図1は本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Wの上面Wfに塗布液を塗布するスリットコータである。なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、基板Wの搬送方向を「X方向」とし、図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「−X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側を「−Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「−Z方向」と称する。
まず図1を用いてこの塗布装置1の構成および動作の概要を説明し、その後で各部のより詳細な構造について説明する。なお、塗布装置1の基本的な構成や動作原理は、本願出願人が先に開示した特開2010−227850号公報(特許文献1)、特開2010−240550号公報(特許文献2)に記載されたものと共通している。そこで、本明細書では、塗布装置1の各構成のうちこれらの公知文献に記載のものと同様の構成を適用可能なもの、およびこれらの文献の記載から構造を容易に理解することのできるものについては詳しい説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を主に説明することとする。
塗布装置1では、基板Wの搬送方向Dt(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上ステージ部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Wの搬送経路が形成されている。なお、以下の説明において基板Wの搬送方向Dtと関連付けて位置関係を示すとき、「基板Wの搬送方向Dtにおける上流側」を単に「上流側」と、また「基板Wの搬送方向Dtにおける下流側」を単に「下流側」と略することがある。この例では、ある基準位置から見て相対的に(−X)側が「上流側」、(+X)側が「下流側」に相当する。
すなわち、処理対象である基板Wは図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Wは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Wはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Wの鉛直方向位置が変更される。コロコンベア21の昇降により実現される作用については後述する。入力移載部2により、基板Wは入力コンベア100から浮上ステージ部3に移載される。
浮上ステージ部3は、基板の搬送方向Dtに沿って3分割された平板状のステージを備える。すなわち、浮上ステージ部3は入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33を備えており、これらの各ステージの上面は互いに同一平面の一部をなしている。入口浮上ステージ31および出口浮上ステージ33のそれぞれの上面には浮上制御機構35から供給される圧縮空気を噴出する噴出孔がマトリクス状に多数設けられており、噴出される気流から付与される浮力により基板Wが浮上して、つまり基板Wの下面がステージ上面から離間した状態で水平姿勢に支持される。基板Wの下面とステージ上面との距離は、例えば10マイクロメートルないし500マイクロメートルとすることができる。
一方、塗布ステージ32の上面では、圧縮空気を噴出する噴出孔と、基板下面とステージ上面との間の空気を吸引する吸引孔とが交互に配置されている。浮上制御機構35が噴出孔からの圧縮空気の噴出量と吸引孔からの吸引量とを制御することにより、基板Wの下面と塗布ステージ32の上面との距離が精密に制御される。これにより、塗布ステージ32の上方を通過する基板Wの上面Wfの鉛直方向位置が規定値に制御される。浮上ステージ部3の具体的構成としては、例えば特開2010−227850号公報(特許文献1)に記載のものを適用可能である。
なお、入口浮上ステージ31には、図には現れていないリフトピンが配設されており、浮上ステージ部3にはこのリフトピンを昇降させるリフトピン駆動機構34が設けられている。これらの構成については後述する。
入力移載部2を介して浮上ステージ部3に搬入される基板Wは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、入口浮上ステージ31上に搬送される。入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33は基板Wを浮上状態に支持するが、基板Wを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上ステージ部3における基板Wの搬送は、入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の下方に配置された基板搬送部5により行われる。
基板搬送部5は、基板Wの下面周縁部に部分的に当接することで基板Wを下方から支持するチャック51と、チャック51上端の支持部位に設けられた吸着パッドに負圧を与えて基板Wを吸着保持させる機能およびチャック51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。チャック51が基板Wを保持した状態では、基板Wの下面は浮上ステージ部3の各ステージの上面よりも高い位置に位置している。したがって、基板Wは、チャック51により周縁部を吸着保持されつつ、浮上ステージ部3から付与される浮力により全体として水平姿勢を維持する。
入力移載部2から浮上ステージ部3に搬入された基板Wをチャック51が保持し、この状態でチャック51が(+X)方向に移動することで、基板Wが入口浮上ステージ31の上方から塗布ステージ32の上方を経由して出口浮上ステージ33の上方へ搬送される。搬送された基板Wは、出口浮上ステージ33の(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Wに(+X)方向への推進力が付与され、基板Wは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Wの鉛直方向位置が変更される。コロコンベア41の昇降により実現される作用については後述する。出力移載部4により、基板Wは出口浮上ステージ33の上方から出力コンベア110に移載される。
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Wはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
このようにして搬送される基板Wの搬送経路上に、基板Wの上面Wfに塗布液を塗布するための塗布機構が2組配置される。具体的には、入口浮上ステージ31の上方に第1塗布機構6が、また出口浮上ステージ33の上方には第2塗布機構7が、それぞれ設けられる。第1塗布機構6は、スリットノズルである第1ノズル61と、第1ノズル61に対しメンテナンスを行うための第1メンテナンスユニット65とを備えている。また、第2塗布機構7は、スリットノズルである第2ノズル71と、第2ノズル71に対しメンテナンスを行うための第2メンテナンスユニット75とを備えている。第1ノズル61および第2ノズル71には、図示しない塗布液供給部から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口から塗布液が吐出される。第1ノズル61および第2ノズル71に供給される塗布液は、互いに同一のものであってもよく、また異なるものであってもよい。
第1ノズル61は、位置決め機構63によりX方向およびZ方向に移動位置決め可能となっている。同様に、第2ノズル71は、位置決め機構73によりX方向およびZ方向に移動位置決め可能となっている。位置決め機構63,73により、第1ノズル61および第2ノズル71が選択的に、塗布ステージ32の上方の塗布位置(破線で示される位置)に位置決めされる。塗布位置に位置決めされたノズルから塗布液が吐出されて、塗布ステージ32との間を搬送されてくる基板Wに塗布される。こうして基板Wへの塗布液の塗布が行われる。
第1メンテナンスユニット65は、第1ノズル61を洗浄するための洗浄液を貯留するバット651と、予備吐出ローラ652と、ノズルクリーナ653と、予備吐出ローラ652およびノズルクリーナ653の動作を制御するメンテナンス制御機構654とを備えている。また、第2メンテナンスユニット75は、第2ノズル71を洗浄するための洗浄液を貯留するバット751と、予備吐出ローラ752と、ノズルクリーナ753と、予備吐出ローラ752およびノズルクリーナ753の動作を制御するメンテナンス制御機構754とを備えている。第1メンテナンスユニット65および第2メンテナンスユニットの具体的構成としては、例えば特開2010−240550号公報(特許文献2)に記載された構成を適用することが可能である。
第1ノズル61が予備吐出ローラ652の上方で吐出口が予備吐出ローラ652の上面に対向する位置(第1予備吐出位置)では、第1ノズル61の吐出口から予備吐出ローラ652の上面に対して塗布液が吐出される。第1ノズル61は、塗布位置へ位置決めされるのに先立って第1予備吐出位置に位置決めされ、吐出口から所定量の塗布液を吐出して予備吐出処理を実行する。このように塗布位置へ移動させる前の第1ノズル61に予備吐出処理を行わせることにより、塗布位置での塗布液の吐出をその初期段階から安定させることができる。
メンテナンス制御機構654が予備吐出ローラ652を回転させることで、吐出された塗布液はバット651に貯留された洗浄液に混合されて回収される。また、第1ノズル61がノズルクリーナ653の上方位置(第1洗浄位置)にある状態では、ノズルクリーナ653が洗浄液を吐出しながらY方向に移動することにより、第1ノズル61の吐出口およびその周囲に付着した塗布液が洗い流される。
また、位置決め機構63は、第1ノズル61を第1洗浄位置よりも下方でノズル下端がバット651内に収容される位置(第1待機位置)に位置決めすることが可能である。第1ノズル61を用いた塗布処理が実行されないときには、第1ノズル61はこの第1待機位置に位置決めされる。なお、図示を省略しているが、第1待機位置に位置決めされた第1ノズル61に対し吐出口における塗布液の乾燥を防止するための待機ポッドが配置されてもよい。
第2ノズル71についても同様である。具体的には、第2ノズル71が予備吐出ローラ752の上面に対向する第2予備吐出位置に位置決めされて、第2ノズル71により予備吐出処理が実行される。また、第2ノズル71がノズルクリーナ753上方の第2洗浄位置にある状態では、ノズルクリーナ753により第2ノズル71の洗浄が行われる。そして、第2ノズル71を用いた塗布処理が実行されないときには、第2ノズル71は第2待機位置に位置決めされる。
図1においては、第1予備吐出位置にある第1ノズル61が実線により、第1洗浄位置にある第1ノズル61が点線によりそれぞれ表されている。また、第2予備吐出位置にある第2ノズル71が実線により、第2待機位置にある第2ノズル71が点線によりそれぞれ表されている。図示していないが、第1ノズル61に対応する第1待機位置および第2ノズル71に対応する第2洗浄位置についても同様に定義することができる。
このように、第1塗布機構6は塗布位置よりも上流側に配置されており、位置決め機構63が必要に応じて第1ノズル61を塗布ステージ32上方の塗布位置へ移動させることにより、第1ノズル61による基板Wへの塗布が実現される。第1メンテナンスユニット65も塗布位置よりも上流側に配置されている。第1メンテナンスユニット65における第1ノズル61の停止位置のうち、第1予備吐出位置が最も下流側で塗布位置に近い位置に設定され、第1洗浄位置および第1待機位置は第1予備吐出位置よりも上流側に設定されている。
一方、第2塗布機構7は塗布位置よりも下流側に配置されており、位置決め機構73が必要に応じて第2ノズル71を塗布ステージ32上方の塗布位置へ移動させることにより、第2ノズル71による基板Wへの塗布が実現される。第2メンテナンスユニット75も塗布位置よりも下流側に配置されている。第2メンテナンスユニット75における第2ノズル71の停止位置のうち、第2予備吐出位置が最も上流側で塗布位置に近い位置に設定され、第2洗浄位置および第2待機位置は第2予備吐出位置よりも下流側に設定されている。
つまり、第1塗布機構6と第2塗布機構7とは、塗布位置を挟んでYZ平面に関して対称な構成とすることができる。なお、第1塗布機構6と第2塗布機構7との間で各部の形状が完全な対称性を有している必要はなく、必要に応じて各部の構成が変更されていてもよい。
第1メンテナンスユニット65は、塗布位置よりも上流側位置であって、第2ノズル71が塗布位置に位置決めされたときに、第1メンテナンスユニット65および第1予備吐出位置に位置決めされた第1ノズル61が第2ノズル71に干渉しないような位置に設置される。第1洗浄位置および第1待機位置は第1予備吐出位置よりもさらに塗布位置から離れているため、これらの位置にある第1ノズル61が塗布位置にある第2ノズル71と干渉することはない。
同様に、第2メンテナンスユニット75は、塗布位置よりも下流側位置であって、第1ノズル61が塗布位置に位置決めされたときに、第2メンテナンスユニット75および第2予備吐出位置に位置決めされた第2ノズル71が第1ノズル61に干渉しないような位置に設置される。第2洗浄位置および第2待機位置も第2予備吐出位置よりもさらに塗布位置から離れているため、これらの位置にある第2ノズル71が塗布位置にある第1ノズル61と干渉することは回避される。
このように、第1ノズル61と第2ノズル71とでは塗布位置が共通となっており、これらのノズルを同時に塗布位置に位置決めすることはできない。なお、第1ノズル61に対応する塗布位置と第2ノズル71に対応する塗布位置とは完全に同一である必要は必ずしもなく、基板Wの搬送方向Dtにおいて位置が異なっていてもよい。第1ノズル61と第2ノズル71とが大きく異なる形状を有する場合もあり、この場合、塗布位置が厳密に一致するとは限らない。しかしながら、第1ノズル61から吐出される塗布液の基板W上での着液位置と、第2ノズル71から吐出される塗布液の基板W上での着液位置とが搬送方向Dtにおいて概ね一致していれば、あるいは少なくとも一部が重複していれば、それぞれの塗布位置は実質的に同じと考えることができる。
第1ノズル61に対応する塗布位置と第2ノズル71に対応する塗布位置とが相違している場合でも、第1ノズル61が当該ノズルに対応する塗布位置において占める空間と、第2ノズル71が当該ノズルに対応する塗布位置において占める空間とが少なくとも一部において重複するとき、やはり2つのノズルを同時に塗布位置に位置させることはできない。したがって、塗布位置が同じである場合と同様の配慮が必要である。
位置決め機構63,73が第1ノズル61、第2ノズル71を選択的に塗布位置に位置決めするように制御されることで、このような塗布位置での干渉を回避することができる。そして、第1ノズル61の移動経路は塗布位置から上流側の領域に限定され、第2ノズル71の移動経路は塗布位置から下流側の領域に限定されているので、塗布位置以外で両ノズルの干渉は生じない。
この他、塗布装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット9が設けられている。図示を省略するが、制御ユニット9は所定の制御プログラムや各種データを記憶する記憶手段、この制御プログラムを実行することで装置各部に所定の動作を実行させるCPUなどの演算手段、ユーザーや外部装置との情報交換を担うインターフェース手段などを備えている。
図2は塗布装置を鉛直上方から見た平面図である。また、図3は図2から塗布機構を取り外した平面図である。また、図4は図2のA−A線断面図である。以下、これらの図を参照しながら塗布装置1の具体的な機械的構成を説明する。幾つかの機構については特開2010−227850号公報(特許文献1)の記載を参照することでより詳細な構造を理解することが可能である。なお、図2および図3においては入力コンベア100等が有するコロの記載が省略されている。
まず第1および第2塗布機構6,7について説明する。第1塗布機構6は、第1ノズル61を含む第1ノズルユニット60と、前記した第1メンテナンスユニット65とを有している。一方、第2塗布機構7は、第2ノズル71を含む第2ノズルユニット70と、前記した第2メンテナンスユニット75とを有している。なお前記した通り、第1塗布機構6と第2塗布機構7とは基本的にYZ平面に対して対称な構造を有している。そこで、ここでは図4に現れる第2塗布機構7について代表的にその構造を説明し、第1塗布機構6については説明を省略する。
第2塗布機構7の第2ノズルユニット70は、図2および図4に示すように架橋構造を有している。具体的には、第2ノズルユニット70は、浮上ステージ部3の上方でY方向に延びる梁部材731のY方向両端部を、基台10から上方に立設された1対の柱部材732,733で支持した構造を有している。柱部材732には例えばボールねじ機構により構成された昇降機構734が取り付けられており、昇降機構734により梁部材731の(+Y)側端部が昇降自在に支持されている。また、柱部材733には例えばボールねじ機構により構成された昇降機構735が取り付けられており、昇降機構735により梁部材731の(−Y)側端部が昇降自在に支持されている。制御ユニット9からの制御指令に応じて昇降機構734,735が連動することにより、梁部材731が水平姿勢のまま鉛直方向(Z方向)に移動する。
梁部材731の中央下部には、第2ノズル71が吐出口711を下向きにして取り付けられている。したがって、昇降機構734,735が作動することで、第2ノズル71のZ方向への移動が実現される。
柱部材732,733は基台10上においてX方向に移動可能に構成されている。具体的には、基台10の(+Y)側および(−Y)側端部上面のそれぞれに、X方向に延設された1対の走行ガイド81L,81Rが取り付けられており、柱部材732はその下部に取り付けられたスライダ736を介して(+Y)側の走行ガイド81Lに係合される。スライダ736は走行ガイド81Lに沿ってX方向に移動自在となっている。同様に、柱部材733はその下部に取り付けられたスライダ737を介して(−Y)側の走行ガイド81Rに係合され、X方向に移動自在となっている。
また、柱部材732,733はリニアモータ82L,82RによりX方向に移動される。具体的には、リニアモータ82L,82Rのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に沿って延設され、コイルモジュールが移動子として柱部材732,733それぞれの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ82L,82Rが作動することで、第2ノズルユニット70全体がX方向に沿って移動する。これにより、第2ノズル71のX方向への移動が実現される。柱部材732,733のX方向位置については、スライダ736,737の近傍に設けられたリニアスケール83L,83Rにより検出可能である。
このように、昇降機構734,735が動作することにより第2ノズル71がZ方向に移動し、リニアモータ82L,82Rが動作することにより第2ノズル71がX方向に移動する。すなわち、制御ユニット9がこれらの機構を制御することにより、第2ノズル71の各停止位置(塗布位置、第2予備吐出位置等)への位置決めが実現される。したがって、昇降機構734,735、リニアモータ82L,82Rおよびこれらを制御する制御ユニット9等が一体として、図1の位置決め機構73として機能している。
図2に示すように、第1ノズルユニット60も、走行ガイド81L,81Rにそれぞれ取り付けられた柱部材632,633と、これらの柱部材632,633により支持され中央下部に第1ノズル61が取り付けられた梁部材631とを有している。柱部材632,633の構造も、上記した柱部材732,733の構造と同様である。
このように、第1ノズルユニット60と第2ノズルユニット70と同じ走行ガイド81L,81Rに取り付けられ、それぞれX方向に移動可能となっている。また、第1ノズルユニット60と第2ノズルユニット70とをX方向に移動させるリニアモータ82L,82Rについては、固定子としてのマグネットモジュールが第1ノズルユニット60と第2ノズルユニット70とで共用され、移動子としてのコイルモジュールが第1ノズルユニット60と第2ノズルユニット70とで個別に設けられる。
前記したように、第1ノズルユニット60は第1ノズル61を塗布位置およびこれよりも上流側の各位置に位置決めする一方、第2ノズルユニット70は第2ノズル71を塗布位置およびこれよりも下流側の各位置に位置決めする。そして、第1ノズル61の塗布位置への位置決めと、第2ノズル71の塗布位置への位置決めとが選択的に実行されることで、両ノズルの干渉が回避される。このような動作態様となっているため、この塗布装置1では、第1ノズルユニット60と第2ノズルユニット70との間でその支持機構および駆動機構を部分的に共用することが可能となる。これにより、2つのノズルを設けたことによる装置の大型化を抑制し、装置コストの低減を図ることができる。
次に第1および第2メンテナンスユニット65,75について説明する。第1メンテナンスユニット65と第2メンテナンスユニット75とはYZ平面に対し概ね対称な形状を有しているが、基本的な構造は共通である。そこで、ここでは図4に現れる第2メンテナンスユニット75について代表的にその構造を説明し、もう1つの第1メンテナンスユニット65については説明を省略する。なお、これらのユニットの詳細な構造については、例えば特開2010−240550号公報(特許文献2)を参照することができる。
先に述べたように、第2メンテナンスユニット75は、バット751に予備吐出ローラ752およびローラクリーナ753が収容された構造を有している。また、図示を省略しているが、第2メンテナンスユニット75には予備吐出ローラ752およびローラクリーナ753を駆動するためのメンテナンス制御機構754が設けられている。バット751はY方向に延設された梁部材761により支持され、梁部材761の両端部が1対の柱部材762,763により支持されている。1対の柱部材762,763はY方向に延びるプレート764のY方向両端部に取り付けられている。
プレート764のY方向両端部の下方には、基台10上に1対の走行ガイド84L,84RがX方向に延設されている。プレート764のY方向両端部は、スライダ766,767を介して走行ガイド84L,84Rに係合されている。このため、第2メンテナンスユニット75が走行ガイド84L,84Rに沿ってX方向に移動可能となっている。プレート764の(−Y)方向端部の下方には、リニアモータ85が設けられている。リニアモータ85はプレート764の(+Y)方向端部の下方に設けられてもよく、Y方向両端部の下方にそれぞれ設けられてもよい。
リニアモータ85では、マグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に沿って延設され、コイルモジュールが移動子として第2メンテナンスユニット75に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ85が作動することで、第2メンテナンスユニット75全体がX方向に沿って移動する。第2メンテナンスユニット75のX方向位置については、スライダ766,767の近傍に設けられたリニアスケール86により検出可能である。
図2に示すように、第1メンテナンスユニット65も梁部材661および柱部材662,663を有しており、柱部材662,663の下部において、第1メンテナンスユニット65は走行ガイド84L,84Rに取り付けられている。ノズルユニットの説明において述べたのと同様に、2つのメンテナンスユニット65,75が塗布位置を挟んでそれぞれ上流側、下流側に配置されて互いに干渉しないため、このように支持機構および駆動機構の一部を共用することが可能である。
なお、このように第1メンテナンスユニット65および第2メンテナンスユニット75はそれぞれX方向に移動可能である。ただし、後述する本実施形態の塗布装置1の動作においては、第1メンテナンスユニット65または第2メンテナンスユニット75をX方向に移動させる局面は存在しない。例えば装置全体のメンテナンスや部品交換等の際に、ユーザーからの制御指示に応じて第1メンテナンスユニット65または第2メンテナンスユニット75を移動させることは可能である。この移動はオペレータにより手動でなされてもよく、リニアモータ85については必須ではない。
次にチャック51の構造について図3および図4を参照して説明する。チャック51は、XZ平面に関して互いに対称な形状を有しY方向に離隔配置された1対のチャック部材51L,51Rを備える。これらのうち(+Y)側に配置されたチャック部材51Lは、基台10にX方向に延設された走行ガイド87LによりX方向に走行可能に支持されている。具体的には、チャック部材51Lは、X方向に位置を異ならせて設けられた2つの水平なプレート部位と、これらのプレート部位を接続する接続部位とを有するベース部512を備えている。ベース部512の2つのプレート部位の下部にはそれぞれスライダ511が設けられ、スライダ511が走行ガイド87Lに係合されることで、ベース部512は走行ガイド87Lに沿ってX方向に走行可能になっている。
ベース部512の2つのプレート部位の上部には、上方に延びてその上端部に図示を省略する吸着パッドが設けられた支持部513,513が設けられている。ベース部512が走行ガイド87Lに沿ってX方向に移動すると、これと一体的に2つの支持部513,513がX方向に移動する。なお、ベース部512の2つのプレート部位は互いに分離され、これらのプレート部位がX方向に一定の距離を保ちながら移動することで見かけ上一体のベース部として機能する構造であってもよい。この距離を基板の長さに応じて設定すれば、種々の長さの基板に対応することが可能となる。
チャック部材51Lは、リニアモータ88LによりX方向に移動可能となっている。すなわち、リニアモータ88Lのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に延設され、コイルモジュールが移動子としてチャック部材51Lの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ88Lが作動することで、チャック部材51LがX方向に沿って移動する。チャック部材51LのX方向位置についてはリニアスケール89Lにより検出可能である。
(−Y)側に設けられたチャック部材51Rも同様に、2つのプレート部位および接続部位を有するベース部512と、支持部513,513とを備えている。ただし、その形状は、XZ平面に関してチャック部材51Lとは対称なものとなっている。各プレート部位はそれぞれスライダ511により走行ガイド87Rに係合される。また、チャック部材51Rは、リニアモータ88RによりX方向に移動可能となっている。すなわち、リニアモータ88Rのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に延設され、コイルモジュールが移動子としてチャック部材51Rの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ88Rが作動することで、チャック部材51RがX方向に沿って移動する。チャック部材51RのX方向位置についてはリニアスケール89Rにより検出可能である。
制御ユニット9は、チャック部材51L,51RがX方向において常に同一位置となるように、これらの位置制御を行う。これにより、1対のチャック部材51L,51Rが見かけ上一体のチャック51として移動することになる。チャック部材51L,51Rを機械的に結合する場合に比べ、チャック51と浮上ステージ部3との干渉を容易に回避することが可能となる。
図3に示すように、4つの支持部513はそれぞれ、保持される基板Wの四隅に対応して配置される。すなわち、チャック部材51Lの2つの支持部513,513は、基板Wの(+Y)側周縁部であって搬送方向Dtにおける上流側端部と下流側端部とをそれぞれ保持する。一方、チャック部材51Rの2つの支持部513,513は、基板Wの(−Y)側周縁部であって搬送方向Dtにおける上流側端部と下流側端部とをそれぞれ保持する。各支持部513の吸着パッドには必要に応じて負圧が供給され、これにより基板Wの四隅がチャック51により下方から吸着保持される。
チャック51が基板Wを保持しながらX方向に移動することで基板Wが搬送される。このように、リニアモータ88L,88R、各支持部513に負圧を供給するための機構(図示せず)、これらを制御する制御ユニット9等が一体として、図1の吸着・走行制御機構52として機能している。
図1および図4に示すように、チャック51は、浮上ステージ部3の各ステージ、すなわち入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の上面よりも上方に基板Wの下面を保持した状態で基板Wを搬送する。チャック51は、基板Wのうち各ステージ31,32,33と対向する中央部分よりもY方向において外側の周縁部の一部を保持するのみであるため、基板Wの中央部は周縁部に対し下方に撓むことになる。浮上ステージ部3は、このような基板Wの中央部に浮力を与えることで基板Wの鉛直方向位置を制御して水平姿勢に維持する機能を有する。
浮上ステージ部3の各ステージのうち出口浮上ステージ33については、その上面位置がチャック51の上面位置よりも低くなる下部位置と、上面位置がチャック51の上面位置よりも高くなる上部位置との間で昇降可能となっている。この目的のために、出口浮上ステージ33は昇降駆動機構36によって支持されている。
図5は昇降駆動機構の構造を示す図である。出口浮上ステージ33のY方向両端部付近の下面からは下向きに1対の支持シャフト331,331が延びており、昇降駆動機構36は支持シャフト331,331を支持することにより出口浮上ステージ33を支持する。具体的には、昇降駆動機構36は基台10に固定されたプレート部材361を有している。そして、プレート部材361の上部でY方向の両端部付近に、支持シャフト331,331が上下動自在に挿通される複数のシャフト受け部材362が設けられる。また、プレート部材361の中央下部には、鉛直方向の駆動力を発生するアクチュエータ363が取り付けられている。
アクチュエータ363には、アクチュエータの駆動力により上下動する可動部材364が結合されている。そして、可動部材364には2つのレバー部材365,365の一端部365aが揺動自在に取り付けられている。レバー部材365,365の他端部365bは、支持シャフト331,331の直下位置よりもY方向における外側まで延び、揺動軸365dによりプレート部材361に対し揺動自在に取り付けられている。
各レバー部材365の上面のうち他端部365の近くであって支持シャフト331の直下に当たる位置にはカムフォロア365cが取り付けられ、カムフォロア365cが支持シャフト331の下端に当接することで出口浮上ステージ33を支持する。このように、出口浮上ステージ33の上面の鉛直方向位置はカムフォロア365cの位置によって規定されている。
図5(a)に示すように、アクチュエータ363により可動部材364が下方に位置決めされた状態では、各レバー部材365は、その一端部365aが他端部365bよりも低い位置にある。この状態でカムフォロア365cにより規定される出口浮上ステージ33の上面位置は、図5(a)に破線で示すチャック51の上面位置よりも下方となる。基板Wが載置された状態では、チャック51により基板Wの周縁部が保持され、中央部では出口浮上ステージ33からの浮力によって出口浮上ステージ33の上面から浮上した状態とすることができる。チャック51による吸着保持が解除されたとしても、基板Wの周縁部がチャック51に載置された状態である点には変わりない。
図5(b)に示すように、アクチュエータ363により可動部材364が上方に位置決めされると、各レバー部材365の一端部365aが他端部365bよりも高い位置まで上昇する。各レバー部材365は他端部365b側の揺動軸365d周りに揺動し、カムフォロア365cが支持シャフト331を押し上げる。その結果、出口浮上ステージ33の上面がチャック51の上面よりも上方まで進出する。チャック51が基板Wを吸着保持していなければ、基板Wは出口浮上ステージ33からの浮力により持ち上げられ、チャック51による支持が解除される。
この昇降駆動機構36では、アクチュエータ363による可動部材364の上下方向の変位量がレバー部材365によってより小さな変位量に変換されて支持シャフト331に伝達される。つまり、レバー部材365は可動部材364の変位を1より小さい増幅率で増幅して支持シャフト331に伝達する。これにより、微小な変位が必要とされる支持シャフト331の昇降を比較的簡単な制御により実現することができる。
また、Y方向に位置を異ならせて設けられた2つの支持シャフト331を1つのアクチュエータ363の駆動力により上下動させる。このような構成では、例えば2つの支持シャフト331をそれぞれ異なるアクチュエータにより駆動する場合にアクチュエータの動作タイミングの違いに起因して生じる支持シャフト331の上昇タイミングのばらつきが原理的に生じない。
昇降駆動機構36は、X方向に位置を異ならせて複数設けられる。例えば、出口浮上ステージ33の上流側端部付近と下流側端部付近とのそれぞれに昇降駆動機構36を設け、それらの同時に動作させることで、水平姿勢を保ったまま出口浮上ステージ33を昇降させることが可能となる。複数の昇降駆動機構36の間でアクチュエータの昇降タイミングに多少のばらつきが生じたとしても、アクチュエータ363の変位量よりも支持シャフト331の昇降量が小さくなっているので、出口浮上ステージ33の姿勢の乱れを小さく抑えることができる。
なお、図3に示すように、この塗布装置1の浮上ステージ部3には、基板W上の異物がノズルに接触して基板やノズルを損傷することを防止するための異物検知機構37が設けられている。異物検知機構37の構成およびその動作については後述する。
さらに、図3に示すように、入口浮上ステージ31の(−Y)側端部および(+Y)側端部には、X方向に位置を異ならせて複数のリフトピン311が配置されている。浮上ステージ部3のリフトピン昇降機構34(図1)がリフトピン311を昇降駆動することで、リフトピン311は、その上端が入口浮上ステージ31の上面よりも下方に退避した退避位置と、入口浮上ステージ31の上面よりも上方に突出した突出位置との間で昇降する。このリフトピン311を使用した動作の例については後述する。
図6はこの塗布装置による塗布処理の流れを示すフローチャートである。また、図7および図8は処理過程における各部の位置関係を模式的に示す図である。ここでは、予め制御ユニット9に与えられた処理レシピに従い、第1ノズル61を用いた塗布処理を実行する場合を例として動作の流れを説明する。塗布処理は、制御ユニット9が予め定められた制御プログラムを実行して装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
塗布処理が実行されてないときには、第1ノズル61は第1待機位置に、第2ノズル71は第2待機位置にそれぞれ位置決めされ塗布液の吐出が停止された状態になっている。そこで、塗布処理に使用される第1ノズル61を第1予備吐出位置に移動させて予備吐出処理を実行する(ステップS101)。また、浮上ステージ部3における圧縮空気の噴出を開始して、搬入される基板Wを浮上させることができるように準備する。第1予備吐出位置において第1ノズル61が所定量の塗布液を予備吐出ローラ652に向けて吐出することで、第1ノズル61からの塗布液の吐出量を安定させることができる。なお、予備吐出処理に先立って第1ノズル61の洗浄処理が行われてもよい。
次に、塗布装置1への基板Wの搬入を開始する(ステップS102)。図7(a)に示すように、上流側の別の処理ユニット、搬送ロボット等により処理対象となる基板Wが入力コンベア100に載せられ、コロコンベア101が回転することで基板Wが(+X)方向に搬送される。このとき第1ノズル61は第1予備吐出位置で予備吐出処理を実行している。また、チャック51は入口浮上ステージ31よりも下流側に位置決めされている。
入力コンベア100と、コロコンベア21の上面が入力コンベア100のコロコンベア101と同じ高さ位置に位置決めされた入力移載部2とが協働することにより、図7(a)に点線で示すように、基板Wは圧縮空気の噴出により基板Wに浮力を与える入口浮上ステージ31の上部まで搬送されてくる。このとき入口浮上ステージ31の上面はコロコンベア21の上面よりも下方にあり、基板Wは上流側端部(移動方向における後端部)がコロコンベア21に乗り上げた状態となっている。したがって入口浮上ステージ31上で基板Wが滑って移動することはない。
こうして基板Wが入口浮上ステージ31まで搬入されると、入口浮上ステージ31に設けられたリフトピン311がリフトピン駆動機構34によりその上端が入口浮上ステージ31の上面よりも上方に突出する上方位置に位置決めされる。これにより、図7(b)に示すように、基板W、より具体的にはリフトピン311が当接する基板WのY方向両端部が持ち上げられる。
そして、チャック51が(−X)方向に移動し、基板W直下の搬送開始位置まで移動してくる(ステップS103)。基板WのY方向両端部がリフトピン311により持ち上げられているため、基板Wの下方に進入するチャック51が基板Wと接触することは回避される。この状態から、図7(c)に示すように、コロコンベア21およびリフトピン311がその上面がチャック51の上面よりも下方まで下降することにより、基板Wはチャック51に移載される(ステップS104)。チャック51は基板Wの周縁部を吸着保持する(ステップS105)。
以後、基板Wはチャック51により周縁部を保持され、浮上ステージ部3により中央部が水平姿勢に維持された状態で搬送されるが、それに先立って異物検知処理が開始される(ステップS106)。チャック51が(+X)方向に移動することで基板Wが塗布開始位置まで搬送される(ステップS107)。また、これと並行して第1ノズル61の第1予備吐出位置から塗布位置への移動位置決めが行われる(ステップS108)。
図7(d)に示すように、塗布開始位置は、基板Wの下流側(移動方向においては先頭側)の端部が塗布位置に位置決めされた第1ノズル61の直下位置に来るような基板Wの位置である。なお、基板Wの端部は余白領域として塗布液が塗布されない場合が多く、このような場合には、基板Wの下流側端部が第1ノズル61の直下位置から余白領域の長さだけ進んだ位置が塗布開始位置となる。
第1ノズル61が塗布位置に位置決めされると、吐出口から吐出される塗布液が基板Wの上面Wfに着液する。図8(a)に示すように、チャック51が基板Wを定速で搬送することにより(ステップS109)、第1ノズル61が基板Wの上面Wfに塗布液を塗布する塗布動作が実行され、基板上面Wfには塗布液による一定厚さの塗布膜Fが形成される。
良質な塗布膜Fを形成するために、第1ノズル61下端の吐出口と基板Wの上面Wfとの間のギャップが一定していることが重要である。基板Wの精密な位置制御が可能な塗布ステージ32のうちでも特に高い位置精度が実現される領域Rcに塗布位置が設定されることにより、ギャップを安定させて塗布を行うことが可能となる。この領域Rcの搬送方向における長さとしては、少なくとも吐出口の開口長さより大きければ原理的には良好な塗布が可能である。
塗布動作は、塗布を終了させるべき終了位置に基板Wが搬送されるまで継続される(ステップS110)。基板Wが終了位置に到達すると(ステップS110においてYES)、図8(b)に示すように、第1ノズル61は塗布位置から離脱して第1予備吐出位置に戻され(ステップS111)、再び予備吐出処理が実行される。また、基板Wの下流側端部が出力移載部4上に位置する搬送終了位置にチャック51が到達する時点で、チャック51の移動は停止され、吸着保持が解除される。そして、出力移載部4のコロコンベア41の上昇(ステップS112)、および、出口浮上ステージ33の上昇(ステップS113)が順次開始される。
図8(c)に示すように、コロコンベア41および出口浮上ステージ33がチャック51の上面よりも上方まで上昇することで、基板Wはチャック51から離間する。この状態でコロコンベア41が回転することで基板Wに対し(+X)方向への推進力が付与される。これにより基板Wが(+X)方向へ移動すると、コロコンベア41と出力コンベア110のコロコンベア111との協働により、基板Wはさらに(+X)方向に搬出され(ステップS114)、最終的に下流側ユニットに払い出される。処理すべき次の基板がある場合には上記と同様の処理を繰り返し(ステップS115)、なければ処理を終了する。この時第1ノズル61は第1待機位置へ戻される。
チャック51に保持された基板Wが入口浮上ステージ31よりも下流側まで搬送されれば、入力コンベア100のコロコンベア101から次の未処理の基板Wを入口浮上ステージ31に受け入れることが可能である。図8(b)に示すように、処理中の基板Wの搬送中に次の基板Wをコロコンベア101まで搬入しておくことが可能である。塗布処理への影響がなければ、図8(a)に示す塗布処理中に次の基板Wの搬入が開始されてもよい。また図8(c)に示すように、コロコンベア41および出口浮上ステージ33の上昇により基板Wがチャック51から離間した時点で、チャック51を搬送開始位置へ戻すためのチャック51の移動が可能となる。
したがって、図8(d)に示すように、上記と同様にして新たに搬入された基板Wをチャックピン311で持ち上げた状態でチャック51を搬送開始位置に移動させることで、新たな基板Wをチャック51に保持させることができる。これにより、新たな基板Wについて図7(c)に示す状態が実現する。図6では処理の流れの説明上、処理済み基板の搬出後に新たな基板が搬入されることになっているが、上記のようにこれらは時間的に重複して実行可能であり、こうすることによりタクトタイムを短縮することができる。
なお、基板搬出時の動作において、コロコンベア41とともに出口浮上ステージ33を上昇させる理由は以下の通りである。すなわち、搬送終了位置に到達したチャック51から基板Wを搬出するために搬送方向Dtへの推進力を与えるという目的では、コロコンベア41のみを上昇させる構成によってもその目的は達成可能である。しかしながら、コロコンベア41の上昇により基板Wの上流側(移動方向における先端側)をチャック51から離間させたとしても、基板Wの下流側(移動方向における後端側)は依然としてチャック51の支持部513に載置された状態となっている。コロコンベア41は基板W下面の限られた領域に当接しているだけであるから、基板Wに与えることのできる推進力も限定的である。
このため、基板W下面とチャック51の支持部513との摩擦が抵抗となってコロコンベア41による基板Wの搬出が失敗することがあり得る。また、支持部513が基板W下面を摺擦することによる基板Wへのダメージも起こり得る。これらの問題を未然に回避するため、本実施形態では、コロコンベア41とともに出口浮上ステージ33も上昇させている。こうすることにより、チャック51が基板W下面から確実に離間した状態でコロコンベア41による搬送を開始することができる。出口浮上ステージ33による基板Wは浮上状態に支持されているので、搬出時の抵抗は極めて小さい。
また、出力移載部4のコロコンベア41の上昇(ステップS112)が開始された後に出口浮上ステージ33の上昇(ステップS113)が開始されるように構成されているのは以下の理由による。チャック51による基板Wの吸着保持が解除され、かつ出口浮上ステージ33の上昇によって基板Wがチャック51から離間した時点において、コロコンベア41が基板Wに当接していなければ、基板Wは出口浮上ステージ33の浮力のみによって支持され水平方向への移動が規制されない状態となる。そのため、僅かな傾きや振動によって基板Wが意図しない方向へ移動してしまうことがあり得る。
出口浮上ステージ33の上昇によって基板Wがチャック51から離間するよりも前にコロコンベア41を基板Wに当接させておくことにより、このような基板Wの変位を防止することができる。なお出口浮上ステージ33が基板Wをチャック51から離間させるよりも前にコロコンベア41が基板Wに当接するという要件が満たされればよく、コロコンベア41と出口浮上ステージ33との上昇開始タイミングを上記のようにすることは必ずしも必要ではない。これらの移動量や移動速度の差によって、上昇開始タイミングが上記とは異なる場合もあり得る。
従来技術の基板処理装置では、出口浮上ステージに搬送された基板はリフトピンによってチャックおよび出口浮上ステージから離間される構成となっている。こうしてできた基板と出口浮上ステージとの隙間に外部の搬送ロボットのハンドが進入して基板を搬送することを想定したものである。出口浮上ステージの上部に構造物がない構成ではこのようにして基板を搬出することが可能である。
一方、本実施形態の塗布装置1では、出口浮上ステージ33の上方に第2ノズルユニット70および第2メンテナンスユニット75が新たに配置されている。このため、出口浮上ステージ33の上方に基板をリフトアップするための空間を確保しようとすると、基板搬出の際に第2ノズルユニット70および第2メンテナンスユニット75を上方へ退避させるか、これらの配設位置を予め上方に設定しておくことが必要になってくる。このような改変は、装置構成の複雑化、移動距離の移動に起因するタクトタイムの増大などの不利益をもたらすものである。
そこで、この実施形態では、コロコンベア41および出口浮上ステージ33が上昇して基板Wを僅かに持ち上げることでチャック51から離間させる。そして、出口浮上ステージ33により浮上支持することで機械的抵抗を低く抑えつつコロコンベア41の回転により基板Wに水平方向(搬送方向Dt)への推進力を与えることで、基板Wを搬出する構成としている。これにより、第2ノズルユニット70および第2メンテナンスユニット75を基板搬送経路に近接させて配置することが可能となり、基板搬出時に退避させる必要もなくなる。なお、基板の搬出方向は塗布時の搬送方向Dtと同方向である必要は必ずしもなく、必要に応じて搬送方向Dtとは異なる方向に基板Wが搬出されてもよい。
図9は基板の搬入動作の変形例を示す図である。上記の動作例では、入口浮上ステージ31に搬入された基板Wをリフトピン311で持ち上げることで、基板Wの下にチャック51が入り込むスペースが確保される。一方、次に示すように、同様の効果は、入口浮上ステージ31を昇降可能な構成とした場合でも得られる。すなわち、図9(a)に示すように、基板Wが入口浮上ステージ31に搬入される際、新たに設けた昇降駆動機構38により、入口浮上ステージ31をその上面がコロコンベア21の上面と略同一高さとなるように上昇させておく。これにより、図9(b)に示すように、基板Wは水平姿勢のまま入口浮上ステージ31の上方まで搬送される。
この状態から、図9(c)に示すように、コロコンベア21と入口浮上ステージ31とが下降することで、基板Wの下面がチャック51により保持された状態に移行する。この状態は図7(c)に示す状態と同じであり、以後、上記と同様にして基板Wの搬送および塗布を実行することができる。昇降駆動機構38としては、例えば図5に示した昇降駆動機構36と同一構成のものを適用可能である。
以上、第1ノズル61を用いた塗布処理について説明してきた。この塗布処理では、基板Wの搬入に合わせて第1ノズル61が第1予備吐出位置から塗布位置に移動して塗布動作を実行し、1枚の基板に対する処理が終了すると、第1ノズル61は第1予備吐出位置に戻る。したがって、複数枚の基板Wを連続的に処理する際には、基板搬送に同期して、第1ノズル61は第1予備吐出位置と塗布位置との間を往復移動することになる。この間、必要に応じて第1ノズル61に対する洗浄処理が行われてもよい。
第1予備吐出位置は塗布位置の上流側に設定され、第1洗浄位置および第1待機位置は第1予備吐出位置の上流側に設定されている。したがって、塗布位置から第1予備吐出位置への第1ノズル61の移動距離については、他の停止位置への移動距離よりも短くすることができる。このことは、塗布位置と第1予備吐出位置との間での第1ノズル61の往復移動に起因するタクトタイムの増加を抑制することに資する。なお、この往復移動に要する時間については、処理済み基板の搬出および新たな未処理基板の搬入に必要な時間と同程度の長さであればよく、それ以上に短くしても全体のタクトタイムには影響しない。
塗布位置と第1予備吐出位置との間での第1ノズル61の往復移動に要する時間を最短にすることが必要であれば、塗布位置に位置決めされる第2ノズルと干渉することのない範囲でできるだけ下流側(塗布位置に近い側)に第1メンテナンスユニット65を配置すればよい。
なお、上記説明では、第1ノズル61による塗布処理が実行される間、第2ノズル71は第2待機位置に静止して待機状態となっている。しかしながら、待機中であっても、塗布液の固着を防止するために定期的に洗浄処理を行ったり、後の塗布処理のための予備吐出処理を行ったりすることは有効である。この実施形態では、第2ノズル71に対して設定される第2予備吐出位置、第2洗浄位置および第2待機位置がいずれも塗布位置から下流側に退避した位置である。そして、第1ノズルユニット60と第2ノズルユニット70とは、基台上の走行ガイド81L,81Rを共用するもののそれぞれ独立した支持機構によりノズルを支持している。このため、第1ノズル61による塗布処理の実行中に第2ノズルが各停止位置間を移動したとしても、その影響が塗布処理に及ぶことは回避される。
第2ノズル71を用いた塗布処理についても同様に考えることができる。この場合には、第2ノズル71が塗布位置とその下流側の第2予備吐出位置との間を往復移動することで、複数基板への塗布処理が実行される。この間、第1ノズル61は、第2ノズル71による塗布処理に干渉することなく、第1予備吐出位置、第1洗浄位置および第1待機位置のいずれかに位置決めあるいはこれらの位置間を移動することができる。
第1ノズル61と第2ノズル71との間で主要部分の構成やサイズが共通である場合、第1メンテナンスユニット65と第2メンテナンスユニット75とを塗布位置に関して対称な形状および配置とすることが可能である。このような構成では、第1ノズル61による塗布処理と第2ノズル71による塗布処理とを同じ処理シーケンスで実行することが可能である。
上記のように、この実施形態の塗布装置1では、第1ノズル61と第2ノズル71とが略同一の塗布位置に選択的に位置決めされることにより塗布処理が実行される。第1ノズル61が塗布位置に位置決めされるときには、第2ノズル71は塗布位置よりも下流側に退避する。一方、第2ノズル71が塗布位置に位置決めされるときには、第1ノズル61は塗布位置よりも上流側に退避する。このような構成とすることで次のような利点が得られる。
下方から浮力を与えることによって基板を支持する浮上式搬送系においては、処理対象となる基板の主要部分を非接触で支持することができるため、基板の汚染が問題となる精密デバイスの製造工程において有効なものである。その一方で、基板の鉛直方向位置を高精度に制御することは容易ではない。特に、広い範囲で高精度な位置制御を実現することは非常に困難である。このような搬送系が塗布処理のための基板搬送に用いられるとき、形成される塗布膜を厚さが一定で均質なものとするために、ノズルと基板との間のギャップを高精度に管理することが必要である。
図10は2つのノズルの塗布位置を近接させる利点を説明するための図である。図10(a)に示すように、第1ノズル61に対応する塗布位置と第2ノズル71に対応する塗布位置とが比較的近い場合を考える。この場合、基板Wが塗布ステージ32上を通過する部分においてノズル下端と基板上面Wfとの間のギャップGが適正に制御されていることが求められる領域、すなわち位置制御領域Rcは搬送方向Dtにおいて比較的狭くて済む。仮に両ノズルの塗布位置が同一であれば、位置制御領域Rcは搬送方向Dtにおける吐出口の開口サイズに幾らかのマージンを加えた程度でよく、ごく限られた範囲でのみ位置制御が実現されればよい。
これに対し、図10(b)に比較例として示すように、第1ノズル61に対応する塗布位置と第2ノズル71に対応する塗布位置とが搬送方向Dtに大きく離れている場合、位置制御領域Rcをより広げるか、塗布ステージ32上の異なる2箇所で基板Wの位置を適正化する必要が生じる。このような位置制御は複雑なものとなり、実現するには高コストとなりがちである。以上より、2つのノズルの塗布位置を近接させるあるいは一致させることにより、塗布ステージ32上における基板Wの鉛直方向位置制御に対する要件が緩和され、装置構成および制御をより簡素化することができるといえる。
また、浮上ステージ部3において基板Wの鉛直方向位置を高精度に管理することのできる範囲が予め決まっている場合でも、その範囲に収まるように、第1ノズル61に対応する塗布位置と第2ノズル71に対応する塗布位置とが設定されればよい。このように実現可能な位置制御領域Rcの広さに合わせて塗布位置を設定することは、塗布位置の設定に対応させて位置制御領域Rcを広げることよりも設計上においては格段に容易である。
次に、この塗布装置1における異物検知機構37について説明する。異物検知機構37は、塗布ステージ32上に搬送されてくる基板Wの上面に付着した異物や、基板Wと塗布ステージ32との間に異物が挟まれることによる基板Wの局所的な盛り上がりを検知するものである。異物検知機構37が設置される目的は、基板W上の異物または異物により盛り上がった基板Wと第1ノズル61または第2ノズル71との衝突や、異物の混入による塗布層の品質劣化等の問題を未然に回避することである。
図11は異物検知機構の構成を示す図である。より具体的には、図11(a)は異物検知機構37およびその周辺構成を示す平面図であり、図11(b)はその平面図である。図11(a)および図11(b)に示すように、異物検知機構37は、塗布ステージ32上を通過する基板Wの上面に沿って略水平方向に光ビームLを射出する投光部371と、該光ビームLをその光路上で受光する受光部372と、チャック51に取り付けられた遮光板373とを備えている。投光部371の光源としては例えばレーザーダイオードを使用可能であり、その点灯は制御ユニット9により制御される。また、受光部372が受光量に応じて出力する出力信号は制御ユニット9に送られる。
投光部371から射出される光ビームLの方向は(−Y)方向であり、X方向における光ビームLの光軸位置は、塗布ステージ32の上方であって、塗布位置に位置決めされる第1ノズル61または第2ノズル71の吐出口の開口位置、言い換えればこれらのノズルから吐出される塗布液が最初に基板Wに着液する基板W上の位置である着液位置Rよりも上流側の位置である。さらに、塗布位置に位置決めされる第1ノズル61および第2ノズル71によって光ビームLが散乱あるいは遮光されないことも必要とされる。
また、図11(b)に示すように、Z方向における光ビームLの光軸位置は、搬送される基板Wの上面Wfが光ビームLのビームスポットを横切るような位置である。基板Wの上面Wfがビームスポットの中央付近を通過することが好ましい。種々の厚さの基板に対してこのような条件を成立させるために、投光部371および受光部372については高さ調整が可能な状態で基台10に取り付けられた構造であることが望ましい。
図12は遮光板の構成を示す図である。図12において光ビームLはそのビームスポットの断面により表される。ビームスポットの直径を符号Dにより表す。なお光ビームLのビームスポットの断面形状は円形に限定されず任意である。
遮光板373は光ビームLに対する透過性を有さない材料、例えば金属板により形成された部材である。図12(a)に示すように、遮光板373は、(−Y)側のチャック部材51Rの下流側(移動方向において先頭側)の支持部513から(+X)方向に延びる水平部位373aと、その(+X)側先端から(+Z)方向に延びる鉛直部位373bとを有する略L字形状となっている。このうち遮光部として有効に機能するのは鉛直部位373bであり、水平部位373aは鉛直部位373bを適切な位置に配置するための機能を有する。したがって遮光性を要するのは鉛直部位373bである。
チャック部材51Rは、基板Wの(+X)側端部を支持部513の(+X)側端面から長さX1だけ突出させた状態で基板Wを保持するように構成されている。水平部位373aは基板Wの下面よりも下方で水平に延び、鉛直部位373bは、Y方向から見たときにチャック部材51Rから突出された基板Wの(+X)側端部の先端部分を覆い隠すように上向きに延びている。ここではY方向から見たときの基板Wと遮光板373との重なり量を符号X2により表す。この重なり量X2はゼロ以上とされる。
図12(b)に示すように、Z方向における光ビームLの光路位置は、搬送される基板Wが光ビームLを部分的に遮り、しかも基板Wの上面Wf側で光ビームLの一部が基板Wに遮られることなく受光部372に受光されるような位置に調整される。そして、図12(c)に示すように、遮光板373の鉛直部位373bは、光ビームLの光路を横切る際に一時的に光ビームLを完全に遮光するだけの幅および高さを有している。この要件が満たされる限りにおいて遮光板373の形状は任意である。
なお、図12(d)に示すように、基板Wが薄い場合には光ビームLの一部が基板Wの下方を通過するケースも生じ得る。このようなケースでも異物検知機構37が異物を検知することを可能とするために、図12(d)に示すように、基板Wの下方を通過する光を水平部位373aが遮蔽しないことが望ましい。
図13は基板搬送に伴う光ビームの透過状況を示す図である。また、図14は受光部が受光する光量の基板搬送に伴う変化を模式的に示す図である。図13(a)に示すように、基板Wを搬送するチャック51が塗布ステージ32よりも上流側に離れた位置にある時刻T0においては、光ビームLは何らかの部材により遮光されることはない。したがって、図14に示すように、時刻T0における受光光量は最大となっている。
図13(b)に示すように、遮光板373の(+X)側端面が光ビームLの光路に差し掛かると、遮光板373による光ビームLの遮光が始まる。この時刻T1から徐々に受光光量は低下してゆく。図13(c)に示すように、時刻T2において遮光板373が光ビームLを完全に遮ってしまうと、受光光量は最小となる。遮光板373による光ビームLの完全な遮光が続く間、受光光量は最低レベルに留まる。
図13(d)に示すように、遮光板373の(−X)側端面が光ビームLの光路を通過する時刻T3から再び受光光量は増加し始めるが、光ビームLの一部は基板Wによっても遮光されるため、受光光量の増加は緩やかである。最終的に、遮光板373の(−X)側端面が光ビームLの光路から完全に離脱する時刻T4以降においては、光ビームLは基板Wによる遮光のみを受ける。したがって、基板Wの上面が平坦であれば、受光部372の受光光量は、全透過状態の最大光量と全遮光状態の最小光量との中間的な値で安定するはずである。
一方、基板Wの上面Wfに異物が付着していたり、下面側の異物により基板Wの上面Wfが盛り上がっていたりすれば、図14において点線で示すように、受光光量が一時的に大きな落ち込みを示すことになる。本来なら受光光量が安定しているべき期間における有意な光量の落ち込みを検出することにより、異物の存在を検知することが可能である。異物の存在は受光光量を低下させる方向に作用する。
遮光板373を設けない場合、全透過状態の光ビームLが基板Wによる部分的な遮光を受けることで受光光量は次第に低下する。基板Wにより遮光された状態の受光光量の大きさは、基板Wの厚さやZ方向における光ビームLとの位置関係により変動し、事前に把握しておくことは困難である。また、実際の検出信号はノイズを含むため、変動する検出信号がどの時点で安定したのかを判断することが難しくなる。つまり、検知開始時の過渡状態から定常状態への移行時期が特定できない。そのため、どの時点から異物検知を開始すればよいかを適切に決めることができず、過渡的な変化を異物と誤認識したり、検出されるべき異物を見落としたりすることが起こり得る。
遮光板373を設けた場合、受光部372は、全通過状態の光量と、全遮光状態の光量とを取得することができる。この過程で、投光部371および受光部372が正しく動作しているかをチェックすることが可能である。例えば投光部371の光軸がずれていたり受光部372に迷光が入射していたりすれば、受光光量の変化が本来のものとは大きく異なることになる。
また、受光光量が最小光量から増加に転じた時点で、基板Wによる光ビームLの遮光が始まっており、これ以後の受光光量の有意な低下は異物によるものと判断することができる。したがって、原理的には時刻T3以降において異物検知が可能となる。ノイズの影響等を考慮すれば、遮光板373による遮光の影響が完全になくなる時刻T4以降であれば、より安定な異物検知が可能であるということができる。
図12(d)に示すように基板Wの下面にまで光ビームLが回り込む場合も考慮して、受光光量が安定する時刻T4を見極める必要がある場合、図12(a)における値X1から値X2を差し引いた値(X1−X2)が光ビームLのスポット径Dよりも大きくなっていればよいことになる。このようにすれば、時刻T3を過ぎた後で必ず受光光量が一定となる期間が生じるので、その時刻T4を把握することが可能となる。例えばビーム径Dが1ミリメートル程度であるとき、X1を5ミリメートル、X2を0ないし0.5ミリメートル程度とすることができる。
値X2については原理的にはゼロであってもよい。しかしながら、この値を厳密にゼロに合わせるような調整は難しく、またそのようにする利点もあまりないので現実的ではない。Y方向から見たときに基板Wの先端と遮光板373との間に僅かでも隙間があると、その漏れ光が検出されることで時刻T3の直後に一時的に受光光量が大きくなることになる。このような漏れ光は安定した異物検知の妨げとなるものである。このことから、Y方向から見たときの基板Wの先端と遮光板373とがたとえ僅かであってもオーバーラップした状態としておくのが好ましい。
一方、この重なり量X2が大きくなると、基板Wの端部において遮光板373に遮蔽されることで異物検知を行うことのできない領域が大きくなってしまう。特に、基板Wの端部に近い領域から異物検知が必要とされる場合には問題となり得る。基板W上において異物検知が必要な範囲が予めわかっている場合には、次のようにして重なり量を決定することが可能である。
図15は基板上で異物検知が必要な範囲が既知である場合の位置関係を示す図である。図15に示すように、異物検知が必要とされる要検知範囲が、基板Wの端部より距離X3の位置から始まるものとする。安定した検知のためには、受光光量が安定する時刻T4を過ぎてから光ビームLが要検知範囲に到達することが必要である。このためには、図15から明らかなように、遮光板373の鉛直部位373bの(−Y)側端部から要検知範囲までの距離X4が、光ビームLのビーム径Dよりも大きくなっていればよい。距離X4は、距離X3から基板Wと遮光板373との重なり量X2を差し引いたものに相当するから、結局重なり量X2については、次式:
0≦X2<(X3−D)
となるように設定すればよいこととなる。
必要なのは、基板Wの先端部が遮光板373により光ビームLに対して遮蔽された状態で光ビームLの進路に進入し、遮光板373による遮光が終了してから光ビームLが要検知範囲に到達するまでに受光光量が安定となる期間があることである。この目的のために、光ビームLの進路に沿って見たときの遮光板373と基板W先端部との位置関係および遮光板373と要検知範囲との距離が適切に設定されればよい。特に基板Wの下方への光ビームLの漏れを考慮しなくてよい場合には、チャックからの基板Wの突出量に着目する必要はない。
図16は異物検知処理の流れを示すフローチャートである。異物検知処理は、制御ユニット9が予め定められた制御プログラムを実行することにより実現される。異物検知処理の開始時点で、投光部371からの光ビームLの出射および受光部372による受光が開始される(ステップS201)。なお、手法については特に限定しないが、受光光量に対応して受光部372から出力される検出信号に関しては、有意な光量変化を検出するために適宜のフィルタリング処理等がなされているものとする。
異物検知は、図14に示す光量変化、つまり全通過状態、全遮光状態および基板による部分遮光状態がこの順番で出現することを前提として行われる。まず、受光部372により、全通過状態における適正な受光光量に対応して設定された第1光量L1以上の光量が検出されるか否かが判断される(ステップS202)。投光部371および受光部372が正常に動作していれば第1光量L1以上の光量が検出されるはずであり、所定時間が経過しても検出されなければ(ステップS211)、投光部371からの光量不足等、装置に何らかの異状が疑われる。この場合には所定のエラー処理(ステップS214)が実行される。
第1光量L1以上の光量が検出されると、次いで全遮光状態における適正な受光光量に対応して設定された第2光量L2以上の光量が検出されるか否かが判断される(ステップS203)。所定時間が経過しても検出されなければ(ステップS212)、受光部372の不良に起因するノイズや迷光などの異状が疑われる。この場合にもエラー処理(ステップS214)が実行される。
第2光量L2以上の光量が検出されると、時刻T4が経過して受光光量が安定するのを待つ(ステップS204)。所定時間が経過しても光量が安定しない場合には(ステップS213)、エラー処理(ステップS214)が実行される。なお、上記した各場合におけるエラー処理の内容は任意である。
光量が安定したと判断されると、基板Wに対する異物検知が開始される(ステップS205)。すなわち、受光部372による受光光量を常時監視しておき、有意な光量低下が検出されると(ステップS206)、異物の存在が疑われる。この場合には、基板Wの搬送が停止され(ステップS207)、いずれかのノズルが塗布位置にある場合には塗布位置からの退避動作が行われる(ステップS208)。基板Wにおいて異物が検知されると直ちに基板Wの搬送を停止すること、および、ノズルを退避させることにより、異物がノズルに衝突したり、基板とノズルとの間に挟まったりすることが回避される。
その上で、異物が検知されたことがユーザーに報知される(ステップS209)。報知を受けたユーザーは、異物の確認や除去、塗布処理の差異実行など適切な措置を取ることが可能である。異物が検知された後の動作内容については、このような報知によるもののみに限定されず任意である。
なお、上記の異物検知機構37では、投光部371が基板Wの搬送方向Dt(X方向)と直交する方向、すなわちY方向に光ビームLを出射している。より一般的には、光ビームLの進路が基板Wの上面に沿ったものであれば、必ずしも搬送方向と直交するものでなくてもよい。以下、そのような別形態の例について説明する。
図17はビーム進路と搬送方向とが直交しない例を示す図である。図17(a)および図17(b)は、搬送に伴い基板Wの位置が変化した2つの時刻における各部の位置関係を表している。図17(a)に示すように、投光部371から受光部372に向かう光ビームLの方向は、基板Wの搬送方向Dtに直交するY方向に対し傾きを有していてもよい。この場合に異物検知機構37が満たすべき要件は以下の通りである。
異物が着液位置Rへ搬送されるのを防止するという観点から、光ビームLの進路は、着液位置Rよりも搬送方向Dtの上流側で塗布ステージ32の上方を横切るようなものとされる。また、図17(a)に示すように、基板Wの一部(この図では右下角部)が光ビームLの進路に最初に到達する時刻においては、遮光板373による光ビームLの遮蔽がそれ以前から継続されている必要がある。一方、図17(b)に示すように、基板Wのうち下面においてチャック51の保持部513が当接している部分が光ビームLの進路に最初に到達する時刻においては、遮光板373による光ビームLの遮蔽が終了していなければならない。
両時刻の間に基板Wが光ビームLの断面長さより多くの距離を移動する構成であれば、一定の期間、光ビームLが基板Wのみに遮蔽された状態が継続されるため、受光部372により受光される光量が一定となる期間を出現させることができる。これを実現するためには、光ビームLの進路に沿って見たときの遮光部材373と保持部513との間の距離を、同方向から見た光ビームLの断面の長さより大きくすればよい。
以上説明したように、この実施形態においては、塗布装置1が本発明の「基板処理装置」として機能するものである。また、上記実施形態では、チャック51が本発明の「搬送部」として機能しており、チャック51の保持部513、特にその上端部が本発明の「保持部位」に相当している。また、第1ノズル61および第2ノズル71がそれぞれ本発明の「吐出部」として機能している。
また、異物検知機構37のうち投光部371および受光部372と制御ユニット9とが一体的に本発明の「検知部」として機能している。一方、遮光板373が本発明の「遮蔽部」として機能している。また、浮上ステージ部3が本発明の「浮上部」として機能し、このうち塗布ステージ32が本発明の「ステージ」として、浮上制御機構35が本発明の「浮力発生機構」としてそれぞれ機能する。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の異物検知機構37では、レーザーダイオードを光源とする光ビームLが本発明の「ビーム」として用いられているが、ビームは光に限定されず、例えば光でない電磁波や超音波等が用いられてもよい。
また、上記実施形態における異物検知処理では、遮光板373による遮光のない全通過状態から全遮光状態への光量変化、および、全遮光状態から基板Wのみによる遮光状態への光量変化のそれぞれが検出されることで基板Wに対する異物検知が開始される。このうち全通過状態から全遮光状態への光量変化の検出は、主として異物検知機構37の動作確認のための動作である。単に異物検知を適切に開始するという目的であればこの動作を行わなくても処理は成立する。例えば他の方法で異物検知機構37の動作確認が行われる場合、この動作を省くことができる。
また、上記実施形態は、本発明の「異状検知」として基板上面に付着した異物または盛り上がりを検知するものである。しかしながら、本発明により検知される「異状」はこれらに限定されるものではない。例えば、基板あるいは基板に形成された表面層に生じる、傷や亀裂、ピンホール、厚さの変動、反射特性の変動、下面側に付着した異物等の各種の異状を検知する目的にも、本発明を適用することが可能である。
また、上記実施形態の遮光板373はチャック51の保持部513に固定された板状部材である。しかしながら、本発明の「遮蔽部」は「搬送部の保持部位」と一体的に、より厳密には保持部位により保持されて搬送される基板と一体的に移動して基板先端部近傍でビームを遮蔽するものであればよく、その形状や取り付けの態様については上記に限定されず任意である。
また、上記実施形態の遮光板373は光ビームLを完全に遮蔽することのできるサイズの鉛直部位373aを有している。しかしながら、本発明の「遮蔽部」は、遮蔽部によって遮蔽された状態であることがビーム強度から判別可能であり、かつ遮蔽中においては検出されるビームの強度が変動しないものであればよい。すなわち「完全な遮蔽」が実現されずビームの漏れがあったとしても、漏れ量が一定であれば検知は可能である。
また例えば、上記実施形態では、第1ノズル61を用いる塗布処理と第2ノズル71を用いる塗布処理とを個別の処理として説明したが、一連の処理シーケンスにおいて第1ノズル61および第2ノズル71の両方を使った処理も実行可能である。例えば第1ノズル61と第2ノズル71とを交互に塗布位置に移動させるような塗布処理も、この塗布装置1は実行可能である。この場合にも、塗布位置にない方のノズルについては、処理の進行に応じて予備吐出位置、洗浄位置および待機位置のいずれかに置くことで、ノズルの干渉を防止し、優れたスループットでの処理が可能である。
また、上記実施形態の塗布装置1では同一の塗布位置で塗布を行う2つのノズル61,72が設けられているが、本発明の「基板処理装置」における「吐出部」の配設数はこれに限定されない。例えば「吐出部」としての単一のノズルを備える塗布装置にも、本発明を適用することが可能である。また、上記実施形態の第1ノズル61、第2ノズル71はいずれもスリットノズルであるが、塗布方式はスリット塗布に限定されず任意である。
また、上記実施形態は基板への処理としての塗布処理を実行する塗布装置であるが、処理内容は塗布に限定されない。例えばノズルから基板に洗浄液やリンス液等を供給して洗浄を行う場合にも本発明を適用可能である。また、このように基板に対する液体を用いた処理を実行するものに限定されず、基板を浮上状態で搬送する基板処理装置全般に対し、本発明を適用することが可能である。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明にかかる基板処理装置では、ビームの進路に沿って見たときの基板と遮蔽部との重なり量がゼロ以上であってよい。このような構成によれば、ビームが遮蔽部に遮蔽された状態から基板のみに遮蔽された状態へ間断なく移行するため、異物検知の開始時期を的確に判定することができる。
また例えば、遮蔽部は、搬送方向におけるビームの断面の長さに相当する距離を基板が移動する時間よりも長い期間、連続して遮蔽状態を維持するものであってよい。このような構成によれば、遮蔽部に遮蔽されることによりビームの強度が低下した状態が一定期間連続するため、ビーム強度の検出結果から、遮蔽部に遮蔽された状態と他の状態とを容易に区別することができる。この要件は、例えば遮蔽部のうちビームの進路を横切る部位の搬送方向における長さが、搬送方向におけるビームの断面の長さよりも大きくなるようにすることで実現可能である。
また例えば、遮蔽部のうちビームの進路を横切る部位と搬送部の保持部位との搬送方向における距離が、搬送方向におけるビームの断面の長さよりも大きい構成であってよい。このような構成によれば、遮蔽部による遮蔽が終了してから保持部位が光ビームの進路に到達するまでに、基板のみによりビームが遮蔽される状態が一定期間継続されるので、ビームの一部が基板の下面側を通過していたとしても保持部位の遮蔽の影響を受けない。
また例えば、検知部は、ビームの有意な強度低下を検出したときを異状と判定する構成であってよい。基板の上面に異物等が付着した状態、基板の下面に異物等が付着して基板上面が盛り上がった状態のいずれにおいても、ビームの遮蔽量が増加するため検出されるビームの強度は低下する。したがって、このような低下を検出することで、上記のいずれの異状にも対応することができる。
より具体的には、例えば、検知部は、遮蔽部による遮蔽状態に対応して設定された所定レベル以下のビーム強度が検出され、その後のビーム強度の増加が検出された後のビーム強度に基づき異状判定を行う構成とすることができる。このような構成によれば、遮蔽部による遮蔽状態から基板による遮蔽状態への移行を確実に検出して異状検知を適切に開始することができる。
また例えば、搬送部は、検知部が異状を検知したとき基板の搬送を停止するものであってよい。このような構成によれば、異状を含んだまま基板の搬送が継続されることに起因する基板または装置へのダメージや処理の失敗を回避することができる。
また例えば、浮上部は、基板の下面に上面が対向するステージと、ステージの上面と基板の下面との間に気体を流通させることで基板に浮力を与える浮力発生機構とを有するものであってよい。このような構成によれば、ステージの上面とのギャップを制御することにより、基板の鉛直方向位置を制御することができる。