JP2020090004A - 押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法、造形物の製造方法、および押出し方式付加製造装置用水硬性組成物 - Google Patents
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Description
以上のように、繊細かつ多様なデザインをセメント質硬化体に付与できる、造形性に優れた水硬性組成物は、現在のところ見あたらない。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する押出し方式付加製造装置用水硬性組成物(以下「水硬性組成物」と略す場合もある。)の選択方法等である。
[2]前記F0/Dが75以下、および、前記F15/Dが80〜110である、前記[1]に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[3]混練時の注水から30分経過した時点の前記F0/Dが75以下、および、混練時の注水から30分経過した時点の前記F15/Dが80〜110である、前記[1]または[2]に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[4]混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点における前記F0/Dが75以下、および、混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点におけるF15/Dが80〜110である、前記[1]または[2]に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[5]さらに、硬度補正値(Ha)を選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、前記[1]〜[4]のいずれかに押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[6]前記Haが0.15以上である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
[7]内径が4〜25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の選択基準を満たす押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を用いて造形物を製造する、造形物の製造方法。
[8]少なくとも、セメント、および水を含み、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F0/D)が75以下、および、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)が80〜110である、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物。
[9]少なくとも、セメント、および水を含み、混練時の注水から30分、および60分の時点における前記F0/Dが75以下、並びに、混練時の注水から30分、および60分の時点におけるF15/Dが80〜110である、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物。
また、本発明の造形物の製造方法は、内径が4〜25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の選択基準を満たす水硬性組成物を用いて造形物を製造する方法である。
さらに、本発明の水硬性組成物は、少なくとも、セメント、および水を含み、前記F0/Dが75以下、および、前記F15/Dが80〜110である水硬性組成物である。
以下、本発明を、水硬性組成物の選択方法、造形物の製造方法、および水硬性組成物に分けて、詳細に説明する。
前記水硬性組成物のF0/Dは、好ましくは75以下である。F0/Dが75を超えると、流動性が高くなり過ぎて、ノズルから水硬性組成物を押し出すための圧力をかけなくても、水硬性組成物の自重でダレが生じる場合がある。自重はダレ性に影響するため、F0を水硬性組成物の密度で割ったF0/Dは、水硬性組成物のダレ性を評価するための指標である。なお、F0/Dは、より好ましくは65以下である。
また、水硬性組成物のF15/Dは、好ましくは80〜110である。F15/Dが80未満では水硬性組成物が硬くて押出せない場合があり、110を超えると水硬性組成物は柔らかくて、潰れたり倒れたりして積層できない場合がある。F15/Dは水硬性組成物の押出し性を評価するための指標である。水硬性組成物の上にさらに水硬性組成物を積層して、押しつぶされる状態を模擬できる15打の打撃を行なったフロー値は、水硬性組成物の押出し性をより正確に示す。なお、F15/Dは、より好ましくは、85〜100である。
また、水硬性組成物のHaは、好ましくは0.15以上である。Haが0.15未満では、水硬性組成物の積層ができない場合がある。Haは水硬性組成物の積層性を評価するための指標である。
前記選択基準は、押出し方式付加製造装置のノズルの内径が4〜25mmの場合に適している。ノズルの内径が4ミリメートル未満では、水硬性組成物が砂を含む場合、ノズルが閉塞して押し出し速度が不安定になり、造形物の表面が平滑にならない場合があり、25mmを超えると、前記選択基準の信頼性が低下する。なお、ノズルの内径は、好ましくは5〜20mmである。
フローの測定方法は、JIS R 5201に準拠して、F0の場合は15回の落下運動を省略して水硬性組成物のフローを測定し、F15の場合は15回の落下運動を行なって水硬性組成物のフローを測定する。
本発明の造形物の製造方法は、内径が4〜25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の選択基準を満たす押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を用いて造形物を製造する方法である。
本発明の水硬性組成物は、少なくとも、セメント、および水を含み、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F0/D)が75以下、および、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)が80〜110である。F0/DおよびF15/Dが該範囲にあれば、水硬性組成物の流動性が高く、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を、容易に製造できる。なお、好ましくは、F0/Dは65以下であり、F15/Dは85〜105である。
また、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の本発明の水硬性組成物の硬度補正値(Ha)は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上である。
ここで、水硬性組成物の混練および装置への充填、装置内の通過時間等に、少なくとも10分程度要することを勘案すると、前記押し出し時点とは、混練時の注水から10分以上であり、セメントを含む水硬性組成物の流動性は経時変化することも勘案すると、前記押し出し時点の上限は、混練時の注水から60〜90分の範囲である。この押し出し時点を、F0/DおよびF15/Dの測定時を用いて言い換えるならば、F0/DおよびF15/Dの測定時は、好ましくは10〜90分、より好ましくは20〜75分、さらに好ましくは30〜60分の範囲内になる。したがって、前記[3]、[4]、および[9]では、「押出し方式付加製造装置で押し出される時点」に代えて、具体的に、「混練時の注水から30分経過した時点」、および、「混練時の注水から60分経過した時点」と規定した。
そして、該水硬性組成物は、少なくとも、セメント、および水を必須成分として含み、さらに砂を任意成分として含む。該セメントは、白色ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、シリカフューム含有セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミセメント、およびエコセメント等やそれらの構成物である珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、アルミノケイ酸塩、およびサルフォカルシウムアルミネート等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、水硬性組成物のフローや、凝結時間、および保形性を調整したり、フローの経時変化を抑制するため、水硬性組成物の任意成分である混和材は、非晶質アルミノケイ酸塩、石膏、水酸化カルシウム、硫酸アルカリ金属塩、および尿素から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、前記砂は、石灰石砂、珪砂、および人工砂から選ばれる1種以上である。砂の粒度は、フローの評価の信頼性、造形物の表面の平滑性、および押出し方式付加製造装置のノズル径を考慮すると、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは0.6mm以下である。
また、前記水は、上水道水等が挙げられる。
さらに、水硬性組成物のフローを調整したり、フローの経時変化を抑制するため、減水剤、消泡剤、増粘剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、および粉末セルロース等の混和剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造するためは、(i)押出し方式付加製造装置の押出し圧力は、好ましくは50kPa以上であり、水硬性組成物を押し出すためのカートリッジやシリンダーを備えた装置が好ましく、(ii)水硬性組成物を押し出す速度は、ノズルの内径にもよるが、好ましくは3〜18mm/秒であり、また、(iii)ノズルの移動速度は、ノズルの内径にもよるが、好ましくは6〜12mm/秒である。
1.水硬性粉体A
(1−1)セメント含有結合材
(i)セメント
白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(ii)カルシウムアルミネート類
アルミナセメント(ケルネオス社製)
(iii)非晶質アルミノケイ酸塩
メタカオリン(カオリンの焼成物)、商品名 MetaMax HRM、BET比表面積は10m2/gである。(BASFジャパン社製)
(iv)石膏
II型無水石膏、ブレーン比表面積は6000cm2/gである。(旭硝子社製)
(v)水酸化カルシウム
BET比表面積は約13m2/gである。(重安石灰社製)
(vi)硫酸アルカリ金属塩
芒硝、ブレーン比表面積は約800cm2/gである。(東ソー社製)
(1−2)混和剤
(i)減水剤
メルメント[登録商標]、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を有効成分とする粉末減水剤である。(BASFジャパン社製)
(ii)増粘剤
商品名 Esacol210H、増粘多糖類(BASFジャパン社製)
(iii)粉末セルロース
商品名 Arbocel PWC500、セルロース微粉末(レッテンマイヤー社製)
(iv)消泡剤
商品名 アデカネートB317F[登録商標]、ポリエーテル系消泡剤(ADEKA社製)
(v)硬化遅延剤
商品名 マスターポゾリスNo.89[登録商標]、変成リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物の複合体である。(BASFジャパン社製)
(1−3)細骨材
石灰石砂、最大粒径は0.6mmである。
(2−1)セメント含有結合材
(i)セメント
白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(ii)カルシウムアルミネート類A
アルミナセメント(ケルネオス社製)
(iii)カルシウムアルミネート類B
カルシウムサルフォアルミネート、試作品(石膏、 生石灰及びアルミナ粉末を、焼成後にカルシウムサルフォアルミネートが得られるような配合で混合し、次いで、得られた混合物をロータリーキルンで1330℃の焼成温度で焼成した後、該焼成物をブレーン比表面積が3,900cm2/gになるように粉砕したもの)
(iv)無水石膏(旭硝子社製)
(v)尿素
1級試薬、純度は98質量%以上である。(林純薬工業社製)
(2−2)混和剤
(i)減水剤
粉末状のポリカルボン酸系減水剤、商品名 NF−200(太平洋マテリアル社製)
(ii)凝結促進剤
硫酸ナトリウム、1級試薬
(iii)凝結遅延剤
クエン酸、1級試薬
(1−3)細骨材
石灰石砂、最大粒径は0.3mmである。
(3−1)セメント含有結合材
(i)セメント
早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(ii)カルシウムアルミネート類
高アルミナセメント(ケルネオス社製)
(iii)シリカフューム
(3−2)混和剤
(i)減水剤
メルメント[登録商標]、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を有効成分とする減水剤である。(BASFジャパン社製)
(ii)凝結遅延剤
クエン酸、1級試薬
(vi)硫酸アルカリ金属塩
硫酸カリウム、1級試薬
(iii)ポリプロピレン繊維
長さは3〜6mm、直径は20μmである。
(iv)ポリプロピレン繊維
長さは1mm未満、直径は20μmである。
(3−3)細骨材
石灰石砂、最大粒径は0.1mmである。
表4に示す配合と水量に従い、容量が5リットルのホバートミキサと、1バッチあたり結合材および細骨材の合計2kgを用いて、回転速度が140rpmで3分間混練して水硬性組成物を調製した。なお、混和剤は水(水道水)に添加して用いた。
次に、該水硬性組成物を用いて、20℃、相対湿度80%の室内で、JIS R5201に準拠して、混練時の注水から30分、および60分経過した時点で、15打フロー、およびゼロ打フロー(15回の落下運動を行なわないで測定したフロー)を測定した。ゼロ打フローと15打フローの測定結果を表5に示し、ゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比を図1に示し、15打フロー/水硬性組成物の密度の比を図2に示す。
混練時の注水から30分、および60分経過した時点で、ゴム硬度計(商品名:高分子計器社製のアスカーゴム硬度計 F型)を用いて前記水硬性組成物の硬度を測定した。
測定は、内径90mm×高さ25mmの容器にすり切りで投入後、厚さが11μmのポリ塩化ビニリデン製フィルム(サランラップ[登録商標]、AsahiKASEI社製)を空気が入らないように被せた上に、ゴム硬度計を静かに載置して硬度を測定した。次に、容器の側面の拘束により硬度が高い値になるため、水硬性組成物のゼロ打フローが100mmを超える場合は、硬度に補正係数(=100/ゼロ打フロー)を掛けて硬度の補正を行なった。硬度の測定結果を表5に示す。
前記水硬性組成物を、内径が7mmのノズルを装着したシリンジ(カートリッジ)に入れて、ノズル移動速度が6.3mm/秒、押出し速度が6.3mm/秒で、水硬性組成物層を3.5mmのピッチで高さ8cmまで積層して造形した。造形は、混練時の注水から30分および60分経過した時点に対応させて、それぞれ、混練時の注水から25〜35分および55〜65分に行った。混練時の注水から25〜35分に製造した造形物の写真を図4に示す。なお、図4の試験例6は、一部にダレが生じていた。
Claims (9)
- 水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F0/D)、および、水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)を選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
- 前記F0/Dが75以下、および、前記F15/Dが80〜110である、請求項1に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
- 混練時の注水から30分経過した時点の前記F0/Dが75以下、および、混練時の注水から30分経過した時点の前記F15/Dが80〜110である、請求項1または2に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
- 混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点における前記F0/Dが75以下、および、混練時の注水から30分を超え、60分以内の時点におけるF15/Dが80〜110である、請求項1または2に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
- さらに、硬度補正値(Ha)を選択基準として、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を選択する、請求項1〜4のいずれか1項に押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
- 前記Haが0.15以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の押出し方式付加製造装置用水硬性組成物の選択方法。
- 内径が4〜25mmの押出しノズルを備えた押出し方式付加製造装置と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の選択基準を満たす押出し方式付加製造装置用水硬性組成物を用いて造形物を製造する、造形物の製造方法。
- 少なくとも、セメント、および水を含み、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物のゼロ打フロー/水硬性組成物の密度の比(F0/D)が75以下、および、押出し方式付加製造装置で押し出される時点の水硬性組成物の15打フロー/水硬性組成物の密度の比(F15/D)が80〜110である、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物。
- 少なくとも、セメント、および水を含み、混練時の注水から30分、および60分の時点における前記F0/Dが75以下、並びに、混練時の注水から30分、および60分の時点におけるF15/Dが80〜110である、押出し方式付加製造装置用水硬性組成物。
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