JP3823968B2 - ハイブリッド変速機 - Google Patents
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Description
ハイブリッド変速機に具えられたモータの他にモータを1個追加し、これを、ハイブリッド変速機により駆動しない側の車輪に対し関連して配置する技術が提案されている。
つまり、車体フロアにハイブリッド変速機の設置スペースとは別にモータおよびインバータの設置スペースを確保する必要があり、そのため、車体フロアを当該モータおよびインバータの設置が可能になるよう設計し直す面倒があった。
ハイブリッド変速機自身から2つの駆動力を、共線図上のバランスがとれた状態で、つまり、任意の変速状態が維持可能な状態で取り出し得るようなハイブリッド変速機を提案して上記の諸問題を一気に解消することを目的とする。
つまり、2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる第1および第2差動装置の任意の1要素を入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これら要素の一方にエンジンを結合する。
そして、これら相互に結合可能にされた要素以外の、第1および第2差動装置における1要素にそれぞれ第1および第2出力軸を結合する。
これら第1および第2出力軸を結合した要素、並びに上記相互に結合可能にされた要素以外の、上記一方の差動装置における要素に第1モータ/ジェネレータを、また、他方の差動装置における要素に第2モータ/ジェネレータをそれぞれ結合する。
更に、第1および第2差動装置における、共線図上の回転速度順が最後の要素間を、非連結状態と、逆転変速可能状態と、一体回転可能状態との3種の連結状態のうちの任意の状態に連結可能とし、
上記第1および第2モータ/ジェネレータをモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより、上記連結状態と入力要素クラッチの締結・解放との組み合わせごとに任意の変速状態を維持し得るよう構成する。
第1および第2出力軸からの駆動力の配分を自由に決定することができ、従って、主たる駆動輪、従たる駆動輪の区別もなく、極めて自由度の高い4輪駆動化技術である得る。
当該組み合わせの選択により変速比の選択幅を大きくすることができて実用上大いに有利である。
図1は、本発明の構成になるハイブリッド変速機1の制御システムを例示し、ハイブリッド変速機1を、本実施例においては後輪駆動車(FR車)用のトランスミッションとして用いるのに有用な、図2に示すごとき以下の構成となす。
また、図の左端(エンジンENGに近い前端)内には、例えば複合電流2層モータ12を可とするモータ/ジェネレータ組を上記の遊星歯車組GF,GC,GRに対し同軸に配して内蔵する。
リヤ側の第2遊星歯車組GRはダブルピニオン遊星歯車組とし、このダブルピニオン遊星歯車組は、サンギヤS2、リングギヤR2およびキャリアC2を主たる要素とし、サンギヤS2に噛合する内側ピニオンP2、およびリングギヤR2よに噛合する外側ピニオンP2’を相互に噛合させると共に、これらピニオンを共通なキャリアC2に回転自在に支持して構成する。
中央の第3遊星歯車組GCは単純遊星歯車組とし、この単純遊星歯車組は、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアC3を主たる要素とし、サンギヤS3およびリングギヤR3に噛合するピニオンP3を共通なキャリアC3に回転自在に支持して構成する。
これらキャリアC1,C2のうちリヤ側第2遊星歯車組GRのキャリアC2に、エンジンENGの回転を入力される入力軸13(図3の共線図では入力Inとして示す)をエンジンクラッチCinにより結合可能とする。
そして、フロント側第1遊星歯車組GFのリングギヤR1に第1出力軸Out1を、また、リヤ側第2遊星歯車組GRのリングギヤR2に第2出力軸Out2をそれぞれ結合し、第1出力軸Out1は、入力軸13に同軸に配置されて変速機ケース11の後端から突出する中空の出力軸とし、第2出力軸Out2は、第1出力軸Out1の中空孔を貫通して変速機ケース11から突出させる。
なお、これら第1出力軸Out1および第2出力軸Out2は、出力直結クラッチCoutにより直結可能にして第1および第2出力軸Out1, Out2の相対回転(差動)を所要に応じて0にし得るようになす。
環状ステータ12sと外側ロータ12roとで外側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状ステータ12sと内側ロータ12riとで内側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
ここでモータ/ジェネレータMG1,MG2はそれぞれ、複合電流をモータ側が負荷として供給される時は供給電流に応じた個々の方向と速度(停止を含む)の回転を出力するモータとして機能し、複合電流を発電機側が負荷として印加された時は外力による回転に応じた電力を発生する発電機として機能する。
フロント側第1遊星歯車組GFのロングピニオンP1にショートピニオンP1’を介して噛合させたサンギヤS1’を中間の第3遊星歯車組GCを成すサンギヤS3に結合し、リヤ側第2遊星歯車組GRのサンギヤS2を第3遊星歯車組GCのリングギヤR3に結合する。
なお上記の非連結状態は、ブレーキBおよびモードクラッチCmを共に解放させることで実現可能である。
そして、第1出力軸Out1をディファレンシャルギヤ装置31を介して左右前輪32L,32Rに駆動結合し、第2出力軸Out2をプロペラシャフト33およびディファレンシャルギヤ装置34を介して左右後輪35L,35Rに駆動結合する。
21は、エンジンENGおよびハイブリッド変速機1(モータ/ジェネレータMG1,MG2)の統合制御を司るハイブリッドコントローラで、このハイブリッドコントローラ21は後述するエンジンENGのトルクTeに関する指令をエンジンコントローラ22に供給し、エンジンコントローラ22はエンジンENGを当該指令値Teが達成されるよう運転させる。
更にハイブリッドコントローラ21は、ハイブリッド変速機1内におけるクラッチCin,Cind,,Cm,CoutおよびブレーキBを締結、解放制御するための信号Scbをハイブリッド変速機1に供給し、ハイブリッド変速機1は油圧源28からの油圧を用いて、この信号Scbを基に対応するクラッチCin,Cind,,Cm,CoutおよびブレーキBを締結、解放制御する。
第1差動装置G1を成すフロント側遊星歯車組GFにおける要素の回転速度順は、サンギヤS1、キャリアC1、リングギヤR1およびサンギヤS1’であり、
第2差動装置G2を成すリヤ側遊星歯車組GRにおける要素の回転速度順はキャリアC2、リングギヤR2、およびサンギヤS2であり、
第3差動装置G3を成す中間の遊星歯車組GCにおける要素の回転速度順は、サンギヤS3、キャリアC3、リングギヤR3である。
フロント側遊星歯車組GFにおける回転速度順が第3位のリングギヤR1と、リヤ側遊星歯車組GRにおける回転速度順が中間のリングギヤR2とにそれぞれ第1出力軸Out1および第2出力軸Out2を結合し、これらの間を図2の出力直結クラッチCoutにより直結してデフロックが可能となるようにする。
そして、リヤ側遊星歯車組GRにおける回転速度順が第3位のサンギヤS2およびフロント側遊星歯車組GFにおける回転速度順が第4位のサンギヤS1’間の連結状態を、第3差動装置G3を成す中間の遊星歯車組GCにより、非連結状態にしたり、または、逆転変速可能状態(回転数が相互に接近するよう、若しくは、逆に離反するよう変速可能な状態)にしたり、一体回転可能状態にするため、
これらサンギヤS2およびサンギヤS1’にそれぞれ、中間の遊星歯車組GCにおける回転速度順が第3位のリングギヤR3および第1位のサンギヤS3を結合すると共に、遊星歯車組GCにおける回転速度順が中間のキャリアC3をブレーキBにより固定可能にしたり、このキャリアC3およびサンギヤS3間をモードクラッチCmにより直結可能にする。
上記非連結状態は、ブレーキBおよびモードクラッチCmの解放により実現可能で、または、逆転変速可能状態は、ブレーキBの締結およびモードクラッチCmの解放により実現可能で、一体回転可能状態は、ブレーキBの解放およびモードクラッチCmの締結により実現可能である。
遊星歯車組GCのギヤ比により決まる回転要素間の距離比、つまりサンギヤS3およびキャリアC3間の距離を1とした時のキャリアC3およびリングギヤR3間の距離の比をδで示す。
図3の縦軸は、0を基準として上方に前進回転(正回転)数、また、下方に後進回転(逆回転)数を示す。
図3の縦軸には更に、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクTm1,Tm2と、エンジントルクTeと、第1および第2出力軸Out1,Out2のトルクTo1,To2とを、それぞれベクトルとして併記した。
ここで、モードクラッチCmおよびブレーキBを共に解放することにより中間の遊星歯車組GCがサンギヤS2およびS1’間を非連結状態にし、且つ、入力要素クラッチCindの締結によりキャリアC1,C2へエンジンクラッチCinからのエンジン回転Neが共に等しく入力される場合、図3の一点鎖線で囲まれた四角内における要素は対応する要素同士が一体的に回転し、構成としては中間の遊星歯車組GCが存在しない場合と同様なものとなる。
そして、第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数も同じ値Noであることから、図3の共線図は、レバーGF(G1)およびGR(G2)が図4に例示するように一直線上に相互に重なった共線図に等価なものとなる。
図4の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、サンギヤS1に結合した第1モータ/ジェネレータMG1の第1モータ/ジェネレータトルクTm1は、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、サンギヤS2に結合した第2モータ/ジェネレータMG2の第2モータ/ジェネレータトルクTm2は、逆に回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要がある。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図4のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
図5の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図4の場合と同じく、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があるが、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図4の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要がある。
この時は、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2が共に発電動作を行うことによって、バッテリ25(図1参照)への充電を行いつつ、図5のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表されるロー側変速状態(ロー側変速比)を維持することができる。
図6の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第2モータ/ジェネレータトルクTm2は図4の場合と同じく、回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要があるが、第1モータ/ジェネレータトルクTm1は、図4の場合と逆に、回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要がある。
この時は、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2が共に、バッテリ25(図1参照)からの電力を消費しつつモータ動作を行うことによって、図6のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される図4の場合よりもハイ側変速状態を維持することができる。
しかしこの変速比領域では、第2モータ/ジェネレータトルクTm2または第1モータ/ジェネレータ回転数Nm1が大きくなることから、モータ/ジェネレータMG1,MG2の大型化を避けられない。
しかしこの変速比領域では、第1モータ/ジェネレータトルクTm1または第2モータ/ジェネレータ回転数Nm2が大きくなることから、この場合もモータ/ジェネレータMG1,MG2の大型化を避けられない。
Ne+α(Ne-No)=Nm1・・・(1)
No+β(No-Ne)=Nm2・・・(2)
Te・i=To・・・(3)
i=Ne/No・・・(4)
To=To1+To2・・・(5)
Te=Te1+Te2・・・(6)
Tm1+Te1+To1=0・・・(7)
Tm2+Te2+To2=0・・・(8)
Nm2・Tm2+Nm1・Tm1=0・・・(9)
α・Tm1=To1・・・(10)
Te2=α・Tm2・・・(11)
Tm2=-(Nm1・Te・i)/{Nm1(1+β)+α・Nm2}・・・(12)
Tm1=-(Nm2・Te)/{Nm2(1+α)+β・Nm1}・・・(13)
同様に(1)式〜(11)式を、第1および第2出力軸Out1,Out2の駆動トルク(前後輪駆動トルク)To1,To2について解くと、これら前後輪駆動トルクTo1,To2は図8に示すごとくに求めることができ、変速比iMおよびiH間の変速比領域において、比較的大きな駆動力を要求されるロー側では後輪駆動、若しくは4輪駆動となし、比較的小さな駆動力でよいハイ側では前輪駆動となすことができ、車両の車輪駆動方式として変速比ごとに優れた前後輪駆動トルク配分を実現することができる。
これらキャリアC1,C2の回転数を異ならせることが可能になると共に、中間の遊星歯車組GCがサンギヤS2,S1’間の連結状態を逆転変速可能状態にするため、そして、第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数が同じ値Noであることから、図3の共線図は、レバーGF(G1)およびGR(G2)が図9に例示するごとく相互に交差した共線図として表される。
図9の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、サンギヤS1に結合した第1モータ/ジェネレータMG1の第1モータ/ジェネレータトルクTm1は、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、サンギヤS2に結合した第2モータ/ジェネレータMG2の第2モータ/ジェネレータトルクTm2は、逆に回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要がある。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図9のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が正値であることから、エンジン回転数Neを図9の場合よりも低くするハイ側変速状態となる。
図10の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図9の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図9の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要がある。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図10のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が負値であることから、エンジン回転数Neを図10の場合よりも更に低くする更にハイ側の変速状態となる。
図11の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図10の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図10の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要がある。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図11のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
ところで本実施例においては、図9〜図11の何れの変速状態でも(全ての変速比領域で)、発電側モータ/ジェネレータMG1またはMG2が発電した電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2またはMG1をモータ動作させて、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持し得てバッテリ25の小型化が可能である。
Nm1={(α+1)/β}Nm2+{1+(α+1)/β}No・・・(14)
Nm2=-(1/δ)N3・・・(15)
N3=-β・Ne+(1+β)No・・・(16)
Te・i=To・・・(17)
i=Ne/No・・・(18)
To=To1+To2・・・(19)
T1+T3A=Tm2・・・(20)
Tm1+T1+To1=0・・・(21)
Te+T2+To1=0・・・(22)
δ・T3B+T3A=0・・・(23)
T3B=T2・・・(24)
Nm1・Tm1+Nm2・Tm2=Pb・・・(25)
β・T2=Te・・・(26)
Tm1(α+1)=β・T1・・・(27)
Tm1=-{(1+β-i・β)/ (1+α+β)}・Te・・・(28)
Tm2=-(Pb-Nm1・Te)/Nm2・・・(29)
To2=[{(1+β)/β}-i]・Te・・・(30)
To1={(1+β)/β}・Te・・・(31)
ただし上記の式における各符号は、図9〜図11の共線図においてレバーGC(G3)をレバーGF(G1)およびGR(G2)から切り離したものに相当する図14に示した各部の回転数およびトルクを意味する。
なお、図14に示されていないPbはバッテリ電力を意味するものとする。
第1および第2出力軸Out1,Out2の駆動トルク(前後輪駆動トルク)To1,To2は(31)式および(30)式から求めることができ、これら前後輪駆動トルクTo1,To2は本実施の例では図15に示すごときものとなる。
従って本動作形態では、大きな駆動力を必要とするロー側変速比領域において4輪駆動となし、ハイ側変速比になるにつれて前後輪駆動トルクTo1を低下させて徐々に後2輪駆動へ移行させることができ、車両の車輪駆動方式として変速比ごとに優れた前後輪駆動トルク配分を実現することができる。
これらキャリアC1,C2の回転数を異ならせることが可能になるも、中間の遊星歯車組GCがサンギヤS2,S1’間の連結状態を一体回転可能状態にするため、そして、第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数が同じ値Noであることから、図3の共線図は、レバーGF(G1)およびGR(G2)が図16に例示するごとく相互に一直線上に重なった共線図として表される。
図16の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、サンギヤS1に結合した第1モータ/ジェネレータMG1の第1モータ/ジェネレータトルクTm1は、回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要があり、サンギヤS2に結合した第2モータ/ジェネレータMG2の第2モータ/ジェネレータトルクTm2は、逆に回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要がある。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図16のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が負値であり、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が正値であることから、出力回転数Noをエンジン回転数Neよりも高くするオーバードライブ変速比選択状態となる。
図17の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図16の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図16の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要がある。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図17のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(ハイ側変速比)を維持することも可能である。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2も正値であることから、図16および図17の中間の変速比が選択された中間変速比状態となる。
図18の共線図におけるレバーGF(G1)およびGR(G2)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図16の場合と同じく、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図16の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要がある。
この時は、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2が共に、バッテリ25(図1参照)からの電力を消費しつつモータ動作を行うことによって、図18のレバーGF(G1)およびGR(G2)で表される変速状態(中間変速比)を維持することができる。
一方で変速比iM,iH間の中間変速比領域においては上記したごとく、バッテリ電力25(図1参照)からの電力の持ち出しによって変速状態(変速比)を維持するが、この中間変速比領域では、図19から明らかなごとくモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2が共に小さくてモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化が可能である。
しかし本実施例においては、図4〜図7につき前述した動作形態で実用変速範囲を図8に示すごとくハイ側変速比領域に設定し、図9〜図11につき前述した動作形態で実用変速範囲を図13に示すごとくロー側変速比領域に設定したから、図16〜図18につき上述した動作形態ではオーバードライブ変速比領域に実用変速範囲を設定することとする。
当該組み合わせの選択により変速比の選択幅を大きくすることができて実用上大いに有利である。
しかも前記した通り、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持し得てバッテリ25の小型化が可能であると共に、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2が共に小さくてモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化も可能である。
ハイブリッド変速機1の同じ箇所から2つの動力を取り出すことができて、4輪駆動系の取り回しが容易となる。
この際、図1に示すように第1出力軸Out1を前輪に結合し、第2出力軸Out2を後輪に結合すれば、ハイブリッド変速機1を縦置きにして車両に搭載した場合における4輪駆動系の取り回しが一層容易になる。
2個のモータ/ジェネレータMG1,MG2を内蔵するといえども、ハイブリッド変速機1をコンパクトに構成することができてその車載性を向上させることができる。
本実施例では、変速機ケース11の軸線方向(図の左右方向)右側(エンジンENGから遠い後側)に、2自由度の第1差動装置G1を成すリヤ側の第1遊星歯車組GRを、また、変速機ケース11の軸線方向左側(エンジンENGに近い前側)に、2自由度の第2差動装置G2を成すフロント側の第2遊星歯車組GFをそれぞれ配置し、これら第1および第2遊星歯車組間に、2自由度の第3差動装置G3を成す中央の第3遊星歯車組GCを同軸に配して内蔵する。
つまり、図2の構成に対し第1差動装置G1および第2差動装置G2を前後逆配置にして構成する。
図の左端(エンジンENGに近い前端)内に、モータ/ジェネレータMG1,MG2の同心一体構造に成る複合電流2層モータ12を、上記の遊星歯車組GF,GC,GRに対し同軸に配して内蔵するのは、図2と同じである。
フロント側の第2遊星歯車組GFは、サンギヤS2、リングギヤR2およびキャリアC2を主たる要素とし、サンギヤS2およびリングギヤR2に噛合するピニオンP2を共通なキャリアC2に回転自在に支持して構成した単純遊星歯車組とする。
中央の第3遊星歯車組GCは、図2におけると同様に、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアC3を主たる要素とする単純遊星歯車組とする。
そして、フロント側第2遊星歯車組GFのキャリアC2に中空の第1出力軸Out1を、また、リヤ側第1遊星歯車組GRのリングギヤR1に第2出力軸Out2をそれぞれ結合し、第2出力軸Out2を第1出力軸Out1の中空孔から変速機後方に突出させる。
これら第1出力軸Out1および第2出力軸Out2は、出力直結クラッチCoutにより直結可能にして第1および第2出力軸Out1, Out2の相対回転(差動)を所要に応じて0にし得るようになす。
第1差動装置G1および第2差動装置G2を図2の構成に対し前後逆配置にしたことから、変速機ケース11に対するステータ12sの支持方向が図2の場合と逆になる。
従って、ステータ12sの好適な支持方向に応じ、第1差動装置G1および第2差動装置G2の前後配置を図2のようにするか、図20のようにするかを決めればよい。
リヤ側第1遊星歯車組GRのサンギヤS1’を中間の第3遊星歯車組GCを成すサンギヤS3に結合し、フロント側第2遊星歯車組GFのサンギヤS2を第3遊星歯車組GCのリングギヤR3に結合する。
なお上記の非連結状態は、ブレーキBおよびモードクラッチCmを共に解放させることで実現可能である。
しかし、上記構成上の違いにより共線図上の要素が図3の場合と異なるのは言うまでもない。
そして本実施例のハイブリッド変速機1も、前記した実施例と共線図が同じになることから、前記した各種の作用効果を同様に奏することができる。
11 変速機ケース
ENG エンジン
12 複合電流2層モータ
MG1 第1モータ/ジェネレータ
MG2 第2モータ/ジェネレータ
13 入力軸
Out1 第1出力軸
Out2 第2出力軸
G1 第1差動装置
G2 第2差動装置
G3 第3差動装置
GF フロント側遊星歯車組
GC 中間の遊星歯車組
GR リヤ側遊星歯車組
S1,S1’,S2,S3 サンギヤ
R1,R2,R3 リングギヤ
C1,C2,C3 キャリア
Cin エンジンクラッチ
Cind 入力要素クラッチ
Cout 出力直結クラッチ
Cm モードクラッチ
B ブレーキ
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 インバータ
25 バッテリ
26 アクセル開度センサ
27 車速センサ
28 油圧源
31 前輪用ディファレンシャルギヤ装置
32L,32R 左右前輪
33 プロペラシャフト
34 後輪用ディファレンシャルギヤ装置
35L,35R 左右後輪
Claims (10)
- 2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる第1および第2差動装置を具え、
これら差動装置の任意の1要素を入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これら要素の一方にエンジンを結合し、
これら相互に結合可能にされた要素以外の、前記両差動装置における1要素にそれぞれ第1および第2出力軸を結合し、
これら第1および第2出力軸を結合した要素、並びに前記相互に結合可能にされた要素以外の、前記一方の差動装置における要素に第1モータ/ジェネレータを、また、他方の差動装置における要素に第2モータ/ジェネレータをそれぞれ結合し、
前記両差動装置における、共線図上の回転速度順が最後の要素間を、非連結状態と、逆転変速可能状態と、一体回転可能状態との3種の連結状態のうちの任意の状態に連結可能とし、
前記第1および第2モータ/ジェネレータをモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより、前記連結状態と入力要素クラッチの締結・解放との組み合わせごとに任意の変速状態を維持し得るよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項1に記載のハイブリッド変速機において、
前記第1差動装置における、共線図上の回転速度順が第2位の要素と、前記第2差動装置における、共線図上の回転速度順が第1位の要素とを入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これら要素の一方にエンジンを結合し、
前記第1差動装置における、共線図上の回転速度順が第3位の要素、および前記第2差動装置における、共線図上の回転速度順が第2位の要素にそれぞれ第1および第2出力軸を結合し、
前記第1差動装置における、共線図上の回転速度順が第1位の要素、および前記第2差動装置における、共線図上の回転速度順が第3位の要素にそれぞれ前記第1および第2モータ/ジェネレータを結合し、
前記第1差動装置における、共線図上の回転速度順が第4位の要素、および前記第2差動装置における、共線図上の回転速度順が第3位の要素間を、非連結状態と、逆転変速可能状態と、一体回転可能状態との3種の連結状態のうちの任意の状態に連結可能としたことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項1または2に記載のハイブリッド変速機において、
前記連結状態を第3の差動装置と、該差動装置の1要素を固定して前記逆転変速可能状態を提供するブレーキおよび任意の2要素間を直結して前記一体回転可能状態を提供するモードクラッチとにより達成するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
前記入力要素クラッチを締結すると共に前記連結状態を非連結状態にすることでハイ側変速比選択モードとし、
前記入力要素クラッチを解放すると共に前記連結状態を逆転変速可能状態にすることでロー側変速比選択モードとし、
前記入力要素クラッチを解放すると共に前記連結状態を一体回転可能状態にすることでオーバードライブ選択モードとするよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項4に記載のハイブリッド変速機において、
前記連結状態を非連結状態または一体回転可能状態と、逆転変速可能状態との間で切り替える必要のある選択モードの切り替えを、前記エンジンが結合されなかった差動装置に係わるモータ/ジェネレータの回転数が0の時、若しくは、ハイ側変速比選択モードにおいて行うよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
前記第1差動装置をラビニョオ型プラネタリギヤセットで構成して前記エンジンに近い側に配した第1遊星歯車組とし、
前記第2差動装置をダブルピニオン遊星歯車組で構成して前記エンジンから遠い側に配した第2遊星歯車組とし、
前記第3差動装置を単純遊星歯車組で構成して前記第1遊星歯車組と第2遊星歯車組との間に同軸に配した第3遊星歯車組とし、
第1遊星歯車組のキャリアおよび第2遊星歯車組のキャリア間を前記入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これらキャリアのうち第2遊星歯車組のキャリアにエンジンを結合し、
前記第1遊星歯車組のリングギヤおよび前記第2遊星歯車組のリングギヤにそれぞれ前記第1および第2出力軸を結合し、
前記第1遊星歯車組のロングピニオンに直接噛合したサンギヤ、および前記第2遊星歯車組のサンギヤにそれぞれ前記第1および第2モータ/ジェネレータを結合し、
前記第1遊星歯車組のロングピニオンにショートピニオンを介して噛合したサンギヤを第3遊星歯車組のサンギヤに結合すると共に、第2遊星歯車組のサンギヤを第3遊星歯車組のリングギヤに結合し、
第3遊星歯車組のキャリアを固定可能となるよう前記ブレーキを配置すると共に第3遊星歯車組のキャリアおよびサンギヤ間を直結可能となるよう前記モードクラッチを配置したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
前記第1差動装置をラビニョオ型プラネタリギヤセットで構成して前記エンジンから遠い側に配した第1遊星歯車組とし、
前記第2差動装置を単純遊星歯車組で構成して前記エンジンに近い側に配した第2遊星歯車組とし、
前記第3差動装置を単純遊星歯車組で構成して前記第1遊星歯車組と第2遊星歯車組との間に同軸に配した第3遊星歯車組とし、
第1遊星歯車組のキャリアおよび第2遊星歯車組のリングギヤ間を前記入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これらのうち第1遊星歯車組のキャリアにエンジンを結合し、
前記第2遊星歯車組のキャリアおよび前記第1遊星歯車組のリングギヤにそれぞれ前記第1および第2出力軸を結合し、
前記第1遊星歯車組のロングピニオンにショートピニオンを介して噛合したサンギヤ、および前記第2遊星歯車組のサンギヤにそれぞれ前記第1および第2モータ/ジェネレータを結合し、
前記第1遊星歯車組のロングピニオンに直接噛合したサンギヤを第3遊星歯車組のサンギヤに結合すると共に、第2遊星歯車組のサンギヤを第3遊星歯車組のリングギヤに結合し、
第3遊星歯車組のキャリアを固定可能となるよう前記ブレーキを配置すると共に第3遊星歯車組のキャリアおよびサンギヤ間を直結可能となるよう前記モードクラッチを配置したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項6または7に記載のハイブリッド変速機において、
前記第1出力軸を中空軸としてエンジンから遠い変速機後端より突出させ、
前記第2出力軸を、該中空の第1出力軸に貫通させて変速機後端より突出させたことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項6乃至8のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
前記第1および第2モータ/ジェネレータを同心一体構造として、前記エンジンと、エンジンに近い側に配した遊星歯車組との間に同軸に配置したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
前記第1および第2出力軸をそれぞれ車両の前後輪に結合したことを特徴とするハイブリッド変速機。
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