(第1実施形態)
以下、図面を参照して本実施形態に係る硬貨入出金機について説明する。図1および図2に示すように、硬貨入出金機10は、筐体12、硬貨受入口14、入金搬送部20、硬貨繰出装置30、一時保留部40、収納繰出装置50、搬送部60、回収ボックス70、制御部80および不良検出部90を有して構成される。
筐体12は、略直方体形状の筐体であり、硬貨入出金機10を構成する各装置が収容される。硬貨受入口14は、筐体12外から硬貨を受入れる。硬貨繰出装置30は、硬貨受入口14で受入れられた硬貨が送られて貯留され、貯留した硬貨を1枚ずつ繰り出す。入金搬送部20は、硬貨繰出装置30から繰り出された硬貨を1枚ずつ搬送する。入金搬送部20は、識別部22および選別部24を有して構成される。識別部22は、入金搬送部20により搬送される硬貨の識別を行う。選別部24は、識別部22による硬貨の識別結果に基づいて硬貨の選別を行う。
一時保留部40は、選別部24により選別された硬貨を金種毎に区分けされた状態で一時的に保留する。一時保留部40は、筐体12内において入金搬送部20の下方に設けられている。一時保留部40に一時的に保留された硬貨は、当該一時保留部40から収納繰出装置50に送られる。収納繰出装置50は、収納された硬貨を1枚ずつ繰り出す。本実施形態では、複数の収納繰出装置50が、一時保留部40の下方に、水平面に沿って複数列となるよう配置されている。
回収ボックス70は、複数の収納繰出装置50の下方に配置されている。この回収ボックス70には精算所等で使用されるドロア72が着脱自在に設けられており、各収納繰出装置50から繰り出された硬貨は、回収ボックス70に装着されたドロア72に、金種毎に区分けされた状態で収納されるようになっている。
制御部80は、硬貨入出金機10の各構成要素の制御を行う制御部であり、筐体12の内部に配置されている。
以下、硬貨入出金機10の各構成要素の詳細について説明する。
図1および図2に示すように、筐体12外から内部に投入された硬貨を受け入れる硬貨受入口14が筐体12の上部に設けられており、硬貨受入口14に受け入れられた硬貨は自重により硬貨繰出装置30に送られるようになっている。硬貨受入口14から硬貨繰出装置30に送られた硬貨は、当該硬貨繰出装置30に一時的に貯留されるようになっている。
(硬貨繰出装置)
硬貨繰出装置30は、図3に示すように、ベース部材31、硬貨搬送円盤32、ベルト33、ベルト駆動機構34、カバー部材35、硬貨貯留空間36、外周ベルト37、案内部材38およびレバー部材39を有して構成される。
ベース部材31は、概略板状の部材であって、硬貨繰出装置30の各構成要素が取り付けられる部材である。硬貨搬送円盤32は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢で回転する円盤であって、硬貨貯留空間36に貯留された硬貨を硬貨搬送円盤32の下部領域から上部領域へ搬送する。すなわち硬貨搬送円盤32は、接触した硬貨をベルト33へ向けて搬送する。
ベルト33は、硬貨搬送円盤32の上の硬貨に接触して移動させ、重送硬貨の捌きを行う。ベルト駆動機構34は、ベルト33を硬貨搬送円盤32の内側に向けて移動させる。
カバー部材35は、硬貨搬送円盤32の下部領域を覆う樹脂製の部材であって、硬貨搬送円盤32との間に硬貨貯留空間36を形成する。硬貨貯留空間36は、硬貨受入口14から送られた硬貨を貯留する空間であって、硬貨搬送円盤32とカバー部材35との間に形成される空間である。
外周ベルト37は、硬貨搬送円盤32の下部領域の硬貨と接触して、硬貨搬送円盤32による硬貨の搬送を補助する。案内部材38は、硬貨搬送円盤32の上の硬貨と接触して、ベルト33によって搬送される硬貨を入金搬送部20へと案内する。レバー部材39は、ベルト33に対して、硬貨搬送円盤32による硬貨の搬送方向の上流側に配置され、摩擦搬送部位32cの上の硬貨と接触して、硬貨を段差部位32d(段差部材の一例)に向けて移動させる。
このような硬貨繰出装置30の構成の詳細について図3〜図8を用いて説明する。
硬貨搬送円盤32は上述の通り、鉛直方向に対して傾斜した姿勢にて、回転軸32aを回転軸として回転する円盤であって、硬貨貯留空間36に貯留された硬貨を硬貨搬送円盤32の下部領域から上部領域へ、すなわちベルト33へ向けて搬送する。硬貨搬送円盤32は、図3、図5等に示すように、摩擦搬送部位32cおよび段差部位32d(段差部材の一例)を有して構成される。硬貨搬送円盤32は、摩擦搬送部位32cの上側の面がベース部材31の上側の面と同一平面上に位置し、かつ平行となるように、すなわち面一の関係となるように、配置される。このとき回転軸32aは、ベース部材31と垂直である。
硬貨搬送円盤32の傾斜角度(水平面に対する角度)に関し、傾斜角度が大きいほど、異物が硬貨搬送円盤32の上部領域に到達し難くなり異物の排除能力が向上するが、硬貨の搬送も困難になる。硬貨搬送円盤32の傾斜角度は35°以上が好ましく、35°以上40°以下が好適である。
摩擦搬送部位32cは、硬貨搬送円盤32の上側の面において、硬貨搬送円盤32の外周32bに沿って形成された環状の部位である。摩擦搬送部位32cの幅は、硬貨入出金機10の処理対象硬貨の最大直径よりも大きい。摩擦搬送部位32cは、硬貨との摩擦が大きくなるよう形成された部位であって、具体的には、硬貨搬送円盤32の表面にゴムや樹脂等が貼り付けられて形成されている。摩擦搬送部位32cは、当該摩擦搬送部位32cに接触した硬貨を、当該硬貨との摩擦力により硬貨搬送円盤32の上部領域に搬送する。
段差部位32dは、硬貨搬送円盤32の上側の面において、摩擦搬送部位32cの内側に形成された、摩擦搬送部位32cに対して突出した部位である。本実施形態では段差部位32dは、円盤状の薄板の部材を、その中心軸を硬貨搬送円盤32の回転軸32aと一致させた状態で硬貨搬送円盤32の上側の面に取り付けて形成されている。段差部位32dは、摩擦搬送部位32cの内側に形成されている。つまり、段差部位32dの硬貨搬送円盤32の外周に面する部位である外周部位32eと、摩擦搬送部位32cの内周側の端部および外周側の端部と、硬貨搬送円盤32の外周32bとは、いずれも硬貨搬送円盤32の回転軸32aを中心とする円形状である。
段差部位32dの上側の面は、摩擦搬送部位32cの上側の面よりも上側に位置している。本実施形態では、段差部位32dの外周近傍に傾斜部位32fが形成されており(図6参照)、段差部位32dの周囲はいわゆるテーパ状となっている。段差部位32dの外周部位32eの上端と、摩擦搬送部位32cの上側の面との距離は、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最小の厚さより小さい。そうすると、処理対象硬貨のうち厚さが最小の硬貨が2枚、硬貨搬送円盤32の上で重なって搬送され、段差部位32dに接触した場合には、下側の硬貨すなわち摩擦搬送部位32cに接触している硬貨のみが段差部位32dに当接し、他方の硬貨(硬貨の上に重なっている硬貨)は、段差部位32dに接触し得ない。これにより、重送硬貨の捌きを適切に行うことが可能となる。
ベルト33は上述の通り、硬貨搬送円盤32の上の硬貨に接触して移動させ、重送硬貨の捌きを行う。具体的にはベルト33は、摩擦搬送部位32cの上の硬貨に接触して弾性変形し、硬貨を段差部位32dに向けて移動させる。本実施形態ではベルト33は、図3に示すように、第1プーリー34aと第2プーリー34eとの間に掛け回されて、第1プーリー34aによって駆動され、移動する。ベルト33は、図4、図5等に示すように、本体部位33aおよび弾性変形部位33bを有して構成される。
本体部位33aは、環状のベルトであって、第1プーリー34aの外周と噛み合うための凸状部位が形成されている。本実施形態では本体部位33aは、断面が長方形である幅広のベルトとして形成され、断面の長辺に対応する面が第1プーリー34aに接する状態で配置される。
弾性変形部位33bは、ベルト33において弾性変形が可能なように構成された部位である。本実施形態では弾性変形部位33bは、本体部位33aから幅方向に突出した部位であって、互いに離間した棒状の部位として形成されている。つまり本実施形態では、弾性変形部位33bが、ベルト33の長手方向(すなわちベルト33の走行方向)に沿って離間して配置された複数の棒状部位を有して構成されている。弾性変形部位33bの離間の間隔は、弾性変形部位33bの幅(ベルト33の長手方向に沿った寸法)と同程度である。弾性変形部位33bの長さ、すなわち弾性変形部位33bが本体部位33aから突出している長さは、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最大の厚さよりも大きい。
本実施形態では、弾性変形部位33bの断面は長方形であり、断面の長方形の短辺がベルト33の厚み方向と一致し、断面の長方形の長辺がベルト33の長手方向と一致している。これによって、ベルト33の厚さ方向についての弾性変形部位33bの曲げ剛性が、ベルト33の長手方向(すなわちベルト33の走行方向)についての弾性変形部位33bの曲げ剛性よりも低くなっている。
ベルト駆動機構34は上述の通り、ベルト33を硬貨搬送円盤32の内側に向けて移動させる。
本実施形態ではベルト駆動機構34は、図3に示すように、第1プーリー34a、上面押圧プーリー34c、側面押圧プーリー34dおよび第2プーリー34eを有して構成される。
第1プーリー34aは、その回転軸34bがベース部材31および硬貨搬送円盤32と垂直になる姿勢にて、ベース部材31の上に配置される。第2プーリー34eは、その回転軸が硬貨搬送円盤32と垂直になる姿勢にて、入金搬送部20に配置される。ここで硬貨搬送円盤32の回転軸32aも同様にベース部材31と垂直であるから、第1プーリー34aの回転軸34bは硬貨搬送円盤32の回転軸32aと平行である。第1プーリー34aはモータ(図示なし)により、回転軸34bの回りに回転駆動される。
上面押圧プーリー34cは、その回転軸がベース部材31と平行になる姿勢にて、ベルト33の上面に接する状態で配置される。上面押圧プーリー34cは、ベルト33が硬貨と接触して弾性変形することによる上方向への移動を抑制する。
側面押圧プーリー34dは、その回転軸がベース部材31と垂直になる姿勢にて、ベルト33の側面に接する状態で配置される。側面押圧プーリー34dは、ベルト33が硬貨と接触して弾性変形することによる横方向(図3での上下方向)への移動を抑制する。
ここで図3および図5を参照して、ベルト33およびベルト駆動機構34による硬貨の搬送について説明する。図5はベルト33による硬貨の押圧および搬送の状態を示す説明図であるが、硬貨と接触するベルト33の変形状態を説明するため、複数の方向からの断面図を組み合わせて示している。
ベルト駆動機構34の第1プーリー34aが回転駆動されると、ベルト33は、第1プーリー34aと第2プーリー34eの周りを図3に示される矢印の方向、すなわち図3で反時計回りに走行(移動)する。詳しくは、ベルト33は、ベルト駆動機構34により次のように移動(走行)する。
まずベルト33は第1プーリー34aの外周に沿って移動して、硬貨搬送円盤32の上へ、硬貨搬送円盤32の上側から回転軸32aに向けて、すなわち直径方向に向けて進入する。そしてベルト33は、第1プーリー34aの外周に沿って移動方向を徐々に変化させる。換言すれば、ベルト33は第1プーリー34aの回転軸34bを中心とする円軌道に沿って移動する。このときベルト33は、硬貨搬送円盤32の段差部位32dの近傍を走行する。続いてベルト33は、第1プーリー34aから離れて第2プーリー34eに向けて図3の右方向に移動し、硬貨搬送円盤32の上から退出する。換言すれば、ベルト33は硬貨搬送円盤32の上から硬貨搬送円盤32の外へ移動(走行)する。次いでベルト33は、入金搬送部20に進入し、識別部22を通り、搬送路21aを走行する。そしてベルト33は、第2プーリー34eの外周に沿って移動して、第1プーリー34aへと循環する。
硬貨搬送円盤32によってベルト33に向けて搬送されてきた硬貨C32は、ベルト33と接触して、ベルト33によって段差部位32dへ向けて押し付けられ、段差部位32dと接触し、ベルト33の下側(すなわちベルト33と硬貨搬送円盤32との間)に潜り込む(図5の硬貨C50の状態)。
換言すれば、ベルト33が、第1プーリー34aの外周に沿って段差部位32dに向けて移動してきた際、硬貨C32が硬貨搬送円盤32によってベルト33に向けて移動し、硬貨C32がベルト33に接触する。硬貨C32は、段差部位32dに当接した状態で、硬貨搬送円盤32とともに回転して右方向へ移動するから、硬貨C32がベルト33を第1プーリー34aの回転軸34bに向かって、すなわち第1プーリー34aの内側に向かって押すことになる。そうするとベルト33は、第1プーリー34aの回転軸34bに向かって、すなわち第1プーリー34aの内側に向かって弾性変形する。そしてベルト33は、第1プーリー34aの外周に沿って移動し、硬貨C32の上側へと移動する(図5の硬貨C50の状態)。
図5の硬貨C50の状態は、硬貨C50がベルト33、詳しくはベルト33の弾性変形部位33bを弾性変形させて、ベルト33と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このときベルト33の複数の弾性変形部位33bが、硬貨C50により、弾性変形部位33bの長手方向の中程で折れ曲がり、第1プーリー34aの内側に向かって弾性変形した状態となっている。
図5の硬貨C51の状態は、硬貨C50よりも薄く小さい硬貨がベルト33と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このとき、3つの弾性変形部位33bが、硬貨C51により弾性変形している。そして硬貨C51は、弾性変形した弾性変形部位33bによって、硬貨搬送円盤32(摩擦搬送部位32c)に向けて押圧されている。
図5の硬貨C52の状態は、硬貨C51よりも厚く大きい硬貨がベルト33と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このとき、5つの弾性変形部位33bが、硬貨C52により弾性変形している。そして硬貨C52は、弾性変形した弾性変形部位33bによって、ベース部材31に向けて押圧されている。
ベルト33の弾性変形部位33bが硬貨C52によって変形している領域の長さ(ベルト33の走行方向に沿った長さ)は、硬貨C51によって変形している領域の長さよりも大きい。弾性変形部位33bの硬貨C52による変形量(例えば、折れ曲がった部分の長さ、第1プーリー34aの内側への変位量など)は、硬貨C51による変形量よりも大きい。このように、ベルト33(および弾性変形部位33b)は、接触する硬貨の大きさおよび厚さに応じて弾性変形する。
硬貨搬送円盤32と、弾性変形部位33bの先端との間の距離D1は、硬貨繰出装置30の処理対象硬貨の最小の厚さより小さい。すなわち、硬貨搬送円盤32と、ベルト33の硬貨搬送円盤32の側の端部との間の距離は、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最小の厚さより小さい。また、硬貨搬送円盤32と、弾性変形部位33bの根元との間の距離D2は、硬貨繰出装置30の処理対象硬貨の最大の厚さより大きい。これにより、処理対象硬貨のうち最も厚さが小さい硬貨であっても、弾性変形部位33bの先端が接触して、当該硬貨を段差部位32dに向けて移動させることができる。また、処理対象硬貨のうち最も厚さが大きい硬貨であっても、当該硬貨が本体部位33aに接触せず、当該硬貨によって弾性変形部位33bが弾性変形することができる。
そして図5に示すように、弾性変形部位33bによって押圧された硬貨C50、C51、C52は、ベルト駆動機構34によるベルト33の移動に伴い、摩擦搬送部位32cの上からベース部材31の上、すなわち硬貨搬送円盤32の外へ移動し、入金搬送部20へと移動する。
カバー部材35は上述の通り、硬貨搬送円盤32の下部領域を覆う樹脂製の部材であって、硬貨搬送円盤32との間に硬貨貯留空間36を形成する。カバー部材35は、開閉部位35a、軸部材35bおよび押圧部材35cを有して構成され、付勢機構35dを介してベース部材31に取り付けられている。付勢機構35dは、支柱、バネおよび板状部材を有して構成され、支柱はベース部材31に設けられ、バネを介して支柱に取り付けられた板状部材が、カバー部材35を硬貨搬送円盤32に向けて付勢している。
押圧部材35cは金属製の板状の部材であって、硬貨搬送円盤32およびカバー部材35の外周の円弧に沿う形状に形成されている。押圧部材35cは、その外周の円弧がカバー部材35の外周に沿う姿勢で、かつ、硬貨搬送円盤32の摩擦搬送部位32cに面する位置にて、カバー部材35の硬貨搬送円盤32側の面に取り付けられる。
ここでカバー部材35は付勢機構35dにより硬貨搬送円盤32に向けて付勢されている。すると、図6に示すように押圧部材35cと硬貨搬送円盤32の摩擦搬送部位32cとの間に硬貨が入り込むと、押圧部材35cが硬貨を硬貨搬送円盤32に押し付けることになる。
すなわち硬貨繰出装置30は、押圧部材35cと、付勢機構35dとを有し、押圧部材35cは、硬貨搬送円盤32の摩擦搬送部位32cに面する姿勢にて、硬貨搬送円盤32の下部領域において硬貨搬送円盤32の上側に配置され、付勢機構35dは、押圧部材35cを硬貨搬送円盤32に向けて付勢して、押圧部材35cが硬貨を硬貨搬送円盤32に押し付ける。そうすると、硬貨と摩擦搬送部位32cとの間の摩擦力が増加して、硬貨搬送円盤32による硬貨の搬送が確実に行われることになる。これにより、硬貨貯留空間36に少数の硬貨が存在する場合であっても、硬貨の繰り出しが確実に行われて、硬貨繰出装置30に繰り出されない硬貨が残留する事態を抑制することができる。また、硬貨と摩擦搬送部位32cとの間の摩擦力が増加するから、硬貨搬送円盤32の回転速度を増加させることが可能となる。
開閉部位35aは、カバー部材35に形成された部位であって、開閉することにより、硬貨貯留空間36の内部の異物E(例えば、クリップやカギなど)を硬貨貯留空間36の外部に排出する(図7、図8参照)。本実施形態では開閉部位35aは、軸部材35bを介してカバー部材35に取り付けられており、ソレノイド等により駆動されて軸部材35bの回りに回動し、開閉の動作を行う。開閉部位35aの開閉による硬貨貯留空間36からの異物Eの排出は、硬貨貯留空間36の内部に硬貨が貯留されていない際に行われる。例えば、硬貨貯留空間36の内部の硬貨の有無を検知するセンサを硬貨繰出装置30に設け、制御部80が当該センサの出力に基づいて開閉部位35aの開閉を制御する。例えば制御部80は、センサが硬貨を検知していない際に、開閉部位35aを開閉する。これにより硬貨貯留空間36の内部に異物があった場合には、当該異物は排出される。例えば、硬貨搬送円盤32を駆動させても硬貨が入金搬送部20に繰出されない状態で、当該センサが検出信号を出力している場合には、制御部80は、硬貨貯留空間36の内部に異物が残留していると判断して、開閉部位35aを開閉する。これにより硬貨貯留空間36の内部の異物が排出される。
すなわち硬貨繰出装置30はカバー部材35を有し、カバー部材35は硬貨搬送円盤32との間に硬貨を収容する硬貨貯留空間36を形成し、カバー部材35は硬貨貯留空間36の異物を排出する開閉部位35aを有する。これにより、硬貨貯留空間36からの異物の排除を可能として、硬貨繰出装置30の異物の排除能力を更に高めることができ好適である。
外周ベルト37は上述の通り、硬貨搬送円盤32の下部領域の硬貨と接触して、硬貨搬送円盤32による硬貨の搬送を補助する。外周ベルト37は、図3および図6示すように、その搬送面が硬貨搬送円盤32の外周に面する姿勢にて、硬貨搬送円盤32の下部領域において硬貨搬送円盤32に隣接して配置されている。
本実施形態では外周ベルト37は平ベルトであって、3つの外周プーリー37aの周囲に巻き回されている。3つの外周プーリー37aは自由に回転可能である。外周ベルト37は、硬貨搬送円盤32の近傍では、ベース部材31の周壁31aと硬貨搬送円盤32との間に、硬貨搬送円盤32の外周32bに接触する状態で配置されている。硬貨搬送円盤32が回転すると、外周ベルト37は、硬貨搬送円盤32と接触した状態のまま、硬貨搬送円盤32と共に移動する。
そうすると図6に示すように、摩擦搬送部位32cの上の硬貨C60は、その外周が外周ベルト37と接触した状態で、硬貨搬送円盤32によって搬送される。このとき外周ベルト37は硬貨搬送円盤32と同期して走行し、硬貨C60と共に硬貨搬送円盤32の上部領域へと移動する。よって硬貨C60の搬送に際して硬貨C60と壁面等との摺動が生じず、硬貨C60の搬送がスムースに行われることになる。また別の言い方をすれば、硬貨C60は硬貨搬送円盤32の摩擦搬送部位32cと外周ベルト37との両方から力を受けて、硬貨搬送円盤32の上部領域へ搬送される。
すなわち硬貨繰出装置30は、外周ベルト37を有し、外周ベルト37は、その搬送面が硬貨搬送円盤32の外周32bに面する姿勢にて、硬貨搬送円盤32の下部領域において硬貨搬送円盤32に隣接して配置され、硬貨搬送円盤32の回転方向と同じ方向に移動し、摩擦搬送部位32cの上の硬貨と接触して硬貨搬送円盤32による硬貨の搬送を補助する。
レバー部材39は上述の通り、ベルト33に対して、硬貨搬送円盤32による硬貨の搬送方向の上流側に配置され、摩擦搬送部位32cの上の硬貨と接触して、硬貨を段差部位32dに向けて移動させる。
本実施形態ではレバー部材39は、図3に示すように弧状に湾曲した部材であって、軸39aの回りに回転可能な状態で、一方の端部がベース部材31に取り付けられている。そしてレバー部材39の他方の端部が、硬貨搬送円盤32の摩擦搬送部位32cの上に位置する状態で配置されている。レバー部材39にはバネ39bが接続されており、レバー部材39が硬貨搬送円盤32の上の硬貨により硬貨搬送円盤32の外側へ向けて変位すると、バネ39bがレバー部材39を硬貨搬送円盤32の内側へ向けて付勢する。
硬貨搬送円盤32により搬送される硬貨は、遠心力によって、例えば図3の硬貨C31のように硬貨搬送円盤32の外周寄りに位置して搬送される。そのような硬貨がレバー部材39に接触すると、レバー部材39によって硬貨搬送円盤32の内側へ向けて移動され、硬貨搬送円盤32の段差部位32dに接触する。
次に、硬貨繰出装置30で行われる重送硬貨の捌きについて、図9および図10を用いて説明する。
硬貨が硬貨搬送円盤32によって下部領域から搬送される際、図3の硬貨C30〜C32のように1枚ずつ搬送される場合と、図9の硬貨C91〜C97のように、複数枚の硬貨が固まったり重なったりして搬送される場合がある。これは硬貨搬送円盤32の回転が高速で、遠心力が大きくなる場合に顕著である。
図9の硬貨C92は硬貨C91に引っ掛かって搬送されているが、この位置を越えると重力の作用で下方に落下する可能性が高い。硬貨C94はレバー部材39と接触し、レバー部材39によって段差部位32dに向けて移動されている。このときレバー部材39は、硬貨C94に押されて上方に変位している。硬貨C95は、レバー部材39と接触して段差部位32dに向けて移動されるが、硬貨C94と重なっていることから段差部位32dに引っ掛からず、重力の作用により下方に落下している。
硬貨C96は、段差部位32dに接触した状態でベルト33に接触し、ベルト33の下に潜り込んだ状態となっている。一方、硬貨C97は硬貨C96と重なっていることから、段差部位32dの外周部位32eと接触しない状態でベルト33と接触している。そうすると硬貨C97は、ベルト33の弾性変形部位33bを変形させることができず、ベルト33の下に潜り込むことができず、ベルト33に押されて下方に落下する。このようにして硬貨繰出装置30のベルト33にて重送硬貨の捌きが行われると共に、硬貨搬送円盤32の径方向(繰出し方向に直角な方向)に並んだ硬貨も一列状態にすることができ、入金搬送部20への一層一列状態での繰り出し(硬貨C98、C99)が実現される。
(入金搬送部)
上述の通り、硬貨繰出装置30から繰り出された硬貨は、入金搬送部20により1枚ずつ搬送される。このような入金搬送部20の構成の詳細について図3を用いて説明する。
入金搬送部20は、略水平方向に沿って延びる上部搬送部分20aと、上部搬送部分20aから送られた硬貨を搬送し、この際に硬貨の搬送方向を逆方向に変える折り返し搬送部分20bと、上部搬送部分20aの下方に設けられ、略水平方向に沿って延び、折り返し搬送部分20bから送られた硬貨を搬送する下部搬送部分20cとを有している。そして、硬貨繰出装置30から繰り出された硬貨は上部搬送部分20a、折り返し搬送部分20b、下部搬送部分20cの順に搬送されるようになっている。また、図1および図3に示すように、上部搬送部分20aおよび下部搬送部分20cには、識別部22による硬貨の識別結果に基づいて硬貨の選別を行う選別部24(24a〜24h)がそれぞれ複数設けられている。
上部搬送部分20aは、略水平方向に沿って延びる搬送路21aと、この搬送路21aに沿って設けられたベルト33とから構成されており、搬送路21aに沿ってベルト33により硬貨が1枚ずつ搬送されるようになっている。より詳細には、搬送路21aは搬送路側面21cおよび搬送路底面21dから構成されており、搬送路側面21cは鉛直方向に対して所定の角度で傾斜した傾斜面となっている。そして、図3に示すように、搬送路21aにおいて、硬貨は自重により搬送路底面21dに接触するよう、ベルト33により搬送路側面21cに沿って図3における右方向に搬送されるようになっている。
ベルト33は、搬送路側面21cと当該ベルト33との間で硬貨を保持しながら当該硬貨を搬送するようになっている。また、上部搬送部分20aには複数(具体的には5つ)の選別部24(24a〜24e)が設けられている。また、図3に示すように、上部搬送部分20aにおける各選別部24の上流側には識別部22が設けられており、この識別部22は、硬貨繰出装置30から繰り出された硬貨の金種や真偽等の識別を行うようになっている。
上部搬送部分20aに設けられた各選別部24は、識別部22による硬貨の識別結果に基づいて、この上部搬送部分20aにより搬送される硬貨を選別して後述するリジェクト部47やオーバーフローボックス49、または一時保留部40に送るようになっている。具体的には、上部搬送部分20aに設けられた合計5つの選別部24のうち、硬貨の搬送方向における最も上流側にある選別部24aは、リジェクト硬貨の選別を行うリジェクト選別部として機能するようになっており、この選別部24aによりリジェクト硬貨が選別されてリジェクト部47(図1参照)に送られるようになっている。また、上部搬送部分20aに設けられた合計5つの選別部24のうち、硬貨の搬送方向において上流側から3番目に配置された選別部24cは、その金種に対応する収納繰出装置50が既に満杯であるようなオーバーフロー硬貨の選別を行うオーバーフロー選別部として機能するようになっており、この選別部24cによりオーバーフロー硬貨が選別されてオーバーフローボックス49(図2参照)に送られるようになっている。
また、上部搬送部分20aに設けられた合計5つの選別部24のうち、上述した選別部24a、24c以外の選別部24b、24d、24eは、金種別に硬貨を選別する金種別選別部として機能するようになっている。より具体的には、例えば本実施形態の硬貨入出金機10においてユーロ(EURO)硬貨の処理が行われるときに、硬貨の搬送方向において上流側から2番目に配置された選別部24bは、識別部22により1セント硬貨であると識別された硬貨を選別し、硬貨の搬送方向において上流側から4番目に配置された選別部24dは、識別部22により5セント硬貨であると識別された硬貨を選別し、硬貨の搬送方向において上流側から5番目に配置された選別部24eは、識別部22により10セント硬貨であると識別された硬貨を選別するようになっている。
各選別部24の構成の詳細について図3を用いて説明する。図3に示すように、上部搬送部分20aにおける搬送路21aの搬送路側面21cには、各選別部24にそれぞれ対応して開口25が設けられている。各開口25にはシュート26(図1および図2参照)が接続されており、ベルト33により搬送路21aに沿って搬送される硬貨が開口25に入ったときに、この硬貨は対応するシュート26に送られて、最終的にはシュート26を介して自重によりリジェクト部47やオーバーフローボックス49、または一時保留部40に硬貨が送られるようになる。
また、各開口25の下方には分岐部材27がそれぞれ設けられている。各分岐部材27は、通常時には搬送路21aにおける搬送路底面21dの下方に位置しており、硬貨の選別を行う際には搬送路底面21dの上方に進出するようになっている。より詳細には、分岐部材27が搬送路21aの搬送路底面21dの下方に位置しており、この搬送路底面21dから上方に進出していないときには、搬送路21aで搬送される硬貨は分岐部材27により搬送路底面21dから上方に押し上げられることはない。このため、搬送路21aで搬送される硬貨は開口25に入ることはない。一方、分岐部材27が搬送路21aの搬送路底面21dから上方に進出したときは、搬送路21aで搬送される硬貨は分岐部材27により搬送路底面21dから図3における上方に持ち上げられ、この硬貨は開口25に入ることとなる。
このように、各選別部24は開口25、分岐部材27等から構成されており、分岐部材27が搬送路底面21dから上方に進出するか否かを後述する制御部80により制御することにより、各選別部24は硬貨の選別を行うようになっている。
上部搬送部分20aにおいて各選別部24により選別されなかった硬貨は折り返し搬送部分20bに送られるようになる。ここで、折り返し搬送部分20bは、図1および図3に示すように、硬貨入出金機10を側方から見て円弧形状、より詳細には半円形状となっている。そして、折り返し搬送部分20bにおいて、硬貨は自重による落下によって上部搬送部分20aから下部搬送部分20cに搬送されるようになっている。
下部搬送部分20cは、折り返し搬送部分20bから硬貨が送られる第1搬送部分20dと、硬貨の搬送方向における第1搬送部分20dの下流側に設けられた第2搬送部分20eとから構成されている。より詳細には、第1搬送部分20dには搬送ベルト21eが設けられており、第2搬送部分20eにも搬送ベルト21fが設けられている。第1搬送部分20dに設けられた搬送ベルト21eは、折り返し搬送部分20bにおいて自重による落下によって上部搬送部分20aから送られた硬貨を図3における左方向に搬送するようになっている。また、第2搬送部分20eに設けられた搬送ベルト21fは、搬送ベルト21eにより搬送される硬貨が受け渡されるようになっており、この搬送ベルト21fは、搬送ベルト21eから受け渡された硬貨を図3における左方向に搬送するようになっている。本実施形態では、搬送ベルト21eおよび搬送ベルト21fは、上述したベルト33と同様の構造のものを用いることができる。
なお、第2搬送部分20eに設けられた搬送ベルト21fによる硬貨の搬送速度は、第1搬送部分20dに設けられた搬送ベルト21eによる硬貨の搬送速度よりも大きくなっている。このため、第1搬送部分20dに設けられた搬送ベルト21eから第2搬送部分20eに設けられた搬送ベルト21fに硬貨が受け渡される際に硬貨間隔が広くなり、確実に硬貨を選別できるとともに、ジャム等のトラブルが発生することなくスムーズに硬貨の受け渡しを行うことができるようになる。
下部搬送部分20cには、上部搬送部分20aの搬送路21aと同様の構成の搬送路が設けられている。また、下部搬送部分20cにおける第2搬送部分20eには3つの選別部24(選別部24f〜24h)が設けられている。下部搬送部分20cの第2搬送部分20eに設けられた各選別部24は、識別部22による硬貨の識別結果に基づいて、この第2搬送部分20eにより搬送される硬貨を選別して一時保留部40に送るようになっている。具体的には、各選別部24f〜24hは、金種別に硬貨を選別する金種別選別部として機能するようになっている。より詳細には、例えば本実施形態の硬貨入出金機10においてユーロ(EURO)硬貨の処理が行われるときに、硬貨の搬送方向において最も上流側に配置された選別部24fは、識別部22により2ユーロ硬貨であると識別された硬貨を選別し、硬貨の搬送方向において上流側から2番目に配置された選別部24gは、識別部22により1ユーロ硬貨であると識別された硬貨を選別し、硬貨の搬送方向において上流側から3番目に配置された選別部24hは、識別部22により2セント硬貨であると識別された硬貨を選別するようになっている。また、下部搬送部分20cの第2搬送部分20eにおいて、硬貨の搬送方向におけるこれらの3つの選別部24f〜24hの下流側には開口24iが設けられており、この開口24iには、各選別部24f〜24hにより選別されなかった硬貨、具体的には例えば20セント硬貨が入るようになっている。なお、この開口24iにもシュート26が接続されており、開口24iに入った20セント硬貨はシュート26を介して一時保留部40に送られるようになっている。
本実施形態の硬貨入出金機10では、上部搬送部分20aに設けられた選別部24(選別部24b、24d、24e)により選別される硬貨の直径の大きさ(具体的には、1セント硬貨、5セント硬貨、10セント硬貨の直径の大きさ)は、下部搬送部分20cに設けられた選別部24(選別部24f〜24h)により選別されたり開口24iに入ったりする硬貨の直径の大きさ(具体的には、2ユーロ硬貨、1ユーロ硬貨、2セント硬貨、50セント硬貨、20セント硬貨の直径の大きさ)よりも小さくなっている。このため、直径が比較的小さな硬貨が折り返し搬送部分20bを経て下部搬送部分20cに送られることが抑制され、このことにより、このような直径が比較的小さな硬貨により折り返し搬送部分20bや下部搬送部分20cでジャム等のトラブルが発生してしまうことを防止することができるようになる。
また、下部搬送部分20cの第2搬送部分20eに設けられた搬送ベルト21fによる硬貨の搬送速度は、上部搬送部分20aに設けられたベルト33による硬貨の搬送速度と同一となっている。なお、前述したように、第2搬送部分20eに設けられた搬送ベルト21fによる硬貨の搬送速度は、第1搬送部分20dに設けられた搬送ベルト21eによる硬貨の搬送速度よりも大きくなっている。
また、本実施形態の硬貨入出金機10では、上部搬送部分20aおよび下部搬送部分20cにそれぞれ設けられた選別部24により選別される硬貨の金種は、選別部24毎に自在に設定可能となっている。すなわち、図3に示される各選別部24a〜24hについて、例えば処理されるべき硬貨のうち特定の金種の硬貨の枚数が多いことが予めわかっている場合には、複数の選別部24にこの特定の金種を割り当てるようにしてもよい。
(一時保留部)
前述のように、入金搬送部20の上部搬送部分20aや下部搬送部分20cに設けられた各選別部24により選別された硬貨は、各選別部24に対応して設けられたシュート26を介して、リジェクト部47やオーバーフローボックス49、または一時保留部40に送られる。ここで、一時保留部40の構成の詳細について説明する。
図2に示すように、本実施形態の硬貨入出金機10においては、左右一対の一時保留部40が設けられている。また各一時保留部40は複数の保留部分に区切られている。そして、各一時保留部40における複数の保留部分に、各選別部24により選別された硬貨が金種別に一時的に保留されるようになっている。また、各一時保留部40における複数の保留部分に一時的に保留された硬貨は、返却箱48または各収納繰出装置50に選択的に送られるようになっている。また、各一時保留部40には、当該一時保留部40における複数の保留部分のうちいずれか一つの保留部分が硬貨フル状態となったときにこのことを検出する硬貨フル検出部40bが設けられている(図11参照)。具体的には、各保留部分には硬貨フルセンサが設けられており、少なくともいずれか一つの保留部分において硬貨フルセンサにより硬貨フル状態が検出されたときに、硬貨フル検出部40bは後述する制御部80に硬貨フル情報に係る信号を送るようになっている。
返却箱48は筐体12の内部から外部に引き出し可能となるよう構成されており、返却箱48を筐体12の外部に引き出すことによって操作者は返却箱48内の硬貨を取り出すことができるようになっている。このように、返却箱48は、一時保留部40に一時的に保留された硬貨を筐体12の外部に返却するためのものとして使用されるようになっている。返却箱48は、複数の金種の硬貨を混合状態で収容するよう構成されている。なお、返却箱48は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、返却箱48は各一時保留部40と同様に複数の返却部分に区切られるようになっていてもよい。この場合、返却箱48における互いに区切られた複数の返却部分は、各一時保留部40における複数の保留部分に対応するようになり、これらの返却部分には硬貨が金種別に収納されるようになる。
各一時保留部40は、図2における実線で示すような第1の位置と図2における二点鎖線で示すような第2の位置との間でそれぞれ移動自在となっている。そして、各一時保留部40が第1の位置にあるときには当該一時保留部40は各選別部24により選別された硬貨を受けるようになっている。また各一時保留部40が第1の位置から第2の位置に移動すると、当該一時保留部40に一時的に保留された硬貨が各収納繰出装置50に送られるようになっている。
より詳細には、図2に示すように、各一時保留部40は、頂部および底部がそれぞれ開口した枠体42およびこの枠体42の底部の開口を選択的に塞ぐ底板43を有している。そして、これらの枠体42および底板43は、それぞれ図2における実線で示すような第1の位置と、図2における二点鎖線で示すような第2の位置との間で互いに独立して移動自在となっている。図2に示すように、第1の位置にある枠体42の真下の位置には返却箱48が設けられている。一方、第2の位置にある枠体42の真下の位置には複数のシュート46が各保留部分に対応して設けられており、これらのシュート46はそれぞれ対応する金種の各収納繰出装置50に連通している。
そして、枠体42および底板43がそれぞれ第1の位置にあるときには、一時保留部40は、入金搬送部20の各選別部24により選別されシュート26を介して送られた硬貨を枠体42の頂部の開口を介して受けるようになっている。この際に、枠体42の底部の開口は底板43により塞がれているため、一時保留部40に送られた硬貨は当該一時保留部40において一時的に保留されるようになる。そして、底板43が第1の位置に維持されたまま枠体42が第1の位置から第2の位置に移動すると、一時保留部40の各保留部分に一時的に保留された硬貨は、一時保留部40に設けられた開口を通過して自重により落下し、当該保留部分に対応して設けられた各シュート46を介して各収納繰出装置50に金種別に送られる。一方、枠体42が第1の位置に維持されたまま底板43が第1の位置から第2の位置に移動すると、一時保留部40の各保留部分に一時的に保留された硬貨は返却箱48に送られる。
上述のような各一時保留部40における枠体42や底板43の駆動は、一時保留部駆動部40p(図11参照)によりそれぞれ行われるようになっている。
このようにして、各一時保留部40における複数の保留部分に一時的に保留された硬貨は、各収納繰出装置50または返却箱48に一括して送られるようになる。なお、本実施形態の硬貨入出金機10では、一時保留部40の構成はこのようなものに限定されることはない。例えば、一時保留部40における各保留部分に一時的に保留された硬貨が、他の保留部分から独立して各収納繰出装置50または返却箱48に個別に送られるようになっていてもよい。
(収納繰出装置)
次に、収納繰出装置50の構成の詳細について説明する。各収納繰出装置50は水平面に沿って複数列、具体的には2列となるよう配置されている。そして、各列には4つの収納繰出装置50が設けられている。
また、各収納繰出装置50には、当該収納繰出装置50から繰り出された硬貨を案内するためのシュート68が設けられている。これらの複数のシュート68は各収納繰出装置50にそれぞれ対応して設けられている。そして、各シュート68は、一方の列の収納繰出装置50と他方の列の収納繰出装置50との間において各収納繰出装置50の側方に設置されている。
各収納繰出装置50は、硬貨の繰り出しを行う繰出部51と、各一時保留部40から送られた硬貨を収納するとともに収納された硬貨を繰出部51に搬送する搬送部60とを有している。各収納繰出装置50の繰出部51は、鉛直方向に対して所定角度で傾斜しており傾斜姿勢で回転させられる回転円盤52と、この回転円盤52の表面との間に硬貨を収納する硬貨収納空間53を形成するカバー部材54と、を有している。回転円盤52の表面には、当該表面から突出する複数の搬送突起部材が設けられている。これらの搬送突起部材は、内周側の円周方向と外周側の円周方向との2列の円周方向に沿って所定ピッチで配置されている。外周側の各搬送突起部材は、内周側の各搬送突起部材より回転円盤52の回転方向の上流側に配置されている。そして、回転円盤52の回転時において、内周側の搬送突起部材がカバー部材54との間で硬貨を1枚ずつ保持して回転円盤52の下部領域から上部領域に拾い上げ、内周側の搬送突起部材で回転円盤52の上部領域に拾い上げた硬貨を、外周側の搬送突起部材により収納繰出装置50の投出口へ向けて押し出すようになっている。
繰出部51における回転円盤52の上部領域には案内部材が位置固定で設けられており、この案内部材は回転円盤52の上部領域を覆うよう配置されている。より具体的には、案内部材は、回転円盤52における硬貨収納空間53側の表面とわずかな間隔を隔てて配置されている。案内部材は、回転円盤52の回転によって当該回転円盤52の下部領域から上部領域に搬送された硬貨を投出口に案内するよう構成されている。そして、案内部材により投出口に案内された硬貨は、当該収納繰出装置50に対応するシュート68に送られ、シュート68内で自重により落下するようになる。また、収納繰出装置50において回転円盤52の表面に排除突起部材が設けられている。排除突起部材は、一つの搬送突起部材に2枚以上の硬貨が引っ掛けられたときに、回転円盤52の上部領域において案内部材により硬貨が案内される際にこの搬送突起部材に引っ掛けられた硬貨のうち1枚の硬貨のみを回転円盤52の表面から浮かせずそれ以外の硬貨を回転円盤52の表面から浮かせるようになっている。そして、回転円盤52の表面から浮いた2枚目以降の硬貨は、ガイド部材の先端部分によりすくい上げられることによって回転円盤52の下部領域に落下するようになっている。
各収納繰出装置50における搬送部60は、略水平方向に延びる無端状の搬送ベルト62を有している。そして、各一時保留部40から送られた硬貨は搬送ベルト62上に集積されるようになっている。そして、搬送ベルト62が循環移動することにより、搬送ベルト62上に集積された硬貨の山が崩されて、硬貨は繰出部51における回転円盤52とカバー部材54との間に形成された硬貨収納空間53に送られるようになっている。ここで、搬送部60における搬送ベルト62と繰出部51における回転円盤52は同期して動作されるようになっている。
(回収ボックス、ドロア)
各収納繰出装置50から繰り出された硬貨は、当該収納繰出装置50に対応するシュート68を介して、回収ボックス70に装着されたドロア72に収納されるようになっている。次に、回収ボックス70およびドロア72の構成について説明する。
硬貨入出金機10の筐体12の下部には回収ボックス70(回収箱)が着脱自在に設けられている。この回収ボックス70は筐体12の前面から手前側に引き出し可能となっている。この回収ボックス70にはキャスター(図示せず)が設けられており、筐体12から台車代わりに引き出すことができるようになっている。このような回収ボックス70には、ドロア乗せ台を着脱自在に装着することができるようになっている。そして、ドロア乗せ台には様々な種類のドロア72を乗せることができるようになっている。ドロア72がドロア乗せ台に乗せられた状態でこのドロア乗せ台が回収ボックス70に装着され、この回収ボックス70が筐体12内に収容されると、各収納繰出装置50から繰り出された硬貨は、当該収納繰出装置50に対応するシュート68を介して、回収ボックス70に装着されたドロア72に収納されるようになる。
また、本実施形態の硬貨入出金機10では、ドロア72およびドロア乗せ台が回収ボックス70から取り外された状態で回収ボックス70が筐体12の下部に装着されたときに、各収納繰出装置50から繰り出され、各シュート68を介して自重により落下した硬貨は、回収ボックス70に金種混合状態で収納されるようになっている。この場合には、回収ボックス70を筐体12から引き出すと、回収ボックス70ごと硬貨を回収することができるようになる。
このようにして、操作者が硬貨入出金機10から硬貨の出金処理を行いたい場合には、回収ボックス70にドロア72を取り付けた状態で回収ボックス70を筐体12に装着することにより、各収納繰出装置50から繰り出された硬貨はドロア72内に収納されるようになり、操作者は回収ボックス70を筐体12から引き出すことによりドロア72内に収納された硬貨を出金硬貨として使用することができるようになる。一方、操作者が硬貨入出金機10から硬貨の回収処理を行いたい場合には、回収ボックス70からドロア72を取り外した状態で回収ボックス70を筐体12に装着することにより、各収納繰出装置50から繰り出された硬貨は回収ボックス70内に収納されるようになり、操作者は回収ボックス70ごと硬貨を回収することができるようになる。
本実施形態の硬貨入出金機10においては、筐体12の下部への回収ボックス70の装着状態を検出する装着状態検出部78が設けられている(図11参照)。この装着状態検出部78は、筐体12の下部へ回収ボックス70が装着されているか否か、また、筐体12の下部へ回収ボックス70が装着されている場合には、この回収ボックス70にドロア72が取り付けられているか否かを検出するようになっている。
(制御部)
また、本実施形態の硬貨入出金機10においては、当該硬貨入出金機10の各構成要素の制御を行う制御部80が設けられている。図11を参照して、制御部80の構成について説明する。
図11に示すように、制御部80は、入金搬送部20における各搬送ベルト21e、21fの駆動を行う駆動部(図示せず)や識別部22、硬貨繰出装置30における硬貨搬送円盤32の駆動を行う回転円盤駆動部32pや第1プーリー34aの駆動を行うベルト駆動部34p、各一時保留部40における枠体42や底板43の駆動を行う一時保留部駆動部40pや硬貨フル検出部40b、収納繰出装置50における繰出部51や搬送部60等に接続されており、これらの構成要素に対して信号の送受信を行うようになっている。より詳細には、入金搬送部20の識別部22による硬貨の識別結果に係る信号が制御部80に送られるようになっている。また、制御部80は、入金搬送部20における各搬送ベルト、21e、21fの駆動を行う駆動部、硬貨繰出装置30における回転円盤駆動部32pとベルト駆動部34p、一時保留部40における一時保留部駆動部40p、収納繰出装置50における繰出部51や搬送部60等に制御信号を送り、これらの各構成要素の制御を行うようになっている。
また、制御部80には装着状態検出部78が接続されており、この装着状態検出部78により検出された、筐体12への回収ボックス70の装着状態の検出情報に係る信号が制御部80に送られるようになっている。
また、制御部80には報知部82が接続されており、この報知部82により操作者に対して表示や音声等により様々な報知を行うことができるようになっている。また、制御部80には、当該制御部80に対して操作者が様々な指令を行うための操作部84が設けられている。これらの報知部82や操作部84の一例として、例えば筐体12の前面や上面に設けられた、報知部82および操作部84が一体化されたタッチパネルからなるものが知られている。
また、制御部80には記憶部86が接続されており、硬貨入出金機10の様々な設定や当該硬貨入出金機10による硬貨の処理結果等の情報が記憶部86に記憶されるようになっている。具体的には、入金搬送部20に設けられた各選別部24により選別される硬貨の金種の設定に係る情報や、各収納繰出装置50に収納されている硬貨の金種毎の枚数や金額等の情報が記憶部86に記憶されるようになっている。
また、制御部80にはインターフェース88が接続されており、このインターフェース88を介して制御部80は硬貨入出金機10の外部の装置(例えば上位装置)に対して信号の送受信を行うことができるようになっている。
また、硬貨入出金機10には不良検出部90が設けられており、この不良検出部90により、硬貨入出金機10に異常が発生したときにこのことが検出されるようになっている。不良検出部90による異常検出情報は制御部80に送られるようになっている。
以上のように本実施形態の硬貨繰出装置30は、回転する硬貨搬送円盤32と、段差部位32d(段差部材)と、ベルト33と、ベルト駆動機構34とを有し、硬貨搬送円盤32は、接触した硬貨をベルトへ向けて搬送し、段差部位32dは、硬貨搬送円盤32の上側に配置されており、硬貨搬送円盤32の外周32bに面する部位である外周部位32eを有し、外周部位32eの上端と、硬貨搬送円盤32の上側の面との距離は、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最小の厚さより小さく、ベルト駆動機構34は、ベルト33を、硬貨搬送円盤32の上側の面に沿って硬貨搬送円盤32の内側に向けて走行させ、ベルト33は、硬貨搬送円盤32の上の硬貨に接触して弾性変形し、当該硬貨を段差部位32dに向けて移動させる。
このような硬貨繰出装置30によれば、ベルト33が硬貨を段差部位32dに向けて移動させるので、重送硬貨を確実に捌くことができる。説明すると、複数の硬貨が重なった状態でベルト33に向けて搬送された場合、ベルト33が重なった硬貨を段差部位32dに向けて移動させる。すると、硬貨搬送円盤32に接触している最下層の硬貨は段差部位32dに接触した状態となるが、他の硬貨は段差部位32dに接触し得ず、段差部位32dを越えて押し出されることになる。このようにして硬貨搬送円盤32の上には1層の硬貨が整列することとなる。また、小径硬貨が硬貨搬送円盤32の径方向に並んでいる場合でも、ベルト33の押圧作用により繰出し方向に一列に整列することとなる。そしてベルト33は、硬貨搬送円盤32の上の硬貨に接触して弾性変形し、上述の重送硬貨の捌きを行うので、硬貨繰出装置30は様々な厚さの硬貨に対応することができる。また、ベルト33が硬貨を段差部位32dに向けて移動させることにより、硬貨を確実に一列状態にして繰出すことができる。すなわち上記の構成によれば、処理を高速化した場合でも重送硬貨や小径硬貨の捌きを確実に行うことができ、硬貨を1枚ずつ繰出すことができる硬貨繰出装置30を提供することが可能となる。
また本実施形態の硬貨繰出装置30では、ベルト33は、弾性変形した状態で硬貨搬送円盤32の上の硬貨を硬貨搬送円盤32に向けて押圧し、ベルト駆動機構34は、ベルト33を硬貨搬送円盤32の上から硬貨搬送円盤32の外へ走行させて、硬貨を硬貨搬送円盤32の外へ移動させるよう構成される。このため、弾性変形したベルト33が硬貨を押圧して姿勢を安定させ、その状態で硬貨繰出装置30から硬貨を繰り出すことができ、処理の高速化の点で有利である。
また本実施形態の硬貨繰出装置30は、硬貨搬送円盤32と、ベルト33の硬貨搬送円盤32の側の端部との間の距離は、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最小の厚さより小さくなるよう構成される。
また本実施形態の硬貨繰出装置30は、ベルト駆動機構34は、第1プーリー34aを有して構成され、ベルト33は第1プーリー34aに掛け回されており、第1プーリー34aの回転軸34bは、硬貨搬送円盤32の回転軸32aと略平行であり、ベルト33の幅方向の端部が硬貨搬送円盤32の上の硬貨と接触するよう構成される。
また本実施形態の硬貨繰出装置30は、ベルト33は、硬貨搬送円盤32の上の硬貨に接触した際、ベルト33の幅方向の端部が第1プーリー34aの内側に向かって弾性変形するよう構成される。
また本実施形態の硬貨繰出装置30は、ベルト33の厚さ方向についての弾性変形部位33bの曲げ剛性が、ベルト33の走行方向についての弾性変形部位33bの曲げ剛性よりも低いよう構成される。
また本実施形態の硬貨繰出装置30は、弾性変形部位33bが、ベルト33の走行方向に沿って分割されているよう構成される。
また本実施形態の硬貨繰出装置30は、弾性変形部位33bが、ベルト33の走行方向に沿って離間して配置された複数の棒状部位を有して構成されているよう構成される。
(第2実施形態)
上述の実施形態では、ベルト33の弾性変形部位33bは、互いに離間した棒状の部位として形成された。ベルト33の形態としては、以下示すような異なる形態も可能である。なお以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態に係るベルト201は、図12に示すように、本体部位201aおよび弾性変形部位201bを有して構成される。弾性変形部位201bは、幅広部位201cおよび幅狭部位201dを有して構成される。幅広部位201cの幅(ベルト33の長手方向に沿った幅)は、幅狭部位201dの幅よりも大きい。本実施形態では、幅広部位201cと幅狭部位201dとが隣接した形態で、交互に配置される。幅広部位201cの長さと幅狭部位201dの長さは、同程度である。幅広部位201c(および幅狭部位201d)の長さ、すなわち弾性変形部位33bが本体部位33aから突出している長さは、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最大の厚さよりも大きい。
本実施形態では、幅広部位201cおよび幅狭部位201dの断面はいずれも長方形であり、断面の長方形の短辺がベルト33の厚み方向と一致し、断面の長方形の長辺がベルト33の長手方向と一致している。これによって、ベルト33の厚さ方向についての弾性変形部位33b(幅広部位201cおよび幅狭部位201d)の曲げ剛性が、ベルト33の長手方向(すなわちベルト33の走行方向)についての弾性変形部位33b(幅広部位201cおよび幅狭部位201d)の曲げ剛性よりも低くなっている。
図12の硬貨C120の状態は、硬貨C120がベルト201、詳しくはベルト201の弾性変形部位201bを弾性変形させて、ベルト201と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このときベルト201の複数の弾性変形部位201bが、硬貨C120により、弾性変形部位201bの長手方向の中程で折れ曲がり、第1プーリー34aの内側に向かって弾性変形した状態となっている。
図12の硬貨C121の状態は、硬貨C120よりも薄く小さい硬貨がベルト201と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このとき、6個の弾性変形部位201bが、硬貨C121により弾性変形している。そして硬貨C121は、弾性変形した弾性変形部位201bによって、硬貨搬送円盤32(摩擦搬送部位32c)に向けて押圧されている。
図12の硬貨C122の状態は、硬貨C121よりも厚く大きい硬貨がベルト201と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このとき、11個の弾性変形部位201bが、硬貨C122により弾性変形している。そして硬貨C122は、弾性変形した弾性変形部位201bによって、ベース部材31に向けて押圧されている。
ベルト201の弾性変形部位201bが硬貨C122によって変形している領域の長さ(ベルト201の走行方向に沿った長さ)は、硬貨C121によって変形している領域の長さよりも大きい。弾性変形部位201bの硬貨C122による変形量(例えば、折れ曲がった部分の長さ、第1プーリー34aの内側への変位量など)は、硬貨C121による変形量よりも大きい。このように、ベルト201(および弾性変形部位201b)は、接触する硬貨の大きさおよび厚さに応じて弾性変形する。
(第3実施形態)
本実施形態に係るベルト301は、図13および図14に示すように、本体部位301aおよび弾性変形部位301bを有して構成される。弾性変形部位301bは、厚肉部位301cおよび薄肉部位301dを有して構成される。本実施形態に係る弾性変形部位301bは、第1実施形態および第2実施形態と異なり、ベルト301の長手方向に沿って離間・分離せず連続した部材として形成されている。
厚肉部位301cの幅(ベルト33の長手方向に沿った幅)は、薄肉部位301dの幅よりも大きい。本実施形態では、厚肉部位301cと薄肉部位301dとが隣接した形態で、交互に配置される。厚肉部位301cの長さと薄肉部位301dの長さは、同程度である。厚肉部位301c(および薄肉部位301d)の長さ、すなわち弾性変形部位33bが本体部位33aから突出している長さは、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最大の厚さよりも大きい。
本実施形態では、厚肉部位301cの厚さは、薄肉部位301dの厚さよりも大きい。ベルト33の厚さ方向についての弾性変形部位33b(厚肉部位301cおよび薄肉部位301d)の曲げ剛性は、ベルト33の長手方向(すなわちベルト33の走行方向)についての弾性変形部位33b(厚肉部位301cおよび薄肉部位301d)の曲げ剛性よりも低くなっている。
図14の硬貨C140の状態は、硬貨C140がベルト301、詳しくはベルト301の弾性変形部位301bを弾性変形させて、ベルト301と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このときベルト301の弾性変形部位301bが、硬貨C140により、弾性変形部位301bの長手方向の中程で折れ曲がり、第1プーリー34aの内側に向かって弾性変形した状態となっている。
図14の硬貨C141の状態は、硬貨C140よりも薄く小さい硬貨がベルト301と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このとき、硬貨C141は、弾性変形した弾性変形部位301bによって、硬貨搬送円盤32(摩擦搬送部位32c)に向けて押圧されている。
図14の硬貨C142の状態は、硬貨C141よりも厚く大きい硬貨がベルト301と硬貨搬送円盤32との間に潜り込んだ状態を示している。このとき、硬貨C142は、弾性変形した弾性変形部位301bによって、ベース部材31に向けて押圧されている。
ベルト301の弾性変形部位301bが硬貨C142によって変形している領域の長さ(ベルト301の走行方向に沿った長さ)は、硬貨C141によって変形している領域の長さよりも大きい。弾性変形部位301bの硬貨C142による変形量(例えば、折れ曲がった部分の長さ、第1プーリー34aの内側への変位量など)は、硬貨C141による変形量よりも大きい。このように、ベルト301(および弾性変形部位301b)は、接触する硬貨の大きさおよび厚さに応じて弾性変形する。
(第4実施形態)
上述の実施形態では、硬貨搬送円盤32に固定された段差部位32dが段差部材に相当した。段差部材は、硬貨繰出装置30に対して固定された部材であってもいい。すなわち段差部材は、上述の実施形態のように硬貨搬送円盤32と共に回転する形態ではなく、硬貨繰出装置30に対して停止した部材であってもよい。
また上述の実施形態では、摩擦搬送部位32cが、硬貨搬送円盤32の上側の面において、硬貨搬送円盤32の外周32bに沿って形成され、当該摩擦搬送部位32cに接触した硬貨を、当該硬貨との摩擦力により硬貨搬送円盤32の上部領域に搬送するよう構成された。すなわち上述の実施形態では、硬貨搬送円盤32はいわゆる摩擦方式で硬貨を搬送した。硬貨搬送円盤32に突起部位を設け、この突起部位に硬貨を引っ掛けて搬送する、いわゆる突起方式を用いることも可能である。
本実施形態の硬貨繰出装置30は、図15に示すように、硬貨搬送円盤401および段差部材402を有して構成される。
硬貨搬送円盤401は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢にて、回転軸401aの回りに回転する円盤であって、硬貨貯留空間36に貯留された硬貨を硬貨搬送円盤401の下部領域から上部領域へ、すなわちベルト33へ向けて搬送する。硬貨搬送円盤401の上側の面には、図15に示すように、複数の突起部位401cが形成されている。これらの突起部位401cは、硬貨搬送円盤401の外周に沿って等間隔で設けられている。そして、各突起部位401cが硬貨搬送円盤401の表面上で硬貨を引っ掛けることにより、硬貨搬送円盤401の下部領域にある硬貨を当該硬貨搬送円盤401の回転によって上部領域に搬送するようになっている。
段差部材402は、硬貨繰出装置30に対して位置固定で設けられた部材であって、硬貨搬送円盤401の上側の面とわずかな間隔を隔てて、硬貨搬送円盤401の突起部位401cよりも内側に配置されている。段差部材402と硬貨搬送円盤401との間隔は、硬貨繰出装置30の処理対象硬貨の最小の厚さよりも小さい。
段差部材402は、外周部位402a、傾斜部位402bおよびガイド部位402cを有して構成される。外周部位402aは、硬貨搬送円盤401の外周に面する部位である。本実施形態では、段差部材402の外周近傍に傾斜部位402bが形成されており(図15参照)、段差部材402の周囲はいわゆるテーパ状となっている。段差部材402の外周部位402aの上端と、硬貨搬送円盤401の上側の面との距離は、硬貨繰出装置30が処理の対象とする処理対象硬貨の最小の厚さより小さい。そうすると、処理対象硬貨のうち厚さが最小の硬貨が2枚、硬貨搬送円盤401の上で重なって搬送され、段差部材402に接触した場合には、下側の硬貨すなわち硬貨搬送円盤401に接触している硬貨のみが段差部材402に当接し、他方の硬貨(硬貨の上に重なっている硬貨)は、段差部材402に接触し得ない。これにより、重送硬貨の捌きを適切に行うことが可能となる。
図15を参照して、本実施形態の硬貨繰出装置30での硬貨の搬送および重送硬貨の捌きについて説明する。本実施形態の硬貨繰出装置30では上述の通り、硬貨は、硬貨搬送円盤401の突起部位401cに引っ掛けられて搬送される。硬貨搬送円盤401に接触している硬貨は、硬貨C150のように、段差部材402の外周部位402aと、硬貨搬送円盤401の突起部位401cとに接触した状態で搬送され、ベルト33に接近する。
ベルト33に接触した硬貨(硬貨C151)は、外周部位402aと突起部位401cとに押されて、ベルト33の弾性変形部位33bに接触する。すると硬貨C151に接触して押されたベルト33の幅方向の端部(弾性変形部位33b)は、第1プーリー34aの内側へ向かって弾性変形する。そして硬貨C151は、ベルト33と硬貨搬送円盤401との間に潜り込む。
一方、硬貨C152は硬貨C151と重なっていることから、段差部材402の外周部位402aと接触しない状態でベルト33と接触する。そうすると硬貨C151は、ベルト33の弾性変形部位33bを変形させることができず、ベルト33の下に潜り込むことができず、ベルト33に押されて下方に落下する。ベルト33の下に潜り込んだ硬貨C101、C153は、段差部材402のガイド部位402cおよびベルト33に導かれて、入金搬送部20へと搬送される。このようにして硬貨繰出装置30のベルト33にて重送硬貨の捌きが行われ、入金搬送部20への一層一列状態での繰り出しが実現される。
なお、硬貨搬送円盤401の突起部位401cの高さは、硬貨繰出装置30の処理対象硬貨の最小の厚さより小さくすると好ましい。硬貨搬送円盤401と、ベルト33の硬貨搬送円盤401側の端部(弾性変形部位33bの先端)との距離は、硬貨繰出装置30の処理対象硬貨の最小の厚さより小さくすると好ましい。そして硬貨搬送円盤401の突起部位401cと、ベルト33の弾性変形部位33bとが接触しないように硬貨繰出装置30を構成すると好ましい。
(他の実施形態)
(1)上述の実施形態では、硬貨搬送円盤32(硬貨搬送円盤401)は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢にて配置された。硬貨搬送円盤を水平に配置することも可能である。
(2)ベルト33は、上述の実施形態のように、本体部位33aと弾性変形部位33bとを一体に形成してもよいし、両者を別の部材として形成し、弾性変形部位33bを本体部位33aに取り付けてもよい。ベルト33は、ゴムや樹脂等の弾性を有する材料で形成してもよいし、弾性を有さない(あるいは弾性の小さい)部品をヒンジや弾性部材等で互いに接続して構成してもよい。
(3)上述の実施形態では、押圧部材35cがカバー部材35に取り付けられた。これを改変し、カバー部材35が押圧部材35cを兼ねてもよい。すなわち、カバー部材35における摩擦搬送部位32cに面する部位が、付勢機構35dまたは押圧機構によって、硬貨を硬貨搬送円盤32に押し付けるよう構成してもよい。
(4)上述の実施形態では、カバー部材35に開閉部位35aが設けられ、硬貨貯留空間36からの異物の排出が行われた。開閉部位35aの大きさは任意に変更可能である。また、カバー部材35全体が開閉部位35aを兼ねてもよい。すなわち、カバー部材35が硬貨貯留空間36に対して移動して(開閉して)、硬貨貯留空間36の異物を排出するよう構成してもよい。
(5)上述の実施形態では段差部位32d(段差部材)は、その外周(外周部位32e)が円弧形状に形成された。段差部位32dの外周に凹凸を形成してもよい。例えば段差部位32dの外周に、頂角が鈍角の山型の凸部を形成してもよい。これにより、硬貨を硬貨搬送円盤32の回転方向に移動させる搬送力が増加する。
(6)硬貨繰出装置30は、上述した硬貨入出金機10の他、様々な装置に適用可能である。例えば、ATM、通貨処理装置、つり銭機などの硬貨を処理する装置や、遊技機等に用いられるメダルを処理する装置(メダル計数機等)に適用可能である。
また、上述の実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。