JP5151051B2 - 高分子電解質材料、ならびにそれを用いた高分子電解質部品、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池 - Google Patents

高分子電解質材料、ならびにそれを用いた高分子電解質部品、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、高出力、高エネルギー容量を達成することができる実用性に優れた高分子電解質材料、ならびにそれを用いた高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池に関するものである。
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
高分子電解質型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来の高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと記載する)に加えて、メタノールを直接供給するダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCと記載する)も注目されている。DMFCは燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり一充填あたりの携帯機器の使用時間が長時間になるという利点がある。
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電極は、ガス拡散の促進と集(給)電を行う電極基材(ガス拡散電極あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる電極触媒層とから構成されている。例えば、高分子電解質型燃料電池のアノード極では、水素ガスなどの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質膜へと伝導する。このため、アノード電極には、ガスの拡散性、電子伝導性、イオン伝導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸素や空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、高分子電解質膜から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。このため、カソード電極においては、ガス拡散性、電子伝導性、イオン伝導性とともに、生成した水を効率よく排出することも必要になる。
特に、高分子電解質型燃料電池の中でも、メタノールなどの有機溶媒を燃料とするDMFC用高分子電解質膜においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFC用の高分子電解質膜に要求される性能に加えて、メタノールなどの燃料透過抑制も要求される。高分子電解質膜のメタノール透過は、メタノールクロスオーバー(以降、MCOと略称することがある。)、ケミカルショートとも呼ばれ、電池出力およびエネルギー効率が低下するという問題を引き起こす。
これまで高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(Nafion(登録商標):デュポン社製)が広く用いられてきた。ナフィオン(登録商標)は多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、かつ、クラスター構造を形成するために燃料クロスオーバーが大きいという課題があった。また、耐熱水性や耐熱メタノール性が不足するため、膨潤乾燥によって作成した膜の機械強度が低下するという問題、さらに、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題もあった。そこで、これら高分子電解質型燃料電池の実用化のためには安価で燃料クロスオーバーの抑制された高分子電解質材料が市場から望まれていた。
ここで、耐熱水性、耐熱メタノール性に優れるとはそれぞれ高温水中、高温メタノール中での寸法変化(膨潤)が小さいことを意味する。この寸法変化が大きい場合には、高分子電解質膜として使用している途中に膜が破損してしまったり、膨潤で電極触媒層と剥離し、抵抗が大きくなるので好ましくない。これら耐熱水性、耐熱メタノール性の特性はいずれも高分子電解質型燃料電池に使用される電解質ポリマーに要求される重要な特性である。
このような欠点を克服するために非パーフルオロ系ポリマーの炭化水素系ポリマーをベースとした高分子電解質材料についても既にいくつかの取り組みがなされている。ポリマー骨格としては、耐熱性、化学的安定性の点から芳香族ポリエーテルケトンや芳香族ポリエーテルスルホンについて特に活発に検討がなされてきた。
例えば、芳香族ポリエーテルケトンである、難溶性の芳香族ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス(登録商標)PEEK(登録商標)(ビクトレックス社製)等があげられる。)のスルホン化物(例えば、非特許文献1参照。)、芳香族ポリエーテルスルホンである狭義のポリスルホン(以降、PSFと略称することがある。)(UDEL P−1700(アモコ社製)等があげられる)や狭義のポリエーテルスルホン(以降、PESと略称することがある。)(スミカエクセル(登録商標)PES(住友化学社製)等があげられる)のスルホン化物(例えば、非特許文献2)等が報告されたが、高温高湿下でポリマーが膨潤する問題を抱えており、特にメタノールなど燃料水溶液中やスルホン酸密度が高くなる組成においてはその傾向が顕著であった。
また、これらポリマーのスルホン化反応(高分子反応)により芳香環上にスルホン酸基を導入する方法ではポリマー中に導入するスルホン酸基の量および位置を精密に制御できないという問題点を有していた。これを改善する方法として、スルホン酸基を導入したモノマーを用いた重合により得た、スルホン酸基量が制御されたスルホン化芳香族ポリエーテルスルホンの報告がなされている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、ここにおいても高温高湿下でポリマーが膨潤する問題は改善されず、特にメタノールなど燃料水溶液中やスルホン酸密度が高くなる組成においてはその傾向が顕著で、このような耐熱水性や耐熱メタノール性に劣る電解質膜ではメタノールなどの燃焼クロスオーバーを十分に抑制することは困難であった。
また、特許文献1には架橋基を有したプロトン酸基含有樹脂が報告されている。しかし、当該文献においては、架橋基が末端にのみに導入されているので、架橋しても架橋効果が不十分であったり、ビスフェノールAなどの耐熱水性や耐熱メタノール性に劣る成分(構成単位)から構成されているため、耐熱水性、耐熱メタノール性、機械強度のいずれかが不十分であった。
このように、従来技術による高分子電解質材料は経済性、加工性、プロトン伝導性、燃料クロスオーバー、機械強度、ひいては長期耐久性を向上する手段としては不十分であり、産業上有用な燃料電池用高分子電解質材料とはなり得ていなかった。
「ポリマー」(Polymer), 1987, vol. 28, 1009. 「ジャーナル オブ メンブレンサイエンス」(Journalof MembraneScience), 83 (1993) 211-220. 特開2004−10677号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立し、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる高分子電解質材料、およびそれからなる高分子電解質部品、膜電極複合体ならびに高分子電解質型燃料電池を提供せんとするものである。
本発明は、上記課題を解決するため次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の高分子電解質材料は、少なくとも成分(A)として下記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位とともに、成分(B)として下記一般式(P3)〜(P5)から選ばれた少なくとも1種で表される構成単位を有する重合体を含有し、該重合体がイオン性基を有することを特徴とする高分子電解質材料である。また、本発明の高分子電解質部品、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池は、かかる高分子電解質材料を用いて構成されていることを特徴とするものである。
Figure 0005151051
Figure 0005151051
(一般式(P1)〜(P5)において、A、Aは任意の有機基および水素から選ばれた基、ZはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた基、Zは直接結合、メチレン基、−CO−、−SO−、OおよびSから選ばれた基、Zは−CO−または−SO−から選ばれた基、ZはO、SおよびNR(Rは任意の有機基)から選ばれた基を表す。一般式(P1)から(P5)で表される構成単位は任意に置換してもよい。)
本発明によれば、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立し、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性に優れた、高出力、高エネルギー容量および長期耐久性を達成することができる実用性に優れた高分子電解質材料、ならびにそれを用いた高性能な高分子電解質部品、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、前記課題、つまり高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立し、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度を達成することができる高分子電解質材料の化学構造について、鋭意検討し、少なくとも成分(A)として下記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位とともに、成分(B)として下記一般式(P3)〜(P5)から選ばれた少なくとも1種で表される構成単位を有する重合体であって、該重合体がイオン性基を有することを特徴とする高分子電解質材料を使用した場合に、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
Figure 0005151051
Figure 0005151051
(一般式(P1)〜(P5)において、A、Aは任意の有機基および水素から選ばれた基、ZはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた基、Zは直接結合、メチレン基、−CO−、−SO−、OおよびSから選ばれた基、Zは−CO−または−SO−から選ばれた基、ZはO、SおよびNR(Rは任意の有機基)から選ばれた基を表す。一般式(P1)から(P5)で表される構成単位は任意に置換してもよい。)
従来の高分子電解質材料は、プロトン伝導性を高めるためにイオン性基の含有量を増加すると、高分子電解質材料が膨潤し、内部に大きな水のクラスターが出来やすく、高分子電解質材料中にいわゆる自由水が多くなる。かかる自由水中には、メタノールなどの燃料の移動が容易に行われるためメタノールなどの燃料クロスオーバーを抑制することは困難であった。また、イオン性基の含有量増加により、耐熱水性や耐熱メタノール性が不足し、燃料として高濃度メタノール水溶液を使用する場合には膜が溶解するため、高エネルギー密度を達成することができる高分子電解質材料として使用できなかった。
本発明の高分子電解質材料は、成分(B)として嵩高い疎水性基を有する構成単位を導入することで耐熱水性、耐熱メタノール性および機械強度などを付与し、さらに成分(A)として架橋性のアセチレン基やエチレン基を導入することで、成型後に架橋すれば耐溶剤性を付与できることを見出した。すなわち、本発明の高分子電解質材料を架橋せしめた高分子電解質部品を用いれば、高温下でも耐熱水性、メタノールなどの燃料水溶液中での寸法安定性や機械強度に優れ、高プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制を両立でき、高濃度メタノールを燃料として用いることが可能となる。
中でも、本発明の高分子電解質材料は、耐熱水性、耐熱メタノール性、燃料クロスオーバー抑制効果の点から、該重合体が、成分(B)として一般式(P3)または一般式(P4)で表される構成単位を含有し、Zがフェニル基(任意に置換されていてもよい)であり、Zが直接結合であるものがより好ましい。
成分(B)の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基ならびに下記一般式(Ar1−1)〜(Ar1−16)で示される有機基を例示できる。これらは置換基を有していてもよい。これらの中でも一般式(Ar1−6)〜(Ar1−13)で示される有機基は、燃料透過抑制効果が大きく、燃料中での寸法安定性向上に有効であるため特に好ましく、本発明の高分子電解質材料はZとして一般式(Ar1−6)〜(Ar1−13)で示される有機基のうち少なくとも1種類を含有することが好ましい。一般式(Ar1−6)〜(Ar1−13)で示される有機基の中でも特に好ましいのは一般式(Ar1−7)および一般式(Ar1−8)で示される有機基であり、最も好ましいのは一般式(Ar1−7)で示される有機基である。
Figure 0005151051
本発明の高分子電解質材料は、耐熱水性や機械強度などの点から、炭化水素系ポリマーの中でも主鎖に芳香環を有するポリマーがさらに好ましい。すなわち、主鎖に芳香環を有するポリマーであって、イオン性基を有するものである。主鎖構造は、芳香環を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばエンジニアリングプラスチックとして使用されるような十分な機械強度を有するものが好ましい。
本発明の高分子電解質材料に使用する主鎖に芳香環を有するポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホン等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造を限定するものではない。
前記主鎖に芳香環を有するポリマーのなかでも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド等のポリマーが、機械強度、加工性および耐加水分解性の面からより好ましい。
具体的には下記一般式(T1)で示される繰返し単位を有する主鎖に芳香族を含有するポリマーが挙げられる。
Figure 0005151051
(ここで、Z、Zは芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。ZおよびZの少なくとも1種のうち、少なくとも一部はイオン性基を含有する。Yは電子吸引性基を表す。YはOまたはSを表す。aおよびbはそれぞれ独立に0または正の整数を表し、ただしaとbは同時に0ではない。)
かかる一般式(T1)で示される繰返し単位を有する主鎖に芳香族を含有するポリマーの中でも、一般式(T1−1)〜一般式(T1−6)で示される繰返し単位を有するポリマーは耐加水分解性、機械強度および製造コストの点でより好ましい。なかでも、機械強度や製造コストの面から、YがOである芳香族ポリエーテル系重合体がさらに好ましく、最も好ましくは一般式(T1−3)で示される繰返し単位を有するもの、すなわち、芳香族ポリエーテルケトン系重合体が最も好ましい。
Figure 0005151051
(ここで、Z、Zは芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。ZおよびZの少なくとも1種のうち、少なくとも一部はイオン性基を含有する。aおよびbはそれぞれ独立に0または正の整数を表し、ただしaとbは同時に0ではない。)
として好ましい有機基は、フェニレン基およびナフチレン基である。これらは置換されていてもよい。
一般式(T1−4)におけるRで示される有機基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、フェニルフェニル基などである。工業的な入手の容易さの点ではRとして最も好ましいのはフェニル基である。
本発明において、芳香族ポリエーテル系重合体とは、主として芳香環から構成される重合体において、芳香環ユニットが連結する様式としてエーテル結合が含まれているものをいう。エーテル結合以外に、直接結合、ケトン、スルホン、スルフィド、各種アルキレン、イミド、アミド、エステル、ウレタン等、芳香族系ポリマーの形成に一般的に使用される結合様式が存在していても良い。エーテル結合は主構成成分の繰り返し単位あたり1個以上あることが好ましい。芳香環は炭化水素系芳香環だけでなく、ヘテロ環などを含んでいても良い。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもかまわない。芳香族ユニットは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリロキシ基等の炭化水素系基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、ホスホン酸基、水酸基等、任意の置換基を有していても良い。
本発明の芳香族ポリエーテル系重合体の合成方法については、実質的に十分な高分子量化が可能な方法であれば特に限定されるものではないが、例えば芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応、またはハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応を利用して合成することができる。
本発明の高分子電解質材料において、成分(A)として前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位の含有量としては、前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位とその他の繰り返し単位を基本とする構成単位の合計モル量に対して、前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位を0.1〜50モル%、好ましくは1〜25モル%である。
本発明の高分子電解質材料において、前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、熱重量減少測定(TGA)、昇温熱脱離−質量分析法(TPD−MS)による発生ガス分析、熱分解ガスクロマトグラフ(GC)、熱分解GC−MS、赤外吸収スペクトル(IR)等により測定することが可能である。
具体的には、前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位を含有する芳香族ポリエーテル系重合体は、例えば芳香族活性ジハライド化合物として、下記一般式(P1−1)または(P2−1)を使用し、2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により合成すること、あるいは例えば2価フェノール化合物として、下記一般式(P1−1)または(P2−1)を使用し、芳香族活性ジハライド化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。すなわち、前記一般式(P1)および(P2)で表される構成単位が2価フェノール化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わない。
Figure 0005151051
(一般式(P1−1)〜(P2−1)において、L、Lはハロゲン原子またはOH基、A、Aは任意の有機基および水素から選ばれた基を表す。式(P1−1)および(P2−1)で表される構成単位は任意に置換してもよい。)
成分(A)のハロゲン基置換基含有化合物の具体例としては、4,4’−ジフルオロスチルベン、1,2−ビス(4−フルオロフェニル)アセチレン、3,4−ジフルオロ(フェニルエチニル)ベンゼン、4,4’−ジクロロスチルベン、1,2−ビス(4−クロロフェニル)アセチレン、3,4−ジクロロ(フェニルエチニル)ベンゼン等が挙げられる。さらに、ハロゲン基置換位置はo,m,pのいずれでもかまわない。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも合成の容易さ、安定性の高さの点では、1,2−ビス(4−フルオロフェニル)アセチレンが最も好ましい。
また、成分(A)のヒドロキシル基置換基含有化合物の具体例としては、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセチレン、1,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)アセチレン等が挙げられる。さらに、ヒドロキシル基置換位置はo,m,pのいずれでもかまわない。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも合成の容易さ、安定性の高さの点では、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセチレンが最も好ましい。高分子量化の観点から、1,2−ビス(4−フルオロフェニル)アセチレンが最も好ましい。
また、LがOH基でLがハロゲン原子であるハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物で架橋性基を有するものも好適に使用できる。
また、成分(B)として前記一般式(P3)〜(P5)で表される構成単位を含有する芳香族ポリエーテル系重合体は、モノマーの反応性を考慮して2価フェノール化合物由来として前記一般式(P3)〜(P5)で表される構成単位を含有するモノマーを使用することにより合成することが可能である。具体的には、2価フェノール化合物として、下記一般式(P3−1)〜(P5−1)を使用し、芳香族活性ジハライド化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。
Figure 0005151051
本発明の高分子電解質材料は、成分(B)として下記一般式(P3)〜(P5)から選ばれた少なくとも1種で表される構成単位を有する重合体を含有し耐熱水性、耐熱メタノール性、燃料クロスオーバー抑制効果の点から、該重合体が、成分(B)として一般式(P3)または一般式(P4)で表される構成単位を含有し、Zがフェニル基(任意に置換されていてもよい)であり、Zが直接結合であるものがより好ましい。
成分(B)の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基ならびに下記一般式(ArB1−1)〜(ArB1−16)で示される有機基を例示できる。これらは置換基を有していてもよい。これらの中でも一般式(ArB1−6)〜(ArB1−13)で示される有機基は、燃料透過抑制効果が大きく、燃料中での寸法安定性向上に有効であるため特に好ましく、本発明の高分子電解質材料はZとして一般式(ArB1−6)〜(ArB1−13)で示される有機基のうち少なくとも1種類を含有することが好ましい。一般式(ArB1−6)〜(ArB1−13)で示される有機基の中でも特に好ましいのは一般式(ArB1−7)および一般式(ArB1−8)で示される有機基であり、最も好ましいのは一般式(ArB1−7)で示される有機基である。
Figure 0005151051
本発明の高分子電解質材料において、使用する芳香族活性ジハライド化合物としては、2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により高分子量化が可能なものであれば、特に限定される物ではない。芳香族活性ジハライド化合物のより好適な具体例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。中でも4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが機械強度、耐熱メタノール性、燃料クロスオーバー抑制効果の点からより好ましく、重合活性の点から4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
芳香族活性ジハライド化合物として、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成した高分子電解質材料としては、下記一般式(P6)で表される構成部位をさらに含むものとなり、好ましく用いられる。
Figure 0005151051
(一般式(P6)中、Bは−CO−、−SO−、または−P(Rp)O−(Rpは任意の有機基)である。一般式(P6)で表される構成単位は任意に置換されていてもよいが、イオン性基は含有しない。)
本発明の高分子電解質材料としては、前記一般式(P1)または(P2)、一般式(P3)〜(P5)ならびに一般式(P6)で表される構成単位とともに、下記一般式(P7)で表される構成単位を有するもので例示されるイオン性基を有するモノマーも好ましく併用される。芳香族活性ジハライド化合物にイオン酸基を導入した化合物をモノマーとして用いることは、イオン性基の量を精密制御が可能な点から好ましい。イオン性基としてスルホン酸基を有するモノマーの例としては、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、等を挙げることができる。
プロトン伝導度および耐加水分解性の点からイオン性基としてはスルホン酸基が最も好ましいが、本発明に使用されるイオン性基を有するモノマーは他のイオン性基を有していても構わない。なかでも耐熱メタノール性、燃料クロスオーバー抑制効果の点から3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンがより好ましく、重合活性の点から3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。イオン性基を有するモノマーとして、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成した高分子電解質材料としては、下記一般式(P7)で表される構成単位をさらに含むものとなり、好ましく用いられる。これらのスルホン酸基は重合の際には、スルホン酸基が1価カチオン種との塩になっていることが好ましい。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
Figure 0005151051
(一般式(P7)中、MおよびMは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオン、a1およびa2は1〜4の整数を表す。一般式(P7)で表される構成単位はさらに任意に置換されていてもよい。)
2価フェノール化合物として、本発明の効果を阻害しない範囲の公知の2価フェノール化合物を共重合させてもよい。
なお、本発明の高分子電解質材料の化学構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm-1 、1,160〜1,190cm-1 のS=O吸収、1,130〜1,250cm-1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm-1のC=O吸収などにより確認でき、これらの組成比は、スルホン酸基の中和滴定や、元素分析により知ることができる。また、核磁気共鳴スペクトル( 1 H−NMR)により、例えば6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。また、溶液13C−NMRや固体13C−NMRによって、スルホン酸基の付く位置や並び方を確認することができる。
本発明における芳香族求核置換反応による重合は、上記モノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。
水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
このようにして得られる本発明の高分子電解質材料として用いるポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万〜500万、好ましくは1万〜50万である。0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度が不十分な場合がある。一方、500万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある場合がある。なお、本発明で得られる高分子電解質部品は、溶剤不溶性であるため分子量の測定が困難な場合がある。
本発明の高分子電解質材料として用いるポリマー中のスルホン酸基はブロック共重合で導入しても、ランダム共重合で導入しても構わない。用いるポリマーの化学構造や結晶性の高さによって適宜選択することができる。燃料遮断性や低含水率が必要である場合にはランダム共重合がより好ましく、プロトン伝導性や高含水率が必要である場合にはブロック共重合がより好ましく用いられる。
本発明に使用されるイオン性基は、負電荷を有する原子団であれば特に限定されるものではないが、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基は下記一般式(f1)で表される基、スルホンイミド基は下記一般式(f2)で表される基[式中Rは任意の原子団を表す。]、硫酸基は下記一般式(f3)で表される基、ホスホン酸基は下記一般式(f4)で表される基、リン酸基は下記一般式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は下記一般式(f7)で表される基を意味する。
Figure 0005151051
かかるイオン性基は前記官能基(f1)〜(f7)が塩となっている場合を含むものとする。前記塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR4 +(Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、高分子電解質材料としては、安価で、溶解性に悪影響を与えず、容易にプロトン置換可能なNa、Kがより好ましく使用される。
これらのイオン性基は前記高分子電解質材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
高分子電解質材料中のスルホン酸基の量は、スルホン酸基密度(mmol/g)の値として示すことができる。本発明における高分子電解質材料のスルホン酸基密度は、プロトン伝導性、燃料クロスオーバーおよび機械強度の点から0.5〜3.0mmol/gであることが好ましく、燃料クロスオーバーの点から最も好ましくは0.7〜1.5mmol/gである。スルホン酸基密度が、0.5mmol/gより低いと、プロトン伝導性が低いため十分な発電特性が得られないことがあり、3.0mmol/gより高いと燃料電池用電解質膜として使用する際に、十分な耐熱水性および含水時の機械的強度が得られないことがある。
ここで、スルホン酸基密度とは、乾燥した高分子電解質材料1グラムあたりに導入されたスルホン酸基のモル数であり、値が大きいほどスルホン酸基の量が多いことを示す。スルホン酸基密度は、元素分析、中和滴定により求めることが可能である。これらの中でも測定の容易さから、元素分析法を用い、S/C比から算出することが好ましいが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは、中和滴定法によりイオン交換容量を求めることもできる。
中和滴定の手順は下記のとおりである。測定は3回以上行ってその平均をとるものとする。
(1) 試料をミルにより粉砕し、粒径を揃えるため、目50メッシュの網ふるいにかけ、ふるいを通過したものを測定試料とする。
(2) サンプル管(蓋付き)を精密天秤で秤量する。
(3) 前記(1)の試料 約0.1gをサンプル管に入れ、40℃で16時間、真空乾燥する。
(4) 試料入りのサンプル管を秤量し、試料の乾燥重量を求める。
(5) 塩化ナトリウムを30重量%メタノール水溶液に溶かし、飽和食塩溶液を調製する。
(6) 試料に前記(5)の飽和食塩溶液を25mL加え、24時間撹拌してイオン交換する。
(7) 生じた塩酸を0.02mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液(0.1体積%)を2滴加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(8) イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(meq/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
本発明のイオン性基を有するポリマーには本発明の目的を阻害しない範囲において、他の成分、例えば導電性若しくはイオン伝導性を有さない不活性なポリマーや有機あるいは無機の化合物、が含有されていても構わない。
これら芳香族炭化水素系ポリマーに対してイオン性基を導入する方法は、イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法と、高分子反応でイオン性基を導入する方法が挙げられる。イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にイオン性基を有したモノマーを用いれば良く、必要により適当な保護基を導入して重合後脱保護基を行えばよい。かかる方法は例えば Journal of Membrane Science, 197(2002) 231-242 に記載がある。
高分子反応でイオン性基を導入する方法について例を挙げて説明すると、芳香族系高分子へのホスホン酸基の導入は、例えばPolymer Preprints, Japan , 51, 750 (2002) 等に記載の方法によって可能である。芳香族系高分子へのリン酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子のリン酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子へのカルボン酸基の導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する芳香族系高分子を酸化することによって可能である。芳香族系高分子への硫酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子の硫酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子をスルホン化する方法、すなわちスルホン酸基を導入する方法としては、たとえば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法が公知である。
具体的には、例えば、芳香族系高分子をクロロホルム等の溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には芳香族系高分子をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。この方法により芳香族系高分子をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、容易に制御できる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
本発明で得られた高分子電解質材料においては、燃料遮断性や高濃度燃料使用による高エネルギー容量化の観点から、耐溶剤性に優れる、すなわち100℃のN−メチルピロリドンに2時間浸漬後の重量減が30重量%以下であることがより好ましい。
液体燃料としてはメタノールなどのアルコール類が使用される場合が多いが、本発明において耐溶剤性評価としてはポリマー種に関係なく優れた溶解性を有するN−メチルピロリドンを用いて評価する。さらに好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。重量減が30重量%を越える場合は、燃料遮断性だけでなく、機械強度や長期耐久性が不十分であったり、高温高濃度のメタノール水溶液を燃料として用いるDMFC用に用いた場合には、膜が溶解したり大きく膨潤するので好ましくない。また、高分子電解質膜に直接、触媒ペーストを塗工して膜電極複合体を作製することが困難となり、製造コストが増大するだけでなく、触媒層との界面抵抗が大きくなり、十分な発電特性が得られない場合がある。
かかる高分子電解質材料のN−メチルピロリドンに対する重量減は、実施例に記載の方法で測定する。
本発明の高分子電解質材料を燃料電池用として使用する際には、通常膜の状態および触媒層のバインダーで使用される。
本発明の高分子電解質材料を高分子電解質膜に成型する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法あるいは溶融状態より製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、該高分子電解質材料をN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
本発明の高分子電解質材料を燃料電池用として使用する際には、通常膜の状態で使用される。しかしながら、本発明の高分子電解質材料は、膜状に限定されるものではなく、その形状としては、前述の膜状の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状など、使用用途によって様々な形態をとりうる。本発明の高分子電解質材料を膜へ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法あるいは溶融状態より製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、該高分子電解質材料をN,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
製膜に用いる溶媒としては、高分子電解質材料を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。濾過を行わないと異物の混入を許すこととなり、膜破れが発生したり、耐久性が不十分となるので好ましくない。
次いで、得られた高分子電解質膜はイオン性基の少なくとも一部を金属塩の状態にしてから熱処理することが好ましい。金属塩の金属はスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。この熱処理の温度は好ましくは150〜550℃、さらに好ましくは160〜400℃、特に好ましくは180〜350℃である。熱処理時間は、好ましくは10秒〜12時間、さらに好ましくは30秒〜6時間、特に好ましくは1時間前後である。熱処理温度が低すぎると、燃料透過性の抑制効果が不足する。一方、高すぎると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理時間が10秒未満であると燃料透過性の抑制効果が不足する。一方、12時間を超えると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理により得られた高分子電解質膜は必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換することができる。この方法で成形することによって本発明の高分子電解質膜はプロトン伝導度と燃料遮断性をより良好なバランスで両立することが可能となる。
本発明で使用される高分子電解質材料を高分子電解質膜へ転化する方法の具体例としては、該芳香族ポリエーテル系重合体から構成される膜を前記手法により作製後、成分(A)として導入した前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位を架橋させる方法が挙げられる。この方法によれば、加工性の乏しい架橋膜の製膜が可能となり、プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果の両立、優れた耐溶剤性、機械特性、寸法安定性を達成可能である。
本発明において、成分(A)として導入した前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位を架橋させる方法は特に限定される物ではない。例えば、熱架橋、光架橋、メタセシス反応、ヒドロシリル化、加硫等が好適な例として挙げられる。製造コストの点から熱架橋、光架橋がより好ましい。
熱架橋させる際の加熱温度は、架橋性ポリエーテルケトンの構造、架橋基の種類、架橋基導入量などにより異なるが、通常100〜400℃、より好ましくは150〜300℃である。加熱時間は加熱温度や架橋性ポリエーテルケトンの構造などにより異なるが、通常1分〜50時間、好ましくは1分〜1時間、さらに好ましくは1分〜10分である。圧力は常圧、減圧、加圧のいずれでもかまわない。ガス雰囲気は空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気のいずれでもかまわない。熱架橋により、プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果の両立、優れた耐溶剤性、機械特性、寸法安定性を達成可能となる。
この製造方法であれば、モノマー合成・重合・成型中は架橋しないため、溶液製膜が可能であり、成型後の処理によって架橋でき、耐溶剤性が付与できるため、プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果の両立、優れた耐溶剤性、機械特性、寸法安定性を達成可能となる。従来の膜は、架橋基が末端にのみに導入されているので架橋効果が不十分であったり、2価のフェノール化合物が耐熱水性や耐熱メタノール性に劣る成分から構成されているため、架橋しても耐熱水性、耐熱メタノール性、機械強度のいずれかが不十分であった。
また、スチレンに代表されるビニル系化合物、ジビニルベンゼンに代表されるジビニル系化合物、ビニル結合を3個以上含有する化合物、H−Si部位を複数含有する化合物を添加して、架橋させることも好適な例として挙げることができる。さらに、架橋密度を調節することで、ポリマーの靭性を向上することも可能である。
本発明の高分子電解質膜は、さらに必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造を架橋せしめることもできる。かかる高分子電解質膜を架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび燃料に対する膨潤をさらに抑制する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。かかる放射線照射の種類としては例えば、電子線照射やγ線照射を挙げることができる。
本発明の高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜500μm、特に好ましい範囲は5〜250μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
また、本発明の高分子電解質材料には、通常の高分子化合物に使用される可塑剤、安定剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
また、本発明の高分子電解質材料には、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。
本発明の高分子電解質膜は、その20℃の条件下、30重量%メタノール水溶液に対する単位面積当たりのメタノール透過量が40μmol・min−1・cm−2以下であることが好ましい。該高分子電解質膜を用いた燃料電池において、燃料濃度が高い領域において高出力および高エネルギー容量が得られるという観点から、高い燃料濃度を保持すべく、燃料透過量が小さいことが望まれるからである。メタノール透過量は、25℃の純水に高分子電解質膜を24時間浸漬した後で測定する。
かかる観点からは、0μmol・min−1・cm−2が最も好ましいが、プロトン伝導性を確保する観点からは0.01μmol・min−1・cm−2以上が好ましい。
なおかつ、本発明の高分子電解質膜は、単位面積当たりのプロトン伝導度が1S・cm−2以上であることが好ましく、2S・cm−2以上がより好ましい。プロトン伝導度は、25℃の純水に高分子電解質膜を24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く行う定電位交流インピーダンス法により測定することができる。
単位面積当たりのプロトン伝導度を1S・cm−2以上とすることにより、燃料電池用高分子電解質膜として使用する際に、十分なプロトン伝導性、すなわち十分な電池出力を得ることができる。プロトン伝導度は高い方が好ましいが、高プロトン伝導度の膜はメタノール水などの燃料により溶解や崩壊しやすくなり、また燃料透過量も大きくなる傾向があるので、現実的な上限は50S・cm−2である。
本発明の高分子電解質膜は、上記したような低メタノール透過量と高プロトン伝導度を同時に達成することが、高出力と高エネルギー容量を両立させる上から好ましい。
かかる高分子電解質材料を燃料電池として用いる際の高分子電解質材料と電極の接合法については特に制限はなく、公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, 269.記載の化学メッキ法、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
本発明の高分子電解質材料は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途に適用可能である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池が最も好ましい。さらに燃料電池のなかでも高分子電解質型燃料電池に好適であり、これには水素を燃料とするものとメタノールなどの有機化合物を燃料とするものがあり、炭素数1〜6の有機化合物およびこれらと水の混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料とする直接型燃料電池に特に好ましく用いられる。炭素数1〜6の有機化合物としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1〜3のアルコール、ジメチルエーテルが好ましく、メタノールが最も好ましく使用される。
さらに、本発明の高分子電解質型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDAなどの携帯機器、掃除機等の家電、乗用車、バス、トラックなどの自動車や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源として好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
(1)スルホン酸基密度
高分子電解質膜を25℃の純水に24時間浸漬し、40℃で24時間真空乾燥した後、元素分析により測定した。炭素、水素、窒素の分析は全自動元素分析装置varioEL、硫黄の分析はフラスコ燃焼法・酢酸バリウム滴定、フッ素の分析はフラスコ燃焼・イオンクロマトグラフ法で実施した。ポリマーの組成比から単位グラムあたりのスルホン酸基密度(mmol/g)を算出した。
(2)プロトン伝導度
高分子電解質膜を25℃の30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用した。サンプルは、φ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持した。有効電極面積は0.0314cmである。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布した。25℃において、交流振幅50mVの定電位インピーダンス測定を行い、膜厚方向のプロトン伝導度を求めた。
(3)メタノール透過量
高分子電解質膜を60℃で30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬した後、20℃において30重量%メタノール水溶液を用いて測定した。60℃で30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬する前と後では大きくメタノール透過量が変化するため、この前処理は高分子電解質膜の正確な特性を評価するために必ず行う必要がある。
H型セル間にサンプル膜を挟み、一方のセルには純水(60mL)を入れ、他方のセルには30重量%メタノール水溶液(60mL)を入れた。セルの容量は各80mLであった。また、セル間の開口部面積は1.77cmであった。20℃において両方のセルを撹拌した。1時間、2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量した。グラフの傾きから単位時間あたりのメタノール透過量を求めた。
(4)重量平均分子量
高分子電解質材料の重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
(5)耐熱メタノール性
高分子電解質膜の耐熱メタノール性は60℃、30wt%メタノール水溶液中での寸法変化率を測定することにより評価した。高分子電解質膜を長さ約5cm、幅約1cmの短冊状に切り取り、25℃の水中に24時間浸漬後、ノギスで長さ(L1)を正確に測長した。該高分子電解質膜を60℃の30wt%メタノール水溶液中に12時間浸漬後、再度ノギスで長さ(L2)を正確に測長し、下記算式(S1)にて寸法変化率を計算した。
(30wt%メタノール水溶液中での寸法変化率)=L2/L1……(S1)
L1 :25℃の水中に24時間浸漬後の高分子電解質膜の長さ(cm)
L2 :60℃の30wt%メタノール水溶液中に12時間浸漬後の高分子電解質膜の長さ(cm)
(6)膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
(7)N−メチルピロリドンに対する重量減(耐溶剤性)
高分子電解質膜(約0.1g)を純水で十分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定した。乾燥した高分子電解質膜を1000倍重量のN−メチルピロリドンに浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら100℃、2時間加熱した。次に、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行った。濾過時に1000倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させ、さらに残渣中に含まれるN−メチルピロリドンを純水で十分に洗浄させた。残渣を40℃で24時間真空乾燥して重量を測定することにより、重量減を算出した。
(8)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
下記の測定条件で、NMRの測定を行い、モノマー構造の確認、架橋性成分(A)が含有されているかどうかを分析した。含有の推定は88.2ppmに認められるアセチレンピークから確認した。
装置 :日本電子社製EX−270
共鳴周波数 :270MHz
測定温度 :室温
溶解溶媒 :DMSO−d6
内部基準物質:TMS(0ppm)
合成例1
下記式(G1)で表されるジフルオロモノマーの合成
Figure 0005151051
2LフラスコにPdCl2(PPh3)2(9.48g), CuI (8.57 g) を入れ窒素置換した後、4-フルオロヨードベンゼン(100 g), トルエン(1L), DBU (411 g), トリメチルシリルアセチレン(22.09 g), H2O (3.24 ml)を追加した。反応温度を60 ℃にし、光を遮断し5時間反応させた。
反応終了後、分液フラスコに移し、有機相を抽出し、10%HCl 500mLで4回, 飽和NaCl 500mLで1回洗いMgSO4で脱水した後、得られたトルエン溶液を濃縮した。得られた茶褐色固体を再びトルエンに溶かし、カラムで精製し薄茶固体を43.6 g得た。さらに、トルエンにより再結晶化し精製し、G1を35.3 g得た。ガスクロマトグラフィーにより純度は97%であった。また、構造は核磁気共鳴スペクトル(NMR)により同定した。
合成例2
下記式(G2)で表されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成
Figure 0005151051
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1gを発煙硫酸(50%SO)150mL中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記式(G2)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。
実施例1
下記一般式(J1)で表される高分子電解質材料の合成および評価、ならびに高分子電解質膜の作成および評価
Figure 0005151051
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム6.9g(アルドリッチ試薬、50mmol)、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン14.1g(40mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン3.9g(アルドリッチ試薬、18mmol)、前記合成例1で得たジフルオロモノマー0.43g(2mmol)、および前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.7g(21mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)60mL、トルエン40mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、230℃で12時間重合を行った。多量の水で再沈殿することで精製を行い、上記一般式(J1)で示される高分子電解質材料を得た。得られた高分子電解質材料の重量平均分子量は23万、製膜、架橋およびプロトン置換(詳細は後述)後のスルホン酸基密度は1.4mmol/gであった。
得られた高分子電解質材料を溶解させた30重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、高分子電解質膜を得た。さらに、100℃にて4h乾燥後、窒素下325℃で10分間熱処理することで、架橋された高分子電解質膜を得た。これを25℃で1N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。
得られた高分子電解質膜は膜厚32μmであった。評価結果は表1にまとめた。高プロトン伝導性を維持したまま、メタノールクロスオーバーの抑制効果が大きかった。また、耐熱メタノール性に優れていた。
実施例2
下記式(J2)で表される高分子電解質材料の合成および評価、ならびに高分子電解質膜の作成および評価
Figure 0005151051
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム6.9g(アルドリッチ試薬、50mmol)、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン (40mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン3.9g(アルドリッチ試薬、18mmol)、前記合成例1で得たジフルオロモノマー0.43g(2mmol)、および前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.7g(21mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)60mL、トルエン40mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、230℃で12時間重合を行った。多量の水で再沈殿することで精製を行い、上記一般式(J2)で示される可溶性高分子電解質材料を得た。得られた高分子電解質材料の重量平均分子量は25万、製膜、架橋およびプロトン置換(詳細は後述)後のスルホン酸基密度は1.4mmol/gであった。
実施例1と同様にして得られた高分子電解質膜は膜厚31μmであった。評価結果は表1にまとめた。高プロトン伝導性を維持したまま、メタノールクロスオーバーの抑制効果が大きかった。また、耐熱メタノール性に優れていた。
実施例3
下記式(J3)で表される高分子電解質材料の合成および評価、ならびに高分子電解質膜の作成および評価
Figure 0005151051
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム6.9g(アルドリッチ試薬、50mmol)、フェノールフタレイン (40mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン3.9g(アルドリッチ試薬、18mmol)、前記合成例1で得たジフルオロモノマー0.86g(4mmol)、および前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.7g(21mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)60mL、トルエン40mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、230℃で12時間重合を行った。多量の水で再沈殿することで精製を行い、上記一般式(J3)で示される可溶性高分子電解質材料を得た。得られた高分子電解質材料の重量平均分子量は25万、製膜、架橋およびプロトン置換後のスルホン酸基密度は1.4mmol/gであった。
実施例1と同様にして得られた高分子電解質膜は膜厚33μmであった。評価結果は表1にまとめた。高プロトン伝導性を維持したまま、メタノールクロスオーバーの抑制効果が大きかった。また、耐熱メタノール性に優れていた。
比較例1
市販のナフィオン(登録商標)117膜(デュポン社製)を用い、イオン伝導度、MCOおよび耐熱メタノール性を評価した。ナフィオン(登録商標)117膜は100℃の5%過酸化水素水中にて30分、続いて100℃の5%希硫酸中にて30分浸漬した後、100℃の脱イオン水でよく洗浄した。評価結果は表1にまとめた。
比較例2
Figure 0005151051
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
特開2004−10677号、実施例5記載の方法と同様にして、すなわち、上記式(J4)のポリエーテルケトンを合成した。H型ポリマーのスルホン酸基密度は1.3mmol/gであり、重量平均分子量は16万であった。
実施例1で得た前記式(J1)の高分子電解質材料を前記式(J4)のポリマーに変え、100℃にて4h乾燥後、窒素下325℃で10分間熱処理を行う代わりに、200℃で4時間乾燥し、窒素気流中270℃で2時間熱処理して架橋させた。 得られた高分子電解質膜は膜厚35μmであった。評価結果は表1にまとめた。メタノールクロスオーバーの抑制効果があまりなかった。また、耐熱メタノール性が不足していた。
比較例3
Figure 0005151051
(式中、*はその位置で上式の右端と下式の左端とが結合していることを表す。)
実施例1で得た前記式(J1)の高分子電解質材料を前記式(J5)のポリマーに変えたこと、窒素下325℃で10分間熱処理を行わなかったこと以外は実施例1に記載の方法で高分子電解質膜の作製を行った。
得られた高分子電解質膜は膜厚38μmであった。評価結果は表1にまとめた。メタノールクロスオーバーの抑制効果があまりなかった。また、耐熱メタノール性が不足していた。
実施例1〜3、比較例1〜3の各評価結果を表1に示す。実施例1〜3の膜は比較例1のナフィオン(登録商標)117膜と比較してメタノールクロスオーバーの抑制効果が大きく、耐熱メタノール性にも優れていた。また、比較例2、3の膜と比較して同程度のスルホン酸基を有するにもかかわらずメタノールクロスオーバーの抑制効果が大きく、耐熱メタノール性にも優れていた。
Figure 0005151051
本発明の電解質膜は、種々の電気化学装置(例えば、燃料電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等)に適用可能である。これら装置の中でも、燃料電池用に好適であり、特にメタノール水溶液を燃料とする燃料電池に好適である。
本発明の高分子電解質型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ、デジタルカメラなどの携帯機器、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。

Claims (10)

  1. 少なくとも成分(A)として下記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位とともに、成分(B)として下記一般式(P3)〜(P5)から選ばれた少なくとも1種で表される構成単位を有する重合体を含有し、該重合体がイオン性基を有することを特徴とする高分子電解質材料。
    Figure 0005151051
    Figure 0005151051
    (一般式(P1)〜(P5)において、A、Aは任意の有機基および水素から選ばれた基、ZはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた基、Zは直接結合、メチレン基、−CO−、−SO−、OおよびSから選ばれた基、Zは−CO−または−SO−から選ばれた基、ZはO、SおよびNR(Rは任意の有機基)から選ばれた基を表す。一般式(P1)から(P5)で表される構成単位は任意に置換してもよい。)
  2. 該重合体が、成分(B)として一般式(P3)または一般式(P4)で表される構成単位を含有し、Zがフェニル基(任意に置換されていてもよい)であり、Zが直接結合である請求項1に記載の高分子電解質材料。
  3. 該重合体が芳香族ポリエーテル系重合体である請求項1または2に記載の高分子電解質材料。
  4. 該重合体が下記一般式(P6)で表される構成部位をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質材料。
    Figure 0005151051
    (一般式(P6)中、Bは−CO−、−SO−、または−P(Rp)O−(Rpは任意の有機基))
  5. 該高分子電解質材料が下記一般式(P7)で表される構成部位をさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質材料。
    Figure 0005151051
    (一般式(P7)中、Bは−CO−、−SO−、または−P(Rp)O−(Rpは任意の有機基)、MおよびMは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオン、a1およびa2は1〜4の整数を表す。)
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質材料を用いて構成されていることを特徴とする高分子電解質部品。
  7. 該高分子電解質部品をさらに架橋せしめた請求項6に記載の高分子電解質部品。
  8. 該高分子電解質部品が、100℃のN−メチルピロリドンに2時間浸漬した時の重量減が30重量%以下である請求項7に記載の高分子電解質部品。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質材料および/または請求項6〜8のいずれかに記載の高分子電解質部品を用いて構成されていることを特徴とする膜電極複合体。
  10. 請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質材料および/または請求項6〜8のいずれかに記載の高分子電解質部品を用いて構成されていることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
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