JP4396603B2 - ハイブリッド変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンとモータ/ジェネレータとを搭載したハイブリッド車両に有用なハイブリッド変速機、特に、これらエンジンとモータ/ジェネレータとの間を結合する差動装置により無段変速を行わせることが可能なハイブリッド変速機を、車両の4輪駆動が可能なように構成する技術に関するものである。
ハイブリッド変速機を、車両の4輪駆動が可能となるよう構成するに際しては従来、例えば特許文献1に記載のごとく、
ハイブリッド変速機に具えられたモータの他にモータを1個追加し、これを、ハイブリッド変速機により駆動しない側の車輪に対し関連して配置する技術が提案されている。
特開平11−332019号公報
しかし上記した従来の技術では、ハイブリッド変速機とは別にモータを設けて対応する車輪の動力源系に結合するため、コスト上不利になるほかに以下の問題もあった。
つまり、車体フロアにハイブリッド変速機の設置スペースとは別にモータおよびインバータの設置スペースを確保する必要があり、そのため、車体フロアを当該モータおよびインバータの設置が可能になるよう設計し直す面倒があった。
また、上記別に設けたモータにより駆動される車輪(後輪)の駆動パワーが当該モータのパワーにより決定され、主たる駆動輪にはな得ないため、必然的に、エンジンを結合されたハイブリッド変速機により駆動される車輪(前輪)が主たる駆動輪となり、前輪駆動車に対してしか有効でない4輪駆動化技術であると共に、前後輪駆動力配分の自由度が低いという問題も懸念される。
本発明は、上記の問題がとりもなおさずハイブリッド変速機とは別にモータを設けて、前後輪の一方をハイブリッド変速機により駆動し、他方をモータにより駆動することに起因するとの事実認識に基づき、
ハイブリッド変速機自身から2つの駆動力を、共線図上のバランスがとれた状態で、つまり、任意の変速状態が維持可能な状態で取り出し得るようなハイブリッド変速機を提案して上記の諸問題を一気に解消することを目的とする。
この目的のため本発明によるハイブリッド変速機は、請求項1に記載のごとくに構成する。
つまり、2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる第1および第2差動装置の1要素同士を入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これら相互に結合可能にされた要素のうち第2差動装置の要素にエンジンを結合する。
そして、これら相互に結合可能にされた要素のうちの一方に第1出力軸を結合し、また、上記相互に結合可能にされた要素以外の要素であって第2差動装置における1要素に同軸に第2出力軸を結合し、
上記相互に結合可能にされた要素以外の要素であって第1差動装置における2要素にそれぞれ第1および第2モータ/ジェネレータを結合する。
更に、第2モータ/ジェネレータを結合した第1差動装置の要素と、上記相互に結合可能にされた要素および第2出力軸を結合された第2差動装置の要素以外の要素であって第2差動装置における要素との間を、互いに連結されていない非連結状態と、相互に回転方向が逆となるように連結する逆転変速状態と、同一回転となるように連結する一体回転状態との3種の連結状態のうちの任意の状態に連結可能とする。
ここで、第1および第2モータ/ジェネレータをモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより、上記連結状態と入力要素クラッチの締結・解放との組み合わせごとに任意の変速状態を維持し得るよう構成する。
かかる本発明のハイブリッド変速機によれば、第1および第2出力軸を結合した要素から2つの駆動力を取り出すことができ、従って、従来のようにハイブリッド変速機とは別にモータを設ける必要がなく、新たな車体フロアを用意しなくても一般的な車体フロアのままで4輪駆動化を実現することができる。
また、第1モータ/ジェネレータおよび第2モータ/ジェネレータをモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより、エンジンの運転状態と相まって任意の変速状態を維持し得ることから、
第1および第2出力軸からの駆動力の配分を自由に決定することができ、従って、主たる駆動輪、従たる駆動輪の区別もなく、極めて自由度の高い4輪駆動化技術たり得る。
更に、上記のごとく第1および第2モータ/ジェネレータをモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより得られる任意の変速状態が、上記3種の連結状態と入力要素クラッチの締結・解放との組み合わせごとのものであることから、
当該組み合わせの選択により変速比の選択幅を大きくすることができて実用上大いに有利である。
そして、上記相互に結合可能にされた要素のうちの一方に平行軸歯車組を介して第1出力軸を結合し、また、上記相互に結合可能にされた要素以外の要素であって第2差動装置における1要素に同軸に第2出力軸を結合したから、
第2出力軸に係わる変速機出力は変速機の後方から変速機主軸線方向に取り出して、例えば左右後輪に向かわせるが、第1出力軸に係わる変速機出力は、ハイブリッド変速機の上下、左右、いずれかから横方向に取り出して、変速機主軸線に対し平行に延在する第1出力軸により、例えば左右前輪に向かわせることができ、このような変速機出力の取り出し態様が要求される車両において有利に適用可能である。
以下本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になるハイブリッド変速機1の制御システムを例示し、ハイブリッド変速機1を、本実施例においては後輪駆動車(FR車)用のトランスミッションとして用いるのに有用な、図2に示すごとき以下の構成となす。
図2において11は変速機ケースを示し、該変速機ケース11内にはその軸線方向(図の左右方向)に同軸に配して第1遊星歯車組G1、第2遊星歯車組G2、第3遊星歯車組G3、および第4遊星歯車組G4を設ける。
これら遊星歯車組は、エンジンENGに近い前側より第4遊星歯車組G4、第1遊星歯車組G1、第2遊星歯車組G2、第3遊星歯車組G3の順に配置する。
第1遊星歯車組G1、第2遊星歯車組G2および第3遊星歯車組G3はそれぞれ、第1〜第3サンギヤS1〜S3と、第1〜第3リングギヤR1〜R3と、対応するサンギヤおよびリングギヤ間に噛合して介在させたピニオンP1〜P3を回転自在に支持する第1〜第3キャリアC1〜C3との回転要素よりなる単純遊星歯車組とし、第4遊星歯車組G4は、第4サンギヤS4と、第4リングギヤR4と、対応するサンギヤおよびリングギヤ間に噛合して介在させたピニオンP4a,P4bを回転自在に支持する第4キャリアC4との回転要素よりなる複合遊星歯車組とする。
従って、第1遊星歯車組G1、第2遊星歯車組G2、第3遊星歯車組G3、および第4遊星歯車組G4はそれぞれ、2個の要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる2自由度の第1差動装置G1、第2差動装置G2、第3差動装置G3、および第4差動装置G4を構成する。
また、変速機ケース11の左端(エンジンENGに最も近い前端)内には、例えば複合電流2層モータ12を可とするモータ/ジェネレータ組を、上記の遊星歯車組G1〜G4に対し同軸に配して、エンジンENGおよび第4遊星歯車組G4間に介在させる。
複合電流2層モータ12は、内側ロータ12riと、これを包囲する環状の外側ロータ12roとを、変速機ケース11内に同心に回転自在に支持して具え、これら内側ロータ12riおよび外側ロータ12ro間における環状空間に同軸に配置した環状ステ-タ12sを変速機ケース11に固設して構成する。
環状ステータ12sと外側ロータ12roとで外側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状ステータ12sと内側ロータ12riとで内側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
ここでモータ/ジェネレータMG1,MG2はそれぞれ、複合電流をモータ側が負荷として供給される時は供給電流に応じた個々の方向と速度(停止を含む)の回転を出力するモータとして機能し、複合電流を発電機側が負荷として印加された時は外力による回転に応じた電力を発生する発電機として機能する。
第1遊星歯車組G1のキャリアC1および第2遊星歯車組G2のリングギヤR2間を入力要素クラッチCinにより相互に適宜結合可能にする。
これらキャリアC1およびリングギヤR2のうち、第2遊星歯車組G2を構成するリングギヤR2には、エンジンENGの回転を入力される入力軸13(図3の共線図では入力Inとして示す)を結合する。
そして、第1遊星歯車組G1のキャリアC1に第4遊星歯車組G4を介して第1出力軸Out1を結合するために、キャリアC1を第4遊星歯車組G4のサンギヤS4に結合し、同じく第4遊星歯車組G4を構成するリングギヤR4の外周に、カウンターシャフト14上の歯車15を噛合させ、この歯車15に第1出力軸Out1の歯車16を噛合させる。
かくして、第1出力軸Out1に係わる変速機出力は変速機ケース11の横方向から取り出され、変速機主軸線に対し平行に延在するよう変速機ケース11に並置した第1出力軸Out1より出力することができる。
ここで、第4遊星歯車組G4および歯車15,16並びにカウンターシャフト14は、本発明における平行軸歯車組を構成する。
なお、第4遊星歯車組G4を介して第1出力軸Out1を結合する相手方は、図示例のようなキャリアC1に限らず、これに入力要素クラッチCinを介して結合可能にしたリングギヤR2でもよい。
また、第2遊星歯車組G2のキャリアC2に第2出力軸Out2を結合し、この第2出力軸Out2を、入力軸13に同軸に配置して変速機ケース11の後端から突出させる。
第1遊星歯車組G1のリングギヤR1には第1モータ/ジェネレータMG1(外側ロータ12ro)を結合し、第1遊星歯車組G1のサンギヤS1には、第4遊星歯車組G4のキャリアC4を介して第2モータ/ジェネレータMG2(内側ロータ12ri)を結合する。
第3遊星歯車組G3は、第1遊星歯車組G1におけるサンギヤS1と、第2遊星歯車組G2におけるサンギヤS2との間を、非連結状態と、逆転変速状態と、一体回転状態との3種の連結状態のうちの任意の状態に連結可能にするためのもので、これがため第2遊星歯車組G2のサンギヤS2を第3遊星歯車組G3のサンギヤS3に結合し、第3遊星歯車組G3のキャリアC3を固定して上記の逆転変速状態を実現可能にするローブレーキL/Bを設けると共に、第3遊星歯車組G3のリングギヤR3およびサンギヤS3間を直結して上記の一体回転状態を実現可能にするハイクラッチH/Cを設ける。
なお上記の非連結状態は、ローブレーキL/BおよびハイクラッチH/Cを共に解放させることで実現可能である。
本実施例のハイブリッド変速機1は、図1に示すようにエンジンENGの後方に同軸に配して車両エンジンルーム内へ縦置きに搭載する。
そして、第1出力軸Out1(図2参照)は図1に示すように傘歯車組31およびディファレンシャルギヤ装置32を介して左右前輪33L,33Rに駆動結合し、第2出力軸Out2は図1のごとくプロペラシャフト34およびディファレンシャルギヤ装置35を介して左右後輪36L,36Rに駆動結合する。
エンジンENGおよびハイブリッド変速機1の制御システムは、図1に示すような以下のごときものとする。
21は、エンジンENGおよびハイブリッド変速機1(モータ/ジェネレータMG1,MG2)の統合制御を司るハイブリッドコントローラで、このハイブリッドコントローラ21は後述するエンジンENGのトルクTeに関する指令をエンジンコントローラ22に供給し、エンジンコントローラ22はエンジンENGを当該指令値Teが達成されるよう運転させる。
ハイブリッドコントローラ21は更に、後述するモータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクTm1,Tm2に関する指令をモータコントローラ23に供給し、モータコントローラ23はインバータ24およびバッテリ25によりモータ/ジェネレータMG1,MG2をそれぞれ、上記したトルク指令値Tm1,Tm2が達成されるよう制御する。
更にハイブリッドコントローラ21は、ハイブリッド変速機1内におけるクラッチCin,H/CおよびブレーキL/Bを締結、解放制御するための信号Scbをハイブリッド変速機1に供給し、ハイブリッド変速機1は油圧源28からの油圧を用いて、この信号Scbを基に対応するクラッチCin,H/CおよびブレーキL/Bを締結、解放制御する。
上記の各種制御のためハイブリッドコントローラ21には、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ26からの信号と、車速VSP(出力回転数Noに比例)を検出する車速センサ27からの信号とを入力する。
図2の構成になるハイブリッド変速機1は、共線図により表すと図3のごとくになり、
第1遊星歯車組G1における要素の回転速度順は、リングギヤR1、キャリアC1、サンギヤS1であり、
第2遊星歯車組G2における要素の回転速度順はリングギヤR2、キャリアC2、サンギヤS2であり、
第3遊星歯車組G3における要素の回転速度順は、リングギヤR3、キャリアC3、サンギヤS3であり、
第4遊星歯車組G4における要素の回転速度順は、サンギヤS4、リングギヤR4、キャリアC4である。
第1キャリアC1と第2リングギヤR2とを相互に、入力要素クラッチCinの締結により適宜結合可能とし、後者の第2リングギヤR2にエンジンENG(図1および図2参照)からの入力Inを結合し、前者の第1キャリアC1に第4サンギヤS4を結合する。
第4リングギヤR4および第2キャリアC2にそれぞれ第1出力軸Out1および第2出力軸Out2を、図2につき前述したようにして結合する。
第1リングギヤR1に第1モータ/ジェネレータMG1(外側ロータ12ro)を結合し、第1サンギヤS1に第4キャリアC4を介して第2モータ/ジェネレータMG2(内側ロータ12ri)を結合する。
そして、第1サンギヤS1および第2サンギヤS2間の連結状態を、第3遊星歯車組G3により、非連結状態にしたり、または、逆転変速状態(回転数が相互に接近するよう、若しくは、逆に離反するよう変速可能な状態)にしたり、一体回転状態にするため、これらサンギヤS1,S2にそれぞれ第3リングギヤR3および第3サンギヤS3を結合すると共に、第3キャリアC3をローブレーキL/Bにより固定可能にしたり、第3リングギヤR3および第3サンギヤS3間をハイクラッチH/Cにより直結可能にする。
上記非連結状態は、ローブレーキL/BおよびハイクラッチH/Cの解放により実現可能で、また、逆転変速状態は、ローブレーキL/Bの締結およびハイクラッチH/Cの解放により実現可能で、一体回転状態は、ローブレーキL/Bの解放およびハイクラッチH/Cの締結により実現可能である。
なお図3の横軸は、遊星歯車組G1,G2,G4のギヤ比により決まる回転要素間の距離比、つまりキャリアC1(リングギヤR2、サンギヤS4)およびキャリアC2(リングギヤR4)間の距離を1とした時のキャリアC1(リングギヤR2、サンギヤS4)およびリングギヤR1間の距離の比をαで、また、キャリアC2(リングギヤR4)およびサンギヤS1(サンギヤS2、キャリアC4)間の距離の比をβで示し、
遊星歯車組G3のギヤ比により決まる回転要素間の距離比、つまりリングギヤR3およびキャリアC3間の距離を1とした時のキャリアC3およびサンギヤS3間の距離の比をδで示す。
図3の縦軸は、0を基準として上方が前進回転(正回転)数、また、下方が後進回転(逆回転)数を示し、Nm1,Nm2が第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数、Neがエンジン回転数、Noが第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数である。
図3の縦軸には更に、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクTm1,Tm2と、エンジントルクTeと、第1および第2出力軸Out1,Out2のトルクTo1,To2とを、それぞれベクトルとして併記した。
上記した図3の共線図により表されるハイブリッド変速機においては、第1遊星歯車組G1が図3におけるレバーG1により表され、第2遊星歯車組G2が図3におけるレバーG2により表され、第3遊星歯車組G3が図3におけるレバーG3により表され、第4遊星歯車組G4が図3におけるレバーG4により表される。
ここで、ハイクラッチH/CおよびローブレーキL/Bを共に解放することにより第1サンギヤS1および第2サンギヤS2間を非連結状態にし、且つ、入力要素クラッチCinの締結により第1キャリアC1および第2リングギヤR2へエンジン回転Neが共に等しく入力される場合、図3の一点鎖線で囲まれた四角内における要素は、図3の縦方向に整列して対応する要素同士が一体的に回転し、構成としては第3遊星歯車組G3が存在しない場合と同様なものとなる。
そして車輪が同じ周速をもって路面上を転動しているため、第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数も同じ値Noであることから、図3の共線図は、レバーG1,G2,G4が図4に例示するように一直線上に相互に重なり、図3のレバーG3が存在しなくなった共線図に等価なものとなる。
図4に示す変速状態(変速比)では、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に走行抵抗であるが故に負荷(マイナス)トルクである。
図4の共線図におけるレバーG1およびG2(G4)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、リングギヤR1に結合した第1モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1は、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、一方で、サンギヤS1に結合した第2モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2は、逆に回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要がある。
この時第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2は、発電動作とモータ動作とを行うことから、バッテリ25(図1参照)の電力が0であっても、発電側モータ/ジェネレータMG1からの電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2をモータ動作させて、図4のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(変速比)を維持することができる。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図4のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
図5のレバーG1およびG2(G4)により示す変速状態(変速比)は、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が負値となって出力軸回転数Noを図4の場合よりも低くするロー側変速状態を示す。
図5の共線図におけるレバーG1およびG2(G4)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図4の場合と同じく、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があるが、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図4の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要がある。
この時は、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2が共に発電動作を行うことによって、バッテリ25(図1参照)への充電を行いつつ、図5のレバーG1およびG2(G4)で表されるロー側変速状態(ロー側変速比)を維持することができる。
図6のレバーG1およびG2(G4)により示す変速状態(変速比)は、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が負値となって図4の場合よりもハイ側変速状態を示す。
図6の共線図におけるレバーG1およびG2(G4)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第2モータ/ジェネレータトルクTm2は図4の場合と同じく、回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要があるが、第1モータ/ジェネレータトルクTm1は、図4の場合と逆に、回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要がある。
この時は、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2が共に、バッテリ25(図1参照)からの電力を消費しつつモータ動作を行うことによって、図6のレバーG1およびG2(G4)で表される、図4の場合よりもハイ側変速状態を維持することができる。
図7は、上記した変速作用時において、変速比i(Ne/No)に対する第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2の変化傾向を、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPと共に示し、この通過パワーPは、モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が0で、且つ、モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1が0である時の変速比iにおいて、また、モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2が0で、且つ、モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が0である時の変速比iにおいてそれぞれ0になる。
従って、図4の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になる変速比iおよびi間の変速比領域での変速状態に相当し、この変速比領域では、発電側モータ/ジェネレータMG1が発電した電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2をモータ動作させて、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持することができる。
また図5の変速状態は、図7の変速比iよりもロー側の変速比領域での変速状態に相当し、この変速比領域では、両モータ/ジェネレータMG1,MG2を共に発電機として動作させることにより、バッテリ電力25(図1参照)への充電を行いながら変速状態(変速比)を維持することとなる。
しかしこの変速比領域では、第2モータ/ジェネレータトルクTm2または第1モータ/ジェネレータ回転数Nm1が大きくなることから、モータ/ジェネレータMG1,MG2の大型化を避けられない。
更に図6の変速状態は、図7の変速比iよりもハイ側の変速比領域での変速状態に相当し、この変速比領域では、両モータ/ジェネレータMG1,MG2を共にモータとして動作させることにより、バッテリ電力25(図1参照)からの電力を消費しながら変速状態(変速比)を維持することとなる。
しかしこの変速比領域では、第1モータ/ジェネレータトルクTm1または第2モータ/ジェネレータ回転数Nm2が大きくなることから、この場合もモータ/ジェネレータMG1,MG2の大型化を避けられない。
ところで、変速比iおよびi間の変速比領域においては、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持し得てバッテリ25の小型化が可能であることの他に、図7から明らかなごとくモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2が共に小さくてモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化も可能であることから、上記したハイブリッド変速機1の動作状態では変速比iおよびi間におけるハイ側変速比領域を実用変速範囲として用いることとし、これによりバッテリ25の小型化およびモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化を実現する。
図4〜図6の共線図におけるレバーG1およびG2(G4)に関する回転のバランス式およびトルクのバランス式を示すと、以下の(1)式〜(13)式のごときものなる。
Ne+α(Ne-No)=Nm1・・・(1)
No+β(No-Ne)=Nm2・・・(2)
Te・i=To・・・(3)
i=Ne/No・・・(4)
To=To1+To2・・・(5)
Te=Te1+Te2・・・(6)
Tm1+Te1+To1=0・・・(7)
Tm2+Te2+To2=0・・・(8)
Nm2・Tm2+Nm1・Tm1=0・・・(9)
α・Tm1=To1・・・(10)
Te2=α・Tm2・・・(11)
Tm2=-(Nm1・Te・i)/{Nm1(1+β)+α・Nm2}・・・(12)
Tm1=-(Nm2・Te)/{Nm2(1+α)+β・Nm1}・・・(13)
(1)式〜(11)式を解いて得られる(12)式および(13)式からモータ/ジェネレータトルクTm2,Tm1を求めることができ、これらモータ/ジェネレータトルクTm2,Tm1をエンジントルクTeと共にそれぞれ、対応するモータコントローラ23およびエンジンコントローラ22に指令することで所定の変速制御を実現することができる。
同様に(1)式〜(11)式を、第1および第2出力軸Out1,Out2の駆動トルク(前後輪駆動トルク)To1,To2について解くと、これら前後輪駆動トルクTo1,To2は図8に示すごとくに求めることができ、変速比iおよびi間の変速比領域において、比較的大きな駆動力を要求されるロー側では後輪駆動、若しくは4輪駆動となし、比較的小さな駆動力でよいハイ側では前輪駆動となすことができ、車両の車輪駆動方式として変速比ごとに優れた前後輪駆動トルク配分を実現することができる。
本実施例の、図3の共線図により表されるハイブリッド変速機において、ハイクラッチH/Cを解放すると共にローブレーキL/Bを締結することにより第3遊星歯車組G3がサンギヤS1,S2間を前記した逆転変速状態にし、且つ、入力要素クラッチCinの解放によりキャリアC1にエンジン回転Neが入力されず、このエンジン回転がリングギヤR2のみに入力されるようにした場合、これらキャリアC1およびリングギヤR2の回転数を異ならせることが可能になると共に、第3遊星歯車組G3がサンギヤS1,S2間の連結状態を逆転変速状態にするため、そして、第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数が同じ値Noであることから、図3の共線図は、図9に示すような共線図で表されるものとなる。
なおこの場合、実際は図10に例示するごとくレバーG4がレバーG1上に乗ってこれら1本と見なし得るレバーとレバーG2とが相互に交差した共線図として表されるが、図9では個々のレバーが見えやすくなるよう便宜上レバーG4をレバーG1から平行にオフセットさせて示した。
図10に示す変速状態(変速比)では、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に走行抵抗であるが故に負荷(マイナス)トルクである。
図10の共線図におけるレバーG1(G4)およびG2が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、リングギヤR1に結合した第1モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1は、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、サンギヤS1に結合した第2モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2は、逆に回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要がある。
この時第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2は、発電動作とモータ動作とを行うことから、バッテリ電力25(図1参照)が0であっても、発電側モータ/ジェネレータMG1からの電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2をモータ動作させて、図10のレバーG1(G4)およびG2で表される変速状態(最ロー側変速比)を維持することができる。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図10のレバーG1(G4)およびG2で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
図11のレバーG1(G4)およびG2により示す変速状態(変速比)は、これらレバーG1(G4)およびG2の交差状態をレバーG3により、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が図10の負値から正値に切り替わるよう変化させた場合の変速状態(変速比)を示す。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が正値であることから、エンジン回転数Neを図10の場合よりも低くするハイ側変速状態となる。
図11の共線図におけるレバーG1(G4)およびG2が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図10の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図10の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要がある。
この時第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2は、モータ動作と発電動作とを行うことから、バッテリ電力25(図1参照)が0であっても、発電側モータ/ジェネレータMG2からの電力でモータ側モータ/ジェネレータMG1をモータ動作させて、図11のレバーG1(G4)およびG2で表される変速状態(ハイ側変速比)を維持することができる。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図11のレバーG1(G4)およびG2で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
図12のレバーG1(G4)およびG2により示す変速状態(変速比)は、これらレバーG1(G4)およびG2の交差状態をレバーG3により、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が図11の正値から負値に切り替わるよう変化させた場合の変速状態(変速比)を示す。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が負値であることから、エンジン回転数Neを図11の場合よりも更に低くする更にハイ側の変速状態となる。
図12の共線図におけるレバーG1(G4)およびG2が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図11の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図11の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要がある。
この時第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2は、発電動作とモータ動作とを行うことから、バッテリ電力25(図1参照)が0であっても、発電側モータ/ジェネレータMG1からの電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2をモータ動作させて、図12のレバーG1(G4)およびG2で表される変速状態(更にハイ側の変速比)を維持することができる。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図12のレバーG1(G4)およびG2で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
図13は、本実施例の構成とした場合において、変速比i(Ne/No)に対する第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2の変化傾向を、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPと共に示し、この通過パワーPは、モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が0で、且つ、モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1が0である時の変速比iにおいて、また、モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2が0で、且つ、モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が0である時の変速比iにおいてそれぞれ0になる。
従って、図10の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になるロー側変速比iよりもロー側変速比領域での変速状態に相当し、また図11の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になるロー側変速比iおよびハイ側変速比i間の中間変速比領域での変速状態に相当し、更に図12の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になるハイ側変速比iよりもハイ側変速比領域での変速状態に相当する。
ところで本実施例においては、図10〜図12の何れの変速状態でも(全ての変速比領域で)、発電側モータ/ジェネレータMG1またはMG2が発電した電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2またはMG1をモータ動作させて、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持し得てバッテリ25の小型化が可能である。
とりわけ変速比iおよびi間の変速比領域においては、上記の通りバッテリ25の小型化が可能であることの他に、図13から明らかなごとくモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2が共に小さくてモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化も可能であることから、本動作形態では図14に示すように、主に変速比iおよびi間のロー側変速比領域を実用変速範囲として用いるが、ここでは、図8に示すハイ側実用変速範囲との間での切り替え(モード切り替え)制御を行い易くするために変速比iおよびi間の変速比領域よりも広い領域を実用変速範囲として用いることとする。
図10〜図12の共線図におけるレバーG1(G4)、およびG2、並びにG3に関する回転のバランス式およびトルクのバランス式を示すと、以下の(14)式〜(31)式のごときものなる。
Nm1={(α+1)/β}Nm2+{1+(α+1)/β}No・・・(14)
Nm2=-(1/δ)N3・・・(15)
N3=-β・Ne+(1+β)No・・・(16)
Te・i=To・・・(17)
i=Ne/No・・・(18)
To=To1+To2・・・(19)
T1+T3A=Tm2・・・(20)
Tm1+T1+To1=0・・・(21)
Te+T2+To1=0・・・(22)
δ・T3B+T3A=0・・・(23)
T3B=T2・・・(24)
Nm1・Tm1+Nm2・Tm2=Pb・・・(25)
β・T2=Te・・・(26)
Tm1(α+1)=β・T1・・・(27)
Tm1=-{(1+β-i・β)/ (1+α+β)}・Te・・・(28)
Tm2=-(Pb-Nm1・Te)/Nm2・・・(29)
To2=[{(1+β)/β}-i]・Te・・・(30)
To1={(1+β)/β}・Te・・・(31)
ただし上記の式における各符号は、図10〜図12の共線図においてレバーG3をレバーG1(G4)およびG2から切り離したものに相当する図15に示した各部の回転数およびトルクを意味する。
なお、図15に示されていない上式におけるPbはバッテリ電力を意味するものとする。
(14)式〜(27)式を解いて(28)式〜(31)式を得ることができ、(28)式および(29)式から求めたモータ/ジェネレータトルクTm2,Tm1ををエンジントルクTeと共にそれぞれ、対応するモータコントローラ23およびエンジンコントローラ22に指令することで所定の変速制御を実現することができる。
第1および第2出力軸Out1,Out2の駆動トルク(前後輪駆動トルク)To1,To2は(31)式および(30)式から求めることができ、これら前後輪駆動トルクTo1,To2は本実施の例では図16に示すごときものとなる。
従って本動作形態では、大きな駆動力を必要とするロー側変速比領域において4輪駆動となし、ハイ側変速比になるにつれて前後輪駆動トルクTo1を低下させて徐々に後2輪駆動へ移行させることができ、車両の車輪駆動方式として変速比ごとに優れた前後輪駆動トルク配分を実現することができる。
本実施例の、図3の共線図により表されるハイブリッド変速機において、ハイクラッチH/Cを締結すると共にローブレーキL/Bを解放することにより第3遊星歯車組G3がサンギヤS1,S2間を前記した一体回転可能状態にし、且つ、入力要素クラッチCinの解放によりキャリアC1にエンジン回転Neが入力されず、このエンジン回転がリングギヤR2のみに入力されるようにした場合、
これらキャリアC1およびリングギヤR2の回転数を異ならせることが可能になるも、第3遊星歯車組G3がサンギヤS1,S2間の連結状態を一体回転可能状態にするため、そして、第1および第2出力軸Out1,Out2の回転数が同じ値Noであることから、図3の共線図は、レバーG1,G2,G4が図17に例示するように一直線上に相互に重なり、図3のレバーG3がサンギヤS1,S2およびキャリアC4を一体回転させ得る共線図に等価なものとなる。
図17に示す変速状態(変速比)では、エンジンENGからのエンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に走行抵抗であるが故に負荷(マイナス)トルクである。
図17の共線図におけるレバーG1,G2,G4が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、リングギヤR1に結合した第1モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1は、回転数を0から遠ざけるモータ(プラス)トルクである必要があり、サンギヤS1に結合した第2モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2は、逆に回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要がある。
この時第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2は、モータ動作と発電動作とを行うことから、バッテリ電力25(図1参照)が0であっても、発電側モータ/ジェネレータMG2からの電力でモータ側モータ/ジェネレータMG1をモータ動作させて、図17のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(出力回転数Noがエンジン回転数Neよりも低くなるロー側変速比)を維持することができる。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図17のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(変速比)を維持することも可能である。
図18のレバーG1およびG2(G4)により示す変速状態(変速比)は、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が図17の正値から負値に切り替わるよう変化させ、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が図17の負値から正値に切り替わるよう変化させた場合の変速状態(変速比)を示す。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第1モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が負値であり、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が正値であることから、出力回転数Noをエンジン回転数Neよりも高くするオーバードライブ変速比選択状態となる。
図18の共線図におけるレバーG1およびG2(G4)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図17の場合と逆に、回転数を0に向かわせる発電(マイナス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図17の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要がある。
この時第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2は、発電動作とモータ動作とを行うことから、バッテリ電力25(図1参照)が0であっても、発電側モータ/ジェネレータMG1からの電力でモータ側モータ/ジェネレータMG2をモータ動作させて、図18のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(オーバードライブ変速比)を維持することができる。
なお維持できない場合は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の上記電力バランスを崩して、図18のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(ハイ側変速比)を維持することも可能である。
図19のレバーG1およびG2(G4)により示す変速状態(変速比)は、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が図17の負値から正値に切り替わるよう変化させた場合の変速状態(変速比)を示す。
この場合、エンジントルクTeがプラス(正)トルクであり、第1および第2出力軸Out1,Out2の出力トルクTo1,To2が共に負荷(マイナス)トルクであるも、第2モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2も正値であることから、図17および図18の中間の変速比が選択された中間変速比状態となる。
図19の共線図におけるレバーG1およびG2(G4)が、エンジントルクTeおよび出力トルクTo1,To2によってもバランスしているためには、第1モータ/ジェネレータトルクTm1が図17の場合と同じく、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要があり、第2モータ/ジェネレータトルクTm2が、図17の場合と逆に、回転数を0から遠ざける負荷(プラス)トルクである必要がある。
この時は、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2が共に、バッテリ25(図1参照)からの電力を消費しつつモータ動作を行うことによって、図19のレバーG1およびG2(G4)で表される変速状態(中間変速比)を維持することができる。
図20は、本動作形態において、変速比i(Ne/No)に対する第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2の変化傾向を、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPと共に示し、この通過パワーPは、モータ/ジェネレータMG2の回転数Nm2が0で、且つ、モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1が0である時の変速比iにおいて、また、モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2が0で、且つ、モータ/ジェネレータMG1の回転数Nm1が0である時の変速比iにおいてそれぞれ0になる。
従って、図17の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になるロー側変速比iよりもロー側変速比領域での変速状態に相当し、また図19の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になるロー側変速比iおよびハイ側変速比i間の中間変速比領域での変速状態に相当し、更に図18の変速状態は、モータ/ジェネレータMG1,MG2の通過パワーPが0になるハイ側変速比iよりもハイ側のオーバードライブ変速比領域での変速状態に相当する。
ところで、変速比iよりもロー側の変速比領域、および変速比iよりもハイ側のオーバードライブ変速比領域においては上記したごとく、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持し得てバッテリ25の小型化が可能である。
一方で変速比i,i間の中間変速比領域においては上記したごとく、バッテリ電力25(図1参照)からの電力の持ち出しによって変速状態(変速比)を維持するが、この中間変速比領域では、図20から明らかなごとくモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2が共に小さくてモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化が可能である。
ここで、どの変速比領域を用いるかは、バッテリ25の小型化を優先させるべきか、モータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化を優先させるべきかによって決まり、余裕があればバッテリ25およびモータ/ジェネレータMG1,MG2の実用可能な範囲においてできるだけ広い変速比領域を用い得ること勿論である。
しかし本実施例においては、図4〜図7につき前述した動作形態で実用変速範囲を図8に示すごとくハイ側変速比領域に設定し、図10〜図12につき前述した動作形態で実用変速範囲を図14に示すごとくロー側変速比領域に設定したから、図17〜図19につき上述した動作形態ではオーバードライブ変速比領域に実用変速範囲を設定することとする。
以上説明した通り本実施例によれば、第1および第2出力軸Out1,Out2を結合した第1キャリアC1および第2キャリアC2から前後輪駆動力を取り出すことから、従来のようにハイブリッド変速機とは別にモータを設けることなくハイブリッド変速機による4輪駆動化を実現することができ、従って、新たな車体フロアを用意しなくても一般的な車体フロアのままで4輪駆動化が可能である。
また、第1モータ/ジェネレータMG1および第2モータ/ジェネレータMG2を前記した通りモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより、エンジンの運転状態と相まって任意の変速状態を維持し得ることから、第1および第2出力軸Out1,Out2からの駆動力の配分を自由に決定することができ、従って、主たる駆動輪、従たる駆動輪の区別もなく、極めて自由度の高い4輪駆動化技術たり得る。
そして、図示例のように第1出力軸Out1を左右前輪に結合し、第2出力軸Out2を左右後輪に結合した場合における、前輪駆動力Frおよび後輪駆動力Rrと、これら前後輪駆動力間の比Ratio(=Fr/Rr)とは、ダイレクト配電時(モータ/ジェネレータMG1,MG2の一方の発電力と他方のモータ消費電力とが同じ時)について示すと図21に示すごときものとなり、大駆動力が要求されるロー側では4輪駆動状態となり、ハイ側では前輪による2輪駆動傾向が強まるというような好適な前後輪駆動力配分にすることができるし、当該前後輪駆動力配分のためのトランスファー機能をハイブリッド変速機内に持たせることができて、ハイブリッド変速機のほかにトランスファー装置を必要とすることがなくて、コスト上も大いに有利である。
なお前後輪間での差動を禁止したリジッド4輪駆動が要求される場合は、入力要素クラッチCinおよびハイクラッチH/Cを締結し、ローブレーキL/Bを解放することで、第1および第2出力軸Out1,Out2間で回転差を生じないリジッド4輪駆動状態を難なく実現することができ、差動制限機構をハイブリッド変速機に設ける必要もなくて、この点でもコスト上大いに有利である。
更に、上記のごとく第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2をモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより得られる任意の変速状態が、第3差動装置(第3遊星歯車組)G3によるサンギヤS1,S2間の連結状態(非連結状態、逆転変速状態、一体回転状態)と、入力要素クラッチCinの締結・解放との組み合わせごとのものであることから、当該組み合わせの選択により変速比の選択幅を大きくすることができて実用上大いに有利である。
しかも前記した通り、バッテリ電力25(図1参照)の電力に頼ることなく変速状態(変速比)を維持し得てバッテリ25の小型化が可能であると共に、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2およびトルクTm1,Tm2が共に小さくてモータ/ジェネレータMG1,MG2の小型化も可能である。
そして、図2に示すごとく第1遊星歯車組G1のサンギヤS1に、第4遊星歯車組G4および歯車15,16よりなる平行軸歯車組を介して第1出力軸Out1を結合し、また、第2遊星歯車組G2のキャリアC2に同軸に第2出力軸Out2を結合したから、
第2出力軸Out2に係わる変速機出力は変速機の後方から変速機主軸線方向に取り出して、例えば左右後輪に向かわせるが、第1出力軸Out1に係わる変速機出力は、ハイブリッド変速機の上下、左右、いずれかから横方向に取り出して、変速機主軸線に対し平行に延在する第1出力軸Out1により、例えば左右前輪に向かわせることができ、このような変速機出力の取り出し態様が要求される車両において有利に適用し得る。
更に、第1および第2モータ/ジェネレータMG1,MG2を同心一体構造として、エンジンENGと、エンジンに近い側に配した遊星歯車組G4(G1)との間に同軸に配置したため、
2個のモータ/ジェネレータMG1,MG2を内蔵するといえども、ハイブリッド変速機1をコンパクトに構成することができてその車載性を向上させることができる。
本発明によるハイブリッド変速機の車載状態を、その制御システムと共に示す概略平面図である。 本発明の一実施例になるハイブリッド変速機を示す線図的展開縦断側面図である。 同ハイブリッド変速機のハイモード選択時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がハイモードにおいて中間変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がハイモードにおいてロー側変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がハイモードにおいてハイ側変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機のハイモードでの変速比に対する第1および第2モータ/ジェネレータの回転数およびトルクの変化特性を、これらモータ/ジェネレータへの通過パワーと共に示す変化特性図である。 同ハイブリッド変速機がハイモードで出力する前後輪駆動トルクの配分特性を変速比に関して示すと共に、同ハイブリッド変速機のハイモードにおける実用変速範囲を併せ示した特性図である。 同ハイブリッド変速機のローモード選択時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がローモードにおいてロー側変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がローモードにおいてハイ側変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がローモードにおいてオーバードライブ変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機のローモードでの、変速比に対する第1および第2モータ/ジェネレータの回転数およびトルクの変化特性を、これらモータ/ジェネレータへの通過パワーと共に示す変化特性図である。 同ハイブリッド変速機のローモードでの実用変速範囲を示す特性図である。 図10〜図12の共線図における回転数のバランス式およびトルクのバランス式を求める時に用いた符号の説明図である。 同ハイブリッド変速機がローモードにおいて出力する前後輪駆動トルクの配分特性を変速比に関して示した特性図である。 同ハイブリッド変速機がオーバードライブモードにおいてロー側変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がオーバードライブモードにおいてハイ側変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機がオーバードライブモードにおいて中間変速比を選択した時の共線図である。 同ハイブリッド変速機のオーバードライブモードでの変速比に対する第1および第2モータ/ジェネレータの回転数およびトルクの変化特性を、これらモータ/ジェネレータへの通過パワーと共に示す変化特性図である。 同ハイブリッド変速機の変速比の逆数で表される速度比に対する前輪駆動力および後輪駆動力の変化特性を、前後輪駆動力比の変化特性と共に示す線図である。
符号の説明
1 ハイブリッド変速機
11 変速機ケース
ENG エンジン
12 複合電流2層モータ
MG1 第1モータ/ジェネレータ
MG2 第2モータ/ジェネレータ
13 入力軸
Out1 第1出力軸
Out2 第2出力軸
G1 第1遊星歯車組(第1差動装置)
G2 第2遊星歯車組(第2差動装置)
G3 第3遊星歯車組(第3差動装置)
G4 第4遊星歯車組(第4差動装置)
S1,S2,S3,S4 サンギヤ
R1,R2,R3,R4 リングギヤ
C1,C2,C3,C4 キャリア
Cin 入力要素クラッチ
H/C ハイクラッチ
L/B ローブレーキ
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 インバータ
25 バッテリ
26 アクセル開度センサ
27 車速センサ
28 油圧源
31 傘歯車組
32 前輪用ディファレンシャルギヤ装置
33L,33R 左右前輪
34 プロペラシャフト
35 後輪用ディファレンシャルギヤ装置
36L,36R 左右後輪

Claims (8)

  1. 2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる第1および第2差動装置を具え、
    これら差動装置の1要素同士を入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に、これら相互に結合可能にされた要素のうち第2差動装置の要素にエンジンを結合し、
    該相互に結合可能にされた要素のうちの一方に第1出力軸を、また、前記相互に結合可能にされた要素以外の要素であって第2差動装置における1要素に同軸に第2出力軸を結合し、
    前記相互に結合可能にされた要素以外の要素であって第1差動装置における2要素にそれぞれ第1および第2モータ/ジェネレータを結合し、
    第2モータ/ジェネレータを結合した第1差動装置の要素と、前記相互に結合可能にされた要素および第2出力軸を結合された第2差動装置の要素以外の要素であって第2差動装置における要素との間を、互いに連結されていない非連結状態と、相互に回転方向が逆となるように連結する逆転変速状態と、同一回転となるように連結する一体回転状態との3種の連結状態のうちの任意の状態に連結可能とし、
    前記第1および第2モータ/ジェネレータをモータとして動作させたり、発電機として動作させることにより、前記連結状態と入力要素クラッチの締結・解放との組み合わせごとに任意の変速状態を維持し得るよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド変速機において、
    前記入力要素クラッチを締結すると共に前記3種の連結状態のうちの非連結状態を用いることでハイ側変速比選択モードとし、
    前記入力要素クラッチを解放すると共に前記3種の連結状態のうちの逆転変速状態を用いることでロー側変速比選択モードとし、
    前記入力要素クラッチを解放すると共に前記3種の連結状態のうちの一体回転状態を用いることでオーバードライブ選択モードとするよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  3. 請求項1または2に記載のハイブリッド変速機において、締結することで前記一体回転状態を実現するハイクラッチと、拘束することで前記逆転変速状態を実現するローブレーキと、を有し、前記入力要素クラッチおよびハイクラッチを締結すると共に前記ローブレーキを解放することで、第1および第2出力軸間で回転差を生じないリジッド4輪駆動状態とするよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  4. 請求項1〜 3のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
    前記第1出力軸を左右前輪に結合し、前記第2出力軸を左右後輪に結合したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
    前記3種の連結状態を第3差動装置と、該第3差動装置の1要素を固定して前記逆転変速状態を提供する前記ローブレーキおよび該第3差動装置の任意の2要素間を直結して前記一体回転状態を提供する前記ハイクラッチとにより達成するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機において、
    平行軸歯車組を、前記第1差動装置に同軸の第4差動装置と、これら差動装置に対して平行に並置したカウンターシャフト上の歯車とで構成し、
    前記相互に結合可能にされた要素のうち第1差動装置の要素を第4差動装置の入力要素に結合し、第4差動装置の出力要素に前記カウンターシャフト上の歯車を噛合させ、第4差動装置の他の要素を第2モータ/ジェネレータおよびこれを結合すべき第1差動装置の要素に結合したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  7. 請求項6に記載のハイブリッド変速機において、
    前記第1〜 第4差動装置を同軸に、且つ、前記エンジンに近い側から第4差動装置、第1差動装置、第2差動装置、第3差動装置の順に配置したことを特徴とするハイブリッド変速機。
  8. 請求項7に記載のハイブリッド変速機において、
    第1キャリアおよび第2リングギヤを入力要素クラッチにより相互に結合可能にすると共に第2リングギヤにエンジンを結合し、
    第1キャリアに第4サンギヤを結合すると共に、第4リングギヤの外周に前記カウンターシャフト上の歯車を噛合させて前記第1出力軸を結合し、第2キャリアに同軸に前記第2出力軸を結合し、
    第1リングギヤに前記第1モータ/ジェネレータを結合し、また、第1サンギヤを第4キャリアに結合すると共に第2モータ/ジェネレータに結合し、
    第1サンギヤに第3リングギヤを結合すると共に第2サンギヤに第3サンギヤを結合し、前記ローブレーキは第3キャリアを固定可能にして第1および第2サンギヤ間を前記逆転変速状態にするよう配置し、前記ハイクラッチは第3サンギヤおよび第3リングギヤ間を直結可能にして第1および第2サンギヤ間を前記一体回転状態にするよう配置し、前記ローブレーキおよび前記ハイクラッチを共に解放することで第1および第2サンギヤ間を前記非連結状態にし得るよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。
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