JP2018140906A - 建設向け立体造形用セメント質材料及び建設向けの立体造形方法 - Google Patents
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Abstract
Description
セメント質材料については、特許文献7〜11に記載のような種々のものが知られているが、前記課題を解決可能なセメント質材料については知られていなかった。
すなわち、本発明は、
(1)セメント、(A)骨材、(B)リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合が、R:M=100:80〜400である分散剤、(C)増粘剤、(D)凝結遅延剤、(E)酸化物換算でSiO2を10〜25質量%含有する非晶質カルシウムアルミノシリケート、(F)セッコウ、及び(G)短繊維、を含有する建設向け立体造形用セメント質材料
(2)セメント100質量部に対して、前記(B)の分散剤が0.2〜3質量部である前記(1)の建設向け立体造形用セメント質材料
(3)セメント100質量部に対して、前記(C)の増粘剤が0.03〜1.0質量部である前記(1)又は(2)の建設向け立体造形用セメント質材料
(4)前記(E)の非晶質カルシウムアルミノシリケート100質量部に対して、前記(F)のセッコウが50〜250質量部である前記(1)〜(3)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料
(5)セメント100質量部に対して、前記(E)の非晶質カルシウムアルミノシリケートと前記(F)のセッコウとの合計が5〜30質量部である前記(1)〜(4)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料
(6)前記(A)の骨材として、バルーン系骨材を含む前記(1)〜(5)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料
(7)前記(C)の増粘剤が、天然多糖類系増粘剤及び/又は2質量%水溶液の粘度が30000mPa・s以上を示すセルロースエーテル系増粘剤である前記(1)〜(6)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料
(8)前記(D)の凝結遅延剤が、オキシカルボン酸類を含有する前記(1)〜(7)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料
(9)前記(G)の短繊維の平均繊維長が5〜15mmである前記(1)〜(8)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料
(10)前記(G)の短繊維の平均繊維径が100〜250μm、1gあたりの繊維本数が5000本以上である前記(9)の建設向け立体造形用セメント質材料
(11)前記(1)〜(10)いずれかの建設向け立体造形用セメント質材料を水で練り混ぜ、得られるウェット材料をポンプで圧送し、ノズルから吐出される前記ウェット材料を、前記ノズルを移動させながら積層することで造形体を構築する建設向けの立体造形方法
(12)前記ポンプが回転容積式一軸偏心ねじポンプである前記(11)の建設向けの立体造形方法
である。
骨材(バルーン系骨材を含む)の最大粒子径は、ポンプ圧送性を考慮すると10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
骨材の使用量は、セメント100質量部に対して50〜300質量部が好ましく、100〜200質量部がより好ましい。使用量が少なすぎると、自立性を確保しにくくなる傾向があり、使用量が多すぎると、適度な軟らかさを確保することが難しくなりポンプ圧送性に支障をきたす可能性がある。
バルーン系骨材を使用する場合、その使用量は、骨材100質量部中25質量部以下が好ましく、1〜25質量部がより好ましく、3〜15質量部がさらに好ましい。使用量が多すぎると、強度発現性が低下したり、適度な軟らかさを確保することが難しくなりポンプ圧送性に支障をきたしたりする可能性がある。一方、使用量が少なすぎると、自立性の向上効果が認められない可能性がある。
分散剤の使用量は、セメント100質量部に対して0.2〜3質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。使用量が少なすぎると、十分な流動性を得ることが難しい可能性があり、使用量が多すぎると、凝結が遅延して流動性の経時変化が小さくなり、自立性が失われる可能性がある。
増粘剤の使用量は、セメント100質量部に対して0.03〜1.0質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。使用量が少なすぎると、十分なチクソトロピック性を付与することが難しい可能性があり、使用量が多すぎると、ポンプ圧送性や強度発現性に支障をきたす可能性がある。
凝結遅延剤の使用量は、セメント100質量部に対して0.05〜0.7質量部が好ましく、0.07〜0.5質量部がより好ましい。使用量が少なすぎると、練混ぜ時間及びポンプ圧送を考慮した可使時間を確保することが難しい可能性があり、使用量が多すぎると、硬化時間が長くなり自立性を確保できない可能性がある。
カルシウムアルミノシリケートは、酸化物換算したCaOとAl2O3のモル比CaO/Al2O3が1.5〜3.5であることが好ましく、1.7〜2.0であることがより好ましい。また、その他の成分として、ナトリウム、カリウム、及びリチウム等のアルカリ金属を一部固溶させてもよい。
カルシウムアルミノシリケートの粒度は、ブレーン値で3000cm2/g以上が好ましい。ブレーン値が小さすぎると、強度発現性が低下する可能性がある。
セッコウの粒度は、ブレーン値で3000cm2/g以上が好ましい。ブレーン値が小さすぎると、強度発現性の向上効果が得られない可能性がある。
前記カルシウムアルミノシリケートに対するセッコウの割合は、前記カルシウムアルミノシリケート100質量部に対して50〜250質量部が好ましく、100〜200質量部がより好ましい。セッコウの割合が少なすぎると、強度の向上効果が得られない可能性があり、セッコウの割合が多すぎると、強度発現性が頭打ちとなる可能性がある。
短繊維の平均繊維長は、予めプレミックスすることを考慮すると、5〜15mmの範囲が好ましい。また短繊維の平均繊維径は、20〜250μmが好ましく、100〜250μmがより好ましい。平均径が小さすぎる繊維は入手することが困難な場合がある。一方、平均繊維径が大きすぎる繊維は、ウェット材料のポンプ圧送性に支障をきたす可能性があり、またポンプ圧送できる場合でも、圧送に伴うウェット材料の温度上昇が大きすぎ、硬化時間が過度に短くなって成形性が悪化する可能性や成形体の強度発現性が低下する可能性がある。短繊維の平均繊維径を20μm以上、特に100μm以上とすることで、セメント質材料に水を加えたウェット材料をポンプ圧送する際に発生する摩擦熱が大きくなり、ノズル先端から吐出されるウェット材料の温度が上昇して硬化時間が適度に短くなることで、連続的により高い積層を実現できる。
短繊維は、モノフィラメント状のものよりも、モノフィラメント同士をバインダーで収束させた収束繊維状のものの方が、繊維を本数として多く混入できるので好ましい。
短繊維1gあたりの本数は、5000本以上が好ましい。1gあたりの本数が少なすぎると、短繊維による補強効果や初期ひび割れ抑制効果が発揮できない可能性がある。短繊維1gあたりの繊維本数は、繊度(dtex):モノフィラメント10000mあたりの重量(g)より下記式で求める。
繊維本数(本/g)=〔1/(繊度/10000(m))〕/平均繊維長(m/本)
短繊維の使用量は、セメントと骨材の合計100質量部に対して0.1〜1.0質量部が好ましく、0.2〜0.5質量部がより好ましい。使用量が少なすぎると、補強効果を発揮できない可能性があり、使用量が多すぎると、ポンプ圧送に支障をきたす可能性がある。
圧送配管は耐圧2〜4MPaのフレキシブルホースや部分的に金属配管を組み合わせても使用することができ、設定する吐出量にもよるが、配管径は内径で20〜50mmが好ましい。圧送配管の距離は、特に限定するものではないが、20m以下が圧送性を考慮すると好ましい。
ノズルの移動速度は、特に限定されず、積層する幅によって変えることができる。ウェット材料の吐出量が一定の場合、スピードを遅くすれば積層幅が大きくなり、スピードを速くすれば積層幅が小さくなる。
<実施例1>
セメント100質量部に対して、骨材150質量部、表1に示す種類及び量の分散剤、増粘剤α0.1質量部、凝結遅延剤ア0.25質量部、及び表1に示すカルシウムアルミノシリケート100質量部に対してセッコウを150質量部配合した混合物を20質量部配合するとともに、短繊維aをセメントと骨材の合計100質量部に対して0.2質量部配合し、立体造形用セメント質材料(以下、セメント質材料ということもある)を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料のミニスランプ(MS、練混ぜ直後と20分後)、硬化時間及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。結果を表1に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント(デンカ社製、ブレーン比表面積3400cm2/g)
骨材:石灰石骨材(デンカ社製、最大粒子径1.2mm、比重2.71)
リグニンスルホン酸系分散剤(R):日本製紙社製、商品名「サンエキスP252」
メラミンスルホン酸系分散剤(M):日本シーカ社製、商品名「シーカメントFF86/100」
増粘剤α:ダイユータンガム(三晶社製、商品名「KELCO−CRETE DG」)
凝結遅延剤ア:クエン酸(試薬1級)
カルシウムアルミノシリケートA:市販特級試薬のSiO2、CaCO3、Al2O3を所定割合になるように混合し、高周波炉を用いて約2000℃で加熱溶融し、水中で急冷し、粉砕して調製したもの(非晶質、SiO2含有量10.7%、CaO/Al2O3モル比1.85、ブレーン比表面積5900cm2/g)
カルシウムアルミノシリケートB:試薬の配合割合を変えた以外はカルシウムシリケートAと同様にして調製したもの(非晶質、SiO2含有量15.2%、CaO/Al2O3モル比1.85、ブレーン比表面積5800cm2/g)
カルシウムアルミノシリケートC:試薬の配合割合を変えた以外はカルシウムシリケートAと同様にして調製したもの(非晶質、SiO2含有量24.4%、CaO/Al2O3モル比1.85、ブレーン比表面積5800cm2/g)
セッコウ:天然無水セッコウ粉砕品(ブレーン比表面積5000cm2/g)
短繊維a:ビニロン繊維(クラレ社製、商品名「REC15」(平均繊維長12mm、平均繊維径50μm、1gあたりの繊維本数55500本))
各試験はいずれも20℃の環境下で実施した。
ブレーン比表面積:JIS R 5201−1997に準じて測定した。
最大粒子径:JIS A 1102に準じて骨材のふるい分けを行い、完全通過しない一番大きなふるい目の寸法を最大粒子径とした。
ミニスランプ(MS):JIS A 1171に準拠した。測定は練り混ぜ直後と20分後に実施した。
MS低減率:練混ぜ直後と20分後のミニスランプから、下記式を用いて算出した。
スランプ低減率(%)=〔ミニスランプ(練混ぜ直後)−ミニスランプ(20分後)〕/〔ミニスランプ(練混ぜ直後)×100〕
硬化時間:練り混ぜが完了してから、ウェット材料2kgをビニール袋に詰め、指で押しても凹まなくなったときを硬化時間とした。指で押すタイミングは5分間隔とした。
圧縮強度:JIS R 5201の4×4×16cmの三連型枠に練り混ぜた材料を充填し、材齢1日、3日、7日で測定した。
一方、メラミンスルホン酸系分散剤のみを配合した場合(実験No.1−2)は、練混ぜ直後の流動性の確保は可能であるが、スランプ低減率が大きいため、ポンプ圧送性に支障をきたすおそれがあり、リグニンスルホン酸系分散剤のみを配合した場合(実験No.1−3)は、ミニスランプが小さく、流動性の確保が難しいと考えられる。さらに、リグニンスルホン酸系分散剤とメラミンスルホン酸系分散剤とを併用した場合でも、メラミンスルホン酸系分散剤の割合が下限値に満たないと(実験No.1−4〜1−6)、所期の流動性を得るために必要な分散剤量が増加するとともに、ミニスランプ(軟らかさ)のスランプ低減率が大きくなり、ポンプ圧送に支障をきたすおそれがある。反対に、メラミンスルホン酸系分散剤の割合が上限値を超えると(実験No.1−7〜1−9)、スランプ低減率が小さくなり、圧送後の自立性を確保できないおそれがある。
セメント100質量部に対して、骨材150質量部、リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合がR/M=100/200の分散剤1.0質量部、増粘剤α0.1質量部、凝結遅延剤ア0.25質量部、及びカルシウムアルミノシリケートBとセッコウとの割合が表2に示す比率である混合物を20質量部配合するとともに、短繊維aをセメントと骨材の合計100質量部に対して0.2質量部配合し、立体造形用セメント質材料を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料について、実施例1と同様の方法で、ミニスランプ(練混ぜ直後と20分後)、硬化時間及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。結果を表2に示す。
セメント100質量部に対して、骨材150質量部、リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合がR/M=100/200の分散剤1.0質量部、増粘剤α0.1質量部、凝結遅延剤ア0.25質量部、及びカルシウムアルミノシリケートB100質量部に対してセッコウ150質量部からなる混合物を表3に示す量配合するとともに、短繊維aをセメントと骨材の合計100質量部に対して0.2質量部配合し、立体造形用セメント質材料を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料について、実施例1と同様の方法で、ミニスランプ(練混ぜ直後と20分後)、硬化時間及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。結果を表3に示す。
セメント100質量部に対して、表4に示す量の骨材とバルーン系骨材、リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合がR/M=100/200の分散剤1.0質量部、増粘剤α0.1質量部、凝結遅延剤ア0.25質量部、並びにカルシウムアルミノシリケートB100質量部に対してセッコウ150質量部からなる混合物20質量部を配合するとともに、短繊維aをセメントと骨材の合計100質量部に対して0.2質量部配合し、立体造形用セメント質材料を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料について、実施例1と同様の方法で、ミニスランプ(練混ぜ直後と20分後)、硬化時間及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。結果を表4に示す。
骨材:石灰石骨材(デンカ社製、最大粒子径1.2mm、比重2.71)
バルーン系骨材:巴工業(株)製、商品名「セノライトSA」(火力発電所で発生したフライアッシュバルーンの粒度調整品、中国産、比重0.88、最大粒子径120μm以下)
セメント100質量部に対して、骨材150質量部、リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合がR/M=100/200の分散剤1.0質量部、表5に示す種類及び量の増粘剤、凝結遅延剤ア0.25質量部、並びにカルシウムアルミノシリケートB100質量部に対してセッコウ150質量部からなる混合物20質量部を配合するとともに、短繊維aをセメントと骨材の合計100質量部に対して0.2質量部配合し、立体造形用セメント質材料を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料について、実施例1と同様の方法で、ミニスランプ(練混ぜ直後と20分後)、硬化時間及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。結果を表5に示す。
増粘剤β:セルロースエーテル系(信越化学工業社製、商品名「hi90SH−30000」(20℃で2質量%水溶液の粘度が30000mP・s))
増粘剤γ:セルロースエーテル系(信越化学工業社製、商品名「hi90SH−100000」(20℃で2質量%水溶液の粘度が100000mP・s))
(試験方法)
粘度:B型粘度計を用いて、10rpmの条件下で測定した。
セメント100質量部に対して、骨材150質量部、リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合がR/M=100/200の分散剤1.0質量部、増粘剤α0.1質量部、表6に示す種類及び量の凝結遅延剤、並びにカルシウムアルミノシリケートB100質量部に対してセッコウ150質量部からなる混合物20質量部を配合するとともに、短繊維aをセメントと骨材の合計100質量部に対して0.2質量部配合し、立体造形用セメント質材料を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料について、実施例1と同様の方法で、ミニスランプ(練混ぜ直後と20分後)、硬化時間及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。結果を表6に示す。
凝結遅延剤イ:グルコン酸(試薬1級)
凝結遅延剤ウ:クエン酸三ナトリウム(試薬1級)
セメント100質量部に対して、骨材150質量部、リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合がR/M=100/200の分散剤1.0質量部、増粘剤α0.1質量部、凝結遅延剤ア0.25質量部、及びカルシウムアルミノシリケートB100質量部に対してセッコウ150質量部からなる混合物20質量部を配合するとともに、セメントと骨材の合計100質量部に対して表7に示す種類及び量の短繊維を配合し、立体造形用セメント質材料を調製した。この調製した材料100質量部に対して水を17質量部加え、パン型ミキサーで練り混ぜた。得られたウェット材料について、実施例1と同様の方法で、ミニスランプ(練混ぜ直後と20分後)、及び圧縮強度を測定するとともに、MS低減率を算出した。また、下記試験方法で初期ひび割れ幅を測定した。結果を表7に示す。
短繊維b:ナイロン繊維(東レ・アムテックス社製、商品名「タフバインダー」(平均繊維長10mm、平均繊維径28μm、1gあたりの繊維本数185200本))
短繊維c:ナイロン繊維(東レ・アムテックス社製、商品名「タフバインダー」(平均繊維長5mm、平均繊維径28μm、1gあたりの繊維本数370500本))
短繊維d:ビニロン繊維(クラレ社製、商品名「RECS100L」(平均繊維長12mm、平均繊維径130μm、1gあたりの繊維本数8300本))
初期ひび割れ幅:コンクリート製平版(縦30cm×横30cm×厚さ6cm)に型枠を設置し、厚み2cmとなるように本発明のウェット材料を打設し、表面をコテで仕上げて試験体とした。その試験体を湿度60%、温度5℃の環境下で養生し、72時間経過後のひび割れ幅を測定した。ここでのひび割れ幅とは、試験体に発生した任意のひび割れを1つ選んだときの、その長さの中心付近の幅をいう。72時間経過してもひび割れを発生しない場合は0.0mmとした。
実験No.1−22の配合で実際に立体造形実験を実施した。環境温度は22℃であった。使用したシステム及び条件を以下に示す。また、実験システムの模式図を図1に、使用したノズルの模式図を図2に、それぞれ示す。ミキサーに実験No.1−22の立体造形用セメント質材料を30kg、水を5.1kg加えて3分間練り混ぜてウェット材料を調製した。得られたウェット材料をホッパー付きの回転容積式一軸偏心ねじポンプに投入し、フレキシブルホースを介してウェット材料を圧送し、ノズル先端より吐出することで立体造形体の造形を行った。その結果、立体造形用セメント質材料からなる層を順次積み重ねることでき、連続積層高さが30cm以上である立体造形体が得られた。即ち、連続積層高さ30cm以上の連続積層が可能であった(図3参照)。
ミキサー:パン型ミキサー(岡三機工社製、商品名「ダマカットミキサー2.8型」)
圧送ポンプ:回転容積式一軸偏心ねじポンプ(PFT社製、商品名「PFT BOLERO」)
圧送ホース:4MPa耐圧フレキシブルホース(PFT社製、内径1インチ、圧送配管の距離は10m)
ノズル:自作品(図2参照)、ノズル吐出口径12mm(円形)
ロボットアーム:安川電機社製のロボットアーム(商品名「MOTOMAN−MA2010」)を改造しアーム先端にノズルを固定して使用
立体造形体の形状:中空円筒形(内径29cm、1層あたりのセメント質材料の高さ1〜2cm、積層幅(肉厚)20mm程度)
ウェット材料の吐出量:0.25m3/hr
ノズル移動速度:150mm/分
ノズル垂直移動距離:15mm
実験No.1−22、No.7−17及びNo.7−18の配合で、実施例8と同じシステム及び条件で、立体造形実験を実施した。環境温度は24℃であった。そのときの、ミキサーで練り混ぜた直後のウェット材料の温度、回転容積式一軸偏心ねじポンプで圧送されノズル先端から吐出されたウェット材料の温度、硬化時間及び連続積層高さ測定した。その結果を表8に示す。
材料の温度:デジタル温度計で測定
硬化時間:ノズル先端より吐出した材料をサンプリングし実施例1と同様の方法で測定
連続積層高さ:造形体が崩れるまで積層したときの高さをメジャーで計測
Claims (12)
- セメント、(A)骨材、(B)リグニンスルホン酸系分散剤(R)とメラミンスルホン酸系分散剤(M)との質量割合が、R:M=100:80〜400である分散剤、(C)増粘剤、(D)凝結遅延剤、(E)酸化物換算でSiO2を10〜25質量%含有する非晶質カルシウムアルミノシリケート、(F)セッコウ、及び(G)短繊維、を含有する建設向け立体造形用セメント質材料。
- セメント100質量部に対して、前記(B)の分散剤が0.2〜3質量部である請求項1記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- セメント100質量部に対して、前記(C)の増粘剤が0.03〜1.0質量部である請求項1又は2記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 前記(E)の非晶質カルシウムアルミノシリケート100質量部に対して、前記(F)のセッコウが50〜250質量部である請求項1〜3のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- セメント100質量部に対して、前記(E)の非晶質カルシウムアルミノシリケートと前記(F)のセッコウとの合計が5〜30質量部である請求項1〜4のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 前記(A)の骨材として、バルーン系骨材を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 前記(C)の増粘剤が、天然多糖類系増粘剤及び/又は2質量%水溶液の粘度が30000mPa・s以上を示すセルロースエーテル系増粘剤である請求項1〜6のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 前記(D)の凝結遅延剤が、オキシカルボン酸類を含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 前記(G)の短繊維の平均繊維長が5〜15mmである請求項1〜8のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 前記(G)の短繊維の平均繊維径が100〜250μm、1gあたりの繊維本数が5000本以上である請求項9記載の建設向け立体造形用セメント質材料。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の建設向け立体造形用セメント質材料を水で練り混ぜ、得られるウェット材料をポンプで圧送し、ノズルから吐出される前記ウェット材料を、前記ノズルを移動させながら積層することで造形体を構築する建設向けの立体造形方法。
- 前記ポンプが回転容積式一軸偏心ねじポンプである請求項11記載の建設向けの立体造形方法。
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