JP2018089796A - インクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】顔料インク及び染料インクで印刷した際の印刷適性に優れ、しかも、低坪量化することができ、かつ基紙本来の風合いが損なわれることもないインクジェット記録用紙及びその製造方法とする。【解決手段】原料パルプを主成分とする基紙の少なくとも少なくとも片面に、セルロースナノファイバーを主成分とし、かつ無機粒子を含む塗工液を塗工量が0.1〜5.0g/m2となるように塗工し、全体の坪量を50.0〜70.0g/m2とすることでインクジェット記録用紙を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法に関するものである。
現在、インクジェット記録用紙としては、基紙の表面に顔料塗工層が設けられてなる塗工タイプのものが主流である。顔料塗工層は、例えば、シリカやカオリンといった顔料を主成分とし、ポリビニルアルコールやSBRラテックス等が配合された塗工液が基紙の表面に塗工されることで形成されている。この種のインクジェット記録用紙は、顔料インク及び染料インクで印刷した際の印刷濃度及び印刷不透明度を高めることが1つの目標とされている。
しかるに、塗工タイプのインクジェット記録用紙は、製造コストが高く、また、顔料塗工層を有することから低坪量化が困難であるとされていた。また、顔料塗工層を有することから、基紙が持つ風合いが損なわれてしまい、見た目の高級感が損なわれてしまうと言われていた。そこで、これらの問題を解決するために、以下の提案がなされている。
まず、特許文献1には、「顔料及びバインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録媒体であって、前記インク受容層中にセルロースナノファイバーを含有することを特徴とするインクジェット記録用紙」が提案されている。同文献は、これにより、「オフセット印刷用塗工紙の風合いを得られ、顔料インク印刷部の耐擦過性や印刷品質に優れ、表面強度も強く、さらに安価なインクジェット記録媒体が得られる」としている。しかるに、特許文献1の方法によっても、低坪量化の問題や風合いの問題が十分には解決されない。
次に、特許文献2には、「支持体の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用キャストコート紙であって、前記インク受容層中にセルロースナノファイバー」を含有するものが提案されている。同文献は、これにより、「銀塩写真並みの光沢感が得られ、染料インク印刷部の発色濃度が高く、インク吸収性などの印刷品質に優れ、表面強度も強く、さらに安価なインクジェット記録用キャストコート紙が得られる」としている。しかるに、特許文献2の方法によっても、低坪量化の問題や風合いの問題が十分には解決されない。また、仮に効果の点では特許文献1や特許文献2の方法で満足するとしても、これらの方法とは異なる更なる解決方法の提案も期待されている(手段の豊富化)。
特開2011−11447号公報 特開2011−73368号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、顔料インク及び染料インクで印刷した際の印刷適性に優れ、しかも、低坪量化することができ、かつ基紙本来の風合いが損なわれることもないインクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法を提案することにある。
上記課題を解決するための手段は、原料パルプを主成分とする基紙と、この基紙の少なくとも片面に形成されたインク受理層とを有し、前記インク受理層は、セルロースナノファイバーを主成分とし、かつ無機粒子を含み、塗工量が片面あたり0.1〜5.0g/m2であり、全体の坪量が50.0〜70.0g/m2である、ことを特徴とするインクジェット記録用紙である。
また、原料パルプを主成分とする基紙の少なくとも少なくとも片面に、セルロースナノファイバーを主成分とし、かつ無機粒子を含む塗工液を塗工量が0.1〜5.0g/m2となるように塗工し、全体の坪量を50.0〜70.0g/m2とする、ことを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法である。
本発明によると、顔料インク及び染料インクで印刷した際の印刷適性に優れ、しかも、低坪量化することができ、かつ基紙本来の風合いが損なわれることもないインクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法となる。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態によって何ら限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更を加えることができる。また、以下で記載する各材料の添加量(配合割合)は、特に記載がない限り、原料パルプの絶乾量に対する固形分の割合であり、質量基準である。
本形態のインクジェット記録用紙は、原料パルプを主成分とする基紙と、この基紙の片面又は両面に形成されたインク受理層とを有する。
(基紙)
基紙は、原料パルプを主成分とし、通常、填料を含有(内添)する。
基紙は、単層であっても、複数層であってもよい。ただし、低坪量のインクジェット記録用紙を得るという観点からは、基紙の坪量が40〜65g/m2であるのが好ましく、45〜63gm2であるのがより好ましく、50〜60gm2であるのが特に好ましい。
基紙のコッブサイズ度は、好ましくは20.0〜80.0g/m2、より好ましくは30.0〜60.0g/m2、特に好ましくは35.0〜50.0g/m2である。コッブサイズ度を前記範囲とすると、インク受理層を形成するために塗工したセルロースナノファイバーを含む塗工液が基紙の表面に留まり易くなる。
なお、コッブサイズ度は、JIS P8140(1998)に準拠し、接触時間を10秒間にして測定した値である。
基紙の透気度は、好ましくは8.0〜35.0秒、より好ましくは10.0〜25.0秒、特に好ましくは15.0〜23.0秒である。透気度を前記範囲とすると、インク受理層を形成するために塗工したセルロースナノファイバーを含む塗工液が基紙の表面に留まり易くなる。
なお、透気度は、JIS P8117(2009)に準拠し、低圧法によって測定した値である。
以上のコッブサイズ度及び透気度は、両者ともに前記条件(範囲)を満たすのが好ましい。この点、セルロースナノファイバーは、保水性が高く、高粘度の物性を示すことが知られている。そこで、基紙のコッブサイズ度及び透気度を前記範囲とすることで、インク受理層中の水分を基紙へ緩慢的に浸透させ、また、特に基紙表層の透気度を前記範囲にすることで、セルロースナノファイバーをインク受理層中に留める趣旨である。
(原料パルプ)
原料パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、亜硫酸パルプ等の化学パルプ、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、等を使用することができる。これらの原料パルプは、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
(填料)
基紙に内填する填料としては、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料等を使用することができる。これらの填料は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
(添加剤)
基紙には、必要により、添加剤を内添することができる。
添加剤としては、例えば、凝結剤、消泡剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を使用することができる。これらの添加剤は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
(下塗り塗工層)
基紙の片面又は両面には、インク受理層を形成するに先立って、下塗り塗工層(クリア塗工層)を形成することができる。
下塗り塗工層を形成するための塗工液の原料としては、例えば、天然高分子系、合成高分子系等を使用することができる。
天然高分子系としては、例えば、コーン、小麦、タピオカ、ポテト等の生澱粉を各種製法で変性させた酵素分解澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸化澱粉、変性酸化澱粉や、カルボキシメチル化セルロース(CMC)、カルボキシエチル化セルロース(CEC)等を使用することができる。これらの天然高分子系は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
合成高分子系としては、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレングリコール(PEG)等を使用することができる。これらの合成高分子系は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
下塗り塗工層を形成するための塗工液には、例えば、着色染料、着色顔料、消泡剤、蛍光増白剤、耐水化剤、サイズ剤等の添加剤を添加することができる。
下塗り塗工層の塗工量は、片面あたり、0.1〜3.0g/m2であるのが好ましく、0.5〜2.5g/m2であるのがより好ましく、1.0〜2.0g/m2であるのが特に好ましい。下塗り塗工層の塗工量を前記の範囲とすることで、インク受理層を均一に形成することができる。この点、セルロースナノファイバーは保水性が高く、高粘度の物性を示すことが知られている。しかるに、下塗り塗工層が形成させていると、セルロースナノファイバーを含むインク受理層の水分が基紙へ過度に浸透しなくなると推定される。
下塗り塗工層は、例えば、サイズプレスコータ、ゲートロールコータ、ロッドメタリングコータ、ビルブードコータ、ブレードコータ等のコータを使用して形成することができる。
(インク受理層)
インク受理層は、基紙の表面に直接、又は下塗り塗工層を介して間接的に形成する。
インク受理層は、セルロースナノファイバーを主成分(好ましくは絶乾基準で50質量%以上)とする。加えて、インク受理層は、印刷濃度及び印刷不透明度を高めるために、好ましくは更にインク滲みを低減するために、無機粒子を含むことを特徴とする。
セルロースナノファイバー及び無機粒子の混合割合は、質量絶乾基準で、好ましくは60:40〜90:10、より好ましくは65:35〜85:15、特に好ましくは70:30〜80:20である。無機粒子の混合割合が少な過ぎると、印刷濃度及び印刷不透明度を十分に高めることができず、また、インク滲みを十分に低減することができないおそれがある。他方、無機粒子の混合割合が多過ぎると、セルロースナノファイバーを主成分とする趣旨が阻害されるおそれがある。
(無機粒子)
以下では、セルロースナノファイバーについて詳細に説明する前に、まず、無機粒子について詳細に説明する。
無機粒子としては、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、凝集型軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、非晶質シリカ等を使用することができる。これらの無機粒子は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
ただし、無機粒子としては、軽質炭酸カルシウムを使用するのが好ましく、中でも体積平均粒子径が1.0〜2.5μm、(好適には1.3〜2.3μm、より好適には1.5〜2.0μm。)の軽質炭酸カルシウムを使用するのが好ましい。軽質炭酸カルシウムは略球状であり比表面積が広いため、セルロースナノファイバーは軽質炭酸カルシウムの細孔内に充填され易いと推定される。また、軽質炭酸カルシウムは、インク受理層の表面に歩留る傾向がある。そこで、軽質炭酸カルシウムを使用すると、印刷濃度及び印刷不透明度が向上するものと推定される。さらに、体積平均粒子径が上記範囲の軽質炭酸カルシウムを使用することで、印刷濃度及び印刷不透明度のバランスが優れたものとなる。
体積平均粒子径が上記範囲の軽質炭酸カルシウムは、インク受理層100質量部中に20質量部以上(好適には25〜40質量部、より好適には30〜35質量部。)配合するのが好ましい。体積平均粒子径が上記範囲の軽質炭酸カルシウムを20質量部以上配合することで、印刷濃度及び印刷不透明度のバランスを保つとの上記効果が確実に奏せられる。しかも、インク滲みが十分に防止され、乾燥性が優れたものになる。
なお、体積平均粒子径は、レーザー回折方式の粒度分布計(島津製作所社製、製品名SA−LD−2200)を用いて測定したD50の測定値である。
(補助剤)
インク受理層には、必要により、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤等の各種補助剤を含有させることができる。これらの補充剤は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
ただし、セルロースナノファイバーは乾燥工程においてインク受理層を幅方向に大きく収縮させる原因となる。インク受理層が幅方向に収縮すると、得られるインクジェット記録用紙に皺が形成される。また、インク受理層が幅方向に収縮する際には、当該インク受理層にピンホールが発生するおそれがある。そこで、添加剤としては、消泡剤や可塑剤を使用するのが好ましい。
消泡剤や可塑剤としては、水酸基を有するものを使用するのが好ましい。具体的には、消泡剤としては、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール系消泡剤を他の成分の消泡剤と組み合わせて使用するのが好ましい。また、可塑剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、アルギン酸塩等を単独で又は複数を組み合わせて使用するのが好ましい。セルロースナノファイバーは親水性であるため、水酸基を有する消泡剤や可塑剤を使用すると、セルロースナノファイバーとの相溶性が高まり、結果、インク受理層の収縮が防止され、また、ピンホールの発生が抑制されると考えられる。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーの原料となる繊維としては、例えば、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等を使用することができる。これらの繊維は、必要により、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
ただし、セルロースナノファイバーの原料となる繊維としては、植物由来の繊維(植物繊維)を使用するのが好ましく、植物繊維の一種であるパルプ繊維を使用するのがより好ましい。セルロースナノファイバーの原料となる繊維がパルプ繊維であると、所望のセルロースナノファイバーを容易に調製することができる。本形態のインクジェット記録用紙においては、セルロースナノファイバーの特性が重要なファクターになるため、セルロースナノファイバーの調製が容易であると、各種効果が確実に奏せられるようになる。
植物由来の繊維としては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ、バガス等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等を使用することができる。これらの繊維は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
また、木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)、古紙パルプ(DIP)等を使用することができる。これらのパルプは、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。これらのパルプは製紙用途で使用されているため、これらのパルプを使用することは既存設備の有効活用となる。
なお、広葉樹クラフトパルプ(LKP)は、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプ(NKP)は、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。また、古紙パルプ(DIP)は、雑誌古紙パルプ(MDIP)であっても、新聞古紙パルプ(NDIP)であっても、段古紙パルプ(WP)であっても、その他の古紙パルプであってもよい。
セルロースナノファイバーは、パルプ繊維等を微細化(解繊)処理することで得ることができる。パルプ繊維から得られたセルロースナノファイバーは、微小でありながら、比表面積が大きく、表面に多くの水酸基を有しており、親水性である。なお、微細化処理については、後から詳細に説明する。
パルプ繊維等の微細化処理するにあたっては、必要により、叩解処理等の前処理を組み合わせて行うのが好ましい。
(前処理)
パルプ繊維は、物理的手法又は化学的手法によって、好ましくは物理的手法及び化学的手法によって、前処理するのが好ましい。微細化処理に先立って物理的手法や化学的手法によって前処理することで、微細化処理の回数を大幅に減らすことができ、微細化処理のエネルギーを大幅に削減することができる。
物理的手法による前処理としては、叩解処理が好ましい。パルプ繊維を叩解処理しておくと、パルプ繊維が切り揃えられるため、繊維同士が絡み合って凝集するとの問題が解決される。このような観点から、叩解処理は、パルプ繊維のフリーネスが120ml以下となるまで行うのが好ましく、110ml以下となるまで行うのがより好ましく、100ml以下となるまで行うのが特に好ましい。
なお、フリーネスは、JIS P8121−2(2012)に準拠して測定した値である。
叩解処理は、例えば、リファイナーやビーター等を使用して行うことができる。
化学的手法による前処理としては、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。
ただし、化学的手法による前処理としては、酵素処理を行うのが好ましく、加えて酸処理、アルカリ処理、及び酸化処理の中から選択された1又は2以上の処理を行うのがより好ましい。
ここで、酵素処理について、詳細に説明する。
前処理として酵素処理を行うと、パルプ繊維の微細化処理が容易になる。
酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。
セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を引き起こす酵素である。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属、等が産生する酵素を使用することができる。
これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ−ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
本形態において、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかを使用することもできる。また、EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。さらにヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。なお、ヘミセルラーゼ系酵素とは、水共存下でヘミセルロースの分解を引き起こす酵素である。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。
また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラ−ゼ系酵素として使用することができる。なお、ヘミセルラーゼ系酵素を産生する微生物は、セルラーゼ系酵素も産生する場合が多い。
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹2次壁では4−O−メチルグルクロノキシランが主成分である。そのため、針葉樹の漂白クラフトパルプ(NBKP)から微細繊維状セルロースを得るためにはマンナーゼを使用するのが好ましく、広葉樹の漂白クラフトパルプ(LBKP)の場合はキシラナーゼを使用するのが好ましい。
パルプ繊維に対する酵素の添加量は、特に限定されない。パルプ繊維に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって適宜調整することができる。
ただし、パルプ繊維(原料)に対する酵素の添加量は、0.1〜3質量%とするのが好ましく、0.3〜2.5質量%とするのがより好ましく、0.5〜2質量%とするのが特に好ましい。酵素の添加量が0.1質量%未満であると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が3質量%を超えるとセルロースが糖化され、微細繊維の収率が低下するおそれがある。加えて、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることもできない。
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のパルプのpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0〜6.9)であるのが好ましい。他方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のパルプのpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1〜10.0)であるのが好ましい。
酵素処理時の温度は、特に限定されない。ただし、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、酵素処理時の温度は、30〜70℃であるのが好ましく、35〜65℃であるのがより好ましく、40〜60℃であるのが特に好ましい。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、pH等によって適宜調整することができる。ただし、酵素処理の時間は、0.5〜24時間であるのが好ましい。
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。なお、酵素を失活させる方法としては、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80〜100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
以上のほか、前処理としては、例えば、リン酸エステル化処理、アセチル化処理、シアノエチル化処理等の薬品処理を行うこともできる。また、前処理としての物理的手法及び化学的手法は、同時に行うことも、別々に行うこともできる。
(微細化処理)
パルプ繊維は、叩解処理等の前処理を行った後、微細化(解繊)処理する。この微細化処理により、パルプ繊維は、ミクロフィブリル化し、セルロースナノファイバーとなる。
微細化処理は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。
ただし、微細化処理は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られるセルロースナノファイバーの寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。
これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、繊維を均一に微細化するのが難しく、一部に解れない繊維塊が残ってしまい、目的とする効果が得られない可能性がある。
なお、グラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。
この点、本発明者等は、回転する砥石間で磨砕する方法と、高圧水流で微細化する方法とで、それぞれパルプ繊維を微細化し、得られた各繊維を顕微鏡観察する試験を行った。結果、高圧水流で微細化する方法で得られた繊維は、繊維幅が均一であった。
以下では、高圧水流による解繊処理について、詳細に説明する。
高圧水流による解繊は、パルプ分散液を増圧機で、例えば30MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し(高圧条件)、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が、例えば、30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する(減圧条件)方式で行うと好適である。この圧力差で生じるへき開現象により、パルプ原料が解繊される。高圧条件の圧力が低い場合や、高圧条件から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となる。
高圧水流による解繊を行う装置としては、高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーとは、例えば10MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力でスラリーを吐出できる能力を有するホモジナイザーである。パルプ繊維を高圧ホモジナイザーで処理することで、パルプ繊維同士の衝突、圧力差、マイクロキャビテーションなどが作用し、解繊が効果的に生じる。これにより、微細化処理の回数を減らすことができ、セルロースナノファイバーの製造効率を高めることができる。
前処理によってパルプ繊維が十分に柔軟化されていると、高圧ホモジナイザーによる処理によって効果的に解繊する。したがって、微細化処理の回数を減らすことができ、生産性を高めることができる。
高圧ホモジナイザーとしては、スラリーを一直線上で対向衝突させるものを使用するのが好ましい。具体的には、例えば、対向衝突型高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー/MICROFLUIDIZER(登録商標)、湿式ジェットミル)である。この装置においては、加圧されたスラリーが合流部で対向衝突するように2本の上流側流路が形成されている。また、スラリーは合流部で衝突し、衝突したスラリーは下流側流路から流出する。上流側流路に対して下流側流路は垂直に設けられており、上流側流路と下流側流路とでT字型の流路が形成されている。このような対向衝突型の高圧ホモジナイザーを用いると高圧ホモジナイザーから与えられるエネルギーが衝突エネルギーに最大限に変換されるため、より効率的にパルプ繊維が解繊する。
以上の微細化処理は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度が、以下に示すように所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
ただし、パルプ繊維が所定の繊維径(平均繊維径)になるまで解繊するのがより好ましい。パルプ繊維が所定の繊維径になるまで解繊することで、セルロースナノファイバーの保水度を低く抑えることができる。結果、塗工液の塗工性やインクの保持性を改善することができる。
(平均繊維径)
セルロースナノファイバー(パルプ繊維)の平均繊維径(単繊維の直径平均)は、例えば4〜500nm、好ましくは6〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、微細化処理によって調整することができる。
なお、平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10,000倍又は30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
(平均繊維長)
一方、セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、例えば1〜5,000μm、好ましくは10〜3,000μm、より好ましくは100〜1,000μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、微細化処理によって調整することができる。
なお、平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
(保水度)
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば300〜500%、好ましくは350〜480%、より好ましくは380〜450%である。セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、微細化処理によって調整することができる。
なお、保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
(結晶化度)
セルロースナノファイバーの結晶化度は、例えば50〜90%、好ましくは55〜88%、より好ましくは60〜85%である。セルロースナノファイバーの結晶化度は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、微細化処理によって調整することができる。
なお、結晶化度は、JIS−K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。この点、セルロースナノファイバーは、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度はセルロースナノファイバー全体における結晶質部分の割合を意味している。
(ピーク値)
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、乾燥性に優れる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば5〜25μm、好ましくは7〜23μm、より好ましくは10〜20μmである。セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、微細化処理によって調整することができる。
なお、ピーク値は、ISO−13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。そして、この中位径をピーク値とする。
(パルプ粘度)
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、例えば1.5〜7.0cps、好ましくは1.8〜6.8cps、より好ましくは2.0〜6.5cpsである。セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、微細化処理によって調整することができる。
なお、パルプ粘度は、JIS−P8215(1998)に準拠して測定した値である。パルプ粘度が高いほどセルロースの重合度が高いことを意味する。
(セルロースナノファイバーの分散液)
微細化処理して得られたセルロースナノファイバーは、水系媒体中に分散して分散液にする。
水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。この他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
分散液の固形分濃度は、取扱いが容易であることから、1.0質量%以上であるのが好ましい。
また、セルロースナノファイバーの濃度を2質量%(w/w)とした場合における分散液のB型粘度は、塗工性の観点から、3,000cps以下であるのが好ましい。
なお、B型粘度は、固形分濃度1%のセルロースナノファイバーの水分散液について、JIS−Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度はスラリーを攪拌させたときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
セルロースナノファイバーを主成分とするインク受理層の塗工液は、塗工性やインク受理層を基紙表面に留める観点から、固形分濃度を1.0〜2.0質量%とすることが好ましい。また、塗工液のB型粘度は、同様の理由で400〜800cpsとすることが好ましい。塗工液の固形分濃度やB型粘度を前記範囲に調製する方法としては、無機粒子と混合する際に、水等を加えて希釈する方法、粘度を調整する他の添加剤を加える方法等を採用することができる。
(塗工方式)
インク受理層は、例えば、サイズプレスコータ、ゲートロールコータ、ロッドメタリングコータ、ビルブードコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、カーテンコータ、コンマコータ等の公知のコータを使用して形成することができる。
塗工層の塗工量は、低坪量化するという観点から、片面あたり、好ましくは0.1〜5.0g/m2、より好ましくは0.5〜4.0g/m2、特に好ましくは1.0〜3.5g/m2である。セルロースナノファイバーは、高粘度でありながら、せん断応力が加わるとチキソトロピー性を示すことが知られている。したがって、インク受理層の塗工液は、サイズプレスコータ、ゲートロールコータ、ロッドメタリングコータ等の転写塗工方式に比べて高せん断応力が加わる、エアナイフコータ、ブレードコータ等での塗工方式をとることで、インク受理層をより平坦に形成することができ、塗工も容易であるものと推定される。
(インクジェット記録用紙)
インクジェット記録用紙の坪量は、好ましくは50.0〜70.0g/m2、より好ましくは53.0〜68.0g/m2、特に好ましくは55.0〜66.0g/m2である。坪量が70.0g/m2を超える場合は、元々、白紙不透明度が高いため、印刷不透明度も高くなり、本願発明の課題自体が生じ難くなる。他方、坪量が50g/m2未満であると、白紙不透明度が低過ぎるため、印刷不透明度を十分に高くすることができないおそれがある。
なお、顔料インクの印刷濃度は、好ましくは3.70以上、より好ましくは3.80以上、特に好ましくは3.90以上となる。また、染料インクの印刷濃度は、好ましくは3.70以上、より好ましくは3.75以上、特に好ましくは3.80以上となる。この点、印刷濃度は、マクベス反射濃度計RD−918(米国コルモーゲンコーポレーション社製)で測定した値である。
顔料インクを用いた場合の印刷不透明度は、好ましくは90.0%以上、より好ましくは92.0%以上、特に好ましくは92.0%以上となる。また、染料インクを用いた場合の印刷不透明度は、好ましくは82.0%以上、より好ましくは84.0%以上、特に好ましくは86.0%以上である。この点、不透明度は、JIS P 8149(2000)に準拠して測定した値である。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更を加えることができる。
(実施例)
まず、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)80質量%、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量%を調製して、パルプスラリーを得た。このパルプスラリーには、填料、凝結剤、歩留剤、及び紙力増強剤を内添した。次に、パルプスラリーをオントップ型長網抄紙機で抄紙して、基紙(60.0g/m2)を得た。
一方、セルロースナノファイバーを得るために、まず、製紙用の広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)に対乾燥パルプ1質量%となる量の多糖類加水分解酵素を加え、50℃で5時間反応させた。反応後、105℃で5分間酵素を失活させ、2質量%水分散液とした。この水分散液を、リファイナーを使用してフリーネスが100ml以下となるまで叩解し、更に高圧ホモジナイザーを使用して微細化した。これにより、セルロースナノファイバー(平均繊維径が40nm、保水度が450%、結晶化度が70%、ピーク値が16μm、パルプ粘度3.0cps)が得られた。
得られたセルロースナノファイバーは、無機粒子を混合して塗工液を得た。無機粒子としては、以下のものを用いた。また、セルロースナノファイバー及び無機粒子の混合割合は、表1に示すとおりとした。
無機粒子A:軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製/タマパールTP−121/平均粒子径2.0μm)
無機粒子B:重質炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製/HYDROCARB−90/平均粒子径1.3μm)
無機粒子C:凝集型軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製/TP−NPF/平均粒子径4.0μm)
無機粒子D:重質炭酸カルシウム(イメリス ミネラルズ・ジャパン(株)/カービラックス/粒子径0.8μm)
得られた塗工液を基紙の両面に塗工し、乾燥させてインク受理層を形成した。塗工液の塗工には、ワイヤーバーを使用した。塗工液の片面あたりの塗工量は、表1に示すとおりとした。
インク受理層を形成することで得られたインクジェット記録用紙の一部には、プリンター/EP−803A(セイコーエプソン(株)製)を使用して染料インクを印刷した。印刷モードは、「スーパーファイン紙、標準」とした。また、インクジェット記録用紙の残部には、プリンター/PX−045A(セイコーエプソン(株)製)を使用して顔料インクを印刷した。印刷モードは、「スーパーファイン紙、標準」とした。
以上の印刷によって得られた印刷物について、4色(ブラック・シアン・マゼンダ・イエロー)合計部分の印刷濃度(100%ベタ部をFD−7(コニカミノルタ(株)製)で測定し、4色の結果を合計。)及び印刷不透明度を測定した。また、インク滲み及び乾燥性について、以下のとおり官能評価した。結果は、表1に示した。
(インク滲み)
プリンター/EP−803A(セイコーエプソン(株)製)を使用して染料インクで破線を印刷した。印刷モードは、「スーパーファイン紙、標準」とした。破線部分を顕微鏡で100倍に拡大し、滲みを以下の基準で評価した。
◎:インク滲みが殆どなく、インクジェット記録用紙として適している。
〇:インク滲みが認められるが、ほとんど目立たず実用上差し支えがない。
△:インク滲みがあり、実用にはやや難がある。
×:インク滲みが酷く、実用性が全くない。
(乾燥性)
プリンター/PX−045A(セイコーエプソン(株)製)を使用して顔料インクで罫線を印刷した。印刷モードは、「スーパーファイン紙、標準」とした。印刷直後に罫線部分を布で拭き取り、乾燥性を以下の基準で評価した。
◎:印刷部分に汚れが殆どなく、インクジェット記録用紙として適している。
〇:印刷部分に汚れが認められるが、ほとんど目立たず実用上差し支えがない。
△:印刷部分に汚れがあり、実用に供するにはやや難がある。
×:印刷部分に汚れが酷く、実用性が全くない。
(比較例)
実施例と同様の方法で得た基紙の両面に塗工液を塗工し、乾燥させてインク受理層を形成した。塗工液の原料としては、以下のものをそれぞれ単独で用いた。なお、塗工液の塗工には、ワイヤーバーを使用した。塗工液の片面あたりの塗工量は、表1に示すとおりとした。
CNF:実施例と同様の方法で得たセルロースナノファイバー
MFC:ミクロフィブルセルロース(セリッシュKY−100G/ダイセル化学工業(株)製)
ラテックス:SBRラッテクス(JSR0693/JSR(株)製)
PVA:ポリビニルアルコール(クレラポバール3−98/(株)クラレ製)
澱粉:酸化澱粉(MS#3800/日本食品化工(株)製)
CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム(SGセロゲンWS−C/第一工業製薬(株)製)
Figure 2018089796
本発明は、インクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法として利用することができる。

Claims (9)

  1. 原料パルプを主成分とする基紙と、この基紙の少なくとも片面に形成されたインク受理層とを有し、
    前記インク受理層は、セルロースナノファイバーを主成分とし、かつ無機粒子を含み、塗工量が片面あたり0.1〜5.0g/m2であり、
    全体の坪量が50.0〜70.0g/m2である、
    ことを特徴とするインクジェット記録用紙。
  2. 前記セルロースナノファイバー及び前記無機粒子の混合割合が、質量基準で60:40〜90:10である、
    請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
  3. 前記無機粒子は、軽質炭酸カルシウムであり、かつ体積平均粒子径が1.0〜2.5μmである、
    請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用紙。
  4. 前記セルロースナノファイバーは、平均繊維径が4〜500nmである、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
  5. 前記セルロースナノファイバーは、結晶化度が50〜90%である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
  6. 前記セルロースナノファイバーは、保水度が500%以下である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
  7. 前記セルロースナノファイバーは、ピーク値が1つであり、かつ当該ピーク値が5μm以上である、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
  8. 前記セルロースナノファイバーは、パルプ粘度が1.5cps以上である、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
  9. 原料パルプを主成分とする基紙の少なくとも少なくとも片面に、セルロースナノファイバーを主成分とし、かつ無機粒子を含む塗工液を塗工量が0.1〜5.0g/m2となるように塗工し、
    全体の坪量を50.0〜70.0g/m2とする、
    ことを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
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