JP2015008060A - 電解質膜、膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池 - Google Patents

電解質膜、膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】発電性能、撥水性、電極との密着性および乾湿サイクル時の寸法安定性にバランスよく優れる電解質膜を提供すること。【解決手段】親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とを有する重合体(1)、および、前記重合体(1)とは異なる、スルホン酸基を有さない重合体(2)を含有し、前記重合体(2)が、前記セグメント(B1)と相溶する疎水性セグメント(B1')と、重合体(2)全体に対し0〜50重量%の、前記セグメント(B1')とは異なる疎水性セグメント(B2)とを含む、水接触角が45〜120?である電解質膜。【選択図】なし

Description

本発明は、電解質膜、膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池に関する。
燃料電池は、各種の炭化水素系燃料(天然ガス、メタンなど)を改質して得られる水素ガスと、空気中の酸素ガスとを電気化学的に反応させて直接電気を取り出す発電装置であり、化学エネルギーを電気エネルギーに高効率で直接変換できる無公害な発電装置として注目を集めている。
このような燃料電池は、触媒を担持した一対の電極膜(アノード極とカソード極)と該電極膜に挟持されたプロトン伝導性の固体高分子電解質膜とから構成される。アノード極では、水素イオンと電子が生じ、水素イオンは固体高分子電解質膜を通って、カソード極で酸素と反応して水が生じる。
前記固体高分子電解質膜としては、Nafion(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成工業(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)の商品名で市販されているスルホン酸基を有する全フッ化炭素系高分子電解質膜;ポリ芳香族炭化水素系、ポリエーテルエーテルケトン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリイミド系またはポリベンザゾール系などの芳香環を主鎖骨格に有し、スルホン酸基を有する高分子電解質膜;等が一般的に使用されている。
燃料電池では、発電等により乾湿変化が生じるが、前記従来の電解質膜を用いた場合には、この乾湿変化時に、電解質膜の有する機能等が低下したり、寸法等が変化することが知られている。
このような乾湿変化時の電解質膜の機能の低下を防ぐために、特許文献1には、それぞれ主鎖に芳香環を有し、スルホン酸基を含有する親水性セグメントとスルホン酸基を含有しない疎水性セグメントとからなるブロック共重合体、および、スルホン酸基を含有せず、前記ブロック共重合体の疎水性セグメントに含まれる構造単位と同じ構造単位を含有する芳香族高分子からなる電解質膜が開示されている。
特開2007−56147号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載の電解質膜は、乾湿サイクル時の寸法安定性が十分ではなく、また、電極との密着性に劣るため、耐久性等に優れる燃料電池を得ることは容易ではなかった。
さらに、前記特許文献1に記載の電解質膜を燃料電池に用いた場合、フラッディングが生じ、燃料電池の発電性能が低下する傾向にあった。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、発電性能、撥水性、電極との密着性および乾湿サイクル時の寸法安定性にバランスよく優れる電解質膜を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意研究した。その結果、特定の構造を有する少なくとも2種類の重合体を含み、水接触角が特定の範囲にある電解質膜によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の態様は、以下[1]〜[10]に示すことができる。
[1] 親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とを有する重合体(1)、および、
前記重合体(1)とは異なる、スルホン酸基を有さない重合体(2)を含有し、
前記重合体(2)が、前記セグメント(B1)と相溶する疎水性セグメント(B1')と、重合体(2)全体に対し0〜50重量%の、前記セグメント(B1')とは異なる疎水性セグメント(B2)とを含む、
水接触角が45〜120°である電解質膜。
[2] 前記疎水性セグメント(B2)が、下記式(3)で表される構造単位を含むセグメントである、[1]に記載の電解質膜。
[式(3)中、
AおよびDはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基またはフルオレニリデン基を示し、
Bは独立に、酸素原子または硫黄原子を示し、
1〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(Eは、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−CONH−、−COO−、−CF2−、−CH2−、−C(CF32−または−C(CH32−を示し;R22は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基または含窒素複素環を示し、これらの基の少なくとも1つの水素原子は、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基およびR22−E−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)を示し、
1〜R16のうちの複数が結合して環構造を形成してもよく、
sおよびtはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
[3] 前記重合体(2)が疎水性の末端構造を有する、[1]または[2]に記載の電解質膜。
[4] 前記疎水性の末端構造が、下記式(4)で表される構造である、[3]に記載の電解質膜。
[式(4)中、
Gは独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基、または、フルオレニリデン基を示し、
41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基、パーフルオロアルキル基、または、R22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(3)中のEおよびR22と同義である。)を示し、
hは独立に0〜4の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、mは0または1以上の整数を示す。ただし、G、R41およびR42のうち少なくとも1つは疎水性基である。]
[5] 前記疎水性セグメント(B1)が、芳香環を含み、2つの結合手を有するセグメントであり、
1つの芳香環に前記2つの結合手の両方が結合した、または、
1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した、
セグメントである、[1]〜[4]のいずれかに記載の電解質膜。
[6] 前記疎水性セグメント(B1)が、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むセグメントである、[1]〜[5]のいずれかに記載の電解質膜。
[式(1)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、
21は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(3)中のEおよびR22と同義である。)を示し、複数のR21が結合して環構造を形成してもよく、
1およびc2は独立に、0または1以上の整数を示し、dは1以上の整数を示し、eは独立に、0〜(2c1+2c2+4)の整数を示す。]
[式(2)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、
31は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(3)中のEおよびR22と同義である。)を示し、複数のR31が結合して環構造を形成してもよく、
fは0または1以上の整数を示し、gは0〜(2f+4)の整数を示す。]
[7] 前記親水性セグメント(A1)が、スルホン酸基および芳香環を有し、2つの結合手を有するセグメントであり、
1つの芳香環に前記2つの結合手の両方が結合した、または、
1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した、
セグメントである、[1]〜[6]のいずれかに記載の電解質膜。
[8] 前記親水性セグメント(A1)が、下記式(5)で表される構造単位を含むセグメントである、[1]〜[7]のいずれかに記載の電解質膜。
[式(5)中、Ar11、Ar12およびAr13はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトリル基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基もしくは炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環または含窒素複素環を有する芳香族基を示し、
YおよびZはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2u−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である。)、−C(CH32−または−C(CF32−を示し、
17は独立に、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−または−(CF2p−(pは1〜12の整数である。)を示し、
18およびR19はそれぞれ独立に、水素原子または保護基を示し(但し、式(5)中に含まれる全てのR18およびR19のうち少なくとも1個は水素原子である。)、
1は独立に、0〜6の整数を示し、x2は1〜7の整数を示し、
aは0または1を示し、bは0〜20の整数を示す。]
[9] ガス拡散層、触媒層、[1]〜[8]のいずれかに記載の電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
[10] [9]に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
本発明によれば、発電性能、撥水性、電極との密着性および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる透明電解質膜を得ることができる。
また、本発明によれば、透明電解質膜を得ることができるため、当該透明電解質膜を電池等に使用した際に、該電池等に含まれ得る異物を容易に見つけ出すことができる。
さらに、このような電解質膜を燃料電池に用いることで、フラッディングを抑制することができ、発電性能および耐久性等に優れる燃料電池を得ることができる。
図1は、実施例1で得られた電解質膜の一部の3D−TEM画像である。 図2は、比較例1で得られた電解質膜の一部の3D−TEM画像である。
≪電解質膜≫
本発明の電解質膜は、水接触角が45〜120°であり、
親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とを有する重合体(1)、および、
前記重合体(1)とは異なる、スルホン酸基を有さない重合体(2)を含有し、
前記重合体(2)が、前記セグメント(B1)と相溶する疎水性セグメント(B1')と、重合体(2)全体に対し0〜50重量%の、前記セグメント(B1')とは異なる疎水性セグメント(B2)とを含む。
このような電解質膜は、透明性、発電性能、撥水性、電極との密着性および乾湿サイクル時の寸法安定性にバランスよく優れる。
本発明の電解質膜は、含まれる重合体(1)と重合体(2)とが、それぞれ疎水性セグメント(B1)と該セグメントと相溶する疎水性セグメント(B1')を有するため、電解質膜中の疎水性セグメントが相分離せず、疎水性セグメントが連続した電解質膜となる。従って、特に、透明性および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜となる。
なお、本発明の電解質膜は、重合体(2)の添加により、親水性セグメントの連続性があまり阻害されないため、発電性能を低下させずに、撥水性、電極との密着性および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜を得ることができる。
また、本発明によれば、親水相と疎水相とが互いに独立して連続した共連続構造を有する電解質膜を得ることができる。このような共連続構造は、例えば、電解質膜を3次元透過型電子顕微鏡(3D−TEM)により測定した際の、親水相および疎水相のモルホロジーを目視で観察することにより、判断することができる。
このような共連続構造は、具体的には、親水相と疎水相とがそれぞれ連続しているモルホロジーとして3D−TEM画像に現れる。なお、前記共連続構造は、3D−TEM画像において、島部と海部とがそれぞれある程度連続していればよく、島部の一部がつながっていなくても共連続構造という。
本発明の電解質膜が共連続構造を有することで、特に、発電性能および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜となる。
これは、親水相が連続していることにより、その連続している方向へのプロトン伝導度が高くなり、発電性能に優れる電解質膜が得られると考えられる。親水相は、より発電性能に優れる電解質膜が得られる等の点から、前記海島構造の海部を形成することが好ましく、少なくとも本発明の電解質膜の厚み方向に連続していることがより好ましい。
また、疎水相も連続していることにより、特に、乾湿サイクル時の膨潤を低減することができると考えられる。疎水相は、より乾湿サイクル時の膨潤を低減することができる等の点から、前記海島構造の島部を形成することが好ましい。
さらに、電解質膜が前記共連続構造を有していることにより、プロトン伝導性と、乾湿サイクル時の寸法安定性等とが異なる相に機能分離されてより効率的に各機能が発揮され、本発明の電解質膜はこれらの物性に優れたものとなる。
なお、前記親水相は、親水性セグメント(A1)等から形成され、前記疎水相は、疎水性セグメント(B1)、(B1')および(B2)等から形成される。
本発明の電解質膜(表面)の水接触角は、好ましくは50〜120°であり、より好ましくは50〜110°であり、さらに好ましくは50〜100°である。
前記水接触角の値は、例えば、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
電解質膜の水接触角の値が前記範囲にあると、撥水性および電極との密着性に優れる電解質膜となる。
このような電解質膜を、使用時に水が生成するような系、特に、燃料電池に用いる場合には、その表面の撥水性により、フラッディングを抑制することができ、また、電極との密着性に優れることにより、例えば、発電性能および耐久性等に優れる燃料電池を得ることができる。
本発明の電解質膜は、透明な電解質膜であることが好ましい。この透明な電解質膜とは、電解質膜を膜厚方向に見た場合、その先にあるものが透けて見えればよく、着色していてもよい。好ましくは、C光源を用いたダブルビーム法により透過率を測定した際、電解質膜の膜厚方向の透過光の拡散透過率(Td)と全光線透過率(Tt)との関係(Td/Tt×100)が4以下、より好ましくは3以下となるような電解質膜である。この透過率は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の電解質膜は、後述する実施例に記載の方法と同様の方法で測定したイオン交換容量が、好ましくは0.5〜5.0meq/g、より好ましくは1.4〜3.8meq/gである。イオン交換容量が前記範囲にあると、プロトン伝導性および耐水性に優れ、かつ発電性能の高い電解質膜を得ることができるため好ましい。
本発明の電解質膜は、後述する実施例に記載の方法で測定した比抵抗が5〜40Ω・cmであることが好ましく、5〜20Ω・cmであることがより好ましい。比抵抗が前記範囲内にあると、プロトン伝導性に優れる電解質膜といえ、発電性能に優れる電解質膜を得ることができる。
本発明の電解質膜は、後述する実施例に記載の、95℃の熱水に24時間浸漬時の膨潤率が0〜15%であることが好ましく、0〜10%であることがより好ましい。膨潤率が前記範囲内にあると、乾湿サイクル耐性に優れる電解質膜といえ、耐久性に優れる電解質膜となるため、該電解質膜を電池等に用いた時に、耐久性に優れる電池等を得ることができる。
本発明の電解質膜は、その乾燥膜厚が、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmである。本発明の電解質膜が積層膜や補強された電解質膜である場合でも、これらの厚みは、この範囲にあることが好ましい。
<重合体(1)>
前記重合体(1)は、親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とを有する。この重合体(1)は、ブロック重合体であってもよく、ランダム重合体であってもよいが、より発電性能および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜が得られる等の点から、親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とのブロック共重合体が好ましい。
また、親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とは結合基を介さずに直接結合で連続していることが好ましい。例えば、親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)との間に結合基が存在し、該結合基がエーテル結合(−O−)であると、得られる電解質膜のラジカル耐性が劣り、該膜の劣化が起こりやすくなる傾向がある。
ここで、ブロック共重合体は、親水性セグメントと疎水性セグメントとが主鎖構造を形成している主鎖型の共重合体に加え、一方のセグメントが主鎖構造を形成し、他方のセグメントが側鎖構造を形成しているグラフト型の共重合体も含む。なお、ブロック共重合体は、ジブロック体であっても、トリブロック体であっても、それ以上のセグメントが連結したものであってもよい。
前記重合体(1)における各セグメントの量は、該重合体のイオン交換容量および数平均分子量などの所望の性状に応じて決定される。
前記セグメント(A1)および(B1)の合計量を100重量%とした場合、前記セグメント(A1)の量が、好ましくは15〜95重量%、より好ましくは25〜85重量%、特に好ましくは35〜75重量%であり、前記セグメント(B1)の量が、好ましくは5〜85重量%、より好ましくは15〜75重量%、特に好ましくは25〜65重量%である。
セグメント(A1)および(B1)となる原料化合物の使用量を調整することで、各セグメントの量が前記範囲にある重合体を得ることができ、これら原料化合物の使用量から、重合体(1)中の各セグメントの量を確認できる。
本発明において、セグメントとは、当該セグメントを構成する構造単位が3個以上連結しているオリゴマーユニットまたはポリマーユニットを意味し、当該セグメントを構成する構造単位が5個以上連結していることが好ましく、10個以上連結していることがより好ましい。
前記重合体(1)の数平均分子量は、好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜30万である。前記範囲内であると得られる電解質膜の熱水耐性が向上する傾向にあるため好ましい。なお、数平均分子量の測定方法は下記実施例に記載の通りである。
前記重合体(1)のイオン交換容量は、好ましくは0.5〜5.0meq/g、より好ましくは1.4〜3.8meq/gである。イオン交換容量が前記範囲内にあると、プロトン伝導性および発電性能に優れ、かつ、充分に高い耐水性を有する電解質膜を得ることができる。なお、イオン交換容量の測定方法は下記実施例に記載の通りである。
前記イオン交換容量は、各セグメントの種類、使用割合および組み合わせ等を変えることにより、調整することができる。すなわち、重合時に各セグメントを構成する前駆体(モノマー・オリゴマー)の仕込み量比や種類を変えれば調整することができる。概して、プロトン伝導性基を含むセグメントが多くなるとイオン交換容量が増え、プロトン伝導性が高くなるが、耐水性が低下する傾向にあり、一方、プロトン伝導性基を含むセグメントが少なくなると、イオン交換容量が小さくなり、耐水性が高まるが、プロトン伝導性が低下する傾向にある。
〈親水性セグメント(A1)〉
親水性セグメント(A1)としては、親水性を示すセグメントであれば特に制限されないが、例えば、主鎖に芳香環を有し、スルホン酸基などのプロトン伝導性基を含有する親水性セグメントが挙げられ、発電性能および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜が得られる等の点から、好ましくは、スルホン酸基および芳香環を含み、2つの結合手を有するセグメントであり、1つの芳香環に当該2つの結合手の両方が結合した、または、1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した、セグメントである。
親水性セグメント(A1)が、このようなセグメントであると、従来の重合体を用いた場合に比べ、親水性セグメントの連続性が高く、プロトン伝導度の高い電解質膜が得られる傾向にある。
親水性セグメント(A1)は、1種類の構造単位のみからなってもよく、2種類以上の構造単位を含んでもよい。
なお、ここでいう、芳香環、芳香環(a)および芳香環(b)は、プロトン伝導性基、ハロゲン原子、ニトリル基またはR23−E'−(E'は、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−CONH−、−COO−、−CF2−、−CH2−、−C(CF32−または−C(CH32−を示し;R23は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基または含窒素複素環を示し、これらの基の少なくとも1つの水素原子は、さらにプロトン伝導性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基およびR23−E'−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)等で置換されていてもよい。
前記R23における、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基およびハロゲン化アリール基としては、ぞれぞれ、下記Ar11、Ar12およびAr13の置換基における炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および、炭素数6〜20のハロゲン化芳香族炭化水素基で例示する基と同様の基等が挙げられる。
また、前記R23における含窒素複素環としては、下記Ar11、Ar12およびAr13における含窒素複素環で例示する環と同様の環等が挙げられる。
前記R23としては、プロトン伝導性基で置換されたアリール基が好ましい。
E'としては、重合時の重合活性が高いことなどからカルボニル基が好ましい。
親水性セグメント(A1)としては、当該セグメントを構成する構造単位1個に対して、平均0.5個以上のプロトン伝導性基を有するセグメントが好ましく、発電性能に優れる電解質膜が得られる等の点からは、構造単位1個に対して平均1.0個以上のプロトン伝導性基を有することが好ましく、構造単位1個に対して平均2.0個以上のプロトン伝導性基を有することがより好ましい。
本発明におけるプロトン伝導性基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、ビススルホニルイミド基などが挙げられ、スルホン酸基が好ましい。
前記親水性セグメント(A1)の数平均分子量は、好ましくは1500〜20000、より好ましくは2500〜10000である。前記範囲内であるとプロトン伝導度の高い電解質膜が得られるため好ましい。なお、数平均分子量の測定方法は下記実施例に記載の通りである。
前記1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した構造とは、例えば、下記式(i)で表される構造のことを意味する。
[式(i)中、Ar、AraおよびArbはそれぞれ独立に、プロトン伝導性基、ハロゲン原子またはR23−E'−(E'およびR23はそれぞれ独立に、前記E'およびR23と同義である。)で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環または含窒素複素環を有する芳香族基を示し、wは0または正の整数を示す。ただし、Ar、AraおよびArbの少なくとも1つは、プロトン伝導性基を有する。]
Ar、AraおよびArbにおける、縮合芳香環および含窒素複素環としては、それぞれ下記Ar11、Ar12およびAr13における、縮合芳香環および含窒素複素環と同様の環などが挙げられる。
前記1つの芳香環に2つの結合手の両方が結合した場合であって、該芳香環がベンゼン環である場合、該ベンゼン環に結合する結合手同士の位置がパラ位の構造単位およびメタ位の構造単位の合計の数を100%とすると、得られる電解質膜のプロトン伝導度が向上する等の点から、メタ位の構造単位が10%以上含まれることが好ましく、50%以上含まれることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
親水性セグメント(A1)は、親水性セグメントの連続性が高く、プロトン伝導度が高い電解質膜が得られるなどの点から、下記式(5)で表される構造単位(以下「構造単位(5)」ともいう。)を含むセグメントであることが好ましく、構造単位(5)からなるセグメントであることがより好ましい。
式(5)中、Ar11、Ar12およびAr13はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトリル基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基もしくは炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環または含窒素複素環を有する芳香族基を示す。
なお、例えば、bが2以上の場合、構造単位(5)は、複数のZを有するが、当該複数のZは、同一であっても異なっていてもよい。同様のことは、この式中の他の符号においても、他の式中の符号においても同様である。
また、前記式(5)中、構造単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないもの(本発明において、「結合手」ともいう。)は隣り合う構造単位との接続部位を示す。本明細書中、同様の記載は同様の意味を有する。つまり、2価の構造単位とは、結合手を2つ有する構造単位のことをいう。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
前記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、テトラメチルブチル基、アミル基、ペンチル基、ヘキシル基およびオクチル基などの炭素数1〜20のアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ビニル基、アリル基およびプロペニル基などの炭素数2〜20のアルケニル基などが挙げられる。
前記炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜20のハロゲン化シクロアルキル基および炭素数6〜20のハロゲン化芳香族炭化水素基などが挙げられる。前記ハロゲン化アルキル基としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタブロモエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基およびパーフルオロヘキシル基などが挙げられ;前記ハロゲン化シクロアルキル基としては、クロロシクロペンチル基、フルオロシクロペンチル基、クロロシクロヘキシル基およびフルオロシクロヘキシル基などが挙げられ;前記ハロゲン化芳香族炭化水素基としては、クロロフェニル基、クロロナフチル基、フルオロフェニル基およびフルオロナフチル基などが挙げられる。
前記縮合芳香環としては、ナフタレン環、フルオレン環、ジベンゾフラン環およびジベンゾチオフェン環などが挙げられる。
前記含窒素複素環としては、窒素原子を含む5員環、6員環構造が挙げられる。また、複素環内の窒素原子の数は、1個以上あれば特に制限されず、複素環内には、窒素以外に、酸素原子や硫黄原子を含んでいてもよい。具体例としては、1H−ピロール環、2H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、イソインドール環、3H−インドール環、1H−インドール環、1H−インダゾール環、プリン環、4H−キノリジン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナントリジン環、アクリジン環、ペリミジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フラザン環、フェノキサジン環、ピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、インドリン環、イソインドリン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、1,3,5−トリアジン環、テトラゾール環、テトラジン環、トリアゾール環、フェナルサジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環が挙げられ、これらの中では、イミダゾール環、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環、トリアゾール環が好ましい。
Ar11は、ベンゼン環またはビフェニルであることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
YおよびZはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2u−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である。)、−C(CH32−または−C(CF32−を示し、これらの中では、直接結合、−O−、−CO−、SO2−または−(CF2u−が好ましい。
17は独立に、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−または−(CF2p−(pは1〜12の整数を示す。)を示し、これらの中では、直接結合、−O(CF2p−、−(CF2p−が、プロトン伝導性の点で好ましい。pは、1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数が好ましい。
18およびR19はそれぞれ独立に、水素原子または保護基を示す。ただし、前記構造単位(5)中に含まれる全てのR18およびR19のうち少なくとも1個は水素原子である。
前記保護基とは、反応性の基(−SO3−または−SO3 -)を一時的に保護する目的で使用されるイオン、原子または原子団等のことをいう。具体的には、アルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基、脂環基、含酸素複素環基および含窒素カチオンなどが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素基としては、前記Ar11、Ar12およびAr13の置換基における炭素数1〜20の1価の炭化水素基として例示した基と同様の基などが挙げられる。
前記脂環基としては、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基などが挙げられる。
前記含酸素複素環基としては、フラン、テトラヒドロフラン、ラクトンなどが挙げられる。
含窒素カチオンとしては、アンモニアカチオン、第1級アンモニウムカチオン、第2級アンモニウムカチオン、第3級アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオンおよびイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
18およびR19としては、これらの中では、水素原子または含窒素カチオンが好ましい。
1は独立に、0〜6の整数、好ましくは0〜4の整数、より好ましくは0〜2の整数を示し、x2は1〜7の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1または2を示し、aは0または1を示し、bは0〜20の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0または1、さらに好ましくは0を示す。
親水性セグメント(A1)は、下記式(5a)で表される構造単位(5a)または下記式(5b)で表される構造単位(5b)を含むセグメントであることがより好ましく、電解質膜中の親水性セグメントの連続性が高く、プロトン伝導度の高い電解質膜が得られるなどの点から、構造単位(5a)からなるセグメントであることがさらに好ましい。
式(5a)中、Raは独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基を示し、hは0〜3の整数、好ましくは0または1、より好ましくは0を示し、R17は独立に、前記式(5)中のR17と同義であり、kは1〜(4−h)の整数、好ましくは1または2を示す。
前記Raにおける炭素数1〜20の1価の炭化水素基および炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、前記式(5)の説明で例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基および炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
前記構造単位(5a)または構造単位(5a)の組み合わせとしては、例えば、下記の構造が挙げられる。
式(5b)中、YおよびZはそれぞれ独立に、前記式(5)中のYおよびZと同義であり、Arは−SO3H、−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3H(pは1〜12の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜4の整数を示す)で表される置換基を有する芳香族基を示し、mは0〜10の整数、好ましくは0または1、より好ましくは0を示し、nは0〜10の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0または1を示し、k'は1〜4の整数、好ましくは1または2を示す。
前記Arにおける芳香族基としては、ベンゼン環、縮合芳香環および含窒素複素環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する芳香族基が挙げられる。この縮合芳香環および含窒素複素環としては、それぞれ、前記Ar11、Ar12およびAr13における縮合芳香環および含窒素複素環で例示した環と同様の環等が挙げられる。
前記構造単位(5b)としては、例えば、下記の構造単位が挙げられる。なお、下記構造単位では、ベンゼン環に結合する2つの結合手の結合位置がパラ位の例を挙げたが、メタ位で結合する屈曲構造も同様に好ましく例示される。
親水性セグメント(A1)は、スルホン酸基を有する前記構造単位(5)以外にも、スルホン酸基以外のプロトン伝導性基を有する構造単位として、例えば、ホスホン酸基を有する構造単位(5')や、特開2011−089036号公報および国際公開第2007/010731号等に記載の含窒素複素環を有する芳香族系構造単位などを含んでもよい。
前記構造単位(5')としては、例えば、特開2011−108642号公報に記載の下記の構造単位が挙げられる。
〈疎水性セグメント(B1)〉
疎水性セグメント(B1)としては、疎水性を示すセグメントであれば特に制限されないが、当該セグメントを構成する構造単位1個に対して平均0.1個以下のプロトン伝導性基を有するセグメントが好ましく、熱水耐性や寸法安定性の観点からは、構造単位1個に対して平均0.05個以下のプロトン伝導性基を有するセグメントがより好ましく、プロトン伝導性基を全く有しないことがより好ましい。
親水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位のみからなってもよく、2種類以上の構造単位を含んでもよい。
前記疎水性セグメント(B1)の数平均分子量は、好ましくは2000〜20000、より好ましくは6000〜15000である。前記範囲内であると熱水耐性が高く、機械的強度に優れる電解質膜が得られるため好ましい。なお、数平均分子量の測定方法は実施例に記載の通りである。
また、疎水性セグメント(B1)としては、好ましくは、主鎖に芳香環を有し、スルホン酸基などのプロトン伝導性基を含有しない疎水性セグメントが挙げられ、熱水膨潤抑制に優れる電解質膜が得られる等の点から、好ましくは、芳香環を含み、2つの結合手を有するセグメントであり、1つの芳香環に当該2つの結合手の両方が結合した、または、1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した、セグメントである。
なお、ここでいう、芳香環、芳香環(a)および芳香環(b)は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、下記式(1)中のEおよびR22と同義である。)で置換されていてもよい。
前記1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した構造とは、例えば、下記式(i')で表される構造のことを意味する。
[式(i')中、Ar'、Ara1およびArb1はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、下記式(1)中のEおよびR22と同義である。)で置換されていてもよい、芳香環を示し、wは0または正の整数を示す。]
Ar'、Ara1およびArb1における、芳香環としては、それぞれ、ベンゼン環、または、前記Ar11、Ar12およびAr13における、縮合芳香環もしくは含窒素複素環(芳香環のみ)と同様の環などが挙げられる。
疎水性セグメント(B1)は、より熱水膨潤抑制に優れる電解質膜が得られるなどの点から、下記式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)および下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むセグメントであることが好ましく、構造単位(1)および構造単位(2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位からなるセグメントであることがより好ましい。
前記重合体(1)が構造単位(1)または(2)を含有することにより、該重合体の疎水性が著しく向上する。このため、従来と同様のプロトン伝導性を具備しながら、優れた熱水耐性を有する電解質膜を得ることができる。また、セグメント(B1)がニトリル基を含む場合は、靭性および機械的強度の高い電解質膜を製造できる。
親水性セグメント(A1)が前記式(i)で表される構造、特には、前記構造単位(5)からなるセグメントであり、疎水性セグメント(B1)が前記式(i')で表される構造、特には、構造単位(1)および/または構造単位(2)からなるセグメントである場合、親水相が海部を形成し、疎水相が島部を形成する電解質膜となる傾向にあるため、このような電解質膜は、発電性能および乾湿サイクル時の寸法安定性等の点から好ましい。
・構造単位(1)
疎水性セグメント(B1)が、構造単位(1)を含有することにより、該セグメント(B1)の剛直性が高くなり、かつ芳香環密度が高くなることで、得られる重合体(1)を含む電解質膜の熱水耐性、過酸化物に対するラジカル耐性、ガスバリア性、機械的強度および寸法安定性等を向上させることができる。
式(1)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、R21は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(Eは、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−CONH−、−COO−、−CF2−、−CH2−、−C(CF32−または−C(CH32−を示し;R22は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基または含窒素複素環を示し、これらの基の少なくとも1つの水素原子は、さらにヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基およびR22−E−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)を示し、複数のR21が結合して環構造を形成してもよい。
なお、R21がR22−E−であり、かつ、該R22がさらにR22−E−で置換される場合、複数のEは同一でも異なっていてもよく、複数のR22(ただし、置換によって生じる構造の差異を除く部分の構造)も同一でも異なっていてもよい。このことは、他の式中の符号においても同様である。
前記R22における、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基およびハロゲン化アリール基としては、ぞれぞれ、前記Ar11、Ar12およびAr13の置換基における炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および、炭素数6〜20のハロゲン化芳香族炭化水素基で例示した基と同様の基等が挙げられる。
また、前記R22における含窒素複素環としては、前記Ar11、Ar12およびAr13における含窒素複素環で例示した環と同様の環等が挙げられる。
複数のR21が結合して形成する環構造としては特に制限されないが、前記Ar11、Ar12およびAr13における置換基を有してもよい、芳香族基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基、および、R18およびR19おける含酸素複素環基などが挙げられる。
前記R22としては、アリール基が好ましい。
Eとしては、重合時の重合活性が高いことなどからカルボニル基が好ましい。
1およびc2は独立に0または1以上の整数、好ましくは0または1、より好ましくは0を示し、dは1以上の整数を示し、好ましくは1〜300の整数である。
eは独立に、0〜(2c1+2c2+4)の整数を示し、得られる重合体の溶解性の向上や軟化温度の低減による電極等との密着性の向上の点で1以上の整数が好ましい。
前記構造単位(1)または構造単位(1)の組み合わせとしては、たとえば、下記の構造単位が挙げられる。
これらの中でも、重合時の重合活性が高いこと、得られる重合体の溶剤への溶解性が高いこと、得られる電解質膜の軟化温度が低下することなどの点から、以下の構造を含む構造単位が好ましい。
前記疎水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位(1)を含んでもよく、2種類以上の構造単位(1)を含んでもよい。
・構造単位(2)
前記疎水性セグメント(B1)が構造単位(2)を含むと、過酸化物などに対するラジカル耐性が向上し、発電耐久性に優れる電解質膜が得られると考えられるため好ましい。
また、前記疎水性セグメント(B1)が構造単位(2)を含有することにより、該セグメント(B1)に適度な屈曲性(柔軟性)を付与することができ、得られる重合体を含む電解質膜の靭性を向上させることができる。
式(2)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、R31は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(1)中のEおよびR22と同義である。)を示し、複数のR31が結合して環構造を形成してもよい。
fは0または1以上の整数、好ましくは0または1、より好ましくは0を示し、gは0〜(2f+4)の整数を示す。ただし、式(2)で表される構造単位は、式(1)で表される構造単位以外の構造単位である。
なお、複数のR31が結合して形成する環構造としては特に制限されないが、前記複数のR21が結合して形成する環構造と同様の構造等が挙げられる。
31は、共重合時の重合活性が高いこと、得られる電解質膜の靭性および機械的強度が高くなることからニトリル基が好ましい。
前記構造単位(2)としては、例えば、下記の構造単位が挙げられる。
前記疎水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位(2)を含んでもよく、2種類以上の構造単位(2)を含んでもよい。
前記セグメント(B1)が構造単位(1)と前記構造単位(2)とを含むセグメントである場合、該セグメント(B1)は、構造単位(1)と構造単位(2)とがブロック共重合した構造でもよいが、下記式(b)で模式的に示すように、構造単位(1)と構造単位(2)とがランダム共重合した構造であることが、前記構造単位(1)および(2)による効果が十分に得られる点で好ましい。
式(b)中、Unit(1)は前記構造単位(1)を示し、Unit(2)は前記構造単位(2)を示し、yおよびzは、それぞれ3以上の整数を示し、randomという語句は、前記構造単位(1)と前記構造単位(2)とがランダム共重合していることを意味する。なお、前記構造単位(1)および(2)は、それぞれ2種以上の構造単位を含んでいてもよい。
前記セグメント(B1)が構造単位(1)と前記構造単位(2)とを含むセグメントである場合であって、前記セグメント(B1)において、前記構造単位(1)および(2)の合計量を100モル%とした場合、前記構造単位(1)の量が、好ましくは50〜99.9モル%、より好ましくは80〜99.9モル%、特に好ましくは90〜99.9モル%であり、前記構造単位(2)の量が、好ましくは0.1〜50モル%、より好ましくは0.1〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%である。
前記セグメント(B1)が構造単位(1)と前記構造単位(2)とを含むセグメントである場合であって、前記セグメント(B1)において、前記構造単位(1)および(2)の合計量を100重量%とした場合、前記構造単位(1)の量が、好ましくは33〜99重量%、より好ましくは80〜99重量%、特に好ましくは90〜99重量%であり、前記構造単位(2)の量が、好ましくは1〜67重量%、より好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
また、前記構造単位(1)の含有量は、前記セグメント(B1)100重量%に対しても、前記範囲にあることが好ましい。
前記構造単位(1)および(2)の割合が前記範囲内であることにより、上述した効果がより顕著なものとなる。
構造単位(1)および(2)となる原料化合物の使用量を調整することで、各構造単位の量が前記範囲にあるセグメントを得ることができ、これら原料化合物の使用量から、セグメント(B1)中の各構造単位の量を確認できる。
〈重合体(1)の合成方法〉
前記重合体(1)は、例えば、前記構造単位(5)となる化合物(V)と、前記構造単位(1)となる化合物(I)または前記構造単位(2)となる化合物(II)と、必要に応じて、その他の構造単位となる化合物とを共重合させ、必要によりスルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換する等の方法でプロトン伝導性基を導入することにより合成することができる。
また、重合体(1)は、前記構造単位(5)となるが、スルホン酸基もしくはスルホン酸エステル基が導入されていない化合物と、前記構造単位(1)となる化合物(I)または前記構造単位(2)となる化合物(II)と、必要に応じて、その他の構造単位となる化合物とを共重合させ、この重合体を、例えば、特開2001−342241号公報に記載の方法で、スルホン化剤を用いて、スルホン化することにより合成することもできる。
・化合物(V)
前記親水性セグメント(A1)は、重合原料として、例えば、下記式(V−a)または(V−b)で示される化合物(V)を使用することにより導入することができる。
前記式(V−a)中、Ra、R17、hおよびkはそれぞれ独立に、前記式(5a)中のRa、R17、hおよびkと同義であり、Z1は独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基またはトルエンスルホニルオキシ基を示し、Rbは独立に、−ORcで表わされる基(Rcは、炭素数1〜20の1価の有機基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、アルカリ金属原子または含窒素カチオンを示す。)、または、炭素数1〜20の炭化水素基および炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基から選ばれる少なくとも一種の基で置換されたアミノ基を示す。
前記Rcにおける、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、前記Ar11、Ar12およびAr13の置換基における炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、および炭素数6〜20のハロゲン化芳香族炭化水素基として例示した基と同様の基などが挙げられる。
cは同一でも異なっていてもよく、好ましくは炭素数4〜20の有機基、アルカリ金属原子および含窒素カチオンである。炭素数4〜20の有機基としては、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員複素環を有する基などが挙げられる。これらのうち、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基およびビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、ネオペンチル基が最も好ましい。含窒素カチオンとしては、前記式(5)のR18およびR19で例示した含窒素カチオンと同様のものなどが挙げられる。
式(V−b)中、Y、Z、m、nおよびk'はそれぞれ独立に、前記式(5b)中のY、Z、m、nおよびk'と同義であり、Xは独立に、前記式(V−a)中のZ1と同義であり、Ar'は、−SO3dまたは−O(CH2pSO3dまたは−O(CF2pSO3dで表される置換基(pは1〜12の整数を示す)を有する芳香族基を示し、Rdは、前記式(V−a)中のRcと同義である。
式(V−b)で表される化合物の具体的な例としては、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報に記載されているスルホン酸エステル類を挙げることができる。
前記化合物(V)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記化合物(V)の使用量は、重合体(1)中の親水性セグメント(A1)の含有量が前記範囲となるよう適宜調整すればよい。
・化合物(I)および(II)
前記疎水性セグメント(B1)は、前記化合物(I)として、例えば、下記式(I)で表される化合物、および/または、前記化合物(II)として、例えば、下記式(II)で表される化合物(ただし、前記化合物(I)を除く。)を使用することにより導入することができる。
式(I)中、R21、c1、c2、dおよびeはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR21、c1、c2、dおよびeと同義であり、Z2は独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基またはトルエンスルホニルオキシ基を示す。
前記化合物(I)としては、例えば、前記構造単位(1)の例示構造における結合手部分に前記式(I)のZ2が結合した構造の化合物が挙げられる。
前記化合物(I)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記化合物(I)の使用量は、重合体(1)中の疎水性セグメント(B1)および構造単位(1)の含有量が前記範囲となるよう適宜調整すればよい。
式(II)中、R31、fおよびgはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR31、fおよびgと同義であり、Z3は独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基またはトルエンスルホニルオキシ基を示す。
前記化合物(II)としては、例えば、前記構造単位(2)の例示構造における結合手部分に前記式(II)のZ3が結合した構造の化合物が挙げられる。
前記化合物(II)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記化合物(II)の使用量は、重合体(1)中の疎水性セグメント(B1)および構造単位(2)の含有量が前記範囲となるよう適宜調整すればよい。
・重合方法
前記重合体(1)の重合方法としては、例えば、以下の方法1および方法2が挙げられる。なお、必要により、得られた重合体に含まれるスルホン酸エステル基を、後述する方法により、スルホン酸基に変換してもよい。
(方法1)
反応系:前記化合物(I)および/または化合物(II)
添加系:前記化合物(V)
または、
反応系:前記化合物(V)
添加系:前記化合物(I)および/または化合物(II)
方法1は、反応系原料を重合させてオリゴマーを得たところに、添加系原料を添加してさらに重合を進行させてブロック共重合体を得る方法である。この方法1では、得られたオリゴマーを単離することなく添加系原料を加えてワンポットで重合を行ってもよいし、得られたオリゴマーを単離し添加系原料を加えて新たに重合を行ってもよい。
(方法2)
反応系1:前記化合物(V)
反応系2:前記化合物(I)および/または化合物(II)
方法2は、反応系1原料と反応系2原料をそれぞれ別途重合させてオリゴマーを得た後、得られたオリゴマーを混合してさらに重合を進行させてブロック共重合体を得る方法である。この方法2では、得られたオリゴマーそれぞれを単離することなく混合して重合を行ってもよいし、得られたオリゴマーの少なくとも一方を単離し、他のオリゴマーと混合して新たに重合を行ってもよい。
前記重合は、触媒の存在下に行うことが好ましい。
この際使用される触媒は、好ましくは遷移金属化合物を含む触媒成分であり、この触媒成分としては、(1)遷移金属塩と配位子となる化合物(以下「配位子化合物」という。)とを含む成分、および、金属イオンに配位子が配位した遷移金属錯体(銅塩を含む)からなる群より選ばれる少なくとも1種、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、遷移金属塩以外の塩を含む成分が挙げられる。
ここで、前記遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート等のニッケル化合物、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のパラジウム化合物、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄等の鉄化合物、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト等のコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に、塩化ニッケルおよび臭化ニッケルが好ましい。前記遷移金属塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、配位子化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチル)フェニルホスフィン、トリ(3−メチル)フェニルホスフィン、トリ(4−メチル)フェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ベンゾニトリル、アセトニトリルなどが挙げられ、トリフェニルホスフィン、トリ(2-メチル)フェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。前記配位子化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
さらに、前記遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケルビス(トリ(2−メチル)フェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられ、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケルビス(トリ(2−メチル)フェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。前記遷移金属錯体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の触媒系において使用することができる前記還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどを挙げることでき、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化させることができる。
また、本発明の触媒系において使用することのできる遷移金属塩以外の塩としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられるが、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記触媒成分における遷移金属塩および遷移金属錯体の使用量は、化合物(V)、(I)および(II)等のモノマーの合計1モルに対し、好ましくは0.0001〜10モル、より好ましくは0.01〜0.5モルである。この範囲にあれば重合反応が充分に進行し、しかも触媒活性が高く、得られる重合体の分子量を大きくすることも可能となる。
前記触媒成分において、配位子化合物を用いる場合、この配位子化合物の使用量は、遷移金属塩1モルに対し、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不充分となる場合があり、一方、100モルを超えると、得られる重合体の分子量が低下することがある。
また、前記触媒成分における還元剤の使用量は、化合物(V)、(I)および(II)等のモノマーの合計1モルに対し、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは1〜10モルである。この範囲にあれば、重合が充分に進行し、高収率で重合体を得ることができる。
さらに、前記触媒成分に遷移金属塩以外の塩を使用する場合、その使用量は、化合物(V)、(I)および(II)等のモノマーの合計1モルに対し、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不充分となることがあり、一方、100モルを超えると、得られる重合体の精製が難しくなる傾向にある。
前記重合は、重合溶媒の存在下で行うことが好ましい。
本発明で使用することのできる重合溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタムなどが挙げられ、THF、N,N−ジメチルホルムアミド、DMAc、NMPが好ましい。これらの重合溶媒は、充分に乾燥してから用いることが好ましい。また、これらの重合溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記重合溶媒は、重合溶媒中における化合物(V)、(I)および(II)等のモノマーの濃度の合計が、好ましくは1〜90重量%、より好ましくは5〜40重量%となる量で使用することが好ましい。
前記重合する際の重合温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは50〜80℃である。また、重合時間は、好ましくは0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
前記重合では、モノマー、触媒成分および重合溶媒等の種類や量を変更したり、重合温度や重合時間を制御したりすることにより、重合体(1)、親水性セグメント(A1)および疎水性セグメント(B1)の分子量を好ましい範囲とすることができる。親水性セグメント(A1)および疎水性セグメント(B1)を構成する反応原料を重合させて得られるオリゴマーの重合挙動は、重合溶液からサンプリングを行い分子量を逐次測定することで確認してもよいし、重合溶液粘度を逐次または連続測定することで確認してもよい。
前記重合に続いて、得られた重合体に含まれ得るスルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することが好ましい。
具体的には、
(1)少量の無機酸を含む過剰量の水またはアルコールに、得られた重合体を投入し、5分間以上撹拌する方法、
(2)有機酸中で得られた重合体を80〜120℃程度の温度で3〜24時間程度反応させる方法、
(3)得られた重合体中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜9倍モルの脱保護剤を含む溶液中で、該重合体を60〜180℃程度の温度で3〜24時間程度反応させる方法
などを挙げることができる。なお、スルホン酸塩となっている場合、イオン交換などの方法で水素置換すればよい。
前記脱保護剤としては、リチウムブロマイドおよびナトリウムブロマイド等のハロゲン化物イオンを含む無機塩、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ピリジン臭化水素酸塩およびジエチルアミン臭化水素酸塩等のハロゲン化物イオンを含む含窒素有機塩、塩酸等の無機酸、ならびに、トリフルオロ酢酸等のスルホン酸エステル基に対して求核性を有する化合物を用いることができる。
前記脱保護剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脱保護剤を含む溶液には、溶媒が含まれていてもよい。該溶媒として、DMAc、NMP、DMSO等の前記重合溶媒を用いてもよいし、これら2種以上を組み合わせて用いてもよいし、水やアルコール等の重合体(1)を膨潤させる溶媒を添加して用いてもよい。
<重合体(2)>
重合体(2)は、重合体(1)とは異なる、スルホン酸基を有さない重合体であり、前記セグメント(B1)と相溶する疎水性セグメント(B1')と、重合体(2)全体に対し0〜50重量%の、前記セグメント(B1')とは異なる疎水性セグメント(B2)とを含む。
つまり、重合体(2)は、前記セグメント(B1')とセグメント(B2)とを含む重合体であってもよいし、前記セグメント(B1')とセグメント(B2)とからなる重合体であってもよいし、前記セグメント(B1')のみからなる重合体であってもよい。
重合体(2)は、共連続構造を有し、透明な電解質膜が得られる等の点から、重合体(1)と相溶する重合体であることが好ましい。
このような重合体(2)を前記重合体(1)とともに用いることで、前記水接触角の値を有する電解質膜が得られる傾向にあり、撥水性および電極との密着性に優れる電解質膜が得られ、フラッディングを抑制することができ、発電性能および耐久性等に優れる燃料電池を得ることができる。特に、重合体(2)が、前記セグメント(B1')とセグメント(B2)とを含む重合体である場合には、より、水接触角の大きい電解質膜が得られる傾向にある。
重合体(2)がセグメント(B2)を含む場合、当該重合体は、ブロック重合体であってもよく、ランダム重合体であってもよいが、より発電性能および乾湿サイクル時の寸法安定性等に優れる電解質膜が得られる等の点から、セグメント(B1')とセグメント(B2)とのブロック共重合体であることが好ましい。
前記重合体(2)における各セグメントの量は、数平均分子量などの所望の性状に応じて決定される。
重合体(2)がセグメント(B2)を含む場合、前記セグメント(B1')および(B2)の合計量を100重量%とした場合、前記セグメント(B1')の量が、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは55〜97重量%、特に好ましくは60〜95重量%であり、前記セグメント(B2)の量が、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜45重量%、特に好ましくは5〜40重量%である。
セグメント(B1')および(B2)となる原料化合物の使用量を調整することで、各セグメントの量が前記範囲にある重合体を得ることができ、これら原料化合物の使用量から、重合体(2)中の各セグメントの量を確認できる。
前記重合体(2)の数平均分子量は、好ましくは1000〜60000、より好ましくは3000〜40000である。前記範囲内であると、得られる電解質膜の熱水耐性が向上するため好ましい。なお、数平均分子量の測定方法は下記実施例に記載の通りである。
〈セグメント(B1')〉
前記セグメント(B1')としては、前記セグメント(B1)と相溶する疎水性のセグメントであれば特に制限されず、前記セグメント(B1)と完全に同一であるセグメントであってもよいし、前記セグメント(B1)に複数種類の構造単位が含まれる場合、そのうちの少なくとも1種からなるセグメントであってもよいし、各構造単位の比率や結合の順番等が前記セグメント(B1)とは異なるセグメントであってもよいし、前記セグメント(B1)とは異なるセグメントであるが、類似の構造を有するセグメントであってもよい。
前記セグメント(B1')としては、より透明性および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜が得られる等の点から、前記セグメント(B1)と完全に同一であるセグメント、および、前記セグメント(B1)に複数種類の構造単位が含まれる場合、その全てを含み、各構造単位の結合の順番が同じで比率が前記セグメント(B1)とは異なるセグメントが好ましい。
前記セグメント(B1)と前記セグメント(B1')とが相溶することは、3D−TEM画像により、疎水相中に明確な界面が存在しないことによって確認することができる。
前記重合体(2)は、1種類のセグメント(B1')を含んでもよく、2種類以上のセグメント(B1')を含んでもよい。
〈セグメント(B2)〉
前記セグメント(B2)としては、セグメント(B1')とは異なる疎水性のセグメントであれば特に制限されないが、重合体(2)に適度な屈曲性(柔軟性)を付与することができ、得られる電解質膜の靭性を向上させることができる等の点から、下記式(3)で表される構造単位(以下「構造単位(3)」ともいう。)を含むセグメントであることが好ましく、撥水性および電極との密着性により優れる電解質膜が得られる等の点から、疎水性基を含むセグメントであることがより好ましい。
前記重合体(2)は、1種類のセグメント(B2)を含んでもよく、2種類以上のセグメント(B2)を含んでもよい。
前記疎水性基としては、疎水性を示すような基であれば特に制限されないが、パーフルオロアルキル基が好ましい。
式(3)中、AおよびDはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基またはフルオレニリデン基を示し、これらの中では、直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−CR'2−、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基が好ましい。
前記R'としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、エチルヘキシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、これらの基中の水素原子の一部もしくはすべてがハロゲン化された置換基などが挙げられる。
前記R'としては、パーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
Bは独立に、酸素原子または硫黄原子を示し、酸素原子が好ましい。
1〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、式(1)中のEおよびR22と同義である。)を示し、
1〜R16のうちの複数の基が結合して環構造を形成してもよい。
1〜R16のうちの複数の基が結合して形成する環構造としては特に制限されないが、前記Ar11、Ar12およびAr13における置換基を有してもよい、芳香族基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基、および、R18およびR19おける含酸素複素環基などが挙げられる。また、環構造を形成する場合には、前記の例示にはないが、直接結合を介して式(3)におけるベンゼン環同士を結合していてもよい。
sおよびtはそれぞれ独立に、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数を示し、rは0または1以上の整数を示し、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜80である。
前記構造単位(3)としては、例えば、下記の構造単位が挙げられる。
前記重合体(2)は、1種類の構造単位(3)を含んでもよく、2種類以上の構造単位(3)を含んでもよい。
前記重合体(2)は、前記水接触角の値を有する電解質膜が得られ、撥水性および電極との密着性に優れる電解質膜が得られ、フラッディングを抑制することができ、発電性能および耐久性等に優れる燃料電池を得ることができる等の点から、疎水性の末端構造を有することが好ましい。
つまり、前記重合体(2)は、前記効果により優れる電解質膜および燃料電池が得られる等の点から、前記セグメント(B1')を有し、かつ、前記セグメント(B2)および/または前記疎水性の末端構造を有することが好ましい。
前記重合体(2)における疎水性基を含む疎水性構造の割合は、撥水性および電極との密着性に優れる電解質膜が得られ、フラッディングを抑制することができ、発電性能および耐久性等に優れる燃料電池を得ることができる等の点から、重合体(2)の全量を100重量%とした場合、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは2〜12重量%、特に好ましくは3〜9重量%である。
前記疎水性の末端構造は、撥水性および電極との密着性に優れる電解質膜が得られる等の点から、下記式(4)で表される構造であることが好ましい。
式(4)中、Gは独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示し、式(3)中のR'として例示した基と同様の基などが挙げられる。)、シクロヘキシリデン基、または、フルオレニリデン基を示し、−O−および−CO−が好ましい。
41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基、パーフルオロアルキル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、式(1)中のEおよびR22と同義である。)を示し、ニトリル基およびパーフルオロアルキル基が好ましい。ただし、G、R41およびR42のうち少なくとも1つは疎水性基である。
41およびR42のうち少なくとも一方は、疎水性基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基であることがより好ましく、R42がパーフルオロアルキル基であることが特に好ましい。パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。
式(4)中、hは独立に0〜4の整数、好ましくは0を示し、kは0〜5の整数、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは1を示し、mは0または1以上の整数、好ましくは0または1を示す。
〈重合体(2)の合成方法〉
前記重合体(2)は、例えば、重合体(1)の合成の際に化合物(V)を使用しないか、または、化合物(V)の代わりに、前記構造単位(3)となる化合物(III)を用いることで、合成することができる。
化合物(III)としては、例えば、下記式(III)で表される化合物が挙げられる。
式(III)中、A、B、D、R1〜R16、r、sおよびtはそれぞれ独立に、前記式(3)中のA、B、D、R1〜R16、r、sおよびtと同義であり、Z3は独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基またはトルエンスルホニルオキシ基を示す。
前記化合物(III)としては、例えば、前記構造単位(3)の例示構造における結合手部分に前記式(III)のZ3が結合した構造の化合物が挙げられる。
前記化合物(III)は、例えば、以下のモノマーを用いる、または、以下のモノマーを共重合することにより製造することができる。
式(III)でr=0である化合物としては、例えば4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニルエステル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリルが挙げられる。
また、これらの化合物において塩素原子が臭素原子やヨウ素原子に置き換わった化合物なども挙げられる。
式(III)でr=1である化合物としては、例えば特開2003−113136号公報に記載の化合物を挙げることができる。
式(III)でr≧2である化合物としては、例えば特開2004−137444号公報、特開2004−244517号公報、特願2003−143914号(特開2004−346164号公報)、特願2003−348523号(特開2005−112985号公報)、特願2003−348524号、特願2004−211739号(特開2006−28414号公報)、特願2004−211740号(特開2006−28415号公報)に記載の化合物を挙げることができる。
前記化合物(III)の使用量は、重合体(2)中の疎水性セグメント(B2)の含有量が前記範囲となるよう適宜調整すればよい。
前記疎水性の末端構造を有する重合体(2)は、例えば、重合体(2)の合成の際に、さらに、式(4)で表される構造となる化合物(IV)を用いることで、合成することができる。
化合物(IV)としては、例えば、下記式(IV)で表される化合物が挙げられる。
式(IV)中、G、R41、R42、h、kおよびmはそれぞれ独立に、前記式(4)中のG、R41、R42、h、kおよびmと同義であり、Z4は独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基またはトルエンスルホニルオキシ基を示す。
<他の成分>
本発明の電解質膜は、重合体(1)および(2)の他に、金属化合物または金属イオンを含んでもよい。金属化合物または金属イオンとしては、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W) 、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、ネオジウム(Nd)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)およびエルビウム(Er)等の金属原子を含む金属化合物またはこれらの金属イオンが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の電解質膜は、含フッ素ポリマーを含んでもよい。含フッ素ポリマーとしては、電解質膜内または多孔質基材の孔内に含フッ素ポリマーを均一に分散させることができる等の点から、溶剤可溶性の化合物を用いることが好ましい。含フッ素ポリマーとしては、特に制限されないが、例えば、フッ化ビニリデン系単独(共)重合体、フルオロオレフィン/炭化水素系オレフィン共重合体、フルオロアクリレート共重合体、フルオロエポキシ化合物などを使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<電解質膜の製造方法>
本発明の電解質膜は、例えば、前記重合体(1)と、重合体(2)と、有機溶剤などとを混合して得られる組成物をダイコート、スプレーコート、ナイフコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコートなどの公知の方法により基体上に塗布する工程を含むことにより製造することができる。具体的には、前記組成物を基体上に塗布した後、塗布した組成物を乾燥させ、必要により、得られる膜を基体から剥離することで、電解質膜を得ることができる。
前記重合体(1)の使用量は、電解質膜100重量%に対し、透明性、発電性能、撥水性、電極との密着性および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる電解質膜を得ることができる等の点から、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは70〜99重量%、特に好ましくは85〜98重量%である。
また、前記重合体(2)の使用量は、電解質膜100重量%に対し、同様の理由から、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜15重量%であり、これら使用量の好ましい範囲は、重合体(1)100重量%に対しても同様である。
本発明の電解質膜を製造する際には、前記重合体(1)および(2)は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記基体としては、通常の組成物を塗布する際に用いられる基体であれば特に限定されず、たとえば樹脂製、金属製、ガラス製などの基体が用いられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。
前記有機溶剤としては、前記重合体(1)および(2)を溶解または膨潤させる溶媒であることが好ましく、たとえば、NMP、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、DMAc、DMSO、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン系極性溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチルラクトン等のケトン類、THF、1,3−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に重合体の溶解性および得られる組成物の粘度の面から、NMPが好ましい。
また、前記有機溶剤として、非プロトン系極性溶剤と他の溶剤との混合物を用いる場合、該混合物の組成は、非プロトン系極性溶剤が好ましくは95〜25重量%、より好ましくは90〜25重量%、他の溶剤が、好ましくは5〜75重量%、より好ましくは10〜75重量%(但し、合計は100重量%)である。他の溶剤の配合量が前記範囲内にあると、得られる組成物の粘度を下げる効果に優れる。この場合の非プロトン系極性溶剤と他の溶剤との組み合わせとしては、非プロトン系極性溶剤としてNMP、他の溶剤として幅広い組成範囲で組成物の粘度を下げる効果があるメタノールが好ましい。
前記組成物には、硫酸、リン酸などの無機酸;リン酸ガラス;タングステン酸;リン酸塩水和物;β−アルミナプロトン置換体;プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子;カルボン酸を含む有機酸;スルホン酸を含む有機酸;ホスホン酸を含む有機酸;適量の水などを配合してもよい。
また、前記組成物には、前記金属化合物、金属イオンまたは含フッ素ポリマーを配合してもよい。
前記組成物中の重合体(1)および(2)の合計濃度は、該重合体の分子量にもよるが、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜25重量%である。重合体の含有量が前記範囲よりも少ないと、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい傾向にある。一方、重合体の含有量が前記範囲を超えると、組成物の溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、得られる電解質膜が表面平滑性に欠けることがある。
前記組成物の粘度は、重合体(1)および(2)の分子量、濃度ならびに添加剤の濃度等にもよるが、好ましくは1000〜100000mPa・s、より好ましくは3000〜50000mPa・sである。組成物の粘度が前記範囲よりも低いと、成膜中の組成物の基体上での滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、組成物の粘度が前記範囲を超えると、粘度が高過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
前記乾燥は、50〜200℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行うことが好ましい。
なお、前記乾燥は、1段階で行ってもよく、2段階以上、つまり、予め予備乾燥した後、本乾燥してもよい。また、前記乾燥は、必要に応じて、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧下にて乾燥を行ってもよい。
前記予備乾燥は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜100℃で、好ましくは3〜180分間、より好ましくは5〜60分間保持することにより行うことができる。
また、前記本乾燥は、好ましくは、前記予備乾燥温度以上の温度、より好ましくは50〜200℃の温度で、好ましくは0.1〜10時間保持することにより行うことができる。
また、前記予備乾燥の後または本乾燥の後に、得られた予備乾燥後または本乾燥後の膜を水に浸漬すると、予備乾燥後または本乾燥後の膜中の有機溶剤を水と置換することができ、得られる電解質膜中の残留有機溶剤量を低減することができる。
このようにして得られる電解質膜の残存有機溶剤量は、通常5重量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる膜の残存有機溶剤量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、たとえば、予備乾燥後または本乾燥後の膜1重量部に対する水の使用量が50重量部以上であり、浸漬する際の水の温度が10〜60℃、浸漬時間が10分〜10時間である。
前記のように予備乾燥後の膜または本乾燥後の膜を水に浸漬した後、さらに、30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分間、好ましくは15〜60分間乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、電解質膜を得ることが望ましい。
なお、スルホン酸エステル基またはスルホン酸のアルカリ金属塩を有する重合体を用い、上述したような方法でフィルム状に成形した後、加水分解や酸処理等の適切な後処理をすることにより、本発明の電解質膜を製造することもできる。
本発明の電解質膜は、単層の膜であってもよく、多層の積層膜であってもよい。
なお、積層膜の場合、各層の厚さは任意であり、例えば一方の層を厚く、他方の層を薄くしてもよい。また、各層は同一であっても、異なっていてもよい。
前記積層膜を形成する方法としては、上述の各方法などによって得られた電解質膜表面に、さらにダイコート、スプレーコート、ナイフコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコートなどの公知の方法で、前記組成物を塗布し、必要に応じて乾燥する方法、および、予め前記組成物から形成された膜を上述の方法で得られた膜に重ねて熱プレスする方法などが挙げられる。
また、電解質膜を製造する際に、多孔質基材やシート状の繊維質物質を用いることで、補強された電解質膜を製造することもできる。
補強された電解質膜を製造する方法としては、例えば、前記組成物を多孔質基材やシート状の繊維質物質に含浸させる方法、前記組成物を多孔質基材やシート状の繊維質物質に塗布する方法、ならびに、予め前記組成物から膜を形成した後、多孔質基材やシート状の繊維質物質に前記膜を重ねて熱プレスする方法などが挙げられる。
前記多孔質基材としては、厚さ方向に対して貫通する多数の細孔または空隙を有するものであることが好ましく、例えば、各種樹脂からなる有機多孔質基材、ガラス、アルミナなど金属酸化物や金属自体から構成される無機多孔質基材等が挙げられる。
多孔質基材としては、厚さ方向に対してほぼ平行な方向に貫通している貫通孔を多数個有するものであってもよい。
このような、多孔質基材として、特開2008−119662号公報、特開2007−154153号公報、特開平8−20660号公報、特開平8−20660号公報、特開2006−120368号公報、特開2004−171994号公報、特開2009−64777号公報に開示されたものを使用することができる。
前記多孔質基材としては、有機多孔質基材が好ましく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、高分子量ポリエチレン、架橋型ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリロトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ガラスからなる群から選ばれる1種以上からなる基材が好ましい。なお、ポリオレフィンとしては、高分子量ポリエチレン、架橋型ポリエチレン、ポリエチレンなどが望ましい。
≪膜−電極接合体≫
本発明の膜−電極接合体は、ガス拡散層、触媒層、本発明の電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体である。具体的には、本発明の電解質膜の一方の面にはカソード電極用の触媒層、他方の面にはアノード電極用の触媒層を設け、さらにカソード電極用およびアノード電極用の各触媒層の電解質膜と反対側に接して、カソード電極側およびアノード電極側にそれぞれガス拡散層を設けたものであることが好ましい。
ガス拡散層、触媒層としては、公知のものを特に制限なく使用可能である。
前記ガス拡散層としては、多孔性基材または多孔性基材と微多孔層との積層構造体などが挙げられる。ガス拡散層が多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる場合には、微多孔層が触媒層に接することが好ましい。また、前記ガス拡散層は、撥水性を付与するために含フッ素重合体を含んでいることが好ましい。
前記触媒層は、好ましくは、触媒、イオン交換樹脂などから構成される。
触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウム、コバルト、鉄などの金属触媒が挙げられ、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、金属触媒は、合金や混合物などのように、2種以上の元素を含むものであってもよい。このような金属触媒は、通常、高比表面積カーボン微粒子に担持したものを用いることができる。
前記イオン交換樹脂は、前記触媒を結着させるバインダー成分として働くとともに、アノード極では触媒上の反応によって発生したイオンを電解質膜へ効率的に供給し、また、カソード極では電解質膜から供給されたイオンを触媒へ効率的に供給する物質であることが好ましい。
前記イオン交換樹脂としては、触媒層内のプロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマーが好ましい。
このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などがあるが特に限定されるものではない。
前記イオン交換樹脂は、公知のものを特に制限なく使用可能であり、例えば、Nafionが挙げられ、前記重合体(A)をイオン交換樹脂として使用してもよく、さらにプロトン交換基を有する、フッ素原子を含むポリマー、エチレンやスチレンなどから得られる他のポリマー、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。
前記触媒層は、必要に応じてさらに、炭素繊維、イオン交換基を有しない樹脂等の添加剤を含んでもよい。この添加剤としては撥水性の高い成分であることが好ましく、例えば、含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができるが、好ましくは含フッ素共重合体である。
≪固体高分子型燃料電池≫
本発明の固体高分子型燃料電池は、前記膜−電極接合体を含む。このため、本発明に係る固体高分子型水素燃料電池は、特に、フラッディングが抑制され、発電性能および耐久性等に優れる。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、具体的には、少なくとも一つの膜−電極接合体およびそのガス拡散層の両外側に位置する、セパレータを含む少なくとも一つの電気発生部;燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給部;および酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む固体高分子型燃料電池であることが好ましい。
前記セパレータとしては、通常の固体高分子型燃料電池に使用されるものを用いることができる。具体的にはカーボンタイプのセパレータ、金属タイプのセパレータなどを用いることができる。
また、固体高分子型燃料電池を構成する部材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。本発明の固体高分子型燃料電池は単セルであってもよいし、複数の単セルを直列に繋いだスタックセルであってもよい。スタックの方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には単セルを平面状に並べた平面スタッキングであってもよいし、燃料または酸化剤の流路が、セパレータの裏表面にそれぞれ形成されているセパレータを介して単セルを積み重ねるバイポーラースタッキングであってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
以下、合成例で得られた重合体の評価は以下のように行った。
〔スルホン酸基を有する重合体のイオン交換容量〕
下記で得られた重合体から試料膜を作成し、該試料膜を脱イオン水に浸漬することで、該膜中に残存している酸を完全に除去した後、食塩水に浸漬してイオン交換させることにより塩酸水溶液を調製した。この塩酸水溶液を、フェノールフタレインを指示薬として、水酸化ナトリウムの標準水溶液にて中和滴定した。イオン交換後の試料膜を脱イオン水で洗浄し、真空乾燥させて膜の乾燥重量を測定した。下記式に示すように、水酸化ナトリウムの滴定量と膜の乾燥重量とから、スルホン酸基の当量(以下「イオン交換容量」という。)を求めた。
イオン交換容量(meq/g)=水酸化ナトリウムの滴定量(mmol)/膜の乾燥重量(g)
〔スルホン酸基を有する重合体の数平均および重量平均分子量の測定〕
分子量の測定は測定する重合体に応じて以下の2種類の方法を用いた。
スルホン酸基を有する重合体をNMP緩衝溶液に溶解し、NMP緩衝溶液を溶離液として、装置としてTOSOH HLC−8220(東ソー(株)製)を、カラムとしてTSKgel α−M(東ソー(株)製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を求めた。
NMP緩衝溶液は、NMP(3L)/リン酸(3.3mL)/臭化リチウム(7.83g)の比率で調製した。
スルホン酸基を有する重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶離液としてTHFを、装置としてTOSOH HLC−8220(東ソー(株)製)を、カラムとしてTSKgel α−M(東ソー(株)製)を用いたGPCによって、ポリスチレン換算のMnおよびMwを求めた。
[合成例1]
3,5−ジクロロベンゼンスルホニルクロライド(114.65g、467mmol)を、ネオペンチルアルコール(45.30g、514mmol)のピリジン(300mL)溶液に、少量ずつ撹拌しながら15分かけて添加した。この間、反応温度は18〜20℃に保った。反応混合物を冷却しながら、さらに30分撹拌した後、氷冷した10wt%HCl水溶液(1600mL)を添加した。水に不溶の成分を700mLの酢酸エチルで抽出し、1NのHCl水溶液で2回(各700mL)洗浄し、次いで、5wt%NaHCO3水溶液で2回(各700mL)洗浄し、MgSO4で乾燥させた。回転乾燥機を用いて溶媒を除去し、残渣を500mLのメタノールから再結晶させた。その結果、下記式(6)で表される3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ネオペンチルを、光沢のある無色の結晶(1H−NMRで99%を超える純度)として得た。収量105.98g、収率76%であった。
[合成例2]
添加系:式(6)で表される化合物22.54g(75.83mmol)と、トリフェニルホスフィン1.19g(4.55mmol)の混合物中に、脱水したDMAc55mLを窒素下で加えて添加系溶液1を調製した。
反応系:2,5−ジクロロベンゾフェノン18.07g(71.95mmol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル0.83g(2.23mmol)、トリフェニルホスフィン1.46g(5.56mmol)および亜鉛11.64g(178.02mmol)の混合物中に、脱水したDMAc53mLを窒素下で加えた。この反応系を撹拌下に60℃まで加熱した後、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.23g(1.88mmol)を加えて重合を開始し、80℃で20分間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。得られたオリゴマーの分子量を測定するために、反応系溶液を少量サンプリングした。
GPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mnが5500であった。
この反応系に添加系溶液1を窒素下で加え、撹拌下に60℃まで加熱した後、亜鉛8.78g(134.4mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.47g(2.24mmol)を加えてさらに重合を促進させ、80℃で3時間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。
得られた溶液をDMAc498mLで希釈し、セライトを濾過助剤として用いて濾過した。濾液に臭化リチウム25.93g(298.56mmol)を加え、100℃で7時間反応させた。反応後、反応液を室温まで冷却し、水3.3Lに投入して凝固物を含む液を得た。凝固物をアセトンに加え、撹拌しながら4回洗浄・濾過を行った。洗浄物を1N硫酸水溶液で撹拌しながら7回洗浄・濾過を行った。さらに洗浄物を洗浄液のpHが5以上になるまで脱イオン水で洗浄・濾過を行った。最後の洗浄物を75℃で24時間乾燥させることにより褐色重合体粉末を得た。
得られた重合体は、下記式(7)で表される構造(q1:q2=97:3)を有することが推定される。このスルホン酸基を有する重合体のGPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mnが51000であり、Mwが114000であった。この重合体のイオン交換容量は2.24meq/gであった。
(式中、pは、その構造単位を形成する原料の仕込み量から算出される値である。)
[合成例3]
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管および窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル49.4g(0.29mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン88.4g(0.26mol)、および炭酸カリウム47.3g(0.34mol)を量り取った。フラスコを窒素置換後、スルホラン346mlおよびトルエン173mlを加えて攪拌した。フラスコを150℃のオイルバスにつけ、攪拌後の液を加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次に、2,6−ジクロロベンゾニトリル12.3g(0.072mol)を加え、さらに5時間反応した。
得られた反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し、乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解させた。この溶液をメタノール2Lに加え、再沈殿させ、沈殿物を風乾後、80℃で真空乾燥し、目的の化合物107gを得た。
得られた目的の化合物のGPC(溶媒:THF)で求めたポリスチレン換算のMnは7,300であった。得られた化合物は下記式(8)で表されるオリゴマーであった。
(式中、lは、その構造単位を形成する原料の仕込み量から算出される値である。)
[合成例4]
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管および窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル88.6g(0.515mol)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン27.1g(0.121mol)、2−tert−ブチルハイドロキノン60.4g(0.364mol)および炭酸カリウム87.1g(0.630mol)を量り取った。フラスコを窒素置換後、スルホラン600mLおよびトルエン300mLを加えて攪拌した。攪拌後、フラスコを150℃のオイルバスにつけ、攪拌後の液を加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。その後、徐々に反応温度を180から190℃に上げ、3時間撹拌を続けた後、2,6−ジクロロベンゾニトリル15.6g(0.091mol)を加え、さらに5時間反応させた。
得られた反応液を放冷後、メタノール/4wt%硫酸水溶液(5/1(体積比))2400mL中に投入した。沈殿した生成物を濾過し、濾物を水2400mL中に入れ、55℃で1時間撹拌した。攪拌後の液を濾過し、濾物を再度、水2400mL中に入れ、55℃で1時間撹拌した後、濾過した。次いで、濾物をメタノール2400mL中に入れ、55℃で1時間撹拌した後、濾過し、再度、濾物をメタノール2400mL中に入れ、55℃で1時間撹拌した後、濾過した。ろ物を風乾後、80℃で真空乾燥し、下記式(9)で表されるオリゴマー133g(収率96%)を得た。GPC(溶媒:THF)で測定したMnは10,500であった。
(式中、sおよびtは、その構造単位を形成する原料の仕込み量から算出される値である。)
[合成例5]
反応系:2,5−ジクロロベンゾフェノン45.20g(0.18mol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル3.44g(0.02mol)、前記式(8)で表される化合物4.20g(0.60mmol)、トリフェニルホスフィン3.95g(0.015mol)および亜鉛31.5g(0.48mol)の混合物中に、脱水したDMAc150mLを窒素下で加えた。この反応系を撹拌下に60℃まで加熱した後、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.28g(5.02mmol)を加えて重合を開始し、80℃で50分間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。得られたオリゴマーの分子量を測定するために、反応系溶液を少量サンプリングした。
得られた反応系溶液をDMAc400mLで希釈し、セライトを濾過助剤として用いて濾過した。反応液を、1Nの硫酸メタノール1Lに投入して凝固物を含む液を得た。凝固物をメタノールに加え、撹拌しながら5回洗浄・濾過を行った。最後の洗浄物を75℃で24時間乾燥させることにより黄色重合体粉末を得た。GPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したMnは21000であった。
得られた重合体は、下記式(10)で表される構造(o:m:l=87.4:9.7:2.9を有することが推定される。
[合成例6]
反応系:2,5−ジクロロベンゾフェノン45.2g(0.18mol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル3.44g(0.02mol)、前記式(9)で表される化合物14.70g(1.40mmol)、トリフェニルホスフィン3.95g(0.015mol)および亜鉛31.5g(0.48mol)の混合物中に、脱水したDMAc180mLを窒素下で加えた。この反応系を撹拌下に60℃まで加熱した後、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.28g(5.02mmol)を加えて重合を開始し、80℃で50分間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。得られたオリゴマーの分子量を測定するために、反応系溶液を少量サンプリングした。
得られた反応系溶液をDMAc450mLで希釈し、セライトを濾過助剤として用いて濾過した。濾液を、1Nの硫酸メタノール1Lに投入して凝固物を含む液を得た。凝固物をメタノールに加え、撹拌しながら5回洗浄・濾過を行った。最後の洗浄物を75℃で24時間乾燥させることにより黄色重合体粉末を得た。GPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したMnは23,500であった。
得られた重合体は、下記式(11)で表される構造(o:m:n=84.1:9.4:6.5)を有することが推定される。
[合成例7]
反応系:2,5−ジクロロベンゾフェノン45.2g(0.18mol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル3.44g(0.02mol)、2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル2.74g(13.34mmol)、トリフェニルホスフィン4.20g(0.016mol)および亜鉛31.5g(0.48mol)の混合物中に、脱水したDMAc150mLを窒素下で加えた。この反応系を撹拌下に60℃まで加熱した後、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.48g(5.33mmol)を加えて重合を開始し、80℃で50分間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。その後、1時間撹拌を続けたが、更なる粘度上昇は認められず、2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルにより反応が停止したと考えられる。得られたオリゴマーの分子量を測定するために、反応系溶液を少量サンプリングした。
得られた反応系溶液をDMAc400mLで希釈し、セライトを濾過助剤として用いて濾過した。濾液を、1Nの硫酸メタノール1Lに投入して凝固物を含む液を得た。凝固物をメタノールに加え、撹拌しながら5回洗浄・濾過を行った。最後の洗浄物を75℃で24時間乾燥させることにより黄色重合体粉末を得た。GPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したMnは6,200であった。
得られた重合体は、下記式(12)で表される構造(o:m=90:10)を有することが推定される。
[合成例8]
撹拌機および冷却管を備えた3Lの三つ口フラスコに、クロロスルホン酸(233.0g、2mol)を加え、続いて2,5−ジクロロベンゾフェノン(100.4g、400mmol)を加え、100℃のオイルバスで8時間反応させた。所定時間後、反応液を砕氷(1000g)にゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶(3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリド)を得た。粗結晶は精製することなく、そのまま次工程に用いた。
2,2−ジメチル−1−プロパノール(ネオペンチルアルコール)(38.8g、440mmol)をピリジン300mLに加え、約10℃に冷却した。ここに前記で得られた粗結晶を約30分かけて徐々に加えた。全量添加後、さらに30分撹拌し反応させた。反応後、反応液を塩酸水1000mL中に注ぎ、析出した固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで、酢酸エチルを留去することで粗結晶を得た。これをメタノールで再結晶し、目的物である3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル(下記式(13)で表される化合物)の白色結晶を得た。
[合成例9]
添加系:前記式(13)で表される化合物42.57g(106.09mmol)と、トリフェニルホスフィン1.78g(6.79mmol)との混合物中に脱水したDMAc104mLを窒素下で加えて添加系溶液2を調製した。
反応系:2,5−ジクロロベンゾフェノン21.22g(84.52mmol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル1.62g(9.39mmol)、トリフェニルホスフィン1.77g(6.76mmol)および亜鉛14.73g(225.40mmol)の混合物中に脱水したDMAc61mLを窒素下で加えた。この反応系を撹拌下に60℃まで加熱した後に、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.47g(2.25mmol)を加えて重合を開始し、80℃で20分間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。得られたオリゴマーの分子量を測定するために、反応系溶液を少量サンプリングした。
GPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mnが6500であった。
得られた反応系溶液に添加系溶液2を窒素下で加え、撹拌下に60℃まで加熱した後、亜鉛16.64g(254.60mmol)と、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.22g(3.39mmol)とを加えてさらに重合を促進させ、80℃で3時間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。
前記で得られた溶液をDMAc104mLおよびDMSO259mLで希釈し、セライトを濾過助剤に用いて濾過した。濾液に臭化リチウム32.25g(371.30mmol)を加え、100℃で7時間反応させた。反応後、反応液を室温まで冷却し、水4.1Lに投入して凝固させた。凝固物をアセトンに加え、撹拌しながら4回洗浄・濾過を行った。洗浄物を1N硫酸で撹拌しながら7回洗浄・濾過を行った。その後、さらに洗浄物を洗浄液のpHが5以上になるまで脱イオン水で洗浄・濾過を行った。最後の洗浄物を75℃で24時間乾燥させることにより褐色ポリマー粉末を得た。
得られた重合体は、式(14)で表される構造(q1:q2=90:10)を有することが推定される。このスルホン酸基を有する重合体のGPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mnが70600であり、Mwが193000であった。この重合体のイオン交換容量は2.31meq/gであった。
(式中、pは、その構造単位を形成する原料の仕込み量から算出される値である。)
[評価方法]
下記評価を実施した。結果を表1に示す。
<熱水耐性(熱水膨潤率)の評価>
下記実施例および比較例で得られた電解質膜を2.0cm×3.0cmの大きさにカットし、秤量して試験片とした。24℃、相対湿度(RH)50%条件下にて状態調整した後、この試験片を150mLバイアル瓶に入れ、そこに約100mLの脱イオン水を加え、恒温乾燥器(アズワン(株)製、SONW−450)を用いて、95℃で24時間加温した。試験終了後、試験片を熱水中から取り出し、軽く表面の水をキムワイプ(日本製紙クレシア(株)製)で拭き取り、寸法を測定し、下記式から熱水膨潤率を求めた。
熱水膨潤率=(含水時の2cm辺の寸法/2cm+含水時の3cm辺の寸法/3cm)×100/2
<比抵抗の測定>
下記実施例および比較例で得られた電解質膜を5mm幅の短冊状にカットすることで得られた試料膜の表面に、白金線(φ=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中で保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から交流抵抗を求めた。具体的には、71℃、相対湿度65%の環境下で、交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てた。その後、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗との関係を示す曲線の勾配から、試料膜の比抵抗を下記式から算出した。この比抵抗の逆数がプロトン伝導度に相当する。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
<水接触角の評価>
下記実施例および比較例で得られた電解質膜の水接触角は協和界面科学(株)製CA−X接触角計を用い評価した。温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で、電解質膜表面に水をシリンジで0.7mL滴下し、形成した液滴のなす角度、接触角θを測定した。電解質膜の両面10点ずつを測定し平均値を算出した。
<3D−TEM観察>
下記実施例および比較例で得られた電解質膜が共連続の相分離構造を有しているか否かの判断は、得られた電解質膜から超薄切片を切り出し、該切片を硝酸鉛で染色した後、(株)日立製作所製HF−100FA透過型電子顕微鏡で、1°ずつ傾けた画像を撮影し、±60°傾けた画像まで、連続的に撮影することにより行った。得られた画像は日本電子システムテクノロジー(株)製画像解析ソフトを用い解析を行った。
<出力電圧測定>
〔アノード電極ペーストの調製〕
200mLのポリボトルに直径5mmのジルコニアボール((株)ニッカトー製「YTZボール」)80gを入れ、白金ルテニウム担持カーボン粒子(田中貴金属工業(株)製「TEC61E54」、Pt:29.8質量%担持、Ru:23.2質量%担持)1.28g、蒸留水3.60g、n−プロピルアルコール12.02gおよびNafion D2020(DuPont社製、ポリマー濃度21%分散液、イオン交換容量1.08meq/g)3.90gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、アノード電極ペーストを得た。
〔カソード電極ペーストの調製〕
次に、200mLのポリボトルに直径5mmのジルコニアボール(YTZボール)80gを入れ、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業(株)製「TEC10E50E」、Pt:45.6質量%担持)1.25g、蒸留水3.64g、n−プロピルアルコール11.91gおよびNafion D2020(4.40g)を加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、カソード電極ペーストを得た。
〔触媒層の作製〕
実施例および比較例で得られたPETフィルム付の電解質膜の片面(PETフィルムと反対側)に、5cm×5cmの開口を有するマスクを用い、前記アノード電極ペーストをドクターブレードにて塗布した後、PETフィルムを剥離した。また、電解質膜のアノード電極ペーストを塗布した側と反対の面に、5cm×5cmの開口を有するマスクを用い、ドクターブレードにて前記カソード電極ペーストを塗布した。これを120℃で60分間乾燥することで、電解質膜の両面に触媒層が形成された積層体を得た。各触媒層の触媒塗布量は0.50mg/cm2であった。
〔ガス拡散層〕
ガス拡散層としてSGL CARBON社製のGDL24BCを用いた。
〔固体高分子型燃料電池の作製〕
前記触媒層が両面に形成された電解質膜を、2枚のガス拡散層で挟み、圧力60kg/cm2下、160℃で20分間ホットプレスし、膜−電極接合体を作製した。得られた膜−電極接合体のガス拡散層上にガス流路を兼ねるセパレータを積層し、これを2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の評価用燃料電池を作製した。
〔出力電圧測定〕
得られた評価用燃料電池のカソード電極側に背圧120kPa、利用率40%で空気を供給し、アノード電極側に背圧120kPa、利用率70%で純水素を供給し、セル温度を85℃、カソード電極側相対湿度を50%、アノード電極側相対湿度を50%として、電流密度1.5A/cm2でのセル電圧を測定した。
<触媒層の密着性評価>
下記実施例および比較例で得られた電解質膜の電極密着性は、前記触媒層の作成と同様の方法により作製した電解質膜の両面に触媒層が形成された積層体を1000mLのガラス瓶に入れ、そこに約900mLの脱イオン水を加え、恒温乾燥器(アズワン(株)製、SONW−450)を用いて、95℃で24時間加温した。試験終了後、試験片を熱水中から取り出し、触媒層の剥離の有無を目視にて観察した。
<透明性の評価>
下記実施例および比較例で得られた電解質膜の透明性は、ヘーズメーター(スガ試験機械(株)製HZ−2ヘーズメーター)により全光線透過率(Tt)と拡散透過率(Td)を測定し、得られた値からヘーズ値=Td/Tt×100を算出した。評価条件はダブルビーム法、光源はC光源を用い、JIS K7361に従い、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で行った。
〔実施例1〕
合成例2で得られた重合体10gと、合成例5で得られた重合体1.0gとをメタノール/メチルエチルケトン/NMP=20/20/60(質量比)の混合溶媒58mLに溶解した溶液をPETフィルムの上にダイコータにてキャスト塗工し、80℃で5分予備乾燥した後、160℃で20分乾燥した。乾燥後の塗膜付PETフィルムを大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた後、風乾し、合成例2で得られた重合体と合成例5で得られた重合体とが質量比90.9/9.1で含まれ、電解質膜の厚みが20μmである電解質膜付PETフィルムを得た。
得られた電解質膜の3D−TEM画像を図1に示す。図1中、黒い島部は疎水相を示し、白い海部は親水相を示す。図1から、得られた電解質膜は、親水相と疎水相とが共連続構造を有することが分かる。また、重合体(2)を添加することで、下記図2と比較して疎水相(黒部分)が増大しており、また、重合体(1)と重合体(2)とが相溶していることもわかる。
〔実施例2〕
実施例1において、合成例5で得られた重合体の代りに合成例6で得られた重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、合成例2で得られた重合体と合成例6で得られた重合体とが質量比90.9/9.1で含まれ、電解質膜の厚みが20μmである電解質膜付PETフィルムを得た。
〔実施例3〕
実施例1において、合成例5で得られた重合体の代りに合成例7で得られた重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、合成例2で得られた重合体と合成例7で得られた重合体とが質量比90.9/9.1で含まれ、電解質膜の厚みが20μmである電解質膜付PETフィルムを得た。
〔実施例4〕
実施例1において、合成例2で得られた重合体の代りに合成例9で得られた重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、合成例9で得られた重合体と合成例5で得られた重合体とが質量比90.9/9.1で含まれ、電解質膜の厚みが20μmである電解質膜付PETフィルムを得た。
〔比較例1〕
合成例2で得られた重合体10gをメタノール/メチルエチルケトン/NMP=20/20/60(質量比)の混合溶媒58mLに溶解した溶液をPETフィルムの上にダイコータにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。乾燥後の塗膜付PETフィルムを大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた後、風乾し、電解質膜の厚みが20μmである電解質膜付PETフィルムを得た。
得られた電解質膜の3D−TEM画像を図2に示す。図2中、黒い島部は疎水相を示し、白い海部は親水相を示す。図2は、得られた電解質膜中の親水相と疎水相とは単に海島構造を有しているに過ぎず、共連続構造を有していないことが分かる。
〔比較例2〕
比較例1において、合成例2で得られた重合体の代りに合成例9で得られた重合体を用いた以外は比較例1と同様にして、電解質膜の厚みが20μmである電解質膜付PETフィルムを得た。
実施例1〜4では外観が透明な電解質膜が得られた。また、高電流密度域での出力電圧が高く、熱水膨潤率の低減効果が得られ、触媒層密着性も改善した。
比較例1および2では触媒層との密着性が改善しなかった。また、実施例1〜3と比較例1、および、実施例4と比較例2とをそれぞれ比較すると、いずれも比抵抗は同等あるいは比較例の方が高いのに対し、実施例の出力電圧は比較例より高いことが分かる。これは高電流密度域まで電流が掃引できていることを示しており、フラッディングが抑制されていることが分かる。

Claims (10)

  1. 親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とを有する重合体(1)、および、
    前記重合体(1)とは異なる、スルホン酸基を有さない重合体(2)を含有し、
    前記重合体(2)が、前記セグメント(B1)と相溶する疎水性セグメント(B1')と、重合体(2)全体に対し0〜50重量%の、前記セグメント(B1')とは異なる疎水性セグメント(B2)とを含む、
    水接触角が45〜120°である電解質膜。
  2. 前記疎水性セグメント(B2)が、下記式(3)で表される構造単位を含むセグメントである、請求項1に記載の電解質膜。
    [式(3)中、
    AおよびDはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基またはフルオレニリデン基を示し、
    Bは独立に、酸素原子または硫黄原子を示し、
    1〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(Eは、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−CONH−、−COO−、−CF2−、−CH2−、−C(CF32−または−C(CH32−を示し;R22は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基または含窒素複素環を示し、これらの基の少なくとも1つの水素原子は、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基およびR22−E−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)を示し、
    1〜R16のうちの複数が結合して環構造を形成してもよく、
    sおよびtはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
  3. 前記重合体(2)が疎水性の末端構造を有する、請求項1または2に記載の電解質膜。
  4. 前記疎水性の末端構造が、下記式(4)で表される構造である、請求項3に記載の電解質膜。
    [式(4)中、
    Gは独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基、または、フルオレニリデン基を示し、
    41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基、パーフルオロアルキル基、または、R22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(3)中のEおよびR22と同義である。)を示し、
    hは独立に0〜4の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、mは0または1以上の整数を示す。ただし、G、R41およびR42のうち少なくとも1つは疎水性基である。]
  5. 前記疎水性セグメント(B1)が、芳香環を含み、2つの結合手を有するセグメントであり、
    1つの芳香環に前記2つの結合手の両方が結合した、または、
    1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した、
    セグメントである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜。
  6. 前記疎水性セグメント(B1)が、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むセグメントである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜。
    [式(1)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、
    21は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(3)中のEおよびR22と同義である。)を示し、複数のR21が結合して環構造を形成してもよく、
    1およびc2は独立に、0または1以上の整数を示し、dは1以上の整数を示し、eは独立に、0〜(2c1+2c2+4)の整数を示す。]
    [式(2)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、
    31は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(3)中のEおよびR22と同義である。)を示し、複数のR31が結合して環構造を形成してもよく、
    fは0または1以上の整数を示し、gは0〜(2f+4)の整数を示す。]
  7. 前記親水性セグメント(A1)が、スルホン酸基および芳香環を有し、2つの結合手を有するセグメントであり、
    1つの芳香環に前記2つの結合手の両方が結合した、または、
    1つの芳香環(a)、および、該芳香環(a)と単結合もしくは少なくとも1つの芳香環を介してつながった芳香環(b)を有し、芳香環(a)と芳香環(b)それぞれに結合手が1つずつ結合した、
    セグメントである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解質膜。
  8. 前記親水性セグメント(A1)が、下記式(5)で表される構造単位を含むセグメントである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質膜。
    [式(5)中、Ar11、Ar12およびAr13はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトリル基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基もしくは炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環または含窒素複素環を有する芳香族基を示し、
    YおよびZはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2u−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である。)、−C(CH32−または−C(CF32−を示し、
    17は独立に、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−または−(CF2p−(pは1〜12の整数である。)を示し、
    18およびR19はそれぞれ独立に、水素原子または保護基を示し(但し、式(5)中に含まれる全てのR18およびR19のうち少なくとも1個は水素原子である。)、
    1は独立に、0〜6の整数を示し、x2は1〜7の整数を示し、
    aは0または1を示し、bは0〜20の整数を示す。]
  9. ガス拡散層、触媒層、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
  10. 請求項9に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
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