以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、貨幣を計数する機能と、貨幣を入金および出金する機能とを備えた貨幣入出金機が、貨幣処理装置の一例として示されている。
図1は、貨幣入出金機1の構成を示す斜視図である。図2は、貨幣入出金機1の構成を示す概略図である。
貨幣入出金機1は、銀行等の金融機関における窓口カウンタの内側で窓口業務を行う2人のテラー(操作者)の間に設置される。貨幣入出金機1は、各テラーによって操作される上位端末2に通信ケーブル3を介して接続されている。
貨幣入出金機1は、外郭を構成する外装体10内に、紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12とを備える。紙幣入出金ユニット11は、外装体10内の下側に設けられ、紙幣の入金処理、出金処理等を行う。硬貨入出金ユニット12は、外装体10内の上側に設けられ、硬貨の入金処理、出金処理等を行う。
図1を参照し、外装体10は、左右方向の横幅よりも前後方向の奥行が長く、上下方向の高さが左右方向の横幅よりも高いほぼ直方体形状を有する。外装体10は、本体10aと、本体10aの前上部に設けられた外装カバー10bと、本体10aの前面に設けられた扉体10cとを備える。たとえば、外装カバー10bは樹脂材料で形成され、本体10aおよび扉体10cは金属材料で形成される。
外装カバー10bには、上面に硬貨入出金口13が形成され、前面に紙幣出金口14が形成され、上面から前面にかけて湾曲する湾曲面に紙幣入金口15が形成される。これら硬貨入出金口13、紙幣出金口14および紙幣入金口15は、それぞれ、シャッター13a、14a、15aにより開閉される。
外装カバー10bの後部には操作表示部16が設けられる。操作表示部16は、前方斜め上方を向くように外装カバー10bに固定される。操作表示部16は、ディスプレイとタッチセンサとからなるタッチパネルで構成される。操作表示部16は、ディスプレイに各種の画像(画面)を表示するとともに、ディスプレイに対するユーザのタッチ操作をタッチセンサにより検出する。
図2を参照し、紙幣入出金ユニット11は、入金部110と、出金部120と、リジェクト部130と、搬送部140と、識別部150と、紙幣揃え部160と、2つのカセット170と、カセット170用の2つの一時保留部180と、3つのスタッカ190と、スタッカ190用の3つ一時保留部200と、を備える。
入金部110、出金部120およびリジェクト部130は、外装体10内の上部の正面近傍に設けられる。入金部110は紙幣入金口15に繋がり、紙幣入金口15を通じて入金部110にバラ状態の紙幣が投入される。出金部120およびリジェクト部130は紙幣出金口14に繋がり、紙幣出金口14を通じて出金部120およびリジェクト部130からバラ状態の紙幣が取り出される。
入金部110は、入金繰出機構111を備える。入金繰出機構111は、入金部110に投入された紙幣を一枚ずつ搬送部140へ繰り出す。出金部120は、主に、スタッカ190から繰り出された紙幣を受け取る。リジェクト部130は、主に、識別部150により属性(真偽、金種、表裏等)が識別できず、正常な紙幣と見做されない紙幣を受け取る。
搬送部140は、ベルト機構、ローラー機構等により構成され、メイン搬送路141と、入金搬送路142と、出金搬送路143と、リジェクト搬送路144と、2つのカセット搬送路145と、3つのスタッカ搬送路146とを含む。メイン搬送路141は、外装体10内を前後方向に延びるようにループ状に形成され、図2において、時計回り方向(実線矢印)と反時計回り方向(破線矢印)に紙幣を搬送することが可能である。
入金搬送路142は、入金部110とメイン搬送路141との間に設けられる。出金搬送路143は、出金部120とメイン搬送路141との間に設けられる。リジェクト搬送路144は、リジェクト部130とメイン搬送路141との間に設けられる。カセット搬送路145は、カセット170および一時保留部180とメイン搬送路141との間に設けられる。スタッカ搬送路146は、スタッカ190および一時保留部200とメイン搬送路141との間に設けられる。
識別部150は、メイン搬送路141の上側のループの後部に設けられる。識別部150は、搬送部140を流れる紙幣の属性を識別し、識別結果を後述する制御部に出力する。識別される属性には、紙幣の真偽、金種、紙幣の表裏の向きなどが含まれる。また、識別部150は紙幣を計数し、計数結果を後述する制御部に出力する。
紙幣揃え部160は、搬送部140を流れる紙幣の表裏の向きを揃えるために設けられる。紙幣揃え部160は、識別部150の前方、即ち、識別部150よりも出金時の紙幣の流れの下流側に配置される。紙幣揃え部160は、メイン搬送路141の一部を構成する反転部161および非反転部162を含む。反転部161は、スイッチバック方式により紙幣を表裏反転させる反転機構を含む。反転部161を通過した紙幣は、紙幣の短手方向、即ち天地方向に沿って表裏反転し、表裏および天地の向きが入れ替わる。非反転部162は、反転部161とほぼ同じ経路長を有し、紙幣を現状の向きのまま通過させる。たとえば、識別部150での識別の結果、表向きと識別された紙幣が非反転部162を通過し、裏向きと識別された紙幣が反転部161を通過することにより、紙幣の向きが表向きに揃えられる。
2つのカセット170と3つのスタッカ190は、外装体10内において、搬送部140の下方に、前後に並ぶように設けられる。2つのカセット170が3つのスタッカ190の前方に設けられる。カセット170およびスタッカ190は、扉体10cを開放することにより、外装体10内に対して出し入れすることができる。
カセット170は、主に、スタッカ190から回収された紙幣やスタッカ190へ補充される紙幣を収納するために利用される。また、カセット170は、スタッカ190内の紙幣の自動精査を行う自動精査処理の際、紙幣を一時的に収納するために利用される。一方のカセット170を、2千円券、旧券、損券等の収納に利用することもできる。カセット170内には、紙幣が上下に積まれるように収納される。収納された紙幣を昇降するため、カセット170内に昇降ステージ170aが設けられる。
カセット170用の一時保留部180は、対応するカセット170の上方に配置される。一時保留部180は、カセット170に収納される紙幣を一時的に保留(収納)する。一時保留部180の出入口側には繰出機構(図示せず)が設けられ、カセット170内の紙幣を、一時保留部180を通じてカセット搬送路145に繰り出すことができる。
スタッカ190は、入金された紙幣を金種別に収納するために利用される。たとえば、3つのスタッカ190のそれぞれに対し、一万円、千円および5千円の金種が割り当てられ得る。スタッカ190内には、紙幣が上下に積まれるように収納される。収納された紙幣を昇降するため、スタッカ190内に昇降ステージ190aが設けられる。
スタッカ190用の一時保留部200は、対応するスタッカ190の上方に配置される。一時保留部200は、スタッカ190に収納される紙幣を一時的に保留(収納)する。一時保留部200の出入口側には繰出機構(図示せず)が設けられ、スタッカ190内の紙幣を、一時保留部200を通じてスタッカ搬送路146に繰り出すことができる。
紙幣の入金処理の際には、紙幣入金口15を通じて入金部110に投入された紙幣が、搬送部140により搬送されるとともに識別部150で識別され、正常と識別された紙幣が、金種毎に、対応する一時保留部200に一時的に保留される。そして、確定操作がなされると一時保留部200内の紙幣が対応するスタッカ190内に収納される。なお、正常でないと識別された紙幣は、リジェクト部130に戻される。
また、紙幣の出金処理の際には、出金操作により指定された金額の紙幣が、スタッカ190内から繰り出されて搬送部140により搬送され、その途中に紙幣揃え部160で表裏の向きが揃えられて出金部120に払い出される。出金部120の紙幣は、紙幣出金口14を通じて取り出される。
硬貨入出金ユニット12は、図示しない硬貨搬送部、硬貨識別部、複数の金種別硬貨収納投出部などを備える。硬貨の入金処理の際には、硬貨入出金口13から投入された硬貨が、硬貨搬送部により搬送されるとともに硬貨識別部で識別され、正常と識別された硬貨が、金種毎に、対応する金種別硬貨収納投出部に収納される。また、硬貨の出金処理の際には、出金操作により指定された金額の硬貨が金種別硬貨収納投出部から投出され、硬貨搬送部により搬送されて硬貨入出金口13に払い出される。
図3は、貨幣入出金機1の主たる構成を示すブロック図である。
貨幣入出金機1は、上述した紙幣入出金ユニット11、硬貨入出金ユニット12、操作表示部16の他、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、音声出力部24と、を備える。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を備え、記憶部22に記憶された動作プログラムに従って、操作表示部16、紙幣入出金ユニット11の各構成部(入金繰出機構111、搬送部140、識別部150、紙幣揃え部160、カセット170、一時保留部180、スタッカ190、一時保留部200等)および硬貨入出金ユニット12の各構成部を制御する。
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部21の動作プログラムを記憶し、また、制御部21の制御処理の際にワーク領域として利用される。通信部23は、上位端末2との間で通信を行う。音声出力部24は、スピーカを備え、制御部21からの制御に従って、所定の音声を出力する。
さて、貨幣入出金機1の左右両側にいるテラーは、貨幣入出金機1を使用して入金処理、出金処理、計数処理などの取引処理を行うことができる。計数処理には、貨幣(紙幣、硬貨)の枚数を単純に計測する単純計数処理と、貨幣の枚数を計測するとともに同じ金種の貨幣を所定枚数単位にまとめる整理計数処理とが含まれる。各テラーは、貨幣入出金機1に対して、貨幣入出金機1の処理を占有する操作(占有操作)を行った後に、操作表示部16上で所定の操作を行って自身の取引処理を実行する。
なお、取引処理が入金処理または出金処理である場合には、占有操作がなされる前あるいはなされた後に、上位端末2において金額等の入力を含む入金操作または出金操作が行われる。入金操作または出金操作に基づいて、上位端末2から貨幣入出金機1へ入金コマンドまたは出金コマンドが送信される。
また、取引処理が計数処理である場合には、占有操作がなされた後に、操作表示部16上で単純計数処理または整理計数処理の何れを行うかの選択が行われる。この選択は、上位端末2でも行うことができ、この場合は、単純計数コマンドまたは整理計数コマンドが、上位端末2から貨幣入出金機1へ送信される。
なお、2つの上位端末2は、それぞれ、貨幣入出金機1を挟む左右の操作者の配備位置と対応付けられている。即ち、貨幣入出金機1には、貨幣入出金機1の右側の配備位置に対して一方の上位端末2を対応付け、貨幣入出金機1の左側の配備位置に対して他方の上位端末2を対応付ける設定がなされている。各テラーは、自身の配備位置に対応付けられた上位端末2から上記コマンドを送信するための入力を行う。上記コマンドの送信において、各上位端末2は、自身の識別情報を付してコマンドを送信する。コマンドを受信した貨幣入出金機1は、識別情報をもとに、受信したコマンドが何れの配備位置の処理に供されるものであるかを識別する。
次に、貨幣入出金機1における制御動作について、図4(a)〜図5(b)を参照して説明する。
図4(a)は、貨幣入出金機1における基本的な制御処理を示すフローチャートである。
貨幣入出金機1が起動された後、制御部21は、待機画面(図6(a)参照)を操作表示部16に表示させる(S101)。そして、制御部21は、テラーからの占有操作に基づいて、取引処理(単純計数処理、整理計数処理または入出金処理)の占有を何れかのテラーについて受け付けたか否かを判定する(S102)。占有を受け付けたか否かの判定は、図4(b)に示す占有受付処理の処理結果に基づいて行われる。占有を受け付けた場合(S102:YES)、制御部21は、当該占有に基づく取引処理において最初に操作されるべき開始画面(図6(b)、(c)、図7(b)、(c)参照)を、操作表示部16に表示させる(S103)。
表示された開始画面に基づいて、テラーが、操作表示部16に対し、取引処理を開始するための操作を行うと(S104:YES)、制御部21は、テラーにより指定された取引処理、即ち、単純計数処理、整理計数処理または入出金処理の何れかを実行する(S105)。他方、テラーが、操作表示部16に対して、取引処理を取り消すための操作を行うと(S104:NO)、制御部21は、取引処理を実行することなく、制御処理を終了する。ステップS105において取引処理が完了した場合およびステップS106において取引処理が取り消された場合、制御部21は、制御をステップS101に戻して、再度、操作表示部16に待機画面を表示させる。
図4(b)は、占有受付処理を示すフローチャートである。図4(b)の占有受付処理は、図4(a)の制御と並行して繰り返し実行される。
本実施形態では、取引処理を占有するための所定の操作(占有操作)が操作表示部16に対して適正になされた場合に、取引処理の占有が受け付けられる。ここで、占有のための所定の操作は、操作表示部16(画面)に対するタッチ位置を所定距離以上移動させた後、タッチを解除する操作(以下、「スワイプ操作」という)に設定されている。貨幣入出金機1の右側に配備されたテラーは、取引処理を占有しようとする場合、自身に向かう方向、即ち、右方向にタッチ位置を移動させるスワイプ操作を行う。また、貨幣入出金機1の左側に配備されたテラーは、取引処理を占有しようとする場合、自身に向かう方向、即ち、左方向にタッチ位置を移動させるスワイプ操作を行う。制御部21は、スワイプ操作の方向に基づいて、何れの配備位置のテラーに取引処理を占有させるかを決定する。
図4(b)を参照して、制御部21は、操作表示部16に対してスワイプ操作がなされたか否かを判定する(S201)。スワイプ操作がなされた場合(S201:YES)、制御部21は、既に、取引処理が占有状態にあるか否かを判定する(S202)。取引処理が既に占有状態にある場合(S202:YES)、制御部21は、今回のスワイプ操作を無効化して、処理を終了する。他方、取引処理が未だ占有状態にない場合(S202:NO)、制御部21は、占有を受け付ける(S203)。さらに、制御部21は、スワイプ操作の方向を判定し(S204)、スワイプ操作の方向に応じて、取引処理を占有するテラーを決定する(S205)。
ステップS204において、制御部21は、スワイプ操作の方向から、操作表示部16の左右方向に平行なベクトル成分を抽出する。そして、抽出したベクトル成分の方向が右方向である場合、制御部21は、ステップS205において、貨幣入出金機1の右側の配備位置を、取引処理を占有するテラーの配備位置として決定する。また、抽出したベクトル成分の方向が左方向である場合、制御部21は、ステップS205において、貨幣入出金機1の左側の配備位置を、取引処理を占有するテラーの配備位置として決定する。
図5(a)は、図4(a)のステップS103における開始画面表示処理を示すフローチャートである。
制御部21は、まず、占有対象とされるテラーの配備位置に対応付けられた上位端末2から、コマンドを受信しているか否かを判定する(S301)。具体的には、制御部21は、既にコマンドを受信しているか否かを判定し、コマンドを受信している場合に、コマンドに付された上位端末2の識別情報に基づいて、この上位端末2が、占有対象とされるテラーの配備位置に対応付けられた上位端末2であるか否かを判定する。後者の判定がYESの場合に、制御部21は、ステップS301の判定をYESとする。
ステップS301の判定がYESである場合、制御部21は、コマンドに応じた取引処理において最初に表示されるべき処理開始画面(図7(b)、(c)参照)を、開始画面に設定する(S302)。他方、ステップS301の判定がNOである場合(S301:YES)、制御部21は、単純計数処理と整理計数処理の何れか一方を選択するための計数モード選択画面(図6(b)、(c)参照)を、開始画面に設定する(S303)。そして、制御部21は、設定した開始画面を、占有対象とされるテラーの配備位置に対応付けられ表示方式で、操作表示部16に表示させる(S304)。
後述のように、ステップS304では、占有対象のテラーが貨幣入出金機1の右側に配備されたテラーであるか左側に配備されたテラーであるかを表示する文字列が開始画面に含められ、さらに、開始画面中の所定領域の背景色が、占有対象のテラーに応じて変更される。開始画面の構成および開始画面を用いた取引処理のための操作については、追って、図6(a)〜図9(b)を参照して説明する。
図5(b)は、占有解除処理を示すフローチャートである。図5(b)の占有解除処理は、図4(a)の制御と並行して繰り返し実行される。
制御部21は、図4(a)のステップS105における取引処理が完了した場合(S401:YES)、または、図4(a)のステップS106において取引処理の実行が取り消された場合に(S402:YES)、何れか一方のテラーに対する取引処理の占有状態を解除する(S403)。
次に、図4(a)〜図5(b)のフローチャートに従って実行される貨幣入出金機1の動作を、図6(a)〜図9(b)を参照して説明する。
図6(a)は、待機画面S1に対するスワイプ操作を模式的に示す図である。
図6(a)に示すように、待機画面S1には、貨幣入出金機1が保有する紙幣および硬貨の数量を金種毎に示す保有量画像P1が含まれている。上記のように、制御部21は、待機画面S1が表示された状態において、操作表示部16に対して占有操作(スワイプ操作)がなされたか否かを監視する。
図6(b)、(c)は、それぞれ、上位端末2からコマンドを受信していない状態において、待機画面S1に対して左方向のスワイプ操作および右方向のスワイプ操作が行われた場合の開始画面(計数モード選択画面S2)の一例を示す図である。ここで、図6(b)、(c)の画面は、図5(a)の開始画面表示処理において、ステップS301の判定がNOである場合に、ステップS304において、操作表示部16に表示される。
図6(b)、(c)に示すように、計数モード選択画面S2(開始画面)は、単純計数処理を選択するための単純計数ボタンB1と、整理計数処理を選択するための整理計数ボタンB2とを含んでいる。また、計数モード選択画面S2は、取引処理を取消すためのクリアボタンB3と、左右何れのテラーに取引処理を占有させた状態であるかを示す表示領域D1とを含む。クリアボタンB3がタッチされると、図4(a)のステップS106の判定がYESとなって、取引処理が終了する。
スワイプ方向が左方向である場合、図6(b)に示すように、表示領域D1には、左側のテラーが取引処理を占有することを示す文字列が表示される。また、スワイプ方向が右方向である場合は、図6(c)に示すように、表示領域D1に、右側のテラーが取引処理を占有することを示す文字列が表示される。
また、図6(b)、(c)に示すように、取引処理を占有するテラーが左側のテラーであるか右側のテラーであるかに応じて、単純計数ボタンB1と整理計数ボタンB2とを含む表示領域D2の背景色が変えられる。たとえば、取引処理を占有するテラーが左側のテラーである場合、表示領域D2の背景色が緑色に設定され、取引処理を占有するテラーが右側のテラーである場合、表示領域D2の背景色が青色に設定される。
このように、表示領域D1に占有対象のテラーを表記し、さらに、占有対象のテラー毎に表示領域D2の背景色を変えることによって、各テラーは、操作表示部16の画面を参照することにより、左右何れのテラーが取引処理を占有しているかを明確に把握できる。
なお、図6(a)には、右側のテラーが指で右方向にスワイプ操作を行っている様子が模式的に示されている。この場合、操作表示部16には、図6(c)に示す構成の計数モード選択画面S2(右側のテラーによる占有状態)が表示される。
図7(b)、(c)は、それぞれ、上位端末2から入金処理のコマンドを受信した状態において、待機画面S1に対して左方向のスワイプ操作および右方向のスワイプ操作が行われた場合の開始画面(処理開始画面S3)の一例を示す図である。なお、図7(b)、(c)の上段には、図6(a)と同様、待機画面S1が示されている。図7(b)、(c)の画面は、図5(a)の開始画面表示処理において、ステップS301の判定がYESである場合に、ステップS304において、操作表示部16に表示される。
図7(b)、(c)に示すように、処理開始画面S3(開始画面)は、図6(b)、(c)の計数モード選択画面S2と同様、表示領域D1およびクリアボタンB3を含んでいる。また、処理開始画面S3の表示領域D2は、図7(a)の待機画面S1と同様の保有量画像P1を含んでおり、さらに、取引処理を開始させるためのスタートボタンB4を含んでいる。スタートボタンB4がタッチされると、図4(a)のステップS104の判定がYESとなって、取引処理が開始される。
また、図7(b)、(c)に示すように、処理開始画面S3においても、取引処理を占有するテラーが左側のテラーであるか右側のテラーであるかに応じて、表示領域D2の背景色が変えられる。このように、処理開始画面S3においても、表示領域D1に占有対象のテラーが表記され、占有対象のテラー毎に表示領域D2の背景色が変えられるため、各テラーは、左右何れのテラーが取引処理を占有しているかを明確に把握できる。
図8(a)、(b)は、図6(c)に示した計数モード選択画面S2において整理計数が選択された場合の画面の遷移を示す図である。また、図8(c)、(d)は、図6(c)に示した計数モード選択画面S2が表示されている場合に、貨幣入出金機1が上位端末2から入金処理に関するコマンドを受信した場合の画面の遷移を示す図である。
図8(a)、(b)に示すように、計数モード選択画面S2において、テラーが整理計数ボタンB2にタッチすると、処理開始画面S3が表示される。処理開始画面S3の構成は、図7(c)の場合と同様である。即ち、この場合に表示される処理開始画面S3も、表示領域D1に占有対象のテラーが表示され、表示領域D2の背景色が占有対象のテラーに応じた色に設定される。
なお、テラーが単純計数ボタンB1にタッチした場合も、図8(b)と同様の処理開始画面S3が表示される。即ち、テラーが単純計数ボタンB1と整理計数ボタンB2の何れにタッチしても、入金処理の場合と同様の処理開始画面S3が表示され、計数処理の内容のみが、タッチされたボタンによって相違する。
計数モード選択画面S2においてテラーが単純計数ボタンB1または整理計数ボタンB2にタッチする前に、貨幣入出金機1が、上位端末2から入金処理のコマンドを受信すると、図8(c)、(d)に示すように、計数モード選択画面S2が処理開始画面S3に切り替えられる。この処理開始画面S3の構成も、図7(c)の場合と同様である。即ち、この場合に表示される処理開始画面S3も、表示領域D1に占有対象のテラーが表示され、表示領域D2の背景色が占有対象のテラーに応じた色に設定される。
なお、図8(c)の状態において、貨幣入出金機1が、上位端末2から単純計数処理または整理計数処理のコマンドを受信した場合も、図8(d)と同様の処理開始画面S3が表示される。
図9(a)、(b)は、計数処理開始時の画面および計数処理完了時の画面を示す図である。
図7(c)または図8(b)、(c)の処理開始画面S3において、テラーがスタートボタンB4にタッチすると、テラーが指定した取引処理が実行される。この処理は、図4(a)のステップS105の処理に対応する。
たとえば、取引処理が整理計数処理の場合、開始操作の前に入金部110にセットされた紙幣が、入金部110から一枚ずつ繰り出され、最初に繰り出された金種または予め指定された金種の紙幣について、その紙幣の枚数が計側されるとともに、その紙幣がその金種に対応する一時保留部200に保留される。一方で、整理対象の金種でない紙幣は、リジェクト部130へと送られる。
一時保留部200に所定枚数(たとえば、100枚)の紙幣が保留されると、入金部110からの繰り出しが中断され、一時保留部200内の紙幣が、その表裏の向きが揃えられた状態で出金部120に投出される。出金部120から紙幣が抜き取られると、入金部110からの紙幣の繰り出しが再開される。このようにして、同じ金種の紙幣が所定枚数にまとめられて、順次、出金部120に投出される。一時保留部200内に所定枚数の紙幣が保留される前に入金部110に紙幣がなくなれば、保留されていた分の紙幣が最後に出金部120に投出され、これら紙幣が抜き取られると、整理計数処理が完了する。
なお、図7(c)または図8(b)、(c)の処理開始画面S3において、テラーがスタートボタンB4にタッチする前に入金部110に紙幣がセットされたことが検知されると、処理開始画面S3からクリアボタンB3が消去される。
制御部21は、取引処理の実行に伴い、操作表示部16に表示する画面を、処理開始画面S3から、図9(a)に示す処理実行画面S4に切り替える。
処理実行画面S4は、処理開始画面S3に比べて、クリアボタンB3が省略されている。したがって、テラーは、取引処理が開始された後に、取引処理を取り消すことができない。
また、処理実行画面S4は、処理開始画面S3に比べて、スタートボタンB4が金額ボタンB5に置き換えられている。取引処理において紙幣の計数が完了すると、図9(b)に示すように、金額ボタンB5に、計数が完了したことを示すマークと、計数された紙幣の総額が表示される。取引処理が入金処理の場合は、入金金額に応じて、保有量画像P1中の対応する金種の保有量を示すスケールが変化する。
テラーは、金額ボタンB5に表示された金額を確認し、計数結果が適正であれば、金額ボタンB5にタッチする。これにより、取引処理が完了する。制御部21は、金額ボタンB5がタッチされたことにより、取引処理が完了したと判定する。なお、取引処理が単純計数処理または整理計数処理である場合、制御部21は、図9(b)の金額ボタンB5がタッチされ、且つ、出金部120に投出された紙幣が抜き取られたことを検出した場合に、取引処理が完了したと判定する。こうして、取引処理が完了すると、図4(a)のステップS105の制御処理が終了し、処理がステップS101に戻される。また、これに応じて、図5(b)のステップS401の判定がYESとなり、取引処理の占有が解除される。
なお、図6(a)〜図9(b)では、単純計数処理、整理計数処理および入金処理がなされる場合の画面を示したが、出金処理が実行される場合も、入金処理と同様の画面が表示され、各画面に対して同様の操作が行われる。
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
操作表示部16に対する操作によって何れのテラー(操作者)に取引処理を占有させるかが決定される。このため、テラー(操作者)は、操作表示部16に対する操作によって取引処理を占有した後に、そのまま、操作表示部16に対して、取引処理のための操作を進めることができる。よって、各テラー(操作者)は、取引処理の占有からその後の処理操作を簡便に行うことができる。
また、本実施形態では、取引処理を占有するための操作が、操作表示部16に対するタッチ位置を移動させる操作(スワイプ)に設定されている。このため、テラー(操作者)は、簡便な操作により処理を占有できる。
また、制御部21は、貨幣入出金機1に対してタッチ位置の移動方向に基づいて、何れか一方の配備位置のテラー(操作者)に取引処理を占有させる状態に設定するよう構成されている。具体的には、制御部21は、貨幣入出金機1に対してタッチ位置の移動方向にある配備位置のテラー(操作者)に取引処理を占有させる状態に設定する。このため、テラー(操作者)は、自身の配備位置にタッチ位置を引き寄せるといった直感的な操作により、処理を占有することができる。
また、図6(a)〜図7(c)に示すように、制御部21は、何れの配備位置のテラー(操作者)に取引処理を占有させるかに応じて、操作表示部16に表示される画面を変化させる。このため、一方のテラー(操作者)により取引処理が占有されていることを、他方のテラー(操作者)が、操作表示部16上の画面を参照することにより把握できる。よって、誤って、他方のテラー(操作者)が、操作表示部16上の画面に対して操作を行って処理を進めることを抑止できる。
この場合、制御部21は、図6(a)〜図7(c)に示すように、何れの配備位置のテラー(操作者)に取引処理を占有させるかに応じて、操作表示部16に表示される画面上の表示領域D2の背景色を変化させる。これにより、一方のテラー(操作者)により取引処理が占有されていることを、より的確に、他方のテラー(操作者)に把握させることができる。よって、誤って、他方のテラー(操作者)が、操作表示部16上の画面に対して操作を行って処理を進めることを、より確実に、抑止できる。
また、図6(a)〜図7(c)に示すように、制御部21は、操作表示部16に対してスワイプ操作がなされた場合に、占有状態の設定を行うとともに、占有に基づく取引処理の最初に操作されるべき開始画面(計数モード選択画面S2または処理開始画面S3)を、操作表示部16に表示させる。これにより、テラー(操作者)は、占有のためのスワイプ操作を行った後、別途、他の操作を要求されることなく、取引処理に関する操作を始めることができる。よって、テラー(操作者)は、取引処理のための操作をより簡便に開始することができる。
また、図7(a)〜(c)に示すように、制御部21は、開始画面を表示する前に、占有対象の配備位置に対応する上位端末2から取引処理に関するコマンドを受信している場合、コマンドに応じた取引処理の開始画面(処理開始画面S3)を、操作表示部16に表示させる。これにより、テラー(操作者)は、コマンドに応じた処理のための操作を、簡便に開始することができる。
<変更例1>
上記実施形態では、図6(b)、(c)および図7(b)、(c)のように、占有対象のテラーに応じて、表示領域D2の背景色が変更されたが、他の方法により色の変更が行われてもよい。
たとえば、図10(a)、(b)に示すように、表示領域D2より上側の表示領域D3の背景色が、占有対象のテラーに応じて変更されてもよく、あるいは、図10(c)、(d)に示すように、表示領域D2、D3の両方の背景色が、占有対象のテラーに応じて変更されてもよい。また、背景色ではなく、各種ボタンや保有量画像P1等の色が、占有対象のテラーに応じて変更されてもよい。これらの場合も、一方のテラー(操作者)により取引処理が占有されていることを、より的確に、他方のテラー(操作者)に把握させることができる。
<変更例2>
上記構成の貨幣入出金機1では、一方のテラーによって取引処理が占有されている状態において、他方のテラーが画面を参照することなく、操作表示部16に対し、占有のための操作(スワイプ操作)を行うことも想定され得る。このような場合も、他のテラーに対して、既に取引処理が占有されていることを的確に把握させることが好ましい。変更例2は、この点を考慮して、図4(b)の占有受付処理が変更されている。
図11は、変更例2に係る占有受付処理を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは、図4(b)のフローチャートに比べて、ステップS211〜S213が追加されている。制御部21は、ステップS202において、既に取引処理が占有されている状態にあると判定した場合(S202:YES)、ステップS201で検出したスワイプ操作の方向を判定する(S211)。ステップS211における判定方法は、ステップS204の場合と同様である。
次に、制御部21は、判定したスワイプ操作の方向により、今回のスワイプ操作を行ったテラーが、取引処理を占有中のテラーと相違するか否かを判定する(S212)。具体的には、制御部21は、スワイプ操作の方向と反対方向の配備位置のテラーが、取引処理を占有中のテラーである場合に、今回スワイプ操作を行ったテラーと取引処理を占有中のテラーとが相違すると判定する。
ステップS212の判定がYESの場合、制御部21は、図3に示す音声出力部24に報知音を出力させる(S213)。ここで、報知音は、チャイム音やブザー音等であってもよく、あるいは、他のテラーが占有中であることを言葉でアナウンスする音声であってもよい。他方、ステップS212の判定がNOである場合、制御部21は、占有中のテラーが誤ってスワイプ操作を行ったとして、報知音を出力することなく処理を終了する。
変更例2によれば、一方のテラー(操作者)が取引処理を占有した状態において、他方のテラー(操作者)が操作表示部16に対してスワイプ操作を行った場合に、取引処理が一方のテラー(操作者)により占有された状態であることを示す報知音が出力される。このため、誤った占有操作を行ったことを、他のテラー(操作者)に把握させることができる。よって、他方のテラー(操作者)がその後の操作を継続しようとすることを抑止できる。
<変更例3>
上記実施形態では、取引処理を占有するための操作がスワイプ操作であったが、取引処理を占有するための操作が、スワイプ操作以外の他の操作であってもよい。たとえば、操作表示部16に対するタッチ位置を所定距離だけ移動させた後、タッチ位置を移動終端位置に所定時間停止させる操作(スライド操作)が、取引処理を占有するための操作に設定されてもよい。この場合も、上記実施形態と同様、スライド操作時のタッチ位置の移動方向によって、何れのテラーに取引処理を占有させるかが決定される。
なお、取引処理を占有するための操作は、必ずしも、タッチ位置の移動を伴うものでなくともよい。たとえば、図12(a)に示すように、待機画面S1中の右側と左側の空き領域R1、R2がタッチされる操作が、取引処理を占有するための操作に設定されてもよい。この場合、制御部21は、右側の空き領域R1がタッチされた場合に、右側の配備位置のテラーが取引処理を占有する状態に設定し、左側の空き領域R2がタッチされた場合に、左側の配備位置のテラーが取引処理を占有する状態に設定する。たとえば、右側の空き領域R1がタッチされた場合、図12(b)に示す表示形態の計数モード選択画面S2が操作表示部16に表示される。
この構成によっても、テラー(操作者)は、操作表示部16に対する操作によって取引処理を占有した後に、そのまま、操作表示部16に対して、取引処理のための操作を進めることができる。よって、各テラー(操作者)は、取引処理の占有からその後の処理操作を簡便に行うことができる。
ただし、この構成は、待機画面S1中の右側と左側に比較的大きな空き領域R1、R2が存在する場合に実現可能なものである。これに対し、上記実施形態では、待機画面S1に対するスワイプ操作が取引処理を占有するための操作に設定されているため、特に待機画面S1の構成に制約を受けることなく、円滑かつ適切に、取引処理を占有するための操作を行い得る。
<その他の変更例>
上記実施形態および変更例1〜3では、紙幣の計数および入出金処理について、画面の構成を例示したが、硬貨の計数および入出金処理についても、同様の方法により画面が構成され得る。
また、上記実施形態では、各テラーは、取引処理を占有しようとする場合、自身に向かう方向にタッチ位置を移動させるスワイプ操作を行うこととしたが、反対の方向、即ち、取引処理を占有しようとする場合、自身に対向する方向にタッチ位置を移動させるスワイプ操作により占有を行うこととしてもよい。
また、取引処理を占有しようとする場合のスワイプ操作の方向を、設定により変更できることとしてもよい。これらの場合も、テラーは、自身の配備位置に対して所定方向にタッチ位置を移動させるといった直感的な操作により、処理を占有することができる。
また、上記実施形態および変更例1〜3では、貨幣入出金機1の左右の配備位置にテラーが配備されることが想定されたが、1つの貨幣処理装置に対する操作者の配備位置はこれに限られるものではない。たとえば、貨幣処理装置の三方に配備位置が設定され、各配備位置に配備された3人の操作者がそれぞれ貨幣処理装置を用いる構成であってもよい。この場合、貨幣処理装置は、たとえば、各配備位置の操作者が自身の方向(互いに異なる3つの方向)にタッチ位置を移動させる操作を行うことで取引処理を占有できるように構成される。また、操作表示部16は、3人の操作者により操作可能なように設置される。
また、変更例2では、図11のステップS213において報知音が出力されたが、報知音に代えて、あるいは、報知音とともに、振動等の五感で検出可能な他の報知出力が行われてもよい。
また、上記実施形態では、図1に示すように、上位端末2が通信ケーブル3により貨幣入出金機1に接続されたが、上位端末2と貨幣入出金機1との間のデータ通信が無線通信により行われてもよい。また、上記実施形態および変更例1〜3において示された画面の構成は一例であって、適宜、レイアウト等が変更され得る。画面に対する操作は、必ずしも指で行われなくともよく、ペン等の器具で行われてもよい。
また、上記実施形態および変更例1〜3では、操作表示部16に対する操作によって取引処理が占有されるため、操作表示部16の左右には、特に占有のためのボタンが配置されていないが、本発明は、操作表示部16の左右に占有のためのボタンを配置する構成を排除するものではない。即ち、操作表示部16への占有操作とともに、占有ボタンに対する操作によっても、取引処理が占有できる構成であってもよい。
なお、上記実施形態および変更例1〜3では、紙幣入出金ユニット11および硬貨入出金ユニット12を備える貨幣入出金機1が、本発明の貨幣処理装置の一例として挙げられた。しかしながら、本発明は、紙幣入出金ユニット11のみを備える紙幣入出金機や硬貨入出金ユニット12のみを備える硬貨入出金機など、その他の貨幣処理装置に適用することも可能である。
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。