JP2018145243A - 防曇塗料組成物及びこれを用いた防曇塗膜、防曇物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 想定以上の高温条件下に曝された場合であっても水垂れ跡などの外観変化を引き起こすことのない防曇塗料組成物を提供すること。【解決手段】 水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーとの共重合体(A)と、イオン性官能基を有するモノマーを含む共重合体(B)と、該共重合体(A)および(B)と反応する架橋剤(C)と、硬化触媒(D)と、界面活性剤(E)とを含む防曇塗料組成物を提供する。【選択図】 なし
Description
本発明は、防曇塗料組成物及びこれを用いた防曇塗膜ならびに防曇物品に関する。
自動車の前照灯などの照明装置は、光源と光源の前方に配置されたガラスやプラスチックなどで形成された透明部材とから主に構成されている。そして光源が発する光が透明部材を介して照明装置の外部および周辺部に照射される。このような照明装置では、透明部材の内側(光源側)に曇りが発生することがあり、照射光の強度が低下して安全性の問題を生じることがある。また曇りの生じた透明部材を介して照射された光は光量が少なく、美観の点でも問題となりうる。
特許文献1には、ブロックまたはグラフト共重合体と酸性リン酸アルキルエステルとを含有する防曇塗料組成物が開示されている。特許文献1では、ブロックまたはグラフト共重合体として架橋官能基を有するビニル系単量体と水溶性ビニル系単量体とから形成される親水性重合体部分および非水溶性ビニル系単量体から形成される疎水性重合体部分から構成される共重合体を用いている。さらに特許文献2には、共重合体(A)と多官能性ブロックイソシアネート化合物(B)と界面活性剤(C)とからなる防曇剤組成物が開示されている。
防曇塗料組成物を内側に適用した照明装置などが想定以上の高温条件下に曝されることがある。そのような場合、従来の防曇塗料組成物による塗膜上には水膜が形成され、その水が垂れることにより、塗膜の乾燥後に水垂れ跡が形成されて透明部材や照明装置の外観が損なわれることがあった。そこで本発明は、想定以上の高温条件下に曝された場合であっても水垂れ跡などの外観変化を引き起こすことのない防曇塗料組成物を提供することを目的とする。
本発明の実施形態における防曇塗料組成物は、水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーとの共重合体(A)と、イオン性官能基を有するモノマー由来の部位を含む共重合体(B)と、該共重合体(A)および(B)と反応する架橋剤(C)と、硬化触媒(D)と、界面活性剤(E)とを含むことを特徴とする。
本発明の他の実施形態は、防曇塗料組成物を加熱硬化させてなる防曇塗膜である。
本発明のさらに他の実施形態は、基材と、防曇塗料組成物を加熱硬化させてなる防曇塗膜とを含む、防曇物品である。
本発明の他の実施形態は、防曇塗料組成物を加熱硬化させてなる防曇塗膜である。
本発明のさらに他の実施形態は、基材と、防曇塗料組成物を加熱硬化させてなる防曇塗膜とを含む、防曇物品である。
本発明の防曇塗料組成物を用いて形成した防曇塗膜は、水膜を形成しにくく防曇性能に優れる。本発明の防曇塗膜は、高温条件下に曝された後でも乾燥後の水垂れ跡などの外観変化を生じにくい。本発明の防曇塗料組成物を利用した防曇物品(たとえば照明装置)は、外観変化を生じにくく、安定した光量を長期にわたり維持することができる。
本発明の実施形態を以下に説明する。本発明の一の実施形態は、水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーとの共重合体(A)と、イオン性官能基を有するモノマー由来の部位を含む共重合体(B)と、該共重合体(A)および(B)と反応する架橋剤(C)と、硬化触媒(D)と、界面活性剤(E)とを含む防曇塗料組成物である。
本実施形態において、防曇塗料組成物とは、ガラスやプラスチックなどの基材上に塗膜を形成して、水蒸気が原因の水滴による曇りを発生しにくくすることができる組成物のことである。基材で隔てられた両空間に温度差がある場合、高温側の湿気が基材表面上に結露して、水滴を形成する。この水滴が光の乱反射を起こして曇りが発生する。基材上における水滴の形成を防止する仕組みとして、基材表面に付着した水分を瞬時に水膜にするメカニズムと、基材表面に付着した水分を瞬時に吸収するメカニズムがあることが知られている。本実施形態の防曇塗料組成物は、基材表面に付着した水分を瞬時に水膜にして、水滴の形成を防止することにより基材の曇りを防ぐ防曇塗膜を形成する。
本実施形態の防曇塗料組成物は、水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーとの共重合体(A)を含む。共重合体とは、2以上のモノマーを重合させて得られる重合体であり、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のあらゆる形式の共重合体を包含する概念である。反応性を有する共重合体とは、光、熱、触媒作用等を契機に化学反応を開始しうる置換基を分子内に有する共重合体のことである。
(A)成分である共重合体は、水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーとの共重合体である。水酸基を有するモノマーは、分子内に水酸基(−OH)と、重合性官能基とを有する化合物である。水酸基は、アルコール性水酸基とフェノール性水酸基とを包含する。水酸基を有するモノマーとして、たとえば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ビニルフェノール、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミドが挙げられ、これらの中から1種以上用いることができる
本明細書において親水性官能基を有する親水性モノマーとは、重合前のモノマーの状態において水または極性溶媒に可溶または易溶であるモノマーを意味する。親水性官能基とは、水と油の界面に置かれた場合に、より水の方に親和性を有する官能基のことである。親水性モノマーとして、たとえば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられ、これらの中から1種以上用いることができる。
本明細書において疎水性官能基を有する疎水性モノマーとは、重合前のモノマーの状態において水または極性溶媒に不溶または難溶であるモノマーを意味する。疎水性官能基とは、水と油の界面に置かれた場合に、より油の方に親和性を有する官能基のことである。疎水性モノマーとして、メチルメタクリレートまたはメチルアクリレートを挙げることができる。疎水性モノマーとして、たとえば、シクロへキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンタニルアクリレート、シクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレートのような、分子内に環状構造を有するモノマーを用いることが好ましい。疎水性モノマーは上記の例の中から1種以上用いることができる。分子内に環状構造を有するモノマーは、共重合体を形成した際に、当該部位の運動の自由度が比較的小さくなるため、後述する界面活性剤成分(D)を効果的に防曇塗膜内にとどめておくことができると考えられる。
上記のモノマーを混合し、共重合することにより(A)成分の共重合体を得ることができる。共重合は使用するモノマーに応じてアニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合等の既知の方法により適宜行う。得られる共重合体成分(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。(A)成分の共重合体は、水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーの各部位のほか、他のモノマーの部位を含んでいても良い。
実施形態の防曇塗料組成物は、共重合体(A)のほかに、さらにイオン性官能基を有するモノマー由来の部位を含む共重合体(B)を含む。イオン性官能基を有するモノマー由来の部位を含む共重合体とは、イオン性官能基を有するモノマーを共重合の一成分として含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体を意味する。イオン性官能基を有するモノマーは、アニオン性またはカチオン性の、水などの極性溶媒に溶解したときに電離しうる官能基と重合性官能基とを有する化合物である。イオン性官能基として、カルボキシル基、アミノ基、リン酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。イオン性官能基を有するモノマーとして、たとえば、アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸が挙げられ、これらの中から1種以上用いることができる。
(B)成分である共重合体は、水酸基を有するモノマーとイオン性官能基を有するモノマーとの共重合体であってよい。水酸基を有するモノマーは、先に説明した通り、分子内に水酸基(−OH)と、重合性官能基とを有する化合物である。水酸基は、アルコール性水酸基とフェノール性水酸基とを包含する。水酸基を有するモノマーとして、たとえば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ビニルフェノールが挙げられ、これらの中から1種以上用いることができる。
上記のモノマーを混合し、共重合することにより(B)成分の共重合体を得ることができる。共重合は使用するモノマーに応じてアニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合等の既知の方法により適宜行う。得られる共重合体成分(B)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。(B)成分の共重合体は、水酸基を有するモノマーとイオン性官能基を有するモノマーの各部位ほか、他のモノマーの部位を含んでいても良い。
(C)成分である架橋剤は、上記の共重合体成分(A)および(B)と反応して、共重合体(A)および(B)同士の間に橋架け構造を形成することができる化合物である。上記の通り共重合体(A)および(B)のなかには複数の水酸基が含まれている。したがって架橋剤(C)として、これらの水酸基と反応してウレタン結合を形成することができるイソシアネート化合物を挙げることができる。イソシアネート化合物として、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物等の多官能性イソシアネート化合物を挙げることができる。ジイソシアネート化合物として、たとえば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、シクロヘキシルジイソシアネートが挙げられる。またトリイソシアネート化合物として、前記ジイソシアネートをアダクト変性、ビウレット変性、イソシアヌレート変性等の反応により三量化したものが挙げられる。架橋剤(C)として、特に多官能性ブロックイソシアネート化合物を用いることが特に好ましい。多官能性ブロックイソシアネート化合物とは、マスキングされて安定化されたイソシアネート基を2以上有する化合物のことである。多官能性ブロックイソシアネート化合物は、熱や光等の刺激に応答してマスキングに用いられていたブロック剤(低級アルコール類、フェノール類、脂肪族メルカプタン、青酸、第2級芳香族アミン類、オキシム類、活性エチレン化合物、ラクタム類、重亜硫酸塩、等)が脱離することにより反応活性のイソシアネート基が現れ、これが架橋反応に寄与する。したがって多官能性ブロックイソシアネート化合物を塗料組成物の構成成分として用いると、意図的に反応を開始する操作を行わない限り架橋反応を開始しないため、安定性に優れた塗料組成物が得られる。多官能性ブロックイソシアネート化合物は、コロネート(東ソー株式会社製)メイカネート(明成化学工業株式会社製)、エラストロン(第一工業製薬株式会社製)、デュラネート(旭化成株式会社製)などの商品名で販売される市販品を適宜利用することができる。
架橋剤(C)として、多官能性ブロックイソシアネート化合物を用いる場合、イソシアネート基含有量と、上記の共重合体(A)および(B)の水酸基含有量との比(NCO/OH比)が0.5〜1.5であることが好ましい。ここで多官能性ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基含有量とは、用いる多官能性ブロックイソシアネート化合物全体に存在するブロックされたイソシアネート基の数を意味し、共重合体(A)および(B)の水酸基含有量とは、用いる共重合体(A)および(B)全体に存在する水酸基の数を意味する。NCO/OH比がおよそ1、すなわち多官能性ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基含有量と共重合体(A)および(B)の水酸基含有量がほぼ等しいことが望ましい。共重合体(A)および(B)に存在する水酸基が過不足なく架橋剤(C)のイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成することで、適切な強度を有する防曇塗膜を形成することができる。先記のNCO/OH比が0.5未満であると、架橋剤(C)と共重合体(A)および(B)との架橋の数が少なくなるため、架橋密度が低下し、よって水垂れ跡が発生しやすくなる。先記のNCO/OH比が1.5を超えると、架橋剤(C)と共重合体(A)および(B)との架橋の数が多くなって架橋密度が増加しすぎるため、水垂れ跡が発生しやすくなる。
(D)成分である硬化触媒は、上記の共重合体(A)および(B)と架橋剤(C)との反応を促進することができる化合物である。硬化触媒(D)は、金属を活性中心とする触媒を用いることが好ましい。硬化触媒(D)として、亜鉛、鉛、水銀、ビスマス、スズ、鉄、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン、インジウムなどの金属を活性中心とした有機金属化合物を挙げることができる。硬化触媒(D)として、ネオスタン(日東化成株式会社製)、オルガチックス(マツモトファインケミカル株式会社製)、K−KAT(King Industries,Inc製)等の商品名で販売される、水性塗料用イソシアネート系触媒の市販品を適宜利用することができる。
(E)成分である界面活性剤は、本実施形態の防曇塗料組成物において、防曇性を発揮するために必須の成分である。すなわち、防曇塗料組成物を適用した防曇塗膜中に存在する界面活性剤(E)が、基材上の防曇塗膜に付着した水の表面張力を低下させ、瞬時に平滑な水膜を形成して、光の乱反射を防ぐことにより曇りを防止することができる。この防曇の仕組みは従来から知られており、従来の防曇塗膜にも界面活性剤は含まれているものが多い。しかし、防曇塗膜上に水膜が形成されると、界面活性剤が水に溶け出して、局所的に界面活性剤と水とが一緒に流れてしまうことがあった。この様な箇所が乾燥すると、防曇物品上に水垂れ跡が残ることがあった。したがって、界面活性剤が防曇塗膜内に均一に存在し、かつ、これが水とともに流れていかないように防曇塗膜内にとどまれば、防曇物品の外観を損なう水垂れ跡の形成を防ぐことができると考えられる。
界面活性剤(E)として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。アニオン性界面活性剤として、たとえば、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩が挙げられる。
カチオン性界面活性剤として、たとえば、エタノールアミン類、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤として、たとえば、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル類、シュガーエステル類、セルロースエーテルが挙げられる。両性界面活性剤として、ウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、ジメチルアルキルラウリルベタイン、ジメチルアルキルステアリルベタイン等の脂肪酸型両性界面活性剤、ジメチルアルキルスルホベタインのようなスルホン酸型両性界面活性剤、アルキルグリシン等を挙げることができる。本実施形態の界面活性剤(E)として、アニオン性界面活性剤を用いることが特に好ましい。界面活性剤(E)としてアニオン性界面活性剤を用いると、防曇塗膜の耐熱性が向上するという利点がある。
本実施形態の好適な防曇塗料組成物は、まず共重合体(A)および(B)を用意し、次いで架橋剤(C)、硬化触媒(D)および界面活性剤(E)と混合して製造することができる。共重合体(A)および(B)は、各モノマーを適切な割合で混合し、光または熱等の作用により重合を開始して共重合することによりそれぞれ得ることができる。共重合反応は従来方法により行うことができる。共重合体(A)を構成する、反応性官能基として水酸基を有するモノマー、親水性官能基を有する親水性モノマー、および疎水性官能基を有する疎水性モノマーは、任意の割合で共重合することができるが、たとえば、1:2:2、あるいは1:2:4の割合(重量比)で各モノマーを配合して共重合することができる。特に、親水性基を有する親水性モノマーと疎水性基を有する疎水性モノマーとは、2:1〜1:5の割合(重量比)となるように配合することが好ましい。共重合体(A)全体として水酸基価(試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg量)が概ね50〜150mgKOH/gとなるように各モノマーを配合すればよい。
共重合体(B)を構成する、水酸基を有するモノマー、およびイオン性官能基を有するモノマーは任意の割合で共重合することができるが、たとえば、1:2〜1:5の割合(重量比)で各モノマーを配合して共重合することが好ましい。共重合体(B)全体として水酸基価が概ね100〜180mgKOH/gとなるように各モノマーを配合する。
共重合体(A)と(B)とを併用する場合、これらの配合は任意の割合で行うことができるが、共重合体(A)100重量部に対し共重合体(B)1.0重量部〜20.0重量部を配合することが好ましい。共重合体(B)の配合量が20.0重量部を超える(得られる防曇塗膜中のイオン性官能基の数が多くなる)と、共重合体(B)の、共重合体(A)および架橋剤(C)に対する相溶性が低下して、得られる防曇塗膜の白化を招く原因となりうる。また共重合体(B)の配合量が1.0重量部より少ない(得られる防曇塗膜中のイオン性官能基の数が少なくなる)と、界面活性剤(E)を防曇塗膜内にとどまらせることが困難になるため、水垂れによる界面活性剤(E)の流れを防ぎきれなくおそれがある。イオン性官能基は、界面活性剤の凝集による防曇塗膜の外観不良や、水膜形成時の界面活性剤の過度な流出による水垂れ跡の発生を抑制する効果を有するため、防曇塗膜中に適切な割合で存在させることが特に好ましい。
架橋剤(C)は、任意の割合で用いることができるが、共重合体(A)100重量部に対して50〜150重量部配合することが好ましい。先に説明したとおり、架橋剤(C)として多官能性ブロックイソシアネート化合物を用いる場合は、NCO/OH比が0.5〜1.5となるように架橋剤(C)の配合重量を調整することができる。
硬化触媒(D)は、共重合体(A)および(B)と架橋剤(C)との共重合反応を開始するのに充分な量用いればよい。使用する共重合体(A)および(B)と架橋剤(C)との組み合わせにもよるが、たとえば、共重合体(A)および(B)100重量部に対して0.01〜3重量部程度用いることが好ましい。
界面活性剤(E)は、防曇塗料組成物を硬化して形成される防曇塗膜が、接触した水を瞬時に水膜にするのに充分な量用いることが好ましい。使用する共重合体(A)および(B)、架橋剤(C)および界面活性剤(E)の組み合わせにもよるが、たとえば、共重合体(A)および(B)100重量部に対して5〜20重量部程度用いることができる。界面活性剤(E)の量が少なすぎると、防曇塗膜が有効な防曇性能を発揮できないおそれがある。一方界面活性剤(E)の量が多すぎると、防曇塗膜を覆っていた水とともに界面活性剤(E)が流れ、防曇塗膜表面に水垂れ跡を形成するおそれがある。本実施形態の防曇塗料組成物は、これらの成分のほか、溶剤、および塗料組成物に通常含まれている添加剤(たとえば染料、顔料、可塑剤、分散剤、防腐剤、つや消し剤、帯電防止剤、難燃剤)を配合することができる。
共重合体(A)および(B)、架橋剤(C)、硬化触媒(D)および界面活性剤(E)を適切に配合した本実施形態の防曇塗料組成物は、基材表面に塗布することができる。基材として、ガラス、プラスチック、金属などを挙げることができるが、本実施形態の防曇塗料組成物は、特に透明プラスチック上に好適に塗布することができる。防曇塗料組成物の基材表面への塗布は、従来のコーティング方法により適宜行うことができる。塗布した防曇塗料組成物を加熱して、防曇塗膜を形成することができる。防曇塗料組成物の加熱は、防曇塗料組成物中の硬化触媒(D)の作用により共重合体(A)および(B)、ならびに架橋剤(C)の共重合反応が開始するのに充分な温度まで加熱すればよい。使用する共重合体(A)および(B)、架橋剤(C)および硬化触媒(D)の種類にもよるが、通常は80〜150℃、好ましくは100〜150℃程度に加熱することで共重合反応を開始させることができる。防曇塗料組成物塗布物の加熱は、バーナーやオーブンなどの加熱装置による加熱のほか、ドライヤーなどの温風による加熱方法により行うことができる。
本実施形態の防曇塗料組成物を基材に塗布し、加熱することにより硬化し防曇塗膜を形成して、防曇物品を得ることができる。本実施形態の防曇塗料組成物を利用した防曇物品として、たとえば、照明装置、前照灯、窓、レンズ、レンズカバー、モニター、モニターカバー等が挙げられる。実施形態の防曇物品は、優れた防曇性能を有し、かつ防曇物品が予想外の高温条件下に曝された場合であっても、水垂れ跡の形成などの外観変化を引き起こさない。
(1)防曇塗料組成物の作製
共重合体(A)と(B)とを構成するモノマーを、それぞれ混合し、ラジカル重合によりそれぞれの共重合体を合成した。得られた共重合体(A)、(B)と、架橋剤(C)、硬化触媒(D)および界面活性剤(E)を混合して、防曇塗料組成物を作製した。各防曇塗料組成物の成分構成は、表1および表2に示した。
共重合体(A)と(B)とを構成するモノマーを、それぞれ混合し、ラジカル重合によりそれぞれの共重合体を合成した。得られた共重合体(A)、(B)と、架橋剤(C)、硬化触媒(D)および界面活性剤(E)を混合して、防曇塗料組成物を作製した。各防曇塗料組成物の成分構成は、表1および表2に示した。
なお、表中の略号の意味は、以下の通りである:
CHA:シクロヘキシルアクリレート(疎水性官能基を有するモノマー)
FA−513M:シクロペンタニルメタクリレ−ト(疎水性官能基を有するモノマー)
IBXMA:イソボルニルメタクリレート(疎水性官能基を有するモノマー)
MMA:メチルメタクリレート(疎水性官能基を有するモノマー)
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド(親性官能基を有するモノマー)
2−HEMA:2−ヒドロキシルエチルアクリレート(水酸基を有するモノマー)
P−1A:2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(イオン性官能基を有するモノマー)
AE−90:ポリエチレングリコール(n=2)モノアクリレート(水酸基を有するモノマー)
AE−200:ポリエチレングリコール(n=4.5)モノアクリレート(水酸基を有するモノマー)
Duranate WM44−L70G:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(旭化成)
ネオコールYSK:ジアルキルスルホコハク酸性アニオン性界面活性剤(第一工業製薬)
K−KAT XK−614:水性塗料用亜鉛アミン系触媒(King Industries)
CHA:シクロヘキシルアクリレート(疎水性官能基を有するモノマー)
FA−513M:シクロペンタニルメタクリレ−ト(疎水性官能基を有するモノマー)
IBXMA:イソボルニルメタクリレート(疎水性官能基を有するモノマー)
MMA:メチルメタクリレート(疎水性官能基を有するモノマー)
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド(親性官能基を有するモノマー)
2−HEMA:2−ヒドロキシルエチルアクリレート(水酸基を有するモノマー)
P−1A:2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(イオン性官能基を有するモノマー)
AE−90:ポリエチレングリコール(n=2)モノアクリレート(水酸基を有するモノマー)
AE−200:ポリエチレングリコール(n=4.5)モノアクリレート(水酸基を有するモノマー)
Duranate WM44−L70G:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(旭化成)
ネオコールYSK:ジアルキルスルホコハク酸性アニオン性界面活性剤(第一工業製薬)
K−KAT XK−614:水性塗料用亜鉛アミン系触媒(King Industries)
(2)防曇塗膜の作製
ポリカーボネート樹脂板基材上に、各防曇塗料組成物を塗布した。塗布は、バーコート法で行い、防曇塗料組成物が硬化した後の防曇塗膜の厚さが5μmとなるように調整した。防曇塗料組成物が塗布された基材を120℃のオーブンに入れ5分間硬化させ、防曇塗膜を形成した。こうして各防曇塗膜試験片を得た。
ポリカーボネート樹脂板基材上に、各防曇塗料組成物を塗布した。塗布は、バーコート法で行い、防曇塗料組成物が硬化した後の防曇塗膜の厚さが5μmとなるように調整した。防曇塗料組成物が塗布された基材を120℃のオーブンに入れ5分間硬化させ、防曇塗膜を形成した。こうして各防曇塗膜試験片を得た。
(3)耐熱試験
防曇塗膜が高熱条件下に曝された状態を模すために、各防曇塗膜試験片に耐熱試験を行った。各防曇塗膜試験片を乾燥した130℃のオーブンに入れて240時間放置し、その後さらに室温で12時間静置した。
防曇塗膜が高熱条件下に曝された状態を模すために、各防曇塗膜試験片に耐熱試験を行った。各防曇塗膜試験片を乾燥した130℃のオーブンに入れて240時間放置し、その後さらに室温で12時間静置した。
(4)防曇塗膜の評価
(4−1)防曇塗膜の外観評価
防曇塗膜試験片の表面を目視で観察した。防曇塗膜の表面にムラやブツが見られないものについて「ムラ・ブツなし」、防曇塗膜の表面にムラやブツが見られるものについて「ムラ・ブツあり」と記載した。
(4−1)防曇塗膜の外観評価
防曇塗膜試験片の表面を目視で観察した。防曇塗膜の表面にムラやブツが見られないものについて「ムラ・ブツなし」、防曇塗膜の表面にムラやブツが見られるものについて「ムラ・ブツあり」と記載した。
(4−2)防曇塗膜の防曇性評価
耐熱試験をしない防曇塗膜試験片(表1中では「初期」と記載する。)と、耐熱試験をした防曇塗膜試験片(表1中では「耐熱試験後」と記載する。)について、以下の方法で防曇性を評価した。40℃の温水浴の水面から高さ1cmの位置に防曇塗膜試験片を防曇塗膜が下向きになるように配置して、防曇塗膜に温水浴からの蒸気をあてた。2分間経過後に防曇塗膜上に曇りが形成されているかを目視により観察した。防曇塗膜の表面に曇りが生じていないものについて「曇りなし」、防曇塗膜の表面に曇りが生じているものについて「曇りあり」と記載した。
耐熱試験をしない防曇塗膜試験片(表1中では「初期」と記載する。)と、耐熱試験をした防曇塗膜試験片(表1中では「耐熱試験後」と記載する。)について、以下の方法で防曇性を評価した。40℃の温水浴の水面から高さ1cmの位置に防曇塗膜試験片を防曇塗膜が下向きになるように配置して、防曇塗膜に温水浴からの蒸気をあてた。2分間経過後に防曇塗膜上に曇りが形成されているかを目視により観察した。防曇塗膜の表面に曇りが生じていないものについて「曇りなし」、防曇塗膜の表面に曇りが生じているものについて「曇りあり」と記載した。
(4−3)防曇塗膜の外観変化の評価
上記の防曇塗膜の防曇性評価を行った後、防曇塗膜試験片を垂直に立てかけた状態で30分間維持して乾燥させた。その後防曇塗膜試験片上に水垂れ跡が形成されているか、目視により観察した。水垂れ跡が見られないものについて「タレなし」、水垂れ跡が見られるものについて「タレあり」と記載した。
上記の防曇塗膜の防曇性評価を行った後、防曇塗膜試験片を垂直に立てかけた状態で30分間維持して乾燥させた。その後防曇塗膜試験片上に水垂れ跡が形成されているか、目視により観察した。水垂れ跡が見られないものについて「タレなし」、水垂れ跡が見られるものについて「タレあり」と記載した。
(4−4)防曇塗膜の密着性評価
JIS K 5600−5−6(塗料一般試験方法−塗膜の機械的性質に関する試験法、付着性[クロスカット法])に準拠して、防曇塗膜試験片(耐熱試験をしていないもの)の防曇塗膜の剥離の有無を目視により観察した。防曇塗膜の剥離が見られないものについて「剥離なし」、防曇塗膜の一部または全部に剥離が見られるものについて「剥離あり」と記載した。
JIS K 5600−5−6(塗料一般試験方法−塗膜の機械的性質に関する試験法、付着性[クロスカット法])に準拠して、防曇塗膜試験片(耐熱試験をしていないもの)の防曇塗膜の剥離の有無を目視により観察した。防曇塗膜の剥離が見られないものについて「剥離なし」、防曇塗膜の一部または全部に剥離が見られるものについて「剥離あり」と記載した。
本発明の実施例に係る防曇塗料組成物は、優れた防曇性を有する防曇塗膜を形成した。特に実施例1〜10の防曇塗料組成物は、外観に優れた防曇塗膜を形成する。環状構造を有する疎水性モノマーを含まない実施例7の防曇塗料組成物による防曇塗膜は、水垂れ跡が観察された。環状構造を有する疎水性モノマーを共重合体(A)の構成成分とすることは、水垂れ跡の形成と関連があることが示唆される。一方、共重合体(B)を含まない比較例1の防曇塗料組成物による防曇塗膜は、塗膜の外観にやや難があることがわかる。また比較例1の耐熱試験後の防曇塗膜にはそれぞれ水垂れ跡が観察された。用いる疎水性モノマーの種類や、共重合体(B)の中のイオン性官能基を有するモノマー部位が、防曇塗膜の外観や水垂れ跡の形成に影響していることが示唆される。
Claims (9)
- 水酸基を有するモノマーと親水性官能基を有する親水性モノマーと疎水性官能基を有する疎水性モノマーとの共重合体(A)と、イオン性官能基を有するモノマー由来の部位を含む共重合体(B)と、該共重合体(A)および(B)と反応する架橋剤(C)と、硬化触媒(D)と、界面活性剤(E)とを含む防曇塗料組成物。
- 該共重合体(B)が、水酸基を有するモノマーとイオン性官能基を有するモノマーとの共重合体である、請求項1に記載の防曇塗料組成物。
- 該疎水性官能基を有する疎水性モノマーが、環状構造を有する、請求項1または2に記載の防曇塗料組成物。
- 該共重合体(B)の配合量が、該共重合体(A)100重量部に対して、1.0から20.0重量部である、請求項1〜3のいずれかに記載の防曇塗料組成物。
- 該架橋剤(C)が、多官能ブロックイソシアネート化合物であり、該多官能ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基含有量(NCO)と、該共重合体(A)および(B)の水酸基含有量(OH)との比であるNCO/OH比が、0.5から1.5である、請求項1〜4のいずれかに記載の防曇塗料組成物。
- 該硬化触媒(D)が、金属を活性中心とする触媒である、請求項1〜5のいずれかに記載の防曇塗料組成物。
- 該界面活性剤(E)が、アニオン性界面活性剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の防曇塗料組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の防曇塗料組成物を加熱硬化させてなる防曇塗膜。
- 基材と、請求項8に記載の防曇塗膜とを含む、防曇物品。
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JP2017039070A JP2018145243A (ja) | 2017-03-02 | 2017-03-02 | 防曇塗料組成物及びこれを用いた防曇塗膜、防曇物品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2019142606A1 (ja) * | 2018-01-22 | 2019-07-25 | 横浜ゴム株式会社 | 樹脂組成物及び積層体 |
WO2020218365A1 (ja) * | 2019-04-23 | 2020-10-29 | 東亞合成株式会社 | 硬化型組成物 |
JPWO2019131597A1 (ja) * | 2017-12-27 | 2020-12-24 | 株式会社ネオス | アクリル系ブロック共重合体及びそれを含む防曇膜 |
CN115286966A (zh) * | 2022-08-31 | 2022-11-04 | 福耀玻璃工业集团股份有限公司 | 一种防雾涂料、防雾玻璃及制备方法 |
-
2017
- 2017-03-02 JP JP2017039070A patent/JP2018145243A/ja active Pending
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