本実施形態に係るソルダーレジスト用組成物は、エチレン性不飽和基を備えるカルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、チクソ性付与剤(C)とを含有する。更に、光重合開始剤(B)が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有し、チクソ性付与剤(C)が、膨潤性層状珪酸塩を含有する。
膨潤性層状珪酸塩は、チクソ性を調整する性能が高い。しかも、ソルダーレジスト用組成物が光重合開始剤(B)とチクソ性付与剤(C)とを含有する場合に、本実施形態のように光重合開始剤(B)がアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有し、更にチクソ性付与剤(C)が膨潤性層状珪酸塩を含有すると、ソルダーレジスト層のマイグレーションが著しく抑制され、且つ、優れた金メッキ耐性が得られる。その理由は未だ明確ではないが、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は塗膜深部硬化性が強く、一方、α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤は塗膜表面硬化性が強いと共に露光時の酸素阻害を防止する役割を果たすため、露光により塗膜全体で光重合による架橋構造が効率よく生成し、これにより、ソルダーレジスト層のマイグレーションが抑制されると共に優れた金メッキ耐性が得られると考えられる。また、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤とα−ヒドロキシルアセトフェノン系光開始剤が、マイグレーションを促進させるような金属原子を含有していないことも、マイグレーション抑制の効果に寄与していると考えられる。また、ソルダーレジスト用組成物のチクソ性を高めるために膨潤性層状珪酸塩が用いられることで、ソルダーレジスト層のマイグレーションが更に抑制される。これは、ソルダーレジスト層が膨潤性層状珪酸塩を含有することで、ソルダーレジスト層が海島構造となり、その結果、ソルダーレジスト層内での不純物イオンの移動が抑制されるためであると、推察される。更に、膨潤性層状珪酸塩は、その層間に種々の化学種を容易に取り込むという特性を有し、そのことが、マイグレーションの抑制に寄与していると、推察される。
ソルダーレジスト用組成物の成分について、詳しく説明する。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを備える樹脂であれば、特に制限されない。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を備えるエポキシ化合物(a1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つに、カルボキシル基を備えるエチレン性不飽和化合物(a2)が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物(a3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(a)という)を含有することができる。
エポキシ化合物(a1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、及びエポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することができる。
エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体について説明する。
重合体の合成に供されるエチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーから選択される化合物を含有することができる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、及びβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であればよい。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族又は脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN−置換マレイミド類(例えばN−シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エポキシ基を備えない化合物(p2)が、更に一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、ソルダーレジスト層の硬度及び油性が容易に調整される。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エチレン性不飽和化合物(p)が、例えば溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法により重合することで、重合体が得られる。溶液重合法の具体例として、エチレン性不飽和化合物(p)を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法並びに共沸重合法が、挙げられる。
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
第一の樹脂(a)の合成に用いられるエチレン性不飽和化合物(a2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有することができる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を複数個備える化合物を更に含有することができる。エチレン性不飽和基を複数個備える化合物は、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
特にエチレン性不飽和化合物(a2)が、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性が高くなる。
エチレン性不飽和化合物(a2)の使用量は、エポキシ化合物のエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物のカルボキシル基が0.4〜1.2モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.5〜1.1モルの範囲内となる量であることが好ましい。
第一の樹脂(a)の合成のために使用される多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される化合物(a3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
化合物(a3)は、第一の樹脂(a)に酸価を与えることで、ソルダーレジスト用組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
第一の樹脂(a)が合成される際に、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応、並びにこの付加反応による生成物(付加反応生成物)と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応にあたっては、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
付加反応生成物と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、付加反応生成物の溶剤溶液に化合物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により反応させることで、第一の樹脂(a)が得られる。反応条件はエポキシ化合物とエチレン性不飽和化合物との付加反応の場合と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒としては、エポキシ化合物とカルボキシル基を備えるエチレン性不飽和化合物との付加反応時に使用された化合物をそのまま使用することができる。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基を備える化合物(b11)を含むエチレン性不飽和化合物(b1)の重合体に、エポキシ基を備えるエチレン性不飽和化合物(b2)が反応することで得られる樹脂(第二の樹脂(b))を含有してもよい。
第二の樹脂(b)の合成に使用されるカルボキシル基を備える化合物(b11)を含むエチレン性不飽和化合物(b1)は、カルボキシル基を備える化合物(b11)のみを含有してもよく、カルボキシル基を備える化合物(b11)とカルボキシル基を備えない化合物(b12)とを含有してもよい。カルボキシル基を備える化合物(b11)の具体例としては、第一の樹脂(a)を合成するためのエチレン性不飽和化合物(a2)の場合と同じ化合物が挙げられる。カルボキシル基を備えない化合物(b12)の具体例としては、上記エポキシ基を備えない化合物(p2)の場合と同じ化合物が挙げられる。
第二の樹脂(b)の合成に使用されるエポキシ基を備えるエチレン性不飽和化合物(b2)としては、上記エポキシ基を備える化合物(p1)の場合と同じ化合物が挙げられる。エチレン性不飽和化合物(b2)の使用量は、第二の樹脂(b)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、エチレン性不飽和化合物(b2)の使用量は、第二の樹脂(b)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
第二の樹脂(b)が合成される際に、エチレン性不飽和化合物(b1)の重合反応を進行させるにあたっては、公知の方法、例えば第一の樹脂(a)を合成するにあたってエチレン性不飽和化合物を重合させる場合と同様の方法が、採用され得る。エチレン性不飽和化合物(b1)の重合体に、エチレン性不飽和化合物(b2)を反応させる方法としても、公知の方法、例えば第一の樹脂(a)が合成される際のエポキシ化合物とカルボキシル基を備えるエチレン性不飽和化合物との付加反応の場合と同様の方法が、採用され得る。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、一分子中に二個以上のエポキシ基を備えるエポキシ化合物(c1)における前記エポキシ基のうちの一部にカルボキシル基を備えるエチレン性不飽和化合物(c2)が付加し、別の一部に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物(c3)が付加した構造を有する樹脂(第三の樹脂(c))を含有してもよい。
エポキシ化合物(c1)の具体例としては、上記エポキシ化合物(a1)の場合と同様の化合物が挙げられる。エチレン性不飽和化合物(c2)の具体例としては、上記エチレン性不飽和化合物(a2)の場合と同様の化合物が挙げられる。化合物(c3)の具体例としては、上記化合物(a3)の場合と同様の化合物が挙げられる。
カルボキシル基含有樹脂(A)全体の重量平均分子量は特に制限されないが、その好ましい範囲は800〜100000である。この範囲において、ソルダーレジスト用組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
カルボキシル基含有樹脂(A)全体の酸価は30mgKOH/g以上であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト用組成物に良好な現像性が付与される。この酸価は60mgKOH/g以上であれば更に好ましい。また、カルボキシル基含有樹脂(A)全体の酸価は160mgKOH/g以下であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト用組成物から形成されるソルダーレジスト層中のカルボキシル基の残留量が低減し、ソルダーレジスト層の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。この酸価は130mgKOH/g以下であれば更に好ましい。
ソルダーレジスト用組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A)の割合は特に制限されないが、ソルダーレジスト用組成物の固形分(硬化物を構成する成分)全量に対してカルボキシル基含有樹脂(A)の割合が1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であれば更に好ましい。またこのカルボキシル基含有樹脂(A)の割合は99質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であれば更に好ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物の良好な感度及び作業特性並びにソルダーレジスト層の良好な物性が充分に確保される。
光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有する。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、反応性が高い。このため、ソルダーレジスト用組成物の塗膜が露光された場合に、塗膜の内部における光硬化反応が効率よく進行する。一方、α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤は、酸素障害を受けにくい。このため、ソルダーレジスト用組成物の塗膜が露光された場合に、塗膜の表層における光硬化反応が効率よく進行する。このため、ソルダーレジスト用組成物の塗膜の全体に亘って、光硬化反応が効率よく進行する。更に、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤はマイグレーションを促進させるような金属原子を含有していない。このことが、ソルダーレジスト層におけるマイグレーションが抑制されることの一因であると考えられる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製、品名Lucirin TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製、品名Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート(Lambson社製、品名SPEEDCURE TPO−L)、及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製、品名CGI 403)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
α−ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤は、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン株式会社製、品名Irgacure 184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製、品名Darocur 1173)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製、品名Irgacure 2959)、及び2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製、品名Irgacure 127)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
ソルダーレジスト用組成物の固形分全量に対するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の割合は0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。また、ソルダーレジスト用組成物の固形分全量に対するα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤の割合は、0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物の光硬化性が特に高くなると共に、ソルダーレジスト層の硬度が特に高くなり、更に、ソルダーレジスト層の耐現像液性が特に高くなる。
光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤以外の化合物を、更に含有してもよい。例えば、光重合開始剤(B)は、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;並びに2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を更に含有してもよい。
ソルダーレジスト用組成物中の光重合開始剤(B)の割合は、例えばソルダーレジスト用組成物の光硬化性と、このソルダーレジスト用組成物から形成されるソルダーレジスト層の物性とのバランスを考慮して適宜設定される。特にソルダーレジスト用組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の割合が、0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
チクソ性付与剤(C)は、膨潤性層状珪酸塩を含有する。膨潤性層状珪酸塩は、珪素に酸素イオンが配位して構成される四面体構造、アルミニウムイオンに酸素イオンが配位して構成される四面体構造、アルミニウム、マグネシウム、鉄イオン等に酸素、水酸イオン等が配位して構成される八面体構造等を備える無機高分子である。膨潤性層状珪酸塩は、例えば負に帯電した厚み約1nmの珪酸塩シートと、正電荷を有するナトリウムイオン等の陽イオンとが、規則正しく層状に積み重なった結晶構造を有する。膨潤性層状珪酸塩は、例えばミクロンサイズの粒径を有する。膨潤性層状珪酸塩は、その層間に極性分子を取り込むことで膨潤しやすいという特性と、その層間に存在するナトリウムイオン等の陽イオンに起因する陽イオン交換性とを有する。
膨潤性層状珪酸塩は、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物;バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物;並びにLi型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。膨潤性層状珪酸塩は、天然品であっても合成品であってもよい。特に膨潤性層状珪酸塩が、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトを含有することが好ましい。尚、膨潤性層状珪酸塩は、クォーツ、クリストバライト、ゼオライト、長石、方解石、ドロマイト等の夾雑物を含有してもよい。
膨潤性層状珪酸塩は、例えば市販品であるレオックス社製の有機ベントナイト(ベントンシリーズ(ベントンSD−1、ベントンSD−2、ベントン27、ベントン34、ベントン38))、株式会社ホージュン製の有機ベントナイト(エスベンシリーズ(エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンWX)、オルガナイトシリーズ(オルガナイト、オルガナイトT)、エスベンNシリーズ(エスベンN−400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNTO、エスベンNZ、エスベンNZ70、エスベンNE、エスベンNEZ、エスベンNO12S、エスベンNO12))、白石工業株式会社製の有機ベントナイト(オルベンシリーズ(オルベンD、NewDオルベン))からなる群から選択される一種以上の材料を含有してもよい。
ソルダーレジスト用組成物中の膨潤性層状珪酸塩の割合が適宜調整されることで、ソルダーレジスト用組成物のチクソ性が調整される。
ソルダーレジスト用組成物の固形分全量に対する膨潤性層状珪酸塩の割合は、特に限定されないが、例えば0.05〜10質量%の範囲内で設定される。
チクソ性付与剤(C)が、膨潤性層状珪酸塩以外の材料を更に含有してもよい。例えばチクソ性付与剤(C)が、カオリナイト、セリサイト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク、ゼオライト、変性ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、ポリウレタン、変性ウレア、高分子ウレア誘導体、ウレア変性ポリアマイド及びウレア変性ウレタンからなる群から選択される一種以上の材料を更に含有してもよい。
但し、マイグレーションの抑制のためには、ソルダーレジスト用組成物中のアエロジル等のシリカ粒子の含有量が少ないこと、或いはソルダーレジスト用組成物がシリカ粒子を含有しないことが、好ましい。シリカ粒子は、チクソ性付与剤として従来広く使用されているが、ソルダーレジスト用組成物がシリカ粒子を含有すると、マイグレーションが生じやすくなる。その理由は未だ明確ではないが、シリカ粒子の吸水性が高いこと、及びシリカ粒子の表面積が大きいことが、マイグレーションの発生を促進させると推測される。また、シリカ粒子中に混在する金属イオンが、マイグレーションの発生に関与すると推察される。マイグレーションが十分に抑制されるためには、ソルダーレジスト用組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A)の固形分100質量に対するシリカ粒子の量が2.5質量部以下であることが好ましい。
ソルダーレジスト用組成物が、一分子中に二個以上のエポキシ基を備えるエポキシ化合物(D)を更に含有してもよい。この場合、ソルダーレジスト用組成物に熱硬化性が付与される。エポキシ化合物(D)は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物等であってもよい。
エポキシ化合物(D)は、特にフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することが好ましい。トリグリシジルイソシアヌレートは、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体を含有することが好ましい。トリグリシジルイソシアヌレートが、β体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体とを含有してもよい。
エポキシ化合物(D)がリン含有エポキシ樹脂を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂の具体例として、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICRON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305が挙げられる。
ソルダーレジスト用組成物の固形分全量に対するエポキシ化合物(D)の割合は、0.1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
尚、ソルダーレジスト用組成物に熱硬化性が要求されない場合には、ソルダーレジスト用組成物がエポキシ化合物(D)を含有しなくてもよい。
ソルダーレジスト用組成物がカルボキシル基含有樹脂(A)以外の光重合性化合物(E)を含有することも好ましい。光重合性化合物(E)は、光重合性のモノマーと光重合性のプレポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。光重合性化合物(E)は、例えばソルダーレジスト用組成物の希釈、粘度調整、酸価の調整、光重合性の調整などの目的で使用される。
光重合性化合物(E)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
光重合性化合物(E)が、リン含有化合物(リン含有光重合性化合物)を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有光重合性化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
光重合性化合物(E)が使用される場合、ソルダーレジスト用組成物に対する光重合性化合物(E)の割合は、0.05〜40質量%の範囲内であることが好ましい。更に、ソルダーレジスト用組成物の固形分全量に対する光重合性化合物(E)の割合が、50質量%以下であることが望ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物から形成される乾燥膜の表面粘着性が強くなり過ぎることが抑制される。
ソルダーレジスト用組成物が、充填材(F)を含有してもよい。この場合、ソルダーレジスト用組成物から形成される塗膜の硬化収縮が低減する。充填材(F)は、例えば硫酸バリウム、酸化チタン、カーボンナノチューブ、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
充填材(F)に白色粉末を含有させることで、ソルダーレジスト用組成物を白色化してもよい。この場合、ソルダーレジスト用組成物を用いて、白色のソルダーレジスト層が形成される。白色粉末は、例えば酸化チタン粉末及び硫酸バリウム粉末からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
ソルダーレジスト用組成物中の充填材の割合は適宜設定されるが、10〜50質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物の固形分の割合が充分に高くなり、このためソルダーレジスト用組成物が加熱乾燥される際の体積変化が抑制され、このためソルダーレジスト層のクラック耐性が向上する。
ソルダーレジスト用組成物が、有機溶剤(G)を含有してもよい。有機溶剤(G)は、ソルダーレジスト用組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
有機溶剤(G)は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
ソルダーレジスト用組成物中の有機溶剤(G)の割合は、ソルダーレジスト用組成物から形成される塗膜の仮乾燥時に有機溶剤(G)が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤(G)が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、ソルダーレジスト用組成物中の有機溶剤(G)の割合が、5〜99.5質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、ソルダーレジスト用組成物の良好な塗布性が得られる。尚、有機溶剤(G)の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、ソルダーレジスト用組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)及びエポキシ化合物(D)以外の樹脂を更に含有してもよい。例えば、ソルダーレジスト用組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
ソルダーレジスト用組成物は、更に必要に応じて適宜の添加剤を含有してもよい。例えばソルダーレジスト用組成物は、エポキシ化合物を硬化させるための硬化剤;硬化促進剤;顔料等の着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有してもよい。
上記のようなソルダーレジスト用組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、ソルダーレジスト用組成物が調製され得る。
保存安定性等を考慮して、ソルダーレジスト用組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。例えば、原料のうち光重合性化合物(E)及び有機溶剤(G)の一部及びエポキシ化合物(D)を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合することで、ソルダーレジスト用組成物を調製することができる。
本実施形態によるソルダーレジスト用組成物は、例えばプリント配線板にソルダーレジスト層を形成するために適用される。
以下に、本実施形態によるソルダーレジスト用組成物を用いてプリント配線板にソルダーレジスト層を形成する方法の第一の態様を示す。本態様では、感光性と熱硬化性とを兼ね備えるソルダーレジスト用組成物からソルダーレジスト層を形成する。
まず、プリント配線板を用意する。このプリント配線板の第一の表面上にソルダーレジスト用組成物を塗布して塗膜を形成し、続いてプリント配線板の第一の表面とは反対側の第二の表面上にもソルダーレジスト用組成物を塗布して塗膜を形成する。尚、第一の表面上と第二の表面上に同時にソルダーレジスト用組成物を塗布して塗膜を形成してもよい。ソルダーレジスト用組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、必要に応じてソルダーレジスト用組成物中の有機溶剤を揮発させるために例えば60〜120℃の範囲内の温度下で予備乾燥を行うことで、塗膜を乾燥させる。
プリント配線板上に塗膜を形成するにあたっては、予め適宜の支持体上にソルダーレジスト用組成物を塗布してから乾燥することで塗膜(ドライフィルム)を形成し、このドライフィルムをプリント配線板に重ねてから、ドライフィルムとプリント配線板に圧力をかけることで、プリント配線板上にドライフィルムを転着させてもよい(ドライフィルム法)。この場合、予備乾燥が省略されてもよい。
続いて、塗膜に、パターンが描かれたネガマスクを乾燥膜の表面に直接又は間接的に当てがってから、活性エネルギー線を照射することで、ネガマスクを介して塗膜を露光する。ネガマスクとしては、ソルダーレジスト層のパターン形状が活性エネルギー線を透過させる露光部として描画されると共に他の部分が活性エネルギー線を遮蔽する非露光部として形成された、マスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。活性エネルギー線は、ソルダーレジスト用組成物の組成に応じて選択されるが、例えば紫外線、可視光、及び近赤外線が挙げられる。活性エネルギー線が紫外線である場合には、その光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
尚、露光方法として、ネガマスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えばレーザ露光等による直接描画法が採用されてもよい。
塗膜の露光後、プリント配線板からネガマスクを取り外してから、塗膜に現像処理を施すことで、塗膜の非露光部分を除去する。そうすると、プリント配線板の第一の表面上及び第二の表面上に、塗膜の露光部分が残存する。この塗膜の露光部分が、ソルダーレジスト層を構成する。
現像処理では、ソルダーレジスト用組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ溶液が挙げられる。現像液として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することもできる。これらの現像液のうち、一種のみが用いられても、複数種が併用されてもよい。現像液がアルカリ溶液である場合、その溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。
必要に応じ、ソルダーレジスト層に、例えば加熱温度120〜180℃の範囲内、加熱時間30〜90分間の範囲内の条件で加熱処理を施してもよい。この場合、ソルダーレジスト層の熱硬化反応を進行させることができる。これにより、ソルダーレジスト層の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
尚、ソルダーレジスト用組成物の塗膜を露光・現像するタイミングは本態様に限られない。例えば、まずプリント配線板の第一の表面上に塗膜を形成し、これを露光・現像することで第一の表面上にソルダーレジスト層を形成し、続いて同様に第二の表面上にソルダーレジスト層を形成してもよい。
また、必要に応じ、ソルダーレジスト層に加熱処理を施した後、更にソルダーレジスト層に紫外線を照射してもよい。この場合、ソルダーレジスト層の光硬化反応を更に進行させることができる。これにより、ソルダーレジスト層のマイグレーション耐性が更に向上する。
[カルボキシル基含有樹脂溶液A−1の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度110℃、加熱時間10時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加えてから、更に混合物を加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−1)を得た。
[カルボキシル基含有樹脂溶液A−2の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート105質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸43.2質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度100℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸68質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート65質量部を加えてから、加熱温度110℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−2)を得た。
[ソルダーレジスト用組成物の調整]
各実施例及び比較例において、後掲の表に示す原料を配合することで混合物を得た。この混合物を3本ロールで混練することで、ソルダーレジスト用組成物を得た。
尚、表中に表示されている成分の詳細は、次の通りである。
・エポキシ化合物A:ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、品番YX4000。
・エポキシ化合物B:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製、品番EPICLON N−695。
・アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤A−1:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF社製、品番Lucirin TPO。
・アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤A−2:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure 819。
・α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤B−1:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番Irgacure 184。
・α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤B−2:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、BASF社製、品番Darocur 1173。
・光重合開始剤C−1:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、品番Irgacure 907。
・光重合開始剤C−2:2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬株式会社製、品番カヤキュアDETX−S。
・光重合開始剤C−3:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、保土ヶ谷化学工業株式会社製、品番EAB。
・光重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA。
・膨潤性層状珪酸塩(有機ベントナイト):レオックス社製、品番ベントンSD−2。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製、品番MT−10。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB30。
・タルク:東新化成株式会社製、品番SG2000。
・メラミン樹脂:日産化学工業株式会社製、品番メラミンHM。
・消泡剤:シメチコン(ジメチコンとケイ酸の混合物)、信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・有機溶剤A:芳香族系混合溶剤(石油ナフサ)。
・有機溶剤B:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
[評価試験]
(テストピースの作製)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これによりプリント配線板を得た。
このプリント配線板上に、各実施例及び比較例で得られたソルダーレジスト用組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、プリント配線板上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を、加熱温度80℃、加熱時間40分の条件で加熱することで予備乾燥した。これにより厚み20μmの乾燥塗膜を形成した。
乾燥塗膜上にネガマスクを直接当てがい、このネガマスクを介して乾燥塗膜に最適露光量の紫外線を照射した。これにより、乾燥塗膜を選択的に露光した。続いて、露光後の乾燥塗膜に、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、乾燥塗膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)をプリント配線板上に残存させた。この硬化膜を更に150℃で60分間加熱して熱硬化させ、続いてこの硬化膜に1000mJ/cm2の紫外線を照射した。これにより、プリント配線板上にソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層を備えるプリント配線板をテストピースとした。
(タック性)
テストピース作製の際、露光時にネガマスクを取り外すときに、乾燥塗膜の粘着性(タック性)を、次に示すように評価した。
3:ネガマスクを取り外す際に全く抵抗が認められず、乾燥塗膜にはネガマスクの痕は認められない。
2:ネガマスクを取り外す際にわずかに抵抗が認められ、乾燥塗膜にネガマスクの痕が認められた。
1:ネガマスクを取り外すことが困難であり、無理に取り外すと乾燥塗膜が毀損された。
(密着性)
JIS D0202で規定される試験方法に従って、テストピースにおけるソルダーレジスト層に碁盤目状にクロスカットを入れ、続いてセロハン粘着テープを用いたピーリング試験をおこなった。試験後の剥がれの状態を目視により観察した。その結果を次に示すように評価した。
3:100個のクロスカット部分のうち全てに全く変化がみられない。
2:100個のクロスカット部分のうち1〜10箇所に剥がれを生じた。
1:100個のクロスカット部分のうち11〜100箇所に剥がれを生じた。
(鉛筆硬度)
テストピースのソルダーレジスト層の鉛筆硬度を、JIS K5400の規定に準拠して、鉛筆として三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて測定した。
(耐酸性)
室温下でテストピースを10%の硫酸水溶液に30分間浸漬した後、ソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
3:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
2:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
1:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
(耐アルカリ性)
室温下でテストピースを濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬した後、ソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
3:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
2:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
1:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
(はんだ耐熱性)
水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を、テストピースのソルダーレジス層に塗布し、続いてソルダーレジス層を260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬してから水洗した。この処理を3回繰り返してから、ソルダーレジスト層の外観を観察し、その結果を次に示すように評価した。
3:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
2:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
1:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
(耐メッキ性)
市販のメッキ液を用いて、テストピースに無電解ニッケルメッキと無電解金メッキを順次施してから、メッキ層及びソルダーレジスト層の状態を確認した。
続いて、ソルダーレジスト層のセロハン粘着テープ剥離試験を行うことで、メッキ後のソルダーレジスト層の密着状態を確認した。
その結果を、次のようにして評価した。
3:メッキ層の形成前後でソルダーレジスト層に外観の変化が認められず、メッキの潜り込みも認められず、セロハン粘着テープ剥離試験にはソルダーレジスト層の剥離は認められなかった。
2:メッキ層の形成前後でソルダーレジスト層に外観の変化が認められないが、セロハン粘着テープ剥離試験にはソルダーレジスト層の一部剥離が認められる。
1:メッキ層の形成後にソルダーレジスト層の浮き上がりが認められ、セロハン粘着テープ剥離試験にはソルダーレジスト層の剥離が認められる。
(PCT耐性)
テストピースを温度121℃の飽和水蒸気中に8時間放置した後、このテストピースのソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
3:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常は認められない。
2:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
1:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
(電気絶縁性)
FR−4タイプの銅張積層板に、ライン幅/スペース幅が100μm/100μmである櫛形電極を形成することで、評価用のプリント配線板を得た。このプリント配線板上に、テストピースを作製する場合と同じ方法及び条件で、ソルダーレジスト層を形成した。続いて、櫛形電極にDC12Vのバイアス電圧を印加しながら、プリント配線板を121℃、97%R.H.の試験環境下に150時間暴露した。この試験環境下におけるソルダーレジスト層の電気抵抗値を常時測定した。その結果を次の評価基準により評価した。
3:試験開始時から150時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上であった。
2:試験開始時から少なくとも100時間経過するまでは、電気抵抗値が106Ω以上であったが、試験開始時から150時間経過した時点では電気抵抗値が106Ω未満となった。
1:試験開始時から100時間経過する以前に、電気抵抗値が106Ω未満となった。