第11実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図48の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図48の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 第11実施形態の第1変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 第11実施形態の第2変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 第11実施形態の第3変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第12実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図54の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図54の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図54の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図54の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 第12実施形態の変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第13実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図60の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図60の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第13実施形態の第1変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第13実施形態の第2変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第13実施形態の第3変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第14実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図66の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図66の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図66の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図66の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 本発明の第15実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図71の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図71の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図71の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図71の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 本発明の第16実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図76の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図76の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図76の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図76の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 本発明の第17実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図81の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図81の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図81の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図81の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。 第17実施形態の変形例による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 本発明の第18実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図87の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図87の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第19実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図90の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図90の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 本発明の第20実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の車輪とともに示すスケルトン図である。 図93の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、4WDモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図93の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係を、TVモード中で、かつ車両の直進中について示す共線図である。 図93の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の左旋回中について示す共線図である。 図93の動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を、TVモード中で、かつ車両の右旋回中について示す共線図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示す本発明の第1実施形態による動力装置は、例えば四輪車両(図示せず)に適用されたものであり、動力源としての回転電機3と、回転電機3の回転動力を車両の左右の車輪WL、WRに伝達するための動力伝達装置4を備えている。これらの左右の車輪WL、WRは、車両の前輪及び後輪の一方であり、車両の前輪及び後輪の他方は、例えば内燃機関によって駆動される。左右の車輪WL、WRには、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された左右の駆動軸SL、SRが、それぞれ連結されている。左右の駆動軸SL、SRは、互いに同軸状に配置されている。
回転電機3は、例えばACモータであって、複数の鉄芯やコイルなどで構成されたステータと、複数の磁石などで構成されたロータ(いずれも図示せず)と、ロータに一体に設けられた回転軸3aを有するとともに、その軸線が上記の左右の駆動軸SL、SRと平行になるように配置されており、右車輪WR側に位置している。回転軸3aには、ギヤ3bが一体に設けられている。回転電機3では、ステータに電力が供給されると、供給された電力は、回転動力に変換され、ロータから回転軸3aに出力される。この場合、回転軸3aの回転方向は、正転方向と逆転方向に変更可能である。また、回転軸3aに回転動力が入力されると、この回転動力は、電力に変換され(発電)、ステータに出力される。
また、回転電機3のステータは、インバータなどの電気回路で構成されたパワードライブユニット(以下「PDU」という)21を介して、充電・放電可能なバッテリ22に電気的に接続されており、バッテリ22との間で電気エネルギを授受可能である。図2に示すように、PDU21には、後述するECU2が電気的に接続されており、ECU2は、PDU21を制御することによって、回転電機3に供給する電力と、回転電機3で発電する電力と、回転電機3の回転数(回転軸3aの回転数)を制御する。以下、バッテリ22から回転電機3に電力を供給し、回転電機3から回転動力を出力することを「力行」といい、回転電機3に入力された回転動力を用いて発電した電力をバッテリ22に充電したり、他の電気機器に供給したりすることを「回生」という。
動力伝達装置4は、回転電機3からの回転動力を左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1伝達経路を構成する遊星歯車装置5と、互いに反対方向のトルクが伝達されるように伝達する第2伝達経路を構成する第1差動装置6、第2差動装置7、第1ギヤ機構8及び第2ギヤ機構9と、回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断するための第1クラッチ10と、回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断するための第2クラッチ11を有している。
遊星歯車装置5は、一般的なダブルピニオンタイプのものであり、サンギヤSと、サンギヤSに噛み合う複数の第1ピニオンギヤPG1(2つのみ図示)と、サンギヤSの外周に設けられたリングギヤR(内歯ギヤ)と、リングギヤR及び第1ピニオンギヤPG1に噛み合う複数の第2ピニオンギヤPG2(2つのみ図示)と、第1及び第2ピニオンギヤPG1、PG2を自転自在にかつサンギヤSに対して公転自在に支持するキャリヤCを有している。また、遊星歯車装置5は、左右の駆動軸SL、SRと同軸状に配置されており、右車輪WR側に位置している。
上記のサンギヤSは、左駆動軸SLの右端部に一体に設けられており、左駆動軸SLを介して、左車輪WLに一体に回転するように連結されている。キャリヤCは、互いに対向するドーナツ板状の左フランジ及び円板状の右フランジと、両フランジとの間に設けられた、第1及び第2ピニオンギヤPG1、PG2を回転自在に支持するための支軸を一体に有しており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。また、キャリヤCは、右駆動軸SRの左端部に取り付けられており、右駆動軸SRを介して、右車輪WRに一体に回転するように連結されている。また、リングギヤRの外周面には、外歯ギヤであるギヤ5aが形成されており、リングギヤRの歯数は、サンギヤSの歯数の2倍に設定されている。
前記第1及び第2差動装置6、7は、一般的なベベルギヤタイプのディファレンシャルギヤであり、互いに同軸状に配置されるとともに、それらの軸線が回転電機3の軸線及び左右の駆動軸SL、SRと平行になるように、配置されている。第1差動装置6は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された第1デフケースDC1と、第1デフケースDC1に相対的に回転自在に収容された第1サイドギヤSI1及び第2サイドギヤSI2と、両サイドギヤSI1、SI2に噛み合う複数の第1ピニオンギヤPI1(2つのみ図示)を有しており、回転電機3側に配置されている。第1ピニオンギヤPI1は、第1デフケースDC1に収容されるとともに、自転自在にかつ第1及び第2サイドギヤSI1、SI2に対して公転自在に支持されている。
また、第1デフケースDC1には、ギヤ6aが一体に設けられており、ギヤ6aは、第1ギヤ18に噛み合っている。第1サイドギヤSI1は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された第2出力軸17に一体に設けられており、第2出力軸17と一体に回転自在である。第2サイドギヤSI2は、第2差動装置7側に配置されるとともに、軸を介して、前記第1ギヤ機構8の後述するギヤ8aに一体に回転するように連結されている。ギヤ8aは、第1差動装置6と第2差動装置7との間に配置されている。
第2差動装置7は、第1差動装置6と同様に構成されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された第2デフケースDC2と、第2デフケースDC2に相対的に回転自在に収容された第3サイドギヤSI3及び第4サイドギヤSI4と、両サイドギヤSI3、SI4に噛み合う複数の第2ピニオンギヤPI2(2つのみ図示)を有している。第2ピニオンギヤPI2は、第2デフケースDC2に収容されるとともに、自転自在にかつ第3及び第4サイドギヤSI3、SI4に対して公転自在に支持されている。第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数は、互いに同じ値に設定されている。
また、第2デフケースDC2には、ギヤ7aが一体に設けられており、ギヤ7aは、第2ギヤ19に噛み合っている。第2ギヤ19は、回転自在の軸を介して、第1ギヤ18に一体に回転するように連結されている。第1デフケースDC1のギヤ6a、第1ギヤ18、第2デフケースDC2のギヤ7a及び第2ギヤ19の歯数は、第1デフケースDC1のギヤ6aと第1ギヤ18のギヤ比、及び、第2デフケースDC2のギヤ7aと第2ギヤ19のギヤ比が互いに同じ値になるように、設定されている。
第3サイドギヤSI3は、第1差動装置6と反対側に配置されるとともに、軸を介してケース25に取り付けられており、ケース25は、車両のシャーシ(図示せず)に固定されている。これにより、第3サイドギヤSI3は回転不能である。また、第4サイドギヤSI4は、第1差動装置6側に配置されており、軸を介して、前記第2ギヤ機構9の後述するギヤ9aに一体に回転するように連結されている。ギヤ9aは、第1ギヤ機構8のギヤ8aと第2差動装置7との間に配置されている。
第1ギヤ機構8は、前記ギヤ8aと、ギヤ8aに噛み合うとともに、ギヤ8aよりも歯数が多いギヤ8bを有しており、ギヤ8bは、中空の軸20の左端部に一体に設けられている。軸20は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されるとともに、右端部がキャリヤCの左フランジに取り付けられており、その内側には、左駆動軸SLが相対的に回転自在に嵌合している。以上により、ギヤ8b、軸20及びキャリヤCは、互いに一体に回転自在である。第2ギヤ機構9は、前記ギヤ9aと、ギヤ9aに噛み合うとともに、ギヤ9aよりも歯数が多いギヤ9bを有しており、ギヤ9bは、左駆動軸SLに一体に設けられている。また、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。
以上の構成により、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1と一体の第2出力軸17は、第1差動装置6、第1ギヤ機構8(ギヤ8a、8b)、軸20、キャリヤC及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに連結されており、第1差動装置6、第1及び第2ギヤ18、19、第2差動装置7、第2ギヤ機構9(ギヤ9a、9b)、ならびに左駆動軸SLを介して、左車輪WLに連結されている。
前記第1及び第2クラッチ10、11は、周知のドグクラッチであるため、以下、それらの構成及び動作について簡単に説明する。第1及び第2クラッチ10、11は、複数のドグ歯10a、11aや、ハブ12、スリーブ13、電磁式のアクチュエータ14(図2参照)、入力軸15、第1出力軸16、前記第2出力軸17などで構成されている。ハブ12、スリーブ13、及びアクチュエータ14は、第1及び第2クラッチ10、11に対して兼用されており、ドグ歯10a、11a、ハブ12、スリーブ13、入力軸15、第1及び第2出力軸16、17は、第1及び第2差動装置6、7と同軸状に、かつ、遊星歯車装置5の付近に配置されている。
ハブ12は、円環状に形成され、その外周にスプライン歯(図示せず)を有しており、入力軸15に一体に設けられている。入力軸15は、中空状に形成され、ギヤ15aが一体に設けられるとともに、その内側には、第2出力軸17が相対的に回転自在に嵌合している。上記のギヤ15aは、前述した回転電機3のギヤ3bに噛み合っており、入力軸15は、ギヤ15a及びギヤ3bを介して、回転電機3の回転軸3aに連結されている。スリーブ13は、ハブ12と同様、円環状に形成されるとともに、軸線方向の両側に設けられたドグ歯(図示せず)を有し、ハブ12にスプライン嵌合しており、ハブ12に対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。
また、第1クラッチ10のドグ歯10aは、前記第1出力軸16に一体に設けられている。第1出力軸16は、中空状に形成され、ギヤ16aが一体に設けられており、その内側には、上記の入力軸15が相対的に回転自在に嵌合している。また、ギヤ16aは、遊星歯車装置5のギヤ5aに噛み合っている。以上の構成により、第1出力軸16は、ギヤ16a、ギヤ5a、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに連結されている。
また、第2クラッチ11のドグ歯11aは、前述した第1サイドギヤSI1と一体の第2出力軸17に一体に設けられており、ハブ12は、ドグ歯10aとドグ歯11aとの間に配置されている。アクチュエータ14は、スリーブ13を駆動するためのものであり、ECU2に接続されている。
以上の構成の第1及び第2クラッチ10、11では、スリーブ13が図1に示す中立位置に位置しているときには、入力軸15と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、17とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸15と第1及び第2出力軸16、17との間が遮断される。
また、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸15と第2出力軸17との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に回転動力が伝達されると、伝達された回転動力は、第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ5a、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第1実施形態において、これらの第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ5a、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸15と第2出力軸17との間が接続されるとともに、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8(ギヤ8a、8b)、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達されるとともに、第1差動装置6、第1及び第2ギヤ18、19、第2差動装置7、第2ギヤ機構9(ギヤ9a、9b)、ならびに左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第1実施形態において、これらの第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8、軸20、キャリヤC、右駆動軸SR、第1及び第2ギヤ18、19、第2差動装置7、第2ギヤ機構9、ならびに左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14によりスリーブ13を駆動することによって、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。ECU2は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、図2に示すように、ECU2には、操舵角センサ31から車両のハンドル(図示せず)の操舵角θを表す検出信号が、車速センサ32から車両の車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ33から車両のアクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、入力される。ECU2にはさらに、電流電圧センサ34から、バッテリ22に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が入力される。ECU2は、電流電圧センサ34からの検出信号に基づいて、バッテリ22の充電状態を算出する。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAM及びROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサ31〜34からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を制御する。これにより、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTV(Torque vectoring)モードが設定されている。以下、図3〜図8を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。これらの4WDモード及びTVモードは、本発明における第1及び第2動作モードにそれぞれ相当する。
図3は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続され、前述した遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が遮断され、前述した第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ15a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤSは左車輪WLと一体に回転自在であり、キャリヤCは右車輪WRと一体に回転自在である。さらに、遊星歯車装置5がダブルピニオンタイプのものであるので、サンギヤS、リングギヤR及びキャリヤCの回転数は、それらの関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある。
また、周知のように、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1、第1デフケースDC1、及び第2サイドギヤSI2の回転数は、それらの関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にあり、第2差動装置7の第3サイドギヤSI3、第2デフケースDC2及び第4サイドギヤSI4の回転数も、それらの関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある。さらに、第1デフケースDC1のギヤ6a、第1及び第2ギヤ18、19、ならびに第2デフケースDC2のギヤ7aの噛み合い関係及びギヤ比の関係から、第1及び第2デフケースDC1、DC2は互いに同じ方向に回転するとともに、それらの回転数が互いに同じになる。また、第3サイドギヤSI3は、ケース25に連結され、回転不能である。
さらに、第2サイドギヤSI2及びギヤ8aが、キャリヤC、右車輪WR及びギヤ8bが、それぞれ互いに一体に回転自在であり、ギヤ8a及び8bが互いに噛み合っている。また、第4サイドギヤSI4及びギヤ9aが、サンギヤS、左車輪WL及びギヤ9bが、それぞれ互いに一体に回転自在であり、ギヤ9a及び9bが互いに噛み合っている。さらに、第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数は、互いに同じ値に設定されており、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。
以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図3の共線図のように表される。この共線図及び後述する他の共線図では、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、縦線の一端に記載された各要素の回転数に相当し、黒丸は、回転数が常に値0であることを示している。なお、この共線図及び後述する他の共線図(他の実施形態を含む)において、回転数を表すための単一の縦線に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
図3を例に挙げて説明すると、図3の左側から2本目の縦線上の上側の白丸は、左車輪WL、サンギヤS及びギヤ9bの回転数を表し、この縦線上の下側の白丸は、第2サイドギヤSI2及びギヤ8aの回転数を表している。また、図3の中央の縦線上の上側の白丸は、回転電機3及びリングギヤRの回転数を表し、この縦線上の下側の白丸は、第1及び第2デフケースDC1、DC2の回転数を表している。さらに、図3の右側から2本目の縦線上の上側の白丸は、右車輪WR、キャリヤC及びギヤ8bの回転数を表し、この縦線上の下側の白丸は、第4サイドギヤSI4及びギヤ9aの回転数を表している。
また、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離と、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離とは、厳密には互いに等しいが、図3及び後述する他の共線図では便宜上、後者が前者よりも短く描かれている。このことは、第2デフケースDC2、第3及び第4サイドギヤSI3、SI4の回転数を表すための縦線についても同様である。さらに、前述したように第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数が互いに同じ値に設定されていることから明らかなように、図3及び後述する他の共線図における各種の要素の縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
図3に示すように、動力装置は、回転不能な1個の要素と回転可能な7個の要素から成る計8個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係は、共線図において5本の直線L1、L2、L3、L4及びL5で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L5の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われる。図3及び後述する他の共線図において、TMは回転電機3のトルクであり、RWL及びRWRはそれぞれ、左右の車輪WL、WRの反力トルクである。前述したように、リングギヤRの歯数がサンギヤSの歯数の2倍に設定されているため、共線図において、リングギヤRの回転数を表すための縦線とサンギヤSの回転数を表すための縦線との間の距離と、リングギヤRの回転数を表すための縦線とキャリヤCの回転数を表すための縦線との間の距離とは、互いに等しい。このため、図3から明らかなように、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、遊星歯車装置4はディファレンシャルギヤとして機能し、左右の車輪WL、WRは差回転可能である。
なお、図3は、4WDモード中、回転電機3からリングギヤRに正転方向に回転させる回転動力を出力した場合における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示しており、この場合には、同図に示すように、左右の車輪WL、WRはいずれも、正転方向のトルクが伝達されることで、正転方向に回転するように駆動され、それにより車両が前進する。一方、回転電機3からリングギヤRに逆転方向に回転させる回転動力を出力した場合には、左右の車輪WL、WRは逆転方向に回転するように駆動され、それにより車両が後退する。また、図3から明らかなように、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図4は、前記TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、回転電機3に連結された入力軸15と、第1サイドギヤSI1と一体の第2出力軸17との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1サイドギヤSI1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなり、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ9b及びギヤ8bの回転数が互いに等しくなることと、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値に設定されていることから、ギヤ9aと一体の第4サイドギヤSI4の回転数、及び、ギヤ8aと一体の第2サイドギヤSI2の回転数は、互いに等しくなる。また、前述したように、第3サイドギヤSI3と第4サイドギヤSI4の回転数差と、第3サイドギヤSI3と第2デフケースDC2の回転数差との比(a:b)が、第1サイドギヤSI1と第2サイドギヤSI2の回転数差と、第1サイドギヤSI1と第1デフケースDC1の回転数差との比(c:d)と等しい。
以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図4に示すように、第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転数は、第3サイドギヤSI3の回転数と同じく値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図5は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図5に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図4)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。
図5では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状、横線状又は格子状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図6についても同様である。
図5に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図6は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図6に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。この場合、図6に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図5及び図6に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
また、第1実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態における回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が、本発明における動力源、第1及び第2接断機構にそれぞれ相当するとともに、第1実施形態における左右の車輪WL、WRが、本発明における第1及び第2被駆動部にそれぞれ相当する。
以上のように、第1実施形態によれば、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図7〜図9を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、その動力伝達装置41が第1実施形態で説明した第2差動装置7に代えて平行軸式のギヤ機構42を有するとともに、このギヤ機構42の後述するギヤ46が第2ギヤ機構9のギヤ9aとして兼用されている点が、主に異なっている。図7〜図9では、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図7に示すように、ギヤ機構42は、互いに一体に設けられた第1ギヤ43及び第2ギヤ44と、軸受け(図示せず)を介して両ギヤ43、44を回転自在に支持する支軸45と、第2ギヤ44と前記第2ギヤ機構9のギヤ9bとに噛み合うギヤ46を有しており、左車輪WL側に配置されている。第1ギヤ43は、第1実施形態で説明した第1差動装置6の第1デフケースDC1と一体のギヤ6aに噛み合い、第2ギヤ44は、第1ギヤ43よりも左車輪WL側に配置されており、支軸45は、ケース25に取り付けられている。第1実施形態で説明した第2サイドギヤSI2及びギヤ8aと一体の軸は、左車輪WL側に延びており、この軸に、ギヤ46が軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。以上の構成により、ギヤ46には、第1デフケースDC1からの回転動力が、ギヤ6a、第1及び第2ギヤ43、44を介して伝達される。
また、ギヤ8a、ギヤ8b、ギヤ46及びギヤ9bの歯数は、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ46とギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値になるように、設定されている。さらに、ギヤ6a、第1ギヤ43、第2ギヤ44及びギヤ46の歯数は、第1デフケースDC1からの回転動力が2.0倍に増速された状態でギヤ46に伝達されるように、設定されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第1実施形態と同様である。
以上の構成により、第2実施形態による動力装置では、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8(ギヤ8a、8b)、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達されるとともに、第1差動装置6、ギヤ機構42(第1及び第2ギヤ43、44、ギヤ46)、ギヤ9b、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第2実施形態において、これらの第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8、軸20、キャリヤC、右駆動軸SR、ギヤ機構42、ギヤ9b、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
なお、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第1実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図8及び図9を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図8は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が遮断され、第1差動装置6やギヤ機構42を含む上述した第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
前述したように各種の要素が連結されていることと、ギヤ6a、第1ギヤ機構8及びギヤ機構42の各種のギヤ、ならびにギヤ9bの歯数が前述したように設定されていることから、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図8の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、図8及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(左側から2本目〜4本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
また、図8及び後述する他の共線図では便宜上、第1実施形態の場合と同様に、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離が、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離よりも短く描かれている。このことは、回転数が値0を示すための縦線、第1デフケースDC1及びギヤ46の回転数を表すための縦線についても同様である。さらに、第1実施形態で説明したように第1及び第2サイドギヤSI1、SI2の歯数が互いに等しいことと、前述したギヤ6a及びギヤ機構42の各種のギヤの歯数の設定から明らかなように、図8及び後述する他の共線図における各種の要素の回転数を表すための縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
動力装置は、図8に示す回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において5本の直線L1、L2、L3、L4及びL5で表される。なお、後述する図9では、これらの直線L1〜L5の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からのトルクが1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達されることによって、左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図8におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図9は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1サイドギヤSI1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなり、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ9b及びギヤ8bの回転数が互いに等しくなることと、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ46とギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値に設定されていることから、ギヤ46の回転数、及び、ギヤ8aと一体の第2サイドギヤSI2の回転数は、互いに等しくなる。また、ギヤ46の回転数と第1デフケースDC1の回転数との比(a:b)が、第1サイドギヤSI1と第2サイドギヤSI2の回転数差と、第1サイドギヤSI1と第1デフケースDC1の回転数差との比(c:d)と等しい。
以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図9に示すように、第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転数は、第1実施形態の場合と同様に値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図9と図5の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第1実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第1実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行った場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図10〜図12を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、その動力伝達装置51が遊星歯車装置5に代えて差動装置52を有する点が、主に異なっている。図10〜図12において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
差動装置52は、一般的なベベルギヤタイプのディファレンシャルギヤであり、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されたデフケースDCと、デフケースDCに相対的に回転自在に収容された左右のサイドギヤSIL、SIRと、両サイドギヤSIL、SIRに噛み合う複数のピニオンギヤPI(2つのみ図示)を有している。ピニオンギヤPIは、デフケースDCに収容されるとともに、自転自在にかつ左右のサイドギヤSIL、SIRに対して公転自在に支持されている。左右のサイドギヤSIL、SIRの歯数は互いに同じ値に設定されている。
また、デフケースDCには、ギヤ52aが一体に設けられており、ギヤ52aは、第1実施形態で説明した第1出力軸16のギヤ16aに噛み合っている。さらに、デフケースDCには、第1実施形態で説明した軸20の右端部が取り付けられており、それにより、ギヤ8b、軸20及びデフケースDCは、互いに一体に回転自在である。左サイドギヤSILは、左駆動軸SLの右端部に一体に設けられており、左駆動軸SLを介して、左車輪WLに一体に回転するように連結されている。右サイドギヤSIRは、右駆動軸SRの左端部に一体に設けられており、右駆動軸SRを介して、右車輪WRに一体に回転するように連結されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第1実施形態と同様である。
以上の構成により、第3実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって入力軸15と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸15と第2出力軸17との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力が、第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第2実施形態において、これらの第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
また、第2クラッチ11によって入力軸15と第2出力軸17との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸15と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8(ギヤ8a、8b)、軸20、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達されるとともに、第1差動装置6、第1及び第2ギヤ18、19、第2差動装置7、第2ギヤ機構9(ギヤ9a、9b)、ならびに左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第3実施形態において、これらの第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8、軸20、差動装置52、左右の駆動軸SL、SR、第1及び第2ギヤ18、19、第2差動装置7、ならびに第2ギヤ機構9から成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)によって、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御され、それにより、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図11及び図12を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図11は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって入力軸15と第1出力軸16との間が接続され、差動装置52を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸15と第2出力軸17との間が遮断され、第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ15a、ギヤ16a及びギヤ52aによる変速を無視すれば、差動装置52のデフケースDCの回転数と等しくなる。また、周知のように、差動装置52の左サイドギヤSIL、デフケースDC及び右サイドギヤSILの回転数は、それらの関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある。これらのことと、前述した各種の要素の間の連結関係より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図11の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、この図11及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(左側から2本目及び4本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。図11に示すように、動力装置は、第1実施形態の場合と同様、回転不能な1個の要素と回転可能な7個の要素から成る計8個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において5本の直線L1、L2、L3、L4及びL5で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L5の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われる。左右のサイドギヤSIL、SIRの歯数が互いに同じ値に設定されているため、共線図において、デフケースDCの回転数を表すための縦線と左サイドギヤSILの回転数を表すための縦線との間の距離と、デフケースDCの回転数を表すための縦線と右サイドギヤSIRの回転数を表すための縦線との間の距離とは、互いに等しい。このため、図11から明らかなように、回転電機3からデフケースDCに伝達されたトルクは、左右のサイドギヤSIL、SIRを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。
さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図11におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図12は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1サイドギヤSI1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数及びデフケースDCの回転数は互いに等しくなり、左車輪WL及びデフケースDCとそれぞれ一体のギヤ9b及びギヤ8bの回転数が互いに等しくなることと、第1実施形態の場合と同様にギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値に設定されていることから、ギヤ9aと一体の第4サイドギヤSI4の回転数、及び、ギヤ8aと一体の第2サイドギヤSI2の回転数は、互いに等しくなる。また、第1実施形態の場合と同様、第3サイドギヤSI3と第4サイドギヤSI4の回転数差と、第3サイドギヤSI3と第2デフケースDC2の回転数差との比(a:b)が、第1サイドギヤSI1と第2サイドギヤSI2の回転数差と、第1サイドギヤSI1と第1デフケースDC1の回転数差との比(c:d)と等しい。
以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図12に示すように、第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転数は、第1実施形態の場合と同様に値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図12と図5の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第1実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第1実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第3実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図13〜図17を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、その動力伝達装置61における各種の要素の間の連結関係が主に異なっている。図13〜図17において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13に示すように、第1実施形態で説明した第1差動装置6の第1デフケースDC1及び第2差動装置7の第2デフケースDC2には、ギヤ6a、7aが設けられておらず、第1及び第2ギヤ18、19が削除されている。また、第1デフケースDC1には、中空の第2出力軸62を介して、第1実施形態で説明した第2クラッチ11のドグ歯11aが一体に回転するように連結されており、第2デフケースDC2は、ケース25に取り付けられることで回転不能である。第1差動装置6の第1サイドギヤSI1には、第2出力軸17に代えて、軸63が一体に設けられており、軸63は、上記の第2出力軸62及び第1実施形態で説明した入力軸15の内側に相対的に回転自在に嵌合するとともに、入力軸15よりも右車輪WR側に延びている。
また、第1差動装置6の第2サイドギヤSI2及び第2差動装置7の第4サイドギヤSI4には、第1ギヤ機構8のギヤ8a及び第2ギヤ機構9のギヤ9aがそれぞれ設けられておらず、両者SI2、SI4は、軸を介して、互いに一体に回転するように連結されている。第2差動装置7の第3サイドギヤSI3は、ケース25に取り付けられておらず、軸を介して、第2ギヤ機構9のギヤ9aに一体に回転するように連結されている。また、第1ギヤ機構8のギヤ8aは、上記の軸63の右端部に一体に設けられており、第1サイドギヤSI1と一体に回転自在である。さらに、軸20は削除されており、第1ギヤ機構8のギヤ8bは、右駆動軸SRに一体に設けられている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第1実施形態と同様である。
以上の構成により、第4実施形態による動力装置では、第1及び第2クラッチ10、11のスリーブ13が図13に示す中立位置に位置しているときには、入力軸15と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、62とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸15と第1及び第2出力軸16、62との間が遮断される。
また、アクチュエータ14(図2参照)によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸15と第2出力軸62との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第1実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸15と第2出力軸62との間が接続されるとともに、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸62、第1差動装置6、軸63、第1ギヤ機構8(ギヤ8a、8b)、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達されるとともに、第1及び第2差動装置6、7、第2ギヤ機構9(ギヤ9a、9b)、ならびに左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第4実施形態において、これらの第2出力軸62、第1差動装置6、軸63、第1ギヤ機構8、右駆動軸SR、第2差動装置7、第2ギヤ機構9、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14でスリーブ13を駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。前述したECU2(図2参照)は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図14〜図17を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図14は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸62との間が遮断され、第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ15a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤS及びキャリヤCは、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体に回転自在である。さらに、第1実施形態で説明したように、サンギヤS、リングギヤR及びキャリヤCの回転数は共線関係にあり、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1、第1デフケースDC1及び第2サイドギヤSI2の回転数も、第2差動装置7の第3サイドギヤSI3、第2デフケースDC2及び第4サイドギヤSI4の回転数も、それぞれ共線関係にある。
また、第2デフケースDC2は回転不能であり、第2及び第4サイドギヤSI2、SI4は互いに一体に回転自在である。さらに、第1サイドギヤSI1及びギヤ8aは、キャリヤC、右車輪WR及びギヤ8bは、それぞれ互いに一体に回転自在であり、ギヤ8a及び8bが互いに噛み合っている。また、第3サイドギヤSI3及びギヤ9aは、サンギヤS、左車輪WL及びギヤ9bは、それぞれ互いに一体に回転自在であり、ギヤ9a及び9bが互いに噛み合っている。さらに、第1実施形態で説明したように、第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数は、互いに同じ値に設定されており、ギヤ8a、ギヤ8b、ギヤ9a及びギヤ9bの歯数は、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値になるように、設定されている。
以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図14の共線図のように表される。なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(左側から1本目、3本目及び5本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
また、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離と、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離とは、厳密には互いに等しいが、図14及び後述する他の共線図では便宜上、後者を前者よりも短く描いている。このことは、第2デフケースDC2、第3及び第4サイドギヤSI3、SI4の回転数を表すための縦線についても同様である。さらに、第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数が互いに同じ値に設定されていることから明らかなように、図14及び後述する他の共線図における各種の要素の回転数を表すための縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
図14に示すように、動力装置は、第1実施形態の場合と同様、回転不能な1個の要素と回転可能な7個の要素から成る計8個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において5本の直線L1、L2、L3、L4及びL5で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L5の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からのトルクが1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達されることによって、左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図14及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図15は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸62との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1デフケースDC1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなり、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ9b及びギヤ8bの回転数が互いに等しくなることと、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値に設定されていることから、ギヤ9aと一体の第3サイドギヤSI3の回転数、及び、ギヤ8aと一体の第1サイドギヤSI1の回転数は、互いに等しくなる。また、第1サイドギヤSI1と第2サイドギヤSI2の回転数差と、第1デフケースDC1と第2サイドギヤSI2の回転数差との比(a:b)が、第3サイドギヤSI3と第4サイドギヤSI4の回転数差と、第2デフケースDC2と第4サイドギヤSI4の回転数差との比(c:d)と等しい。
以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図15に示すように、第1デフケースDC1及び回転電機3の回転数は、第2デフケースDC2の回転数と同じく値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図16は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図16に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1デフケースDC1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図15)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図16では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状、横線状又は格子状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図17についても同様である。
図16に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図17は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図17に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1デフケースDC1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図17に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図16及び図17に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第4実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図18〜図21を参照しながら、本発明の第5実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第4実施形態と比較して、その動力伝達装置71が遊星歯車装置5に代えて第3実施形態で説明した差動装置52を備えるとともに、差動装置52のギヤ52aが第1ギヤ機構8の前記ギヤ8bとして兼用されていることと、第1及び第2クラッチ10、11の構成が、主に異なっている。図18〜図21において、第1、第3及び第4実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第4実施形態と異なる点を中心に説明する。
図18に示すように、第5実施形態では、第1及び第4実施形態で説明した中空の第1出力軸16に代えて、中実の第1出力軸72が設けられている。第1出力軸72は、第4実施形態で説明した入力軸15及び第2出力軸62の内側に相対的に回転自在に嵌合しており、その左端部には第1差動装置6の第1サイドギヤSI1が、右端部には第1ギヤ機構8のギヤ8aが、それぞれ一体に設けられている。ギヤ8aは、差動装置52のデフケースDCと一体のギヤ52aに噛み合っており、ギヤ52aは、第1ギヤ機構8のギヤ8bとして兼用されている。
第3実施形態と同様、差動装置52の左右のサイドギヤSIL、SIRはそれぞれ、左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに一体に回転するように連結されている。ギヤ8a、ギヤ52a、第2ギヤ機構9のギヤ9a及びギヤ9bの歯数は、ギヤ8aとギヤ52aのギヤ比、及び、第2ギヤ機構9のギヤ9aとギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値になるように、設定されている。
また、図18及び図19に示すように、第1クラッチ10用のハブ12A、スリーブ13A及びアクチュエータ14Aと、第2クラッチ11用のハブ12B、スリーブ13B及びアクチュエータ14Bは、それぞれ別個に設けられている。第1クラッチ10のドグ歯10aは、入力軸15に一体に設けられており、第1クラッチ10のハブ12Aは、第1出力軸72に一体に設けられている。また、第1クラッチ10のスリーブ13Aは、ハブ12Aにスプライン嵌合しており、ハブ12Aに対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。第2クラッチ11のドグ歯11aは、第2出力軸62に一体に設けられており、第2クラッチ11のハブ12Bは、入力軸15に一体に設けられている。第2クラッチ11のスリーブ13Bは、ハブ12Bにスプライン嵌合しており、ハブ12Bに対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第3及び第4実施形態と同様である。
以上の構成の第1クラッチ10では、そのスリーブ13Aが図18に示す中立位置に位置しているときには、第1出力軸72と一体のハブ12Aにスプライン嵌合するスリーブ13Aのドグ歯が、入力軸15と一体のドグ歯10aに係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸15と第1出力軸72との間が遮断される。第1クラッチ10用のアクチュエータ14Aによりスリーブ13Aが中立位置からドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13Aのドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸15と第1出力軸72との間が接続される。
また、第2クラッチ11では、そのスリーブ13Bが図18に示す中立位置に位置しているときには、入力軸15と一体のハブ12Bにスプライン嵌合するスリーブ13Bのドグ歯が、第2出力軸62と一体のドグ歯11aに係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸15と第2出力軸62との間が遮断される。第2クラッチ11用のアクチュエータ14Bによりスリーブ13Bが中立位置からドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13Bのドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸15と第2出力軸62との間が接続される。
以上の構成により、第5実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって入力軸15と第1出力軸72との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸15と第2出力軸62との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第1出力軸72、ギヤ8a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第5実施形態において、これらの第1出力軸72、ギヤ8a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
一方、第2クラッチ11によって入力軸15と第2出力軸62との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸15と第1出力軸72との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸62、第1及び第2差動装置6、7、第2ギヤ機構9、ならびに左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第1差動装置6、第1出力軸72、ギヤ8a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
以下、第5実施形態において、これらの第2出力軸62、第1及び第2差動装置6、7、第2ギヤ機構9、第1出力軸72、ギヤ8a、ギヤ52a、差動装置52、ならびに左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14A、14Bでスリーブ13A、13Bをそれぞれ駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。ECU2は、アクチュエータ14A、14Bの動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図20及び図21を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図20は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸72との間が接続され、差動装置52を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸62との間が遮断され、第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ15a、ギヤ8a及びギヤ52aによる変速を無視すれば、差動装置52のデフケースDCの回転数と等しくなる。このことと、上述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図20の共線図のように表される。
なお、この図20及び後述する他の共線図では、第1実施形態で説明したように、回転数を表すための単一の縦線(左側から1本目及び5本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。さらに、第1実施形態で説明したように第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数が互いに同じ値に設定されていることから明らかなように、図20及び後述する他の共線図における各種の要素の縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
図20に示すように、動力装置は、第1実施形態の場合と同様、回転不能な1個の要素と回転可能な7個の要素から成る計8個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において5本の直線L1、L2、L3、L4及びL5で表される。なお、図21では、これらの直線L1〜L5の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われる。回転電機3からデフケースDCに伝達されたトルクは、第3実施形態の場合と同様、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図20におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図21は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸62との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸72との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1デフケースDC1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第4実施形態の場合と同様、第1サイドギヤSI1と第2サイドギヤSI2の回転数差と、第1デフケースDC1と第2サイドギヤSI2の回転数差との比(a:b)が、第3サイドギヤSI3と第4サイドギヤSI4の回転数差と、第2デフケースDC2と第4サイドギヤSI4の回転数差との比(c:d)と等しい。また、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数及びデフケースDCの回転数は互いに等しくなり、左車輪WL及びデフケースDCとそれぞれ一体のギヤ9b及びギヤ52aの回転数が互いに等しくなることと、ギヤ8aとギヤ52aのギヤ比、及び、ギヤ9aとギヤ9bのギヤ比が互いに同じ値に設定されていることから、ギヤ8aと一体の第1サイドギヤSI1の回転数、及び、ギヤ9aと一体の第3サイドギヤSI3の回転数は、互いに等しくなる。
以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図21に示すように、第1デフケースDC1及び回転電機3の回転数は、第4実施形態の場合と同様に値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図21と図16の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第4実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まる第1デフケースDC1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第4実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第4実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まる第1デフケースDC1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第4実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第5実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図22〜図26を参照しながら、本発明の第6実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、その動力伝達装置81が第2差動装置7を有していないことと、第2ギヤ機構82の構成が、主に異なっている。図22〜図26において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図22に示すように、第2ギヤ機構82は、ギヤ82aと、ギヤ82aに噛み合う中間ギヤ82bと、中間ギヤ82bに噛み合うギヤ82cを有している。ギヤ82aは、軸を介して、第1実施形態で説明した第1差動装置6の第2サイドギヤSI2と一体に回転するように連結されており、中間ギヤ82bは、ケース25に取り付けられた軸に回転自在に支持されている。また、ギヤ82cは、左駆動軸SLに一体に設けられている。さらに、ギヤ82aとギヤ82cのギヤ比は、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比と同じ値に設定されている。
さらに、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1は、軸83の左端部に一体に設けられており、軸83は、入力軸15の内側に相対的に回転自在に嵌合している。軸83の右端部には、第1ギヤ機構8のギヤ8aが一体に設けられており、第1ギヤ機構8bのギヤ8bは、右駆動軸SRに一体に設けられている。ギヤ8a及びギヤ8bの歯数は、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比が、ギヤ82a及び第2サイドギヤSI2の歯数の乗算値とギヤ82c及び第1サイドギヤSI1の歯数の乗算値との比と同じになるように(ギヤ8aの歯数:ギヤ8bの歯数=ギヤ82aの歯数×第2サイドギヤSI2の歯数:ギヤ82cの歯数×第1サイドギヤSI1の歯数)、設定されている。これにより、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比は、2:1に設定されている。
また、第2クラッチ11の第2出力軸84は、中空状に形成されており、第2出力軸84には、第2クラッチ11のドグ歯11a及び第1差動装置6の第1デフケースDC1が一体に設けられている。第2出力軸84の内側には、上記の軸83が相対的に回転自在に嵌合している。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第1実施形態と同様である。
以上の構成により、第6実施形態による動力装置では、第1及び第2クラッチ10、11のスリーブ13が図22に示す中立位置に位置しているときには、入力軸15と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、84とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸15と第1及び第2出力軸16、84との間が遮断される。
また、アクチュエータ14(図2参照)によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸15と第2出力軸84との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第1実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸15と第2出力軸84との間が接続されるとともに、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸84、第1差動装置6、軸83、第1ギヤ機構8(8a、8b)、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達されるとともに、第1差動装置6、第2ギヤ機構82(ギヤ82a、中間ギヤ82b、ギヤ82c)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第6実施形態において、これらの第2出力軸84、第1差動装置6、軸83、第1ギヤ機構8、右駆動軸SR、第2ギヤ機構82、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14でスリーブ13を駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。前述したECU2(図2参照)は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図23〜図26を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図23は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸84との間が遮断され、第1差動装置6を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
前述したように各種の要素が連結されていることと、第1及び第2サイドギヤSI1、SI2の歯数、ならびに第1ギヤ機構8及びギヤ機構82の各種のギヤの歯数が前述したように設定されていることから、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図23の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、図23及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(左側から1本目及び5本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
また、図23及び後述する他の共線図では便宜上、第1実施形態の場合と同様に、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離が、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離よりも短く描かれている。このことは、回転数が値0を示すための縦線、ギヤ82a及びギヤ82cの回転数を表すための縦線についても同様である。さらに厳密には、回転数が値0を表すための縦線とギヤ8aの回転数を表すための縦線との間の距離は、回転数が値0を表すための縦線とギヤ8bの回転数を表すための縦線との間の距離の1/2であるが、両者が互いに等しく描かれている。
また、第1実施形態で説明したように第1及び第2サイドギヤSI1、SI2の歯数が互いに同じ値に設定されていることと、前述した第2ギヤ機構82の各種のギヤの歯数の設定から明らかなように、図23及び後述する他の共線図における各種の要素の縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
図23に示すように、動力装置は、7個の回転可能な要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からのトルクが1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達されることによって、左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図23及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図24は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸84との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1デフケースDC1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
ギヤ82cの回転数とギヤ82aの回転数との比(a:b)が、第1及び第2サイドギヤSI1、SI2の回転数の絶対値の和と、第2サイドギヤSI2と第1デフケースDC1の回転数差との比(c:d)と等しい。また、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなるため、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ82c及びギヤ8bの回転数が互いに等しくなり、ギヤ82aと一体の第2サイドギヤSI2は、左車輪WLと一体のギヤ82cと同じ回転方向に回転する。さらに、ギヤ8aと一体の第1サイドギヤSI1は、右車輪WRと一体のギヤ8bと逆方向に回転する。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図24に示すように、第1デフケースDC1及び回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図25は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図25に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1デフケースDC1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図24)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図25では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状又は横線状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図26についても同様である。
図25に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図26は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図26に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1デフケースDC1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図26に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図25及び図26に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第6実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図27〜図29を参照しながら、本発明の第7実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第6実施形態と比較して、その動力伝達装置91が第1差動装置6に代えて第1遊星歯車装置92を有していることと第1ギヤ機構8ならびに第1及び第2クラッチ10、11の入力軸93の構成が、主に異なっている。図27〜図29において、第1及び第6実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第6実施形態と異なる点を中心に説明する。
第1遊星歯車装置92は、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1の外周に設けられた第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛み合う複数の第1ピニオンギヤP1(2つのみ図示)と、第1ピニオンギヤP1を自転自在にかつ第1サンギヤS1に対して公転自在に支持する第1キャリヤC1を有している。第1リングギヤR1の外周面には、第1実施形態で説明した第1ギヤ機構8のギヤ8aが一体に設けられている。
第1ギヤ機構8のギヤ8bは、第1実施形態と同様、軸20を介して遊星歯車装置5のキャリヤCに一体に回転するように連結されている。また、第6実施形態で説明した第2ギヤ機構82のギヤ82aは、中空の軸を介して第1サンギヤS1に一体に回転するように連結されており、この軸の内側には、上記の入力軸93が相対的に回転自在に嵌合している。
上記の入力軸93は、第1及び第2出力軸16、84の内側に相対的に回転自在に嵌合しており、その途中には、第1及び第2クラッチ10、11のハブ12が一体に設けられ、その右端部には、ギヤ93aが一体に設けられている。ギヤ93aは、回転電機3のギヤ3bに噛み合っている。
また、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、ギヤ82a及びギヤ82cの歯数は、ギヤ82aとギヤ82cのギヤ比が、第1サンギヤS1の歯数及び第1リングギヤR1の歯数の和と第1リングギヤR1の歯数との比と同じになるように(ギヤ82aの歯数:ギヤ82cの歯数=第1サンギヤS1の歯数及び第1リングギヤR1の歯数の和:第1リングギヤR1の歯数)、設定されている。また、ギヤ8a及びギヤ8bの歯数は、ギヤ8aとギヤ8bのギヤ比が、ギヤ82a及び第1リングギヤR1の歯数の乗算値とギヤ82c及び第1サンギヤS1の歯数の乗算値との比と同じになるように(ギヤ8aの歯数:ギヤ8bの歯数=ギヤ82aの歯数×第1リングギヤR1の歯数:ギヤ82cの歯数×第1サンギヤS1の歯数)、設定されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第6実施形態と同様である。
以上の構成により、第7実施形態による動力装置では、第1及び第2クラッチ10、11のスリーブ13が図27に示す中立位置に位置しているときには、入力軸93と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、84とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸93と第1及び第2出力軸16、84との間が遮断される。
また、アクチュエータ14(図2参照)によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸93と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸93と第2出力軸84との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸93に伝達された回転動力は、第1実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸93と第2出力軸84との間が接続されるとともに、入力軸93と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸93に伝達された回転動力は、第2出力軸84、第1遊星歯車装置92、第1ギヤ機構8(8a、8b)、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達されるとともに、第1遊星歯車装置92、第2ギヤ機構82(ギヤ82a、中間ギヤ82b、ギヤ82c)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第7実施形態において、これらの第2出力軸84、第1遊星歯車装置92、第1ギヤ機構8、軸20、キャリヤC、右駆動軸SR、第2ギヤ機構82、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14でスリーブ13を駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。前述したECU2(図2参照)は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図28及び図29を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図28は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸93と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸93と第2出力軸84との間が遮断され、第1差動装置6を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
前述したように各種の要素が連結されていることと、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、ギヤ82a、ギヤ82c、ギヤ8a及びギヤ8bの歯数が前述したように設定されていることから、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図28の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、図28及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(左側から1本目及び5本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。また、厳密には、第1リングギヤR1の回転数を表すための縦線と第1キャリヤC1の回転数を表すための縦線との間の距離は、第1キャリヤC1の回転数を表すための縦線と第1サンギヤS1の回転数を表すための縦線との間の距離よりも短いが、図28及び後述する他の共線図では便宜上、これとは逆に後者が前者よりも短く描かれている。
さらに、前述した第1遊星歯車装置92及び第2ギヤ機構82の各種のギヤの歯数の設定から明らかなように、図28及び後述する他の共線図における各種の要素の縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。図28に示すように、動力装置は、第6実施形態と同様、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する図29では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からのトルクが1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達されることによって、左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図28におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図29は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸93と第2出力軸84との間が接続され、第1遊星歯車装置92を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸93と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
ギヤ3b及びギヤ93aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第1キャリヤC1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
ギヤ82cの回転数とギヤ82aの回転数との比(a:b)が、第1キャリヤC1を固定した状態で第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1を回転させたときの第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1の回転数の絶対値の和と第1サンギヤS1の回転数との比(c:d)と等しい。また、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなるため、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ82c及びギヤ8bの回転数が互いに等しくなり、ギヤ8bに噛み合うギヤ8aと一体の第1リングギヤR1が、ギヤ82aと一体の第1サンギヤS1の回転数に第1サンギヤS1の歯数と第1リングギヤR1の歯数との比を乗算した値(第1サンギヤS1の回転数×第1サンギヤS1の歯数/第1リングギヤR1の歯数)の回転数で、第1サンギヤS1と逆方向に回転する。
以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図29に示すように、第1キャリヤC1及び回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
また、図29と図25の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第6実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まる第1キャリヤC1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第6実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第6実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まる第1キャリヤC1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第6実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第7実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第1〜第7実施形態に関し、以下に述べる種々のバリエーションを採用することが可能である。例えば、第3〜第5実施形態では、第2伝達経路を、第2差動装置7を用いて構成しているが、第2差動装置7に代えて、第2実施形態で説明したギヤ機構42を用いて構成してもよい。また、第3実施形態では、ギヤ8b及びギヤ9bをそれぞれ、デフケースDC及び左サイドギヤSILに一体に回転するように連結しているが、右サイドギヤSIR及びデフケースDCに一体に回転するように連結してもよい。さらに、第5実施形態では、ギヤ52aを第1ギヤ機構8のギヤ8bとして兼用するとともに、ギヤ9bを左サイドギヤSILに一体に回転するように連結しているが、ギヤ52aを兼用せずに、ギヤ8b及びギヤ9bをそれぞれ、右サイドギヤSIR及びデフケースDCに一体に回転するように連結してもよい。
また、第6及び第7実施形態では、ギヤ8bを、キャリヤCに一体に回転するように連結しているが、リングギヤRに一体に回転するように連結してもよい。さらに、第6及び第7実施形態では、ギヤ82cを、サンギヤSに一体に回転するように連結しているが、リングギヤRに一体に回転するように連結してもよい。
また、第6及び第7実施形態では、第2伝達経路を、第2ギヤ機構82を用いて構成しているが、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する差動装置を用いて構成してもよい。この場合、差動装置として、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置や、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、2つのサンギヤと、2つのサンギヤにそれぞれ噛み合うとともに互いに一体の2つのピニオンギヤと、2つのピニオンギヤを自転自在にかつ2つのサンギヤに対して公転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置などが用いられる。また、これらの3つの回転要素のうち、共線図においてその回転数が外側に位置する1つの回転要素が、回転不能に固定され、中央に位置する回転要素及び残りの1つの回転要素が、第2サイドギヤSI2(第1サンギヤS1)及びサンギヤSにそれぞれ連結される。
さらに、第1、第2、第4、第6及び第7実施形態では、第1伝達経路を、遊星歯車装置5を用いて構成しているが、第3及び第5実施形態で説明した差動装置52を用いて構成してもよい。同様に、第3及び第5実施形態では、第1伝達経路を、差動装置52を用いて構成しているが、遊星歯車装置5を用いて構成してもよい。あるいは、第1〜第7実施形態に関し、第1伝達経路を、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよく、この場合、回転電機3からの回転動力を左右の車輪WL、WRに1:1で分配できるように構成された差動装置を用いるのが好ましい。
また、第1〜第7実施形態では、第2伝達経路を、ベベルギヤタイプの第1差動装置6や第2差動装置7を用いて構成しているが、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよい。この場合、差動装置として、例えば、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置や、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、2つのサンギヤと、2つのサンギヤにそれぞれ噛み合うとともに互いに一体の2つのピニオンギヤと、2つのピニオンギヤを自転自在にかつ2つのサンギヤに対して公転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置などが用いられる。これまでに述べた第1〜第7実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。
次に、図30〜図34を参照しながら、本発明の第8実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、その動力伝達装置101の構成が主に異なっている。図30〜図34において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図30に示すように、動力伝達装置101は、第1実施形態で説明した遊星歯車装置5に加え、第7実施形態で説明した第1遊星歯車装置92と、シングルピニオンタイプの第2遊星歯車装置102と、第1ギヤ機構103と、第2ギヤ機構104を有している。第1及び第2遊星歯車装置92、102は、左右の駆動軸SL、SR及び遊星歯車装置5と同軸状に配置されており、前者92は左車輪WL側に、後者102は遊星歯車装置5側に、それぞれ位置している。また、第1遊星歯車装置92の第1キャリヤC1は、左駆動軸SLに一体に設けられており、第1サンギヤS1は、中空の軸を介して、第1ギヤ機構103の後述するギヤ103bに一体に回転するように連結されている。この中空の軸の内側には、左駆動軸SLが相対的に回転自在に嵌合している。
第2遊星歯車装置102は、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2の外周に設けられた第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2及び第2リングギヤR2に噛み合う複数の第2ピニオンギヤP2(2つのみ図示)と、第2ピニオンギヤP2を自転自在にかつ第2サンギヤS2に対して公転自在に支持する第2キャリヤC2を有している。第2キャリヤC2は、第1実施形態で説明した軸20を介して、遊星歯車装置5のキャリヤCに一体に回転するように連結されており、第2リングギヤR2は、中空の軸を介して、第1リングギヤR1に一体に回転するように連結されている。この軸の内側には第1及び第2キャリヤC1、C2が相対的に回転自在に設けられている。
また、第2サンギヤS2は、中空の軸を介して、第2ギヤ機構104の後述するギヤ104bに一体に回転するように連結されており、この中空の軸の内側には、軸20が相対的に回転自在に嵌合している。さらに、第1及び第2サンギヤS1、S2の歯数は互いに同じ値に設定されるとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数は互いに同じ値に設定されている。
第1実施形態で説明した第1及び第2クラッチ10、11の入力軸105は、中実に形成され、左右の駆動軸SL、SRと平行に延びており、その右部には両クラッチ10、11のハブ12が、その右端部にはギヤ105aが、それぞれ一体に設けられている。ギヤ105aは、回転電機3のギヤ3bと噛み合っている。また、入力軸105は、第1実施形態で説明した第1出力軸16の内側と、第2クラッチ11の中空の第2出力軸106の内側に、相対的に回転自在に嵌合している。第2出力軸106は、第1及び第2遊星歯車装置92、102の全体にわたって、左右の駆動軸SL、SRと平行に延びており、その右端部には、第2クラッチ11のドグ歯11aが一体に設けられている。
第1ギヤ機構103は、互いに噛み合うギヤ103a及び前記ギヤ103bを有しており、第2ギヤ機構104は、互いに噛み合うギヤ104a及び前記ギヤ104bを有している。これらのギヤ103a及びギヤ104aは、上記の第2出力軸106に一体に設けられている。ギヤ103a、ギヤ103b、ギヤ104a及びギヤ104bの歯数は、ギヤ103aとギヤ103bのギヤ比がギヤ104aとギヤ104bのギヤ比よりも大きくなるように、設定されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第1実施形態と同様である。
以上の構成により、第8実施形態による動力装置では、第1及び第2クラッチ10、11のスリーブ13が図30に示す中立位置に位置しているときには、入力軸105と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、106とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸105と第1及び第2出力軸16、106との間が遮断される。
また、アクチュエータ14(図2参照)によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第1実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第1遊星歯車装置92、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第2遊星歯車装置102、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。
以下、第8実施形態において、これらの第2出力軸106、第1ギヤ機構103、第1遊星歯車装置92、左駆動軸SL、第2ギヤ機構104、第2遊星歯車装置102、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14でスリーブ13を駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。前述したECU2(図2参照)は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図31〜図34を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図31は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2遊星歯車装置92、102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、第1実施形態で説明したように、サンギヤS、リングギヤR及びキャリヤCの回転数は共線関係にあり、また、第1遊星歯車装置92の第1サンギヤS1、第1キャリヤC1及び第1リングギヤR1の回転数も、第2遊星歯車装置102の第2サンギヤS2、第2キャリヤC2及び第2リングギヤR2の回転数も、それぞれ共線関係にある。
さらに、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤS及び第1キャリヤC1は、左車輪WLと一体に回転自在であり、キャリヤC及び第2キャリヤC2は、右車輪WRと一体に回転自在である。また、ギヤ103a及びギヤ104a、第1サンギヤS1及びギヤ103b、ならびに、第2サンギヤS2及びギヤ104bは、それぞれ互いに一体に回転自在である。さらに、ギヤ103a及びギヤ103b、ならびに、ギヤ104a及びギヤ104bは、それぞれ互いに噛み合っており、ギヤ103aとギヤ103bのギヤ比は、ギヤ104aとギヤ104bのギヤ比よりも大きな値に設定されている。
以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図31の共線図のように表される。なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(右側から3本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
図31に示すように、動力装置は、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われる。図31から明らかなように、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図31及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図32は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ105aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
前述したように、第1及び第2サンギヤS1、S2の歯数は、互いに同じ値に設定されており、第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数は、互いに同じ値に設定されている。また、第1及び第2リングギヤR1、R2は互いに一体に回転するように連結されており、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体の第1及び第2キャリヤC1、C2の回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図32に示すように、第1及び第2リングギヤR1、R2が正転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図33は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図33に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図32)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図33では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルク(M、K、−L、−A1、−B1、A2、B2)を示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状又は横線状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図34についても同様である。
また、これらのトルクの間には、次式(1)〜(10)が成立する。
−A1−B1+RWL=0 ……(1)
A2+B2−RWR=0 ……(2)
(−A1−B1+RWL)+(A2+B2−RWR)=0 ……(3)
B1=B2 ……(4)
−TM×X=K×Y−L×Z ……(5)
−TM+K−L+M=0 ……(6)
K=L ……(7)
TM=M ……(8)
K=A1 ……(9)
L=A2 ……(10)
図33に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図34は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図34に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図34に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図33及び図34に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第8実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第8実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2を互いに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよい。すなわち、図35に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2を互いに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結してもよい。
次に、図36〜図38を参照しながら、本発明の第9実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第8実施形態と比較して、その動力伝達装置111が遊星歯車装置5に代えて第3実施形態で説明した差動装置52を有する点が主に異なっている。図36〜図38では、第1、第3及び第8実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第8実施形態と異なる点を中心に説明する。
図36に示すように、第8実施形態で説明した第2遊星歯車装置102の第2キャリヤC2は、軸20を介して、差動装置52のデフケースDCに一体に回転するように連結されている。また、デフケースDCのギヤ52aは、第3実施形態の場合と同様、第1出力軸16のギヤ16aに噛み合っており、差動装置52の左右のサイドギヤSIL、SIRはそれぞれ、左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに一体に回転するように連結されている。その他の要素の間の連結関係は、第8実施形態と同様である。
以上の構成により、第9実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力が、第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第9実施形態において、これらの第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
また、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第1遊星歯車装置92、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第2遊星歯車装置102、軸20、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
以下、第9実施形態において、これらの第2出力軸106、第1ギヤ機構103、第1遊星歯車装置92、左駆動軸SL、第2ギヤ機構104、第2遊星歯車装置102、軸20、差動装置52、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図37及び図38を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図37は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、差動装置52を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2遊星歯車装置92、102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ52aによる変速を無視すれば、差動装置52のデフケースDCの回転数と等しくなる。このことと、上述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図37の共線図のように表される。図37に示すように、動力装置は、第8実施形態と同様、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する図38では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からデフケースDCに伝達されたトルクは、第3実施形態の場合と同様、左右のサイドギヤSIL、SIRを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図37におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図38は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ105aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、互いに一体のギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。
また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第8実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止され、図38に示すように、第1及び第2リングギヤR1、R2が正転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数が値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図38と図33の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第8実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第8実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第8実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第8実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第9実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第9実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2を互いに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよい。すなわち、図39に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2を互いに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結してもよい。
また、第9実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよく、すなわち、図40に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結してもよい。さらに、これらの図39及び図40に示す変形例を組み合わせて適用してもよい。すなわち、図41に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2を互いに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結してもよい。
次に、図42〜図46を参照しながら、本発明の第10実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第8実施形態と比較して、その動力伝達装置121における各種の要素の間の連結関係が主に異なっている。図42〜図46において、第8実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の符号の図示を省略している。以下、第8実施形態と異なる点を中心に説明する。
図42に示すように、第10実施形態では、第1及び第2遊星歯車装置92、102の位置関係が第8実施形態の場合と左右逆になっており、前者92は遊星歯車装置5側に、後者102は左車輪WL側に、それぞれ配置されている。第1遊星歯車装置92の第1リングギヤR1及び第2遊星歯車装置102の第2リングギヤR2は、互いに一体に回転するように連結されておらず、それらのキャリヤCAが一体化されており、このキャリヤCAに、第1及び第2ピニオンギヤP1、P2がそれぞれ、自転自在にかつ第1及び第2サンギヤS1、S2に対して公転自在に支持されている。
また、第1サンギヤS1は、中空の軸を介して、第2ギヤ機構104のギヤ104bに一体に回転するように連結されており、第1リングギヤR1は、中空の軸及びフランジを介して、左駆動軸SLに一体に回転するように連結されている。第1サンギヤS1と一体の中空の軸の内側には左駆動軸SLが、第1リングギヤR1と一体の中空の軸の内側にはキャリヤCAが、それぞれ相対的に回転自在に嵌合している。
さらに、第2サンギヤS2は、中空の軸を介して、第1ギヤ機構103のギヤ103bに一体に回転するように連結されており、第2リングギヤR2は、中空の軸、フランジ及び軸20を介して、遊星歯車装置5のキャリヤCに一体に回転するように連結されている。第2サンギヤS2と一体の中空の軸の内側には、第1サンギヤS1と一体の中空の軸が、第2リングギヤR2と一体の中空の軸の内側には、第1リングギヤR1と一体の中空の軸が、それぞれ相対的に回転自在に嵌合している。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第8実施形態と同様である。
以上の構成により、第10実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第1及び第8実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第1遊星歯車装置92、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第2遊星歯車装置102、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。
以下、第10実施形態において、これらの第2出力軸106、第2ギヤ機構104、第1遊星歯車装置92、左駆動軸SL、第1ギヤ機構103、第2遊星歯車装置102、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図43〜図46を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図43は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2遊星歯車装置92、102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。このことと、前述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図43の共線図のように表される。なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(右側から3本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
図43に示すように、動力装置は、第8実施形態と同様、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、第8実施形態の場合と同様、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図43及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図44は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
ギヤ3b及びギヤ105aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、互いに一体のギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第8実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第8実施形態で説明したように、第1及び第2サンギヤS1、S2の歯数は、互いに同じ値に設定されており、第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数は、互いに同じ値に設定されている。また、第1及び第2遊星歯車装置92、102においてキャリヤCAが共用されており、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体の第1及び第2リングギヤR1、R2の回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図44に示すように、キャリヤCAが正転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図45は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図45に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、第8実施形態の場合と同様、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図44)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図45では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状又は横線状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図46についても同様である。
図45に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
また、図46は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図46に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、第8実施形態の場合と同様、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図46に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図45及び図46に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第10実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第10実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、左駆動軸SL及びキャリヤCに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよい。すなわち、図47に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、左駆動軸SL及びキャリヤCに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結してもよい。
次に、図48〜図50を参照しながら、本発明の第11実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第10実施形態と比較して、その動力伝達装置131が遊星歯車装置5に代えて第3実施形態で説明した差動装置52を有する点が主に異なっている。図48〜図50では、第1、第3及び第10実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第10実施形態と異なる点を中心に説明する。
図48に示すように、第2遊星歯車装置102の第2リングギヤR2は、軸20を介して、差動装置52のデフケースDCに一体に回転するように連結されている。また、デフケースDCのギヤ52aは、第3実施形態の場合と同様、第1出力軸16のギヤ16aに噛み合っており、差動装置52の左右のサイドギヤSIL、SIRはそれぞれ、左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに一体に回転するように連結されている。その他の要素の間の連結関係は、第10実施形態と同様である。
以上の構成により、第11実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力が、第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第11実施形態において、これらの第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
また、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第1遊星歯車装置92、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第2遊星歯車装置102、軸20、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第11実施形態において、これらの第2出力軸106、第2ギヤ機構104、第1遊星歯車装置92、左駆動軸SL、第1ギヤ機構103、第2遊星歯車装置102、軸20、差動装置52、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図49及び図50を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図49は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、差動装置52を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2遊星歯車装置92、102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ52aによる変速を無視すれば、差動装置52のデフケースDCの回転数と等しくなる。このことと、前述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図49の共線図のように表される。図49に示すように、動力装置は、第10実施形態と同様、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する図50では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からデフケースDCに伝達されたトルクは、第3実施形態の場合と同様、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図49におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図50は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ105aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、互いに一体のギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。
また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第10実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止され、図50に示すように、キャリヤCAが正転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数が値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図50と図45の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第10実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第10実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第10実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第10実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第11実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第11実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、左駆動軸SL及びデフケースDCに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよい。すなわち、図51に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、左駆動軸SL及びデフケースDCに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結してもよい。
また、第11実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよく、すなわち、図52に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結してもよい。さらに、これらの図51及び図52に示す変形例を組み合わせて適用してもよい。すなわち、図53に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、左駆動軸SL及びデフケースDCに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結してもよい。
次に、図54〜図58を参照しながら、本発明の第12実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第8実施形態と比較して、その動力伝達装置141の第1及び第2遊星歯車装置92、102の連結関係が主に異なっている。図54〜図58において、第8実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の符号の図示を省略している。以下、第8実施形態と異なる点を中心に説明する。
図54に示すように、第1遊星歯車装置92の第1サンギヤS1は左駆動軸SLに、第2遊星歯車装置102の第2サンギヤS2は軸20を介して遊星歯車装置5のキャリヤCに、それぞれ一体に回転するように連結されている。また、第8実施形態と同様、第1遊星歯車装置92の第1リングギヤR1及び第2遊星歯車装置102の第2リングギヤR2は、互いに一体に回転するように連結されている。さらに、第1遊星歯車装置92の第1キャリヤC1は第1ギヤ機構103のギヤ103bに、第2遊星歯車装置102の第2キャリヤC2は第2ギヤ機構104のギヤ104bに、それぞれ一体に回転するように連結されている。その他の要素の間の連結関係は、第8実施形態と同様である。
以上の構成により、第12実施形態による動力装置では、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が遮断されているときには、第8実施形態の場合と同様、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106や、第1及び第2ギヤ機構103、104、第1及び第2遊星歯車装置92、102、左右の駆動軸SL、SRなどを介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第12実施形態において、第8実施形態と同様、これらの第1及び第2遊星歯車装置92、102などから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
なお、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第1及び第8実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図55〜図58を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図55は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2遊星歯車装置92、102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。このことと、前述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図55の共線図のように表される。なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(右側から3本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。
図55に示すように、動力装置は、第8実施形態と同様、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、第8実施形態の場合と同様、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図55及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図56は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
ギヤ3b及びギヤ105aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、互いに一体のギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第8実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第8実施形態で説明したように、第1及び第2サンギヤS1、S2の歯数は、互いに同じ値に設定されており、第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数は、互いに同じ値に設定されている。また、第1及び第2リングギヤR1、R2が互いに一体に回転するように連結されており、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体の第1及び第2サンギヤS1、S2の回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図56に示すように、第1及び第2リングギヤR1、R2が逆転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図57は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図57に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、第8実施形態の場合と同様、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図56)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図57では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状又は横線状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図58についても同様である。
図57に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
また、図58は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図58に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、第8実施形態の場合と同様、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図58に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図57及び図58に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第12実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第12実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、左駆動軸SL及び軸20に一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2を互いに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよい。すなわち、図59に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2を互いに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、左駆動軸SL及び軸20に一体に回転するように連結してもよい。
次に、図60〜図62を参照しながら、本発明の第13実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第12実施形態と比較して、その動力伝達装置151が遊星歯車装置5に代えて第3実施形態で説明した差動装置52を有する点が主に異なっている。図60〜図62では、第1、第3及び第12実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第12実施形態と異なる点を中心に説明する。
図60に示すように、第2遊星歯車装置102の第2サンギヤS2は、軸20を介して、差動装置52のデフケースDCに一体に回転するように連結されている。また、デフケースDCのギヤ52aは、第3実施形態の場合と同様、第1出力軸16のギヤ16aに噛み合っており、差動装置52の左右のサイドギヤSIL、SIRはそれぞれ、左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに一体に回転するように連結されている。その他の要素の間の連結関係は、第12実施形態と同様である。
以上の構成により、第13実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力が、第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第13実施形態において、これらの第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ52a、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
また、第2クラッチ11によって入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって入力軸105と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第1遊星歯車装置92、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第2遊星歯車装置102、軸20、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
以下、第13実施形態において、これらの第2出力軸106、第1ギヤ機構103、第1遊星歯車装置92、左駆動軸SL、第2ギヤ機構104、第2遊星歯車装置102、軸20、差動装置52、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図2参照)により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図61及び図62を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図61は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、差動装置52を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2遊星歯車装置92、102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ52aによる変速を無視すれば、差動装置52のデフケースDCの回転数と等しくなる。このことと、前述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図61の共線図のように表される。図61に示すように、動力装置は、第12実施形態と同様、回転可能な7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する図62では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からデフケースDCに伝達されたトルクは、第3実施形態の場合と同様、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図61におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
また、図62は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ105aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、互いに一体のギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。
また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第12実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止され、図62に示すように、第1及び第2リングギヤR1、R2が逆転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数が値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図62と図57の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第12実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第12実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第12実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第12実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第13実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第13実施形態では、第1及び第2サンギヤS1、S2をそれぞれ、左駆動軸SL及び軸20に一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2を互いに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよい。すなわち、図63に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2を互いに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、左駆動軸SL及び軸20に一体に回転するように連結してもよい。
また、第13実施形態では、第1及び第2キャリヤC1、C2をそれぞれ、ギヤ103b及びギヤ104bに一体に回転するように連結しているが、これらの連結関係を逆にしてもよく、すなわち、図64に示すように、第1及び第2キャリヤC1、C2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結してもよい。さらに、これらの図63及び図64に示す変形例を組み合わせて適用してもよい。すなわち、図65に示すように、第1及び第2サンギヤS1、S2を互いに一体に回転するように連結し、第1及び第2キャリヤC1、C2をそれぞれ、ギヤ104b及びギヤ103bに一体に回転するように連結するとともに、第1及び第2リングギヤR1、R2をそれぞれ、左駆動軸SL及び軸20に一体に回転するように連結してもよい。
さらに、第8、第10及び第12実施形態では、第1伝達経路を、遊星歯車装置5を用いて構成しているが、第9、第11及び第13実施形態で説明した差動装置52を用いて構成してもよい。同様に、第9、第11及び第13実施形態では、第1伝達経路を、差動装置52を用いて構成しているが、遊星歯車装置5を用いて構成してもよい。あるいは、第8〜第13実施形態に関し、第1伝達経路を、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよく、この場合、回転電機3からの回転動力を左右の車輪WL、WRに1:1で分配できるように構成された差動装置を用いるのが好ましい。
また、第8〜第13実施形態では、第2伝達経路を、シングルピニオンタイプの第1及び第2遊星歯車装置92、102を用いて構成しているが、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよい。この場合、差動装置として、例えば、ベベルギヤタイプの差動装置(ディファレンシャルギヤ)や、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、2つのサンギヤと、2つのサンギヤにそれぞれ噛み合うとともに互いに一体の2つのピニオンギヤと、2つのピニオンギヤを自転自在にかつ2つのサンギヤに対して公転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置などが用いられる。これまでに述べた第8〜第13実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて適用してもよいことは、もちろんである。
次に、図66〜図70を参照しながら、本発明の第14実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第8実施形態と比較して、その動力伝達装置161の構成が主に異なっている。図66〜図70において、第8実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号を省略している。以下、第8実施形態と異なる点を中心に説明する。
図66に示すように、動力伝達装置161は、第1実施形態で説明した遊星歯車装置5、第1及び第2差動装置6、7、ならびに、第8実施形態で説明した第1及び第2ギヤ機構103、104に加え、第3ギヤ機構162及び第4ギヤ機構163を有している。第3ギヤ機構162は、互いに噛み合うギヤ162a及びギヤ162bで構成され、第4ギヤ機構163は、互いに噛み合うギヤ163a及びギヤ163bで構成されている。ギヤ162a、ギヤ162b、ギヤ163a及びギヤ163bの歯数は、ギヤ162aとギヤ162bのギヤ比、及び、ギヤ163aとギヤ163bのギヤ比が互いに同じ値になるように、設定されている。
また、第1差動装置6の第1デフケースDC1及び第2差動装置7の第2デフケースDC2には、前述したギヤ6a及びギヤ7aに代えて、上記の第3ギヤ機構162のギヤ162a及び第4ギヤ機構163のギヤ163aがそれぞれ一体に設けられている。第3ギヤ機構162のギヤ162bは、軸20を介して遊星歯車装置5のキャリヤCに一体に回転するように連結されており、第4ギヤ機構163のギヤ163bは、左駆動軸SLに一体に設けられている。
さらに、第8実施形態で説明した第2出力軸106は、回転電機3と同軸状に配置されており、第1ギヤ機構103のギヤ103bは、軸を介して第1差動装置6の第1サイドギヤSI1に、第2ギヤ機構104のギヤ104bは、軸を介して第2差動装置7の第3サイドギヤSI3に、それぞれ一体に回転するように連結されている。第8実施形態で説明したように、ギヤ103a、ギヤ103b、ギヤ104a及びギヤ104bの歯数は、ギヤ103aとギヤ103bのギヤ比がギヤ104aとギヤ104bのギヤ比よりも大きくなるように、設定されており、ギヤ103a及びギヤ104aは、第2出力軸106に一体に設けられている。また、第1差動装置6の第2サイドギヤSI2及び第2差動装置7の第4サイドギヤSI4は、軸を介して互いに一体に回転するように連結されている。
さらに、動力伝達装置161では、第1クラッチ10用のハブ12A、スリーブ13A及びアクチュエータ14A(図19参照)と、第2クラッチ11用のハブ12B、スリーブ13B及びアクチュエータ14B(図19参照)が、それぞれ別個に設けられており、第1クラッチ10は中空の第1入力軸164を、第2クラッチ11は中実の第2入力軸165を、それぞれ有している。
第1入力軸164は、前述した第1出力軸16と同軸状に配置されており、第1入力軸164には、回転電機3のギヤ3bに噛み合うギヤ164aと、第1クラッチ10用のハブ12Aが、一体に設けられている。第1クラッチ10のスリーブ13Aは、ハブ12Aにスプライン嵌合しており、ハブ12Aに対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。第1入力軸164及び第1出力軸16の内側には、前述した第1サイドギヤSI1と一体の軸が、相対的に回転自在に嵌合している。
上記の第2クラッチ11の第2入力軸165は、回転電機3の回転軸3a及びギヤ3bに一体に回転するように連結されており、第2出力軸106の内側に、相対的に回転自在に嵌合している。また、第2入力軸165には、第2クラッチ11用のハブ12Bが一体に設けられている。第2クラッチ11のスリーブ13Bは、ハブ12Bにスプライン嵌合しており、ハブ12Bに対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第8実施形態と同様である。
以上の構成の第1クラッチ10では、そのスリーブ13Aが図66に示す中立位置に位置しているときには、第1入力軸164と一体のハブ12Aにスプライン嵌合するスリーブ13Aのドグ歯が、第1出力軸16と一体のドグ歯10aに係合せず(噛み合わず)、それにより、第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断される。第1クラッチ10用のアクチュエータ14Aによりスリーブ13Aが中立位置からドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13Aのドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続される。
また、第2クラッチ11では、そのスリーブ13Bが図66に示す中立位置に位置しているときには、第2入力軸165と一体のハブ12Bにスプライン嵌合するスリーブ13Bのドグ歯が、第2出力軸106と一体のドグ歯11aに係合せず(噛み合わず)、それにより、第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断される。第2クラッチ11用のアクチュエータ14Bによりスリーブ13Bが中立位置からドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13Bのドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続される。
以上の構成により、第14実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3からギヤ3b及びギヤ164aを介して第1入力軸164に伝達された回転動力は、第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ5a、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第14実施形態において、これらの第1出力軸16、ギヤ16a、ギヤ5a、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
一方、第2クラッチ11によって第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から第2入力軸165に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第1差動装置6、第3ギヤ機構162(162a、162b)、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。また、回転電機3からの回転動力は、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第2差動装置7、第4ギヤ機構163(163a、163b)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第14実施形態において、これらの第2出力軸106、第1ギヤ機構103、第1差動装置6、第3ギヤ機構162、軸20、キャリヤC、右駆動軸SR、第2ギヤ機構104、第2差動装置7、第4ギヤ機構163、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14A、14Bでスリーブ13A、13Bをそれぞれ駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。ECU2(図19参照)は、アクチュエータ14A、14Bの動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図67〜図70を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図67は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ164a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、第1実施形態で説明したように、サンギヤS、リングギヤR及びキャリヤCの回転数は共線関係にあり、また、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1、第1デフケースDC1及び第2サイドギヤSI2の回転数も、第2差動装置7の第3サイドギヤSI3、第2デフケースDC2及び第4サイドギヤSI4の回転数も、それぞれ共線関係にある。
さらに、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤS及びギヤ163bは、左車輪WLと一体に回転自在であり、キャリヤC及びギヤ162bは、右車輪WRと一体に回転自在である。また、ギヤ103a及びギヤ104a、第1サイドギヤSI1及びギヤ103b、ならびに、第1デフケースDC1及びギヤ162aは、それぞれ互いに一体に回転自在である。さらに、第2サイドギヤSI2及び第4サイドギヤSI4、第2デフケースDC2及びギヤ163a、ならびに、第3サイドギヤSI3及びギヤ104bは、それぞれ互いに一体に回転自在である。
また、ギヤ103a及びギヤ103b、ならびに、ギヤ104a及びギヤ104bは、それぞれ互いに噛み合っており、ギヤ103aとギヤ103bのギヤ比は、ギヤ104aとギヤ104bのギヤ比よりも大きな値に設定されている。さらに、ギヤ163a及びギヤ163b、ギヤ164a及びギヤ164bは、それぞれ互いに噛み合っており、ギヤ163aとギヤ163bのギヤ比、及び、ギヤ164aとギヤ164bのギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図67の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(左側から4本目〜6本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。また、図67及び後述する他の共線図では便宜上、第1実施形態の場合と同様に、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離が、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離よりも短く描かれている。このことは、第2デフケースDC2、第3及び第4サイドギヤSI3、SI4の回転数を表すための縦線についても同様である。
図67に示すように、動力装置は、回転可能な9個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において6本の直線L1、L2、L3、L4、L5及びL6で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L6の符号の図示が省略されている。
図67と、第8実施形態の4WDモードにおける各種の要素の間の回転数の関係を示す図31との比較から明らかなように、第1及び第2差動装置6、7ならびに第1及び第2ギヤ機構103、104の連結関係(共線図における各種の要素の位置)は、第1及び第2遊星歯車装置92、102ならびに第1及び第2ギヤ機構103、104のそれと同様である。一方、第1及び第2デフケースDC1、DC2は、これらにそれぞれ対応する第8実施形態の第1及び第2キャリヤC1、C2と異なり、右車輪WR及び左車輪WLに、それぞれ一体に回転するように連結されておらず、第3及び第4ギヤ機構162、163をそれぞれ介して連結されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図67及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図68は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第8実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第1実施形態で説明したように、第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数は、互いに同じ値に設定されており、第1デフケースDC1と一体のギヤ162aとギヤ162bのギヤ比、及び、第2デフケースDC2と一体のギヤ163aとギヤ163bのギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。また、第2及び第4サイドギヤSI2、SI4は互いに一体に回転するように連結されており、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ163b及びギヤ162bの回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図68に示すように、第2及び第4サイドギヤSI2、SI4が逆転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図69は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図69に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図68)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図69では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状、横線状、斜線状、格子状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図70についても同様である。
図69に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図70は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図70に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図70に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図69及び図70に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第14実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図71〜図75を参照しながら、本発明の第15実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第14実施形態と比較して、その動力伝達装置171における各種の要素の間の連結関係が主に異なっている。図71〜図75において、第14実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第14実施形態と異なる点を中心に説明する。
図71に示すように、第1差動装置6の第1デフケースDC1及び第2差動装置7の第2デフケースDC2にはそれぞれ、第14実施形態で説明したギヤ162a及びギヤ163aに代えて、第1実施形態で説明したギヤ6a及びギヤ7aが一体に設けられている。これらのギヤ6a、ギヤ7aには、第1及び第2ギヤ18、19がそれぞれ噛み合っており、第1実施形態で説明したように、第1デフケースDC1のギヤ6aと第1ギヤ18のギヤ比、及び、第2デフケースDC2のギヤ7aと第2ギヤ19のギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。また、第1及び第2ギヤ18、19は、中空の軸を介して互いに一体に回転するように連結されており、この軸の内側には、第2出力軸106が相対的に回転自在に嵌合している。以上の構成により、第1及び第2デフケースDC1、DC2は、互いに同じ方向に回転するとともに、それらの回転数が互いに同じになる。
第1差動装置6の第1サイドギヤSI1及び第2差動装置7の第3サイドギヤSI3はそれぞれ、軸を介して、第2ギヤ機構104のギヤ104b及び第1ギヤ機構103のギヤ103bに一体に回転するように連結されている。また、第1差動装置6の第2サイドギヤSI2及び第2差動装置7の第4サイドギヤSI4は、互いに一体に回転するように連結されておらず、軸を介して、第3ギヤ機構162のギヤ162a及び第4ギヤ機構163のギヤ163aにそれぞれ一体に回転するように連結されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係については、第14実施形態と同様である。
以上の構成により、第15実施形態による動力装置では、第14実施形態の場合と同様、第1クラッチ10によって第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3からギヤ3bやギヤ164aを介して第1入力軸164に伝達された回転動力は、第1出力軸16や遊星歯車装置5を含む、第14実施形態で説明した第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、第2クラッチ11によって第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から第2入力軸165に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第1差動装置6、第3ギヤ機構162(162a、162b)、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。また、回転電機3からの回転動力は、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第2差動装置7、第4ギヤ機構163(163a、163b)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第15実施形態において、これらの第2出力軸106、第2ギヤ機構104、第1差動装置6、第3ギヤ機構162、軸20、キャリヤC、右駆動軸SR、第1ギヤ機構103、第2差動装置7、第4ギヤ機構163、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図72〜図75を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図72は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ164a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。このことと、前述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図72の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(右側から2本目〜4本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。また、図72及び後述する他の共線図では便宜上、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離が、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離よりも短く描かれている。このことは、第2デフケースDC2、第3及び第4サイドギヤSI3、SI4の回転数を表すための縦線についても同様である。
図72に示すように、動力装置は、第14実施形態と同様、回転可能な9個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において6本の直線L1、L2、L3、L4、L5及びL6で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L6の符号の図示が省略されている。
図72と、第10実施形態の4WDモードにおける各種の要素の間の回転数の関係を示す図43との比較から明らかなように、第1及び第2差動装置6、7ならびに第1及び第2ギヤ機構103、104の連結関係(共線図における各種の要素の位置)は、第1及び第2遊星歯車装置92、102ならびに第1及び第2ギヤ機構103、104のそれと同様である。一方、第2及び第4サイドギヤSI2、SI4は、これらにそれぞれ対応する第8実施形態の第2及び第1リングギヤR2、R1と異なり、右車輪WR及び左車輪WLに、それぞれ一体に回転するように連結されておらず、第3及び第4ギヤ機構162、163をそれぞれ介して連結されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、第14実施形態の場合と同様、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図72及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図73は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ103aの回転数及びギヤ104aの回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第14実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第14実施形態の場合と同様、第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数は、互いに同じ値に設定されており、第2サイドギヤSI2と一体のギヤ162aとギヤ162bのギヤ比、及び、第4サイドギヤSI4と一体のギヤ163aとギヤ163bのギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。また、第1及び第2デフケースDC1、DC2は互いに一体に回転するように連結されており、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ163b及びギヤ162bの回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図73に示すように、第1及び第2デフケースDC1、DC2が逆転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図74は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図74に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図73)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図74では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状、横線状、斜線状、格子状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図75についても同様である。
図74に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
また、図75は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図75に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図75に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図74及び図75に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第15実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図76〜図80を参照しながら、本発明の第16実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第14実施形態と比較して、その動力伝達装置181における各種の要素の間の連結関係が主に異なっている。図76〜図80において、第14実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第14実施形態と異なる点を中心に説明する。
図76に示すように、第14実施形態で説明した第1差動装置6の第1デフケースDC1及び第2差動装置7の第2デフケースDC2には、ギヤ162a及びギヤ163aに代えて、第1ギヤ機構103のギヤ103b及び第2ギヤ機構104のギヤ104bがそれぞれ一体に設けられている。また、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1及び第2差動装置7の第3サイドギヤSI3にはそれぞれ、第1ギヤ機構103のギヤ103b及び第2ギヤ機構104のギヤ104bに代えて、第3ギヤ機構162のギヤ162a及び第4ギヤ機構163のギヤ163aが、軸を介して一体に回転するように連結されている。さらに、中空軸20は削除されており、第3ギヤ機構162のギヤ162bは、キャリヤCに一体に設けられている。その他の要素の間の連結関係は、第14実施形態と同様である。
以上の構成により、第16実施形態による動力装置では、第14実施形態の場合と同様、第1クラッチ10によって第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から第1入力軸164に伝達された回転動力は、第1出力軸16や遊星歯車装置5を含む、第14実施形態で説明した第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、第2クラッチ11によって第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断されているときには、回転電機3から第2入力軸165に伝達された回転動力は、第2出力軸106、第1ギヤ機構103(103a、103b)、第1差動装置6、第3ギヤ機構162(162a、162b)、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。また、回転電機3からの回転動力は、第2出力軸106、第2ギヤ機構104(104a、104b)、第2差動装置7、第4ギヤ機構163(163a、163b)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第16実施形態において、これらの第2出力軸106、第1ギヤ機構103、第1差動装置6、第3ギヤ機構162、キャリヤC、右駆動軸SR、第2ギヤ機構104、第2差動装置7、第4ギヤ機構163、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図77〜図80を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図77は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2差動装置6、7を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ164a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。このことと、前述した各種の要素の間の連結関係から、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図77の共線図のように表される。
なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、回転数を表すための単一の縦線(右側から4本目の縦線)に対して回転数を表す白丸が上下に2つ描かれているが、それらのうちの上側の白丸が、その縦線の上端に記載された要素の回転数を表すとともに、下側の白丸が、その縦線の下端に記載された要素の回転数を表している。また、図77及び後述する他の共線図では便宜上、第1実施形態の場合と同様に、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第2サイドギヤSI2の回転数を表すための縦線との間の距離が、第1デフケースDC1の回転数を表すための縦線と第1サイドギヤSI1の回転数を表すための縦線との間の距離よりも短く描かれている。このことは、第2デフケースDC2、第3及び第4サイドギヤSI3、SI4の回転数を表すための縦線についても同様である。
図77に示すように、動力装置は、第14実施形態と同様、回転可能な9個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において6本の直線L1、L2、L3、L4、L5及びL6で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L6の符号の図示が省略されている。
図77と、第12実施形態の4WDモードにおける各種の要素の間の回転数の関係を示す図55との比較から明らかなように、第1及び第2差動装置6、7ならびに第1及び第2ギヤ機構103、104の連結関係(共線図における各種の要素の位置)は、第1及び第2遊星歯車装置92、102ならびに第1及び第2ギヤ機構103、104のそれと同様である。一方、第1及び第3サイドギヤSI1、SI3は、これらにそれぞれ対応する第12実施形態の第2及び第1サンギヤS2、S1と異なり、右車輪WR及び左車輪WLに、それぞれ一体に回転するように連結されておらず、第3及び第4ギヤ機構162、163をそれぞれ介して連結されている。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、第14実施形態の場合と同様、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図77及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図78は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、第2入力軸165と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、第1入力軸164と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ103a及びギヤ104aの回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第14実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第14実施形態の場合と同様、第1〜第4サイドギヤSI1〜SI4の歯数は、互いに同じ値に設定されており、第1サイドギヤSI1と一体のギヤ162aとギヤ162bのギヤ比、及び、第3サイドギヤSI3と一体のギヤ163aとギヤ163bのギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。また、第2及び第4サイドギヤSI2、SI4は互いに一体に回転するように連結されており、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ163b及びギヤ162bの回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図78に示すように、第2及び第4サイドギヤSI2、SI4が正転方向に空転するとともに、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図79は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図79に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図78)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図79では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状、横線状、斜線状、格子状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図80についても同様である。
図79に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
また、図80は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図80に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まるギヤ103a、ギヤ104a及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図80に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図79及び図80に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第16実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第14〜第16実施形態に関し、以下に述べる種々のバリエーションを採用することが可能である。例えば、第14〜第16実施形態では、ギヤ162bを、キャリヤCに一体に回転するように連結しているが、リングギヤRに一体に回転するように連結してもよい。また、第14〜第16実施形態では、ギヤ163bを、サンギヤSに一体に回転するように連結しているが、リングギヤRに一体に回転するように連結してもよい。
さらに、第14〜第16実施形態では、第1伝達経路を、遊星歯車装置5を用いて構成しているが、第3実施形態で説明した差動装置52を用いて構成してもよく、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよい。この場合、回転電機3からの回転動力を左右の車輪WL、WRに1:1で分配できるように構成された差動装置を用いるのが好ましい。
また、第14〜第16実施形態では、第2伝達経路を、ベベルギヤタイプの第1及び第2差動装置6、7を用いて構成しているが、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよい。この場合、差動装置として、例えば、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置や、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、2つのサンギヤと、2つのサンギヤにそれぞれ噛み合うとともに互いに一体の2つのピニオンギヤと、2つのピニオンギヤを自転自在にかつ2つのサンギヤに対して公転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置などが用いられる。
次に、図81〜図85を参照しながら、本発明の第17実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第8実施形態と比較して、その動力伝達装置191の構成が主に異なっている。図81〜図85において、第8実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第8実施形態と異なる点を中心に説明する。
図81に示すように、動力伝達装置191は、第1実施形態で説明した遊星歯車装置5、及び、第8実施形態で説明した第1及び第2遊星歯車装置92、102に加え、シングルピニオンタイプの第3遊星歯車装置192を有しており、第8実施形態と異なり、第1及び第2ギヤ機構103、104は設けられていない。第1〜第3遊星歯車装置92、102、192は、左右の駆動軸SL、SRと同軸状に配置されており、左駆動軸SL側からこの順で並んでいる。第3遊星歯車装置192は、第3サンギヤS3と、第3サンギヤS3の外周に設けられた第3リングギヤR3と、第3サンギヤS3及び第3リングギヤR3に噛み合う複数の第3ピニオンギヤP3(2つのみ図示)と、第3ピニオンギヤP3を自転自在にかつ第3サンギヤS3に対して公転自在に支持する第3キャリヤC3を有している。
第1遊星歯車装置92の第1サンギヤS1及び第2遊星歯車装置102の第2キャリヤC2は、中空の軸を介して、互いに一体に回転するように連結され、第1遊星歯車装置92の第1キャリヤC1は、左駆動軸SLに一体に設けられている。この中空の軸の内側には、左駆動軸SLが相対的に回転自在に嵌合している。また、第1遊星歯車装置92の第1リングギヤR1は、ケース25に取り付けられ、回転不能である。
第2遊星歯車装置102の第2サンギヤS2には、中空の軸を介して、ギヤ102aが一体に回転するように連結されており、ギヤ102aには、ギヤ106aが噛み合っている。ギヤ106aは、第1及び第2クラッチ10、11の第2出力軸106に一体に設けられている。また、第2遊星歯車装置102の第2リングギヤR2は、中空の軸を介して、第3サンギヤS3に一体に回転するように連結されており、この軸の内側には、第2キャリヤC2及び左駆動軸SLが相対的に回転自在に嵌合している。
第3キャリヤC3は、第1実施形態で説明した軸20を介して、遊星歯車装置5のキャリヤCに一体に回転するように連結されていて、第3リングギヤR3は、ケース25に取り付けられており、回転不能である。第1〜第3サンギヤS1〜S3の歯数ZS1、ZS2、ZS3及び第1〜第3リングギヤR1〜R3の歯数ZR1、ZR2、ZR3は、次式(11)が成立するように設定されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第8実施形態と同様である。
(1+ZS1/ZR1)×(1+ZS2/ZR2)
=(1+ZS3/ZR3) ……(11)
以上の構成により、第17実施形態による動力装置では、第1及び第2クラッチ10、11のスリーブ13が図81に示す中立位置に位置しているときには、入力軸105と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、106とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸105と第1及び第2出力軸16、106との間が遮断される。
また、アクチュエータ14(図2参照)によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第1及び第8実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続されるとともに、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸105に伝達された回転動力は、第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第1遊星歯車装置92、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達されるとともに、第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第3遊星歯車装置192、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。
以下、第17実施形態において、これらの第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第1遊星歯車装置92、左駆動軸SL、第3遊星歯車装置192、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14でスリーブ13を駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。前述したECU2(図2参照)は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図82〜図85を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図82は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が遮断され、第1〜第3遊星歯車装置92、102、192を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、第1実施形態で説明したように、サンギヤS、リングギヤR及びキャリヤCの回転数は共線関係にある。さらに、第1サンギヤS1、第1キャリヤC1及び第1リングギヤR1の回転数も、第2サンギヤS2、第2キャリヤC2及び第2リングギヤR2の回転数も、第3サンギヤS3、第3キャリヤC3及び第3リングギヤR3の回転数も、それぞれ共線関係にある。
さらに、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤS及び第1キャリヤC1は、左車輪WLと一体に回転自在であり、キャリヤC及び第3キャリヤC3は、右車輪WRと一体に回転自在である。また、第1サンギヤS1及び第2キャリヤC2、ならびに、第3サンギヤS3及び第2リングギヤR2は、それぞれ互いに一体に回転自在であり、第1及び第3リングギヤR1、R3は回転不能である。
以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図82の共線図のように表される。なお、第1実施形態で説明したように、この共線図及び後述する他の共線図では、右側から3本目の回転数を表すための単一の縦線に対して回転数を表す白丸及び黒丸が上下にそれぞれ描かれているが、この白丸は、その縦線の上端に記載された要素(回転電機3、リングギヤR)の回転数を表すとともに、下側の黒丸が、その縦線の下端に記載された要素(第1及び第2リングギヤR1、R2)の回転数を表している。また、前述した第1〜第3遊星歯車装置92、102、192の各種のギヤの歯数の設定から明らかなように、図82及び後述する他の共線図における各種の要素の回転数を表すための縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
図82に示すように、動力装置は、回転不能な1個の要素と回転可能な6個の要素から成る計7個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図82及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図83は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸105と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸105と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ105a、ギヤ106a及びギヤ102aによる変速を無視すれば、第2サンギヤS2の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
前述したように、第1サンギヤS1と第1リングギヤR1の回転数差(第1サンギヤS1の回転数)と、第3サンギヤS3と第3リングギヤR3の回転数差(第3サンギヤS3の回転数)との比(a:b)が、第2キャリヤC2と第2サンギヤS2の回転数差と、第2リングギヤR2と第2サンギヤS2の回転数差との比(c:d)と等しい。また、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなり、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体の第1及び第3キャリヤC1、C3の回転数も互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図82に示すように、第2サンギヤS2及び回転電機3の回転数は、第1及び第3リングギヤR1、R3の回転数と同じく値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図84は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図84に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第2サンギヤS2及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図83)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図84では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状又は横線状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する図85についても同様である。
図84に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図85は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図85に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第2サンギヤS2及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図85に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図84及び図85に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第17実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第17実施形態では、第1サンギヤS1を第2キャリヤC2に一体に回転するように連結し、第1リングギヤR1をケース25に取り付け、第3サンギヤS3を第2リングギヤR2に一体に回転するように連結するとともに、第3リングギヤR3をケース25に取り付けているが、これらの第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1の連結関係、ならびに、第2サンギヤS及び第2リングギヤR2の連結関係をそれぞれ逆にしてもよい。すなわち、図86に示すように、第1サンギヤS1をケース25に取り付け、第1リングギヤR1を第2キャリヤC2に一体に回転するように連結し、第3サンギヤS3をケース25に取り付けるとともに、第3リングギヤR3を第2リングギヤR2に一体に回転するように連結してもよい。
次に、図87〜図89を参照しながら、本発明の第18実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第17実施形態と比較して、その動力伝達装置201が第1及び第3遊星歯車装置92、192に代えて第1ギヤ機構202及び第2ギヤ機構203をそれぞれ有することと第1及び第2クラッチ10、11の構成が主に異なっている。図87〜図89において、第17実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第17実施形態と異なる点を中心に説明する。
図87に示すように、第1ギヤ機構202は、平行軸ギヤ機構で構成されており、中空の軸を介して第2キャリヤC2に一体に回転するように連結されたギヤ202aと、ギヤ202aに噛み合うギヤ202bと、ギヤ202bと一体のギヤ202cと、ギヤ202cに噛み合うとともに、左駆動軸SLに一体に設けられたギヤ202dを有している。この中空の軸の内側には、左駆動軸SLが相対的に回転自在に設けられている。また、第2ギヤ機構203は、第1ギヤ機構202と同様に平行軸ギヤ機構で構成されており、第2リングギヤR2の外周面に一体に設けられたギヤ203aと、ギヤ203aに噛み合うギヤ203bと、ギヤ203bと一体のギヤ203cと、ギヤ203cに噛み合うとともに、軸20を介して、遊星歯車装置5のキャリヤCに一体に回転するように連結されたギヤ203dを有している。
また、ギヤ202a〜ギヤ202dの歯数Z202a、Z202b、Z202c、Z202d及びギヤ203a〜203dの歯数Z203a、Z203b、Z203c、Z202dは、次式(12)が成立するように設定されている。これにより、ギヤ202a及びギヤ203aに伝達された回転動力はそれぞれ、ギヤ202b及びギヤ203bに減速された状態で伝達される。
{(Z202b×Z202d)/(Z202c×Z202a)}
×(1+ZS2/ZR2)=(Z203b×Z203d)
/(Z203c×Z203a) ……(12)
また、動力伝達装置201では、第1クラッチ10用のハブ12A、スリーブ13A及びアクチュエータ14A(図19参照)と、第2クラッチ11用のハブ12B、スリーブ13B及びアクチュエータ14B(図19参照)が、それぞれ別個に設けられており、第1クラッチ10は、左右の駆動軸SL、SRと同軸状に配置された中空の第1入力軸204及び第1出力軸205を有している。
第1入力軸204には、ギヤ204aが一体に設けられており、第1入力軸204の内側には、第1出力軸205が相対的に回転自在に嵌合している。第1出力軸205は、フランジなどを介して、遊星歯車装置5のリングギヤRに一体に回転するように連結されており、その内側には、軸20が相対的に回転自在に嵌合している。第1クラッチ10のドグ歯10a及びハブ12Aは、第1入力軸204及び第1出力軸205にそれぞれ一体に設けられており、第1クラッチ10のスリーブ13Aは、ハブ12Aにスプライン嵌合しており、ハブ12Aに対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。
第2クラッチ11は、中実の第2入力軸206、及び第17実施形態で説明した第2出力軸106を有している。両者206、106は、左右の駆動軸SL、SRと平行になるように配置されており、第2入力軸206は、第2出力軸106の内側に相対的に回転自在に嵌合している。第2入力軸206には、ギヤ206a、ギヤ206b、及び第2クラッチ11のハブ12Bが一体に設けられており、三者206a、206b及び12Bは、回転電機3側からこの順で並んでいる。
また、ギヤ206a及びギヤ206bは、回転電機3のギヤ3b及び上記の第1入力軸204のギヤ204aにそれぞれ噛み合っており、ハブ12Bには、第2クラッチ11のスリーブ13Bがスプライン嵌合している。スリーブ13Bは、ハブ12Bに対して回転不能かつ軸線方向に移動自在である。第2クラッチ11のドグ歯11aは、第17実施形態と同様、第2出力軸106に一体に設けられており、これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第17実施形態と同様である。
以上の構成の第1クラッチ10では、そのスリーブ13Aが図87に示す中立位置に位置しているときには、第1出力軸205と一体のハブ12Aにスプライン嵌合するスリーブ13Aのドグ歯が、第1入力軸204と一体のドグ歯10aに係合せず(噛み合わず)、それにより、第1入力軸204と第1出力軸205との間が遮断される。第1クラッチ10用のアクチュエータ14Aによりスリーブ13Aが中立位置からドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13Aのドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、第1入力軸204と第1出力軸205との間が接続される。
また、第2クラッチ11では、そのスリーブ13Bが図87に示す中立位置に位置しているときには、第2入力軸206と一体のハブ12Bにスプライン嵌合するスリーブ13Bのドグ歯が、第2出力軸106と一体のドグ歯11aに係合せず(噛み合わず)、それにより、第2入力軸206と第2出力軸106との間が遮断される。第2クラッチ11用のアクチュエータ14Bによりスリーブ13Bが中立位置からドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13Bのドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、第2入力軸206と第2出力軸106との間が接続される。
以上の構成により、第18実施形態による動力装置では、回転電機3の回転動力は、回転軸3a、ギヤ3b及びギヤ206aを介して、第2入力軸206に伝達されるとともに、さらにギヤ206b及びギヤ204aを介して、第1入力軸204に伝達される。第1クラッチ10によって第1入力軸204と第1出力軸205との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって第2入力軸206と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から上述したように第1入力軸204に伝達された回転動力は、第1出力軸205、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第18実施形態において、これらの第1出力軸205、遊星歯車装置5、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
一方、第2クラッチ11によって第2入力軸206と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって第1入力軸204と第1出力軸205との間が遮断されているときには、回転電機3から第2入力軸206に伝達された回転動力は、第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第1ギヤ機構202(ギヤ202a〜202d)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。また、回転電機3からの回転動力は、第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第2ギヤ機構203(ギヤ203a〜203d)、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達される。
以下、第18実施形態において、これらの第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第1ギヤ機構202、左駆動軸SL、第2ギヤ機構203、軸20、キャリヤC、及び右駆動軸SRから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14A、14Bでスリーブ13A、13Bをそれぞれ駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。ECU2は、アクチュエータ14A、14Bの動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図88及び図89を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図88は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、第1入力軸204と第1出力軸205との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、第2入力軸206と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2ギヤ機構202、203ならびに第2遊星歯車装置102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ206a、ギヤ206b及び204aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤS及びギヤ202dは、左車輪WLと一体に回転自在であり、キャリヤC及びギヤ203dは、右車輪WRと一体に回転自在である。また、ギヤ202a及び第2キャリヤC2、ならびに、ギヤ203a及び第2リングギヤR2は、それぞれ互いに一体に回転自在であり、ギヤ202a及びギヤ203aに伝達された回転動力はそれぞれ、ギヤ202d及びギヤ203dに減速された状態で伝達される。
以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図88の共線図のように表される。前述したギヤ202a〜ギヤ202dの歯数及びギヤ203a〜ギヤ203dの歯数の設定から明らかなように、図88及び後述する他の共線図における各種の要素の回転数を表すための縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。
図88に示すように、動力装置は、回転可能な6個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1及び第17実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図88におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図89は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、第2入力軸206と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、第1入力軸204と第1出力軸205との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ206a、ギヤ106a及びギヤ102aによる変速を無視すれば、第2サンギヤS2の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第17実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
前述したように、ギヤ202aの回転数とギヤ203aの回転数との比(a:b)が、第2キャリヤC2と第2サンギヤS2の回転数差と、第2リングギヤR2と第2サンギヤS2の回転数差との比(c:d)と等しい。また、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数は互いに等しくなり、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ202d及びギヤ203dの回転数も互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図89に示すように、第2サンギヤS2及び回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図89と図84の比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第17実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まる第2サンギヤS2及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第17実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第17実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まる第2サンギヤS2及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第17実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行った場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第18実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図90〜図92を参照しながら、本発明の第19実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第18実施形態と比較して、その動力伝達装置211が遊星歯車装置5に代えて第3実施形態で説明した差動装置52を有する点が、主に異なっている。図90〜図92において、第18実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第18実施形態と異なる点を中心に説明する。
図90に示すように、動力伝達装置211では、軸20が削除されており、第2ギヤ機構203のギヤ203dは、第1出力軸205に一体に設けられている。第1出力軸205は、差動装置52のデフケースDCに一体に設けられており、デフケースDCから左車輪WL側に延びている。また、第3実施形態と説明したように、差動装置52の左右のサイドギヤSIL、SIRはそれぞれ、左右の駆動軸SL、SRを介して、左右の車輪WL、WRに一体に回転するように連結されている。その他の要素の間の連結関係は、第18実施形態と同様である。
以上の構成により、第19実施形態による動力装置では、第1クラッチ10によって第1入力軸204と第1出力軸205との間が接続されるとともに、第2クラッチ11によって第2入力軸206と第2出力軸106との間が遮断されているときには、回転電機3から第18実施形態で説明したように第1入力軸204に伝達された回転動力は、第1出力軸205、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。以下、第19実施形態において、これらの第1出力軸205、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRから成る回転動力の伝達経路を「第1伝達経路」という。
一方、第2クラッチ11によって第2入力軸206と第2出力軸106との間が接続されるとともに、第1クラッチ10によって第1入力軸204と第1出力軸205との間が遮断されているときには、回転電機3から第2入力軸206に伝達された回転動力は、第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第1ギヤ機構202、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。また、回転電機3からの回転動力は、第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第2ギヤ機構203、第1出力軸205、差動装置52、及び左右の駆動軸SL、SRをそれぞれ介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
以下、第19実施形態において、これらの第2出力軸106、ギヤ106a、ギヤ102a、第2遊星歯車装置102、第1ギヤ機構202、左駆動軸SL、第2ギヤ機構203、第1出力軸205、差動装置52、及び右駆動軸SRから成る動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2(図19参照)によって、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御され、それにより、動力装置の各種の動作が行われ、動力装置では、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図91及び図92を参照しながら、これらの動作モードについて簡単に説明する。
図91は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、第1入力軸204と第1出力軸205との間が接続され、差動装置52を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、第2入力軸206と第2出力軸106との間が遮断され、第1及び第2ギヤ機構202、203ならびに第2遊星歯車装置102を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ206a、ギヤ206b及びギヤ204aによる変速を無視すれば、差動装置52のデフケースDCの回転数と等しくなる。また、周知のように、差動装置52の左サイドギヤSIL、デフケースDC及び右サイドギヤSIRの回転数は、それらの関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある。これらのことと、前述した各種の要素の間の連結関係より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図91の共線図のように表される。
図91に示すように、動力装置は、第18実施形態と同様、回転可能な6個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する図92では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。また、図91及び図92における各種の要素の回転数を表すための縦線の間の距離a、b、c及びdについて、第18実施形態と同様、a:b=c:dの関係が成立する。
また、4WDモード中には、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からデフケースDCに伝達されたトルクは、左右のサイドギヤSIL、SIRを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図91におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図92は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、第2入力軸206と第2出力軸106との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、第1入力軸204と第1出力軸205との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ206a、ギヤ106a及びギヤ102aによる変速を無視すれば、第2サンギヤS2の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
第18実施形態の場合と同様、ギヤ202aの回転数とギヤ203aの回転数との比(a:b)が、第2キャリヤC2と第2サンギヤS2の回転数差と、第2リングギヤR2と第2サンギヤS2の回転数差との比(c:d)と等しい。また、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRの回転数及びデフケースDCの回転数は互いに等しくなり、左車輪WL及びデフケースDCとそれぞれ一体のギヤ202d及びギヤ203dの回転数も互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図92に示すように、第2サンギヤS2及び回転電機3の回転数は、第18実施形態の場合と同様に値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
また、図92と図89及び第17実施形態の図84との比較から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、第17及び第18実施形態の場合と同様、旋回外輪である右車輪WRの回転数と旋回内輪である左車輪WLの回転数の関係によって定まる第2サンギヤS2及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。さらに、この場合には、第17及び第18実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
一方、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、第17及び第18実施形態の場合と同様、旋回外輪である左車輪WLの回転数と旋回内輪である右車輪WRの回転数の関係によって定まる第2サンギヤS2及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。さらに、この場合には、第17及び第18実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力されることによって、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達される。これにより、右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左右の旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪に正転方向のトルクが、旋回外輪に逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより車両のオーバーステアが抑制される。また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は、上述した車両の前進時の左右の旋回中の場合の回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第19実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
次に、図93〜図97を参照しながら、本発明の第20実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、その動力伝達装置221が第2差動装置7を有していないことと、第1差動装置6、第1及び第2ギヤ機構8、9の連結関係が主に異なっている。図93〜図97において、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付すとともに、一部の構成要素の符号の図示を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図93に示すように、第1差動装置6の第1デフケースDC1には、第1実施形態で説明したギヤ6aが設けられておらず、第1ギヤ機構8のギヤ8aが一体に設けられている。また、第1差動装置6の第2サイドギヤSI2は、軸を介して、第2ギヤ機構9のギヤ9aに一体に回転するように連結されている。第1実施形態で説明したように、ギヤ8aに噛み合う第1ギヤ機構8のギヤ8bは、軸20、遊星歯車装置5のキャリヤC及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに一体に回転するように連結されている。また、ギヤ9aに噛み合う第2ギヤ機構9のギヤ9bは、左駆動軸SLを介して、左車輪WLに一体に回転するように連結されている。
さらに、ギヤ8a、ギヤ8b、ギヤ9a及びギヤ9bの歯数Z8a、Z8b、Z9a、Z9bは、次式(13)が成立するように設定されている。
(Z8b/Z8a)(1+ZSI1/ZSI2)=Z9b/Z9a
……(13)
第1実施形態で説明したように、第1及び第2サイドギヤSI1、SI2の歯数は互いに同じ値に設定されているため、この歯数の設定により、ギヤ8aに対するギヤ8bのギヤ比と、ギヤ9aに対するギヤ9bのギヤ比との比は、1:2に設定されている。これまでに述べた要素以外の要素の間の連結関係は、第1実施形態と同様である。
以上の構成により、第20実施形態による動力装置では、第1及び第2クラッチ10、11のスリーブ13が図93に示す中立位置に位置しているときには、第1実施形態の場合と同様、入力軸15と一体のハブ12にスプライン嵌合するスリーブ13のドグ歯が、第1及び第2出力軸16、17とそれぞれ一体のドグ歯10a及びドグ歯11aのいずれにも係合せず(噛み合わず)、それにより、入力軸105と第1及び第2出力軸16、17との間が遮断される。
また、アクチュエータ14(図2参照)によりスリーブ13が中立位置から第1クラッチ10のドグ歯10a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯10aに係合することによって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続されるとともに、入力軸15と第2出力軸17との間が遮断される。この場合には、回転電機3からギヤ3b及びギヤ15aを介して入力軸15に伝達された回転動力は、第1実施形態の場合と同様、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介して、左右の車輪WL、WRに伝達される。
一方、アクチュエータ14によりスリーブ13が中立位置から第2クラッチ11のドグ歯11a側に駆動されると、スリーブ13のドグ歯がドグ歯11aに係合することによって、入力軸15と第2出力軸17との間が接続されるとともに、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断される。この場合には、回転電機3から入力軸15に伝達された回転動力は、第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8(8a、8b)、遊星歯車装置5のキャリヤC、及び右駆動軸SRを介して、右車輪WRに伝達されるとともに、第2出力軸17、第1差動装置6、第2ギヤ機構9(9a、9b)、及び左駆動軸SLを介して、左車輪WLに伝達される。
以下、第20実施形態において、これらの第2出力軸17、第1差動装置6、第1ギヤ機構8、キャリヤC、右駆動軸SR、第2ギヤ機構9、及び左駆動軸SLから成る回転動力の伝達経路を「第2伝達経路」という。
以上のように、第1及び第2クラッチ10、11において、アクチュエータ14でスリーブ13を駆動することにより、第1及び第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が選択的に接続されたり、この回転動力の伝達が遮断されたりする。前述したECU2(図2参照)は、アクチュエータ14の動作を制御することによって、第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断を制御する。
また、動力装置では、第1実施形態の場合と同様、ECU2により、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11が制御されることによって、動力装置の各種の動作が行われ、その動作モードとして、例えば4WDモード及びTVモードが設定されている。以下、図94〜図97を参照しながら、これらの動作モードについて説明する。
図94は、4WDモード中で、かつ車両の直進中における動力装置の各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。4WDモード中、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が接続され、遊星歯車装置5を含む第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が遮断され、第1差動装置6、第1及び第2ギヤ機構8、9を含む第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。
これにより、回転電機3の回転数は、ギヤ3b、ギヤ15a、ギヤ16a及びギヤ5aによる変速を無視すれば、遊星歯車装置5のリングギヤRの回転数と等しくなる。また、第1実施形態で説明したように、サンギヤS、リングギヤR及びキャリヤCの回転数は共線関係にあり、また、第1差動装置6の第1サイドギヤSI1、第1デフケースDC1及び第2サイドギヤSI2の回転数も共線関係にある。さらに、前述した連結関係から明らかなように、サンギヤS及びギヤ9bは、左車輪WLと一体に回転自在であり、キャリヤC及びギヤ8bは、右車輪WRと一体に回転自在である。また、第1デフケースDC1及びギヤ8a、ならびに、第2サイドギヤSI2及びギヤ9aは、それぞれ互いに一体に回転自在である。さらに、ギヤ8a、ギヤ8b、ギヤ9a及びギヤ9bの歯数は、前述したように設定されている。
以上より、4WDモード中、動力装置における各種の要素の間の回転数の関係は、例えば図94の共線図のように表される。また、図94及び後述する他の共線図における各種の要素の回転数を表すための縦線の間の距離a、b、c及びdについて、a:b=c:dの関係が成立する。図94に示すように、動力装置は、回転可能な6個の要素を備えており、これらの要素の回転数の関係が、共線図において4本の直線L1、L2、L3及びL4で表される。なお、後述する他の共線図では、これらの直線L1〜L4の符号の図示が省略されている。
また、4WDモード中には、第1実施形態の場合と同様、回転電機3で力行が行われ、回転電機3からリングギヤRに伝達されたトルクは、サンギヤS及びキャリヤCを介して、1:1の分配比で左右の車輪WL、WRに伝達され、それにより左右の車輪WL、WRが駆動される。さらに、4WDモード中、左右の車輪WL、WRは、回転電機3のトルクの方向を制御することによって、正転方向又は逆転方向の互いに同じ方向のトルクが伝達されることで、正転方向又は逆転方向に回転するように駆動され、また、互いに差回転可能である。図94及び後述する他の共線図におけるTM、RWL及びRWRはそれぞれ、第1実施形態で説明したように、回転電機3のトルク、左車輪WLの反力トルク及び右車輪WRの反力トルクである。また、例えば、車両の減速走行中に、左右の車輪WL、WRの回転動力を用いて、回転電機3で回生を行うことができる。
図95は、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中における各種の要素の間の回転数の関係を示している。TVモード中(車両の直進時及び後述する旋回時を含む)、第2クラッチ11によって、入力軸15と第2出力軸17との間が接続され、第2伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が接続されるとともに、第1クラッチ10によって、入力軸15と第1出力軸16との間が遮断され、第1伝達経路を介した回転電機3と左右の車輪WL、WRとの間の回転動力の伝達が遮断される。ギヤ3b及びギヤ15aによる変速(回転方向の変更)を無視すれば、上記の第1及び第2クラッチ10、11の接続/遮断により、回転電機3の回転数は、第2出力軸17と一体の第1サイドギヤSI1の回転数と等しくなる。また、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中には、第1実施形態の場合と同様、バッテリ22と回転電機3との間の電力の授受が停止される。
前述したように、ギヤ8aの回転数とギヤ9aの回転数との比(a:b)が、第1デフケースDC1と第1サイドギヤSI1の回転数差と第2サイドギヤSI2と第1サイドギヤSI1の回転数差との比(c:d)と等しい。また、ギヤ8a及びギヤ9aは、第1デフケースDC1及び第2サイドギヤSI2とそれぞれ一体に回転自在であり、車両の直進中には、左右の車輪WL、WRとそれぞれ一体のギヤ8b及びギヤ9bの回転数は、互いに等しくなる。以上により、TVモード中で、かつ車両の前方への直進中、図95に示すように、回転電機3の回転数は値0になり、左右の車輪WL、WRから回転電機3に回転動力が伝達されない。
なお、TVモード中で、かつ車両の後方への直進中においても、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前方への直進中の場合と同様に制御することによって、上述した動作が同様に得られる。
さらに、図96は、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図96に示すように、旋回外輪である右車輪WRの回転数が旋回内輪である左車輪WLの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、逆転方向になる。また、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中には、上述した直進中(図95)の場合と異なり、車両の左旋回をアシストすべく、左右の車輪WL、WRとの間にトルク差を発生させるために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から逆転方向の回転動力が出力される。
図96では、回転電機3のトルクTM及び左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRに加え、他の要素の回転数を表す白丸のすぐ上側又は下側に、それらの要素の入力トルクと反力トルクを示す矢印が描かれている。これらの入力トルク及び反力トルク(TM、RWL及びRWRを含む)のうち、ハッチングが付されていないもの同士で、また、同じ種類のハッチング(縦線状又は横線状のハッチング)が付されたもの同士で、それぞれトルクが釣り合っている。このことは、後述する他の共線図についても同様である。
図96に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3から、旋回外輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回内輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の左旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の左旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回外輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、図97は、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中における各種の要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。この場合、図97に示すように、旋回外輪である左車輪WLの回転数が旋回内輪である右車輪WRの回転数よりも高くなり、両者の関係によって定まる第1サイドギヤSI1及び回転電機3の回転方向は、正転方向になる。
また、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中には、車両の右旋回をアシストするために、回転電機3で力行が行われるとともに、回転電機3から正転方向の回転動力が出力される。この場合、図97に示す左右の車輪WL、WRの反力トルクRWL、RWRの方向から明らかなように、回転電機3から、旋回外輪である左車輪WLに正転方向のトルクが、旋回内輪である右車輪WRに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより右回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両の右旋回がアシストされる。
なお、TVモード中で、かつ車両の前進時の右旋回中、回転電機3で回生を行ってもよく、その場合には、旋回内輪である右車輪WRに正転方向のトルクが、旋回外輪である左車輪WLに逆転方向のトルクが、それぞれ伝達され、それにより左回りのヨーモーメントが車両に発生することによって、車両のオーバーステアが抑制される。
また、TVモード中で、かつ車両の後退時の左右の旋回中には、各種の要素の回転方向は図96及び図97に示す回転方向と逆方向になり、回転電機3、第1及び第2クラッチ10、11を上述した前進時の左右の旋回中の場合と同様に制御することによって、車両の旋回アシストや、車両のオーバーステアの抑制が行われる。
以上のように、第20実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、第1クラッチ10で回転電機3と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する4WDモードが選択される。また、第1クラッチ10で回転電機10と第1伝達経路との間の回転動力の伝達を遮断するとともに、第2クラッチ11で回転電機3と第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続することによって、回転電機3からのトルクを左右の車輪WL、WRに、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達するTVモードが選択される。このように、4WDモードとTVモードを選択でき、それにより車両の運転性を向上させることができる。
なお、第17〜第20実施形態に関し、以下に述べる種々のバリエーションを採用することが可能である。例えば、第18及び第19実施形態では、第2伝達機構を、第1及び第2ギヤ機構202、203を用いて構成しているが、第1ギヤ機構202に代えて第17実施形態で説明した第1遊星歯車装置92を用いて、又は、第2ギヤ機構203に代えて第17実施形態で説明した第2遊星歯車装置102を用いて、構成してもよい。また、第19実施形態では、ギヤ202d及び203dをそれぞれ、左サイドギヤSIL及びデフケースDCに一体に回転するように連結しているが、デフケースDC及び右サイドギヤSIRに一体に回転するように連結してもよい。
さらに、第20実施形態では、ギヤ8bを、キャリヤCに一体に回転するように連結しているが、リングギヤRに一体に回転するように連結してもよく、また、ギヤ9bを、サンギヤSに一体に回転するように連結しているが、リングギヤRに一体に回転するように連結してもよい。
また、第17、第18及び第20実施形態では、第1伝達経路を、遊星歯車装置5を用いて構成しているが、第3実施形態で説明した差動装置52を用いて構成してもよい。同様に、第19実施形態では、第1伝達経路を、差動装置52を用いて構成しているが、遊星歯車装置5を用いて構成してもよい。あるいは、第17〜第20実施形態に関し、第1伝達経路を、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよく、この場合、回転電機3からの回転動力を左右の車輪WL、WRに1:1で分配できるように構成された差動装置を用いるのが好ましい。
さらに、第17〜第19実施形態では、第2伝達経路を、第1遊星歯車装置92や、第2遊星歯車装置102、第3遊星歯車装置192を用いて構成しているが、回転数が共線関係にある3つの回転要素を有する他の適当な差動装置を用いて構成してもよい。この場合、差動装置として、例えば、ベベルギヤタイプの差動装置(ディファレンシャルギヤ)や、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、2つのサンギヤと、2つのサンギヤにそれぞれ噛み合うとともに互いに一体の2つのピニオンギヤと、2つのピニオンギヤを自転自在にかつ2つのサンギヤに対して公転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置などが用いられる。
なお、本発明は、説明した第1〜第20実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、回転電機3を用いているが、回転動力を出力可能な他の適当な動力源、例えば油圧モータを用いてもよい。また、実施形態では、本発明における第1及び第2接断機構として、ドグクラッチで構成された第1及び第2クラッチを用いているが、摩擦式のクラッチや、電磁パウダークラッチなどを用いてもよい。さらに、実施形態では、本発明における第1及び第2被駆動部はそれぞれ、車両の左右の車輪WL、WRであるが、これとは逆に右車輪及び左車輪でもよく、あるいは、例えば、前後輪駆動式の車両における前輪及び後輪にそれぞれ駆動力を伝達するための前後の駆動軸や、船舶の2つのスクリューなどでもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
WL 左車輪(第1被駆動部)
WR 右車輪(第2被駆動部)
3 回転電機(動力源)
4 動力伝達装置
10 第1クラッチ(第1接断機構)
11 第2クラッチ(第2接断機構)
41 動力伝達装置
51 動力伝達装置
61 動力伝達装置
71 動力伝達装置
81 動力伝達装置
91 動力伝達装置
101 動力伝達装置
111 動力伝達装置
121 動力伝達装置
131 動力伝達装置
141 動力伝達装置
151 動力伝達装置
161 動力伝達装置
171 動力伝達装置
181 動力伝達装置
191 動力伝達装置
201 動力伝達装置
211 動力伝達装置
221 動力伝達装置

Claims (1)

  1. 第1被駆動部及び第2被駆動部を駆動するための動力装置であって、
    回転動力を出力可能な動力源と、
    当該動力源からのトルクを前記第1及び第2被駆動部に、互いに同じ方向のトルクが作用するように伝達する第1伝達経路、及び、互いに反対方向のトルクが作用するように伝達する第2伝達経路を有する動力伝達装置と、
    前記動力源と前記第1伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断する第1接断機構と、
    前記動力源と前記第2伝達経路との間の回転動力の伝達を接続/遮断する第2接断機構と、
    を備えることを特徴とする動力装置。
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