JP2018129505A - 光電変換素子、及びこれを用いた光エリアセンサ、撮像素子、撮像装置 - Google Patents

光電変換素子、及びこれを用いた光エリアセンサ、撮像素子、撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】p型有機半導体とn型有機半導体のバルクヘテロ構造からなる光電変換層を有する光電変換素子において、暗電流を低減する。【解決手段】本発明は、アノードと、光電変換層と、カソードと、をこの順で有し、前記光電変換層が第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体とを有する光電変換素子であって、前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の質量比が、第一の有機半導体≧第二の有機半導体≧第三の有機半導体であり、前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の合計を100質量%とした時、前記第二の有機半導体の含有量が6質量%以上であり、前記第三の有機半導体の含有量が3質量%以上であることを特徴とする光電変換素子を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、有機半導体で構成される光電変換層を備えた光電変換素子に関する。
近年、有機化合物からなる光電変換層を備え、信号読み出し用基板上に形成された構造を有する固体撮像素子の開発が進んでいる。
上記有機光電変換層の一般的な構造としては、p型有機半導体とn型有機半導体の二つの有機化合物を混合する事で形成されるバルクヘテロ構造が挙げられ、そこに第三の有機半導体を加える事で、より高い性能を発現する光電変換素子の開発が行われている。
特許文献1には、温度上昇に伴う暗電流の上昇を抑制した耐熱性に優れた光電変換層として、p型有機半導体とn型有機半導体のバルクヘテロ構造に加えて、少量の低分子有機化合物を含有する構造が開示されている。また、特許文献2には、電子受容性材料に加えて、2種以上の電子供与性の高分子有機材料を含有する構造とすることで、入射光の吸収効率を向上した光電変換層が開示されている。
特開2015−92546号公報 特開2005−32793号公報 国際公開第2014/104315号パンフレット
CHANG−Gua Zhen,et al.,"Achieving Highly Efficient Fluorescent Blue Organic Light−Emitting Diodes Through Optimizing Molecular Structures and Device Configuration",Advanced Functional Materials,2011,Volume21,4,p.699−707 R.F.Fedors,Eng.Sci.,1974,14(2),p.147−154. R.S.Ruoff,Doris S.Tse,Ripudaman Malhotra,and Donald C. Lorents,J.Phys.Chem.1993,97,p.3379−3383.
特許文献1及び2には、有機化合物からなる光電変換層として、p型有機半導体とn型有機半導体に加えて第三の化合物を添加することにより、温度上昇に伴う暗電流上昇を抑制する、或いは、入射光の吸収効率を上昇させることが開示されている。しかしながら、光電変換素子の常温における暗電流を低減する構成については開示がない。
本発明の課題は、p型有機半導体とn型有機半導体のバルクヘテロ構造からなる光電変換層を有する光電変換素子において、暗電流の低減を図り、該光電変換素子を用いて、低ノイズの光エリアセンサ、撮像素子、撮像装置を提供することにある。
本発明の第一は、少なくとも、アノードと、光電変換層と、カソードと、をこの順で有し、前記光電変換層が少なくとも第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体とからなる光電変換素子において、
前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体はいずれも低分子有機半導体であり、
前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体のうち、一方がp型半導体であり、他方がn型半導体であり、
前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の質量比が、
第一の有機半導体≧第二の有機半導体≧第三の有機半導体
であり、
前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の合計を100質量%とした時、前記第二の有機半導体の含有量が6質量%以上であり、前記第三の有機半導体の含有量が3質量%以上であることを特徴とする。
本発明の第二は、光電変換素子を備えた複数の画素を有し、前記複数の画素が二次元に配置されている光エリアセンサであって、
前記光電変換素子は本発明第一の光電変換素子であることを特徴とする。
本発明の第三は、光電変換素子と前記光電変換素子に接続されている読み出し回路とを備えた複数の画素、及び、前記画素に接続されている信号処理回路、を有する撮像素子であって、
前記光電変換素子は本発明第一の光電変換素子であることを特徴とする。
本発明の第四は、複数のレンズを有する撮像光学部と、前記撮像光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有し、前記撮像素子が本発明第三の撮像素子であることを特徴とする。
本発明によれば、光電変換層を3種類の低分子有機半導体で構成することによって、低暗電流で光電変換が可能な光電変換素子が提供される。
光電変換層における暗電流の生成メカニズムを示す模式図である。 本発明に係る第三の有機半導体の効果について説明するための模式図である。 直方体に近似した第一の有機半導体と第二の有機半導体の混合膜の模式図である。 有機半導体のSP値の実験値と計算値の対応関係を示す図である。 本発明に係る有機半導体の好ましい酸化電位,還元電位関係の一例を示す模式図である。 本発明に係る有機半導体の好ましい酸化電位,還元電位関係の一例を示す模式図である。 本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図である。 図7に記載の光電変換素子を含む画素の一例の等価回路図である。 本発明の光電変換素子を用いた光電変換装置の構成を模式的に示す平面図である。 本発明において用いられる有機半導体の酸化電位、還元電位をサイクリックボルタンメトリーにより決定する際の波形例を示す図である。 本発明の実施例の光電変換素子の暗電流値のアレニウスプロットを示した図である。
本発明について、適宜図面を参照しながら実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下の説明において特段説明されていない部分や、図面において特段図示されなかった部分に関しては、当該技術分野の周知或いは公知の技術を適用することができる。
本発明の光電変換素子は、アノードとカソードとの間に、有機化合物からなる光電変換層を備えた光電変換素子の暗電流が低減されたものである。本発明に係る光電変換層は、p型有機半導体とn型有機半導体とを有し、さらに、第三の有機半導体を有することによって、暗電流を低減することを特徴としている。本発明において、光電変換層を構成するp型有機半導体とn型有機半導体及び第三の有機半導体はいずれも低分子有機半導体である。
(光電変換層)
先ず、本発明の特徴である光電変換層について説明する。
光電変換層は、光を吸収することでその光量に応じた電荷を発生する。本発明に係る光電変換層は、少なくとも、第一の有機半導体と、第二の有機半導体と、第三の有機半導体と、を含有し、これらの有機半導体はいずれも低分子有機半導体である。また、第一の有機半導体と第二の有機半導体とは、一方がp型有機半導体(以下、「p型半導体」と記す)であり、他方がn型有機半導体(以下、「n型半導体」と記す)である。具体的には、第一の有機半導体と第二の有機半導体のうち酸化電位が小さい方がp型半導体である。光電変換層中に、p型半導体とn型半導体を混合することにより、外部量子効率(感度)を向上させることができる。
本発明において、第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体の質量比は、第一の有機半導体≧第二の有機半導体≧第三の有機半導体である。
尚、第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体において、光電変換層における含有量(質量%)が等しい場合には、分子量が大きい有機半導体から順に第一、第二、第三とする。即ち、3種類の有機半導体が等しく含有されている場合には、最も分子量が大きい有機半導体が第一の有機半導体であり、最も分子量が小さい有機半導体が第三の有機半導体である。また、3種類の有機半導体のうち、2種類の含有量が等しく、残りの1種類の含有量が先の2種類よりも多い場合、上記2種類の有機半導体のうち、分子量が大きい方が第二の有機半導体で、小さい方が第三の有機半導体である。また、3種類の有機半導体のうち、2種類の含有量が等しく、残りの1種類の含有量が先の2種類よりも少ない場合、上記2種類の有機半導体のうち、分子量が大きい方が第一の有機半導体で、小さい方が第二の有機半導体である。
また、本発明の光電変換層は、少なくとも第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体とにより構成されていればよく、光電変換機能や本発明の効果である暗電流低減を損ねない範囲で、これら以外の材料、即ち他の材料を含んでいても構わない。他の材料の含有量は、第三の有機半導体の含有量以下であってよい。他の材料の含有量と第三の有機半導体の含有量とが等しい場合、分子量が大きい方が第三の有機半導体である。
本発明の第三の有機半導体は、第一の有機半導体と第二の有機半導体のみで光電変換層を構成した際に生じる暗電流を抑制するために添加される。第二の有機半導体がp型半導体である場合、第三の有機半導体もp型半導体であることが好ましく、同様に、第二の有機半導体がn型半導体である場合、第三の有機半導体もn型半導体であることが好ましい。第一の有機半導体と第二の有機半導体のうち、酸化電位の小さい方がp型半導体であり、酸化電位の大きい方がn型半導体である。第三の有機半導体のp型またはn型は、その酸化電位で見積もることができる。第三の有機半導体の酸化電位が、第一の有機半導体と第二の有機半導体のうちp型半導体である化合物の酸化電位に近い場合は、第三の有機半導体はp型半導体である。同様に、第三の有機半導体の酸化電位が、第一の有機半導体と第二の有機半導体のうちn型半導体である化合物の酸化電位に近い場合は、第三の有機半導体はn型半導体である。これによって、第一の有機半導体よりも光電変換層中の含有量が少ない第二の有機半導体の光電変換機能(第二の有機半導体がp型半導体ならば電子ドナー機能、n型半導体ならば電子アクセプタ機能)を、第三の有機半導体によって補うこともできる。
第三の有機半導体の薄膜の可視光領域(波長400nm乃至730nm)での吸収率が最大となる波長は、第一の有機半導体及び第二の有機半導体のそれぞれの可視光領域での吸収率が最大となる二つの波長の間の波長であることが好ましい。これによって、第一の有機半導体と第二の有機半導体の吸収帯の間の波長領域の吸収を第三の有機半導体で効率的に補うことができる。
また、第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体の合計量を100質量%とした時、第二の有機半導体の含有量が6質量%以上であり、第三の有機半導体の含有量が3質量%以上である。本発明者等は、有機半導体の組成をこのような関係とすることで良好な特性を示す光電変換素子を作製できることを見出した。以下に詳細を説明する。
従来の光電変換層は、p型半導体とn型半導体とが混合されたバルクへテロ構造である。すなわち、2種類の有機半導体を併用する二元構成である。この光電変換層は、第一の有機半導体と第二の有機半導体とを有する。そして、第一の有機半導体の質量比は第二の有機半導体の質量比よりも大きい。係る光電変換層では、第一の有機半導体と第二の有機半導体が、互いの吸収波長領域を補い合うことによって、パンクロマティックな吸収を得ることができる。そして係る構成では、第二の有機半導体の光電変換層中における含有量がより多い方が、十分なパンクロマティックな吸収を実現することができる。
しかしながら、本発明者等は、第二の有機半導体の含有量が多くなるに従い、光電変換素子に電圧印加した際の暗電流が増大することを知見した。その理由は以下の通りであり、図面を用いて説明する。
図1は光電変換層における、基本的な暗電流の生成メカニズムを示す模式図であり、p型半導体とn型半導体の単分子における、HOMO(最高被占軌道)準位、LUMO(最低空軌道)準位の関係を図示している。暗電流はp型半導体のHOMO準位に存在する電子が、熱エネルギーによってn型半導体のLUMO準位へ移動することにより、発生すると考えられる。その際の電子移動のエネルギー障壁がΔE1である。
ところが、第一の有機半導体と第二の有機半導体との混合膜中では、それぞれが、例えば二量体を形成するなどして、同一化合物同士で会合している。その結果、HOMO準位、LUMO準位の状態密度がエネルギー的な広がりを形成する。
図2は本発明に係る第三の有機半導体の効果を説明するための模式図である。図2中の実線は、第一の有機半導体と第二の有機半導体の二元構成の混合膜における、HOMO準位、LUMO準位の状態密度のエネルギー分布を模式的に表したものである。一方、破線は、第一の有機半導体、第二の有機半導体、第三の有機半導体の三元構成の混合膜における、状態密度エネルギー分布の模式図である。破線については後述する。図2において、第一の有機半導体がn型半導体であり、第二の有機半導体がp型半導体である。
二元構成の、状態密度のエネルギー的な広がりを考慮した電子移動のエネルギー障壁ΔE2は、単分子のエネルギー準位で考える際のΔE1よりも小さい。電子移動のエネルギー障壁ΔE2が小さいほど、暗電流は大きい。すなわち、状態密度のエネルギー的な広がりが広いほど、ΔE2が小さくなり、暗電流が発生し易くなる。光電変換層中での第二の有機半導体の含有量が多くなるほど、第二の有機半導体同士で会合しやすくなると考えられ、HOMO準位、LUMO準位の状態密度のエネルギー的な広がりも広がり易いと考えられる。そのため、第二の有機半導体の含有量が多くなるに従い暗電流が増大すると考えられる。
上述の第二の有機半導体同士の会合による、HOMO準位、LUMO準位の状態密度のエネルギー的な広がりを形成する現象は、第二の有機半導体の含有量が、第一と第二の有機半導体の合計中、6質量%以上の場合に起こることが知られている。非特許文献1には、2種類の有機化合物の混合膜において、含有量の少ない有機化合物が6質量%以上で分子同士が会合することが記載されている。具体的には、6質量%以上の含有量において、該有機化合物の発光が長波長化して濃度消光する傾向が見え始めることが記載されている。発光が長波長化するということは、HOMO準位、LUMO準位の状態密度のエネルギーの広がりが大きくなり、実効的なバンドギャップが小さくなっているためと考えられる。
第二の有機半導体の含有量が多くなるに従い暗電流が増大することの対策として、本発明者等は、鋭意検討の結果、以下のことを発見した。それは、第二の有機半導体の含有量が6質量%以上の場合でも、第三の有機半導体を3質量%以上となるように混合することによって、第一の有機半導体と第二の有機半導体のみを混合した場合に比べて、暗電流を低減できるということである。尚、本発明において、第二の有機半導体の含有量が6質量%以上である、及び、第三の有機半導体の含有量が3質量%以上である、とは、いずれも第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体の合計量を100質量%とした時の含有量である。
以下に、本発明者等が考察した第三の有機半導体を混合する事による暗電流低減効果の機構について、図2の破線を用いて説明する。
破線で表された状態密度エネルギーは、実線で表された状態密度エネルギーに比べて、エネルギーの広がりが抑えられている。これは、第三の有機半導体をさらに有することで、第二の有機半導体同士の会合を抑制していると考えられる。その結果、各準位の状態密度のエネルギーの広がりを抑える事ができる。有機化合物の会合、二量体の形成、スタッキング等による相互作用は、特に同一の化合物同士で起こり易いため、異なる化合物が混在する場合はそれが阻害されるのである。また、第三の有機半導体による状態密度のエネルギーの広がりを抑える効果は第一の有機半導体に対してももたらされる。しかしながら、第一の有機半導体よりも含有量の少ない第二の有機半導体の方が、第三の有機半導体を混合する事により、分子同士が会合せずに、分散性の高い状態を実現し易い。その結果、第二の有機半導体の方が、各準位の状態密度のエネルギーの広がりを抑制しやすいと考えられる。
また、図2では、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体の場合を例として説明したが、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型半導体の場合でも、同様に第三の有機半導体を混合する効果は発現すると考えられる。尚、第三の有機半導体を加えたことによる効果は、第一の有機半導体と第二の有機半導体の含有量が等しい場合でも得られる。
本発明では、第一、第二、第三の有機半導体の合計量を100質量%として、第三の有機半導体の含有量が3質量%以上で、暗電流が低減される効果を発現するが、好ましくは6質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。また、第二の有機半導体に対する、第三の有機半導体の質量比は0.12以上であることが好ましい。これが、第二の有機半導体の会合を、第三の有機半導体によって効果的に抑制する事ができるためである。係る質量比は、より好ましくは、0.24以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
本発明に係る光電変換素子は、第一、第二、第三の有機半導体の合計量を100質量%として、第二の有機半導体の含有量が10質量%以上であることがさらに好ましい。特許文献3には、二つの化合物を混合した場合、含有量の低い方の化合物を10質量%以上とする場合に、顕著に発光の濃度消光が起こることが記載されている。すなわち、10質量%以上とした場合に、より顕著な会合が起こる。したがって、本発明においても、第一、第二、第三の有機半導体の合計量を100質量%とした時、第二の有機半導体が10質量%以上の場合に、第二の有機半導体同士が顕著な会合をすると考えられ、第三の有機半導体の添加効果がより顕著になると考えられる。また、第二の有機半導体を10質量%以上とすることで、第二の有機半導体の吸収帯の光の吸収率を高くすることができる。つまり、本発明に係る光電変換素子の第二の有機半導体の含有量が10質量%以上であれば、暗電流を抑制しつつ、光の吸収率を高くすることができる。
さらに本発明において、第一、第二、第三の有機半導体の合計量を100質量%とした時、第二の有機半導体が17質量%以上であることが好ましい。第二の有機半導体の含有量が17質量%以上の場合は、第二の有機半導体同士が面で接する確率が特に高くなる。そのため、より顕著なスタッキングによる相互作用を起こしやすく、その分、第三の有機半導体を混合した際の暗電流低減効果が顕著となるためである。その理由を、図3を用いて説明する。
図3は、直方体に近似した第一の有機半導体と第二の有機半導体の二元構成の混合膜の模式図である。
低分子有機化合物の三次元的な形状は、有機化合物を形成する各原子の位置を三次元座標にプロットした際に、X、Y、Zの各座標軸の最大値と最小値の差が長さとなる辺を一辺とする直方体に近似することができる。同じ大きさの直方体を三次元空間に充填した場合、図3に示すように、ある直方体Aの各面に対して、X軸方向に2個、Y軸方向に2個、Z軸方向に2個、合計6個の直方体Bが面で隣接する。図3には、直方体Aとその重心に加え、直方体Aに対して面で隣接する6個の直方体Bとその重心が示されている。ここで、混合膜中の含有量(質量%)が少ない第二の有機半導体が直方体Aであるとする。6個の直方体Bが全て第一の有機半導体である場合、第二の有機半導体同士が面で接することはない。一方、直方体Aが第二の有機半導体であり、6個の直方体Bのうち、少なくとも一つが第二の有機半導体である場合、第二の有機半導体同士が面で接することになる。つまり、第一の有機半導体と第二の有機半導体の混合膜において、第二の有機半導体の含有量が1/6、即ちおおよそ17質量%以上の場合、該混合膜中で第二の有機半導体同士が面で接触し、強いスタッキングによる相互作用を起こし得ることが分かる。
低分子有機化合物を直方体に近似した場合、面で接する場合に顕著なスタッキングによる相互作用が起こり易いが、辺で接する場合も程度は小さいがスタッキングによる相互作用が引き起こされることが考えられる。ここで、直方体Aに面で接する6個の直方体に加えて、辺で接する直方体の数は12個であり、合計18個である。つまり、第二の有機半導体同士が面もしくは辺で接する条件は、混合膜中の含有量が1/18、即ちおおよそ6質量%以上と見積もられる。6質量%以上であれば、第三の有機半導体を混合することによる暗電流低減効果を発現することが分かった。これによって前述した、第二の有機半導体同士の会合による、HOMO準位、LUMO準位の状態密度のエネルギーの広がりを形成する現象は、第二の有機半導体の含有量が6質量%以上の場合に起こることが、非特許文献1における記載からのみならず、幾何学的な考察からも裏付けられた。
以上の事から、本発明において、第一、第二、第三の有機半導体の合計量を100質量%とした時、第二の有機半導体が6質量%以上、好ましくは17質量%以上で、第三の有機半導体を混合することによる暗電流低減効果が幾何学的な考察から裏付けられた。
尚、上記のように、本発明においては、第一の有機半導体と第二の有機半導体の混合膜に第三の有機半導体を添加したことによる暗電流低減効果は、第一、第二、第三の有機半導体の合計量を100質量%とした時、第二の有機半導体が6質量%以上で得られる。また、暗電流低減効果は第三の有機半導体が3質量%以上で発現されるが、係る効果は、第二の有機半導体が第一の有機半導体と同量となるまで得られ、さらに、第三の有機半導体を第二の有機半導体と同量となるまで添加することができる。よって、本発明において、第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体の質量比は、
第一の有機半導体≧第二の有機半導体≧第三の有機半導体
となる。
本発明に係る光電変換素子は、第三の有機半導体を3質量%以上有することで暗電流を低減する。この効果をさらに高めるためには、効果が高い第三の有機半導体を選定することが好ましい。効果の高い第三の有機半導体は、溶解度パラメータを用いることで選定することができる。
溶解度パラメータ(Solubility Parameter、以下、単に「SP値」と記載する)は、実験により得られた値もしくは計算により求めることができる。実験的には非特許文献3のように種々の溶媒への溶解性を調べることで実験的に決定することができる。実験値が利用できない場合は、SP値の理論的な推算方法としてFedors(非特許文献2)によって提案された方法を用いることができる。
Fedorsよって提案された方法では、以下のようにしてSP値を求める。まず、分子構造を、それを構成する原子又は原子団に分割する。分割された単位を以下分割単位と呼ぶ。非特許文献2に記載された表より、それぞれの分割単位に対して、蒸発エネルギー(ΔEk)(J/mol)及びモル体積(ΔVk)(cm3/mol)を求める。次にこれらの値を用い、以下の式(1)で定義される値をSP値とよぶ。この手法は、原子団寄与法と呼ばれる。SP値は凝集エネルギー密度の平方根であり、本発明において、単位は(J/cm31/2とする。
Figure 2018129505
しかし、この計算方法は、分子構造内に排除体積を有する化合物には、用いることができない。分子構造内に排除体積を有する化合物としては、C60等のフラーレン誘導体が挙げられる。これは球状の分子構造のフラーレン誘導体は分子構造の内部に排除体積があるため分子体積の決定が困難なことによる。同様に、カリックスアレーン誘導体やシクロデキストリン誘導体なども分子構造の内部に排除体積があるため計算は困難である。この計算方法では算出できない、フラーレン誘導体等のSP値には、実験値を用いることができる。SP値の実験値は非特許文献3に従い求めることができる。たとえばC60は非特許文献3により得られたSP値(σT)20.0を用いることができる。
非特許文献2に基づいた計算値と実験値を表1に示す。表1中、[1]は非特許文献1からの引用値であることを示し、[2]は非特許文献2からの引用値であることを示す。
Figure 2018129505
図4は、表1の実験値と計算値との関係を表した図である。計算値と実験値とは、線形性を示しており、両者の乖離は十分小さい。つまり、本明細書で示した式(1)のSP値は、実験値と同じように扱ってよい。表1においてピリジンとアニリンのように実験値と計算値で序列が逆転する場合はあるが、上記をプロットした図4を見ると全体としては、計算値と実験値は互いに近い値を示しており序列関係は大きく変化しない。
本明細書において、第一の有機半導体のSP値をSP1、第二の有機半導体のSP値をSP2、第三の有機半導体のSP値をSP3と表記する。
この3つのSP値は次の関係を満たすことが好ましい。
|SP1−SP2|>|SP2−SP3| ・・・(2)
|SP1−SP3|>|SP2−SP3| ・・・(3)
この関係を満たすことで、第二の有機半導体は、第一の有機半導体と混和するよりも、第三の有機半導体と混和しやすくなる。同様に第三の有機半導体は、第二の有機半導体と混和しやすくなる。第二および第三の有機半導体が混和することで、第二の有機半導体同士の会合による、HOMO準位、LUMO準位の状態密度エネルギーの広がりが抑制される。これによって、たとえば図5に示すΔE12の減少が抑制され、暗電流が低減する。
第一乃至第三の有機半導体のSP値は、下記の関係であることがさらに好ましい。
|SP1−SP2|≧2.5 ・・・(4)
|SP1−SP3|≧2.5 ・・・(5)
|SP2−SP3|≦2.5 ・・・(6)
上記のような関係になるように材料の組み合わせを考慮することで、第二、第三の有機半導体が、第一の有機半導体と混和するよりも優先的に混和した状態になる。
第二、第三の有機半導体の溶解度パラメータが以下の関係であることがより好ましい。
|SP2−SP3|≦1.0 ・・・(7)
第一の有機半導体がn型の場合は、第二と第三の有機半導体はp型が好ましい。一方、第一の有機半導体がp型の場合は、第二と第三の有機半導体はn型が好ましい。
このような関係とすることで、主成分である第一の有機半導体の相が形成されやすく、かつ第二と第三の有機半導体が混ざり合った相が形成されやすいので好ましい。その際、主成分たる第一の有機半導体が、光電変換層の内部構造として相分離構造の主要構造となり、高い電荷分離効率と高い電荷輸送能を実現しやすくなると考えられる。このとき、熱励起による暗電流発生は、第二と第三の有機半導体の混和状態によって低減される。よって、暗電流は低下するとともに、高い光電変換特性を有する光電変換素子が得られる。
以上の通り、本発明によりS/N比のうちのNを低減することで暗電流を低減させることを説明した。
光電変換素子の解像度を向上させるためには、暗電流を低減することでS/NのNを下げるのみならず、Sを向上させることが好ましい。そのためには、第一、第二、第三の有機半導体のうち、p型及びn型の各1つの有機半導体で構成しうる、互いに異なる光電変換層を具備した二つの光電変換素子を構成した場合に、次の条件を備えることが好ましい。即ち、入射光に対する外部量子効率(EQE)の分光感度スペクトルにおけるピークがより長波長側に存在する光電変換素子が、前記ピークがより短波長側に存在する光電変換素子よりも、下記変換効率(η)が高いこと、である。
より具体的には、第一の有機半導体がn型半導体、第二および第三の有機半導体がp型半導体である場合、第一の有機半導体と第二の有機半導体で構成される光電変換素子1と、第一の有機半導体と第三の有機半導体で構成される光電変換素子2とを想定する。
そして、それぞれの光電変換素子の波長に対する外部量子効率(EQE)の値を示すスペクトルを得る。光電変換素子1において、スペクトルのピークが光電変換素子2よりも短波長側に現れる場合、光電変換素子2の変換効率が、光電変換素子1の変換効率よりも高いことが好ましい。
入射光に対する吸収特性が優れていても、電荷分離する能力が低い場合には、感度の良い光電変換素子は得られない。吸収特性に並んで、光子から電子への変換効率もまた光電変換素子の感度を決める重要因子である。ここで、光電変換素子において、吸収した光子を電子に変換する確率として変換効率(η)を下記の関係とする。
変換効率(η)=EQE/光電変換層の吸収率 ・・・(8)
ここで、EQE(External Quantum Efficiency)は、量子効率(Quantaum Efficiency)とも呼ばれ、光電変換素子に入射した全光子数が電気信号に変わる効率のことである。このEQEが高いことが、光電変換素子としての感度が高いことを意味する。EQEは所定の電圧で印加された光電変換素子に、例えばA光源(標準光源)やXe光源からの光を分光もしくは分光せずに入射させ、電流値を測定して算出された電子数を、素子に入射させた全ての光子数で除して得られる値のことである。この時、入射光を分光して各波長のEQEを測定することで、EQEの分光感度スペクトルが得られ、ピーク(EQEピーク)が観察される。
また、光電変換層の吸収率とは、光電変換素子に入射された全ての光子数のうち、光電変換層で光吸収される割合のことである。
よって、変換効率(η)とは、光電変換層において吸収された光子より電子に変換される割合である。
変換効率(η)は、例えば次のようにして求めることができる。透明基板上の有機光電変換素子であってアノード、カソードとも例えばIZOのような透明電極を用いることにより透過する画素部を形成することで、吸収率測定が可能になる。測定装置としては(株)島津製作所製「Solidspec3700」などを用いて可能である。この光電変換素子の光照射時に流れる光電流から暗電流を差し引くことで、光電変換電流が求められ、ここから電子数に換算し、照射光子数で除することでEQEを求めることができる。そして、このEQEと光電変換層の吸収率から前述の通り、変換効率(η)を求めることができる。
本発明における光電変換層は第一、第二、第三の有機半導体を有し、これら有機半導体としての組合せは、二種のp型半導体と一種のn型半導体とを用いた場合と、二種のn型半導体と一種のp型半導体とを用いた場合である。よって、p型半導体、n型半導体より一種ずつ選択した組み合わせは二通りである。即ち、第一、第二、第三の有機半導体として、二種のp型半導体と一種のn型半導体とを用いた場合には、p型が互いに異なる二種の光電変換層が、二種のn型半導体と一種のp型半導体とを用いた場合には、n型が互いに異なる二種の光電変換層が考えられる。第一、第二、第三の有機半導体より選択される二通りの組み合わせで構成可能な光電変換層を具備した光電変換素子は、それぞれの吸収波長帯と変換効率からなる分光感度特性を有することになる。
有機半導体の吸収帯を表す指標として、有機半導体の吸収ピーク波長とバンドギャップを用いることができる。真空蒸着により成膜やスピンコート法などで100nm以下程度の単一材料からなる薄膜を作製し、その薄膜の吸収スペクトルを測定することで吸収ピーク波長や光学吸収端を求めることが可能である。ここでいう吸収ピーク波長は吸収帯として最も長波長側にあるピークを指し、第一吸収帯のピーク波長のことである。その吸収帯における吸収ピーク波長は、例えば一重ピークのものはそのピークを、多重ピーク(振動構造ともいう)のものは最も長波長のピークを指す。一方で光学吸収端はバンドギャップに相当する。
吸収特性とEQEの分光特性は対応するので、バンドギャップが小さい有機半導体からなる光電変換素子ほど、吸収ピーク波長も長波長側にあり、それに対応するEQEピーク波長も長波長側にある。EQEピーク波長が不明瞭な場合は、吸収率が高くなるように有機半導体の含有量を調節した光電変換素子を作製すれば判定は可能である。仮に、いかなる含有量でもEQEピーク波長を確認できない場合には、EQEの分光特性として長波長側から短波長側に見た時にEQE値が上昇傾向に転ずる屈曲点を指標とし、該屈曲点をEQEピーク波長と同様の指標として考えることができる。
光電変換層における第一、第二、第三の有機半導体の間では、光を吸収し励起状態となった有機半導体から電荷分離が起こるまでの間にエネルギー移動過程が発生する。励起エネルギー移動は主にフェルスター型(蛍光共鳴)エネルギー移動と呼ばれる現象である。光吸収した有機半導体の発光スペクトルとそのエネルギーを受け取る別の有機半導体の吸収スペクトルに重なりがあると発生し、重なりが大きいほどエネルギーは移動しやすくなる。そして、エネルギーは高い状態から低い状態へと移動しやすい。つまり励起エネルギーは光吸収した有機半導体からより長波長側に吸収帯を持つ有機半導体に向かって移動する。特に、そのエネルギー受容体となる有機半導体は吸収確率が高いことが好ましく、つまりはモル吸光係数が大きいことが好ましい。このエネルギー移動過程は電子移動過程とならび非常に時定数の小さい現象である。
光励起された有機半導体の持つ励起エネルギーはバンドギャップの小さい有機半導体に向けて移動する。そして励起エネルギーの移動した先のp型半導体又はn型半導体を含んだ一対のp型−n型半導体の間で電荷分離が起こる。この組み合わせが、長波長側に感度を有する有機半導体の組み合わせであることが望ましい。その組み合わせが、第一、第二、第三の有機半導体からなる光電変換層を有する光電変換素子の中に含まれることで、さまざまな波長で吸収された光励起エネルギーを、変換効率の高いp型−n型半導体の組み合わせに集めて電荷分離させることが可能になる。即ち、第一、第二、第三の有機半導体から選択される、一対のp型−n型半導体から構成される、互いに異なる光電変換層を備えた2つの光電変換素子において、短波長側にEQEピークを持つ光電変換素子より長波長側にEQEピークを有する光電変換素子の変換効率(η)が高いことで、高い感度の光電変換素子が得られるのである。これにより光電変換素子の感度が吸収を持つ全波長域にわたって向上し、S/N比を向上させることができる。
変換効率の高いp型−n型半導体の各含有量はエネルギー受容体として機能する必要があるため、いずれの有機半導体であっても少なくとも3質量%以上であり、好ましくは6質量%以上である。エネルギー移動における受容体として、有機半導体のモル吸光係数は少なくも1000molL-1cm-1であり、より好ましくは10000molL-1cm-1以上である。例えば、p型半導体として例示されている有機半導体群の第一吸収帯は可視光域にあり、そのモル吸光係数は少なくとも1000molL-1cm-1以上である。一方で、フラーレンC60などは可視域に吸収帯を持つものの、モル吸光係数が1000molL-1cm-1未満でありエネルギー受容体として有効に機能しない。
本発明における第一、第二、第三の有機半導体はいずれも、低分子有機化合物である。有機化合物は分子によって低分子、オリゴマー分子、高分子に大別されるが、高分子とオリゴマー分子は国際純正応用化学連合(IUPAC)高分子命名法委員会が以下の様に定義している。
高分子、ポリマー分子(macromolecule,polymer molecule):分子質量の大きい分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的又は概念的に得られる単位の多数回の繰返しで構成された構造をもつものをいう。
オリゴマー分子(oligomer molecule):中程度の大きさの相対分子質量をもつ分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的或いは概念的に得られる単位の少数回の繰返しで構成された構造を持つものをいう。
本発明における第一、第二、第三の有機半導体は、上記高分子、ポリマー分子、オリゴマー分子の定義にあてはまらない分子である。即ち、繰り返し単位の繰り返し数が少数回以下である3以下、好ましくは1である分子である。
例えば、後述するフラーレンは閉殻空洞状の化合物であるが、1つの閉殻構造を1つの繰り返し単位と見なし、例えばフラーレンC60は、繰り返し数が1であるため、低分子である。
また、高分子には主に化学合成して得られる合成高分子と、自然界に存在する天然高分子とがある。天然高分子には分子量が単分散の高分子が存在するが、合成高分子は、一般的に繰り返し単位の違いによる分子量の分散性を有する。一方、本発明に用いられる有機半導体は天然に存在せず、合成して得られる分子であるが、繰り返し単位の違いによる分子量の分散性は有さない。
このような分散性の有無は、光電変換素子における光電変換層に用いた場合に、重要な違いを生じる。分散性を有する高分子化合物を光電変換層に用いると、光電変換層に含まれる化合物のHOMO準位、LUMO準位の状態密度のエネルギー的な広がりが大きくなり、p型半導体のHOMO準位とn型半導体のLUMO準位間のエネルギー障壁が制御できなくなる。その結果、電界を印加した際に暗電流を発生させる準位が形成されてしまう。よって、本発明において、光電変換層には、繰り返し単位の違いによる分散性を有さない、繰り返し単位が3以下、好ましくは1である低分子有機半導体、より好ましくは昇華性を有する分子量1500以下の低分子有機半導体を用いる。
本発明は、第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体の酸化電位、還元電位関係に因らず、第三の有機半導体の混合により、第二の有機半導体のHOMO準位、LUMO準位のエネルギーの広がりが抑制される。よって、本発明においては暗電流低減効果が発現するが、以下に説明する酸化電位、還元電位関係を満たす場合に、暗電流低減効果が大きくなり易いため好ましい。
図5に、本発明において、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体である場合の、第三の有機半導体との好ましい酸化電位、還元電位関係を示す。酸化電位はそれぞれの有機半導体のHOMO準位に相当する。還元電位はそれぞれの有機半導体のLUMO準位に相当する。尚、酸化還元電位は溶液中の分子と電極間でのポテンシャルエネルギー差であり、分子単独の物性値である。図5の構成では、各電位の関係が以下の式を満たすことが好ましい。
Eox2≦Eox3 ・・・(9)
Ered1≧Ered3 ・・・(10)
Eox2:第二の有機半導体の酸化電位
Eox3:第三の有機半導体の酸化電位
Ered1:第一の有機半導体の還元電位
Ered3:第三の有機半導体の還元電位
上記(9)、(10)式を満たす場合、第一の有機半導体のLUMO準位と第二の有機半導体のHOMO準位で形成するΔE12に対して、第一の有機半導体のLUMO準位と第三の有機半導体のHOMO準位で形成するΔE13が等しい、或いは大きくなる。同様に、ΔE12に対して、第三の有機半導体のLUMO準位と第二の有機半導体のHOMO準位で形成するΔE23が等しい、或いは大きくなる。その結果、第一の有機半導体と第二の有機半導体との間で発生する暗電流に対して、第三の有機半導体と他の有機半導体との間で発生する暗電流への寄与を減らす事ができる。
また、図6に、本発明において、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型半導体である場合の、第三の有機半導体との好ましい酸化電位、還元電位関係を示す。図6の構成では、各電位の関係が以下の式を満たすことが好ましい。
Eox1≦Eox3 ・・・(11)
Ered2≧Ered3 ・・・(12)
Eox1:第一の有機半導体の酸化電位
Eox3:第三の有機半導体の酸化電位
Ered2:第一の有機半導体の還元電位
Ered3:第三の有機半導体の還元電位
このような酸化電位、還元電位関係が好ましい理由は、前述した、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体である場合と同様、ΔE12≦ΔE13、ΔE12≦ΔE23となることが好ましいためである。
本発明において、第一の有機半導体は、n型半導体でもp型半導体でも良いが、第一の有機半導体としてn型半導体であるフラーレンやその誘導体を用いた場合、耐熱性が安定しやすく、取り扱いが容易であることから好ましい。
(p型半導体)
本発明において用いられるp型半導体とは、電子ドナー性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物である。p型半導体は、パンクロマティック吸収帯を得るために吸収波長が450nm乃至700nmの可視域にあることが好ましい。特にパンクロマティックな吸収帯を得るためには500nm乃至650nmにあることが好ましい。これにより、緑色領域以外にも450nm乃至470nm付近の青領域や600nm乃至630nm付近の赤領域の感度も一緒に向上させることができ、パンクロマティック性が向上する。
p型半導体は、下記一般式[1]乃至[5]で示される化合物、キナクリドン誘導体、3H−フェノキサジン−3−オン誘導体のいずれかであることが好ましい。尚、本明細書において、「環を形成する」とは、特に断らない限り、形成する環構造を限定しない。例えば、5員環を縮環させても、6員環を縮環させても、7員環を縮環させてもよい。縮環する環構造は、芳香環であっても、脂環構造であってもよい。
一般式[1]
Figure 2018129505
一般式[1]において、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基を表す。
1、n2、n3はそれぞれ独立に0乃至4の整数を表す。
1乃至X3は窒素原子、硫黄原子、酸素原子、置換基を有してもよい炭素原子のいずれかを表す。
Ar1及びAr2は置換或いは無置換のアリーレン基、又は置換或いは無置換の二価の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。Ar1及びAr2が複数ある場合はそれぞれ同じでも異なってもよく、Ar1及びAr2はX2或いはX3が炭素原子の場合、互いに結合して環を形成してもよい。
1はハロゲン原子、シアノ基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のヘテロアリール基又は以下の一般式[1−1]乃至[1−9]で表される置換基のいずれかを表す。置換或いは無置換のビニル基は、シアノ基を有するビニル基、シアノ基を2つ有するビニル基であってよい。
Figure 2018129505
一般式[1−1]乃至[1−9]において、R521乃至R588は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。*は炭素原子との結合位置を表す。
一般式[2]
Figure 2018129505
一般式[2]において、R20乃至R29は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。R20乃至R29のうちの隣り合う2つは互いに結合して環を形成してもよい。
一般式[3]乃至[5]
Figure 2018129505
一般式[3]乃至[5]において、Mは金属原子であり、該金属原子は酸素原子又はハロゲン原子を置換基として有してもよい。
1乃至L9は金属Mに配位する配位子であって、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基からなり、それぞれL1乃至L9のうちの隣り合う2つは互いに結合して環を形成してもよい配位子を表す。
上記一般式[1]で表される有機化合物の中でも、Ar1は置換或いは無置換のアリーレン基、又は置換或いは無置換の二価の複素環基であることが好ましい。当該複素環基の複素原子は窒素であることが好ましい。X1は硫黄又は酸素原子であることが好ましい。n1は1であり、n2は0であり、Ar2はn2が0で単結合を表すことが好ましい。
一般式[2]は、より具体的には以下の一般式[11]乃至[27]のいずれかで表すことができる。
Figure 2018129505
Figure 2018129505
Figure 2018129505
一般式[11]乃至[27]において、R31乃至R390は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。
上記一般式[1]及び[2]、一般式[1−1]乃至[1−9]、一般式[11]乃至[27]の置換基の具体例を以下に示す。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
アルキル基は、炭素原子数1乃至10のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基などが挙げられる。アルキル基は、炭素原子数1乃至4のアルキル基であってもよい。
アルコキシ基は、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピオキシ基、イソプロピオキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、オクトキシ基などが挙げられる。アルコキシ基は炭素原子数1乃至4のアルコキシ基であってもよい。
アリール基は、炭素原子数6乃至20のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基などが挙げられ。特に、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基が分子量は低く、化合物の昇華性を考慮すると好ましい。
複素環基は、炭素原子数3乃至15の複素環基が好ましい。例えば、ピリジル基、ピラジル基、トリアジル基、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾアゾリル基、ベンゾピロリル基などが挙げられる。複素環基が有する複素原子は、窒素が好ましい。
アミノ基は、アルキル基、アリール基を置換基として有するアミノ基が好ましい。例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−メチル−N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、アニリノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N,N−ジフルオレニルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジアニソイルアミノ基、N−メシチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジメシチルアミノ基、N−フェニル−N−(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−トリフルオロメチルフェニル)アミノ基等が挙げられる。アミノ基が置換基として有するアルキル基やアリール基は、上記の置換基の例示で示された通りである。
一般式[1]及び[2]、一般式[1−1]乃至[1−9]、一般式[11]乃至[27]におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基、ビニル基、アリール基が有する置換基は次の置換基が挙げられる。当該置換基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素原子数1乃至4のアルキル基、ベンジル基などのアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、ピリジル基、ピロリル基などの窒素原子を複素原子とする複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基などのアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、フェノキシル基などのアルコキシル基、1,3−インダンジオニル基、5−フルオロ−1,3−インダンジオニル基、5,6−ジフルオロ−1,3−インダンジオニル基、5,6−ジシアノ−1,3−インダンジオニル基、5−シアノ−1,3−インダンジオニル基、シクロペンタ[b]ナフタレン−1,3(2H)−ジオニル基、フェナレン−1,3(2H)−ジオニル基、1,3−ジフェニル−2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオニル基などの環状ケトン基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などであり、フッ素原子が好ましい。
一般式[1]は、下記の一般式[28]で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2018129505
上記一般式[28]において、R391乃至R396は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。R391乃至R396のうちの隣接する2つは、互いに結合して環を形成してもよい。特にR394とR395とが結合して環を形成するのが好ましい。
また一般式[28]で表される有機化合物は、吸収ピーク波長が522nm以上600nm以下において強い吸収を持つ材料である。この波長領域に吸収ピークを有するとは、前述の通り、光電変換層がパンクロマティック性を有するために好ましい。
上記一般式[3]乃至[5]において、Mがイリジウムである場合は、6配位錯体であることが好ましい。Mがプラチナ、バナジウム、コバルト、ガリウム、チタンである場合は、4配位錯体であることが好ましい。当該配位数とすることで錯体の安定性が高いためである。
上記一般式[3]乃至[5]について配位子L1乃至L9の具体例を以下に示す。
配位子L1乃至L9は置換或いは無置換のアリール基と置換或いは無置換の複素環基から選ばれる置換基を複数結合させた配位子である。
配位子を構成するアリール基として、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基などが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
配位子を構成する複素環基として、ピリジル基、ピラジル基、トリアジル基、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾアゾリル基、ベンゾピロリル基などが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
一般式[3]乃至[5]における配位子が有する置換基、即ちアリール基及び複素環基が有する置換基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素原子数1乃至4のアルキル基、ベンジル基などのアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、ピリジル基、ピロリル基などの窒素原子を複素原子とする複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基などのアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、フェノキシル基などのアルコキシル基、1,3−インダンジオニル基、5,−フルオロ−1,3−インダンジオニル基、5,6−ジフルオロ−1,3−インダンジオニル基、5,6−ジシアノ−1,3−インダンジオニル基、5−シアノ−1,3−インダンジオニル基、シクロペンタ[b]ナフタレン−1,3(2H)−ジオニル基、フェナレン−1,3(2H)−ジオニル基、1,3−ジフェニル−2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオニル基などの環状ケトン基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などであり、フッ素原子が好ましい。
配位子は、ヒドロキシ基やカルボキシル基等を置換基として有し、ヒドロキシ基やカルボキシル基を介して金属原子結合してもよい。
以下に、上記一般式[1]乃至[5]で示されるp型半導体のうち、好ましい化合物を例示する。
Figure 2018129505
Figure 2018129505
Figure 2018129505
Figure 2018129505
(n型半導体)
本発明において用いられるn型半導体とは、電子アクセプタ性有機半導体材料であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物である。n型半導体としては、フラーレン系化合物、金属錯体系化合物、フタロシアニン系化合物、カルボン酸ジイミド系化合物等が挙げられるが、フラーレン又はフラーレン誘導体を第一又は第二の有機半導体としてのn型半導体として含むことが好ましい。フラーレン分子又はフラーレン誘導体分子が光電変換層において連なることで、電子の輸送経路が形成されるため、電子輸送性が向上し、光電変換素子の高速応答性が向上する。フラーレン分子又はフラーレン誘導体分子の中でも、フラーレンC60が、電子の輸送経路を形成し易いので、特に好ましい。フラーレン又はフラーレン誘導体の含有量は、光電変換層の全量を100質量%とした場合、光電変換特性の良好さから40質量%以上85質量%以下が好ましい。
フラーレン又はフラーレン誘導体は、例えば、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ等が挙げられる。
フラーレン誘導体は、フラーレンに置換基を有するものである。この置換基は、アルキル基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
(近赤外吸収材料)
三元構成の光電変換素子においては近赤外域に吸収帯を有する化合物を用いることで感度領域を近赤外化することが可能である。その場合、第一、第二、第三のいずれかの有機半導体として、近赤外領域に吸収帯を有する化合物が含まれてもよい。近赤外域とは一般には800〜2500nmの波長帯を指すが、有機材料を使った吸収材料としては下記のような化合物が知られている。
Figure 2018129505
近赤外領域の吸収を有する材料はバンドギャップが小さいため図1に示すΔEが小さくなりやすく、暗電流が大きくなる傾向がある。このため、近赤外に吸収を有する材料が含まれる光電変換素子においては、用いる有機半導体間に、前述した式(2)乃至(7)で示されるSP値関係を適用し、暗電流を低減させることが好ましい。
本発明に係る光電変換層は、非発光であることが好ましい。非発光とは、可視光領域(波長400nm乃至730nm)において発光量子収率が1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下の層である。光電変換層において、発光量子収率が1%を超えると、センサや撮像素子に適用した場合にセンシング性能又は撮像性能に影響を与えるため、好ましくない。発光量子収率とは、吸収されるフォトンに対して、ルミネッセンスによって放出されるフォトンの比である。発光量子収率は、石英ガラスなどの基板上に光電変換層と同様の材料組成の薄膜をサンプルとして作製し、そのサンプルを、薄膜の値を求めるために設計された絶対PL量子収率測定装置を使用して測定することができる。例えば、絶対量子収率測定装置としては、浜松ホトニクス社製「C9920−02」を用いる事ができる。
(光電変換素子)
図7は、本発明の光電変換素子の一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。本発明の光電変換素子は、少なくともアノード5と、カソード4と、アノード5とカソード4との間に配置される第1の有機化合物層としての光電変換層1を有し、該光電変換層1が、上記した特定の有機半導体組成を有している。本実施形態の光電変換素子10は、光電変換層1を挟んで、第2の有機化合物層2と第3の有機化合物層3とを備えた例である。
本実施形態の光電変換素子10を構成するカソード4は、アノード5とカソード4との間に配置されている光電変換層1で発生した正孔を捕集する電極である。また、アノード5は、アノード5とカソード4との間に配置されている光電変換層1で発生した電子を捕集する電極である。カソードは正孔捕集電極とも呼ばれ、アノードは電子捕集電極とも呼ばれる。カソード及びアノードのいずれが基板側に配置されていてもよい。基板側に配置された電極は下部電極とも呼ばれる。
本実施形態の光電変換素子は、カソードとアノードとの間に電圧を印加して用いる素子であってよい。
カソード4の構成材料としては、導電性が高く、透明性を有する材料であれば特に制限されない。具体的には、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらを複数種組み合わせた混合物等が挙げられる。さらに具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属材料及びこれら金属材料の酸化物や窒化物等の導電性化合物(例えば、窒化チタン(TiN)等)、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、及びこれらとITO又は窒化チタンとの積層物等が挙げられる。カソード4の構成材料として、特に好ましくは、窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タンタル及び窒化タングステンから選択される材料である。
アノード5の構成材料として、具体的には、ITO、インジウム亜鉛酸化物、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等が挙げられる。
電極を形成する方法は、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、ITOの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、形成されたITOに、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。電極がTiNの場合、反応性スパッタリング法をはじめとする各種の方法が用いられ、更にアニール処理、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
本実施形態において、第2の有機化合物層2は、一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよく、複数種の材料を有する混合層であってもよい。図7の光電変換素子10において、第2の有機化合物層2は、光電変換層1から移動した正孔をカソード4へ輸送する役割を有する。また第2の有機化合物層2は、カソード4から光電変換層1へ電子が移動するのを抑制する。つまり、第2の有機化合物層2は、正孔輸送層又は電子ブロッキング層として機能し、暗電流の発生を阻止する上で好ましい構成部材である。よって、第2の有機化合物層2は、電子親和力或いはLUMOエネルギーが小さいことが好ましい。
また、本実施形態において、第3の有機化合物層3は、光電変換層1から移動した電子をアノード5へ輸送する役割を有する。また第3の有機化合物層3は、アノード5から光電変換層1へ正孔が流れ込むのを抑制する正孔ブロッキング層であるため、イオン化ポテンシャルが高い層であることが好ましい。第3の有機化合物層3は、一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよく、複数種の材料を有する混合層であってもよい。
本発明において、アノード5とカソード4との間に配置される層は、上述した三種類の層(光電変換層1、第2の有機化合物層2、第3の有機化合物層3)に限定されるものではない。第2の有機化合物層2とカソード4との間、及び第3の有機化合物層3とアノード5の間の少なくとも一方に介在層をさらに設けることができる。この介在層は、発生した電荷を電極にて注入する際の電荷の注入効率を向上させる、もしくは電荷を印加した際に電荷が有機化合物層に注入するのを阻止する目的で設けられる。この介在層を設ける場合、この介在層は有機化合物層であっても、無機化合物層であっても、また、有機化合物と無機化合物とが混在する混合層であってもよい。
図7の光電変換素子10のアノード5は、読み出し回路6と接続されているが、読み出し回路6は、カソード4と接続されていてもよい。読み出し回路6には、光電変換層1において発生した電荷に基づく情報を読み出し、例えば、後段に配された信号処理回路(不図示)に当該情報を伝える役割を果たす。読み出し回路6は、例えば、光電変換素子10において生じた電荷に基づく信号を出力するトランジスタが含まれている。
図7の光電変換素子10において、カソード4の上には無機保護層7が配置されている。無機保護層7は、アノード5と、第3の有機化合物層3と、光電変換層1と、第2の有機化合物層2と、カソード4と、がこの順で積層されてなる部材を保護するための層である。無機保護層7の構成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、アルミニウム酸化物などが挙げられる。酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコンは、スパッタリング法、CVD法により形成することができ、アルミニウム酸化物は、ALD法(原子層堆積法)により形成することができる。無機保護層7の封止性能は、水透過率が、10-5g/m2・day以下であればよい。また、無機保護層7の膜厚は特に限定されるものではないが、封止性能の観点から0.5μm以上であることが好ましい。一方で封止性能を保てるならば薄い方がよく、1μm以下であることが特に好ましい。無機保護層7が薄い方が好ましい理由は、二次元に素子を並べエリアセンサとして用いる際に、光電変換層からカラーフィルタまでの距離が短くできるほど混色を低減させる効果があるためである。
図7の光電変換素子10において、無機保護層7の上には、カラーフィルタ8が配置されている。カラーフィルタ8は、例えば、可視光のうち赤色の光を透過するカラーフィルタ等が挙げられる。また本発明において、カラーフィルタ8の設け方としては、光電変換素子一個あたり一つであってもよいし、光電変換素子複数個あたり一つであってもよい。さらにカラーフィルタ8を配列する際には、例えば、隣接する光電変換素子とで、ベイヤー配列を形成してよい。
図7の光電変換素子10において、カラーフィルタ8の上に光学部材を配置しても良く、図7においては、光学部材としてマイクロレンズ9が配置されている。マイクロレンズ9は、入射した光を光電変換部である光電変換層1に集光する役割を果たす。また本発明において、マイクロレンズ9の設け方としては、光電変換素子一個あたり一つであってもよいし、光電変換素子複数個あたり一つであってもよい。本発明においては、光電変換素子一個あたり一つのマイクロレンズ9を設けるのが好ましい。
尚、図7においては、カソード4側にマイクロレンズ9を配置して光入射側としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、アノード5側に無機保護層7、カラーフィルタ8、マイクロレンズ9を設けても良い。その場合、先に示したカソード4及びアノード5のそれぞれに好ましい電極材料は逆になる。
また、図7においては図示されていないが、本発明の光電変換素子は、基板を有していてもよい。基板として、例えば、シリコン基板、ガラス基板、フレキシブル基板等が挙げられる。基板側にアノード5及びカソード4のいずれを配置するかは限定されず、基板上にアノード5/光電変換層1/カソード4の順でもよいし、カソード4/光電変換層1/アノード5でもよい。
以上が光電変換素子における主な構成である。実際には該光電変換素子は作製後にアニールされることが好ましいが、そのアニール条件によって本発明は特に限定されるものではない。
本発明に係る光電変換素子は、光電変換層1に用いる有機半導体を選択することで、異なる色の光に対応する光電変換素子とすることができる。異なる色に対応するとは、光電変換層1が光電変換する光の波長領域が変化することを意味する。
また、それぞれ異なる色に対応する複数の光電変換素子を積層することで、カラーフィルタが必要ない光電変換装置とすることもできる。
図8は図7の光電変換素子10を用いた一画素20の等価回路図である。光電変換素子10のアノード5の下層は、半導体基板内に形成された電荷蓄積部15に電気的に接続され、更に増幅トランジスタ23に接続される。画素回路は、光電変換素子10からの信号を増幅する増幅トランジスタ(SF MOS)23、画素を選択する選択トランジスタ(SEL MOS)24、ノードBをリセットするリセットトランジスタ(RES MOS)22を含む。
このような構成により、増幅トランジスタ23が光電変換素子10で生じた信号を出力することができる。光電変換素子10と増幅トランジスタ23とは短絡されてもよい。或いは、図8に示すように光電変換素子10と増幅トランジスタ23との間の電気経路に、スイッチとして転送トランジスタ25が配されてもよい。転送トランジスタ25は、切り替え制御パルスpTXによりオンとオフとが切り替えられるように制御される。図8の画素構成では、光電変換素子10と増幅トランジスタ23との電気的な接続を表すノードBが示されている。ノードBは、電気的にフローティングとすることが可能となるように構成される。ノードBが電気的にフローティングになることにより、ノードBの電圧が光電変換素子10で生じた電荷に応じて変化しうる。従って、増幅トランジスタ23に光電変換素子10で生じた電荷に応じた信号を入力することができる。
図8の画素構成では、半導体基板内のノードBの電圧をリセットするリセットトランジスタ22を有する。リセットトランジスタ22は、リセット電圧(不図示)をノードBに供給する。リセットトランジスタ22は、リセット制御パルスpRESによりオンとオフとが切り替えられるように制御される。リセットトランジスタ22がオンすることで、ノードBにリセット電圧が供給される。電荷蓄積部15は、光電変換素子10で発生した電荷を蓄積する領域であり、半導体基板内にP型領域及びN型領域を形成して構成される。
増幅トランジスタ23のドレイン電極には、電源電圧が供給される。増幅トランジスタ23のソース電極は、選択トランジスタ24を介して、出力線28に接続される。出力線28には、電流源26が接続される。増幅トランジスタ23及び電流源26は画素ソースフォロワ回路を構成し、光電変換素子10からの信号電荷が蓄積された電荷蓄積部15の信号電圧を出力線28に出力する。出力線28には、さらに列回路27が接続される。出力線28に出力された画素20からの信号は、列回路27に入力される。尚、図8中、29は配線である。
(光電変換装置)
図9は、本発明の光電変換素子を用いた光電変換装置の一実施形態の構成を模式的に示す平面図である。本実施形態の光電変換装置は、撮像領域31と、垂直走査回路32と、2つの読み出し回路33と、2つの水平走査回路34と、2つの出力アンプ35を備えている。撮像領域31以外の領域が回路領域36である。
撮像領域31は、複数の画素が2次元状に配列されて構成される。画素の構造は図8に示された画素20の構造を適宜用いることができる。また、上記した、本発明の光電変換素子10を積層して画素20を構成しても良い。読み出し回路33は、例えば、列アンプ、CDS回路、加算回路等を含み、垂直走査回路32によって選択された行の画素から垂直信号線(図8の28)を介して読み出された信号に対して増幅、加算等を行う。列アンプ、CDS回路、加算回路等は、例えば、画素列又は複数の画素列毎に配置される。水平走査回路34は、読み出し回路33の信号を順番に読み出すための信号を生成する。出力アンプ35は、水平走査回路34によって選択された列の信号を増幅して出力する。
以上の構成は、光電変換装置の一つの構成例に過ぎず、本実施形態は、これに限定されるものではない。読み出し回路33と水平走査回路34と出力アンプ35とは、2系統の出力経路を構成するため、撮像領域31を挟んで上下に1つずつ配置されている。しかし、出力経路は3つ以上設けられていてもよい。各出力アンプから出力された信号は信号処理部で画像信号として合成される。
(光エリアセンサ)
本発明の光電変換素子を、面内方向に二次元に配置させることで光エリアセンサの構成部材として用いることができる。光エリアセンサは、面内方向に二次元に配置された複数の光電変換素子を有している。このような構成において、複数の光電変換素子で生じた電荷に基づく信号を個別に出力することで、所定の受光エリアにおける光強度の分布を表わす情報を得ることができる。尚、この光エリアセンサに含まれる光電変換素子を、上述した光電変換装置に換えてもよい。
(撮像素子)
さらに、本発明の光電変換素子は、撮像素子の構成部材として用いることができる。撮像素子は、複数の画素(受光画素)を含む。複数の画素は、複数の行及び複数の列を含む行列に配置されている。このような構成において、各画素からの信号を1つの画素信号として出力することで、画像信号を得ることができる。撮像素子において、複数の受光画素はそれぞれ少なくとも1つの光電変換素子と、該光電変換素子に接続されている読み出し回路を有している。読み出し回路は、例えば、光電変換素子において生じた電荷に基づく信号を出力するトランジスタを含む。読み出された電荷に基づく情報が撮像素子に接続されているセンサ部に伝えられる。センサ部としては、CMOSセンサやCCDセンサが挙げられる。撮像素子では、それぞれの画素で取得した情報が、センサ部に集められることで画像を得ることができる。
撮像素子は、例えば、カラーフィルタ等の光学フィルタを、各受光画素にそれぞれ対応するように有してもよい。光電変換素子が、特定の波長の光に対応している場合、この光電変換素子が対応可能な波長領域を透過するカラーフィルタを有することが好ましい。カラーフィルタは、受光画素1つにつき1つ設けてもよいし、複数の受光画素につき1つのカラーフィルタを設けてもよい。尚、撮像素子が有する光フィルタは、カラーフィルタに限定されず、他にも、赤外線以上の波長を透過するローパスフィルタ、紫外線以下の波長を透過するUVカットフィルタ、ロングパスフィルタ等が使用できる。
撮像素子は、マイクロレンズ等の光学部材を、例えば、各受光画素にそれぞれ対応するように有してもよい。撮像素子が有するマイクロレンズは、外部からの光を撮像素子が有する光電変換素子を構成する光電変換層に集光するレンズである。マイクロレンズは、受光画素1つにつき1つ設けてもよいし、複数の受光画素につき1つ設けてもよい。受光画素が複数設けられている場合は、複数(2以上の所定数)の受光画素につき1つのマイクロレンズが設けられるのが好ましい。
(撮像装置)
本発明に係る光電変換素子は、撮像装置に用いることができる。撮像装置は、複数のレンズを有する撮像光学部と、該撮像光学部を通過した光を受光する撮像素子と、を有し、該撮像素子として本発明の光電変換素子を用いる。また、撮像装置は、撮像光学部と接合可能な接合部と、撮像素子とを有する撮像装置であってもよい。ここでいう撮像装置とは、より具体的には、デジタルカメラやデジタルスチルカメラ等をいう。撮像装置は、携帯端末に付加されていてよい。携帯端末は、特に限定されないが、スマートフォン、タブレット端末等であってよい。
また撮像装置は、外部からの信号を受信する受信部をさらに有してもよい。受信部が受信する信号は、撮像装置の撮像範囲、撮像の開始及び撮像の終了の少なくともいずれかを制御する信号である。また撮像装置は、撮像により取得した画像を外部に送信する送信部をさらに有してもよい。このように、受信部や送信部を有することで、撮像装置をネットーワークカメラとして用いることができる。
また、撮像装置は、外部からの信号を受信する受信部をさらに有してもよい。受信部が受信する信号は、撮像装置の撮像範囲、撮像の開始、撮像の終了の少なくともいずれかを制御する信号である。また、撮像装置は、撮像した画像を外部に送信する送信部をさらに有してもよい。このように、受信部や送信部を有することで、ネットーワークカメラとして用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に記載の範囲内に限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた化合物を示す。
Figure 2018129505
実施例で用いた化合物の酸化電位などの電気化学特性の評価は、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって行うことができる。
CV測定サンプルは、0.1Mテトラブチルアンモニウム過塩素酸塩のオルトジクロロベンゼン溶液10mLに各化合物を1mg程度溶解させ、窒素による脱気処理を行うことにより調製した。測定には三電極法を用い、各電極には、非水溶媒系Ag/Ag+参照電極、直径0.5mm、長さ5cmの白金カウンター電極、内径3mmのガラス状カーボン作用電極(いずれもビー・エー・エス(株)製)を用いた。装置にはALS社製のモデル660C、電気化学アナライザーを用い、測定の挿引速度は、0.1V/sとした。このときの波形の例を図10に示す。バイアス極性を変えることで同様な方法で酸化電位(Eox)と還元電位(Ered)を測定することができる。表2に各材料の酸化電位、還元電位を示す。
Figure 2018129505
Si基板の上に、カソード、電子ブロッキング層(EBL)、光電変換層、正孔ブロッキング層(HBL)、アノードを順次形成して光電変換素子を作製した。電子ブロッキング層、光電変換層、正孔ブロッキング層には、上記した化合物1乃至14を表3に示す組合せで用いた。作製手順は以下の通りである。
先ず、配線層、絶縁層が順次積層され、各画素に対応する箇所に配線層からコンタクトホールが絶縁層に開口を設けて導通可能なように形成されているSi基板を準備した。上記コンタクトホールは配線によって基板端まで引き出されパッド部が形成されている。このコンタクトホール部に重なるようにIZO電極を成膜し所望のパターニングを行い3mm2となるIZO電極(カソード)を形成した。この時、IZO電極の膜厚を100nmとした。このIZO基板上に、下記構成で表3の電子ブロッキング層、光電変換層、正孔ブロッキング層を順次真空蒸着し、さらにカソードと同様のIZO層をスパッタにより成膜してアノードを形成した。
アノードを形成後、ガラスキャップと紫外線効果樹脂を使って中空封止を行い、光電変換素子を得た。このようにして得られた光電変換素子は素子特性を安定させるために、170℃のホットプレート上で封止面を上向きとして1時間ほどアニールした。
得られた光電変換素子に5Vの電圧を印加して流れる電流値を確認した所、いずれの素子でも(明所での電流)/(暗所での電流)=10倍以上の比であるため光電変換素子として機能していることを確認した。次いで、光電変換素子を60℃の恒温槽内に保持し、半導体パラメータアナライザー(Agilent社「4155C」)に配線されたプロバーを電極にコンタクトさせて暗電流を測定した。
表3に光電変換素子の電子ブロッキング層、光電変換層、正孔ブロッキング層に用いた化合物と、その組成を示す。尚、以下の表において、「質量%」は、三元構成では第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体の合計、二元構成では第一の有機半導体と第二の有機半導体の合計、を100質量%とした時の、各有機半導体の含有量を示す。また、以下の表の説明においても、「含有量」とは、上記三元構成又は二元構成を100質量%とした時の各有機半導体の含有量を意味する。また、表中の「質量比」は、第二の有機半導体の含有量に対する第三の有機半導体の含有量である。
Figure 2018129505
以下、比較する実施例及び比較例を抜き出した表に基づいて説明する。
Figure 2018129505
表4に示す比較例1は、光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての化合物3の2材料によって構成されている。比較例2、3、実施例1乃至実施例4は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ25質量%である化合物3に加え、第三の有機半導体としての化合物4を含有することによって構成されている。ここで、比較例2、3、実施例1乃至4における相対暗電流は、比較例1に対する暗電流の比である。表4から、第三の有機半導体の含有量が3質量%以上となる実施例1乃至4は、第三の有機半導体を有さない比較例1に対して、暗電流が低下することが分かる。一方、第三の有機半導体の含有量が3質量%未満である比較例2、3は、第三の有機半導体を有さない比較例1に対して、暗電流の低下は確認できなかった。また、第二の有機半導体に対する第三の有機半導体の質量比では、該質量比が0.12以上となる実施例1乃至4は、第三の有機半導体を有さない比較例1に対して、暗電流が低下した。
Figure 2018129505
表5に示す、比較例1、4、5、6、7は光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての化合物3の2材料によって構成されている。実施例1、5、6、7、比較例8は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての、比較例1、4、5、6、7と同じである化合物3に加え、第三の有機半導体としての化合物4を3質量%含有することにより構成されている。ここで、実施例1、5、6、7、比較例8における相対暗電流は、それぞれ比較例1、4、5、6、7に対する暗電流の比である。表5から、第二の有機半導体の含有量が6質量%よりも大きくなる実施例1、5、6、7は、第三の有機半導体を有さない比較例1、4、5、6に対して、暗電流が低下することが分かる。一方、第二の有機半導体の含有量が6質量%未満である比較例8は、第三の有機半導体を有さない比較例7に対して、暗電流の低下は確認できなかった。また、実施例1、5、6の相対暗電流より、第二の有機半導体の含有量が10質量%以上の場合、第三の有機半導体を混合する事による暗電流低減効果が大きく、好ましいことが分かる。また、実施例1、5の相対暗電流より、第二の有機半導体の含有量が17質量%以上の場合、第三の有機半導体を混合する事による暗電流低減効果が大きく、より好ましいことが分かる。
Figure 2018129505
表6に示す、比較例1は光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての化合物3の2材料によって構成されている。実施例3、8乃至11は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ25質量%である化合物3に加え、第三の有機半導体としての、それぞれ表6に示す化合物を含有することにより構成されている。また、表6に示す光電変換素子において、化合物2はn型半導体であり、化合物3乃至8はp型半導体である。ここで、実施例3、8乃至11における相対暗電流は、比較例1に対する暗電流の比である。表6から、下記式(13)、式(14)におけるΔEox、ΔEredが0以上である、つまり、下記式(9)、式(10)の関係を満たす、実施例3、8乃至10は、第三の有機半導体含有による暗電流低減効果が大きいことが分かる。
ΔEox=(Eox3)−(Eox2) ・・・(13)
ΔEred=(Ered1)−(Ered3) ・・・(14)
Eox2≦Eox3 ・・・(9)
Ered1≧Ered3 ・・・(10)
ここで、実施例11はΔEoxが負である。実施例11の第三の有機半導体含有による暗電流低減効果は、ΔEoxが0以上である実施例3、8乃至10に比べて小さいことが分かる。
一方、比較例9は光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての化合物7の2材料によって構成されている。実施例12は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ25質量%である化合物7に加え、第三の有機半導体としての化合物3を含有する事によって構成されている。ここで、実施例12における相対暗電流は、比較例9に対する暗電流の比である。
これによって、ΔEoxが負である実施例11、12は、第三の有機半導体を混合する事による暗電流低減効果は認められるが、ΔEoxが0以上である、実施例3、8乃至10よりも、暗電流低減効果が小さいことが分かる。
Figure 2018129505
表7に示す、比較例10は光電変換層が第一の有機半導体としての化合物7と、第二の有機半導体としての化合物2の2材料によって構成されている。実施例13は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物7と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ40質量%である化合物2に加え、第三の有機半導体としての化合物3を含有することによって構成されている。実施例1乃至12、比較例1乃至9は、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体であるのに対し、比較例10、実施例13は、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型有機半導体である。ここで、実施例13における相対暗電流は、比較例10に対する暗電流の比である。
これによって、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型半導体である場合でも、第三の有機半導体を含有することによる暗電流低減効果が示された。
Figure 2018129505
表8は実施例3の素子構成に対して、電子ブロッキング層、光電変換層、正孔ブロッキング層を構成する化合物を異なる化合物に変更しても、化合物の種類に因らず、第三の有機半導体を用いることによる暗電流低減効果が発現することを確認するものである。
表8中の実施例3、14乃至20における相対暗電流は、それぞれ、比較例1、13乃至18に対する暗電流の比である。実施例14乃至20の素子構成は、実施例3の素子構成に対して、電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、第一の有機半導体、第二の有機半導体、第三の有機半導体のいずれか1つ乃至2つを、異なる化合物に変更した素子構成である。表8より、実施例14乃至20は、第三の有機半導体を混合することによる暗電流低減効果が確認できた。
実施例20、21、22、比較例19、22は、第二の有機半導体である化合物13と、第三の有機半導体である化合物14の含有量を変化させた素子構成である。実施例20、21、比較例19の相対暗電流は、比較例18に対する暗電流の比である。また、実施例22、比較例22の相対暗電流は、それぞれ比較例20、21に対する暗電流の比である。第二の有機半導体の含有量6質量%以上で且つ、第三の有機半導体の含有量が3質量%以上を満たす実施例20、21、22は、第三の有機半導体を混合することによる暗電流低減効果が確認できた。一方、第二の有機半導体の含有量が6質量%以上で且つ第三の有機半導体の含有量が3質量%以上を満たさない比較例19は、第三の有機半導体を混合することによる暗電流低減効果を確認できなかった。また、第三の有機半導体の含有量が3質量%以上で、第二の有機半導体の含有量が6質量%以上を満たさない比較例22は、第三の有機半導体を混合することによる暗電流低減効果を確認できなかった。
(検証実験)
暗電流の発生原因を解析するために、比較例1の光電変換素子の暗電流の温度依存性を測定してアレニウスプロットを行い、下記式(13)に従い活性化エネルギーを求めた。その結果を図11に示す。60℃(T/1000=3.0)くらいから高温側に向かって傾きが大きくなる。この傾きから次式(13)に従い活性化エネルギーを求めた。
Figure 2018129505
ここでT:温度、kB:ボルツマン定数、Ea:活性化エネルギー、J:温度Tでの電流値、J0:頻度因子である。
比較例11、12、実施例8の光電変換素子についても、比較例1と同様に活性化エネルギーを求めた。表9には、各光電変換素子における、光電変換層の構成と、化合物3を25質量%とした光電変換層が二元構成の光電変換素子(比較例1)の値によって規格化した、活性化エネルギーと暗電流をまとめた。
Figure 2018129505
表9より、光電変換層が二元構成の素子は、第二の有機半導体である化合物3の含有量を増やすにつれて、活性化エネルギーが小さくなり、暗電流が増大する事が分かる。その理由としては、第二の有機半導体の含有量が増えると、第二の有機半導体同士で会合し、HOMO準位の状態密度のエネルギー分布が広がるために、活性化エネルギーが小さくなり、暗電流が増大するためと考えられる。
一方、実施例8の光電変換素子は、第三の有機半導体を混合している分、p型半導体の含有量(第二の有機半導体と第三の有機半導体の合計量)としては、比較例1よりも多いにも関わらず、活性化エネルギーは大きくなり、暗電流は低下している。これは、第一の有機半導体と第二の有機半導体に加えて第三の有機半導体を混合すると、第二の有機半導体同士が会合し、スタッキングによる相互作用が強まることを抑制することができるためと考えられる。その結果、HOMO準位の状態密度のエネルギー的な広がりを抑える事ができると考えられる。
Figure 2018129505
表10に示す、比較例1は光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての化合物3の2材料によって構成されている。実施例3は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ25質量%である化合物3に加え、第三の有機半導体としての化合物4を含有することによって構成されている。実施例3では、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体、第三の有機半導体がp型半導体である。実施例23は、光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ25質量%である化合物3に加え、第三の有機半導体としての化合物10を含有することによって構成されている。実施例23では、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体、第三の有機半導体がn型半導体である。
比較例1に対する暗電流の比である相対暗電流は、実施例23よりも実施例3の方が小さかった。ここから、第一の有機半導体がn型半導体、第二の有機半導体がp型半導体である場合は、第三の有機半導体がp型半導体であることが好ましいことが分かる。
比較例10は光電変換層が第一の有機半導体としての化合物7と、第二の有機半導体としての化合物2の2材料によって構成されている。実施例13は、光電変換層が、第一の有機半導体としての化合物7と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ40質量%である化合物2に加え、第三の有機半導体としての化合物3を含有することによって構成されている。実施例13では、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型半導体、第三の有機半導体がp型半導体である。実施例24は、光電変換層が第一の有機半導体としての化合物2と、第二の有機半導体としての含有量が比較例1と同じ40質量%である化合物3に加え、第三の有機半導体としての化合物10を含有することによって構成されている。実施例24では、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型半導体、第三の有機半導体がn型半導体である。
比較例10に対する暗電流の比である相対暗電流は、実施例13よりも実施例24の方が小さかった。ここから、第一の有機半導体がp型半導体、第二の有機半導体がn型半導体である場合は、第三の有機半導体がn型半導体であることが好ましいことが分かる。
(変換効率の評価結果)
高S/N比を得る第一、第二、第三の有機半導体の組合せについて検証した。先ず、一対のp型−n型半導体の組み合わせ毎の変換効率(η)を事前に評価しておくために、各p型半導体を25質量%含んだ光電変換層を有する光電変換素子を、上記実施例と同様な方法で作製して評価を行った。下記表11には一対のp型−n型半導体の組み合わせによる光電変換素子のEQEピークと変換効率について示した。変換効率(η)は、
変換効率(η)=EQE/光電変換層の吸収率 ・・・(8)
の関係より、EQE及び光電変換層の吸収率を別途求めてから計算した値である。EQEピーク波長は、暗所に置いた光電変換素子に対して、分光感度光源と半導体パラメータアナライザー(Agilent社「4155C」)を用いて、各波長の光を照射時と非照射時の電流を測定して光電流を求めた。その光電流を電子数に換算し、入射光子数で除してEQEとした。それにより各波長のEQEを測定して分光感度特性を取得し、最も長波長側の感度ピーク波長を求めた。また、各材料の励起エネルギーの指標としてバンドギャップも示した。このバンドギャップはそれぞれの100%膜を100nm程度の膜厚で真空蒸着により成膜した薄膜の吸収スペクトル測定から算出した。
光電変換層の変換効率は、当該光電変換層を有する光電変換素子の変換効率(η)から見積もることができる。
Figure 2018129505
表11における変換効率(η)の評価基準は、駆動電圧5Vにおける光電変換素子の変換効率で、下記のようにした。
A:η≧80
B:80>η≧60
C:η<60
尚、上記の光電変換素子構成においては、第二の有機半導体の含有量を25質量%としているが、各組み合せを比較する上での指標としているのであり、変換効率(η)を評価するために25質量%に限定されるものではない。例えば、本発明者等は上記の変換効率(η)は第二の有機半導体の含有量が15乃至50質量%程度まではほぼ一定であることを確認しており、そのような含有量範囲を踏まえて最大の変換効率値が決定されていればよい。
また、上記の結果から化合物2のフラーレンC60をn型半導体として用いても変換効率(η)には影響がないことがわかる。これはC60の可視部における吸収遷移が禁制遷移でありモル吸光係数が1000molL-1cm-1未満でありエネルギー受容体として有効に機能しないことを示している。
上記を踏まえて、表2に記載の第一の有機半導体層を形成する第一、第二、第三の有機半導体を下記表12に示す構成のようにした光電変換素子を作製し、その光電変換素子の変換効率(η)を評価した。
表12には、よりS/N比の優れた光電変換素子を得るために、表11の結果をもとに、本発明の光電変換素子の光電変換層の構成と変換効率(η)との関係について示す。尚、下記表12中の実施例の光電変換素子は、光電変換層以外の部分は上記した実施例と同様の方法で作製したものである。また変換効率(η)は表11における感度ピークに近い500nmの値を採用し本発明の効果を検証した。
Figure 2018129505
上記結果について解説する。実施例25乃至50にあるように、長波長側にEQEピークを有する方が変換効率(η)も高いp型−n型半導体の組み合わせを有する光電変換素子においては変換効率(η)が高かった。実施例25乃至30においては、化合物2と4のみの光電変換素子に対して、より長波長側にEQEピークを有し、変換効率(η)の高い化合物2と3の組合せを含む本発明の光電変換素子は、変換効率(η)がより高い結果となった。特に、実施例31乃至35,38乃至39,44乃至46の光電変換素子においては、化合物2と化合物6,13,15,16,18のいずれかとの組み合わせを含むことにより、特に高い変換効率(η)を示していた。
一方で化合物2と、化合物4、5、14の中で組み合わせたp型−n型半導体の組み合わせを有する光電変換素子は実施例48乃至52に示すように、変換効率(η)が低かった。これは、実施例48乃至52の素子は、化合物2と14のみの光電変換素子に対して、より長波長側にEQEピークを有し、変換効率(η)の低い化合物2と4または化合物2と5の組み合わせを含む素子だからである。
また、実施例47においては、励起エネルギーを受容する側を構成するp型−n型半導体の組み合わせとなる化合物2と化合物3のうち、化合物3の含有量が少ないことで、有効な励起エネルギー捕集ができていないため、変換効率は上昇しなかった。
また、実施例25乃至52では、これまでの実施例で挙げたような第三の有機半導体の含有に伴い0.1乃至0.6倍程度の暗電流の低下効果が見られた。尚、実施例3と実施例25、実施例8と実施例40、実施例20と実施例43はそれぞれ同じ組成の光電変換層を有している。
よって、第一、第二、第三の有機半導体から選択される、一種のp型半導体と一種のn型半導体から構成される、互いに異なる光電変換層を備えた2つの光電変換素子において、短波長側にEQEピークを持つ光電変換素子より長波長側にEQEピークを有する光電変換素子の変換効率(η)が高いことにより、高い感度の光電変換素子が得られる。且つ、暗電流も低下する。これにより高いS/N比の光電変換素子が得られる。
(溶解度パラメータの計算結果)
第二、第三の有機半導体同士が選択的に混和しやすくなることで、第二の有機半導体同士の会合による、HOMO、LUMO準位の状態密度のエネルギー的な広がりを形成する現象が抑制される。実施例中のいくつかの有機半導体について計算を行い、SP値が前述した式(2)乃至(7)で示される関係になっているかを検証した。以下に各有機半導体のSP値の関係をまとめた表13を示す。なお、SP値において、第一の有機半導体である化合物2はC60であることから非特許文献3に記載の値を用いた。第二と第三の有機半導体のSP値については、非特許文献2に基づき計算により求めた。
Figure 2018129505
また、表13の検証例Eに含まれる化合物6をジメチルアントラセン(SP3=20.2)に替えた以外は同様の素子を作製した。その素子の暗電流を評価したところ相対暗電流(三元/二元)は、約0.9であり、暗電流の低下は確認されたが、暗電流の低下量は他の素子に比べて小さかった。
以上の通り、本発明に係る三元構成の光電変換素子は、第三の有機半導体の質量を3質量%以上とすることで、低い暗電流特性が得られている。
以上のことから本発明の有機光電変換素子は、低い暗電流という特性の優れた素子となる。よって、本発明の有機光電変換素子を用いた光エリアセンサや撮像素子、撮像装置においては、光電変換素子に由来する暗電流ノイズを少なくすることができる。
1:光電変換層、4:カソード、5:アノード、6:読み出し回路、10:光電変換素子

Claims (18)

  1. 少なくとも、アノードと、光電変換層と、カソードと、をこの順で有し、前記光電変換層が少なくとも第一の有機半導体と第二の有機半導体と第三の有機半導体とからなる光電変換素子において、
    前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体はいずれも低分子有機半導体であり、
    前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体のうち、一方がp型半導体であり、他方がn型半導体であり、
    前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の質量比が、
    第一の有機半導体≧第二の有機半導体≧第三の有機半導体
    であり、
    前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の合計を100質量%とした時、前記第二の有機半導体の含有量が6質量%以上であり、前記第三の有機半導体の含有量が3質量%以上であることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記第二の有機半導体に対する、前記第三の有機半導体の質量比が、0.12以上であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記第一の有機半導体と前記第二の有機半導体と前記第三の有機半導体の合計を100質量%とした時、前記第二の有機半導体の含有量が10質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記第一の有機半導体がn型半導体であり、前記第二の有機半導体がp型半導体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  5. 前記第三の有機半導体がp型半導体であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
  6. 前記第二の有機半導体の酸化電位をEox2、前記第三の有機半導体の酸化電位をEox3、前記第一の有機半導体の還元電位をEred1、前記第三の有機半導体の還元電位をEred3とした時、各電位の関係が、
    Eox2≦Eox3
    Ered1≧Ered3
    を満たすことを特徴とする請求項4又は5に記載の光電変換素子。
  7. 前記第一の有機半導体の溶解度パラメータをSP1とし、前記第二の有機半導体の溶解度パラメータをSP2とし、前記第三の有機半導体の溶解度パラメータをSP3とする場合、前記SP1、前記SP2、前記SP3が、下記式(2)および(3)を満たすことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光電変換素子。
    |SP1−SP2|>|SP2−SP3| ・・・(2)
    |SP1−SP3|>|SP2−SP3| ・・・(3)
  8. 前記SP1、前記SP2、前記SP3が下記式を満たすことを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
    |SP1−SP2|≧2.5 ・・・(4)
    |SP1−SP3|≧2.5 ・・・(5)
    |SP2−SP3|≦2.5 ・・・(6)
  9. 前記SP2および前記SP3が下記式を満たすことを特徴とする請求項7または8に記載の光電変換素子。
    |SP2−SP3|≦1 ・・・(7)
  10. 前記第一の有機半導体、前記第二の有機半導体、前記第三の有機半導体のうち、p型半導体である有機半導体が、下記一般式[1]乃至[5]で示される化合物、キナクリドン誘導体、3H−フェノキサジン−3−オン誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光電変換素子。
    Figure 2018129505
    (一般式[1]において、
    1は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基を表す。
    1、n2、n3はそれぞれ独立に0乃至4の整数を表す。
    1乃至X3は窒素原子、硫黄原子、酸素原子、置換基を有してもよい炭素原子のいずれかを表す。
    Ar1及びAr2は置換或いは無置換のアリーレン基、又は置換或いは無置換の二価の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。Ar1及びAr2が複数ある場合はそれぞれ同じでも異なってもよく、Ar1及びAr2はX2或いはX3が炭素原子の場合、互いに結合して環を形成してもよい。
    1はハロゲン原子、シアノ基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のヘテロアリール基又は以下の一般式[1−1]乃至[1−9]で表される置換基のいずれかを表す。
    Figure 2018129505
    (一般式[1−1]乃至[1−9]において、R521乃至R588は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。*は炭素原子との結合位置を表す。))
    Figure 2018129505
    (一般式[2]において、
    20乃至R29は水素原子、ハロゲン原子、置換或いは無置換のアルキル基、置換或いは無置換のアルコキシ基、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基、置換或いは無置換のビニル基、置換或いは無置換のアミノ基、シアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。R20乃至R29のうちの隣り合う2つは互いに結合して環を形成してもよい。)
    Figure 2018129505
    (一般式[3]乃至[5]において、
    Mは金属原子であり、前記金属原子は酸素原子又はハロゲン原子を置換基として有してもよい。
    1乃至L9は金属Mに配位する配位子であって、置換或いは無置換のアリール基、置換或いは無置換の複素環基からなり、それぞれL1乃至L9のうちの隣り合う2つは互いに結合して環を形成してもよい配位子を表す。)
  11. 前記第一の有機半導体及び前記第二の有機半導体のうち、n型半導体である有機半導体は、フラーレン又はフラーレン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  12. 前記フラーレン又はフラーレン誘導体は、フラーレンC60であることを特徴とする請求項11に記載の光電変換素子。
  13. 前記第一の有機半導体、前記第二の有機半導体及び前記第三の有機半導体から選択される、一種のp型半導体と一種のn型半導体から構成される、互いに異なる光電変換層を備えた2つの光電変換素子を構成した場合に、入射光に対する外部量子効率の分光感度スペクトルにおけるピークがより長波長側に存在する光電変換素子が、前記ピークがより短波長側に存在する光電変換素子よりも、(外部量子効率/光電変換層の吸収率)で示される変換効率が高いことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  14. 光電変換素子を備えた複数の画素を有し、前記複数の画素が二次元に配置されている光エリアセンサであって、
    前記光電変換素子は請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光電変換素子であることを特徴とする光エリアセンサ。
  15. 光電変換素子と前記光電変換素子に接続されている読み出し回路とを備えた複数の画素、及び、前記画素に接続されている信号処理回路、を有する撮像素子であって、
    前記光電変換素子は請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光電変換素子であることを特徴とする撮像素子。
  16. 複数のレンズを有する撮像光学部と、前記撮像光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有し、前記撮像素子が請求項15に記載の撮像素子であることを特徴とする撮像装置。
  17. 前記撮像装置は、外部からの信号を受信する受信部をさらに有し、前記信号は、前記撮像装置の撮像範囲、撮像の開始、撮像の終了の少なくともいずれかを制御する信号であることを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
  18. 前記撮像装置は、取得した画像を外部に送信する送信部をさらに有することを特徴とする請求項16又は17に記載の撮像装置。
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