JP2018101469A - 高分子電解質材料および触媒層付電解質膜 - Google Patents

高分子電解質材料および触媒層付電解質膜 Download PDF

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Abstract

【課題】優れたプロトン伝導性と物理的耐久性を両立し得る触媒層バインダとして適した高分子電解質材料、ならびに当該高分子電解質材料をバインダとして形成された触媒層を有する膜電極複合等の電気化学装置を提供する。【解決手段】イオン性基を含有するセグメントと、総炭素数7以上の脂肪族炭化水素側鎖(α)を有するイオン性基を含有しないセグメントをそれぞれ1個以上含有する芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体からなる高分子電解質材料。【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質材料、特に、固体高分子型燃料電池や水電解装置、電気化学式水素圧縮装置等の電気化学装置を構成する膜電極複合体の触媒層を形成するためのバインダとして用いられる高分子電解質材料に関する。
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体からなる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。具体的には、アノード電極においては、触媒層で燃料ガスが反応してプロトン及び電子を生じ、電子は電極を経て外部回路に送られ、プロトンは電極電解質を介して高分子電解質膜へと伝導する。一方、カソード電極では、触媒層で、酸化ガスと、高分子電解質膜から伝導してきたプロトンと、外部回路から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。
従来、パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(デュポン社製)が高分子電解質膜としてのみならず、触媒層のバインダ用電解質材料(アイオノマー材料)として広く用いられてきた。しかし、ナフィオン(登録商標)はクラスター構造に起因するプロトン伝導チャネルを通じて、低加湿で高いプロトン伝導性を示す一方で、多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、膨潤乾燥によって膜の機械強度や物理的耐久性が失われるという問題、軟化点が低く高温で使用できないという問題、さらには、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題が指摘されてきた。
このような欠点を克服するために、ナフィオン(登録商標)に替わり得る、安価で、ガス透過性が高く、機械強度に優れ、軟化点が高く高温での使用に耐える、炭化水素系高分子電解質膜および膜電極接合体のバインダ樹脂開発が行われている。
しかしながら、炭化水素系高分子電解質材料を膜電極接合体作製時のバインダ樹脂として使用する際、一般的にガス透過性が低いために、特に酸素の有効利用ができにくい傾向にある。このような欠点を克服するため、炭化水素系高分子電解質材料のガス透過性を高める様々な方法が提案されている。
例えば、高分子主鎖の繰り返し単位毎に総炭素数3以上の置換基を少なくとも一つ以上導入することで、ガス透過性を高めた炭化水素系電解質材料が提案されている(特許文献1)。また、非特許文献1には、疎水性セグメントが長鎖アルキル基を含有したポリアリーレンからなり、親水性セグメントがスルホン化ポリアリーレンからなるジブロックもしくはトリブロック共重合体についての記載がある。
特開2006−134833号公報
Macro Lett., 2012, 1,969−972
しかしながら、特許文献1の電解質材料は、ガス透過性を担う総炭素数3以上の置換基がイオン性基近傍に多数存在するため、プロトン伝導チャネルの形成が阻害され、プロトン伝導性に課題があった。また、非特許文献1の電解質材料は、剛直なアリーレン骨格からなるため脆く、物理的耐久性に課題があった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、優れたプロトン伝導性と物理的耐久性を両立し得る触媒層バインダとして適した高分子電解質材料、ならびに当該高分子電解質材料をバインダとして形成された触媒層を有する膜電極複合等の電気化学装置を提供せんとするものである。
プロトン電導性を担うイオン性基は高極性であるのに対し、高ガス透過性の発現には低極性構造が好ましいことから、高ガス透過性と高プロトン伝導性との両立は困難である。本発明では、イオン伝導性を担うイオン性基を含有するセグメントと、ガス透過性を担う脂肪族炭化水素側鎖を含有し、かつイオン性基を含有しないセグメントとを有する芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体を高分子電解質材料に用いることで、高ガス透過性を保ちつつ、優れたプロトン伝導性と物理的耐久性を両立できる事を見出した。
すなわち、本発明は、イオン性基を含有するセグメントと、総炭素数7以上の脂肪族炭化水素側鎖(α)を有するイオン性基を含有しないセグメントをそれぞれ1個以上含有する芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体からなる高分子電解質材料である。
本発明によれば、燃料電池等に用いられる膜電極複合体の触媒層バインダとして適した、優れたイオン伝導性と物理的耐久性を両立し得る高分子電解質材料を提供することができる。
以下本発明について詳細に説明する。
<高分子電解質材料>
本発明の高分子電解質材料は、イオン性基を含有するセグメント(以下、「イオン性セグメント」という)と、総炭素数7以上の脂肪族炭化水素側鎖(α)を有するイオン性基を含有しないセグメント(以下、「非イオン性セグメント」という)をそれぞれ1個以上含有する芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体(以下、便宜的に「本発明のブロック共重合体」という)である。
芳香族ポリエーテル系とは、主鎖に芳香環とエーテル構造を有する構造を含むことを意味する。芳香族ポリエーテル系重合体の具体例としては、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド等の芳香族ポリエーテル系共重合体が上げられる。なかでも、機械強度、物理的耐久性、製造コストの面からポリエーテルケトン系共重合体が好ましい。なお、ここでいうポリエーテルスルホンとは、その分子鎖にそれぞれエーテル結合とスルホン結合の両方を有している重合体の総称である。同様に、ポリエーテルケトンは、その分子鎖にエーテル結合とケトン結合の両方を有する重合体の総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含む概念である。
イオン性セグメントが含有するイオン性基は、プロトン交換能を有する負電荷を有する原子団が好ましい。このようなイオン性基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましい。中でも、高プロトン伝導度の点からスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基がより好ましく、原料コストの点からスルホン酸基を有することが最も好ましい。イオン性セグメントは、これらのイオン性基を2種類以上含有してもよい。
ここで、本発明におけるイオン性基には塩となっているものを含むものとする。塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR (Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等は特に限定されず、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等のカチオンが用いることができるが、中でも、安価でかつ容易にプロトン置換可能なNa、K、Liが好ましい。
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントと、非イオン性セグメントをそれぞれ1個以上有する。セグメントとは、ブロック共重合体において各ブロックを構成する構造単位であって、1種類の繰り返し単位または複数種類の繰り返し単位の組み合わせからなり、分子量が2000以上のものを指す。
本発明のブロック共重合体において、イオン性セグメントは、下記一般式(S1)で表される構成単位を含有することが好ましい。
Figure 2018101469
(一般式(S1)中、Xは直接結合、−CO−、−SO−からなる群より選ばれた1種の構造を表し、Yは直接結合、−CO−、−SO−からなる群より選ばれた1種の構造を表す。Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基を表し、Arおよび/またはArは1つ以上のイオン性基を含有し、Ar、Arはイオン性基を含有しても含有しなくても良い。Ar〜Arは任意に置換されていても良く、互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられても良い。*は一般式(S1)または他の構成単位との結合部位を表す。)
一般式(S1)中のAr〜Arは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基が挙げられ、好ましくはフェニレン基であり、最も好ましくはp−フェニレン基である。
一般式(S1)中のXは、好ましくは−CO−であり、Yは好ましくは−CO−または直接結合である。
イオン性セグメント中の一般式(S1)で表される構成単位の含有量は多い方が好ましく、20重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、80重量%以上が最も好ましい。含有量が20モル%未満である場合には、化学的安定性と低加湿条件下でのプロトン伝導性が低下する傾向がある。
一般式(S1)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記一般式(P2)で表される構成単位が挙げられる。中でも、原料入手性と重合性の点から、下記一般式(P3)で表される構成単位がさらに好ましく、下記一般式(P4)で表される構成単位が最も好ましい。
Figure 2018101469
(一般式(P2)〜(P4)において、M〜Mは、それぞれ独立に水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表す。また、r1〜r4は、それぞれ独立に0〜2の整数を表し、r1+r2は1〜8であり、r1〜r4は構成単位ごとに異なっていても良い。*は式(P2)(P3)(P4)または他の構成単位との結合部位を表す。)
非イオン性セグメントは、総炭素数7以上の脂肪族炭化水素側鎖(α)を有する。高い酸素溶解性および水素溶解性を示す脂肪族炭化水素側鎖を有することにより、ブロック共同重合体の酸素透過性および水素透過性が向上し、触媒層バインダ樹脂として使用する際に酸素ガスおよび水素ガスを有効利用することができる。脂肪族炭化水素側鎖(α)の総炭素数は7以上が好ましく、8以上がさらに好ましく、9以上がさらに好ましく、10以上が一層好ましい。一方、脂肪族炭化水素側鎖(α)の総炭素数が25を超える場合、機械強度、物理的耐久性のいずれかが不十分になる傾向がある。
非イオン性セグメント中の脂肪族炭化水素側鎖(α)の含有率は、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が一層好ましい。また、脂肪族炭化水素側鎖(α)の含有重量は80質量%以下が好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下が一層好ましい。非イオン性セグメント中の脂肪族炭化水素基(α)の含有重量が15質量%未満の場合、ガス透過性が不足する傾向がある。また、非芳香族炭化水素基(α)の含有重量が、80質量%を超える場合、機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分になる傾向がある。
脂肪族炭化水素側鎖(α)の構造としては、直鎖状、環状、あるいは分岐鎖状の構造が挙げられるが、芳香族ポリエーテル系ポリマーのパッキングを阻害し、結晶性を低下させることが出来るため、環状あるいは分岐鎖状の構造が好ましく、環状構造が最も好ましい。
発明のブロック共重合体において、非イオン性セグメントは、下記一般式(S2)で表される構成単位を含有することが好ましい。
Figure 2018101469
(一般式(S2)中、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい、イオン性基を有しない2価のアリーレン基を表す。Zはそれぞれ独立して下記一般式(C−1)で表される構造単位、(C−2)で表される構造単位、(C−3)で表される構造単位、直接結合、−CO−および−SO−からなる群より選ばれる1種の構造を表し、Zのうち少なくとも一つは下記一般式(C−1)で表される構造単位、下記一般式(C−2)で表される構造単位または下記一般式(C−3)で表される構造単位である。*は一般式(S2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
Figure 2018101469
(一般式(C−1)中、RおよびRは、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、または水素原子であり、RとRの炭素数の和は7以上である。)
Figure 2018101469
(一般式(C−2)中、Rは、直鎖状、環状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であり、fは0〜10の整数であり、eは1〜10の整数であり、eと(Rの炭素数×f)の合計は7以上である。)
Figure 2018101469
(一般式(C−3)中、Rは、炭素数7〜20の2価の多環型脂環式炭化水素基である。)
一般式(S2)中のAr〜Arは、前記一般式(S1)のAr〜Arと同様の構造が好ましい。ただし、一般式(S2)においては、イオン性基が結合した構造は除かれる。
一般式(S2)のAr〜Arの置換基を有していても良く、置換基としては、脂肪族炭化水素基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などの炭素数1〜20のアルキル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
上記一般式(C−1)において、RとRの炭素数の和は8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
およびRにおける1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などの炭素数1〜20のアルキル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
上記一般式(C−2)において、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などの炭素数1〜20のアルキル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
上記一般式(C−3)において、Rとしては、アダマンタン、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカン、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]ヘプタン、ピナン、カンファン、デカリン、ノルトリシクラン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアズレン、シクロペンタノヒドロフェナントレンから誘導される2価の基が挙げられる。
また、機械強度および物理的耐久性の点から一般式(S2)中、Zのうち少なくとも一つは−CO−または−SO−であること、すなわち非イオン性セグメントがポリエーテルケトンもしくはポリエーテルスルホンであることが好ましい。
上記一般式(C−1)で表される構造単位としては、具体的には、下記式(C−1−1)〜(C−1−6)で表される構造が挙げられる。
Figure 2018101469
ガス透過性の面からは、結晶性のより低い、上記式(C−1−3)、(C−1−4)または(C−1−5)で表される分岐構造を有する構造が好ましく、化学的耐久性の面からは、ベンジル位に水素を有さない上記式(C−1−3)で表される構造が好ましい。
上記一般式(C−2)で表される構造単位としては、具体的には、下記式(C−2−1)〜(C−2−5)で表される構造が挙げられる。
Figure 2018101469
上記一般式(C−3)で表される構造単位としては、具体的には、下記式(C−3−1)〜(C−3−5)で表される構造が挙げられる。
Figure 2018101469
Zはそれぞれ独立して下記一般式(C−1)で表される構造単位、(C−2)で表される構造単位、(C−3)で表される構造単位、直接結合、−CO−および−SO−からなる群より選ばれる1種の構造を表し、Zのうち少なくとも一つは下記一般式(C−1)で表される構造単位、下記一般式(C−2)で表される構造単位または下記一般式(C−3)で表される構造単位である。ガス透過性の点からはZのいずれもが下記一般式(C−1)で表される構造単位、下記一般式(C−2)で表される構造単位または下記一般式(C−3)で表される構造単位であることが好ましいが、合成の点からはZのうち一つが下記一般式(C−1)で表される構造単位、下記一般式(C−2)で表される構造単位または下記一般式(C−3)で表される構造単位であり、一つが−CO−もしくは−SO−であることが好ましい。
非イオン性セグメント中の一般式(S2)で表される構成単位の含有量としては、より多い方が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が最も好ましい。含有量が20モル%未満である場合には、ガス透過性、機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分になる場合があり好ましくない。
イオン性セグメント、非イオン性セグメントの数平均分子量は、相分離構造のドメインサイズに関係し、低加湿でのプロトン伝導性と物理的耐久性のバランスから、いずれも0.5万以上がより好ましく、さらに好ましくは1万以上、最も好ましくは1.5万以上である。また、5万以下がより好ましく、さらに好ましくは、4万以下、最も好ましくは3万以下である。
本発明において、ブロック共重合体はさらに、イオン性セグメントと非イオン性セグメントを連結するリンカー部位を有していてもよい。リンカー部位とは、イオン性セグメントと非イオン性セグメントとの間を連結する部位であって、イオン性セグメントや非イオン性セグメントとは異なる化学構造を有する部位である。リンカーの存在により、エーテル交換反応によるランダム化、セグメント切断、副反応を抑制しながら、両セグメントを連結することができる。
リンカーとしては、セグメント切断なくブロック共重合することができるものであれば特に限定されるものではないが、その好適な具体例としては、オクタフルオロビフェニレン(−C−C−)、テトラフルオロフェニレン(−C−)、および下記一般式(L1)〜(L7)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
Figure 2018101469
(一般式(L1)中、Xは、それぞれ独立にH、NO、CN、CF、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(L2)中、Yは、それぞれ独立にNO、CN、CF、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(L3)中、Zは、それぞれ独立にNO、CN、CF、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(L5)中、Rは任意の有機基、一般式(L6)中、Arは任意のアリーレン基、一般式(L7)中、Eは酸素または硫黄を表す。一般式(L1)〜(L7)は、電子吸引性基でさらに置換されていても良い。*はイオン性セグメントまたは非イオン性セグメントとの結合部位を表す。)
イオン性セグメントを構成するオリゴマー(以下、単に「イオン性オリゴマー」という場合がある。)は、イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法、あるいはモノマーを重合後に高分子反応でイオン性基を導入する方法により合成することができるが、得られるブロック共重合体の化学的安定性が向上する点やイオン性基の量の精密制御が可能な点から、イオン性基を有するモノマーを重合させる方法を用いることが好ましい。かかる方法は例えば、ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(Journal of Membrane Science),197,2002,p.231−242に記載がある。
イオン性オリゴマーは、芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応やハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応を利用して合成することができる。
イオン性セグメント中に用いる芳香族活性ジハライド化合物として、芳香族活性ジハライド化合物にイオン酸基を導入した化合物をモノマーとして用いることは、化学的安定性、製造コスト、イオン性基の量を精密制御が可能な点から好ましい。イオン性基としてスルホン酸基を有するモノマーの好適な具体例としては、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、等を挙げることができる。なかでも化学的安定性と物理的耐久性の点から、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンがより好ましく、重合活性の点から3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。
また、ハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物としても特に制限されることはないが、4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロジフェニルスルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)ケトン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)ケトン、等を例として挙げることができる。これらは、単独で使用することができるほか、2種以上の混合物として使用することもできる。さらに、活性化ジハロゲン化芳香族化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物の反応においてこれらのハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物を共に反応させて芳香族ポリエーテル系化合物を合成しても良い。
非イオン性セグメントを構成するオリゴマー(以下、単に「非イオン性オリゴマー」という場合がある。)は、例えば、芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応やハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応を利用して合成することができる。以下では、主として芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応を用いて合成する場合について説明する。
非イオン性セグメント中に用いる芳香族活性ジヒドロキシ化合物として、芳香族活性ヒドロキシ化合物に脂肪族炭化水素基を導入した化合物をモノマーとして用いることが、原料入手性、製造コスト、重合性の点から好ましい。
非イオン性セグメント中に用いる芳香族活性ジヒドロキシ化合物モノマーの好適な具体例としては下記式(CM−1−1)〜(CM−3−5)で表されるモノマーを挙げることが出来る。
Figure 2018101469
Figure 2018101469
Figure 2018101469
ガス透過性の面からは、結晶性のより低い、分岐もしくは環状構造を有する、上記式(CM−1−3)、(CM−1−4)、(CM−1−5)、(CM−2−1)、(CM−2−2)、(CM−2−3)、(CM−2−4)、(CM−2−5)、(CM−3−1)、(CM−3−2)、(CM−3−3)、(CM−3−4)または(CM−3−5)で表されるモノマーが好ましい。
また、化学的耐久性の面からは、ベンジル位に水素を有さない、上記式(CM−1−3)、(CM−2−1)、(CM−2−2)、(CM−2−3)、(CM−2−4)、(CM−2−5)、(CM−3−1)、(CM−3−2)、(CM−3−3)、(CM−3−4)または(CM−3−5)で表されるモノマーが好ましい。
これらのモノマーは、単独で使用することができるが、複数種類のモノマーを併用することも可能である。
本発明に使用されるセグメントを得るために行う芳香族求核置換反応によるオリゴマー合成は、上記モノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させることで行うことができる。
本発明のブロック共重合体は、イオン性オリゴマーと非イオン性オリゴマーを用いて、以下のいずれかの方法により合成することが可能である。
方法a.イオン性オリゴマーと、非イオン性オリゴマーの各両末端に−OM基を導入し、これらの一方をジハライドリンカーと結合させた後、もう一方のセグメントと交互的に重合させてブロック共重合体を製造する方法
方法b.イオン性オリゴマーと、非イオン性オリゴマーの各両末端に−OM基を導入し、ジハライドリンカーとをランダム的に重合させてブロック共重合体を製造する方法
方法c.イオン性オリゴマー前駆体である未スルホン化物(A1’オリゴマー)と、非イオン性オリゴマーを用いて、上記方法aまたはbに記載の方法でブロック共重合体を製造した後、A1’オリゴマー由来部分に選択的にイオン性基を導入する方法。
また、上記方法a〜方法cを適宜組み合わせた方法も用いることができる。
ここで、−OM基のOは酸素、MはH、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属カチオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、Na、K、Liがより好ましい。−OM基としては、例えばヒドロキシル基(−OH基)、−ONR 基(RはHまたは有機基)、−ONa基、−OK基、−OLi基等が例示される。
なかでも、高分子量化による機械強度と耐久性の向上を達成でき、かつ、両セグメントの交互導入によって、相分離構造やドメインサイズが厳密に制御された低加湿プロトン伝導性に優れたブロック共重合体を得ることが出来る点から、方法aが最も好ましい。
ジハライドリンカーとしては、エーテル交換反応によるランダム化、セグメント切断を抑制しながら、異なるセグメントを連結できるような反応性の高い化合物であれば特に限定されるものではないが、好適な具体例としては、デカフルオロビフェニル、ヘキサフルオロベンゼン、下記一般式(M1)〜(M7)から選ばれた少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
Figure 2018101469
(一般式(M1)〜(M7)中、Wは、ClまたはFを表す。一般式(M1)中、Xは、それぞれ独立にH、NO、CN、CF、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(M2)中、Yは、それぞれ独立にNO、CN、CF、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(M3)中、Zは、それぞれ独立にNO、CN、CF、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(M5)中、Rは任意の有機基、一般式(M6)中、Ar10は任意のアリーレン基、一般式(M7)中、Eは酸素または硫黄を表す。一般式(M1)〜(M7)は、電子吸引性基でさらに置換されていても良い。)
前記一般式(M1)〜(M7)で表されるリンカー化合物を用いた場合には、架橋反応や分岐反応が進行しないので、製膜性が良好で、分子間相互作用が強く、強靱で物理的耐久性を同時に実現することができる。
本発明のブロック共重合体は、リンカーを導入することにより、ブロック共重合体の相分離構造を厳密に制御することができる。例えば、デカフルオロビフェニル、ヘキサフルオロベンゼンなどの多官能性のポリハライドリンカーを用いた場合、反応条件を制御することで分岐構造を有するブロック共重合体を製造することができる。この時、(A1)オリゴマーと(A2)オリゴマーの仕込み組成を変えることによって、直鎖構造のブロック共重合体と分岐構造を有するブロック共重合体とを作り分けることもできる。
本発明のブロック共重合体としては、非イオン性セグメントに対するイオン性セグメントのモル組成比が0.2以上であることがより好ましく、0.33以上がさらに好ましく、0.5以上が最も好ましい。また、当該モル組成比は5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が最も好ましい。当該モル組成比が0.2未満あるいは5を越える場合には低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足する場合や、耐熱水性や物理的耐久性が不足する場合がある。
イオン性セグメントのイオン交換容量は、低加湿条件下でのプロトン伝導性の点から高いことが好ましく、好ましくは2.5meq/g以上、さらに好ましくは、3meq/g以上、最も好ましくは3.5meq/g以上である。また、6.5meq/g以下が好ましく、5meq/g以下がより好ましく、4.5meq/g以下がさらに好ましい。イオン性セグメントのイオン交換容量が2.5meq/g未満の場合には、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足する場合があり、6.5meq/gを越える場合には、耐熱水性や物理的耐久性が不足する場合がある。
非イオン性セグメントのイオン交換容量は、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、低いことが好ましく、好ましくは1meq/g以下、より好ましくは0.5meq/g以下、さらに好ましくは0.1meq/g以下である。非イオン性セグメントのイオン交換容量が1meq/gを越える場合には、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性が不足する場合がある。
ブロック共重合体全体としてのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1meq/g以上5meq/g以下が好ましく、より好ましくは1.5meq/g以上、さらに好ましくは1.8meq/g以上、最も好ましくは2.1meq/g以上である。また、ブロック共重合体のイオン交換容量は3.5meq/g以下がより好ましく、さらに好ましくは2.9meq/g以下、一層好ましくは2.6meq/g以下、最も好ましくは2.3meq/g以下である。イオン交換容量が0.1meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、5meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。
ここで、イオン交換容量とは、ブロック共重合体、高分子電解質材料、および高分子電解質膜の単位乾燥重量当たりに交換可能なイオン性基のモル量であり、この値が大きいほどイオン性基の密度が高いことを示す。イオン交換容量は、元素分析、中和滴定法等により測定が可能である。イオン性基としてスルホン酸を含む場合には、元素分析法を用い、S/C比から算出することもできるが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは測定することが難しい。従って、本発明においては、イオン交換容量は、中和滴定法により求めた値と定義する。
イオン性基がスルホン酸基で有る場合の中和滴定の測定例は、以下のとおりである。
(1)プロトン置換し、純水で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求める。
(2)電解質に5重量%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換する。
(3)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(4)イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/mL)×滴下量(mL)〕/試料の乾燥重量(g)
なお、本発明に用いるブロック共重合体の化学構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm−1、1,160〜1,190cm−1のS=O吸収、1,130〜1,250cm−1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm−1のC=O吸収などにより確認でき、これらの組成比は、イオン性基の中和滴定や、元素分析により知ることができる。また、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)により、例えば6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。また、溶液13C−NMRや固体13C−NMRによって、イオン性基の付く位置や並び方を確認することができる。
本発明の共重合体は、ナノメートルからマイクロメートルオーダーのサイズで化学的に異なる成分の配置を制御することができる。化学的に異なるブロック鎖間の反発から生じる短距離相互作用により、それぞれのブロックからなる領域(ミクロドメイン)に相分離するが、ブロック鎖がお互いに化学結合していることから生じる長距離相互作用の効果により、各ミクロドメインが特定の秩序を持って配置せしめられ、各ブロックからなるミクロドメインが集合してミクロ相分離構造と呼ばれる構造を作り出す。
プロトン伝導性に対しては、プロトン伝導性成分が形成するチャネル構造がきわめて重要であると考えられている。チャネルを通してプロトンが伝導するという視点からは、触媒層のバインダ中に於けるプロトン伝導性部位の空間配置が重要になる。本発明に用いるブロック共重合体は触媒層のバインダ中におけるプロトン伝導性部位の空間配置を制御することによって、低加湿条件下であっても優れたプロトン伝導性を得ることが出来る。
一方、高ガス透過性に対しては、低極性かつ非結晶性成分から形成されるチャネル構造が重要と考えられる。チャネルを通してガスが透過するという観点からは、触媒層のバインダ中における高ガス透過性部位の空間配置を制御することによって、高出力条件下であっても、酸素を有効利用出来る。
ブロック共重合体がミクロ相分離構造を形成することは、膜形態に成型した状態(以下、「製膜状態」という)で透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することで確認することができる。膜形態に成型する方法としては、ブロック共重合体をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去した上で、必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換する方法が例示できる。ミクロ相分離構造は、非相溶なセグメント2種類以上からなる高分子、すなわち、イオン性セグメントと非イオン性セグメントとを有するブロック共重合体より構成される高分子において発現し得、その構造様態は大きく共連続、ラメラ、シリンダー、海島の4つに分類される。かかる相分離構造は、例えばアニュアル レビュー オブ フィジカル ケミストリ−(Annual Review of Physical Chemistry), 41, 1990, p.525等に記載がある。本発明においては、なかでも共連続様またはラメラ様の相分離構造を形成するブロック共重合体が特に好ましい。
共連続様またはラメラ様の相分離構造を有するとは、製膜状態で、以下の手法により所望とする像が観察されることで確認できる。TEMトモグラフィー観察により得られた3次元図に対して、縦、横、高さの3方向から切り出したデジタルスライス3面図を比較する。イオン性セグメントと非イオン性セグメントの凝集状態やコントラストを明確にするために、2重量%酢酸鉛水溶液中に高分子電解質膜を2日間浸漬することにより、イオン性基を鉛でイオン交換した後、透過電子顕微鏡(TEM)およびTEMトモグラフィー観察に供するものとする。
例えば、前記イオン性セグメントと非イオン性セグメントとをそれぞれ1個以上有するブロック共重合体からなる高分子電解質膜において、その相分離構造が、共連続様またはラメラ様の場合、3面図すべてにおいてイオン性セグメントを含む親水性ドメインと、非イオン性セグメントを含む疎水性ドメインとがともに連続相を形成する。ここでドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、類似するセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。一方、シリンダー構造や海島構造の場合、少なくとも1面で前記ドメインのいずれかが連続相を形成しないため前者と区別でき、また3面図の各々が示す模様から共連続様とラメラ様を判別できる。具体的には、共連続構造の場合、連続相のそれぞれが入り組んだ模様を示すのに対し、ラメラ構造では、層状に連なった模様を示す。ここで連続相とは、巨視的に見て、個々のドメインが孤立せずに繋がっている相のことを意味するが、一部繋がっていない部分があってもかまわない。
本発明に用いるブロック共重合体としては、上記のように製膜状態でTEMによる観察を5万倍で行った場合に、相分離構造が観察され、画像処理により計測した平均層間距離または平均粒子間距離が8nm以上、100nm以下であるものが好ましい。中でも、平均層間距離または平均粒子間距離が10nm以上、50nm以下がより好ましく、最も好ましくは15nm以上、30nm以下である。透過型電子顕微鏡によって相分離構造が観察されない、または、平均層間距離または平均粒子間距離が8nm未満である場合には、イオンチャンネルの連続性が不足し、伝導度が不足する場合がある。また、層間距離が5000nmを越える場合には、ガス透過性が不良となる場合がある。
本発明に用いるブロック共重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、10万〜100万であることが好ましく、より好ましくは10万〜50万である。10万未満では、成型した触媒層にクラックが発生するなど機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分な場合がある。一方、100万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になる傾向がある。
また、本発明のブロック共重合体の重量平均分子量/数平均分子量は4.0以下であることが好ましい。4.0を超えると、低分子量体の割合が高まり、クラックが発生するなど機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分となる場合がある。
本発明に用いるブロック共重合体において、イオン性セグメントと非イオン性セグメントの含有量は、相分離構造を形成させる点で、それぞれ1個以上含有することが好ましく、より幅広い、イオン性セグメントと非イオン性セグメントのモル組成比で、共連続様またはラメラ様の相分離構造を発現させる点で、イオン性セグメントと非イオン性セグメントの合計で3個以上含有することが好ましく、4個以上含有することがより好ましい。合計が3個より少ない場合、海島構造やシリンダー構造が発現する場合があり、低加湿下でのプロトン伝導性、機械強度、物理的耐久性のいずれかが不十分な場合がある。
本発明に用いるブロック共重合体は、膜厚25μmの製膜状態での酸素透過係数が、80℃、湿度90%の条件において、5×10−10cm・cm・(cm・s・cmHg)−1以上であることが好ましく、1×10−9cm・cm・(cm・s・cmHg)−1以上であるものが特に好ましい。酸素透過係数が高いと、触媒層バインダとして用いた燃料電池において、燃料濃度が高い領域において高出力および高エネルギー容量が得られる。
また、膜厚25μmの製膜状態における、80℃湿度25RH%の大気中での単位体積あたりのプロトン伝導度が0.5mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましい。プロトン伝導性が0.5mS/cm以下の場合、プロトン伝導性が不十分となり、十分な発電性能が得られない場合がある。
さらに、膜厚25μmの製膜状態における引っ張り試験における破断強度は10MPa以上であることが好ましく、20MPa以上であることがより好ましく、50MPa以上であることがさらに好ましい。同様に、製膜状態における破断伸度は50%以上であるであることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、150%以上であることがさらに好ましい。引っ張り試験における破断強度が10MPa未満の場合、あるいは破断伸度が50%未満の場合、機械的強度が不十分になり、固体高分子型燃料電池の触媒層バインダとして使用した際にひび割れが生じたりして、物理的耐久性が不十分となる可能性がある。
本発明の高分子電解質はアノード及びカソードのいずれの触媒層のバインダにも用いることが出来る。本発明における触媒層に含まれる触媒は特に限定されないが、例えば、白金などの白金族金属又はその合金などをカーボン担体に担持した触媒が好ましい。この場合、カーボン担体は特に限定されないが、比表面積が200m/g以上のカーボン材料が好ましく、例えば、カーボンブラックや活性炭などが好ましく使用される。
カソードの触媒層において、触媒と本発明の高分子電解質材料との質量比の範囲は、触媒の質量(金属とカーボン担体をあわせた全質量):本発明の高分子電解質材料の質量=20:80〜95:5であることが好ましく、30:70〜90:10であることがより好ましい。高分子電解質材料に対する触媒の含有率が低すぎると、触媒量が不足するので反応サイトが少なくなる傾向があるほか、触媒が高分子電解質により厚く被覆され、触媒層中における反応ガスの拡散速度が小さくなりやすい。さらに、反応ガスの拡散に必要な細孔が樹脂により塞がれてフラッディングの現象が生じ易くなるおそれがある。一方、含高分子電解質材料に対する触媒の含有率が高すぎると、触媒が高分子電解質により十分に被覆されないため、反応サイトが少なくなり、白金族金属触媒を有効に用いることができなくなる。さらに、高分子電解質材料は、触媒層と高分子電解質膜との接着剤としても機能するが、高分子電解質の量が不足するとその機能が不十分となり、触媒層構造を安定に維持できなくなるおそれがある。
アノード及びカソードの触媒層の層厚は、1〜500μmであることが好ましく、3〜50μmであることがより好ましい。さらに、触媒層には、必要に応じてポリテトラフルオロエチレンなどの撥水化剤を含有させてもよい。ただし、撥水化剤は絶縁体であるためその量は少量であるほど望ましく、その添加量は30質量%以下が好ましい。
また、本発明の固体高分子型燃料電池に使用する高分子電解質膜は、湿潤状態下で良好なイオン伝導性を示すイオン交換膜であれば特に限定されない。高分子電解質膜を構成する固体高分子材料としては、例えば、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸系ポリマーを用いてもよく、炭化水素系高分子電解質材料を用いてもよいが、炭化水素系高分子電解質膜であることが好ましい。
本発明のガス拡散電極は、高分子電解質材料と触媒とが溶媒又は分散媒に溶解又は分散した塗工液を用いて作製することが好ましい。ここで、溶媒または分散剤に溶解又は分散させる高分子電解質はイオン性基が塩型の状態の高分子電解質をもちいてもよく、イオン性基が負電荷を有する原子団の場合、酸型の状態の高分子電解質を用いてもよい。
溶媒又は分散媒としては、例えば複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセタミド等)、水等が好ましく用いられ、この中でも複素環化合物、アルコール類、多価アルコール類、アミド類が好ましく用いられる。分散法は攪拌による方法でも良いが、超音波分散、ボールミル等を用いることもできる。
そして、塗工液を高分子電解質膜又はガス拡散層となるカーボンクロスなどに塗工することにより触媒層が形成される。また、別途用意した基材に上記塗工液を塗工して塗工層を形成し、これを高分子電解質膜上に転写することによっても高分子電解質膜上に触媒層を形成した触媒層付電解質膜(CCM)を作製できる。イオン性基として負電荷を有する原子団を有する高分子電解質において、イオン性基が塩型の状態の塗工液を作製、触媒層もしくはCCMを作製した場合は、触媒層もしくはCCMを酸性水溶液に浸漬する事によりプロトン置換することが出来る。
ここで、触媒層をガス拡散層上に形成した場合には、触媒層と高分子電解質膜とを接着法やホットプレスなどにより接合し、電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)、すなわち電極−電解質膜接合体(MEA)作製することが好ましい。また、CCMを形成した場合には、触媒層のみでガス拡散電極を構成してもよいが、さらに触媒層に隣接してガス拡散層を配置し、MEAを作製してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各物性の測定条件は次の通りである。
(1)純度の測定方法
下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)により定量分析した。
カラム:DB−5(J&W社製) L=30m Φ=0.53mm D=1.50μm
キャリヤー:ヘリウム(線速度=35.0cm/sec)
分析条件
Inj.temp. 300℃
Detct.temp. 320℃
Oven 50℃×1min
Rate 10℃/min
Final 300℃×15min
SP ratio 50:1
(2)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
下記の測定条件で、1H−NMRの測定を行い、構造確認、およびイオン性セグメントと非イオン性セグメントのモル組成比の定量を行った。該モル組成比は、8.2ppm(ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン由来)と6.5〜8.0ppm(ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを除く全芳香族プロトン由来)に認められるピークの積分値から算出した。
装置 :日本電子社製EX−270
共鳴周波数 :270MHz(1H−NMR)
測定温度 :室温
溶解溶媒 :DMSO−d6
内部基準物質:TMS(0ppm)
積算回数 :16回
また、下記の測定条件で、固体13C−CP/MASスペクトルの測定を行った。
装置 :Chemagnetics社製CMX−300Infinity
測定温度 :室温
内部基準物質:Siゴム(1.56ppm)
測定核 :75.188829MHz
パルス幅 :90°パルス、4.5μsec
パルス繰り返し時間:ACQTM=0.03413sec、PD=9sec
スペクトル幅:30.003kHz
試料回転 :7kHz
コンタクトタイム:4msec
(3)数平均分子量、重量平均分子量
ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1wt%、流量0.2mL/minの条件で測定した。
[合成例1]
下記一般式(G1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(K−DHBP)の合成
Figure 2018101469
攪拌器、温度計及び留出管を備えた500mLフラスコに、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mLを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.8%の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランと0.2%の4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
[合成例2]
下記一般式(G2)で表されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成
Figure 2018101469
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO3)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。構造は1H−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
[合成例3]
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa1の合成)
Figure 2018101469
(式(G3)において、Mは、NaまたはKを表す。またnは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP 12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン39.3g(93mmol)、および18−クラウン−6 、17.9g(和光純薬82mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G3)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーA1a(末端OM基)を得た。数平均分子量は16000であった。
[合成例4]
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa2の合成)
Figure 2018101469
(式(G4)において、Mは、NaまたはKを表す。またnは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP 12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、ソジウム 5,5’−スルホニルビス(2−フルオロベンゼンスルホネート)42.6g(93mmol)、および18−クラウン−6 、17.9g(和光純薬82mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G3)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーA1b(末端OM基)を得た。数平均分子量は16600であった。
[実施例1]
(下記一般式(G5)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーb1の合成)
Figure 2018101469
(式(G5)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、 4,4’−(デカン−1,1−ジイル)ジフェノール 32.6g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、97mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーb1(末端OM基)を得た。尚、MはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。数平均分子量は19000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーb1(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、上記式(G5)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーb1’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は20200であり、イオン性基を含有しないオリゴマーb1’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値19600と求められた。
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa1、非イオン性セグメントとしてオリゴマーb1’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックコポリマーc1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーb1’(末端フルオロ基)11g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーc1を得た。重量平均分子量は34万であり、分子量分布は2.7であった。
[実施例2]
(下記一般式(G6)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーb2の合成)
Figure 2018101469
(式(G6)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、 4,4’−(シクロドデカン−1,1−ジイル)ジフェノール 35.2g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、97mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーb2(末端OM基)を得た。尚、MはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。数平均分子量は19200であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーb2(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、上記式(G6)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーb2’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は20300であり、イオン性基を含有しないオリゴマーb2’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値19670と求められた。
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa1、非イオン性セグメントとしてオリゴマーb2’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックコポリマーc2の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーb3’(末端フルオロ基)21g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーc2を得た。重量平均分子量は40万であり、分子量分布は2.9であった。
[実施例3]
(下記一般式(G7)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーb3の合成)
Figure 2018101469
(式(G7)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、 4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール 31.0g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、97mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーb3(末端OM基)を得た。尚、MはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。数平均分子量は19400であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーb3(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、上記式(G7)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーb3’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は20400であり、イオン性基を含有しないオリゴマーb3’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値19770と求められた。
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa1、非イオン性セグメントとしてオリゴマーb3’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックコポリマーc3の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーb3’(末端フルオロ基)21g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーc3を得た。重量平均分子量は36万であり、分子量分布は2.8であった。
[実施例4]
(下記一般式(G8)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーb4の合成)
Figure 2018101469
(式(G8)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、 4,4’−(アダマンタン−2,2−ジイル)ジフェノール 32.0g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、97mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーb4(末端OM基)を得た。尚、MはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。数平均分子量は19900であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーb4(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、上記式(G8)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーb4’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は20800であり、イオン性基を含有しないオリゴマーb4’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値20170と求められた。
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa1、非イオン性セグメントとしてオリゴマーb4’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックコポリマーc4の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーb4’(末端フルオロ基)21g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーc4を得た。重量平均分子量は42万であり、分子量分布は3.2であった。
[実施例5]
(下記一般式(G9)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーb5の合成)
Figure 2018101469
(式(G9)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、 4,4’−(アダマンタン−2,2−ジイル)ジフェノール 32.0g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾスルホン24.7g(東京化成試薬、97mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーb5(末端OM基)を得た。尚、MはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。数平均分子量は19700であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーb5(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、上記式(G8)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーb5’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は20700であり、イオン性基を含有しないオリゴマーb5’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値20070と求められた。
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa1、非イオン性セグメントとしてオリゴマーb5’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックコポリマーc5の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーb5’(末端フルオロ基)21g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーc5を得た。
重量平均分子量は25万であり、分子量分布は2.5であった。
[実施例6]
イオン性基を含有するオリゴマーa1の代わりにオリゴマーa2を使用した以外は、実施例6と同様にして、ブロックコポリマーc6を得た。
重量平均分子量は24万であり、分子量分布は2.6であった。
[比較例1]
(下記一般式(G10)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーb7の合成)
Figure 2018101469
(式(G10)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン 25.8g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン21.4g(アルドリッチ試薬、98mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーb7(末端OM基)を得た。尚、MはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。数平均分子量は19800であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーb8(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、上記式(G8)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーb8’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は21000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーb7’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値20370と求められた。
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa1、非イオン性セグメントとしてオリゴマーb7’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロックコポリマーc7の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーb7’(末端フルオロ基)21g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーc7を得た。
重量平均分子量は36万であり、分子量分布は2.8であった。

Claims (9)

  1. イオン性基を含有するセグメントと、総炭素数7以上の脂肪族炭化水素側鎖(α)を有するイオン性基を含有しないセグメントをそれぞれ1個以上含有する芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体からなる高分子電解質材料。
  2. 前記イオン性基を含有しないセグメントにおける前記脂肪族炭化水素基(α)の含有重量が15質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載の高分子電解質材料。
  3. 前記イオン性基を含有するセグメントが、主鎖中に下記一般式(S1)で表される構成単位を含有し、前記イオン性基を含有しないセグメントが、下記一般式(S2)で表される構成単位を含有する、請求項1または2に記載の高分子電解質材料。
    Figure 2018101469
    (一般式(S1)中、Xは直接結合、−CO−および−SO−からなる群より選ばれた1種の構造を表し、Yは直接結合、−CO−および−SO−からなる群より選ばれる1種の構造を表す。Ar〜Arは各々独立に任意に置換されていても良い2価のアリーレン基を表し、Ar、Arの少なくとも一方はイオン性基を有し、Ar、Arはイオン性基を有していても有していなくても良い。*は一般式(S1)または他の構成単位との結合部位を表す。)
    Figure 2018101469
    (一般式(S2)中、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい、イオン性基を有しない2価のアリーレン基を表す。Zはそれぞれ独立して下記一般式(C−1)で表される構造単位、(C−2)で表される構造単位、(C−3)で表される構造単位、直接結合、−CO−および−SO−からなる群より選ばれる1種の構造を表し、Zのうち少なくとも一つは下記一般式(C−1)で表される構造単位、下記一般式(C−2)で表される構造単位または下記一般式(C−3)で表される構造単位である。*は一般式(S2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
    Figure 2018101469
    (一般式(C−1)中、RおよびRは、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、または水素原子であり、RとRの炭素数の和は7以上である。)
    Figure 2018101469
    (一般式(C−2)中、Rは、直鎖状、環状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であり、fは0〜10の整数であり、eは1〜10の整数であり、eと(Rの炭素数×f)の合計は7以上である。)
    Figure 2018101469
    (一般式(C−3)中、Rは、炭素数7〜20の2価の多環型脂環式炭化水素基である。)
  4. 前記芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体の重量平均分子量が10万〜100万である、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質材料。
  5. 膜厚25μmに製膜した状態での酸素透過性が5×10−10cm・cm・(cm・s・cmHg)−1以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質材料。
  6. 膜厚25μmに製膜した状態での80℃湿度25RH%の大気中における単位体積あたりのプロトン伝導度が0.5mS/cm以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質材料。
  7. 膜厚25μmに製膜した状態において、引っ張り試験により測定した破断強度が10Mpa以上、破断伸度が50%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質材料。
  8. 前記芳香族ポリエーテル系ブロック共重合体が、前記イオン性基を含有するセグメントと前記イオン性基を含有しないセグメントを連結するリンカー部位を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質材料。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質材料を含む触媒層が高分子電解質膜の表面に形成されてなる触媒層付電解質膜。
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