JP2018115146A - 1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 - Google Patents

1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸入麻酔剤として有用な、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率よく、工業的規模で製造する方法を提供する。【解決手段】触媒の存在下、クロラールの気相フッ化反応による得られるフルオラールに対し、オルトギ酸トリメチルを作用させることにより、簡便にデスフルランの合成中間体である1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを得た。得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは塩素化、そしてフッ素化を行うことにより、高い収率でデスフルランに誘導できる。【選択図】なし

Description

本発明は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法に関する。
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルはデスフルランとして知られている重要な吸入麻酔薬である。該吸入麻酔薬は、極めて低い生体内代謝率を有しており、生体に優しく安全性の高い薬剤として広く使用されている。デスフルランに関する製造例は、それの前駆体である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CFCHClOCHF;イソフルラン)、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CFCHOCHF)、そして1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(CFCHFOCHCl)をフッ素化する方法が挙げられる。イソフルランのハロゲン交換フッ素化反応として、アルカリ金属フッ化物を使用する方法(特許文献1)、三フッ化臭素を使用する方法(特許文献2や特許文献3)、フッ化水素を使用する方法(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)が知られている。2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを、直接フッ素化する反応としては、フッ素ガスを使用する方法(特許文献8)、高次金属フッ素化合物を使用する方法(特許文献9や特許文献10)が知られている。1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応は、フッ化水素を使用する方法が知られている(特許文献11)。
米国特許第4874901号明細書 米国特許第4762856号明細書 米国特許第5015781号明細書 特開平2−279646号公報 米国特許第6800786号明細書 国際公開第2006−076324号公報 特表2010−533211号公報 米国特許第3897502号明細書 特開平4−273839号公報 特開平6−192154号公報 西独国特許第2361058号明細書
デスフルランの製造方法については、デスフルラン等のエーテル部位(「−O−」)を持つ化合物の物性上、過酷な条件下にてフッ素化反応を行った場合、エーテル部位の開裂に伴った分解物の副生が問題となってくる。従来からの方法は、高価な出発基質を採用する割に変換率が悪く、効率の良い方法ではなかった。
特許文献1に記載の方法は、高温かつ高圧の条件下のフッ素化反応である為、工業的に採用しにくく、また低収率である。特許文献2や特許文献3に記載の方法についても、毒性と腐食性の強い試薬であり、取り扱いが困難な点が挙げられる。特許文献4や特許文献5に記載の方法は、五塩化アンチモン触媒の存在下、室温付近の条件下、フッ化水素を用いた液相フッ素化を行うことにより、中程度の収率で目的とするデスフルランを得ている。しかし、フッ化水素自身、酸性物質でもあり、また、一般的に反応活性が高いとされる五塩化アンチモンを使用しているため、原料であるイソフルランや目的物であるデスフルランのエーテル部位の開裂に由来した不純物の副生が多く生じていた。特許文献6に記載の方法は、クロミア触媒の存在下での気相フッ素化反応を行っているが、変換率は中程度であり、満足な結果を得ていない。特許文献7に記載の方法は、活性炭に担持したアンチモン触媒の存在下での気相フッ素化反応を行っているが、こちらも変換率は必ずしも高いとは言えなかった。
一方、特許文献8に記載の方法は、爆発の危険もあり、また、取り扱いが不便である。更に、変換率が低く(30%)、かつ、目的物も低収率ということもあり、工業的な製造としては採用しにくい。特許文献9や特許文献10に記載の方法は、反応を円滑に行うためには、大過剰の高次金属フッ素化合物が必要であり、経済的な観点から好ましくない。また、特許文献11に記載の方法は、何れも低収率〜中程度の収率であり、吸入麻酔剤としての製造方法としては採用しにくく、何れの方法も課題が残されたままである。
一方、本発明で開示する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応(本発明の第4工程(詳細は後述する)に対応する)については、特許文献11に記載がなされているが、該公報によれば、五塩化アンチモン触媒の存在下、室温付近にてフッ化水素を用いた液相フッ素化を行うことにより、目的とするデスフルランを得ているが、低収率(21%)であった(特許文献11)。これらの反応例により、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応によるデスフルランの合成には、低収率という課題が残されていた。
以上のように、入手が容易な出発原料を用い、取り扱いが安全なフッ素化試薬を用いて効率よくデスフルランを製造する方法が強く望まれていた。
本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、式[1]:
Figure 2018115146
で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒド(クロラール、本明細書では単に「クロラール」と言うときがある。)に対し、フッ化水素で連続的にフッ素化させることにより、式[2]:
Figure 2018115146
で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール、本明細書では単に「フルオラール」と言うときがある。)を得、その後、得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドにオルトギ酸トリメチルを反応させることにより、式[3]:
Figure 2018115146
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを選択的に得、続いて、得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素化を行うことでデスフルランの前駆体である、式[4]:
Figure 2018115146
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルへ誘導し、さらに、得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルにフッ化水素を反応させることで、式[5]:
Figure 2018115146
で表されるデスフルランを効率的に製造できる知見を新たに見出し、本発明を完成するに至った。
工業的に非常に安価で入手できるクロラールを出発原料とし、4つの製造工程を採用することにより、各工程、それぞれ分離の難しい不純物がほとんど生成せず、目的とするデスフルランが、従来よりも格段に有利に製造できることとなった。本発明の製造方法は、工業的に製造する上で特に好ましい方法と言える。
このように、本発明にて開示する、2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドを出発原料に用いて、気相中でフッ素化反応を行うことにより2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドを得、続いて効率良く1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに変換した後、塩素化反応、そしてフッ素化反応を行うことでデスフルランを製造する方法は今まで知られていなかった。
すなわち、本発明は、以下の[発明1]〜[発明22]に記載する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法を提供する。
[発明1]
以下の4工程を含む、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
第1工程:気相中、触媒の存在下、式[1]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドをフッ化水素と反応させることにより、式[2]で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドを得る工程。
第2工程:第1工程で得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドに、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルを反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを得る工程。
第3工程:第2工程にて得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素(Cl)を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程。
第4工程:第3工程にて得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
[発明2]
第1工程における触媒が、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を金属酸化物もしくは活性炭に担持した金属化合物担持触媒である、発明1に記載の製造方法。
[発明3]
金属化合物が、金属のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属ハロゲン化物もしくは金属オキシハロゲン化物である、発明2に記載の製造方法。
[発明4]
金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、クロミア、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明2または3に記載の製造方法。
[発明5]
第1工程において得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドを、精製操作を行うことなく、そのまま第2工程における出発原料として用いる、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
[発明6]
第2工程における反応を、有機溶媒を用いることなく行う、発明1乃至5の何れかに記載の製造方法。
[発明7]
第3工程において、ラジカル開始剤もしくは光照射が、有機過酸化物、及びアゾ系ラジカル開始剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明1乃至6の何れかに記載の製造方法。
[発明8]
第3工程において、ラジカル開始剤もしくは光照射が、水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザー、及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1乃至6の何れかに記載の製造方法。
[発明9]
第3工程における反応を、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行う、発明1乃至8の何れかに記載の製造方法。
[発明10]
フッ化物イオン捕捉剤が、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の硫酸塩、周期表13族に属する金属の水酸化物、周期表13族に属する金属のハロゲン化物、及び周期表13族に属する金属の硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明9に記載の製造方法。
[発明11]
第3工程における反応を、反応溶媒の存在下で行う、発明1乃至10の何れかに記載の製造方法。
[発明12]
第3工程において、塩素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルと、式[7]:
Figure 2018115146
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを含む混合物として得られる、発明1乃至11の何れかに記載の製造方法。
[発明13]
前記混合物に対し、蒸留精製を行うことにより、該混合物から式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを分離除去する工程を更に含む、発明12に記載の製造方法。
[発明14]
第3工程において、蒸留精製を行うことにより分離除去した、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを回収し、第3工程の塩素化反応における出発原料として用いる、発明13に記載の製造方法。
[発明15]
第4工程において、反応を気相中で行う、発明1乃至14の何れかに記載の製造方法。
[発明16]
第4工程において、反応を触媒の存在下で行う、発明1乃至15の何れかに記載の製造方法。
[発明17]
第4工程において、触媒が四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明16に記載の製造方法。
[発明18]
第4工程における反応を、触媒を共存させずに行う、発明1乃至15の何れかに記載の製造方法。
[発明19]
第4工程において、反応を液相中で行う、発明1乃至14の何れかに記載の製造方法。
[発明20]
第4工程において、液相中での反応を、−10℃〜+150℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa〜2.0MPa(絶対圧。以下、本明細書で同じ)の圧力範囲で行う、発明19に記載の製造方法。
[発明21]
第4工程において、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ化水素との反応を、液相中、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより行う、発明1乃至14の何れかに記載の製造方法。
[発明22]
「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、及び2,6−ルチジンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明21に記載の製造方法。
本発明によれば、入手が容易なクロラールを出発原料とし、取り扱いが安全な各種試剤を用いて、前記で記載した工程を経由することにより、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率的に製造できるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
本発明は、前記で述べた4つの工程を含む製造方法であり、各工程の関係を図示すると、以下の通りである。
Figure 2018115146
[第1工程]
最初に第1工程について説明する。第1工程は、気相中、触媒の存在下、式[1]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドをフッ化水素と反応させることにより、式[2]で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドを得る工程である。
本工程で使用する、出発原料の式[1]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドは、市販品(東京化成工業株式会社品)を利用することができるが、その他にも文献記載(Tetrahedron Letters, 56(24), 3758−3761,2015)の方法等により調製できる。
本工程は、フッ化水素に対して実質的に不活性な材質で造られた反応器を用い、温度の調節の下、触媒の充填された反応領域へクロラールを導入することで行なわれる。本工程で用いる反応容器としては、通常、管状のものであって、ステンレス鋼、ハステロイTM、白金等の金属製のものや、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂等を内部にライニングしたものであり、常圧又は加圧下でも十分反応を行うことができる反応容器を用いるのが好ましい。
本工程で用いる触媒は、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を金属酸化物もしくは活性炭に担持した金属化合物担持触媒である。また、前記金属化合物については、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属ハロゲン化物もしくは金属オキシハロゲン化物である。更に、前記金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、クロミア、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも1種である。なお、前記担体をフッ素化したもの(例えば、フッ素化アルミナ等)についても触媒として使用できる。これらの触媒のうち、クロム化合物が金属酸化物もしくは活性炭に担持した触媒が好ましい。
前記金属化合物を担体に担持したものを触媒として用いる場合、担持金属化合物は担体100質量部に対し0.1から100質量部であり、1から50質量部がより好ましい。なお、後述の調製例1で詳細に述べるが、金属酸化物として用いるアルミナは、一般的にアルミニウム塩水溶液からアンモニアなどを用いて生じさせた沈殿を成型・脱水させて得られるアルミナである。通常、触媒担体用あるいは乾燥用として市販されているγ−アルミナが好ましく用いられる。
触媒(金属化合物担持触媒)を調製する方法は限定されないが、先のγ−アルミナなどのアルミニウム酸化物にクロム、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄の中から選ばれる少なくとも1種の金属の可溶性化合物を溶解した溶液を含浸する、もしくはスプレーをした後、次いで乾燥させる。その後、フッ化水素などのフッ素化剤により、部分的にまたは完全に担体をフッ素化させ、フッ素化アルミナとすることで触媒は調製される。触媒の調製の最終段階では、フッ素化反応の反応温度以上の温度でフッ化水素を流通させることが好ましい。従って、通常は200から500℃、中でも300から400℃で好適に処理さ
れる。
可溶性化合物としては、水、エタノール、アセトンなどの溶媒に溶解する該当金属の酸化物または塩であれば特に限定されないが、例えば硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩などが挙げられる。具体的には、硝酸クロム、三塩化クロム、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、硝酸マンガン、塩化マンガン、二酸化マンガン、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、硝酸鉄、塩化鉄などを用いるのが好ましい。これらの化合物は水和物であっても良く、その金属の価数は任意の価数であって良い。何れの方法で調製した触媒も、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素などのフッ素化剤で処理し、反応中の触媒の組成変化を防止することが有効である。
担体として用いる活性炭は、木材、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰等を原料とする植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭等を原料とする石炭系、石油残滓、オイルカーボン等を原料とする石油系または炭化ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂系がある。これら市販の活性炭から選択し使用することができ、例えば、瀝青炭から製造された活性炭(三菱化学カルゴン製BPL粒状活性炭)、椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ製G2c、G2x、GS3c、GS3x、C2c、C2x、X2M、三菱化学カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。形状、大きさも通常粒状で用いられるが、球状、繊維状、粉体状、ハニカム状等反応器に適合すれば通常の知識範囲の中で使用することができる。本発明において使用する活性炭は比表面積の大きな活性炭が好ましい。活性炭の比表面積ならびに細孔容積は、市販品の規格の範囲で十分であるが、それぞれ400m/gより大きく、0.1cm/gより大きいことが望ましい。またそれぞれ800〜3000m/g、0.2〜1.0cm/gであればよい。さらに活性炭を担体に用いる場合、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液に常温付近で10時間程度またはそれ以上の時間浸漬するか、活性炭を触媒担体に使用する際に慣用的に行われる硝酸、塩酸、フッ酸等の酸による前処理を施し、予め担体表面の活性化ならびに灰分の除去を行うことが好ましい。
また、反応中に酸素、塩素、フッ素化または塩素化炭化水素などを反応器中に供給することは触媒寿命の延長、反応率、反応収率の向上に有効である。本発明にかかる触媒が、反応により活性を失った際には、再び活性化させることが可能である。すなわち、失活した触媒は、高められた温度で酸化性物質、例えば、酸素、空気、塩素などと接触させることで再活性化することができる。その時の処理温度は、200から550℃であり、中でも300から500℃が好ましい。200℃未満では未活性化の状態のままであり、550℃を超えると触媒が変性して活性を得ることができない場合がある。
本工程における反応温度は特に限定されないが、100から500℃であり、100から400℃が好ましく、100から350℃がさらに好ましい。反応温度が500℃を超えても特に反応率は向上せず、分解生成物が生成して式[2]で表されるフルオラールの選択率が低下するので好ましくない。
本工程において、反応領域へ供給するクロラール:フッ化水素のモル比は、反応温度に影響を受けるが、通常1:2から1:50であるが、1:4から1:20が好ましく、1:6から1:15がより好ましい。フッ化水素が少ないと反応の変換率は低下し、目的物の収率が低下することがある。
本工程において、反応領域へ供給するクロラールは、反応に関与しない窒素、ヘリウム、アルゴンなどのガスと共に供給することができる。また、同様にフッ化水素を共存させることもできる。このようなガスは、クロラールまたはそれを含む混合物からなる原料1モル当たり100モル以下の比率とし、20モル以下が好ましい。また、反応に関与しないガス類は、使用しなくても構わない。
本工程における反応圧力としては、通常0.1〜6.0MPaの範囲であるが、本工程における好ましい圧力範囲については、好ましくは0.1〜3.0MPa、より好ましくは0.1〜1.5MPaの範囲である。圧力を設定する場合、系内に存在する原料などの有機物が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。
第1工程の方法での接触時間は、標準状態において、通常0.1から200秒、好ましくは3から100秒である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こるので好ましくない。
本工程では、気相中、フッ化水素を流通させることでフッ素化反応を進行させるが、このような流通形式では、触媒の保持方法は固定床、流動床、移動床等、いずれの形式でもかまわないが、固定床で行うのが簡便であり、好ましい。
本工程の方法によりフッ素化されて反応器より流出する、フルオラールを主成分とする生成物は、公知の方法で精製してから次工程に用いることができる。精製方法は特に限定されないが、フルオラールは、水溶性の化合物のため、水洗等による除酸操作は好ましくない。
なお、本工程では、反応器より流出する、フルオラールを主成分とする生成物にはフッ化水素が含まれているが、それが仮に存在していても、続く第2工程において、フッ素化剤としても利用できるため、必ずしも本工程で積極的にフッ化水素を反応系から除去する必要がない。従って、後述の実施例で示すように、本工程により得られたフルオラールは、特別な精製操作を行わずに、そのまま次工程に供することは、好ましい態様の一つと言える。
[第2工程]
次に、第2工程について説明する。第2工程は、第1工程で得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドに、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルを反応させることによりを反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを得る工程である。
なお、本工程ではフッ化水素を用いるが、前工程で得られた、反応器より流出するフルオラールを主成分とする生成物にはフッ化水素が含まれている為、そのフッ化水素を本工程におけるフッ素化剤として利用することができる(後述の実施例参照)。この場合、本工程でフッ化水素を加える実施態様と実質的に同義である為、前工程由来のフッ化水素を利用する実施態様であっても本工程の範囲に包合されるものとする。
本工程におけるフッ化水素の使用量は、第1工程で得られるフルオラールに対し、通常、1当量以上あれば良く、2当量から10当量を用いると反応が円滑に進行するため好ましい。後処理面を考慮すると、特に3当量から6当量が好ましい。第1工程にて用いたフッ化水素の使用量が少ない場合は、フッ化水素を新たに添加する必要があるが、第1工程にて回収された有機物中に十分なフッ化水素が含有している場合は、そのまま用いることができる。
本工程で用いるオルトギ酸トリメチルは、反応系に添加することで、フッ素化反応の変換率を向上させることができることから、本発明における好ましい態様の一つとして挙げられる。オルトギ酸トリメチルは市販品(日宝化学株式会社品)を用いることができる。
フルオラールに対するフッ素化反応は、下記式で表されるように、反応の進行と共に、目的物の他、水分子が発生する。オルトギ酸トリメチルは、水分子に対するスカベンジャー(捕捉剤)として機能しているものと考えられる。すなわち、オルトギ酸トリメチルはフッ化水素の酸性条件下、速やかに加水分解反応を促され、1分子のギ酸メチルと2分子のメタノールへ変換される。
このように、オルトエステル(オルトギ酸トリメチル)と水との反応によりアルコール(メタノール)が生成し(脱水剤として機能)、それと同時に得られるエステル体(ギ酸メチル)は、反応後、目的物(式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル)と容易に分離が可能である。
Figure 2018115146
オルトギ酸トリメチルを脱水剤として機能させるには、オルトギ酸トリメチルの使用量は、式[2]で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド1当量に対し、0.2当量以上、通常は0.5〜1.5当量用いるのが良い。但し、オルトギ酸トリメチルを1.5当量超える量を用いた場合、加水分解により副生するアルコール(メタノール)の影響を受け、フルオラールとの平衡化合物である2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール体(2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール体)、またはジメチルアセタール(1,1−ジメトキシ−2,2,2−トリフルオロエタン)が生じ、目的とする式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルへの反応が阻害されることがあるので、前述した範囲の量を用いることは、好ましい態様の一つとして挙げられる。
本工程における反応溶媒は、耐フッ化水素の高い溶媒を好適に用いることができる。脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系、スルホキシド系等が挙げられる。具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの反応溶媒は、単独または組み合わせて用いることができる。
また、本発明は反応溶媒を用いずに反応を行うことができる。この態様は、反応後の精製操作が簡便となり、高純度な該目的物を洗浄操作のみで得る利点があり、より好ましい。
温度条件は、−50から+100℃の範囲で行えば良く、通常は−20から+50℃が好ましく、中でも0から+20℃が特に好ましい。
圧力条件は、0.1MPaから0.9MPaの範囲で行えば良いが、通常、0.1MPaから0.5MPaが好ましく、特に0.1MPaから0.2MPaがより好ましい。従って、ステンレス鋼(SUS)等の材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を用いて反応を行うことが好ましい。例えば、フッ化水素の沸点(+19.54℃)以上の温度条件で反応を行う場合には、ステンレス鋼(SUS)等の耐圧反応容器を用いることが好ましい。
反応時間は、通常は12時間以内であるが、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段によりフッ素化反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
後処理は、反応終了液に対して通常の精製操作である洗浄を実施することにより、目的とする式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを容易に得ることができる。目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度品へ精製することができる。
[第3工程]
次に、第3工程について説明する。第3工程は、第2工程にて得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程である。
本工程を行う際、塩素の供給量は、第2工程により得られた式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、1.00当量から4.00当量の範囲で行えば良く、中でも1.25当量から3.00当量が好ましく、特に1.50当量から2.50当量が特に好ましい。
塩素の供給量に応じて反応基質の塩素化度は進行するが、塩素の供給量を適切に制御することで、目的物(式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル)と分離が困難である、式[6]:
Figure 2018115146
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル(高次塩素化物)の副生を最小限に抑制できる知見を得た。
一方、目的物(式[4])の他、低次塩素化物である、式[7]:
Figure 2018115146
の1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルについても、当該目的物との混合物として生成するが、この混合物は、通常の蒸留操作より、共に分離が可能であり、更に、低次塩素化物については回収し、塩素化反応の原料として再び利用することができる。
反応器に塩素を供給する場合、塩素は気体および液体のどちらであっても良いが、取扱いの容易さの観点から、気体であることが好ましい。塩素の供給方法は、反応液中に、塩素を供給できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、塩素化の反応開始前に反応容器内に一括で塩素を仕込む方法、塩素化反応の進行中に逐次的に塩素を供給する方法、塩素化反応の進行中に連続的に塩素を供給する方法などがある。また、反応が激しすぎる場合、アルゴンや窒素等の不活性ガスを塩素に混合させながら(すなわち、塩素を不活性ガスで“希釈する”ことを意味する)導入しても良い。
本工程は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対する塩素化反応の選択性をより向上させるために、ラジカル開始剤を共存させることができる。具体的には、有機過酸化物、アゾ系ラジカル開始剤等が挙げられる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ケトンペルオキシド、ペルオキシケタール、ハイドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートを例示できる。アゾ系ラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(略名“AIBN”)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が例示できる。
ラジカル開始剤を用いる場合、ラジカル開始剤の使用量は、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル1.0モルに対して通常0.01〜20モル%であり、好ましくは0.1〜10モル%、更に好ましくは0.5〜5モル%である。また、ラジカル開始剤は反応の進行状況を観察して、適宜追加することもできる。ラジカル開始剤の量が原料1モルに対して0.01モル%未満では反応が途中で停止しやすく、収率が低下する恐れがあるため好ましくなく、20モル%を超えると経済的に好ましくない。
一方、本工程において光照射を行う場合、光源は水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザー、ハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種であるが、これらのうち水銀灯を用いて行うのが好ましい。
本工程は反応溶媒を用いることができる(後述の実施例で示すように、反応溶媒を用いずに反応を行うことも可能である)。反応溶媒は、水、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系及びスルホキシド系等が挙げられる。具体例な反応溶媒としては、水、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル及びジメチルスルホキシド等であり、これらの反応溶媒は、単独または1種類以上を組み合わせて用いることができる。
なお、反応溶媒として水を用いる場合、蒸気圧の高い化合物である、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルや低次塩素化物である、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルの揮発を効果的に抑制することができる。反応効率の向上も期待されるため、好ましい態様の一つである。
本工程で用いる反応溶媒の使用量は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル100質量部に対し、10質量部から1000質量部の範囲で行えば良く、中でも10質量部から500質量部が好ましく、特に25質量部から250質量部の使用量が好ましい。本工程において、水を反応溶媒として用いる場合、水の使用量は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル100質量部に対し、10質量部から1000質量部の範囲で行えば良く、中でも10質量部から500質量部が好ましく、特に25質量部から250質量部の使用量が好ましい。
また、本工程において、反応系内にフッ化物イオン補足剤を添加させることで、反応中に発生するフッ化物イオンを効率的に捕集できる。アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の硫酸塩、周期表13族に属する金属の水酸化物、周期表13族に属する金属のハロゲン化物、及び周期表13族に属する金属の硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。フッ化物イオン捕捉剤の具体例としては、フッ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウムや硫酸アルミニウム等が挙げられる。その中でも、塩化カルシウムは取り扱いが容易であり、水への溶解度が高いため、好適に用いることができる。塩化カルシウムは、無水物、一水和物、二水和物、四水和物、六水和物の群から選ばれる少なくとも1種の塩化カルシウムを用いれば良い。フッ化物イオン捕捉剤は固体のまま反応系に添加しても良いが、水などの溶媒に溶解させた方が、効果的なフッ化物イオンの捕捉作用が期待されるため、より好ましい。
フッ化物イオン捕捉剤の使用量は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル100質量部に対し、0.1質量部から100質量部の範囲で行えば良く、中でも0.5質量部から50質量部が好ましく、特に1質量部から25質量部の使用量が好ましい。
本工程における反応温度は、通常、−50から+80℃の範囲で行えば良く、通常は−20から+50℃が好ましく、中でも−10から+25℃が特に好ましい。反応温度は低温ほど塩素の位置選択性が向上するため、室温以下での反応を実施するのが好ましい。
本工程の圧力条件は、0.05MPa〜5.0MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPa〜0.3MPa程度の微加圧の範囲が、より簡便であり、好ましい。なお、5.0MPaを超える圧力で反応を行うことも可能であるが、過剰な圧力条件は設備に負荷がかかるため、前記圧力範囲、大気圧下での反応が好ましい。従って、塩素や副生する塩化水素に対する耐食性を有する石英ガラスやホウケイ酸ガラス等のガラス容器、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を好適に用いることができる。
本工程の目的物である式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは有用な吸入麻酔薬であるデスフルランの前駆体である。一方、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルに対し、特許文献2や特許文献3に記載の方法を参考にフッ素化を試みたところ、フッ素化は部分的に進行し、1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロジフルオロメチルエーテルが得られる(後述の参考例1参照)。しかしながら、該エーテルはデスフルランを製造する際、分離困難な不純物になり得るため、吸入麻酔薬であるデスフルランの製造工程を考慮した場合、本発明の光塩素化時において、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは、できる限り低減させることが好ましい。
本工程の反応時間は、通常は12時間以内であるが、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質の消失を確認後、分離困難な高次塩素化物である式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルの選択率が、概ね10%以下となるように反応を終了させることが好ましい。
反応終了後の後処理操作は、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、目的とする式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルが得られる。必要に応じ、活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により、さらに高い純度の目的物を得ることが可能である。
一方、低次塩素化物である式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルも容易に分離回収でき、回収した1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは再度、塩素化を行うことで、目的物である式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルへ誘導することが可能である。[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを再利用する際は、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを再添加して、塩素化反応を繰り返し行うこともできる。
[第4工程]
次に、第4工程について説明する。第4工程は、第3工程にて得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程である。
本工程では、液相中もしくは気相中でフッ素化反応を実施できるが、液相もしくは気相といった違いにより、反応条件が異なってくる。そこで、液相中もしくは気相中でフッ素化反応を行う場合について、それぞれ、順を追って説明する。
[液相中でフッ素化反応を行う場合]
本工程では、液相中でフッ素化反応を行う際、触媒を用いることができる。具体的には、四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒が利用できる。これらの触媒は単独、または組み合わせて使用することができる。中でも、四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズの使用が好ましく、特に四塩化スズが好適に用いられる。
上記触媒を用いる際の使用量は、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル100質量部に対し、0.01質量部から50質量部であり、好ましくは0.1質量部から20質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部から10質量部である。触媒の量が50質量部を超えると、高沸点化合物からなるタール生成量が増加するため、好ましくない。なお、液相中におけるフッ素化反応については、触媒を用いずに反応を行うこともできる(後述の実施例)。
液相中でフッ素化反応を行う際の、フッ化水素の使用量は、式[4]で示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モルに対し、0.1モルから100モルであり、好ましくは0.5モルから50モルであり、さらに好ましくは1モルから25モルである。フッ化水素量が0.1モル未満の場合は、反応における変換率が悪い。また、フッ化水素量が100モルを超える量の使用、経済的な観点から好ましくない。
なお、本工程において、液相中でフッ素化反応を行う場合、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」として反応させることにより、目的物であるデスフルランを製造することも可能である。当該「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」は、有機塩基とフッ化水素を混合することで調製できる。なお、アルドリッチ社(Aldrich、2012−2014カタログ)から市販されている、「トリエチルアミン1モルとフッ化水素3モルとからなる錯体」または「ピリジン〜30%とフッ化水素〜70%とからなる錯体」を用いることもできる。
「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等が好ましく挙げられる。但し、これらに限定されず、有機合成において一般的に用いられる有機塩基も採用することができる。その中でもトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが好ましく、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが特に好ましい。有機塩基は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
なお、前記「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」は、当該塩または錯体中に存在するフッ化水素が1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルと反応を起こし、フッ素化反応が進行する(すなわち、当該塩または錯体中に含まれるフッ化水素は、単独のフッ化水素と同様、塩素原子をフッ素原子に置換するフッ素源として働く)。従って、本工程において、「1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させる」という実施態様は、本工程における「1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させる」という実施態様に包含されるものとして扱う。
「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」の、有機塩基とフッ化水素のモル比は、100:1〜1:100の範囲で用いれば良いが、50:1〜1:50が好ましく、25:1〜1:25が特に好ましい。
「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」中に含まれるフッ化水素の使用量は、式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モルに対し、0.1〜200モルであり、好ましくは0.5〜100モルであり、さらに好ましくは1〜50モルである。フッ化水素量が0.1モル未満の場合は、反応における変換率が悪い。また、フッ化水素量が200モルを超える量の使用は経済的な観点から好ましくない。
本工程(第4工程)において、液相中でフッ素化反応を行う場合、溶媒を用いることができる。溶媒としては、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
これらの反応溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、n−ノナン、n−デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが特に好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
溶媒の使用量としては、特に制限は無いが、一般式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モルに対して0.05L(リットル)以上使用すれば良く、通常は0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
液相中でフッ素化反応を行う際の反応温度は、−20℃から+200℃の範囲で行えば良く、通常は−10から+150℃が好ましく、中でも0から+100℃が特に好ましい。
液相中でフッ素化反応を行う際の圧力条件は、0.1MPaから4.0MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPaから2.0MPaが好ましく、特に0.1MPaから1.5MPaがより好ましい。
なお、本工程の液相中でフッ素化反応を行う際、温度範囲及び圧力範囲を、0℃〜+50℃とし、かつ、0.1MPaから1.0MPaとすることで、高い変換率でフッ素化反応が進行することは勿論のこと、反応基質や生成物(デスフルラン)のエーテル部位の開裂により生成する分解物の生成を避けることができる。このことは、すなわち、高い選択率でデスフルランを得ることを意味しており、この反応条件を採用することは、極めて好ましい態様と言える。
なお、液相中でフッ素化反応を行うにあたり、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を用いる場合は、温度範囲及び圧力範囲を、−10℃〜+150℃とし、かつ、0.1MPaから2.0MPaとすることで、同様に高い変換率でフッ素化反応が進行し、高い選択率でデスフルランを得ることが可能である(後述の実施例14参照)。
[気相中でフッ素化反応を行う場合]
本工程では、気相中でフッ素化反応を行う際、触媒を用いることができる。具体的には、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を金属酸化物もしくは活性炭に担持した金属化合物担持触媒である(なお、これらの触媒の具体的な種類、調製方法は、前記第1工程で記載した触媒と同じものが利用できる為、ここでは記載を省略する)。
気相中でフッ素化反応を行う際の反応温度は特に限定されないが、100から500℃であり、100から400℃が好ましく、100から350℃がさらに好ましい。反応温度が500℃を超える場合は、分解生成物が生成し、目的物の選択率が低下することがあるので好ましくない。
気相中でフッ素化反応を行う際の、反応領域へ供給する1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル:フッ化水素のモル比は、反応温度に影響を受けるが、通常1:2から1:50であるが、1:4から1:20が好ましく、1:5から1:15がより好ましい。フッ化水素が少ないと反応の変換率は低下し、目的物の収率が低下することがある。
気相中でフッ素化反応を行う際の、反応領域へ供給する1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは、反応に関与しない窒素、ヘリウム、アルゴンなどのガスと共に供給することができる。また、同様にフッ化水素を共存させることもできる。
このようなガスは、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モル当たり100モル以下の比率とし、20モル以下が好ましい。また、反応に関与しないガス類は、使用しなくても構わない。
気相中でフッ素化反応を行う際の反応圧力としては、通常0.1〜6.0MPaの範囲であるが、本工程における好ましい圧力範囲については、好ましくは0.1〜3.0MPa、より好ましくは0.1〜1.5MPaの範囲である。圧力を設定する場合、系内に存在する原料などの有機物が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。
気相中でフッ素化反応を行う際の接触時間は、標準状態において、通常0.1から200秒、好ましくは3から100秒である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こるので好ましくない。
なお、気相中、フッ化水素を流通させることでフッ素化反応を進行させることが可能であるが、このような流通形式では、触媒の保持方法は固定床、流動床、移動床等、いずれの形式でもかまわないが、固定床で行うのが簡便であり、好ましい。
本工程における反応容器については、ステンレス鋼(SUS)の様な材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂にて内部がライニングされた耐圧反応容器を用いて反応を行うことが好ましい。
本工程における反応時間は、通常は12時間以内であるが、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルと使用したフッ化水素の使用量に起因した反応条件の違いにより、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
後処理は、反応終了液に対して通常の精製操作を実施することにより、目的とするデスフルランを高収率で得ることができる。目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度品へ精製することができる。
なお、本工程における1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルのフッ素化反応は、該エーテルと類似の化合物である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)に対するフッ素化反応(比較例1〜4)と比較しても、高い変換率かつ高い選択率でデスフルランを製造することが可能である。この結果は、基質自身が持つ特異的な性質が影響を与えているものと推測されるが、前述した第1〜3工程を経由し、かつ、本工程を採用することにより、従来と比べて、効率的にデスフルランを製造することが可能である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」は、原料または生成物をガスクロマトグラフィー(特に記述のない場合、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
[調製例1;塩化クロムをアルミナに担持した触媒の調製例]
896gの特級試薬CrCl・6HOを純水に溶かして3.0Lとした。この溶液に粒状アルミナ400gを浸漬し、一昼夜放置した。次に濾過してアルミナを取り出し、熱風循環式乾燥器中で100℃に保ち、さらに一昼夜乾燥した。得られたクロム担持アルミナは、電気炉を備えた直径4.2cm、長さ60cmの円筒形SUS316L製反応管に充填し、窒素ガスを約20mL/分の流量で流しながら300℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素を同伴させ、その濃度を徐々に高めた。充填されたクロム担持アルミナのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで反応器温度を350℃に上げ、その状態を5時間保ち触媒の調製を行った。
[調製例2;ピリジンとフッ化水素とからなる錯体の調製例]
攪拌機、圧力計を備えた1000mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器にピリジン158.2g(2mol、1当量)を量り取り、ドライアイスにて冷却した。その後、発熱に注意しながらフッ化水素200.0g(10mol、5当量)を内温20℃以下にてゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌することにより、ピリジン・フッ化水素錯体(モル比、ピリジン:フッ化水素=1:5)を調製した。
[実施例1]
Figure 2018115146
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径2.5cm・長さ40cm)に触媒として調製例1で調製した触媒を125mL充填した。約100mL/分の流量で空気を流しながら、反応管の温度を305℃に上げ、フッ化水素を約0.32g/分の速度で1時間にわたり導入した。次いで、原料であるクロラールを約0.38g/分(接触時間15秒)の速度で反応管へ供給開始した。反応開始1時間後には反応は安定したので、反応器から流出するガスを、ドライアイスにて冷却した吹き込み管付きシリンダーへ3時間かけて捕集した。
70.4gのフルオラール含有捕集液に関し、滴定より、フッ化水素含量、塩化水素含量、そして有機物含量を算出すると、フッ化水素41質量%、塩化水素11質量%、そして有機物含有量49質量%であり、有機物の回収率は90%(供給原料クロラールモル数基準)であった。また、回収した有機物の一部に対し、フッ化水素の除去を目的に無水塩化カルシウムを添加後、19F−NMRにてフッ素化度を確認すると、定量的にフッ素化が進行していることを確認した。
[実施例2]
Figure 2018115146
温度計と冷却管コンデンサーを備えた250mlのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)反応器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、実施例1で得られたフルオラール含有捕集液70.4g(フルオラールのモル数:352mmol)を速やかに仕込み、冷却した。次いで発熱に注意しながらオルトギ酸トリメチル37.4g(352mmol)を添加した。その後、室温にて2時間攪拌後、水60gを添加し、反応を停止した。反応液を2層分離することにより得た有機物に対して、16質量%水酸化カリウム水溶液30gを用いて洗浄を行い、再度、2層分離することにより有機物を25.7g回収した。実施例1からの2段階の反応収率は50%であった。回収した有機物をGC分析に供すると、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは91.1%であった。
[実施例3]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチル
エーテル40.0g(303mmol、1.00当量)、そして水40gを量り取った。また、冷却管コンデンサーの出口には、反応で副生する塩化水素を吸収する水トラップ、次いで、揮発分の有機物回収を目的にしたドライアイストラップを接続した。冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)にて紫外線を照射しながら、塩素37.5g(529mmol、1.75当量)を発熱に注意しながら、4時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、さらに水層を2層分離にて除去することで、反応粗体59.0gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは未検出、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは38.9%、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは48.2%、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは2.7%、その他は10.2%であった。一方、ドライアイストラップにて捕集された有機物は0.3gであり、微量であった。
[物性データ]
1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.72(3H,s), 5.28(1H,dq,J=60.0,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−84.33 (3F,s),−146.04(1F,d,J=60.7Hz)

1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.05(1H,dq,J=54.2,3.2Hz), 7.27(1H,s)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.68
(3F,s),−148.66(1F,d,J=54.8Hz)

1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.57(2H,dd,J=9.5,9.9Hz), 5.73(1H,dq,J=59.4,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.91(3F,s),−152.60(1F,d,J=57.7Hz)

1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.10(1H,dq,J=52.7,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.38(3F,s),−148.06(1F,d,J=52.2Hz)
[実施例4]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル30g(227mmol、1.00当量)、水15g、そして無水塩化カルシウム1.5gを量り取った。冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)にて紫外線を照射しながら、塩素33g(465mmol、2.00当量)を発熱に注意しながら、4時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体39gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは未検出、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは26.9%、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは58.3%、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは6.4%、その他は8.4%であった。また、この反応粗体中のフッ化物イオンをイオン電極法にて測定すると、3ppmであった。
[実施例5]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル30g(227mmol、1.00当量)、そして無水塩化カルシウム1.5gを量り取った。冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)にて紫外線を照射しながら、塩素33g(465mmol、2.00当量)を発熱に注意しながら、4時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体39gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは未検出、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは18.7%、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは61.2%、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは8.9%、その他は11.2%であった。また、この反応粗体中のフッ化物イオンをイオン電極法にて測定すると、5ppmであった。
[実施例6]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル400g(3.03mol、1.00当量)、水285g、そして無水塩化カルシウム15gを量り取った。冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)にて紫外線を照射しながら、塩素379g(5.35mol、1.76当量)を発熱に注意しながら、5時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体510gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは未検出、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは33.5%、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは52.6%、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは4.4%、その他は9.5%であった。また、この反応粗体中のフッ化物イオンをイオン電極法にて測定すると、5ppmであった。
この反応粗体を理論段数10段の蒸留塔を用いて分留すると、初留分として式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを97.2%含有する留分を148g得、主留分として上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを96.8%含有する留分を226g得た。尚、主留分には含まれる式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは1.0%以下であった。初留分に含まれる低次塩素化物の反応から回収率は29%、
そして主留分に含まれる目的物の回収率は37%であった。
[実施例7]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、実施例6にて回収した、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテル20g(120mmol、1.00当量)、水10gを量り取った。冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)にて紫外線を照射しながら、塩素8g(113mmol、0.95当量)を発熱に注意しながら、1時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体22gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは27.9%、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは64.7%、式[6]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは5.3%、その他は2.1%であった。
[実施例8]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル150g(1.14mol、1.00当量)を量り取った。その後、冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ社製)にて紫外線を照射しながら、塩素178g(2.51mol、2.20当量)を発熱に注意しながら、5時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体199gを得た。この反応粗体を理論段数10段の蒸留塔を用いて分留すると、留分として上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを92.9%GC純度で114g得た。この場合の反応からの収率は50%であった。
[実施例9]
Figure 2018115146
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル50g(379mmol、1.00当量)、そしてAIBN1.2g(7.6mmol、2mol%)を量り取った。オイルバス温度を40℃まで加温後、塩素107g(1.52mol、4.00当量)を発熱に注意しながら、導入を開始した。
反応中は基質の塩素化度の進行に伴い、オイルバス温度を昇温させ、最終的には内温66℃まで加温した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応液をGC分析に供したところ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを59.7GC%、低次塩素化物(1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテル)は15.0GC%、高次塩素化物(1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル)は16.9GC%、その他は8.4%であった。
[実施例10]
Figure 2018115146
圧力計と冷却コンデンサーを備え付けた100mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル10g(49.8mmol、1.00当量)、そして四塩化スズ1.3g(4.99mmol、10mol%)を量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素20.0g(1.00mol、20.0当量)を一括で仕込み、80℃まで昇温し、1.0MPaの反応圧力を維持するため、副生する塩化水素はコンデンサーを通して系外に除去しながら8時間加熱攪拌した。その後、全ての反応液を氷水へ吸収させることで反応を停止した。二層分離により得られた有機物は7.8gであり、有機物の回収率は93%であった。また、得られたデスフルラン(上式)の純度は98.0%であった。
[実施例11]
Figure 2018115146
攪拌機、圧力計、そして冷却コンデンサーを備え付けた500mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)へ上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル201g(1.00mol、1.00当量)、そして四塩化スズ2.61g(10.0mmol、1.0mol%)を量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素49.8g(2.49mol、2.5当量)を一括で仕込み、急な発熱に注意しながら20℃まで徐々に昇温した。次いで、0.1MPa付近(大気圧)の反応圧を維持するため副生する塩化水素は冷却コンデンサーを通して系外に除去しながら12時間の反応を行った。その後、全ての反応液を氷水へ吸収させることで反応を停止した。二層分離により得られた有機物は163gであり、有機物の回収率は97.0%であった。また、得られたデスフルラン(上式)の純度は93.3%であった。
[実施例12]
Figure 2018115146
圧力計と冷却コンデンサーを備え付けた100mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル20g(99.5mmol、1.00当量)、そして五塩化アンチモン0.36g(1.20mmol、1.2mol%)を量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素8.8g(440mmol、4.4当量)を一括で仕込み、急な発熱に注意しながら15℃まで徐々に昇温した。次いで、0.1MPa付近(大気圧)の反応圧を維持するため副生する塩化水素は冷却コンデンサーを通して系外に除去しながら6時間の反応を行った。その後、全ての反応液を氷水へ吸収させることで反応を停止した。二層分離により得られた有機物は12.1gであり、有機物の回収率は72.4%であった。また、得られたデスフルラン(上式)の純度は96.9%であった。
[実施例13]
Figure 2018115146
圧力計と冷却コンデンサーを備え付けた100mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル10g(49.8mmol、1.00当量)を量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素20.0g(1.00mol、20.0当量)を一括で仕込み、80℃まで昇温し、1.0MPaの反応圧力を維持するため、副生する塩化水素は冷却コンデンサーを通して系外に除去しながら8時間加熱攪拌した。その後、全ての反応液を氷水へ吸収させることで反応を停止した。二層分離により得られた有機物は7.7gであり、有機物の回収率は92%であった。また、得られたデスフルラン(上式)の純度は71.3%であった。また、捕集した有機物には式[8]:
Figure 2018115146
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルが、26.1%含有していた(なお、この化合物は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルがモノフルオロ化された反応中間体である)。
[実施例14]
Figure 2018115146
攪拌機、圧力計、そしてコンデンサーを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へ上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル39.9g(199mmol、1当量)量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、前記調製例2で得たピリジン・フッ化水素錯体(モル比、ピリジン:フッ化水素=1:5)71.0g(396mmol、1.99当量)を発熱に注意しながら導入した後、120℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を1.8MPaでコントロールするため、副生する塩化水素はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を15時間行った。反応後、全ての反応液を氷水へ吸収させることで反応を停止した。二層分離により得られた有機物は27.1gであり、有機物の回収率は81.1%であった。また、目的物であるデスフルラン(上式)は90.2%であった。
[実施例15〜17]
Figure 2018115146
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径2.5cm・長さ40cm)に触媒として調製例1で調製した触媒を100mL充填した。約10mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、反応管の温度を180℃に上げ、フッ化水素を約0.1g/分の速度で1時間にわたり導入した。次いで、原料である1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(91.9GC%)を約0.1g/分(接触時間25秒)の速度で反応管へ供給開始した。反応開始1時間後には反応は安定したので、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。
その後、反応管の温度を表1に示すように変更して(実施例16、実施例17)、反応が安定した後、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去し、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。実施例15〜17の結果を併せて表1に示す。
Figure 2018115146
[実施例18]
実施例15〜17と同一の気相反応装置を用い、反応管の温度を180℃に設定し、フッ化水素を約0.1g/分の速度で1時間にわたり導入した。次いで、原料である1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(94.6GC%)を0.1から0.2g/分(接触時間20から25秒)の速度で反応管への供給を4.5時間かけて行った。反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、すり抜けた有機物をドライアイストラップにて回収しところ、有機物を23.3g得た。この有機物をGC分析に供すると、デスフルランが96.8%にて生成していた。また、得られた有機物の収率は91%(供給原料1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルのモル数基準)であった。
[参考例1]
Figure 2018115146
ドライアイス冷却下、圧力計を備えた100mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル5.0g(21.2mmol)、フッ化水素8.5g(425mmol)、五塩化アンチモン329mg(1.1mmol)をそれぞれ量り取り、自然昇温後、室温から80℃の温度にて8時間攪拌を行った。反応後、0.90MPaの反応圧力を開放し、反応液を水洗後、2層分離により得られた有機物をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、上式に示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロクロロメチルエーテルを90GC%にて得た。
[物性データ]
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.96(1H,dq,J=53.4,2.8Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−28.93(1F,d,J=86.8Hz),−29.95(1F,d,J=92.8Hz),−83.41(3F,s),−146.75(1F,d,J=54.8Hz)
[比較例1−4]
Figure 2018115146
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径2.5cm・長さ40cm)に触媒として調製例1で調製した触媒を100mL充填した。約10mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、反応管の温度を180℃に上げ、フッ化水素を約0.1g/分の速度で1時間にわたり導入した。次いで、原料である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン、99.9GC%)を約0.1g/分(接触時間25秒)の速度で反応管へ供給開始した。反応開始1時間後には反応は安定したので、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。
その後、反応管の温度を表2に示すように変更して(比較例2、3、4)、反応が安定した後、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去し、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。以上の結果を表2に示す。
Figure 2018115146
Figure 2018115146
本発明で対象とする1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)は、吸入麻酔剤として利用できる。

Claims (22)

  1. 以下の4工程を含む、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
    第1工程:気相中、触媒の存在下、式[1]:
    Figure 2018115146
    で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドをフッ化水素と反応させることにより、式[2]:
    Figure 2018115146
    で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドを得る工程。
    第2工程:第1工程で得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドに、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルを反応させることにより、式[3]:
    Figure 2018115146
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを得る工程。
    第3工程:第2工程にて得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素(Cl)を反応させることにより、式[4]:
    Figure 2018115146
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程。
    第4工程:第3工程にて得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[5]:
    Figure 2018115146
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
  2. 第1工程における触媒が、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を金属酸化物もしくは活性炭に担持した金属化合物担持触媒である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 金属化合物が、金属のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属ハロゲン化物もしくは金属オキシハロゲン化物である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、クロミア、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 第1工程において得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドを、精製操作を行うことなく、そのまま第2工程における出発原料として用いる、請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
  6. 第2工程における反応を、有機溶媒を用いることなく行う、請求項1乃至5の何れかに記載の製造方法。
  7. 第3工程において、ラジカル開始剤もしくは光照射が、有機過酸化物、及びアゾ系ラジカル開始剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
  8. 第3工程において、ラジカル開始剤もしくは光照射が、水銀灯、紫外線LED,有機EL、無機EL、紫外線レーザー、及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
  9. 第3工程における反応を、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行う、請求項1乃至8の何れかに記載の製造方法。
  10. フッ化物イオン捕捉剤が、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の硫酸塩、周期表13族に属する金属の水酸化物、周期表13族に属する金属のハロゲン化物、及び周期表13族に属する金属の硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の製造方法。
  11. 第3工程における反応を、反応溶媒の存在下で行う、請求項1乃至10の何れかに記載の製造方法。
  12. 第3工程において、塩素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルと、式[7]:
    Figure 2018115146
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを含む混合物として得られる、請求項1乃至11の何れかに記載の製造方法。
  13. 前記混合物に対し、蒸留精製を行うことにより、該混合物から式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを分離除去する工程を更に含む、請求項12に記載の製造方法。
  14. 第3工程において、蒸留精製を行うことにより分離除去した、式[7]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを回収し、第3工程の塩素化反応における出発原料として用いる、請求項13に記載の製造方法。
  15. 第4工程において、反応を気相中で行う、請求項1乃至14の何れかに記載の製造方法。
  16. 第4工程において、反応を触媒の存在下で行う、請求項1乃至15の何れかに記載の製造方法。
  17. 第4工程において、触媒が四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項16に記載の製造方法。
  18. 第4工程における反応を、触媒を共存させずに行う、請求項1乃至15の何れかに記載の製造方法。
  19. 第4工程において、反応を液相中で行う、請求項1乃至14の何れかに記載の製造方法。
  20. 第4工程において、液相中での反応を、−10℃〜+150℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa〜2.0MPaの圧力範囲で行う、請求項19に記載の製造方法。
  21. 第4工程において、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ化水素との反応を、液相中、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより行う、請求項1乃至14の何れかに記載の製造方法。
  22. 「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、及び2,6−ルチジンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項21に記載の製造方法。

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