JP5440330B2 - 固体高分子電解質膜およびその製造方法、液状組成物 - Google Patents

固体高分子電解質膜およびその製造方法、液状組成物 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム成分を含む新規固体高分子電解質膜とその製造方法、及び該固体高分子電解質膜の形成に使用される液状組成物に関する。
燃料電池は、水素ガスや各種の炭化水素系燃料(天然ガス,メタンなど)を改質して得られる水素と、空気中の酸素とを電気化学的に反応させて直接電気を取り出す発電装置であり、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに高効率で直接変換できる無公害な発電方式として注目を集めている。
このような燃料電池は、触媒を担持した一対の電極膜(アノード極とカソード極)と該電極膜に挟持されたプロトン伝導性の固体高分子電解質膜(以下、プロトン伝導膜ともいう)とから構成される。アノード極の触媒によって、水素イオンと電子に分けられ、水素イオンは固体高分子電解質膜を通って、空気極で酸素と反応して水になる仕組みになっている。
固体高分子電解質膜としては、Nafion(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成工業(株)社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)社製)の商品名で市販されているスルホン酸基を有する全フッ化炭素系高分子電解質膜、芳香族炭化水素系重合体系、ポリエーテルエーテルケトン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリイミド系、ポリベンザゾール系の芳香環を主鎖骨格に有し、スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系高分子電解質膜等が提案されている。
ところで、このような燃料電池では、酸素の還元反応によって生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、固体高分子電解質膜の劣化を引き起こす可能性が懸念されている。また、酸素分子も膜内を透過してくるため、同様に過酸化水素又は過酸化物ラジカルを生成し、固体高分子電解質膜の劣化を引き起こすことも懸念される。
このような問題点を解決するために、スルホン酸基を有する高分子化合物からなるイオン交換膜に、セリウムイオンを含ませることが提案されていた(特許文献1)
特許3915846号
しかしながら、従来のものでは、固体高分子電解質膜の耐久性は十分ではなく、さらなる改良が求められていた。
このような状況のもと、本発明者ら、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スルホン酸基を有する重合体とともに、アルミニウムイオン及びアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を含むことで、固体高分子電解質膜の耐久性を改良できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成は以下の通りである。
[1] スルホン酸基を有する重合体と、アルミニウムオン及びアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を含み、前記アルミニウムオン及びアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を前記重合体に対して0.01〜1ミリモル/g含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
[2] 前記アルミニウム化合物が、有機アルミニウム化合物である、上記[1]に記載の固体高分子電解質膜。
[3] 前記有機アルミニウム化合物が、β−ジケトナートを配位子として有する化合物である、上記[2]に記載の固体高分子電解質膜。
[4] 前記アルミニウムオンが、β−ジケトナートを配位子として有するアルミニウムオンである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両側に接して、触媒層とガス拡散層とを有することを特徴とする膜−電極接合体。
[6] 上記[5]に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
[7] スルホン酸基を有する重合体、アルミニウム化合物、及び溶媒を含み、前記アルミニウム化合物を前記重合体に対して0.01〜1ミリモル/g含むことを特徴とする液状組成物。
[8] 前記アルミニウム化合物が、有機アルミニウム化合物である、上記[7]に記載の液状組成物。
[9] 前記有機アルミニウム化合物が、β−ジケトナートを配位子として有する化合物である、上記[7]または[8]に記載の液状組成物。
[10] 上記[7]〜[9]のいずれかに記載の液状組成物をキャスト製膜して得られたことを特徴とする固体高分子電解質膜。
[11] 上記[7]〜[9]のいずれかに記載の液状組成物をキャスト製膜することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
本発明のプロトン伝導膜は、アルミニウムイオンないしアルミニウム化合物を含んでいるために、耐久性に優れる。したがって、本発明のプロトン伝導膜を有する膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池は、耐久性に優れ、長期にわたって安定な発電が可能である。
[固体高分子電解質膜]
本発明の固体高分子電解質膜は、アルミニウム成分とスルホン酸基を有する重合体とからなる。
(i)アルミニウム成分
アルミニウム成分としては、解離してアルミニウムイオンとなったものであっても、アルミニウム化合物であってもよい。固体高分子電解質膜の耐久性をより向上させる観点からは、アルミニウムイオンであることが好ましい。アルミニウムがイオンとして存在する場合には重合体のスルホン酸基とイオン交換されると推察され、イオン交換されたスルホン酸基の過酸化水素又は過酸化物ラジカルによる脱離を効果的に抑制することができるためと推察される。また、固体高分子電解質膜のプロトン伝導性の観点からは、アルミニウム化合物であることが好ましい。アルミニウム化合物として存在するため、スルホン酸基がイオン交換されないためと推察される。
アルミニウムの価数は特に制限されず、とり得るものであればよく、通常3価である。
アルミニウムイオンとしては、カチオンであることが好ましく、具体的には、Al3+、さらには、置換基を有していてもよい炭化水素基が配位した有機錯イオンなどが挙げられる。炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12のアリール基が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。炭化水素基に置換しうる基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリ置換シリル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アミノ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等のN,N−ジ置換アミノ基;水酸基;シロキシ基;メチルシロキシ基、エチルシロキシ基等の置換シロキシ基;シアノ基等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
有機錯イオンの具体例としては、メチルアルミニウムイオン(((CH)Al)2+)、エチルアルミニウムイオン(((C)Al)2+)、フェニルアルミニウムイオン(((C)Al)2+)等の置換基を有していてもよい炭化水素基を配位子として1つ有するアルミニウムイオン、ジメチルアルミニウムイオン(((CHAl)2+)、ジエチルアルミニウムイオン(((CAl)2+)等の置換基を有していてもよい炭化水素基を配位子として2つ有するアルミニウムイオンなどが挙げられる。また、アルミニウムイオンとしては、前述のイオンに水(HO)が配位した水和物イオンやテトラヒドロフラン、ビピリジン類などの有機化合物が配位した錯イオンであってもよい。
これらのイオンの中でも、固体高分子電解質膜の耐久性の観点から、Al3+、炭化水素基を配位子として1または2個有する3価のアルミニウムイオンが好ましい。3価であるイオンが過酸化水素又は過酸化物ラジカルの分解に対して優れた活性を示すためと考えられる。
また、上述のイオンの中でも、固体高分子電解質膜の含水時の膨潤や水への溶出を抑制する観点から、Al3+好ましい。アルミニウムがイオンとして存在する場合には重合体のスルホン酸基とイオン交換されると推察されるが、これらのイオンは、イオン全体としての価数が高く、重合体の架橋度が高くなるためと考えられる。
アルミニウム化合物としては、水溶性のものでも難溶性のものでもいずれであってもよい。
具体的には、酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、無機酸塩などの無機アルミニウム化合物、アルコキシ化合物、有機酸塩、置換基を有していてもよい炭化水素基を配位子として有する化合物、β−ジケトナートを配位子として有する化合物などの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
酸化物としては、酸化アルミニウム(Al)などが挙げられる。
硫化物としては、硫化アルミなどが挙げられる。
水酸化物としては、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))などが挙げられる。
ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム(AlCl)、フッ化アルミニウム(AlF)、ヨウ化アルミニウム(AlI)、臭化アルミニウム(AlBr)などが挙げられる。
シアン化物としては、シアン化アルミニウム(Al(CN))などが挙げられる。
無機酸塩としては、硫酸アルミニウム(Al(SO)、硝酸アルミニウム(Al(NO)、炭酸アルミニウム(Al(CO)、リン酸アルミニウム(AlPSO)、メタリン酸アルミニウム、二リン酸アルミニウム、シクロ四リン酸アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウムなどが挙げられる。
アルコキシ化合物としては、アルミニウムメトキシド(Al(OCH)、アルミニウムエトキシド(Al(OC)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC)、アルミニウムブトキシド(Al(OC)、アルミニウムフェノキシド(Al(OC)、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート(Al(OC)(OC)などが挙げられる。
有機酸塩としては、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO))、シュウ酸アルミニウム(Al((COO))、ヘプタン酸アルミニウム(Al(C13COO))、パルミチン酸アルミニウム(Al(C1531COO))、オレイン酸アルミニウム(Al(C1733COO))、ステアリン酸アルミニウム(Al(C1735COO))、デカン酸アルミニウム(Al(C19COO))、サリチル酸アルミニウム(Al(C(OH)COO))、アクリル酸アルミニウム(Al(CH=CHCOO))安息香酸アルミニウム(Al(CCOO))、酒石酸アルミニウム(Al(C)、クエン酸アルミニウム(Al(C))、乳酸アルミニウム(Al(CHCH(OH)COO))、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
置換基を有していてもよい炭化水素基を配位子として有する化合物としては、置換基を有していてもよい炭化水素基を配位子として通常1〜3個含む。炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12のアリール基が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。炭化水素基に置換しうる基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリ置換シリル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アミノ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等のN,N−ジ置換アミノ基;水酸基;シロキシ基;メチルシロキシ基、エチルシロキシ基等の置換シロキシ基;シアノ基等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
置換基を有していてもよい炭化水素基を配位子として有する化合物の具体例としては、水素化ジエチルアルミニウム、シアン化ジエチルアルミニウムなどのシアン化物、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジフェニルアルミニウムなどの水素化物、フッ化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジフェニルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二ヨウ化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、三塩化トリエチル二アルミニウムなどのハロゲン化物、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシドなどのアルコキシ化合物、ジエチル(プロピオン酸)アルミニウムなどの有機酸塩、ジメチル(ジメチルアミノ)アルミニウム、ジエチル(ジメチルアミノ)アルミニウム、ジフェニル(ジメチルアミノ)アルミニウム、テトラキス(フェニルアミノ)テトラキス(フェニルアルミニウム)、トリメチルアルミニウム、トリビニルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリス(2−メチルブチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、ジメチル(フェニル)アルミニウム、ジメチル(フェニルエチニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジ−μ−クロロビス[(メチル)(η3−ペンタメチルシクロペンタジエニル)アルミニウムなどのアルキル化合物またはアリール化合物などが挙げられる。
β−ジケトナートを配位子として有する化合物としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、(ジベンゾイルメタナト)ジメチルアルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(トロポロナト)アルミニウム、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
また、アルミニウム化合物としては、前述の化合物に水(HO)が配位した水和物、アンモニア(NH)、アルキルアミンが配位したアンミン化合物、テトラヒドロフラン、ビピリジン類などの有機化合物が配位した化合物であってもよい。
アルミニウム化合物としては、含水時における固体高分子電解質膜中からの溶出を抑制する観点からは、水に対して難溶性のものであることが好ましく、具体的には、有機酸塩、β−ジケトナートを配位子として有する化合物などの有機アルミニウム化合物等が好ましい。
このようなアルミニウム成分を含むことで、固体高分子電解質膜は燃料電池の発電により生成される過酸化水素または過酸化物ラジカルに対する耐久性に優れており、しかもスルホン酸基の脱離を抑制する効果をより高くすることができる。
アルミニウム成分が、アルミニウムイオンの場合は、スルホン酸基の水素イオンの少なくとも一部とイオン交換してもよく、また、イオン状態で、固体高分子電解質膜中に存在していてもよい。
アルミニウム成分が、アルミニウム化合物の場合は、固体高分子電解質膜中で均一に分散していることが好ましく、微粒子状で分散していてもよい。
(ii)スルホン酸基を有する重合体
スルホン酸基を有する重合体としては、従来固体高分子電解質膜に使用されていたものでありスルホン酸基を有するものであれば特に制限されない。
たとえば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン、脂肪族ポリカーボネート等の脂肪族炭化水素系重合体にスルホン酸基が導入された重合体(スルホン酸基を有する脂肪族炭化水素系重合体)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール等の主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系重合体にスルホン酸基が導入された重合体(スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体)も用いることが可能である。
また、スルホン酸基を有する全フッ化炭素系重合体(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)も使用することができる。全フッ化炭素系重合体としては特に限定されないが、CF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−SOHで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体である。
スルホン酸基を有する全フッ化炭素系重合体を用いる場合、重合後にフッ素化することにより重合体の末端がフッ素化処理されたものを用いてもよい。
スルホン酸基を有する全フッ化炭素系重合体としては、Nafion(登録商標、デュポン社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)社製)、アシプレックス(旭化成工業(株)社製)などが市販されている。
また、パーフルオロアルキルスルホン酸ポリマーがポリテトラフルオロエチレンと複合化したものや、ポリテトラフルオロエチレングラフトスルホン化ポリスチレンなどの部分フッ素化スルホン化ポリマーも使用することができる。たとえば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンにスルホン酸基を有するポリマーを含浸させたGORE−SELECT(ジャパンゴアテックス製)なども使用可能である。
これらのうち、本発明ではスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体を使用することが好ましい。
このようなスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体としては、本願出願人による、特開2008−247857号公報、特開2007−210919号公報、特開2007−91788号公報などに記載のものが例示される。
具体的に本発明で使用されるスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体は、スルホン酸基を有する構造単位と、芳香族構造を有する構造単位とを含む。
[スルホン酸基を有する構造単位]
スルホン酸基を有する構造単位は下記式(1)で表される。
Figure 0005440330
上記式中、Ar11、Ar12、Ar13は、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環、含窒素複素環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する2価の基を示す。Yは、−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−,−COO−、−(CF−(uは1〜10の整数である)、−C(CF−、または直接結合を示す。
Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO−、−SO−、−(CH−(lは1〜10の整数である)、または−C(CH−を示す。
11は、直接結合、−O(CH−、−O(CF−、−(CH−または−(CF−を示す(pは、1〜12の整数を示す)。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子または脂肪族炭化水素基、脂環基、酸素を含む複素環基を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR12およびR13のうち少なくとも1個は水素原子である。
は、0〜4の整数。xは、1〜5の整数。aは、0〜1の整数。bは、0〜3の整数を示す。
前記スルホン酸基を有する構造単位は、さらに下記式(1−1)で表されるものが好ましい。
Figure 0005440330
(式(1−1)中、Yは−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF−(lは1〜10の整数である)、−C(CF−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH−(lは1〜10の整数である)、−C(CH−、−O−、−S−、−CO−、−SO−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Arは−SOHまたは−O(CHSOHまたは−O(CFSOHで表される置換基を有する芳香族基を示す。pは1〜12の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
スルホン酸基を有する構造単位の具体的構造としては、下記を挙げることができる。
Figure 0005440330
上記芳香族炭化水素系共重合体がこのようなスルホン酸基を有する構造単位を、窒素を含む複素環構造を有する構造単位とともに有することで、良好な耐久性が得られるという作用効果を奏することができる。
[芳香族構造を有する構造単位]
さらに、上記芳香族炭化水素系共重合体は、芳香族構造を有する構造単位を有する。
かかる重合体が、このような芳香族構造を有する構造単位を含有していると、芳香族炭化水素系共重合体の疎水性が著しく向上する。このため、従来と同様のプロトン伝導性を具備しながら、熱水中での膨潤を抑制し、耐熱性を付与することができるため好ましい。
芳香族構造を有する構造単位は、下記式(2)で表される。
Figure 0005440330
上記式中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24は、それぞれ独立に、ベンゼン環、縮合芳香環または含窒素複素環の構造を有する2価の基を示す。
ただし、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24は、その水素原子の一部またはすべてが、フッ素原子、ニトロ基、ニトリル基、または水素原子の一部またはすべてがハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アリル基若しくはアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基で置換されていてもよい。構造単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構造単位との接続を意味する。
A、Dは、それぞれ独立に、直接結合または、−CO−、−COO−、−CONH−、−SO−、−SO−、−(CF−(lは1〜10の整数である)、−(CH−(lは1〜10の整数である)、−CR’−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−またはS−を示し、
Bは酸素原子または硫黄原子であり、
s、tは、それぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは、0または1以上の整数を示す。
前記芳香族構造を有する構造単位は、さらに、下記式(2−1)で表されるものが好ましい。
Figure 0005440330
(式(2−1)中、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF−(lは1〜10の整数である)、−C(CF−、−(CH−(lは1〜10の整数である)、−C(CR’−(R’は炭化水素基、環状炭化水素基)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、R〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。s、tは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。)
このような構成単位として具体的には、以下のものが例示される。
Figure 0005440330
Figure 0005440330
以上のような芳香族環構成単位を含有していると、共重合体の疎水性が著しく向上する。このため、従来と同様のプロトン伝導性を具備しながら、優れた熱水耐性を付与することができる。
[含窒素複素環基を有する構成単位]
本発明では、下記式(3)で表される含窒素複素環基を有する構成単位を含んでいてもよい。
Figure 0005440330
上記式(3)中、Ar10は、ベンゼン環、縮合芳香環、含窒素複素環からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を有する2価の基を示す。ただし、Ar10は、その水素原子の一部又はすべてが、フッ素原子、ニトロ基、ニトリル基、又は水素原子の一部またはすべてがフッ素置換されていてもよいアルキル基、アリル基若しくはアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基で置換されていてもよい。
式中、Vは、電子吸引性基であれば特に限定されないが、好ましくは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO−又は−または−SO−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
は、直接結合、または特に限定されない、任意の二価の有機基である。二価の有機基としては、炭素数1〜20炭化水素基であればよく、具体的には、メチレン基、エチレン基などのアルキレン基、フェニレン基などの芳香族環があげられる。また、Rとして、−W−Ar−で示される基でもよい。
eは、0〜4の整数を示し、fは、1〜5の整数を示す。
は含窒素複素環基を示し、窒素を含む5員環、6員環構造が挙げられる。また、複素環内の窒素原子の数は、1個以上あれば特に制限されない、また複素環内には、窒素以外に、酸素や硫黄を含んでいても良い。
を構成する含窒素複素環基として、具体的には、ピロール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、1,3,5−トリアジン、ピリミジン、ピリタジン、ピラジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ブリン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、カルバゾール、アクリジン、キノキサリン、キナゾリンからなる含窒素複素環化合物およびこれらの誘導体の炭素または窒素に結合する水素原子が引き抜かれてなる構造の基である。
これらの含窒素複素環基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基等のアリール基、シアノ基、フッ素原子などがあげられる。
含窒素複素環基を有する構造は、上記芳香族炭化水素系共重合体中に、好ましくは下記式(3−1)で表される構造を有している。
Figure 0005440330
上記式(3−1)中、V、e、f、RおよびRは、式(3)の場合と同様である。構成単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構成単位との接続を意味する。
また、上記式(3)における、Vは−CO−か−SO−であることが好ましい。−CO−はピリジン環と組合わせると、共役による安定化効果により熱的に安定な構造となりやすい。また、−SO−は電子密度を下げて窒素の塩基性度がより抑制され、これによって、低湿度領域でのプロトン伝導性を特に高めることができる。
主鎖の芳香環と電子吸引性基Vは、直接結合しているのが安定性の面から好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の2価の基(すなわちR)が介在しても良い。ここで介在構造としては、炭素数1〜20の二価の有機基であれば特に限定されない。
含窒素複素環基を有する構成単位を含むことにより、塩基性が付与され、プロトン伝導性を損なうことなく、高温下で高いスルホン酸の安定性を有する固体高分子電解質膜を得ることができる。
[芳香族炭化水素系共重合体の構造]
本発明で使用される芳香族炭化水素系共重合体は、下記一般式(4)で表される。
Figure 0005440330
一般式(4)において、A、B、D、V、Y、Z、Ar、Ar11、Ar12、Ar13、Ar21〜Ar24、R11〜R13、R、R、a、b、s、t、r、x、xは、それぞれ前記式(1)〜(3)中のものと同義である。x、y、zはx+y+z=100モル%とした場合のモル比を示す。
本発明で用いられる芳香族炭化水素系共重合体1モルが有する式(1)で表される構造単位のモル数を(x)、式(3)で表される構造単位のモル数を(y)、式(2)で表される構造単位のモル数を(z)とするとき、(x)/{(x)+(y)+(z)}×100の値は、好ましくは0.05〜100であり、さらに好ましくは0.5〜99.9であり、特に好ましくは1〜90である。
また、式(3)で表される構造単位は任意成分であるため、(y)は0であってもよい。また、式(3)で表される構造単位を含む場合、((y)/{(x)+(y)+(z)}×100の値は、好ましくは0.05〜99.95であり、さらに好ましくは0.1〜99であり、特に好ましくは0.5〜90である。
芳香族炭化水素系共重合体中の式(3)で表される構造単位のモル数を(y)がこのような量で含まれると、該スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体から得られる高分子電解質は、熱水条件下における膨潤抑制、面積変化抑制に優れ、高温条件下における架橋耐性に優れるため好ましい。
また、式(3)で表される構造単位と式(1)で表される構造単位の比率(y)/(x)は、0.01〜20、好ましくは0.1〜15、より好ましくは0.5〜10であることが好ましい。式(3)で表される構造単位と式(1)で表される構造単位の比率が上記範囲にあると、共重合体は、プロトン伝導度を低下させることなく、熱水中での膨潤を抑制し、耐熱性を向上させることができるため好ましい。
また、(z)/{(x)+(y)+(z)}×100の値は、好ましくは0〜99.5であり、さらに好ましくは0.01〜99であり、特に好ましくは0.1〜98である。
本発明で使用されるスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万、さらに好ましくは5万〜30万である。
スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体のイオン交換容量は0.5〜4.0meq/g、好ましくは0.5〜3.5meq/g、さらに好ましくは0.8〜3.2meq/gであることが望ましい。イオン交換容量が、0.5meq/g以上であれば、プロトン伝導度が高く、かつ発電性能の高い高分子電解質を得ることができるため好ましい。一方、3.5meq/g以下であれば、充分に高い耐水性を具備できるため好ましい。
上記のイオン交換容量は、各構造単位の種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。したがって、重合時に構造単位を誘導する前駆体(モノマー・オリゴマー)の仕込み量比、種類を変えれば調整することができる。
該してスルホン酸基を含む構造単位が共重合体中に多くなると、イオン交換容量が増えプロトン伝導性が高くなるが、耐水性が低下する傾向にあり、一方、これらの構造単位が少なくなると、イオン交換容量が小さくなり、耐水性が高まるが、プロトン伝導性が低下する傾向にある。
本発明で使用されるスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体は、例えば、特開2004−137444号公報に記載の方法で、スルホン酸基を有する構造単位となるスルホン酸エステルと、含窒素芳香族環構造を有する構造単位となるモノマー、芳香族構造を有する構造単位となるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
また、例えば、特開2001−342241号公報に記載の方法で、スルホン酸基を有する構造単位となるが、スルホン酸基が導入されていないモノマーと、含窒素芳香族環構造を有する構造単位となるモノマー、芳香族構造を有する構造単位となるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、この重合体を、スルホン化剤を用いて、スルホン化することにより合成することもできる。
式(1)においてR11−SO13、式(1−1)においてArが、−O(CHSOHまたは−O(CFSOHで表される置換基を有する芳香族基である場合には、例えば、特願2003−295974号(特開2005−60625号公報)に記載の方法で、スルホン酸基を有する構造単位となるが、スルホン酸基が導入されていないモノマーと、含窒素芳香族環構造を有する構造単位となるモノマー、芳香族構造を有する構造単位となるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、この重合体と、プロパンスルトン、ブタンスルトンなどを反応させることでアルキルスルホン酸またはフッ素置換されたアルキルスルホン酸を導入する方法で合成することもできる。
[固体高分子電解質膜の構成]
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、前記スルホン酸基を有する重合体と、アルミニウム成分とを含む。
このようなアルミニウム成分は、前記重合体ならびにアルミニウムイオン及びアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を重合体に対して0.01〜1ミリモル/g、好ましくは0.05〜0.5ミリモル/gの範囲にあることが望ましい。
このような範囲でアルミニウム成分が含まれていると、固体高分子電解質膜として良好な耐久性とプロトン伝導性を示す。
また、本発明にかかる固体高分子電解質膜は、上記アルミニウム成分にも、他の金属化合物または金属イオンを含むこともできる。他の金属化合物または金属イオンとしては、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、ネオジウム(Nd)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、及び、エルビウム(Er)等の金属化合物またはこれらの金属イオンが挙げられる。
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、上記アルミニウム成分とスルホン酸基を有する重合体とを含む液状組成物を用いて作製することができ、また、スルホン酸基を有する重合体の溶液を、基体上に流延してフィルム状に成形した後、アルミニウム化合物を含む溶液中に浸漬することで作製することもできる。
[液状組成物]
本発明にかかる液状組成物は、アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも一種とスルホン酸基を有する重合体とを含む。なお重合体に対するアルミニウム成分の量は、前記した通りである。
アルミニウム化合物としては、後述する溶媒に対して溶解性を示すものが固体高分子電解質膜中に均一にアルミニウム化合物を分散させる観点から好適に用いられる。
溶媒に対して溶解性を示すものとしては、上述のアルミニウム化合物の中でも、例えば、有機酸塩、β−ジケトナートを配位子として有する化合物等が挙げられる。中でも取扱いが容易であるなどの観点からβ−ジケトナートを配位子として有する化合物がさらに好ましく用いられる。
なお、これらのアルミニウム化合物は、含水時の固体高分子電解質膜からの溶出を抑制する観点から、アルミニウムをイオンとして解離する化合物、または水中で酸化あるいは加水分解されることで水に対して難溶性を示す化合物であることが好ましい。
また、後述する溶媒に対して難溶性の化合物を用いる場合には、該化合物を均一に分散させることが好ましい。後述する溶媒に対して難溶性を示す化合物としては、たとえば、酸化物などが挙げられる。均一に分散させる方法としては、アルミニウム化合物を微粒化する方法や分散剤を用いる方法などが挙げられる。
液状組成物は、前記アルミニウム成分およびスルホン酸基を有する重合体の他に、通常、溶媒を含む。
溶媒としては、前記スルホン酸基を有する重合体を溶解する溶媒や膨潤させる溶媒であれば良く、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン系極性溶剤や、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン等のエーテル類などの溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に溶解性、溶液粘度の面から、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」ともいう。)が好ましい。
また、上記溶媒として、非プロトン系極性溶剤と他の溶剤との混合物を用いる場合、該混合物の組成は、非プロトン系極性溶剤が95〜25質量%、好ましくは90〜25質量%、他の溶剤が5〜75質量%、好ましくは10〜75質量%(但し、合計は100質量%)である。他の溶剤の量が上記範囲内にあると、溶液粘度を下げる効果に優れる。この場合の非プロトン系極性溶剤と他の溶剤との組み合わせとしては、非プロトン系極性溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン、他の溶剤として幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があるメタノールが好ましい。
本発明にかかる液状組成物は、アルミニウム成分、スルホン酸基を有する重合体とがいずれも溶解するものであっても、少なくとも一方が溶解せずに分散したものであっても、溶解物と分散物との混合物であってもよい。
液状組成物中の上記スルホン酸基を有する重合体濃度は、分子量にもよるが、通常、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。5質量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、40質量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
なお、溶液粘度は、上記スルホン酸基を有する重合体の分子量や、ポリマー濃度や、添加剤の濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。粘度が低いと、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、粘度が高すぎると、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
本発明にかかる液状組成物は、前記溶媒中でスルホン酸基を有する重合体とアルミニウム化合物を混合することによって、調製することができる。具体的には、スルホン酸基を有する重合体を前記溶媒中に溶解又は分散させた後、アルミニウム化合物をこれに混合することによって、調製する方法、またはアルミニウム化合物を前記溶媒中に溶解又は分散させた後に、スルホン酸基を有する重合体を溶解又は分散させる方法が挙げられる。
液状組成物には、上記スルホン酸基を有する重合体およびアルミニウム成分以外に、硫酸、リン酸などの無機酸、リン酸ガラス、タングステン酸、リン酸塩水和物、β−アルミナプロトン置換体、プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子、カルボン酸を含む有機酸、スルホン酸を含む有機酸、ホスホン酸を含む有機酸、適量の水などを併用しても良い。
[固体高分子電解質膜の製造方法]
本発明にかかる固体高分子電解質膜は、例えば、前記液状組成物を、基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法などにより、製造することができる。基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、たとえばプラスチック製、金属製などの基体が用いられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。
上記のようにして成膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の有機溶剤を水と置換することができ、得られる固体高分子電解質膜中の残留溶媒量を低減することができる。
なお、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
製膜後、さらに、スルホン酸基を有する重合体を含む溶液を塗布して、固体高分子電解質膜を多層構造にしてもよい。多層構造にするとアルミニウム成分を偏在させることができる。この場合、固体高分子電解質膜の耐久性とプロトン伝導性の観点から、膜−電極接合体を作製した際にカソード側の層にのみアルミニウム成分を含有し、それ以外の層にはアルミニウム成分を含まない構造とすることもできる。
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減された膜が得られるが、このようにして得られる膜の残存溶媒量は、通常5質量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる膜の残存溶媒量を1質量%以下とすることができる。このような条件としては、たとえば、未乾燥フィルム1重量部に対する水の使用量が50重量部以上であり、浸漬する際の水の温度が10〜60℃、浸漬時間が10分〜10時間である。
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、膜を得ることができる。
本発明の方法により得られる固体高分子電解質膜は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
また、別に多孔質基材やシート状の繊維質物質を用いることで、補強された固体高分子電解質膜を製造することもできる。
補強された固体高分子電解質膜を製造する方法としては、たとえば、液状組成物を多孔質基材やシート状の繊維質物質に含浸して、スルホン酸基を有する重合体を多孔質基材やシート状の繊維質物質の内部の細孔に充填させる方法、上記液状組成物を多孔質基材やシート状の繊維質物質に塗布して、スルホン酸基を有する重合体を多孔質基材やシート状の繊維質物質の内部の細孔に充填させる方法、ならびに、上記液状組成物から膜を形成した後、多孔質基材やシート状の繊維質物質に前記膜を重ねて熱プレスし、スルホン酸基を有する重合体を多孔質基材やシート状の繊維質物質の細孔に充填させる方法などを挙げることができる。
また、多層構造の固体高分子電解質膜を形成する場合には、上述の各方法などによって得られた固体高分子電解質膜表面に、さらにダイコート、スプレーコート、ナイフコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコートなどの公知の方法で、スルホン酸基を有する重合体を含む組成物を塗布し、必要に応じて乾燥する、あるいは、スルホン酸基を有する重合体を含む組成物から形成された膜を上述の方法で得られた膜に重ねて熱プレスすることなどが挙げられる。なお、塗布量を調節して、ポリマー層の厚さを調製してもよく、例えば一方のポリマー層を厚く、他方を薄くしてもよい。なお、多層構造の固体高分子電解質膜を形成する場合には、少なくとも一つの層を形成する際に、アルミニウム化合物を含む上記液状組成物を用いればよい。このため、すでに形成された固体高分子電解質膜にアルミニウム成分が含まれている場合、積層のために塗布ないし熱プレスに供されるスルホン酸基を有する重合体を含む組成物には、アルミニウム成分が含まれていなくともよい。また、形成された固体高分子電解質膜にアルミニウム成分が含まれていない場合、積層のために塗布ないし熱プレスに供される組成物として、本発明にかかるアルミニウム成分を含む液状組成物を使用してもよく、また、アルミニウム化合物を含まず、スルホン酸基を有する重合体を含む組成物を、塗布して多層構造を形成後、あるいは該組成物からなるフィルム状に成形した熱プレスする前ないし後、アルミニウム成分を含む溶液中に浸漬させてもよい。
多孔質基材としては、厚さ方向に対して貫通する多数の細孔又は空隙を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、各種樹脂からなる有機多孔質基材、ガラス、アルミナなど金属酸化物や金属自体から構成される無機多孔質基材等が挙げられる。
多孔質基材としては、厚さ方向に対してほぼ平行な方向に貫通している貫通孔を多数個有するものであってもよい。
このような、多孔質基材として、特開2008−119662号公報、特開2007−154153号公報、特開平8−20660号公報、特開平8−20660号公報、特開2006−120368号公報、特開2004−171994号公報、特開2009−64777号公報に開示されたものを使用することができる。
本発明で使用される多孔質基材としては、有機多孔質基材が好ましく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、高分子量ポリエチレン、架橋型ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリロトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ガラスからなる群から選ばれる1種以上からなるものが好ましい。なお、ポリオレフィンとしては、高分子量ポリエチレン、架橋型ポリエチレン、ポリエチレンなどが望ましい。
本発明では、これらの中でも、上記スルホン酸基を有する重合体と組合わせる観点では多孔質基材が、ポリテトラフルオロエチレン、高分子量ポリエチレン、架橋型ポリエチレン、ポリエチレン等のポリオレフィンから構成されたものが好ましい。また必要に応じて、ポリオレフィンは親水化処理されていてもよい。親水化処理は、アルカリ金属溶液を使用して、多孔質を構成するポリオレフィンを変性させる処理であり、かかる処理により、多孔質膜表面が変性され親水性が付与される。なお、変性部分は褐色化することもあるので、褐色層を過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ、オゾンなどにより酸化分解して除去してもよい。このような親水化処理を化学エッチングということもある。アルカリ金属溶液としては、メチルリチウム、金属ナトリウム−ナフタレン錯体、金属ナトリウム−アントラセン錯体などのテトラヒドロフラン等の有機溶剤溶液、金属ナトリウム−液体アンモニアの溶液などが挙げられる。
また、シート状の繊維質物質としては、不織布、織布、編布等が挙げられる。織布を構成する繊維としては、ポリエチレン繊維、含フッ素重合体強化繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンスルフィドスルフォン繊維、ポリスルフォン繊維、ガラス繊維等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリスチレン系樹脂(例えば、結晶性ポリスチレン、非晶性ポリスチレンなど)、芳香族ポリアミド系樹脂、又はポリウレタン系樹脂などの有機成分、あるいは、ガラス、炭素、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ワラストナイトなどの無機成分から構成されるものが使用できる。
また、本発明にかかる固体高分子電解質膜は、他にも、スルホン酸基を有する重合体の溶液を、基体上に流延してフィルム状に成形した後、アルミニウム化合物を含む組成物中に浸漬することで作製することもできる。
アルミニウム成分を含む組成物に用いられるアルミニウム成分の分散媒あるいは溶媒としては、得られた固体高分子電解質膜が溶出しないものが好適に用いられ、具体的には水が挙げられる。
アルミニウム成分としては、固体高分子電解質膜中にアルミニウム成分を均一に分散させる観点から、水溶性のものであることが好ましく、具体的には、上述の化合物の中でも無機酸塩等が挙げられる。また、これらのアルミニウム成分は、含水時の固体高分子電解質膜からの溶出を抑制する観点から、アルミニウムをイオンとして解離する化合物、または水中で酸化あるいは加水分解されることで水に対して難溶性を示す化合物であることが好ましい。
また、アルミニウム化合物としては、水に対して難溶性を示す化合物を用いることもできる。水に対して難溶性を示す化合物としては、たとえば、酸化物などが挙げられる。
[膜−電極接合体]
本発明にかかる膜−電極接合体は、前記固体高分子電解質膜と、触媒層と、ガス拡散層とを備えた膜−電極接合体である。典型的には、前記固体高分子電解質膜を挟んで一方にはカソード電極用の触媒層と他方にはアノード電極用の触媒層が設けられており、さらにカソード側およびアノード側の各触媒層の固体高分子電解質膜と反対側に接して、カソード側およびアノード側にそれぞれガス拡散層が設けられている。
ガス拡散層、触媒層として、公知のものを特に制限なく使用可能である。
具体的にガス拡散層は、多孔性基材又は多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる。ガス拡散層が多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる場合には、微多孔層が触媒層に接して設けられる。カソード側およびアノード側のガス拡散層は、撥水性を付与するために含フッ素重合体を含んでいることが好ましい。
触媒層は、触媒、イオン交換樹脂電解質から構成される。触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、貴金属触媒は、合金や混合物などのように、2種以上の元素が含まれるものであってもよい。このような貴金属触媒は、通常、高比表面積カーボン微粒子に担持したものを用いることができる。
イオン交換樹脂電解質は、前記触媒を担持したカーボンを結着させるバインダー成分として働くとともに、アノード極では触媒上の反応によって発生したイオンを固体高分子電解質膜へ効率的に供給し、また、カソード極では固体高分子電解質膜から供給されたイオンを触媒へ効率的に供給する。
本発明で用いられる触媒層のイオン交換樹脂としては、触媒層内のプロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマーが好ましい。このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などがあるが特に限定されるものではない。また、このようなプロトン交換基を有するポリマーも、特に限定されることなく選ばれるが、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマーや、スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体などが好ましく用いられる。また、上記の固体高分子電解質膜を構成するスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体をイオン交換性樹脂として使用してもよく、さらにプロトン交換基を有するフッ素原子を含むポリマーや、エチレンやスチレンなどから得られる他のポリマー、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。このようなイオン交換樹脂電解質は、公知のものを特に制限なく使用可能であり、たとえばNafion(DuPont社、登録商標)やスルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体等を特に制限なく使用できる。
本発明で用いられる触媒層に必要に応じてさらに、炭素繊維、イオン交換基を有しない樹脂を用いてもよい。これらの樹脂としては撥水性の高い樹脂であることが好ましい。例えば含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができるが、好ましくは含フッ素共重合体である。
[燃料電池]
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、前記膜−電極接合体を含むことを特徴としている。具体的には、少なくとも一つ以上の膜−電極接合体及びその両側に位置するセパレータを含む少なくとも一つの電気発生部;燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給部;及び酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む型燃料電池であって、膜−電極接合体が上記記載のものであることを特徴とする。
本発明の電池に用いられるセパレータとしては、通常の燃料電池に用いられるものを用いることができる。具体的にはカーボンタイプのもの、金属タイプのものなどを用いることができる。
また、燃料電池を構成する部材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。本発明の電池は単セルで用いることもできるし、複数の単セルを直列に繋いだスタックとして用いることもできる。スタックの方法としては公知のものを用いることができる。具体的には単セルを平面状に並べた平面スタッキング、及び燃料または酸化剤の流路がセパレータの裏表面にそれぞれ形成されているセパレータを介して単セルを積み重ねるバイポーラースタッキングを用いることができる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例での評価は以下のようにして行なった。
[スルホン酸当量]
スルホン酸化重合体を、1N塩酸水で洗浄後、フリーに残存している酸を除去するため水洗水が中性になるまでイオン交換水で充分に洗浄し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点から、スルホン酸当量を求めた。
[分子量の測定]
スルホン酸化重合体の分子量、または耐熱試験後のスルホン酸化重合体の分子量を、臭化リチウム7.83gとリン酸3.3mlと溶媒からなる混合溶液を溶離液として用い、GPCを用い、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
[合成例1]
(1)疎水性ユニットの合成
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル49.4g(0.29モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン88.4g(0.26モル)、炭酸カリウム47.3g(0.34モル)をはかりとった。窒素置換後、スルホラン346ml、トルエン173mlを加えて攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、150℃に加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次に、2,6−ジクロロベンゾニトリル12.3g(0.072モル)を加え、さらに5時間反応した。
得られた反応液を放冷後、トルエン100mlを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン250mlに溶解した。これをメタノール2Lに再沈殿し、目的の化合物107gを得た。
得られた目的の化合物のGPC(溶媒:テトラヒドロフラン)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は7,300であった。得られた化合物は下記構造式で表されるオリゴマーであった。
Figure 0005440330
(2)親水性ユニットの合成
攪拌機、冷却管を備えた3Lの三口フラスコに、クロロスルホン酸233.0g(2モル)を加え、続いて2,5−ジクロロベンゾフェノン100.4g(400ミリモル)を加え、100℃のオイルバスで8時間反応させた。所定時間後、反応液を砕氷1000gにゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリドを得た。粗結晶は精製せず、そのまま次工程に用いた。
2,2−ジメチル−1−プロパノール(ネオペンチルアルコール)38.8g(440ミリモル)をピリジン300mLに加え、約10℃に冷却した。ここに上記で得られた粗結晶を約30分かけて徐々に加えた。全量添加後、さらに30分撹拌し反応させた。反応後、反応液を塩酸水1000ml中に注ぎ、析出した固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、粗結晶を得た。これをメタノールで再結晶し、下記構造式で表される3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルの白色結晶を得た。
Figure 0005440330
(3)塩基性ユニットの合成
撹拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの3口フラスコに、フルオロベンゼン240.2g(2.50モル)を取り、氷浴で10℃まで冷却し、2,5−ジクロロ安息香酸クロライド134.6g(0.50モル)、塩化アルミニウム86.7g(0.65モル)を反応温度が40℃を超えないように徐々に添加した。添加後、40℃で8時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した後、氷水に滴下し、酢酸エチルから抽出を行った。5%重曹水により中和した後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させた後、エバポレーターでにより溶媒を留去した。メタノールから再結晶を行うことにより、中間体の2,5−ジクロロ−4’−フルオロベンゾフェノンを130g、収率97%で得た。
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた2Lの3
口フラスコに、上記2,5−ジクロロ−4’−フルオロベンゾフェノン130.5g(0.49モル)、2−ヒドロキシピリジン46.1g(0.49モル)、炭酸カリウム73.7g(0.53モル)、を取り、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)500mL、トルエン100mLを加え、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱、撹拌下130℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。その後、大部分のトルエンを除去し、130℃で10時間反応を続けた。得られた反応液を放冷後、濾液を2Lの水/メタノール(9/1)中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥した。撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた2Lの3口フラスコに乾燥物を取り、トルエン1L中で100℃で撹拌し、残留した水分を留去し溶解させた。放冷後、結晶化物を濾過することにより下記構造式で表される淡黄色の2,5−ジクロロ−4’−(ピリジン−2−イル)ベンゾフェノンを142g、収率83%で得た。
Figure 0005440330
(4)スルホン酸基を有する重合体の合成
撹拌機、温度計、窒素導入管を接続した1Lの3口フラスコに、乾燥したN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)166mLを(1)で合成したオリゴマー13.4g(1.8ミリモル)、(2)で合成した3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル 37.6g(93.7ミリモル)、(3)で合成した2,5−ジクロロ−4’−(ピリジン−2−イル)ベンゾフェノン 1.61g(4.7ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.62g(4.0ミリモル)、トリフェニルホスフィン10.5g(40.1ミリモル)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0ミリモル)、亜鉛15.7g(240.5ミリモル)の混合物中に窒素下で加えた。
反応系を撹拌下に加熱し(最終的には82℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇が観察された。重合反応溶液をDMAc175mLで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い濾過した。撹拌機を取り付けた1Lの3つ口で、この濾液に臭化リチウム24.4g(281ミリモル)を1/3ずつ3回に分け1時間間隔で加え、内温120℃で5時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン4Lに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N硫酸1500mLで攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、生成物は洗浄液のpHが5以上となるまで、イオン交換水で洗浄後、80℃で一晩乾燥し、目的の塩基性ユニットが導入されたスルホン酸基を有する重合体38.0gを得た。この脱保護後のスルホン酸基を有する重合体のGPC(溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mn=63000、Mw=194000であった。この重合体のイオン交換容量は2.33meq/gであった。得られたスルホン酸基を有する重合体は、下記構造式で表される化合物(重合体A)である。
Figure 0005440330
[合成例2]
(1)親水性ユニットの合成
2,2−ジメチルプロパノール44.9g(510.2ミリモル)をピリジン147mlに溶解させた。これに、0℃で、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸クロリド100g(405.6ミリモル)を加え、室温で、1時間攪拌、反応させた。反応混合物に、酢酸エチル740mL及び2mol%塩酸740mLを加え、30分間撹拌した後、静置し、有機層を分離した。分離した有機層を水740mL、10重量%炭酸カリウム水溶液740mL、飽和食塩水740mLで順次洗浄した後、減圧条件下で、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム溶媒)で精製した。得られた溶出液から溶媒を、減圧条件下で留去した。残渣を、65℃でヘキサン970mLに溶解させた後、室温まで冷却した。析出した固体を濾過により分離した。分離した固体を乾燥し、下記構造式で表される2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)の白色固体を99.4g、収率82.1%で得た。
Figure 0005440330
(2)スルホン酸基を有する重合体の合成
無水塩化ニッケル1.62g(12.5ミリモル)とジメチルスルホキシド(DMSO)15mLとを混合し、内温70℃ に調整した。これに、2,2’−ビピリジン2.15g(13.8モル)を加え、同温度で10分撹拌し、ニッケル含有溶液を調製した。(1)で合成した2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)1.49g(5.0ミリモル)と下記構造式
で示されるスミカエクセルPES5200P(住友化学社製、Mn=40000、Mw=94000)0.50g(0.013ミリモル)とをジメチルスルホキシド(DMSO)5mLに溶解させて得られた溶液に、亜鉛1.23g(18.8ミリモル)を加え、70℃に調整した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、70℃で4時間重合反応を行った。反応混合物をメタノール60mL中に加え、次いで、6mol/L塩酸60mLを加え、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により分離し、乾燥し、灰白色の重合中間体を1.62g得た。得られた重合中間体1.62gを、臭化リチウム1.13g(13.0ミリモル)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)56mLとの混合溶液に加え、120℃で24時間反応させた。反応混合物を、6mol/L塩酸560mL中に注ぎ込み、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により分離した。分離した固体を乾燥し、灰白色の目的のスルホン酸基を有する重合体0.42gを得た。この脱保護後のスルホン酸基を有する重合体のGPC(溶媒:N−メチル−2ピロリドン)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mn=75000、Mw=173000であった。この重合体のイオン交換容量は1.95meq/gであった。
Figure 0005440330
得られたスルホン酸基を有する重合体は、下記構造式で表される化合物(重合体B)である。
Figure 0005440330
[実施例1]
合成例1で得られた重合体A16gと、アルミキレートD(Al(C(C)、76%イソプロパノール溶液、川研ファインケミカル社製)0.89gをメタノール/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)=40/60の混合溶媒84mlに溶解した溶液をPETフィルムの上にダイコータにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。これを大量の蒸留水に一晩浸漬し、膜中の残存NMPを希釈により取り除いた後、風乾し、膜厚40μmの膜を得た。
この膜から5cm×5cmの大きさを切り出し、110℃、減圧下で2時間乾燥した後、質量を精秤し、550℃で2日間静置して、残った灰分を0.1規定硝酸水溶液に溶解させ、アルミニウムを完全に抽出した液を得た。この液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析にて測定することで、膜中のアルミニウムを定量したところ、アルミニウム量は重合体Aとアルミニウム成分の総質量に対して0.11ミリモル/gであり、スルホン酸基の4.7モル%であることが判明した。また、加圧下で120℃の熱水に膜を100時間浸漬させ、上記と同様にICP測定を行ったところ、熱水浸漬前後でのアルミニウム量に変化はなく、アルミニウムの熱水への溶出は起こっていないことが判明した。
[アノード電極ペーストの調製]
次に、200mlのポリボトルに直径5mmのジルコニアボール(ニッカトー社製「YTZボール」)80gを入れ、白金ルテニウム担持カーボン粒子(田中貴金属工業社製「TEC61E54」、Pt:29.8質量%担持、Ru:23.2質量%担持)1.28g、蒸留水3.60g、n−プロピルアルコール12.02gおよびNafion(登録商標) D2020(DuPont社製、ポリマー濃度21%分散液、イオン交換容量1.08meq/g)3.90gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、アノード電極ペーストを得た。
[カソード電極ペーストの調製]
次に、200mlのポリボトルに直径5mmのジルコニアボール80gを入れ、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業社製「TEC10E50E」、Pt:45.6質量%担持)1.25g、蒸留水3.64g、n−プロピルアルコール11.91gおよびNafion(登録商標) D2020 4.40gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、カソード電極ペーストを得た。
[電極の製造]
高分子電解質膜の片面に、5cm×5cmの開口を有するマスクを用いて上記アノード電極ペーストをドクターブレードにて塗布し、また上記電極ペーストを塗布していない面に、5cm×5cmの開口を有するマスクを用いて、ドクターブレードにて上記カソード電極ペーストを塗布した。これを120℃で60分間乾燥した。各電極触媒層の触媒塗布量は0.50mg/cmであった。
[ガス拡散層]
ガス拡散層としてSGL CARBON社製のGDL24BCを用いた。
[燃料電池の作製]
上記電極触媒層が両面に形成された電解質膜を、2枚のガス拡散層で挟み、圧力60kg/cm下、160℃×20minの条件でホットプレス成形して、膜−電極接合体を作製した。得られた電極−膜接合体の両側にガス流路を兼ねるセパレータを積層し、これを2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cmの評価用燃料電池を作製した。
[性能評価]
(1)OCV耐久性試験
上記評価用燃料電池のカソード電極側に常圧で0.2L/minの流量で空気を供給し、アノード電極側に常圧で0.2L/minの流量で純水素を供給し、セル温度90℃、カソード電極側相対湿度20%、アノード電極側相対湿度20%として、発電は行わずに開回路状態で500時間運転し、その間の電圧低下速度を測定した。結果を表1に示す。
(2)OCV耐久性試験前後の出力電圧測定
上記評価用燃料電池のカソード電極側に背圧120kPa、利用率40%で空気を供給し、アノード電極側に背圧120kPa、利用率70%で純水素を供給し、セル温度80℃、カソード電極側相対湿度50%、アノード電極側相対湿度50%として、上記OCV耐久試験前後の電流密度1A/cmでのセル電圧を測定し、セル電圧の低下度を求めた。結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1において重合体Aのかわりに合成例2で得られた重合体Bを用いた以外は実施例1と同様にして、膜厚40μmの膜を得た。この膜は、実施例1と同様のICP測定により、アルミニウム量は重合体Bとアルミニウム成分の総質量に対して0.11ミリモル/gであり、スルホン酸基の5.6モル%であることが判明した。また、実施例1と同様の熱水浸漬を行い、ICP測定を行ったところ、熱水浸漬前後でのアルミニウム量に変化はなく、アルミニウムの熱水への溶出は起こっていないことが判明した。この膜を用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[実施例3]
実施例1においてアルミキレートDの添加量を0.30gとした以外は実施例1と同様にして、膜厚40μmの膜を得た。この膜は、実施例1と同様のICP測定により、アルミニウム量は重合体Aとアルミニウム成分の総質量に対して0.04ミリモル/gであり、スルホン酸基の1.6モル%であることが判明した。また、実施例1と同様の熱水浸漬を行い、ICP測定を行ったところ、熱水浸漬前後でのアルミニウム量に変化はなく、アルミニウムの熱水への溶出は起こっていないことが判明した。この膜を用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[実施例4]
合成例1で得られた重合体A16gと、アルミキレートD0.89gをメタノール/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)=40/60の混合溶媒84mlに溶解した溶液をPETフィルムの上にダイコータにてキャスト塗工した。この塗工液の上に、高分子量ポリエチレン製多孔質基材(Lydall社製、SOLUPOR(登録商標)、3P07A;比重3.0g/m、透気度1.4s/50ml、空孔率83%、厚さ20μm)を接触させた。さらに多孔質基材の上から再度上記溶液をキャスト塗工し、多孔質基材の両面から塗工液を含浸させた。次いで、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。これを大量の蒸留水に一晩浸漬し、膜中の残存NMPを希釈により取り除いた後、風乾し、高分子量ポリエチレン製多孔質基材で補強された、膜厚20μmの膜を得た。この膜をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に浸漬し、重合体A、及びアルミニウム成分を溶出させた。この溶液を脱溶媒し、得られた固形分を、実施例1と同様のICP測定を行った結果、アルミニウム量は重合体Aとアルミニウム成分の総質量に対して0.11ミリモル/gであり、スルホン酸基の4.7モル%であることが判明した。また、実施例1と同様の熱水浸漬を行い、ICP測定を行ったところ、熱水浸漬前後でのアルミニウム量に変化はなく、アルミニウムの熱水への溶出は起こっていないことが判明した。この膜を用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[実施例5]
合成例1で得られた重合体A16gと、アルミキレートD0.89gをメタノール/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)=40/60の混合溶媒84mlに溶解した溶液をPETフィルムの上にダイコータにてキャスト塗工した。この塗工液の上に、高分子量ポリエチレン製多孔質基材(Lydall社製、SOLUPOR(登録商標)、3P07A;比重3.0g/m、透気度1.4s/50ml、空孔率83%、厚さ20μm)を接触させた。さらに多孔質基材の上から合成例1で得られた重合体A16gをメタノール/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)=40/60の混合溶媒84mlに溶解した溶液をキャスト塗工し、多孔質基材の両面から塗工液を含浸させた。次いで、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。これを大量の蒸留水に一晩浸漬し、膜中の残存NMPを希釈により取り除いた後、風乾し、高分子量ポリエチレン製多孔質基材で補強され、かつアルミニウムが膜の片面に偏在した、膜厚20μmの膜を得た。この膜をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に浸漬し、重合体A、及びアルミニウム成分を溶出させた。この溶液を脱溶媒し、得られた固形分を、実施例1と同様のICP測定を行った結果、アルミニウム量は重合体Aとアルミニウム成分の総質量に対して0.05ミリモル/gであり、スルホン酸基の2.2モル%であることが判明した。また、実施例1と同様の熱水浸漬を行い、ICP測定を行ったところ、熱水浸漬前後でのアルミニウム量に変化はなく、アルミニウムの熱水への溶出は起こっていないことが判明した。この膜のアルミニウムが偏在した面をカソード極側に、アルミニウムを含有しない面をアノード極側に用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[実施例6]
Nafion(登録商標) D2020 76gにアルミキレートD0.89gを溶解した溶液をPETフィルムの上にダイコータにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥し、膜厚40μmの膜を得た。この膜は、実施例1と同様のICP測定により、アルミニウム量はNafionとアルミニウム成分の総質量に対して0.11ミリモル/gであり、スルホン酸基の10.1モル%であることが判明した。また、実施例1と同様の熱水浸漬を行い、ICP測定を行ったところ、熱水浸漬前後でのアルミニウム量に変化はなく、アルミニウムの熱水への溶出は起こっていないことが判明した。この膜を用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[比較例1]
実施例1において、アルミキレートDを使用しない以外は実施例1と同様にして、膜厚40μmの膜を得た。この膜を用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[比較例2]
実施例6において、アルミキレートDを使用しない以外は実施例6と同様にして、膜厚40μmの膜を得た。この膜を用いて実施例1と同様のOCV耐久性試験、及びOCV耐久性試験前後の出力電圧測定の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
[評価結果]
表1より、実施例1〜5は開回路電圧の低下速度が比較例1より小さく、実施例6は開回路電圧の低下速度が比較例2より小さいものであった。また、表2より、実施例1〜5はOCV耐久試験後の電流密度1A/cmでのセル電圧低下度は比較例1より小さく、実施例6はOCV耐久試験後の電流密度1A/cmでのセル電圧低下度は比較例2より小さいものであった。以上より、本発明の電解質膜は発電性能に優れ、燃料電池の発電により生成される過酸化水素または過酸化物ラジカルに対する耐久性に優れているものである。
Figure 0005440330
Figure 0005440330

Claims (6)

  1. スルホン酸基を有する重合体と、β−ジケトナートを配位子として有する有機アルミニウム化合物を含み、前記有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を前記重合体に対して0.01〜1ミリモル/g含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
  2. 請求項1に記載の固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両側に接して、触媒層とガス拡散層とを有することを特徴とする膜−電極接合体。
  3. 請求項2に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
  4. スルホン酸基を有する重合体、β−ジケトナートを配位子として有する有機アルミニウム化合物、及び溶媒を含み、前記有機アルミニウム化合物を前記重合体に対して0.01〜1ミリモル/g含むことを特徴とする液状組成物。
  5. 請求項4に記載の液状組成物をキャスト製膜して得られたことを特徴とする固体高分子電解質膜。
  6. 請求項4に記載の液状組成物をキャスト製膜することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
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