JP2018129140A - リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】サブミクロン程度に微粉砕したスラリーの濃度を高く保ちつつ、スラリー粘度を適度な範囲にでき、量産性に優れたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法の提供。【解決手段】原料を粉砕混合してスラリーを得る粉砕混合工程と、スラリーを噴霧乾燥する造粒工程と、造粒粉を焼成して、下記式:Li1+aM1O2+α(M1はLi以外の金属元素で少なくともNiを含み、M1中Niが70原子%超;−0.1≦a≦0.2;0.2≦α≦0.2)で表されるリチウム複合酸化物を得る焼成工程を有するリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であり、原料が遷移金属水酸化物を含むM1化合物とリチウム塩を含み、粉砕混合工程において、粉砕した原料の平均粒径を0.1〜1μmとし、スラリーが水及びポリアクリル酸アンモニウムを含み、水及び原料の合計量に対する原料の濃度を40〜60質量%とする、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池の正極を構成する正極活物質としては、R−3mに帰属される層状岩塩型の結晶構造(以下、「層状構造」ということがある)を持ち、組成式LiM1Oで表される材料(層状構造化合物、M1はLi以外の金属元素である)が広く使用されている。金属元素M1としてNiを多く含む場合、Niの割合が高いほど容量が向上する傾向にあり、特に、金属元素M1中のNiの割合が70原子%を超える場合には、180Ah/kgを超える高い可逆容量を得ることも可能となり、エネルギー密度を向上させることができる。
従来、Ni含有量の多い高容量のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法として、リチウム塩と共沈法で作製した遷移金属の炭酸塩とを混合して焼成する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、リチウム二次電池の製造にあたり、CoとNiの共沈により得られたCoとNiの混合物を用いて、式(I):Li(Co1−yNi)O(式中、yは0.75<y≦0.9である)で示されるリチウム(コバルト−ニッケル)酸化物を合成し、上記式(I)で示されるリチウム(コバルト−ニッケル)酸化物から充電によりリチウムの一部を抜いた式(II):Li(Co1−yNi)O(式中、xは0<x<1で、yは0.75<y≦0.9である)で示されるリチウム(コバルト−ニッケル)酸化物を正極活物質として用いるリチウム二次電池の製造方法が開示されている。
一方、正極活物質の製造方法として、リチウム塩と遷移金属化合物及び水とを混合してスラリーを調製し、これをサブミクロンレベルまで粉砕混合し、乾燥した後、焼成する方法も提案されている。例えば、特許文献2には、炭酸リチウム粉末と、比表面積が10m/g以上の酸化コバルト粉末及び塩基性炭酸マグネシウム粉末とを、モル比Li/(Co+Mg)が0.98以上、1.05以下となるように秤取し、ボールミル中で水を添加して混合し、攪拌混合機中で混合しながら乾燥し、酸素含有雰囲気中で、温度800℃以上、1000℃以下で、5〜10時間、熱処理する非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法が開示されている。
特開平08−236117号公報 特開2003−331843号公報
上記特許文献1に記載の方法では、正極活物質の形状及び粒径を、共沈法で合成する遷移金属の炭酸塩の形状及び粒径によって制御しており、遷移金属の炭酸塩を粉砕すること無しにリチウム塩と混合している。それゆえ、リチウム塩と遷移金属の組成均一性を確保するため、化学量論組成より過剰にリチウム塩を添加する必要がある。また、共沈法は、正極活物質の形状が球状となり、粒径が均一になるため、充填率を高くすることができるという利点があるが、大量に製造するためには、沈殿物を含む化学的液体を大量に処理するための設備が必要であり、費用がかかるという問題があった。
また、上記特許文献2のようにスラリーの粉砕混合によって正極活物質を製造する場合、量産化を考慮すると、スラリー濃度(水、リチウム塩及び遷移金属化合物の合計量に対するリチウム塩及び遷移金属化合物の割合)を高くする必要がある。しかし、スラリー濃度を高くした状態で粉砕をサブミクロン程度にまで進めると、スラリーの粘度が上昇し、スラリーをポンプで搬送することが困難となり、次の乾燥工程に進めないという問題があった。また、スラリーによる製造は、化学量論組成でリチウム塩と遷移金属化合物との組成均一性が得られるが、粉砕及び混合工程で正極活物質の粒径制御を行うことが必要となる。しかし、従来のように遊星ボールミルやビーズミルにより、メディアとして一般的なステンレス等のボールを用いて粉砕及び混合を行う場合、リチウムイオン二次電池の内部ショートの原因となる鉄粉が混入する虞がある。それを避けるためにボールミル装置をセラミック仕様にすると、装置の大型化が困難となり量産に適さないという問題があった。
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、サブミクロン程度にまで微粉砕したスラリーの濃度を高く保ちつつ、スラリーの粘度を適度な範囲にすることができ、量産性に優れたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究を行った結果、スラリーに分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムを添加することにより、サブミクロン程度にまで粉砕しスラリー濃度を高く保ったままであってもスラリー粘度の上昇が抑制されることを見い出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)原料を粉砕及び混合してスラリーを得る粉砕及び混合工程と、
前記スラリーを噴霧乾燥し造粒する造粒工程と、
得られた造粒粉を焼成して、下記式(1)
Li1+aM1O2+α ・・・(1)
(式中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、前記M1における前記Niの割合が70原子%超であり、a及びαは、−0.1≦a≦0.2、−0.2≦α≦0.2を満たす数である)
で表されるリチウム複合酸化物を得る焼成工程と、
を有するリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記原料が、リチウム塩と前記M1を含む化合物とを含み、前記M1を含む化合物は遷移金属水酸化物を含み、
前記粉砕及び混合工程において、粉砕した原料の平均粒径を0.1μm以上、1μm以下とし、前記スラリーが水及びポリアクリル酸アンモニウムを含み、前記水及び原料の合計量に対する前記原料の濃度を40質量%以上、60質量%以下とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
(2)前記原料に対する前記ポリアクリル酸アンモニウムの割合が1質量%より大きく、5質量%未満である前記(1)に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
(3)前記リチウム塩が炭酸リチウムであり、前記M1を含む化合物が、少なくとも水酸化ニッケル、炭酸コバルト及び炭酸マンガンを含む前記(1)又は(2)に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
(4)前記原料の粉砕が、ジルコニアボールをメディアとする転動式ボールミルを用いて行われ、前記ジルコニアボールの直径が2mm以上、10mm以下である前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
(5)前記リチウム複合酸化物が、下記式(2)
Li1+aNiMnCo2+α ・・・(2)
(式中、Mは、Mg、Al、Ti、Zr、Mo及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、a、b、c、d、e及びαは、−0.1≦a≦0.2、0.7<b<1.0、0≦c<0.3、0≦d<0.3、0≦e≦0.3、b+c+d+e=1、及び−0.2≦α≦0.2を満たす数である)
で表される前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
本発明によれば、スラリーの粘度を造粒工程への移行に支障がないおよそ10mPa・s以上、10000mPa・s未満(20℃)の適正範囲内になるよう制御することができる。その結果、正極活物質の量産性を向上させることができる。
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
実施例1におけるポリアクリル酸アンモニウムの添加量とスラリーの粘度との関係を示すグラフである。 実施例2における粉砕時間と原料の平均粒径との関係を示すグラフである。 実施例3における造粒粉の走査型電子顕微鏡像である。
以下、実施の形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、原料を粉砕及び混合してスラリーを得る粉砕及び混合工程と、そのスラリーを噴霧乾燥し造粒する造粒工程と、得られた造粒粉を焼成してリチウム複合酸化物を得る焼成工程とを含む。以下、各工程について説明する。
[粉砕及び混合工程]
粉砕及び混合工程では、まず、原料を粉砕及び混合してスラリーを得る。本実施形態により製造される正極活物質は、下記式(1)
Li1+aM1O2+α ・・・(1)
(式中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、前記M1における前記Niの割合が70原子%超であり、a及びαは、−0.1≦a≦0.2、−0.2≦α≦0.2を満たす数である)で表されるリチウム複合酸化物である。Niの割合を70原子%超とすることで、高容量の正極活物質を得ることができる。
特に、下記式(2)
Li1+aNiMnCo2+α ・・・(2)
(式中、Mは、Mg、Al、Ti、Zr、Mo及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、a、b、c、d、e及びαは、−0.1≦a≦0.2、0.7<b<1.0、0≦c<0.3、0≦d<0.3、0≦e≦0.3、b+c+d+e=1、及び−0.2≦α≦0.2を満たす数である)で表されるリチウム複合酸化物は、容量が高く、充放電を繰り返すことによって生じる容量低下も小さく長寿命であるため好ましい。
粉砕及び混合工程に供する原料としては、上記の正極活物質を得るために必要な化合物を、所定の元素組成比を達成するような比率でそれぞれ用いる。具体的には、リチウム塩と、M1を含む化合物を含む。リチウム塩としては、例えば、炭酸リチウム(LiCO)、塩化リチウム(LiCl)、硫酸リチウム(LiSO)、硝酸リチウム(LiNO)、酢酸リチウム(CHCOLi)等を用いることができるが、これらの中でも、素原料コストの小さい炭酸リチウムが好ましく用いられる。
リチウムは、焼成中に揮発することがあるため、焼成後のリチウムの組成比は、仕込みの組成比を下回る傾向がある。そのため、リチウム塩の量は、所定の組成に相当する量の1.01質量%以上1.05質量%以下程度の量を原料として用いることが好ましい。
M1を含む化合物としては、含ニッケル化合物、含マンガン化合物、含コバルト化合物、Mの元素を含む化合物が挙げられ、また、調達コスト的に有利であり、低温での焼成が可能であるという理由から、少なくとも遷移金属水酸化物を含むものとする。焼成温度で必要な元素以外が昇華する化合物が好ましい。
含ニッケル化合物としては、例えば、水酸化ニッケル(Ni(OH))、炭酸ニッケル(NiCO)、塩基性炭酸ニッケル(NiCO・Ni(OH)・4HO)、硫酸ニッケル(NiSO)、硝酸ニッケル(Ni(NO)、酢酸ニッケル(Ni(CHCOO))、酸化ニッケル(NiO)等を用いることができるが、これらの中でも、水酸化ニッケルが好ましく用いられる。
含マンガン化合物としては、例えば、炭酸マンガン(MnCO)、硫酸マンガン(MnSO)、硝酸マンガン(Mn(NO)、酢酸マンガン(Mn(CHCOO))、酸化マンガン(MnO)、二酸化マンガン(MnO)、水酸化マンガン(Mn(OH))等を用いることができるが、これらの中でも、炭酸マンガンが好ましく用いられる。
含コバルト化合物としては、例えば、炭酸コバルト(CoCO)、硫酸コバルト(CoSO)、硝酸コバルト(Co(NO)、酢酸コバルト(Co(CHCOO))、酸化コバルト(CoO)、水酸化コバルト(Co(OH))等を用いることができるが、これらの中でも、炭酸コバルトが好ましく用いられる。
また、Mの元素を含む化合物としては、Mg、Al、Ti、Zr、Mo及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等を用いることができる。
特に、リチウム塩として炭酸リチウムを含み、M1を含む化合物として少なくとも水酸化ニッケル、炭酸コバルト及び炭酸マンガンを含むことが、調達コスト的に有利であり、また低温で焼成でき、焼成温度で必要な元素以外が昇華することから好ましい。
上記原料に対し、水及びポリアクリル酸アンモニウムを添加し、粉砕及び混合を行うことによってスラリーを得ることができる。溶媒として水を用いることで、他の溶媒に比べて安価に正極活物質を製造することができる。また、ポリアクリル酸アンモニウムは、ポリアクリル酸のアンモニウム塩であり、このようなポリアクリル酸アンモニウムとしては、市販されている各種のポリアクリル酸アンモニウムを適宜用いても良く、また、酸性のポリアクリル酸水溶液をアンモニア水で中和したものを用いても良い。また、ポリアクリル酸アンモニウム中のポリアクリル酸成分とアンモニア成分とは、完全に等モルである必要はなく、ポリアクリル酸成分が過剰になったものでも、アンモニア成分が過剰になったものでも良い。なお、ポリアクリル酸アンモニウムの分子量に特に限定はなく、分子量分布の異なるものを併用することもできる。例として、分子量が6000〜10000程度のものが好ましく用いられる。ポリアクリル酸アンモニウムは、分散剤として機能する。すなわち、粉砕粒子の表面に付着し、粉砕粒子同士が凝集することを妨げる。そのため、スラリーの粘度の上昇を抑制することができる。その結果、スラリーの濃度を高くすることができ、正極活物質の量産性を向上させることができる。また、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムを用いることで、焼成後に正極活物質の不純物金属となる灰分が他の分散剤に比べて少なくなり、さらに、ポリアクリル酸アンモニウムはスラリーがアルカリ性であっても分解しにくいため好ましい。
ポリアクリル酸アンモニウムの添加量は、少な過ぎると十分な粘度低下の効果が得られず、また多過ぎるとコストが高くなり、造粒粉が球状になり難くなるという問題があるため、これらを考慮して適宜設定される。好ましくは、スラリーの原料(リチウム塩及びM1を含む化合物)に対して1質量%より大きく5質量%未満である。より好ましい範囲は2質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上3質量%以下である。
水及び原料(リチウム塩及びM1を含む化合物)の合計量に対する前記原料の濃度(スラリー濃度)は40質量%以上、60質量%以下とする。40質量%以上であれば、粉砕及び混合工程の後に行う造粒工程において、乾燥にかかるエネルギーや時間等のコストを低減することができる。また、60質量%以下であれば、ポリアクリル酸アンモニウムを添加した効果と相まって、後工程の噴霧乾燥装置においてチューブ搬送をする際に、目詰まり等を起こさずにスラリーを搬送できるため好ましい。得られるスラリーの粘度は、チューブの径等によっても異なるが、10mPa・s以上、10000mPa・s未満(20℃)の範囲であることが好ましく、100mPa・s以上、1000mPa・s以下(20℃)の範囲であることが特に好ましい。
粉砕及び混合は、前述のような各成分を、例えば各種の粉砕機を用いて粉砕、混合して行うことができる。粉砕機としては、ボールミル、ビーズミル、遊星型ボールミル、アトライター、ジェットミル、ロッドミル、サンドミル等の精密粉砕機を適宜用いることができる。また、ボールミル等で用いるメディアは、ジルコニアボール、アルミナボール、天然ケイ石、鉄芯入りナイロンボール、ステンレスボール、スチールボール等から適宜選択して用いることができる。
特に、粉砕機として、ボールが転がり動く転動式ボールミルが好ましく用いられる。その理由は、大量生産のために装置を大型化した場合でも、粉砕のための駆動部分がボールの自由落下によるため、金属を使用せずに構成可能であり、他の装置に比べてコストを低減できるからである。また、用いるメディアの材質は、非金属で比重が高いことが好ましく、例えばジルコニアボールが好ましく用いられる。ジルコニアボールを用いて粉砕することにより、焼成後の不純物金属を低減することができる。ジルコニア等のボールの大きさは、小さ過ぎると、粉砕した原料とボールの分離が困難になったり、メディアの単価が高くコストがかかるため量産に不向きである。また、逆に大き過ぎると、原料を十分に微細化するために時間がかかるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。具体的には、直径が2mm以上、10mm以下であることが好ましい。
ジルコニアボールは比重が6.0であり、他のセラミック材、例えばアルミナ(比重3.9)に比べて比重が大きいので、原料を粉砕する能力が高い。そのため、スラリー濃度が高くても短時間で原料を粉砕できるが、従来は粉砕に伴いスラリー粘度が急激に上昇し、次工程へのスラリー輸送が困難になる傾向があった。本実施形態では、ポリアクリル酸アンモニウムを添加することで、ジルコニアボールの高い粉砕能力を生かしつつ、スラリー粘度の上昇を抑制し、短時間での原料粉砕が可能となり、スラリー輸送が容易になり、生産性を向上させることができる。また、電池不良の原因となる金属成分の混入や、性能劣化の原因となるNa等の焼成後に残る灰分もないため好ましい。
粉砕後の原料の平均粒径(D50)は、0.1μm以上、1μm以下とする。0.1μm以上であれば、短時間で粉砕を行うことが可能であり、また、1μm以下とすることで、原料の粉砕が十分に行われて均一な混合状態が得られ、後工程において造粒粉の形状や粒径を制御し易くなる。後工程の噴霧乾燥により作製する造粒粉の粒径は、例えば直径約10μmである。原料の粉砕後の平均粒径が1μmより大きい場合、例えば3μmの場合を考えてみると、直径10μmの造粒粉の中に含有させることができる粒径3μmの原料粉は、球状粒子の充填率を一般的な値である60%として見積もると、20粒子程度となる。20粒子の中の1粒子は組成比で5at%に相当する。つまり、組成が5at%間隔で変動することとなり、組成を以下の実施例にあるようにLiNi0.8Co0.15Mn0.05に調整しようとしても、1粒子で組成が約5at%変動することから、造粒粉間の組成均一性を確保するのが困難である。一方、原料の平均粒径が1μmの場合を同様に考えてみると、10μmの造粒粉の中に含有させることができる原料粉の数は600粒子と多くなり、1粒子で約0.2at%の組成が変動することになり、組成の精密さが格段に向上し、造粒粉間の組成均一性を確保することができる。そのため、後の焼成工程において、組成の均一化や結晶化を促進させることができる。よって、原料の平均粒径(D50)は1μm以下が望ましい。なお、本明細書において、粉砕した原料の平均粒径とは、体積基準で測定した場合の粒度の累積分布におけるD50を指す。体積基準の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布計等により測定することができる。
[造粒工程]
続いて、スラリーを噴霧乾燥し、造粒粉を得る。噴霧乾燥は、スラリーを温風中に噴霧して乾燥させるスプレイドライヤーを用いて行うことが好ましい。その理由として、乾燥時の凝集が空中で行われるため表面張力に従い造粒粉が球状となるためである。さらに、スラリーの噴霧口がノズル式であると、得られる造粒粉の粒径を小さくし易いため好ましく、ディスク式であれば大量に処理し易いという利点があるため、いずれも適用可能である。ノズル式の噴霧乾燥方法では、噴霧圧を制御することによって、また、ディスク式の噴霧乾燥方法では、ディスクの回転数を制御することによって造粒粉の粒子径を制御することができる。スラリーにポリアクリル酸アンモニウムを添加し、40質量%以上、60質量%以下のスラリー濃度で、スラリーの粘度を例えば10mPa・s以上、10000mPa・s未満の範囲内になるよう制御することで、噴霧乾燥装置にスラリーをポンプで圧送する際にチューブ内やノズル内の目詰まり等を起こしにくくなる。なお、造粒工程によって得られる造粒粉は、焼成後に得られた正極活物質を充填し易い形状及び粒径になるよう造粒することが好ましく、具体的には、造粒粉の粒径は20μm以下であることが好ましい。
[焼成工程]
次に、得られた造粒粉を焼成することにより、所定の組成を有するリチウム複合酸化物からなる正極活物質を製造する。焼成工程は、一般的には熱処理工程、仮焼き工程、本焼成工程により行うことができる。以下、各工程について説明するが、条件等は適宜変更することができ、これに限定されるものではない。
熱処理工程では、造粒粉を200℃以上かつ400℃以下の温度で0.5時間以上かつ5時間以下にわたって熱処理することが好ましい。この工程は、造粒工程で得られた造粒粉から、正極活物質の合成反応を妨げる水分、炭酸ガス等の気化成分を除去することを主な目的として行われる。熱処理温度が低過ぎると、原料の熱分解反応が不十分となる場合がある。また、熱処理温度が高過ぎると、熱処理によって原料の混合物から発生した炭酸ガス等の水分以外のガスを含む雰囲気下で、リチウム複合酸化物の層状構造が形成されてしまう虞がある。したがって、好ましくは200℃以上かつ400℃以下の熱処理温度で造粒粉を熱処理することで、水分等の気化成分が十分に除去され、かつ、未だ層状構造が形成されていない第1前駆体を得ることができる。
次に、仮焼き工程では、熱処理工程で得られた第1前駆体を、450℃以上かつ800℃以下の温度で0.5時間以上かつ50時間以下にわたって酸化性雰囲気下で熱処理することが好ましい。これにより、炭酸リチウム等のリチウム塩の92質量%以上を反応させて第2前駆体を得る。仮焼き工程は、第1前駆体中のリチウム塩をリチウム酸化物にすること、また、リチウム塩とM1の金属とを反応させ、組成式Li1+aM1O2+αで表される層状構造の化合物を合成し、炭酸成分を除去することを主な目的として行われる。仮焼き工程の雰囲気は、酸素を含む酸化性雰囲気であり、酸素濃度が80%以上であることが好ましく、酸素濃度が90%以上であることがより好ましく、酸素濃度が95%以上であることがさらに好ましく、酸素濃度が100%であることがさらにより好ましい。また、反応を進行させるためには、仮焼き工程時に酸素を連続的に供給することが好ましく、酸化性雰囲気ガスの気流下で熱処理を行うことが好ましい。仮焼き工程では、本焼成工程における第2前駆体のNi酸化反応を円滑に進行させるために、原料に由来する残渣を十分に低減する必要がある。したがって、仮焼き工程では、所定の組成式の金属成分比になるように秤量して混合した原料に含まれるリチウム塩のうち92質量%以上を反応させる。92質量%以上を反応させることによって、本焼成工程での炭酸ガス発生量を低減することができ、リチウム塩とM1の金属との反応、及びNiの酸化反応とを促進することができる。さらに、リチウム塩の92質量%以上を反応させることで、本焼成工程において、融解して液相になるリチウム塩の液相化量が低減されて結晶粒の成長が抑制され、高温での焼成が可能となる。その結果、充放電サイクル特性が良好な正極活物質が得られる。また、仮焼き工程では、前記造粒粉に含まれるリチウム塩のうち97質量%以上を反応させることが好ましい。これにより、本焼成工程において、炭酸ガス発生量をより低減することができ、充放電サイクル特性がより良好な正極活物質を得ることができる。第2前駆体中のリチウム成分のうち、炭酸リチウムとして存在するリチウムの割合は、7モル%未満であることが好ましい。これにより、本焼成工程において、炭酸ガス発生量を低減することができ、リチウム塩とM1の金属との反応、及びNiの酸化反応を促進することができる。この場合、さらに本焼成工程において、リチウム塩の液相化量が低減されて結晶粒の成長が抑制され、高温での焼成が可能になり、充放電サイクル特性が良好な正極活物質を得ることができる。
本焼成工程では、仮焼き工程で得られた第2前駆体を、755℃以上かつ900℃以下の熱処理温度で0.5時間以上かつ50時間以下にわたって酸化性雰囲気下で熱処理することが好ましい。これにより、目的のリチウム複合酸化物を得ることができる。この本焼成工程で得られたリチウム複合酸化物によって、本実施形態の正極活物質が構成される。本焼成工程は、仮焼き工程で得られた第2前駆体中のNiを2価から3価へ酸化させるNi酸化反応を十分に進行させるとともに、熱処理によって得られるリチウム複合酸化物が電極性能を発現するために、結晶粒を成長させることを主な目的として行われる。すなわち、本焼成工程は、第2前駆体中のNi酸化反応と結晶粒成長を行う熱処理工程である。本焼成工程における第2前駆体中のNi酸化反応を十分に進行させるために、本焼成工程の熱処理の雰囲気は、酸素を含む酸化性雰囲気である。本焼成工程における酸化性雰囲気は、酸素濃度が80%以上であることが好ましく、酸素濃度が90%以上であることがより好ましく、酸素濃度が95%以上であることがさらに好ましく、酸素濃度が100%であることがさらにより好ましい。なお、本焼成工程の熱処理温度は、低過ぎると第2前駆体の結晶化の進行が困難になる場合があり、逆に高過ぎると第2前駆体の層状構造の分解を抑制できずに2価のNiが生成され、得られるリチウム複合酸化物の容量が低下してしまう。したがって、本焼成工程の熱処理温度を好ましくは755℃以上かつ900℃以下にすることで、第2前駆体の粒成長を促進させ、かつ層状構造の分解を抑制して、得られるリチウム複合酸化物の容量を向上させることができる。なお、本焼成工程の熱処理温度を、800℃より高くして、より好ましくは840℃以上かつ890℃以下にすることで、粒成長の促進効果と層状構造の分解抑制効果をより向上させることができる。また、本焼成工程において、酸素分圧が低いと、Ni酸化反応を促進させるために熱が必要となる。したがって、本焼成工程において第2前駆体への酸素供給が不十分である場合、熱処理温度を上昇させる必要がある。熱処理温度を上昇させると、得られるリチウム複合酸化物において層状構造の分解が不可避となり、正極活物質の良好な電極特性を得ることができなくなる。したがって、本焼成工程において第2前駆体への酸素供給を十分に行うために、本焼成工程の熱処理の時間は、0.5時間以上かつ50時間以下とすることが好ましい。正極活物質の生産性を向上させる観点から、本焼成工程の熱処理の時間は、0.5時間以上かつ15時間以下であることがより好ましい。
以上説明したように、本実施形態の正極活物質の製造方法は、原料を粉砕及び混合して得られるスラリーを噴霧乾燥して造粒する工程と、噴霧乾燥により得られる造粒粉を焼成する工程とを含む。焼成工程が、好ましくは熱処理工程、仮焼き工程及び本焼成工程を有している。これにより、第1前駆体形成過程において、原料から主に水分等の気化成分を除去した第1前駆体を得ることができ、そして仮焼き工程において、第1前駆体を熱処理して炭酸ガスを十分に発生させ、加熱による炭酸ガスの発生が抑制された第2前駆体を得ることができる。さらに、本焼成工程において、第2前駆体からの炭酸ガスの発生が抑制されることで、酸化性雰囲気の酸素分圧の低下が抑制され、第2前駆体のNi酸化反応が多量かつ均一に進行するとともに、結晶粒の成長が進行する。したがって、本実施形態の正極活物質の製造方法によれば、層状構造を有するNi高濃度のリチウム複合酸化物中に残存する2価のNiを減少させ、3価のNiに変換し、高容量かつ容量維持率に優れた正極活物質を得ることができる。本実施形態の正極活物質の製造方法は、製造する正極活物質の重量が、例えば、数百g以上の多量になると効果が顕著になる。製造する正極活物質の重量が数gであれば、焼成工程において原料から発生するガスによる影響は少ないが、正極活物質を工業的な規模で量産する場合は、焼成工程において原料から発生するガスの体積が多くなり、酸化雰囲気の酸素分圧が低下し易くなるからである。なお、焼成工程において、第1前駆体形成過程である熱処理工程を省略すると、仮焼き工程及び本焼成工程で酸素分圧が低下してしまう。その結果、Niの酸化を伴うリチウム複合酸化物の層状構造の形成反応を充分に進行させるために、より高温で本焼成する必要があり、好適な温度範囲を超えてしまう。また、仮焼き工程を省略すると、Niの酸化反応が不十分なまま、リチウム複合酸化物の粒成長が進行するので好ましくない。また、本焼成工程を省略すると適正な電極特性が得られない。
[解砕及び分級]
得られた焼成物は、解砕及び分級を行っても良い。例えば目開き45μmのふるいに通して、混入した粗大粒の除去、及び、一部焼成において凝集した焼成物の解砕等を行っても良い。この場合、焼成物は吸湿し易いため、グローブボックス等の乾燥気体中で行うことが望ましい。
これらの各工程を含む方法で製造することにより、プロセスコストが低く、高い量産性で正極活物質を得ることができる。得られた正極活物質は、リチウムイオン二次電池用正極の材料として用いられる。
リチウムイオン二次電池の正極は、主に、正極活物質、導電材及び結着剤を含む正極合材層と、正極合材層が塗工された正極集電体とを備える。
導電材としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられている導電材を用いることができる。具体的には、例えば、黒鉛粉末、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等の炭素粒子や炭素繊維等が挙げられる。導電材は、例えば、正極合材層全体の質量に対して3質量%以上10質量%以下程度となる量を用いれば良い。
結着剤としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられている結着剤を用いることができる。具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。結着剤は、例えば、正極合材層全体の質量に対して2質量%以上10質量%以下程度となる量を用いることができる。
正極集電体としては、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を用いることができる。箔については、例えば、8μm以上20μm以下程度の厚さとすることが好ましい。
リチウムイオン二次電池の正極は、前記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて、一般的な正極の製造方法に準じて製造することができる。具体的には、正極合材調製工程、正極合材塗工工程、成形工程を経て正極を製造することができる。
正極合材調製工程では、材料となる正極活物質、導電材、結着剤を溶媒中で混合することでスラリー状の正極合材を調製する。溶媒としては、結着剤の種類に応じて、N−メチルピロリドン、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等から選択することができる。材料を混合する撹拌手段としては、例えば、プラネタリーミキサ、ディスパーミキサ、自転・公転ミキサ等が挙げられる。
正極合材塗工工程では、調製されたスラリー状の正極合材を正極集電体上に塗布した後、熱処理により溶媒乾燥させることによって正極合材層を形成する。正極合材を塗布する塗工手段としては、例えば、バーコーター、ドクターブレード、ロール転写機等が挙げられる。
成形工程では、乾燥させた正極合材層をロールプレス等により加圧成形し、必要に応じて正極集電体と共に裁断することによって、所望の形状のリチウムイオン二次電池用の正極とする。正極集電体上に形成される正極合材層の厚さは、例えば、50μm以上300μm以下程度とすることが好ましい。
以上のようにして製造されたリチウムイオン二次電池用の正極は、リチウムイオン二次電池の材料として用いられる。リチウムイオン二次電池は、主に、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極、セパレータ、非水電解液を含み、これらが円筒型、角型、ボタン型、ラミネートシート型等の種々の形状の外装体に収容された構成とされる。
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
原料として炭酸リチウム、水酸化ニッケル、炭酸マンガン及び炭酸コバルトを用い、LiNi0.8Co0.15Mn0.05の組成になるように秤量した270gの原料混合粉に対し、イオン交換水400gと分散剤としてポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、アロンA−30SL)を所定量加え、イオン交換水及び原料混合粉の合計量に対する原料混合粉の割合が40質量%のスラリーを調製した。容量2Lのポリエチレン製ポットへ直径5mmのジルコニアボ−ル2kgとスラリーを一緒に投入し、転動式ボ−ルミルによる粉砕・混合を行った。図1に、ポリアクリル酸アンモニウムの添加量と、20時間粉砕して、原料混合粉の平均粒径D50が0.5μmになったスラリーの粘度との関係を示す。
図1に示すように、ポリアクリル酸アンモニウムの添加量が1質量%以上でスラリー粘度が10000mPa・s未満となり、ボールミルからのスラリー取り出しも容易となり、次工程の造粒工程に移り易かった。5質量%より多く添加してもスラリーの低粘度化への効果は変わらないことから、添加量は1質量%より大きく、5質量%未満とすることが望ましい。
続いて、このスラリーの原料混合粉に対して、PVA(ポリビニルアルコール)を0.5質量%加え、噴霧口がノズル式のスプレイを使って平均粒径5μm程度の造粒粉を作製した。噴霧乾燥温度は200℃とした。次に、アルミナの焼成ケースへ噴霧乾燥した造粒粉を充填し、大気中360℃で2時間熱処理を行い、原料中の水分、炭酸ガス等の気化成分を除去した。仮焼き工程では、熱処理工程で得られた前駆体を、酸素雰囲気(酸素濃度98%)中、650℃で4時間加熱した。本焼成工程では、酸素雰囲気(酸素濃度98%)中、880℃で1時間加熱し、正極活物質を製造した。
(実施例2)
原料として炭酸リチウム、水酸化ニッケル、炭酸マンガン及び炭酸コバルトを用い、LiNi0.8Co0.15Mn0.05の組成になるように秤量した270gの原料混合粉に対し、イオン交換水400gと、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、アロンA−30SL)を原料混合粉に対して2質量%の添加量で加え、イオン交換水及び原料混合粉の合計量に対する原料混合粉の割合が40質量%のスラリーを調製した。容量2Lのポリエチレン製ポットへ、ジルコニアボ−ル2kgとスラリーを一緒に投入し、転動式ボ−ルミルによる粉砕・混合を行った。図2に、ジルコニアボールの直径を変えた時の粉砕時間と原料混合粉の平均粒径D50との関係を示す。
直径5mmのジルコニアボールによる粉砕効率が最も高いことが分かった。直径15mmのボールでは、20時間粉砕を行っても、1μm以下の平均粒径まで粉砕することはできなかった。直径が5mmより小さいジルコニアボールには、直径2mm、さらにそれより小さい直径1mm、及び直径0.5mmのボールがあるが、直径が2mmより小さいボールでは、スラリーを取り出す際、ボールとの分離が困難になる。また、ボールの単価も高くなることから、ジルコニアボールの直径は2mm以上、10mm以下であることが好ましい。
続いて、このスラリーの原料混合粉に対して、PVA(ポリビニルアルコール)を0.5質量%加え、噴霧口がノズル式のスプレイを使って平均粒径5μm程度の造粒粉を作製した。噴霧乾燥温度は200℃とした。次に、アルミナの焼成ケースへ噴霧乾燥した造粒粉を充填し、大気中360℃で2時間熱処理を行い、原料中の水分、炭酸ガス等の気化成分を除去した。仮焼き工程では、熱処理工程で得られた前駆体を、酸素雰囲気(酸素濃度98%)中、650℃で4時間加熱した。本焼成工程では、酸素雰囲気(酸素濃度98%)中、880℃で1時間加熱し、正極活物質を製造した。
(実施例3)
ポリアクリル酸アンモニウムの添加量を5質量%とした以外は実施例1と同様にして次工程のスプレイドライヤーによる噴霧乾燥を行った。スプレイドライヤーに移送する際のスラリー粘度は11mPa・sであり、目詰まり等の問題は生じなかった。ポリアクリル酸アンモニウムを5質量%程度まで用いてもスラリー濃度を保ったままスラリー粘度には支障がなく一定の効果があることが確認された。次工程のスプレイドライヤーの条件は、乾燥入り口温度200℃、出口温度100℃でスラリーの送液速度は10kg/hとした。また、噴霧圧力は0.3MPaとした。図3に、得られた造粒粉のSEM像を示す。スプレイドライヤーでは通常球状の粒子が得られるが、ポリアクリル酸アンモニウムを5質量%添加すると、造粒粉の真中が陥没して球状粒子が得られにくくなることが分かった。陥没粒子が多いと、電池材料として、電池への正極活物質の充填性が低下するおそれがあるので、スプレイドライヤーでの条件は適切に選定する必要がある。
次に、アルミナの焼成ケースへ噴霧乾燥した造粒粉を充填し、大気中360℃で2時間熱処理を行い、原料中の水分、炭酸ガス等の気化成分を除去した。仮焼き工程では、熱処理工程で得られた前駆体を、酸素雰囲気(酸素濃度98%)中、650℃で4時間加熱した。本焼成工程では、酸素雰囲気(酸素濃度98%)中、880℃で1時間加熱し、正極活物質を製造した。
(比較例1)
ポリアクリル酸アンモニウムを添加しない以外は実施例1と同様にしてスラリーを調製した。20時間粉砕後のスラリー粘度は10000mPa.s以上となり、転動式ボールミルからのスラリー取り出しが困難になり、次工程の造粒工程に移ることができなかった。
ポリアクリル酸アンモニウムを添加せずにスラリー粘度を10000mPa・s未満にするためには、スラリー濃度を20質量%以下にする必要がある。その場合、同じ噴霧乾燥能力のスプレイドライヤーを用いて造粒粉を得ようとすると、スラリー濃度が低い程、造粒粉の生産量が低下する。スラリー濃度20質量%以下では、スラリー濃度40質量%の場合に比較して造粒粉の生産量が半分以下になり、高コストである。
(比較例2)
原料として炭酸リチウム、水酸化ニッケル、炭酸マンガン及び炭酸コバルトを用い、LiNi0.8Co0.15Mn0.05の組成になるように秤量した270gの原料混合粉に対し、イオン交換水115gと分散剤としてポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、アロンA−30SL)を原料混合粉に対して4質量%の添加量で加え、イオン交換水及び原料混合粉の合計量に対する原料混合粉の割合が70質量%のスラリーを調製した。容量2Lのポリエチレン製ポットへ直径5mmのジルコニアボ−ル2kgとスラリーを一緒に投入し、転動式ボ−ルミルによる粉砕・混合を行った。
その結果、スラリーとはならず、原料混合粉をボールミルから取り出すことが困難となり、噴霧乾燥もできなかった。このように、ポリアクリル酸アンモニウムを用いてもスラリー濃度を高くし過ぎると、スラリー粘度も高くなり搬送に支障をきたすことになる。
(比較例3)
実施例1において、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ等のNaを含むものを使用した場合、スラリー粘度を抑制する効果はポリアクリル酸アンモニウムと同様に発揮されるが、焼成工程を経て正極活物質を合成する際に、Naが成分の一部として残ってしまい、結晶中のリチウムイオンの占有サイトを一部占有して、電池特性、特に容量が低下することが予想されるため、好ましくない。
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。

Claims (5)

  1. 原料を粉砕及び混合してスラリーを得る粉砕及び混合工程と、
    前記スラリーを噴霧乾燥し造粒する造粒工程と、
    得られた造粒粉を焼成して、下記式(1)
    Li1+aM1O2+α ・・・(1)
    (式中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、前記M1における前記Niの割合が70原子%超であり、a及びαは、−0.1≦a≦0.2、−0.2≦α≦0.2を満たす数である)
    で表されるリチウム複合酸化物を得る焼成工程と、
    を有するリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    前記原料が、リチウム塩と前記M1を含む化合物とを含み、前記M1を含む化合物は遷移金属水酸化物を含み、
    前記粉砕及び混合工程において、粉砕した原料の平均粒径を0.1μm以上、1μm以下とし、前記スラリーが水及びポリアクリル酸アンモニウムを含み、前記水及び原料の合計量に対する前記原料の濃度を40質量%以上、60質量%以下とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記原料に対する前記ポリアクリル酸アンモニウムの割合が1質量%より大きく、5質量%未満である請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記リチウム塩が炭酸リチウムであり、前記M1を含む化合物が、少なくとも水酸化ニッケル、炭酸コバルト及び炭酸マンガンを含む請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記原料の粉砕が、ジルコニアボールをメディアとする転動式ボールミルを用いて行われ、前記ジルコニアボールの直径が2mm以上、10mm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記リチウム複合酸化物が、下記式(2)
    Li1+aNiMnCo2+α ・・・(2)
    (式中、Mは、Mg、Al、Ti、Zr、Mo及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、a、b、c、d、e及びαは、−0.1≦a≦0.2、0.7<b<1.0、0≦c<0.3、0≦d<0.3、0≦e≦0.3、b+c+d+e=1、及び−0.2≦α≦0.2を満たす数である)
    で表される請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
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