JP2018139183A - 固体電解質部材、固体酸化物型燃料電池、水電解装置、水素ポンプ及び固体電解質部材の製造方法 - Google Patents
固体電解質部材、固体酸化物型燃料電池、水電解装置、水素ポンプ及び固体電解質部材の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
燃料電池は基本部分に、燃料極(アノード)/固体酸化物電解質/空気極(カソード)から構成される膜電極アセンブリもしくは膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を備えている。さらに、燃料電池は、MEAの燃料極に接する燃料極集電体とその燃料極に水素等の燃料気体を供給する燃料極流路とを備え、燃料極に対をなす空気極側にも同様に、空気極に接する空気極集電体と、その空気極に空気を供給する空気流路とを備える。
例えば、特開2001−307546号公報(特許文献1)には、燃料電池用のイオン伝導体として、式:BaZr1−x−yCexMyO3−p(Mは3価の置換元素、xおよびyはそれぞれ0よりも大きく1未満の数値、x+yは1未満、pは0よりも大きく1.5未満の数値)で表されるペロブスカイト型酸化物を用いることが記載されている。
また、特開2007−197315号公報(特許文献2)には、燃料電池に用いられる混合イオン伝導体として、式:BadZr1−x−yCexM3 yO3−t(M3は3価の希土類元素、Bi、Ga、Sn、SbおよびInから選ばれる少なくとも1種の元素、dは0.98以上1以下、xは0.01以上0.5以下、yは0.01以上0.3以下、tは(2+y−2d)/2以上1.5未満)で表されるペロブスカイト型酸化物からなることを特徴とする混合イオン伝導体が記載されている。
アノード層42と電解質層41にかかる応力の方向の違いは、アノード層42と電解質層41の熱膨張係数の違いによるものであり、アノード層42と電解質層41の熱膨張係数の差が大きいほど共焼結時に割れやヒビが発生してしまうことが見出された。
電解質層とアノード層とが積層された構造を有するプロトン伝導性の固体電解質部材であって、
前記電解質層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含む層であり、
前記アノード層はNiO及び前記金属酸化物を含む層であり、かつ、前記アノード層の前記電解質層とは反対側の表面から厚み方向に5μmまでの領域AにおけるNiOの含有率が、前記アノード層の厚み方向の中央部から厚み方向の両端部に向かって70%までの領域BにおけるNiOの含有率よりも低く、
前記金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物又は下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体である、
固体電解質部材、である。
AaBbMcO3−δ 式[1]
(式中、Aはバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Bはセリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Mはイットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、aは0.85≦a≦1を満たす数、bは0.50≦b<1を満たす数、cはc=1−bを満たす数、δは酸素欠損量である。)
前記本発明の一態様に係る固体電解質部材、を製造する方法であって、
第1のアノード層材料を成形し、仮焼結して第1のアノード層を形成する第1アノード層形成工程と、
前記第1のアノード層の表面の片側に第2のアノード層材料を塗布して乾燥させる第2アノード層塗布工程と、
前記第1のアノード層の、前記第2のアノード層材料が塗布された面とは反対側の表面に電解質層材料を塗布して乾燥させる電解質層塗布工程と、
前記第2のアノード層材料と前記電解質層材料とが塗布された前記第1のアノード層を焼結してアノード層と電解質層が積層された固体電解質部材を形成する焼結工程と、
を有し、
前記電解質層材料は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含み、
前記第1のアノード層材料は、NiO及び前記金属酸化物を含み、
前記第2のアノード層材料は、NiO及び前記金属酸化物を含み、
前記第2のアノード層材料におけるNiOの含有率は、前記第1のアノード層材料におけるNiOの含有率よりも低く、
前記金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物又は下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体である、
固体電解質部材の製造方法、である。
AaBbMcO3−δ 式[1]
(式中、Aはバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Bはセリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Mはイットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、aは0.85≦a≦1を満たす数、bは0.50≦b<1を満たす数、cはc=1−bを満たす数、δは酸素欠損量である。)
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る固体電解質部材は、
電解質層とアノード層とが積層された構造を有するプロトン伝導性の固体電解質部材であって、
前記電解質層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含む層であり、
前記アノード層はNiO及び前記金属酸化物を含む層であり、かつ、前記アノード層の前記電解質層とは反対側の表面から厚み方向に5μmまでの領域AにおけるNiOの含有率が、前記アノード層の厚み方向の中央部から厚み方向の両端部に向かって70%までの領域BにおけるNiOの含有率よりも低く、
前記金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物又は下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体である、
固体電解質部材、である。
AaBbMcO3−δ 式[1]
(式中、Aはバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Bはセリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Mはイットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、aは0.85≦a≦1を満たす数、bは0.50≦b<1を満たす数、cはc=1−bを満たす数、δは酸素欠損量である。)
上記(1)に記載の発明の態様によれば、700℃程度以下の温度域でも高いプロトン伝導性を示し、かつ大型の固体電解質部材を提供することができる。
前記アノード層が、前記電解質層とは反対側の表面から厚み方向に、NiOの含有率に勾配があり、前記表面から深い方が前記NiOの含有率が高いことが好ましい。
上記(2)に記載の発明の態様によれば、アノード層の最表面に近い部分程NiOの含有率が低いため、固体電解質部材を製造する際に発生する熱歪をより緩和することができる。
前記金属酸化物が、BadZreY1−eO3−δ1(但し、dは0.85≦d≦1を満たす数、eは0.50≦e<1を満たす数、δ1は酸素欠損量である)であることが好ましい。
上記(3)に記載の発明の態様によれば、プロトン伝導性がより高い固体電解質部材を提供することができる。
前記電解質層の、前記アノード層が積層された面とは反対側の表面にカソード層が積層されていることが好ましい。
上記(4)に記載の発明の態様によれば、固体酸化物型燃料電池、水電解装置及び水素ポンプ等に利用可能な固体電解質部材を提供することができる。
上記(4)に記載の固体電解質部材を用いた固体酸化物型燃料電池である。
上記(5)に記載の発明の態様によれば、大型で、発電効率が高い固体酸化物型燃料電池を提供することができる。
上記(4)に記載の固体電解質部材を用いた水電解装置である。
上記(6)に記載の発明の態様によれば、大型で、水素と酸素の生成効率が高い水電解装置を提供することができる。
上記(4)に記載の固体電解質部材を用いた水素ポンプである。
上記(7)に記載の発明の態様によれば、大型で、大量の水素イオンを移動させることが可能な水素ポンプを提供することができる。
上記(1)に記載の固体電解質部材、を製造する方法であって、
第1のアノード層材料を成形し、仮焼結して第1のアノード層を形成する第1アノード層形成工程と、
前記第1のアノード層の表面の片側に第2のアノード層材料を塗布して乾燥させる第2アノード層塗布工程と、
前記第1のアノード層の、前記第2のアノード層材料が塗布された面とは反対側の表面に電解質層材料を塗布して乾燥させる電解質層塗布工程と、
前記第2のアノード層材料と前記電解質層材料とが塗布された前記第1のアノード層を焼結してアノード層と電解質層が積層された固体電解質部材を形成する焼結工程と、
を有し、
前記電解質層材料は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含み、
前記第1のアノード層材料は、NiO及び前記金属酸化物を含み、
前記第2のアノード層材料は、NiO及び前記金属酸化物を含み、
前記第2のアノード層材料におけるNiOの含有率は、前記第1のアノード層材料におけるNiOの含有率よりも低く、
前記金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物又は下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体である、
固体電解質部材の製造方法、である。
AaBbMcO3−δ 式[1]
(式中、Aはバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Bはセリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Mはイットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、aは0.85≦a≦1を満たす数、bは0.50≦b<1を満たす数、cはc=1−bを満たす数、δは酸素欠損量である。)
上記(8)に記載の発明の態様によれば、上記(1)に記載の固体電解質部材を製造することが可能な固体電解質部材の製造方法を提供することができる。
本発明の実施態様に係る固体電解質部材等の具体例を、以下に、より詳細に説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1に本発明の実施形態に係る固体電解質部材の一例の概略図を示す。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る固体電解質部材は、電解質層11とアノード層12とが積層された構造を有するプロトン伝導性の固体電解質部材である。
以下に各構成について詳述する。
電解質層11はペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含む層である。
ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物や、下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体であればよい。
AaBbMcO3−δ 式[1]
上記式[1]において、Aは、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。
上記式[1]において、Bは、セリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。
上記式[1]において、Mは、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。特に、Mがイットリウム(Y)である場合には、固体電解質部材のプロトン伝導性がより高くなる。
上記式[1]において、bは0.50≦b<1を満たす数であればよく、0.70≦b≦0.95を満たす数であることがより好ましく、0.75≦b≦0.90を満たす数であることが更に好ましい。bが0.50以上であることによりプロトン伝導を阻害する相の析出を抑制することができる。また、bが1未満であることにより、固体電解質部材の伝導性がより高くなる。
上記式[1]において、cはc=1−bを満たす数である。
上記式[1]において、δは酸素欠損量であり、a、bの数値及び雰囲気に応じて決まる。
前記金属酸化物は、上記式[1]で表される化合物のなかでも、BadZreY1−eO3−δ1(但し、dは0.85≦d≦1を満たす数、eは0.50≦e<1を満たす数、δ1は酸素欠損量である)であることがより好ましい。
アノード層12はNiOと前記式[1]で表される金属酸化物を含む層であればよい。
アノード層12は、領域Aと領域Bとを有し、前記領域AにおけるNiOの含有率は前記領域BにおけるNiOの含有率よりも低くなっている。領域Aとは、アノード層12の電解質層11が形成されている面とは反対側の表面から厚み方向に5μmまでの領域をいう。また、領域Bとは、アノード層12の厚み方向の中央部から厚み方向の両端部に向かって70%までの領域をいう。
領域AにおけるNiOの含有率が領域BにおけるNiOの含有率よりも低いことにより、本発明の実施形態に係る固体電解質部材を製造する際に熱歪を緩和することができ、大型の固体電解質部材を製造しても割れやヒビが発生しないようにすることができる。
領域BにおけるNiOと金属酸化物との比率は、強度を確保する観点からは、質量比で5:5〜8:2程度であることが好ましく、電解質との熱歪を緩和する観点からは、質量比で2:8〜5:5程度であることが好ましく、NiOと金属酸化物の反応性低減の観点からは、質量比で5:5であることが好ましい。総合的に判断すると、質量比で6:4〜7:3程度であることが好ましい。
領域AにおけるNiOと金属酸化物との比率は、領域BにおけるNiOの含有率よりも領域AにおけるNiOの含有率が低くなっていればよく、質量比で0.1:9.9〜6:4程度であることが好ましく、0.5:9.5〜5:5程度であることがより好ましく、0.1:0.9〜4:6程度であることが更に好ましい。
アノード層12は、電解質層11とは反対側の表面から厚み方向に、NiOの含有率に勾配があり、前記表面から深い方がNiOの含有率が高いことが好ましい。アノード層12の最表面に近い部分程NiOの含有率が低くなっていることにより、固体電解質部材を製造する際に発生する熱歪をより緩和することができる。
アノード層12の厚みは例えば、200μ以上、1000μm以下程度とすればよい。アノード層12の厚みを200μm以上とすることにより強度を高くすることができる。また、アノード層12の厚みを1000μm以下とすることにより、NiOを還元しやすくすることができ、また、抵抗を低くすることができる。これらの観点から、アノード層12の厚みは、250μm以上、800μm以下であることがより好ましく、300μm以上、700μm以下であることが更に好ましい。
本発明の実施形態に係る固体電解質部材がカソード層を有する場合には、電解質層11の、アノード層12が積層された面とは反対側の表面にカソード層が積層されていればよい。
カソード層は、下記式[A]から下記式[D]のいずれかで表される金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
(La1−x,Srx)(Co1−y,Mny)O3 式[A]
(La1−x,Srx)(Co1−y,Fey)O3 式[B]
(Ba1−x,Lax)(Co1−y,Fey)O3 式[C]
(Ba1−x,Srx)(Co1−y,Mny)O3 式[D]
式[A]から式[D]において、xは0≦x≦1を満たす数であり、yは0≦y≦1を満たす数である。
カソード層は三相界面を確保することができ、ガスの抜け道があるように構成されていればよい。
カソード層の厚みは、例えば、0.01μm以上、100μm程度であればよい。集電性を高くするという観点からは、カソード層の厚みは、0.05μm以上、50μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上、20μm以下であることが更に好ましい。
本発明の一実施形態に係る固体酸化物型燃料電池は、前述の本発明の一実施形態に係る固体電解質部材を用いるものであり、その他の構成は従来の固体酸化物型燃料電池の構成と同様にすればよい。前述のように本発明の実施形態に係る固体電解質部材は従来の固体電解質部材に比べて大型化することが可能である。このため、大型の本発明の実施形態に係る固体電解質部材を用いることで、発電効率が高い固体酸化物型燃料電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る水電解装置は、前述の本発明の一実施形態に係る固体電解質部材を用いるものであり、その他の構成は従来の、水に電圧をかけて水素と酸素に電気分解する水電解装置の構成と同様にすればよい。大型の本発明の実施形態に係る固体電解質部材を用いることで、水素と酸素の生成効率が高い水電解装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る水素ポンプは、前述の本発明の一実施形態に係る固体電解質部材を用いるものであり、その他の構成は従来の、固体電解質に電圧をかけて水素イオンを一方から他方へと移動させる水素ポンプの構成と同様にすればよい。大型の本発明の実施形態に係る固体電解質部材を用いることで、大量の水素イオンを移動させることが可能な水素ポンプを提供することができる。
本発明の実施形態に係る固体電解質部材の製造方法は、第1アノード層形成工程と、第2アノード層塗布工程と、電解質層塗布工程と、焼結工程と、を有する。以下に各工程を詳述する。
(第1アノード層形成工程)
第1アノード層形成工程は、第1のアノード層材料を混合してから成形し、その後に仮焼結する工程である。
第1のアノード層材料は、NiOとペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物とを含むものであればよい。ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物としては、上記の、本発明の実施形態に係る固体電解質部材において説明した前記式[1]で表される金属酸化物と同じものを用いればよい。第1のアノード層材料においてNiOと金属酸化物との混合比は、強度を確保する観点からは、質量比で5:5〜8:2程度とすることが好ましく、電解質との熱歪を緩和する観点からは、質量比で2:8〜5:5程度とすることが好ましく、NiOと金属酸化物の反応性低減の観点からは、質量比で5:5とすることが好ましい。総合的に判断すると、質量比で6:4〜7:3程度とすることがより好ましい。
第1のアノード層材料を成形する方法は特に限定されず、例えば、一軸成形やグリーンシート等により行なえばよい。成形する形状も特に限定されず、直径が100mm程度の円形のものや、一辺の長さが100mm程度の矩形ものなど、所望の形状とすればよい。
また、第1のアノード層材料は、強度を確保しつつ、NiOを還元しやすくし、抵抗を小さくするという観点から、厚みが195μm以上、995μm以下程度となるように成形することが好ましく、245μm以上、795μm以下とすることがより好ましく、255μm以上、695μm以下とすることが更に好ましい。
仮焼結する温度は800℃以上、1400℃以下程度とすればよく、より好ましくは900℃以上、1300℃以下程度、更に好ましく1000℃以上、1200℃以下程度である。
また、仮焼結する雰囲気は、大気、酸素雰囲気等であればよい。
第2アノード層塗布工程は、上記の第1アノード層形成工程によって得られた第1のアノード層(仮焼結体)の表面の片側に第2のアノード層材料を塗布して乾燥させる工程である。
第2のアノード層材料は、NiOとペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物とを含むものであればよい。ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物としては、上記の、本発明の実施形態に係る固体電解質部材において説明した前記式[1]で表される金属酸化物と同じものを用いればよい。第2のアノード層材料においてNiOと金属酸化物との混合比は、NiOの含有率が第1のアノード層材料におけるNiOの含有率よりも低くなるようにすればよく、質量比で0.1:9.9〜6:4程度であることが好ましく、0.5:9.5〜5:5程度であることがより好ましく、0.1:0.9〜4:6程度であることが更に好ましい。
また、第2のアノード層材料は、焼結後の冷却時において固体電解質部材の熱歪を緩和するという観点から、厚みが1μm以上、50μm以下となるように塗布することが好ましく、2μm以上、30μm以下とすることがより好ましく、5μm以上、20μm以下とすることが更に好ましい。なお、第2のアノード層材料はNiOの含有率が低いことから電気伝導性が比較的低いため、なるべく薄く塗布する方が好ましい。
第2のアノード層材料を塗布する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷やスパッタリング等によって行なえばよい。
電解質層塗布工程は、第1のアノード層の、第2のアノード層材料が塗布された面とは反対側の表面に電解質層材料を塗布して乾燥させる工程である。
電解質層材料は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含むものであればよい。ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物としては、上記の、本発明の実施形態に係る固体電解質部材において説明した前記式[1]で表される金属酸化物と同じものを用いることができる。
電解質層材料の塗布方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷やグリーンシート等によって行なえばよい。
電解質層材料は、ガスリークが生じないようにし、かつ、抵抗を小さくするという観点から、厚みが3μm以上、60μm以下となるように塗布することが好ましく、5μm以上、50μm以下とすることがより好ましい。
焼結工程は、第1のアノード層の表面に第2のアノード層と電解質層が塗布された積層体を焼結して、アノード層と電解質層とが積層された固体電解質部材を形成する工程である。
従来の固体電解質部材の製造方法では、前述の図4に示すように、加熱後の冷える過程においてアノード層42の縮み幅が電解質層41の縮み幅に比べて大きいため、大型の固体電解質部材を製造しようとするとするほど、アノード層42と電解質層41との間の熱歪が大きくなり、割れやヒビが発生してしまっていた。
本発明の実施形態に係る固体電解質部材の製造方法では、第1のアノード層が第2のアノード層材料と電解質層材料とに挟まれた状態で焼結を行なう。第2のアノード層材料は電解質層材料と同様に、冷える過程での縮み幅が第1のアノード層の縮み幅よりも小さいものである。このため図2に示すように、第1のアノード層22は、電解質層材料21が積層された面と反対側の面においても第2のアノード層材料23によって引張応力を受けるようになる。これによって固体電解質部材の熱歪が緩和されて割れやヒビが発生しないようにすることができる。
なお、焼結工程後には、第1のアノード層22と第2のアノード層材料23は一体となってアノード層を構成するようになり、アノード層と電解質層とが積層された構造の固体電解質部材が得られる。
焼結する温度は1100℃以上、1600℃以下程度とすればよく、より好ましくは1200℃以上、1550℃以下程度、更に好ましくは1250℃以上、1500℃以下程度である。
また、焼結する雰囲気は、大気、酸素雰囲気等であればよい。
上記のようにして得られる固体電解質部材にカソード層を形成する場合には、電解質層のアノード層が形成された面とは反対側の表面にカソード層材料を塗布して焼結すればよい。
カソード層材料は、上記の、本発明の実施形態に係る固体電解質部材において説明したカソード層に含まれる金属酸化物(前記式[A]から前記式[D]のいずれかで表される金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1種)と同じものを用いることができる。
カソード層材料の塗布方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷やスパッタリング等によって行なえばよい。
カソード層材料は、集電性を高くするという観点から、厚みが0.01μm以上、100μm以下となるように塗布することが好ましく、0.05μm以上、50μm以下とすることがより好ましく、0.1μm以上、20μm以下とすることが更に好ましい。
焼結する温度は800℃以上、1300℃以下程度とすればよく、より好ましくは900℃以上、1200℃以下程度、更に好ましくは1000℃以上、1100℃以下程度である。
また、焼結する雰囲気は、大気、酸素雰囲気等であればよい。
(第1アノード層形成工程)
第1のアノード層材料としては、NiO粉末と、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物(前記式[1]で表される金属酸化物)のBaZr0.8Y0.2O2.9(BZY)粉末と、を用いた。NiO粉末とBZY粉末との質量比は7:3となるようにした。前記第1のアノード層材料を、イソプロパノールを溶媒としてボールミルで混合し、乾燥させた。乾燥後の第1のアノード層材料を、直径100mmの円形で厚さが500μmとなるように一軸成形した。この成形品を大気下、1000℃で仮焼結して第1のアノード層を作製した。
第2のアノード層材料としては、NiO粉末と、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物(前記式[1]で表される金属酸化物)のBaZr0.8Y0.2O2.9(BZY)粉末と、を用いた。NiO粉末とBZY粉末との質量比は1:9となるようにした。前記第2のアノード層材料を、バインダーのエチルセルロース(エトキシ化度約49%)と、溶媒のαテルピネオールと混合してペースト状にした。この第2のアノード層材料のペーストをスクリーン印刷により前記第1のアノード層の表面の片側に厚みが5μmとなるようにして塗布した。
電解質層材料としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物(前記式[1]で表される金属酸化物)のBaZr0.8Y0.2O2.9(BZY)粉末を用いた。前記電解質層材料を、バインダーのエチルセルロース(エトキシ化度約49%)と、溶媒のαテルピネオールと混合してペースト状にした。この電解質層材料のペーストをスクリーン印刷により前記第1のアノード層の、前記第2のアノード層材料が塗布されている面とは反対側の表面に塗布した。続いて、800℃に加熱して乾燥させ、バインダーと溶媒を除去した。第1のアノード層の表面に塗布した電解質層材料の厚みは20μmとなるようにした。
第2のアノード層材料と電解質層材料が塗布された第1のアノード層を大気下、1450℃で焼結した。これにより、第1のアノード層と第2のアノード層材料は一体となってアノード層を形成し、当該アノード層と電解質層とが積層された構造を有する固体電解質部材No.1が得られた。
第2アノード層のNiO粉末とBZY粉末との質量比を4:6にした。これ以外は実施例1と同様に作製して固体電解質部材No.2を得た。
実施例1において第2のアノード層材料塗布工程を行なわず、第2のアノード層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、電解質層とアノード層が積層された構造の、固体電解質部材No.Aを得た。
第2アノード層のNiO粉末とBZY粉末との質量比を9:1にした。これ以外は実施例1と同様に作製して固体電解質部材No.Bを得た。
(割れ及びヒビの有無)
実施例1、実施例2の固体電解質部材No.1、No.2及び比較例1、比較例2の固体電解質部材No.A、No.Bをそれぞれ10個作製し、割れやヒビの発生の有無を調べた。
その結果、実施例1、実施例2の固体電解質部材No.1、No.2では1つも割れやヒビが発生していなかった。これに対し、比較例1の固体電解質部材No.Aは6個が割れてしまい、3個は外周部にうねりが発生していた。また、比較例2の固体電解質部材No.Bは10個全てに割れが発生した。
実施例1の固体電解質部材No.1の領域AにおけるNiOの含有率を全自動多目的X線回折装置[Philips X’Pert−PRO]によってX線回折測定(測定条件:X線管球Cu−Kα(45kV 40mA) ラインフォーカス 平行ビーム法、多層ミラー スリット1/2 平板コリメータ0.27°、θ−2θスキャン 2θ=10°〜80°、 0.03°step 露光時間1s)し、RIR(Reference Intensity Ratio)法を用い簡易定量したところ、5質量%であった。また、領域BにおけるNiOの含有率を断面SEM観察により2値化処理して求めたところ、65質量%であった。
実施例2の領域AにおけるNiOの含有率を上述の方法と同じ方法で分析したところ30質量%であった。また、領域BにおけるNiOの含有率は、65質量%であった。
実施例1の固体電解質部材No.1の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真を図3に示す。図3において、白い部分は式[1]で表される金属酸化物31を表し、グレーの部分はNiO 32を表す。領域Aはほぼ、式[1]で表される金属酸化物31によって形成されていることが確認できた。
12 アノード層
21 電解質層材料
22 第1のアノード層
23 第2のアノード層材料
31 式[1]で表される金属酸化物
32 NiO
A アノード層の、電解質層が形成されている面とは反対側の表面から厚み方向に5
μmまでの領域
B アノード層の、厚み方向の中央部から厚み方向の両端部に向かって70%までの
領域
41 電解質層
42 アノード層
Claims (8)
- 電解質層とアノード層とが積層された構造を有するプロトン伝導性の固体電解質部材であって、
前記電解質層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含む層であり、
前記アノード層はNiO及び前記金属酸化物を含む層であり、かつ、前記アノード層の前記電解質層とは反対側の表面から厚み方向に5μmまでの領域AにおけるNiOの含有率が、前記アノード層の厚み方向の中央部から厚み方向の両端部に向かって70%までの領域BにおけるNiOの含有率よりも低く、
前記金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物又は下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体である、
固体電解質部材。
AaBbMcO3−δ 式[1]
(式中、Aはバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Bはセリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Mはイットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、aは0.85≦a≦1を満たす数、bは0.50≦b<1を満たす数、cはc=1−bを満たす数、δは酸素欠損量である。) - 前記アノード層は、前記電解質層とは反対側の表面から厚み方向に、NiOの含有率に勾配があり、前記表面から深い方が前記NiOの含有率が高い、請求項1に記載の固体電解質部材。
- 前記金属酸化物は、BadZreY1−eO3−δ1(但し、dは0.85≦d≦1を満たす数、eは0.50≦e<1を満たす数、δ1は酸素欠損量である)である、請求項1又は請求項2に記載の固体電解質部材。
- 前記電解質層の、前記アノード層が積層された面とは反対側の表面にカソード層が積層されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固体電解質部材。
- 請求項4に記載の固体電解質部材を用いた固体酸化物型燃料電池。
- 請求項4に記載の固体電解質部材を用いた水電解装置。
- 請求項4に記載の固体電解質部材を用いた水素ポンプ。
- 請求項1に記載の固体電解質部材、を製造する方法であって、
第1のアノード層材料を成形し、仮焼結して第1のアノード層を形成する第1アノード層形成工程と、
前記第1のアノード層の表面の片側に第2のアノード層材料を塗布して乾燥させる第2アノード層塗布工程と、
前記第1のアノード層の、前記第2のアノード層材料が塗布された面とは反対側の表面に電解質層材料を塗布して乾燥させる電解質層塗布工程と、
前記第2のアノード層材料と前記電解質層材料とが塗布された前記第1のアノード層を焼結してアノード層と電解質層が積層された固体電解質部材を形成する焼結工程と、
を有し、
前記電解質層材料は、ペロブスカイト型結晶構造を有する金属酸化物を含み、
前記第1のアノード層材料は、NiO及び前記金属酸化物を含み、
前記第2のアノード層材料は、NiO及び前記金属酸化物を含み、
前記第2のアノード層材料におけるNiOの含有率は、前記第1のアノード層材料におけるNiOの含有率よりも低く、
前記金属酸化物は、下記式[1]で表される金属酸化物又は下記式[1]で表される金属酸化物の混合物もしくは固溶体である、
固体電解質部材の製造方法。
AaBbMcO3−δ 式[1]
(式中、Aはバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Bはセリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Mはイットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、インジウム(In)及びスカンジウム(Sc)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、aは0.85≦a≦1を満たす数、bは0.50≦b<1を満たす数、cはc=1−bを満たす数、δは酸素欠損量である。)
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