JP5155925B2 - 新聞用紙 - Google Patents

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本発明は、新聞用紙に関する。さらに詳しくは、低坪量でありながら嵩高で、紙質強度及び不透明度が高く、印刷操業性や印刷不透明度にも優れ、例えばコールドセット型インキを使用した高速多色オフセット輪転印刷等のオフセット印刷に好適に使用し得る新聞用紙に関する。
配達業務負荷の軽減や配送費用の低廉化、資源の有効活用のため、日々大量に使用される新聞やフリーペーパー用の新聞用紙では軽量化が望まれ、特に近年は、従来の45g/m2を超える坪量のものではなく、坪量が36〜45g/m2といった軽量の新聞用紙が主体となっている。
しかしながら、新聞用紙の軽量化や資源の有効利用に伴って古紙の使用割合が増大しており、新聞用紙の白紙不透明度や印刷不透明度が低下している。このような不透明度の低下を抑えるために無機填料が配合されるが、無機填料の増配によって表面強度が低下し、紙粉等のトラブルが生じている。
また近年、広告媒体の増加により、新聞用紙での広告面の印面品質に対する要求も高まってきている。そのため、輪転機の高速化や、両面カラー用タワープレス機の増設を実施する新聞社が多くなっており、高速オフセット輪転印刷での多色印刷における印面品質の向上が取り組まれている。しかしながら、このような状況下、特に高速オフセット輪転印刷での多色印刷(両面カラー用タワープレス機の増設)では、印刷適性の低下や新聞用紙の不透明度の低下が問題となっている。
前記のごとき問題には、従来の物理的に基紙表面を平坦化処理する技術や、基紙表面に表面処理剤を塗工する技術では対応することができない。これは、例えば古紙パルプの配合量が多い基紙表面に平坦化処理を施すと、一度抄紙され、物理的及び化学的手段で脱墨されて劣化が進み、脆くなったパルプ繊維は、紙粉となって新聞用紙表面から脱落すると共に、用紙中に含まれる填料の脱落も促進し、印刷設備の汚損や印刷不良を招いてしまうからである。
これらの問題を解決する技術として、特許文献1には、CMC分解活性を持つセルラーゼ酵素を用いて新聞古紙脱墨パルプを酵素処理し、所定濾水度まで叩解した、繊維長を短くし、毛羽立ちを少なくした新聞古紙酵素処理パルプを用いた原紙が開示されている。しかしながら、このように毛羽立ちを少なくすることでパルプのフリーネスが高くなり、得られる原紙の不透明度や紙質強度が低下するといった問題がある。
また特許文献2には、所定条件で離解した古紙原料を所定濃度で粘状叩解して得た古紙パルプと填料とを構成成分とした基紙の表面に、塗工液が塗工された新聞用紙が開示されている。この新聞用紙は、ある程度その紙質強度が調整されてはいるものの、古紙原料は何度も再利用されているため、古紙原料を粘状叩解することによって強度を向上させる効果には限界があり、近年の新聞用紙に対する不透明度や紙質強度の要求を満足し得るものではない。
特開2003−201690号公報 特開2009−013513号公報
本発明は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、近年主流となっている、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、コールドセット型インキを使用した、例えば17〜18万部/時間といった高速での多色オフセット輪転印刷等のオフセット印刷においても、従来の課題となっている断紙等の印刷操業性や印刷不透明度が改善された新聞用紙を提供することを目的とする。
本発明は、
JIS P 8124に準拠して測定した坪量が36〜45g/m2の新聞用紙であって、
古紙パルプ及び機械パルプを含む原料パルプからなり、
古紙パルプが、酵素叩解処理にて得られた酵素叩解古紙パルプを含み、
機械パルプが、粘状叩解処理にて得られた粘状叩解機械パルプを含み、
原料パルプ中の全機械パルプの含有量が40質量%以上であることを特徴とする、新聞用紙
に関する。
本発明の新聞用紙は、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、コールドセット型インキを使用した高速多色オフセット輪転印刷においても、紙質強度が高いので断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れたものである。
酵素叩解処理にて酵素叩解古紙パルプを製造する工程の一例を示す概略フロー図
(実施の形態)
本発明の新聞用紙は、36〜45g/m2の低坪量であり、古紙パルプ及び機械パルプを含む原料パルプからなる。
本発明に用いられる原料パルプのうち、前記古紙パルプには、酵素叩解処理にて得られた酵素叩解古紙パルプが含まれる。
新聞用紙は、元来リサイクルが繰り返された新聞古紙を主原料としているため、新聞用紙からなる古紙パルプは、何度も繰り返される再生処理によって脆くなっている。したがって、古紙パルプの製造段階で強度を高める処理を行う必要がある。
従来より、パルプに叩解処理を施すことでその強度を向上させることが試みられているが、前記のとおり、何度も繰り返し再生処理された古紙パルプに機械的叩解処理を施すと、さらに原料パルプが脆くなってしまう。
そこで、本発明では、機械的叩解処理ではなく酵素叩解処理を行って得られた、パルプ強度が向上した酵素叩解古紙パルプを原料パルプの1つとして用いており、さらに後に詳述するように、粘状叩解処理にて得られた粘状叩解機械パルプを併用することで、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、コールドセット型インキを使用した、例えば17〜18万部/時間といった高速での多色オフセット輪転印刷においても、断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れた新聞用紙を得ることができる。
酵素叩解処理にて酵素叩解古紙パルプを得る方法としては、例えば、古紙をパルプスラリーにする離解工程と、パルプスラリーの除塵工程、脱墨工程及び漂白工程と、これらの工程に続く、パルプスラリーを洗浄液で洗浄する洗浄工程と、洗浄したパルプスラリーを脱水する脱水工程と、脱水されたパルプをストックするストック工程と、ストックされたパルプを搬送する搬送工程とを有し、ストック工程及び搬送工程の少なくとも一方で、ストックの対象及び/又は搬送の対象となるパルプ(以下、対象パルプともいう)に酵素を添加して酵素叩解古紙パルプを製造する方法があげられる。
酵素叩解古紙パルプの原料となる古紙には特に限定がなく、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、更紙古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
ここで、酵素を添加する際の対象パルプの温度は、好ましくは30〜55℃、より好ましくは40〜50℃である。通常の化学反応であれば温度が高くなるほど活性化するが、酵素の場合は至適温度の上限である55℃を超えると、熱変性を起こして活性が失われる恐れがある。逆に酵素を添加する際の対象パルプの温度が30℃未満では、酵素が反応活性を示し難いため、酵素添加によるパルプ強度の向上効果が得られ難い。
酵素を添加する際の対象パルプのpHは、通常5.5〜8.5、好ましくは6〜8である。pHが5.5〜8.5の範囲を外れると、酵素活性部位の立体構造が変化して基質(繊維中のセルロース、ヘミセルロース)との結び付きが低下し、酵素添加による効果が低下する恐れがある。
さらに、対象パルプのpHが8.5を上回ると、得られる酵素叩解古紙パルプを原料パルプとして用いる場合に、濾水性が低下して脱水性が悪くなり、操業性が低下するとともに、抄紙工程で一般的に使用される凝集剤や凝結剤の効果阻害を招く場合がある。逆に対象パルプのpHが5.5を下回ると、酵素叩解古紙パルプ中に含まれる炭酸カルシウムが分解し、二酸化炭素の発生や水酸化カルシウムの発現によるスケール発生が起こるとともに、凝集剤や凝結剤の効果阻害を招く場合がある。
酵素の添加量は、絶乾対象パルプ(質量)に対して10〜1000ppm、さらには25〜500ppmとすることが好ましい。酵素の添加量が10ppm未満では、充分な効果が得られない恐れがあり、逆に1000ppmを超えて添加しても、さらなる効果の発現が少なく、不経済であり、系内に汚れが出る恐れもある。
対象パルプに添加する酵素としては、水で膨潤した非結晶セルロース(水和セルロース)をランダムに切断するエンドグルカナーゼ(EG)、結晶セルロースの非還元末端から順次切断するセロビオヒドロラーゼ(CBHI,II)、及びEG、CBHI,IIで切断されたセロオリゴ糖を単糖まで分解するβ−グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼとからなる複合酵素を使用することが好ましい。この複合酵素は、単糖まで分解する生成速度が遅いので、繊維の力学的強度を低下させることなく安定してセルロース繊維の改質を行うことができ、パルプ強度の改善や繊維の改質も期待することができる。
パルプ中に酵素を添加すると、繊維の細胞壁に微細なフィビリル(毛羽立ち)が生じるとともに、離解工程や除塵工程等の物理的な剪断力により生じた繊維のフィブリルに対して酵素が選択的に作用し、何度も再生処理が繰り返されて脆くなっている古紙パルプ繊維に対しても、繊維壁に生じたフィブリル状態を維持しながら、さらにミクロ状にフィブリル化する効果が発現されると考えられる。そして、このフィブリル化した微細繊維は比表面積が大きいので、必然的に水素結合数も多くなり、紙となるときの繊維間結合が強くなることで優れた接着性能が発揮され、繊維間接着面積の増加、紙の密度上昇等により機械的強度が向上する。また、物理的な剪断力を受け難い長繊維に対してもフィブリル化を醸し出すことができ、微細繊維が接着するので、得られる酵素叩解古紙パルプのパルプ強度向上を図ることができる。
一般に、酵素は、1つの基質にしか反応しないという基質特異性と、1つの反応のみに限局され、その他の副反応を惹き起こさないという反応特異性とを有する。したがって、複合酵素、特にエンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ及びβ‐グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼとからなる複合酵素は、セルロース及びヘミセルロースのみと反応し、例えばサイズ剤やパルプ強度剤等の他の薬品と反応し難い特性を有することから、このような複合酵素を用いた場合には、サイズ剤やパルプ強度剤といった他の薬品の効果が阻害される恐れがない。
また、前記複合酵素はノニオン性物質であり、界面活性剤や無機イオン等は含有していないので、例えばロジンサイズ剤の性能に影響を与える恐れもない。逆に、前記複合酵素を添加することによって、ロジンサイズ剤の使用量を削減することができ、古紙由来の持ち込み灰分が高い古紙パルプであっても、高いパルプ強度及び高白色度を有する酵素叩解古紙パルプを得ることができる。
なお、ロジンサイズ剤の使用量が削減されるのは、複合酵素にはパルプスラリー中の微細繊維に集中してその効果を発揮する傾向があり、複合酵素の適用で、短く切断された微細繊維が減少するので、短く切断された微細繊維によるサイズ剤の消費が少なくなり、効率よく長繊維やフィブリル化された微細繊維にロジンサイズ剤が定着するからであると考えられる。
酵素として前記複合酵素を使用する場合、複合酵素に用いられる各酵素の成分含有量が、全酵素量に対して20質量%以下であることが好ましい。酵素の多用はパルプ繊維を構成するセルロースの切断につながり、かえってパルプ繊維の微細化、パルプ強度の低下を招く恐れがある。
次に、酵素叩解処理にて酵素叩解古紙パルプを製造する工程の一例を、図1の概略フロー図を参照して説明する。
図1の概略フロー図に示す酵素叩解古紙パルプPの製造方法において、まず、古紙Dを離解工程でパルパー1にて離解してパルプスラリーとする。このパルプスラリーは、除塵工程でスクリーン2にて除塵し、脱墨工程で高級アルコール、脂肪酸等の脱墨剤を添加した後、フローテータ3によるフローテーション処理にてインクを浮遊分離して除去し、次いで精選工程でクリーナ4にて精選した後、漂白工程で過酸化水素、ホルムアミジンスルフィン酸等の漂白剤、珪酸ソーダ等の緩衝剤及び苛性ソーダ等のアルカリ性薬品を添加した後、アルカリソーキングタワー5にて漂白及びアルカリソーキングを行い、続く脱墨工程でフローテータ6にてインクをフローテーション処理して分離除去する。
これらの工程に続き、洗浄工程及び脱水工程では、脱水機7にて洗浄液である水Wを供給しながら洗浄及び脱水を行い、得られた脱水パルプをストック工程に備わるストックタワー9に送る。
ストックタワー9は、脱水パルプを移送する上段部9Aと、この上段部9Aと連通する下段部9Bとを有する。この下段部9B内においては、上段部9Aから脱水パルプを投入し、この投入した脱水パルプを希釈水Wで希釈してスラリーとする。この希釈されたパルプスラリーは、搬送工程を介して図示しない抄紙工程に流送される。
搬送工程には、その内部にストックタワー9からの希釈されたパルプスラリーが流送される管路12と、この管路12の途中に設けられ、希釈されたパルプスラリーを流送する流送ポンプ11とが備わる。
ここで、図1の概略フロー図に示す酵素叩解古紙パルプPの製造方法においては、ストック工程及び搬送工程の少なくとも一方で、対象パルプに酵素を添加する。
この酵素タンク10内の酵素を添加する場所(形態)は種々考えられるが、代表的には、管路10Aを通す等してストックタワー9の上段部9A内に添加する形態(形態A)、管路10Bを通す等してストックタワー9の下段部9B内に添加する形態(形態B)、管路10Cを通す等して流送ポンプ11上流の管路12内に添加する形態(形態C)があげられ、これらの形態を単独で又は組み合わせて実施することができる。
酵素の効果を充分に発現させるには、得られる酵素叩解古紙パルプのパルプ強度を勘案しながら、その添加量、濃度、添加場所等を適宜設定することが好ましい。
例えば、古紙パルプの短繊維化が進んでいる場合や繊維が脆くなっている場合は、酵素との反応をゆっくりと緩慢に進めさせることが好ましく、前記形態A及び/又は形態Bを好適に採用することができる。
一方、例えば、パルプ強度をタイムリーに把握して添加量を最適としたい場合は、抄紙工程とのタイムラグが少ない形態Cを採用することが好ましい。なお、この場合は、流送ポンプ11下流の管路12内に添加する形態も考えられるが、この形態によると抄紙工程までのタイムラグが短く、反応時間が短くなりすぎる恐れがある。また、形態Cによれば、酵素を添加されたパルプが流送ポンプ11内を通って撹拌されるので、分散ムラが確実に防止される。したがって、形態A及び/又は形態Bにおける添加と比較すると、形態Cにおける添加の方が好ましい。
前記形態Aは、パルプ濃度が高い段階で酵素を添加する場合に採用することが好ましく、この際のパルプ濃度は、脱水機7等によって15〜35質量%、さらには20〜30質量%に調節することが好ましい。パルプ濃度が15質量%を下回ると、添加した酵素が希釈されて酵素添加による効果が発現し難くなる恐れがある。そこで、酵素をパルプ原料に対して比較的多めに添加する必要があるが、酵素を多めに添加するとパルプ強度の低下に繋がる恐れが生じる等、品質のバラツキが生じる場合がある。逆にパルプ濃度が35質量%を上回ると、パルプと酵素との均一な分散、反応が生じ難くなり、パルプ強度にムラが生じる恐れがある。
これに対して、パルプ濃度が低い段階で酵素を添加したい場合は、形態B又は形態Cを採用することが好ましく、この際のパルプ濃度は、下段部9Bにおける希釈水Wの量によって、2.5〜8質量%、さらには3〜7.5質量%に調節することが好ましい。パルプ濃度が2.5質量%を下回ると、酵素の効果が発現し難くなり、また原料パルプの流送濃度の低下により、抄紙工程での作業性の低下を招く恐れがある。逆にパルプ濃度が8質量%を上回ると、酵素とパルプとの接触反応が阻害され、パルプ強度の向上効果にムラが生じる恐れがあるとともに、フィブリル化された繊維が脱落し易くなり、かえって強度低下の要因となる場合がある。
酵素と対象パルプとの反応時間は、好ましくは0.3〜2.5時間、より好ましくは0.5〜2時間である。反応時間が0.3時間未満であると、反応が充分に進行しない恐れがあり、逆に2.5時間を超えると、反応が過剰に進み、かえってパルプ強度の低下を招く恐れがある。
酵素の添加は1箇所に限られるものではなく、形態A〜Cや、その他の場所における添加を適宜組み合わせ、2箇所以上で行うこともできる。
このように、図1の概略フロー図に示す酵素叩解古紙パルプPの製造方法においては、離解工程、除塵工程、脱墨工程、漂白工程、洗浄工程、脱水工程、ストック工程及び搬送工程を経た酵素叩解古紙パルプPが、抄紙工程に供される。そして、抄紙工程に供される前のストック工程及び搬送工程の少なくとも一方で、ストックタンク9内のパルプ(脱水パルプ)及び/又は搬送されているパルプ(通常、パルプスラリー)に、酵素タンク10から酵素を添加する。
本発明において、木材資源の保護といった環境保全の面や、得られる新聞用紙の不透明度を維持しながら、嵩高さを充分に付与するという点から、原料パルプ中の古紙パルプの含有量は、80質量%以上、さらには85〜90質量%であることが好ましい。
なお、古紙パルプの全量が前記酵素叩解処理にて得られた酵素叩解古紙パルプであることが好ましいが、一部通常の古紙パルプを用いることもできる。
本発明に用いられる原料パルプのうち、前記機械パルプには、粘状叩解処理にて得られた粘状叩解機械パルプが含まれる。
粘状叩解処理に供する原料となる機械パルプの種類には特に限定がなく、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中でも、熱処理により柔軟化させたうえで叩解処理を行うことで、嵩高であり、白色度も高くかつ強度も強いという点からTMPが特に好ましい。
機械パルプそのものも、原料チップを物理的な磨砕によりパルプ化する手段にて得られるものであるが、粘状叩解処理は、従来の鋳物プレートによる叩解処理と異なり、叩解刃深さが大きく、刃先が鋭角になるレーザー加工処理を施した叩解パターンの叩解プレートを用いる。したがって、2〜5%の叩解濃度で機械パルプを処理することが、繊維をカッッティングして短繊維化することが少なく、極めて効率的に粘状叩解処理(パルプ繊維表面だけでなく、パルプ繊維の内部に微細な隙間を作り、繊維形状を維持しながら柔軟にパルプ繊維同士の絡みを向上し、例えば引張強度を向上させることができる叩解処理)を施すことができる点で好ましい。
前記したように、本発明では、機械パルプ、特にTMPに、2%以上の叩解濃度で、また5%以下、さらには4%以下の叩解濃度で粘状叩解処理を施すことが好ましい。
機械パルプの叩解濃度が2%未満では、連続的かつ短時間で叩解処理が行われるため、繊維が叩解刃に接触する頻度が低下して均一な叩解が行われ難く、叩解効果で求める内部フィブリル化、外部フィブリル化が充分に進行せずにパルプ繊維のカッティングが生じるため、品質が一定し難くなるとともに、充分な嵩高さが得られ難くなる場合がある。逆に機械パルプの叩解濃度が5%を超えると、叩解時の消費電力量が多くなり、費用対効果が低下するため好ましくない。機械パルプの最適な叩解濃度は2〜4%であり、叩解時の消費電力は70〜100kWh、さらには70〜90kWh、特に75〜80kWhであることが好ましく、約80kWh近傍で、最も嵩が高くなる。
粘状叩解処理には、例えば通常のディスクリファイナーを利用することができるが、該ディスクリファイナーがリファイナーの高速回転における遠心力により、一過性の粘状叩解処理に留まるのに対し、コニカル型ディスクリファイナーは、リファイナーの高速回転による遠心力で、叩解刃と叩解刃との間の溝で生じる原料の流動渦により、機械パルプ繊が繰り返し叩解刃で粘状叩解される頻度が増加し、粘状叩解が進行し易い。よって、この点からコニカル型ディスクリファイナーの採用が好適である。原料の流動渦を多く発生させるには、刃幅と溝幅とが「刃幅<溝幅」の関係にあり、従来の刃幅が2.0mm以上のリファイナーとは異なり、刃幅が1.5mm以下で、溝幅が1.5mm以上であり、さらに刃幅の3倍以上の溝深さを有する回転刃及び/又は固定刃にて叩解処理を施すことが好ましい。なお、最適な刃幅及び溝幅は、それぞれ1.5mm及び2.0mmである。このような条件のコニカル型ディスクリファイナーを用いた場合には、繊維が平坦で膨潤し難い樹種からなる機械パルプであっても、内部フィブリル化が可能となり、このように粘状叩解処理して得られた粘状叩解機械パルプを原料パルプとすると、さらに嵩高で、不透明度が向上した新聞用紙を得ることができる。
前記のごとき粘状叩解効果は、パルプ繊維全体に対して均一に発現され、パルプ繊維の内部フィブリル及び外部フィブリルをともに促進させることができる。さらに、粘状叩解処理での消費電力と機械パルプの叩解処理量とを適宜調整することで、繊維の劣化やさらなる扁平化を抑制しながら、異物の除去及び分散を図り、嵩高な新聞用紙を得るための原料パルプとなる粘状叩解機械パルプを得ることができる。
このように機械パルプを粘状叩解処理に供することで、JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」に記載の方法に準拠して測定した離解後のカナディアンスタンダードフリーネス(以下、CSFという)を130mL以上、さらには135mL以上、また190mL以下、さらには185mL以下とすることができる。該CSFが130mL未満では、得られる新聞用紙に充分な嵩高さを付与することが困難となり、逆にCSFが190mLを超えると、繊維の毛羽立ちが少なくなって充分な繊維強度が得られず、新聞用紙の紙質強度を向上させることが困難になる。
なお、機械パルプの全量が前記粘状叩解処理にて得られた粘状叩解機械パルプであることが好ましいが、一部通常の機械パルプを用いることもできる。
本発明において、得られる新聞用紙の不透明度を維持しながら、嵩高さを充分に付与するには、原料パルプ中の全機械パルプの含有量が40質量%以上、さらには42質量%以上であることが好ましい。なお、本発明において、全機械パルプとは、機械パルプそれ自身は勿論のこと、古紙パルプを得る際の古紙原料中の機械パルプも含む概念である。
このように、本発明では古紙パルプ及び機械パルプを含む原料パルプが用いられるが、本発明の目的を阻害しない限り、これらの他にも、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプといった種々のパルプの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して使用することもできる。
本発明の新聞用紙を得るには、前記のごとき古紙パルプ及び機械パルプを含む原料パルプに、例えば填料等を内添することが好ましい。
前記填料の種類には特に限定がないが、原料パルプとして古紙パルプを、例えば80質量%以上といった高配合にて用いることを考慮すると、高い紙質強度及び不透明度を維持しながらも、印刷操業性等をさらに向上させることが可能な填料を選択して用いることが好ましい。
このような填料としては、例えばホワイトカーボンがあげられ、ケイ酸アルカリ水溶液に、アルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子を分散させたのち、鉱酸を添加してケイ酸アルカリ水溶液を中和し、さらに析出したホワイトカーボンに対して、最初にケイ酸アルカリ水溶液に分散させた粒子と少なくとも同モル以上の鉱酸を添加して製造された、反応後乾燥段階を経ないホワイトカーボン(以下、未乾燥ホワイトカーボンという)を使用することが特に好ましい。
さらに詳しくは、例えば、SiO2/R´2O(モル比、R´はNa又はKを示す)が2.0〜3.4の範囲にあるケイ酸アルカリ水溶液(ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液)に、硫酸等の鉱酸を添加し、ケイ酸アルカリ水溶液を中和する。鉱酸は1回で添加しても複数に分割して添加してもよい。複数に分割して添加する場合、1回目の鉱酸の添加はケイ酸アルカリ水溶液の温度が20〜60℃の範囲で行われ、ケイ酸アルカリ水溶液を中和させるのに必要な鉱酸量の10〜50質量%を添加する。さらにケイ酸アルカリ水溶液を、85℃以上かつ水溶液の沸点未満の範囲まで昇温した後、必要に応じて熟成時間を設け、その後2回目以降の鉱酸を一度に、あるいは連続的に添加する。添加後、必要に応じて熟成時間を設けてもよい。
前記のごとき方法にて製造されたホワイトカーボンには、アルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子が包含されており、この粒子を溶解するために、さらに鉱酸を添加する。このとき鉱酸は、最初に分散させたアルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子と少なくとも同モル以上の量を添加し、ホワイトカーボンを含むスラリーのpHを4〜6の範囲に調整することが好適である。
ホワイトカーボンは、その製造工程で反応を終えた段階では、1次粒子が小さく、粒子径は比較的揃っているものの、反応後の安定期においては1次粒子の形では存在しておらず、凝集して2次粒子を形成している。
また、ホワイトカーボンは、製品化の段階における乾燥処理を経ると、2次粒子が凝集塊を形成し、さらに粗大粒子が生じる場合がある。理由は定かではないが、スラリー状態の未乾燥ホワイトカーボンは、一部シリカ原子を有さず、−SiOHの形で遊離しており、2次元的な構造部分が網管となり表面が多孔性を呈している。これに対して、乾燥したホワイトカーボンは、SiO2の四面体が基本構造になり、酸素を共有して3次元の網目構造を呈する。
したがって、ホワイトカーボンを一度乾燥させた場合には、表面の−SiOHによるセルロース繊維との結合力が減少するので、反応を終えたホワイトカーボンは、スラリー状態のままで、乾燥処理を施さずに湿式粉砕を行い、安定期に生じた過大な2次凝集体の細分化を図ったうえで、填料として原料パルプに内添することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば17〜18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応し、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れた新聞用紙を得るに好適である。
前記湿式粉砕を経ても残留する過大なホワイトカーボンの凝集塊を除去したり、レーザー解析法による、ホワイトカーボンの体積平均粒子径を3〜10μm、好ましくは4〜9μmに、かつ粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合を80質量%以上に容易に調整するには、前記湿式粉砕に次いで分級処理を施すことが好ましい。
レーザー解析法によるホワイトカーボンの体積平均粒子径が3μm未満では、抄紙工程における脱水処理での流失が多くなり、白水中に多く残留し、他の異物と結合して設備の汚損や毀損の原因となる恐れがある。逆にホワイトカーボンの体積平均粒子径が10μmを超えると、用紙表面に凝集塊として点在する様相を呈し、用紙表面の強度低下、紙粉の発生、不透明度、特に印刷不透明度の低下を招く恐れがある。したがって、本発明にて填料として用いるホワイトカーボンは、レーザー解析法による体積平均粒子径が3μm以上、さらには4μm以上であることが、また10μm以下、さらには9μm以下であることが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば17〜18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応し、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れた新聞用紙を得るに好ましい。
さらに、レーザー解析法による粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合を好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは82質量%以上とすること、すなわち粒子径をシャープにすることで、紙層中におけるホワイトカーボンの分散性を高め、均質な紙層を形成することができる。これにより、用紙表面の強度を向上させ、紙粉の発生を抑制し、同時に不透明度、特に印刷不透明度を向上させることができる。なお、レーザー解析法による粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合をできる限り100質量%に近づけることが好ましいものの、微細な1次粒子の集合体であるホワイトカーボンを工業的に生産するにあたり、100質量%とすることは困難であり、製造コストの点から、粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合は多くとも実情95質量%程度である。
なお、本明細書において、レーザー解析法とは、サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて解析する方法をいう。
本発明においては、例えば前記のごとき未乾燥ホワイトカーボンを、あらかじめ3質量%以下の濃度に希釈し、その希釈液を原料パルプ中に内添して抄紙することが好ましい。
ホワイトカーボン、特に未乾燥ホワイトカーボンは、高剪断速度で見かけ粘度が低下する特性(チキソトロピック性)を有し、ホワイトカーボンの2次凝集体や凝集塊に対して剪断力を与えると、凝集が壊れ、次々と小さな凝集粒になる。この剪断力により小さな凝集粒を得るため、かつホワイトカーボンの2次凝集体や凝集塊による問題を発生させないようにするためには、ホワイトカーボンをあらかじめ、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.8質量%以下の濃度に希釈、分散させたうえで、原料パルプ中に内添することが望ましい。なお、既存設備の分散能力、2次凝集体に対する剪断力を効果的に付与する点や、分散後のホワイトカーボンの粒度分布をブロードにさせないという点から、ホワイトカーボンの濃度が1質量%以上となるように、あらかじめ希釈することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造において好ましい。
さらに、このような小さな凝集粒の再凝集化を防止するために、ホワイトカーボンの希釈液はスクリーン前段で原料パルプに添加することが好適である。
本発明においては、前記ホワイトカーボンの他にも、填料として例えば炭酸カルシウム、特に軽質炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
前記軽質炭酸カルシウムの形状としては、例えば針状、柱状、球状、紡錘型、立方体状等があり、本発明においてはいずれも使用可能であるが、カルサイト系軽質炭酸カルシウム、すなわち立方体状の軽質炭酸カルシウム及び紡錘型軽質炭酸カルシウムが好ましく、3次元方向に結晶突起を有する毬栗状の軽質炭酸カウシウム(以下、毬栗炭酸カルシウムという)が特に好ましい。
カルサイト系軽質炭酸カルシウムが好適な理由は定かではないが、カルサイト系軽質炭酸カルシウムはアラゴナイト系炭酸カルシウムやバテライト系炭酸カルシウムに比べて、紙層中での分散性が良好で、前記ホワイトカーボン、特に未乾燥ホワイトカーボンとの均一な分散性に優れ、用いる填料に起因する品質の偏りが少ない。よって、このようなカルサイト系軽質炭酸カルシウムを填料として内添することにより、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れた本発明の新聞用紙を容易に得ることができる。
前記毬栗炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムに二酸化炭素含有気体を反応させ、例えば紡錘状や柱状の安定なカルサイト型結晶構造の炭酸カルシウムや、準安定なアラゴナイト型結晶構造の炭酸カルシウムを得る過程において、二酸化炭素含有気体の供給方法を調整したり、脱水、乾燥、熱処理を施す際に、例えば縮合リン酸あるいはその金属塩等の添加剤を添加することで紡錘状や柱状の結晶構造が凝集・結晶化して得られる。
カルサイト系炭酸カルシウムの場合には、カルサイトが他の結晶構造よりも安定であるので、天然にも石灰石として産出されている。また人工的には、例えば天然の石灰石を高温で酸化カルシウムと二酸化炭素とに分解し(不純物の除去作用あり)、酸化カルシウムを水に入れて水酸化カルシウムとした後(消和)、これに、下記反応式のごとく条件(温度、濃度、撹拌の程度)を制御しながら二酸化炭素を吹き込むことで、カルサイト系炭酸カルシウムを得ることができる。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2
またアラゴナイト系炭酸カルシウムの場合も、カルサイト系炭酸カルシウムの製法とほぼ同じであり、その生成時の反応条件を調整することにより、アラゴナイト系炭酸カルシウムを得ることができる。例えば下記反応式のごとく、苛性化反応槽で、消石灰と水とを用い、攪拌翼を取り付けた攪拌機で攪拌混合して石灰乳を調製し、炭酸ソーダの添加速度、添加時間、温度条件を適宜調整して苛性化反応をさせて得られる。
Na2CO3+CaO+H2O→CaCO3+2NaOH
本発明に用いられる炭酸カルシウムは、JIS K 5101−13−1に準拠して測定した吸油量が150〜250mL/100g、BET比表面積が50〜150m2/g、及び体積平均粒子径が1〜10μmであることが好ましい。このような炭酸カルシウムと、酵素叩解古紙パルプ及び粘状叩解機械パルプとを組み合わせることで、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れた本発明の新聞用紙を容易に得ることができる。
炭酸カルシウムの吸油量が150mL/100g未満であると、例えばコールドセット型オフセット印刷での白紙不透明度の低下や、滲みが大きくなる恐れがあり、一方250mL/100gを超えると、印刷インキ中のビヒクル成分が用紙内部に浸透し、優れた印刷濃度が得られ難くなる恐れがある。したがって、炭酸カルシウムの吸油量は、150mL/100g以上、さらには160mL/100g以上であることが好ましく、250mL/100g以下、さらには240mL/100g以下であることが好ましい。
炭酸カルシウムのBET比表面積が50m2/g未満であると、凝集構造における空隙が減少するため、インキ吸収性が低下する恐れがあり、一方150m2/gを超えると、填料分散液の希釈粘度が高くなって操業性が低下したり、取り込んだコールドセット型オフセットインキの乾燥性が低下してコスレ汚れや印刷の裏移りが発生する恐れがある。
なお、本明細書において、炭酸カルシウムのBET比表面積は、全自動BET比表面積測定装置(型番:フロソーブ2300、(株)島津製作所製)にて測定した値をいう。
炭酸カルシウムの体積平均粒子径が1μm未満であると、填料として添加した際に、用紙を構成するパルプ繊維間の空隙内部に入り込み易くなり、かかる炭酸カルシウムが有する、用紙構成を嵩高にする効果が発揮され難くなり、結果として印刷適性が低下する恐れがあり、一方10μmを超えると、パルプ繊維との接触面積が少なくなり、その結果、抄紙段階や印刷段階で紙粉が発生したり、印刷適性の低下が生じる恐れがある。したがって、炭酸カルシウムの体積平均粒子径は、1μm以上、さらには1.8μm以上であることが好ましく、また10μm以下、さらには9.6μm以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、炭酸カルシウムの体積平均粒子径は、サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した値をいう。
さらに、炭酸カルシウムの中でも毬栗炭酸カルシウムの場合、そのアスペクト比(粒子の長径と短径との比(長径/短径))は、新聞用紙の不透明度及び印刷適性のさらなる向上の点から、3.3以下、さらには3以下であることが好ましく、また新聞用紙の紙力低下を充分に抑制する点から、1.5以上、さらには1.8以上であることが好ましい。
本発明において、填料である前記ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムを原料パルプに対して均一に分散させるためには、炭酸カルシウム、特に例えば前記のごとくして得られた毬栗炭酸カルシウムを、あらかじめ、好ましくは5.5〜7.5質量%、さらに好ましくは6〜7質量%の濃度に希釈、分散させたうえで、その希釈液を原料パルプ中に内添して抄紙することが望ましい。
なお、炭酸カルシウムは、マシンチェスト、ファンポンプ、サクションから抄紙機インレットの間のいずれにおいても、原料パルプに添加することができるが、オフセット輪転印刷における印刷適性や印刷不透明度をより向上させるには、ファンポンプ前段で炭酸カルシウムを添加することが効果的である。
本発明において、原料パルプに内添する填料としてホワイトカーボンと炭酸カルシウムとを併用する場合、両者の配合割合は、ホワイトカーボン:炭酸カルシウム=20〜95:5〜80(質量比)、さらには30〜90:10〜70(質量比)であることが、充分な吸収乾燥性が発揮され、印刷不透明度及び印刷適性を向上させる効果が大きいという点で好ましい。
なお、本発明においては、前記ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムの他にも、例えばタルク、クレー、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等の無機填料の中から1種又は2種以上を適宜選択し、原料パルプに内添することもできる。
原料パルプに対する填料の添加量は、填料を用いたことによる、不透明度、特に印刷不透明度を向上させる効果を充分に発現させるには、絶乾パルプ1トンあたり10kg以上、さらには15kg以上とすることが好ましく、また新聞用紙の紙粉発生の恐れがないようにするには、絶乾パルプ1トンあたり50kg以下、さらには40kg以下とすることが好ましい。
なお、填料として、ホワイトカーボンの中でも未乾燥ホワイトカーボンを用いる場合には、得られる新聞用紙の紙中灰分が、JIS P 8251「灰分試験方法」に記載の方法に準拠して測定して7〜17%、さらには8〜15%となるように、その配合量を調整することが好ましい。
元来、ホワイトカーボンは、不透明度向上剤として新聞用紙に用いられているが、前記未乾燥ホワイトカーボンを炭酸カルシウムと組み合わせ、紙中灰分が7〜17%となるように新聞用紙中に含有させることで、36〜45g/m2といった低坪量でありながら嵩高で、断紙がなく印刷操業性に優れ、しかも印刷不透明度にも優れた本発明の新聞用紙を容易に得ることができる。該紙中灰分が17%を超えると、繊維間に隙間ができ、紙力が低下して高速輪転機での作業性が低下したり、ブランケットに紙紛が堆積(パイリング)し、印面の汚れの原因となる恐れがある他、印刷中にブランケットの洗浄が必要となり、印刷工程に遅延が生じる場合がある。逆に紙中灰分が7%未満では、インキを染み透し易くなり、印刷不透明度の低下が生じる恐れがある。
本発明の新聞用紙を得るには、前記原料パルプからなるパルプスラリーに、前記填料や、例えばサイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料等の通常の抄紙用薬品を必要に応じて適宜添加し、例えば好適にはpH6〜10、さらに好適にはpH6.5〜9.5の中性〜アルカリ性となるようにpH等の条件を調整して、長網型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機等の通常の抄紙機にて抄紙する方法を採用することができる。
また、本発明においては、原料パルプの調製段階で凝結剤を添加し、さらに該原料パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが、パルプ懸濁液中に混在する微細な無機粒子の凝集を推進し、さらに、原料パルプに無機粒子を付着させ填料歩留りを向上させる、濾水性が向上しウェットエンドの安定性が得られるといった利点があるので好ましい。
特に、本発明のように機械パルプを原料パルプとして用い、さらに機械パルプの含有量が多い古紙からなる古紙パルプも用いる場合には、パルプ表面が比較的高いアニオン性を呈するので、パルプの調製段階で凝結剤を添加し、さらに該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが、パルプ繊維間に、物理的、化学的に填料を付着させて填料歩留りを向上させたり、濾水性の向上によりウェットエンドの安定性を得ることができ、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能である点から好適である。
前記のごとく原料パルプの調製段階で添加することが好ましい凝結剤としては、例えばポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤があげられる。これらの中でも、PAM、PDADMAC、PAm及びPEIの少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記有機高分子系凝結剤は、例えばホワイトカーボン、炭酸カルシウムといった填料をパルプ中に留め、濾水性を向上させることができるという点から、その電荷密度が3meq/g以上、さらには10meq/g以上であることが好ましい。かかる電荷密度が3meq/g未満の場合、パルプのカチオン要求量を所定値まで上昇させるには有機高分子系凝結剤の添加量を多くしなければならず、コストが高くなり、新聞用紙の地合(シートフォーメーション)が低下する恐れがある。また有機高分子系凝結剤の平均分子量は40万〜130万、さらには70万〜120万であることが好ましい。かかる平均分子量が40万未満では、凝集力が弱く、填料の湿紙への定着が不充分となり、その結果、目的とする効果の向上が望めない恐れがあり、一方130万を超えると、凝集力が強過ぎるため、新聞用紙の紙合が低下し、紙合を良好に維持するためには添加量を少なくしなければならず、やはり目的とする効果の向上が望めない恐れがある。
有機高分子系凝結剤の添加量は、カチオン要求量低減率と、有機高分子系凝結剤添加後の紙料濾液のカチオン要求量とが満足されるように調整することが好ましい。したがって、有機高分子系凝結剤の添加量は、後述する無機系凝結剤の添加量にも左右されるが、原料パルプに対して固形分で1000〜4500ppm、さらには1200〜4000ppmであることが好ましい。かかる有機高分子系凝結剤の添加量が1000ppm未満では、その効果が不充分となる恐れがあり、一方4500ppmを超えると、紙の地合が低下し、コストも上昇する恐れがある。
また無機系凝結剤の添加量は、原料パルプに対して0.1〜5質量%、さらには0.1〜3質量%であることが好ましい。
本発明においては、前記したように、原料パルプの調製段階で凝結剤を添加することが好ましいが、例えば、前記原料パルプ及び填料、並びに必要に応じて内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤等の各種製紙助剤等は、配合チェストで混合されて完成原料となる。したがって、配合チェストからマシンチェストの間で凝結剤が添加されることが好ましく、該凝結剤を完成原料に充分に混合するには、配合チェストへ添加することがより好ましい。
特に、後述する凝集剤としてカチオン性凝集剤を用いる場合には、原料パルプの調製の初期段階、すなわちパルプスラリーに対して早い段階で、前記凝結剤を添加することが好ましい。そしてその後、凝集剤を抄紙工程前段、すなわち抄紙網前のヘッドボックスにおいて添加することが最適である。かかる添加手順を採ると、抄紙原料が抄紙網にのる前のスラリー溶液状態において、凝結剤の凝集効果により、パルプ繊維と填料との付着性が高まるとともに、抄紙網では凝集剤の凝集効果により、パルプ繊維と填料との付着性がより強固となる。その結果、填料の紙中への歩留りがさらに向上する。そして、このような添加手順を採った場合には、填料の歩留りのさらなる向上とともに、スムーズな抄紙作業が進行するといった効果も発現される。
本発明においては、前記原料パルプの調製段階で凝結剤を添加した後、さらに該原料パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが好ましい。
前記凝集剤としては、アニオン性を呈するパルプや填料に対してカチオン性凝集剤が特に好適である。かかるカチオン性凝集剤としては、例えば平均分子量が800万〜1200万、さらには850万〜1100万であり、かつカチオン性単量体の割合が5〜100モル%、さらには10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができる。かかるカチオン性凝集剤の代表例としては、例えばPAM等があげられる。カチオン性凝集剤の平均分子量が800万未満であると、該カチオン性凝集剤を用いた効果が充分に発現されない恐れがあり、一方1200万よりも大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがある。
凝集剤の添加は、前記したように、抄紙工程前段、すなわち抄紙網前のヘッドボックスにおいて行われることが特に好ましい。これにより、抄紙網において欠損する填料の量を格段に低減させることができる。
また凝集剤の添加量は、原料パルプに対して純分で100〜150ppm、さらには120〜140ppmであることが好ましい。凝集剤の添加量が100ppm未満であると、填料の歩留り向上効果が充分に得られない恐れがあり、一方150ppmを超えると、新聞用紙の地合が低下する恐れがある。
本発明では、例えば前記凝結剤や凝集剤を使用することにより、新聞用紙の地合指数を5〜10%、さらには6〜9.5%に調整することが好ましい。本発明の新聞用紙は、輪転機で印刷される関係で、所定の引張り強度が必要となる。したがって、所定の縦方向の引張り強度を得るためには、地合指数が5%以上であることが好ましい。一方地合指数が10%を超えても、充分な縦方向の引張り強度が得難いとともに、例えばオフセット印刷において、特にカラー印刷でのインキの吸収ムラが生じ、印刷適性、特に印刷不透明度の低下に繋がる恐れがある。
なお、本明細書において、新聞用紙の地合指数とは、シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した値をいう。
さらに本発明の新聞用紙を製造する際には、複数の紙料を調製して種箱に供給する前に、各紙料のスラリーをオンラインのカチオンデマンド測定装置に供して測定したカチオンデマンド測定値に基づき、調製段階にて添加する凝結剤の添加量を制御することもできる。
このように、オンラインで凝結剤の添加量を制御することで、最適なカチオンデマンドによる電位制御が可能である。特に、迅速なカチオンデマンド測定値をフィードバックし、これを制御することが可能であり、抄紙機のワイヤーパートでの濾水性の安定化を図ることができるとともに、ウェットパートでの断紙の低減のみならず、得られる新聞用紙の地合を良好に維持することができる。
なお、前記カチオンデマンドとは、アニオン物質が有する総電荷のことである。また、アニオン物質(アニオントラッシュ)とは、負(マイナス)に帯電した物質であり、パルプ(微細繊維を含む)、填料、各種ウェットエンド製紙助剤(内添サイズ剤、消泡剤等)、樹脂ピッチ、溶出リグニン等のことである。
アニオン物質にカチオン性凝結剤を添加し、凝結させたものに、アニオン性(もしくはカチオン性)凝集剤を添加することで、凝結したアニオン物質が凝集し、フロックを形成する。かかるメカニズムの下で、主に、ピッチをパルプに吸着させて極小な状態で紙料とともに工程を通過させるか、系外に排出させ、ピッチ濃度の低減を図ることができる。これにより、汚れ、欠陥、断紙等を減少させることができ、生産性のさらなる向上が可能となる。またアニオン物質での中和により、歩留りのさらなる向上が可能となり、アニオン物質が凝集し、フロックを形成すると、濾水状態が良好になる。かかる理由により、濾水状態に関しては、カチオンデマンド(又はその量)が低いことが好ましい。
なお、前記のごときオンラインのカチオンデマンドを測定する装置の代表例としては、カチオンデマンド測定装置(型番:PCT15又はPCT20、mutek社製)があげられる。該カチオンデマンド測定装置では、紙料を試験機のセル中に導入すると、上下ピストンの稼動にてセルシリンダーとピストンとの間にサンプル液の流れが生じ、コロイド粒子の表面電荷の歪みによって電気が生じる。パルプ懸濁液中のコロイド状溶解物質粒子は、イオンにより電気を帯びており、これを利用することでチャージ要求量を高分子電解質測定によって測定する。
かくして抄紙工程を経て本発明の新聞用紙が得られるが、本発明においては、さらに新聞用紙の表裏面に、少なくとも水溶性高分子化合物を含む塗工層が設けられることが好ましい。
これにより、例えばコールドセット型オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収され、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現され、さらに優れた印刷不透明度、印刷適性等を確保することができる。
本発明に好適に用いられる填料と水溶性高分子化合物との組み合わせが好適な理由としては、炭酸カルシウム、特に毬栗炭酸カルシウムが3次元の多孔性に富み、大きな比表面積を有しており、例えば澱粉及び/又はポリビニルアルコール(PVA)といった水溶性高分子化合物との相乗効果に基づく、新聞用紙表面にオフセットインキ受理剤を塗布した際の成膜性に優れていることがあげられる。特に毬栗炭酸カルシウムは、通常の炭酸カルシウムよりも吸油量が大きく、コールドセット型オフセットインキを新聞用紙表面で素早く吸収乾燥し、水溶性高分子化合物と組み合わせることにより、坪量が36〜45g/m2と軽量であっても、さらに優れた印刷不透明度の向上効果を発現する。
好適な水溶性高分子化合物としては、例えば澱粉、PVA等があげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
前記澱粉の種類には特に限定がないが、例えば変性澱粉は、紙中に浸透しながら、引張り強度や表面強度を向上させる効果を有するものの、中性又はアニオン性を示すため、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が低く、被膜性が低い。したがって、本発明では、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が高いカチオン性の澱粉を用いることが好ましい。カチオン性の澱粉の場合には、パルプ繊維に対する定着性が高く、被膜性に優れ、また表面強度も向上する。
さらに前記澱粉としては、エステル化澱粉がより好ましい。エステル化澱粉を用いた場合には、インキ濃度及びインキセット性が飛躍的に向上する。かかるエステル化澱粉を得る際の原料澱粉としては、例えば未処理澱粉、処理澱粉の他、各種澱粉含有物があげられる。このような原料澱粉の代表例としては、例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチトウモロコシ粉、高アミロース含量トウモロコシ澱粉等の未処理澱粉;小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンフラワー、米粉等の澱粉含有物に、酸化、酸処理化等を行った処理澱粉等があげられる。これらの中でも、タピオカ澱粉は、エステル変性物が、粘性、被膜性、弾力性、伸展性の面で他の穀物澱粉類よりも優れる点で好ましい。
前記エステル化澱粉において、そのエステル化度には特に限定がないが、導入されるエステル結合の平均数で、グルコース単位あたり1〜3、さらには1〜2であることが好ましい。エステル化澱粉の中でも、ヒドロキシエステル化澱粉が好ましい。該ヒドロキシエステル化澱粉は、原料澱粉に酸化処理を施し、カルボキシメチル基をヒドロキシエチル基へ還元反応させることにより、容易にかつ安価に得ることができる。中でも、エステル変性された澱粉の末端基に疎水性基を導入した、疎水性基含有エステル変性タピオカ澱粉を使用することが最適である。
さらに本発明で好適に使用することができるエステル化澱粉としては、末端基にカルボン酸「−COOH」構造を有し、中性領域において「−COO−」のようにイオン化することで、水素結合による繋がりを確保することができずに反発性を示すことに基づく、チキソトロピカルな挙動を示すエステル変性澱粉が、新聞用紙表面への塗工時は流動性を示しながら、塗工後は用紙中に浸透し難く、用紙表面に高い被膜性を呈する点から好ましい。特に後述する被膜性の高いPVA等と併用することによって、原料パルプに好適に添加する填料である炭酸カルシウム、特に毬栗炭酸カルシウムが多量に用いられるとしても、インキ濃度やインキセット性のさらなる向上が図られる。このようなエステル化澱粉としては、タピオカ澱粉を主原料にエステル変性させた1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉が特に好ましい。1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉は、粘性、被膜弾力性、被覆性の点で特に優れており、例えば後述するPVAと併用することにより、印刷操業性及び被覆性と、インキ濃度及びインキセット性とのさらなる向上を図ることができる。
なお、本発明に用いられる澱粉としては、平均分子量が60万〜300万、さらには80万〜280万のものが、用紙表面の被覆性とインク成分を用紙表面に留めながら、溶媒成分を紙中に取り込み吸収乾燥性を向上させるという点から好ましい。
また前記澱粉としては、粘度(10%)が30×10-3Pa・s以下、さらには15×10-3〜25×10-3Pa・sのものが、用紙表面において、粘度が高いことから紙中に浸透せず、紙表面に留まることができるという点から好ましい。
前記したように、水溶性高分子化合物としては、澱粉の他にも例えばPVAがあげられる。一般にPVAを単独で新聞用紙の表裏面に塗工した場合には、澱粉を単独で塗工した場合と比べて、略3倍の表面強度を示し、被膜性に優れる反面、かかる被膜性が高いために、コールドセット型インキのように、用紙中に溶媒が浸透して乾燥する印刷インキを用いると、印刷インキの溶媒の吸収性が低く、充分なインキセット性が得られない恐れがある。またPVAを単独で一定量塗工しようとすると、該PVAを含む塗工剤の粘性が高く、例えばフィルムトランスファー方式では、断紙、抄紙設備の汚れ、粕、紙面の汚れ等が生じる場合がある。ところが、このようなPVAを澱粉と併用することで、印刷インキの溶媒の用紙中への浸透を適度に促しながら、インキ填料成分を用紙表面に留める被膜性が向上するとともに、インキセット性の低下も充分に抑制される。
PVAの種類には特に限定がなく、本発明で用いることができるPVAには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAの他に、末端をカチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性PVAも含まれる。
ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAとしては、平均重合度が300〜3000、さらには1000〜2400、特に1700〜2000のものが、澱粉との相溶性に優れ、均質な被膜が得られ易いという点から好ましい。
また通常のPVAとしては、ケン化度が80〜100のものが好ましく、ケン化度が90〜100の完全ケン化PVAがより好ましい。完全ケン化PVAを用いた場合には、部分ケン化PVAを用いた場合よりも、新聞用紙表面に、耐水性や耐熱性を有する被膜がより得られ易い。
このようなPVAを用いると、澱粉との親和性がよく、短時間で澱粉とPVAとのブレンドが可能であり、操業性をさらに向上させることができるとともに、塗工設備においてミストの発生を低減させることができる。
以上の特性を有するPVAを用いることにより、高いインキ濃度を得ながら、オフセットインキの高いインキセット性を実現することができる。また、印刷後に新聞用紙を積層した際に、裏面へのインキ転写を充分に防止することもできる。
澱粉とPVAとを併用する場合、両者の割合(澱粉:PVA(固形分質量比))は、10:0.8〜10:2、さらには10:0.9〜10:1.2であることが好ましい。澱粉に対するPVAの割合が10:2を上回ると、両者を含んだ塗工剤の粘性が急激に上昇するため、塗工ムラやミストが発生し、塗工品質の低下や設備周辺の汚損が生じる恐れがあり、一方10:0.8を下回ると、澱粉とPVAとの相溶性には問題がないものの、新聞用紙表面に塗付した際に、澱粉とPVAとの相乗効果が得られず、用紙中への浸透や塗工ムラが生じる恐れがある。したがって、両者の割合をこの範囲に設定することで、澱粉とPVAとの相乗効果を確保することができ、インキ中の填料成分を新聞用紙表面に留めることによって高いインキ濃度を発現させると同時に、インキ中の溶媒を素早く新聞用紙内部に吸収させ、早いインキセット性を発現させることができる。
新聞用紙の表裏面に、少なくとも水溶性高分子化合物を含む塗工剤を塗工する場合、片面あたりの水溶性高分子化合物の量が、固形分で0.2〜2g/m2、さらには0.5〜1.5g/m2となるように調整することが好ましい。水溶性高分子化合物の量が0.2g/m2を下回ると、水溶性高分子化合物による充分な被膜性を得ることが困難となり、インキ中の填料成分が新聞用紙表面で留まり難く、充分に高いインキ濃度が得られない恐れがあり、一方2g/m2を上回ると、塗工設備周辺に水溶性高分子化合物を含む塗工剤のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じる恐れがある。
澱粉、PVAといった水溶性高分子化合物を含む塗工剤を新聞用紙の表裏面に塗工する際には、例えばゲートロールコータ、ブレード等のフィルムトランスファー方式を採用することが好ましい。中でも、特にゲートロールコータによる塗工は、他の塗工方法と異なり、低塗工量にて新聞用紙表面に被覆性の高い輪郭塗工を施す際に最適であり、塗工剤に急激なせん断力がかからないので、循環使用する塗工剤の安定性に優れ、高速で均質な被膜を得ることができる。特に、チキソトロピカルなエステル変性澱粉を用いた場合には、新聞用紙表面への塗工時は流動性を示しながら、塗工後は流動性が抑制され、塗工剤が用紙中に浸透し難く、用紙表面に留まって新聞用紙に高い被膜性が付与される。
なお、新聞用紙表裏面に、水溶性高分子化合物として澱粉及びPVAを主成分とする塗工剤を塗工する際には、前記フィルムトランスファー方式を採用しなくとも、例えばサイズプレスやロッドメタリングサイズプレス等、従来公知の塗工手段を採用することも可能ではある。しかしながら、新聞用紙表面の凹凸に沿った輪郭塗工を施さなければ、澱粉及びPVAによる被覆性が不充分となり、例えばコールドセット型インキを使用して多色オフセット輪転印刷する場合に、インキ濃度、インキセット性、インキ着肉性等の印刷適性に充分に優れた新聞用紙が得られ難くなる恐れがある。したがって、低濃度、低塗工量にて澱粉及びPVAを主成分とする塗工剤を新聞用紙表裏面に塗工するには、フィルムトランスファー方式を採用することが最適である。
かくして得られる本発明の新聞用紙は、JIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した坪量が36〜45g/m2である。かかる坪量が36g/m2未満では、不透明度や紙質強度が不充分であり、17〜18万部/時間にも及ぶ近年の高速印刷においては、断紙が生じ易くなるという問題が発生する。逆に45g/m2を超える坪量では、本発明の新聞用紙のごとき構成でなくとも不透明度を確保することが可能なうえ、近年の新聞用紙の軽量化に反する。
また、本発明の新聞用紙の紙厚は、JIS P 8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定して52〜75μmであることが好ましい。本発明の新聞用紙は、坪量が36〜45g/m2であることから、紙厚が52μm未満では、インキを染み透し易くなり、印刷不透明度が低下する恐れがある。逆に紙厚が75μmを超えると、平滑度が低下し、インキ着肉性が低下する恐れがある。
従来の酵素叩解処理を施さない古紙パルプや粘状叩解処理を施さない機械パルプでは、紙厚の確保が困難であるが、本発明では、酵素叩解古紙パルプと粘状叩解機械パルプとを組み合わせて用いるので、52〜75μmといった好適な紙厚を容易に確保することができる。
次に、本発明の新聞用紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
製造例1〜9(酵素叩解古紙パルプの製造)
図1に示す概略フロー図に従って酵素叩解古紙パルプを製造した。まず、オフセット印刷新聞古紙70質量%及びチラシ古紙30質量%からなる古紙に30℃の温水を加え、標準離解機(JIS P 8220「パルプ−離解方法」に準拠)にて離解してパルプスラリーとし、パルプ濃度が5質量%となるように調節した。これに、苛性ソーダ(添加率:0.5質量%)及び脱墨剤(添加率:0.4質量%、ライオン(株)製、ノニオン界面活性剤、品番:R−6000)を添加した。
このパルプスラリーのパルプ濃度が17質量%となるように一度脱水した後、30℃の温水でパルプ濃度が5質量%となるように希釈し、30℃の温浴で1時間熟成した。熟成後、デフレーカーで2分間撹拌処理をした。
次に、パルプ濃度が1質量%となるように希釈した後、ラボ用フローテータに入れ、120L/時の空気流量で10分間フローテーションした。フローテーションしたパルプスラリーをパルプ濃度が10質量%となるように脱水した後、過酸化水素(絶乾パルプに対する添加率:1質量%)で1時間漂白した。次いで、30℃の温水でパルプ濃度が3質量%となるように希釈した後、再び脱水し、表1に示すパルプ濃度、温度及びpHとした。
このパルプに、表1に示す添加量(絶乾パルプに対する質量比)及び添加場所で、表1に示す酵素を添加し、表1に示す時間で反応させて酵素叩解古紙パルプを得た。
なお、表1中の酵素の種類及び添加場所は、以下のとおりである。
[酵素の種類(品種)]
複合酵素:ファイバーザイムCS(商品名、伯東(株)製)
(エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ及びβ−グルコシダーゼを含む
複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼとからなる複合酵素)
市販品A:リパーゼE1(商品名、アルカリリパーゼ、合同酒精(株)製)
市販品B:セルラーゼACD(商品名、花王(株)製)
市販品C:API‐21(商品名、昭和電工(株)製)
市販品D:「アマノ」90(商品名、天野エンザイム(株)製)
[酵素の添加場所]
形態B:管路10Bを通してストックタワー9の下段部9B内に添加
形態C:管路10Cを通して流送ポンプ11上流の管路12内に添加
Figure 0005155925
製造例10〜13(粘状叩解機械パルプの製造)
原料機械パルプとしてTMPを用い、これをあらかじめパルパーで離解して脱水濃縮し、パルプ濃度を約5.0質量%に調節してニーダーで混練した。次いで、表2に示す刃幅及び溝幅のコニカル型ディスクリファイナーで、表2に示す叩解濃度及び約80kWhの消費電力にて粘状叩解処理を施し、粘状叩解機械パルプを得た。
得られた粘状叩解機械パルプの、JIS P 8121に準拠した離解後のCSFを表2に示す。
なお、粘状叩解処理を施していないTMPを製造例14とし、離解後のCSFを併せて表2に示した。
Figure 0005155925
実施例1〜17及び比較例1〜5
製造例1〜9で得られた酵素叩解古紙パルプと、製造例10〜13で得られた粘状叩解機械パルプ又は製造例14のTMPとを、表4に示す割合で混合して原料パルプとした。この原料パルプに、填料として、表3に示す未乾燥ホワイトカーボンと炭酸カルシウムとを表5〜6に示す割合、添加場所及び添加量(絶乾パルプ1トンあたり)で添加し、さらに表7に示す凝結剤を添加してパルプスラリーを得た。
なお、表5に示す炭酸カルシウムは、以下のとおりである。
毬栗:軽質毬栗炭酸カルシウム
紡錘型:軽質紡錘型炭酸カルシウム
重質:重質炭酸カルシウム
また、表3及び表5に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(i)ホワイトカーボンの体積平均粒子径及び粒子分布
ホワイトカーボンのサンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて体積平均粒子径を測定し、粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合を計測した。
(ii)炭酸カルシウムの吸油量
JIS K 5101−13−1「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に記載の方法に準拠して測定した。
(iii)炭酸カルシウムのBET比表面積
全自動BET比表面積測定装置(型番:フロソーブ2300、(株)島津製作所製)にて測定した。
(iv)炭酸カルシウムの体積平均粒子径
炭酸カルシウムのサンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した。
また、表7に示す凝結剤は以下のとおりであり、添加量は原料パルプに対する量である。
PEI:ポリエチレンイミン
PVAm:ポリビニルアミン
PDADMAC:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック)
PAm:ポリアミン
Figure 0005155925
Figure 0005155925
Figure 0005155925
Figure 0005155925
Figure 0005155925
次いで、得られたパルプスラリーに表8に示す凝集剤を添加し、約6.5の抄紙pHにて長網型抄紙機で抄紙して基紙を製造した。
なお、表8に示す凝集剤は以下のとおりであり、添加量は原料パルプに対する量である。
PAM:ポリアクリルアミド
Figure 0005155925
次に、得られた基紙の表裏面に、表9に示す水溶性高分子化合物と水とを撹拌混合し、固形分濃度を1〜20質量%に調整した塗工液を、表10に示す塗工方式で、片面あたりの水溶性高分子化合物の量が、固形分で表10に示す値となるように塗工し、新聞用紙を得た。
なお、表9に示す水溶性高分子化合物は、以下のとおりである。
エステル化澱粉:1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉
また、塗工液を塗工する前の基紙の水分量(塗工前水分量)を、BM計(Basis Weight & Moisture Measurement System:放射線による検出器を用いたもの)を用いて測定した。その結果を表10に併せて示す。
Figure 0005155925
Figure 0005155925
得られた新聞用紙について、以下の方法にて各物性を測定した。これらの結果を表11に示す。
(a)坪量
JIS P 8124「坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(b)紙厚
JIS P 8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(c)紙面pH
紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP、pH4.8〜6.8)を使用し、変色標準計で目視にて測定した。
(d)紙中灰分
JIS P 8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に記載の方法に準拠して測定した。
(e)製品水分量
得られた新聞用紙巻き取り製品について、外包装を開封直後(3分以内)に製品巻き取りの外周3枚を剥し、3枚目以降の製品について、JIS P 8127「紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法」に記載の方法に準拠して水分量を測定した。
(f)地合指数
シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した。
(g)比引裂度
JIS P 8116(2000)「紙−引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法」に記載の方法に準拠して測定した。
(h)裂断長
JIS P 8113(1998)「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に記載の方法に準拠して測定した。
(i)白色度
JIS P 8148(2001)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(j)印刷不透明度
オフセット輪転印刷機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)で、オフセット輪転印刷用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)のインキ量を変えて印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率:
(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)
を求めた。なお、これら反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を用いた。
(k)インキ濃度
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、金属ロールとゴムロールとの間隙に30rpmの速度で通紙し、オフセット印刷インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製、インキ使用量:0.85mL)にて印刷した(試験片:CD方向50mm、MD方向100mm)。3回刷りまでの印刷サンプルを恒室状態(JIS P 8111「紙、板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態」に準拠)にて24時間乾燥した。1回刷り、2回刷り、3回刷り印刷サンプルについて、各々無作為に選択した印刷部位10箇所のインキ濃度をマクベス濃度計にて測定し、これらの平均値を求めた。
次に、得られた新聞用紙について、以下の試験例1〜5に基づいて各特性を調べた。その結果を表12に示す。
試験例1(インキセット性)
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、新聞用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(藍)、大日本インキ化学工業(株)製)にてベタ印刷した後、コート紙を印刷面に重ねて一定圧力で圧着した。コート紙へのインキの転移状況を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:コート紙表面全体に全く汚れが生じていない。
○:コート紙表面の一部に僅かに汚れが生じているが、実用上問題がない。
△:コート紙表面全体に汚れが認められる。
×:コート紙表面全体の汚れが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例2(インキ着肉性)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞用カラーインキ(商品名:ニュースウェブマスター エコピュア、サカタインクス(株)製)にて連続10000部のカラー4色印刷を行った。得られた印刷物について、画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
○:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
△:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
×:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例3(表面強度)
JIS K 5701−1「平版インキ−第1部:試験方法」に記載の方法に準拠し、転色試験機(型番:RI−1型、石川島産業機械(株)製)を使用し、インキタック18の1回刷りの条件で印刷した。新聞用紙表面の取られを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:新聞用紙表面全体に全く取られがない。
○:新聞用紙表面の一部に僅かに取られが生じているが、実用上問題がない。
△:新聞用紙表面全体に取られが認められる。
×:新聞用紙表面全体に取られが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例4(インキ吸収ムラ)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞用カラーインキ(商品名:ニュースウェブマスター エコピュア、サカタインクス(株)製)にてカラー4色印刷を行った。得られた印刷物について、藍/赤重色部分のインキ濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インキ濃度ムラが全くなく、均一で鮮明な画像である。
○:インキ濃度ムラが殆どなく、均一な画像である。
△:一部に、インキ濃度ムラが認められ、画像が不鮮明な箇所がある。
×:全体的に、インキ濃度ムラが著しく、不鮮明な画像である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例5(印刷操業性)
(1)剣先詰まり
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−N4、三菱重工業(株)製)を使用し、50連巻きの新聞用紙にて印刷を行った。剣先詰まり発生の有無を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剣先詰まりが全く発生しなかった。
○:巻き取り1本で剣先詰まりが1回しか発生しなかった。
△:巻き取り1本で剣先詰まりが2〜3回発生した。
×:巻き取り1本で剣先詰まりが4回以上発生した。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(2)ブランケット紙粉パイリング
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、連続5000部のカラー4色印刷を行った。ブランケット非画像部における紙粉発生・堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、ブランケット上での堆積は全く認められない。
△:紙粉の発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
×:ブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(3)ネッパリ性(ブランケット粘着性))
新聞用紙を幅約4cm×長さ約6cmの大きさに切断したサンプル2枚を用意し、水に10秒間浸漬した後、これらサンプル2枚を素早く密着させた。これをカレンダーに線圧100kg/cmで通紙し、24時間室温乾燥した後、手作業にてサンプル2枚の剥離(Tピール剥離試験模倣官能試験)を行い、剥離の度合いを以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剥離するまでもなく、全く接着していなかった。
○:一部僅かに接着していたが、容易に剥離することができた。
△:接着しており、剥離し難い箇所があった。
×:全体的に接着しており、剥離時に接着面からの繊維の毛羽立ちが認められた。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
Figure 0005155925
Figure 0005155925
表11〜12に示されるように、実施例1〜17の新聞用紙はいずれも、原料パルプとして酵素叩解古紙パルプと粘状叩解機械パルプとを組み合わせて用い、原料パルプ中の全機械パルプの含有量を40質量%以上としたものであるので、坪量が約36〜45g/m2と低坪量でありながら嵩高で、比引裂度及び裂断長に優れて紙質強度が高く、高い印刷不透明度が維持されている。しかも実施例1〜17の新聞用紙はいずれも、1.3〜1.4程度の適度に高いインキ濃度を有しながら、インキセット性及びインキ着肉性も良好で印刷適性に優れるだけでなく、表面強度も高く、さらに印刷操業性にも優れ、特に高速多色オフセット輪転印刷に好適な優れた特性を具備したものである。
これに対して、比較例1〜5の新聞用紙は、酵素叩解古紙パルプか粘状叩解機械パルプのいずれかが用いられていないため、特に比引裂度及び裂断長に劣って紙質強度が低く、印刷不透明度も低い。しかも比較例1〜5の新聞用紙はいずれも、インキセット性及びインキ着肉性が低く印刷適性に劣るうえ、表面強度も低く、印刷操業性も良好でないことから、例えば高速多色オフセット輪転印刷に必要な特性を具備しないものである。
本発明の新聞用紙は、例えばコールドセット型インキを使用した高速多色オフセット輪転印刷等のオフセット印刷に好適に使用することができる。
1 パルパー(離解工程)
2 スクリーン(除塵工程)
3 フローテータ(脱墨工程)
4 クリーナ(精選工程)
5 アルカリソーキングタワー(漂白工程)
6 フローテータ(脱墨工程)
7 脱水機(洗浄・脱水工程)
9 ストックタワー(ストック工程)
9A 上段部
9B 下段部
10 酵素タンク
11 流送ポンプ
12 管路
D 古紙
P 酵素叩解古紙パルプ
W 水

Claims (5)

  1. JIS P 8124に準拠して測定した坪量が36〜45g/m2の新聞用紙であって、
    古紙パルプ及び機械パルプを含む原料パルプからなり、
    古紙パルプが、酵素叩解処理にて得られた酵素叩解古紙パルプを含み、
    機械パルプが、粘状叩解処理にて得られた粘状叩解機械パルプを含み、
    原料パルプ中の全機械パルプの含有量が40質量%以上であることを特徴とする、新聞用紙。
  2. 酵素叩解古紙パルプが、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ及びβ−グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼとからなる複合酵素にて酵素叩解処理を行って得られたものであり、
    原料パルプ中の古紙パルプの含有量が80質量%以上である、請求項1に記載の新聞用紙。
  3. 粘状叩解機械パルプが、サーモメカニカルパルプに2〜5%の叩解濃度で粘状叩解処理を施して得られたものであり、JIS P 8121に準拠して測定した離解後のカナディアンスタンダードフリーネスが130〜190mLである、請求項1又は2に記載の新聞用紙。
  4. その表裏面に、少なくとも水溶性高分子化合物を含む塗工層が設けられた、請求項1、2又は3に記載の新聞用紙。
  5. 片面あたりの水溶性高分子化合物の量が、固形分で0.2〜2g/m2である、請求項4に記載の新聞用紙。
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