以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明にかかる半田付け装置の一例の斜視図である。図2は図1に示す半田付け装置のII−II線で切断した断面図である。図3は図1に示す半田付け装置に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、図1では、筐体及び支持部1の一部を切断し、半田付け装置の内部を表示するようにしている。
図1に示すように半田付け装置Aは、上方から糸半田Wを供給し、下部に設けられた鏝先5を利用して、鏝先5の下方に配置される配線基板Bdと、電子部品Epとを半田付けする装置である。図1及び図2に示すように、半田付け装置Aは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5、半田送り機構6及びガス供給部7を備えている。
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、図1に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、図1に示すように、壁体11はZX平面を有している。
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板Bdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子Ndとに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付けを行うとき、治具GjをX方向及びY方向に移動させ配線基板BdのランドLdとの位置決めを行う。また、そして、半田付け装置AはZ方向に移動可能であり、位置決め後Z方向に移動することで、鏝先5の先端をランドLdに接触させることができる。
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、半田付け装置Aの支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に、固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて、固定される。
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜けとめされる。
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片に切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片に切断する。切断された半田片は、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5の後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片は、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。また、ガス流入孔222の外側には、ガスを供給するためのガス供給部7が接続される。すなわち、ガス供給部7から供給されるガスは、ガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置Aでは、窒素ガスを供給するものとして説明する。
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜けとめ(不図示)が設けられている。
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片を下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
図1、図2に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド軸35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。
図2に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
図2、図3に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行する方向に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
図2、図3に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モータやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
図1、図2に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
ヒーターユニット4は、半田片を加熱し、溶融させるための加熱装置であり、図2に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5を取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片は、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
鏝先5は、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5は、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5の半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔421と連通しており、半田供給孔421から半田片が送られる。また鏝先5は、半田孔51に送られた半田片が溶融する溶融領域510よりも上方、すなわち、窒素ガスが流れる方向において上流側と、外周面とを連通するリリース孔53を備えている。リリース孔53は、半田孔51の窒素ガスと共に半田片の溶融時に気化したフラックスを逃がす孔である。リリース孔53の内径は、半田孔51の内径よりも小さい。すなわち、リリース孔53は、半田孔51に比べて流路抵抗が大きい。
鏝先5は、ヒーター41からの熱が伝達されており、その熱で半田片を溶融させる。そのため、鏝先5は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されている。半田付け装置Aにおいて、鏝先5は円筒形状のものとしているが、これに限定されるものではなく、断面多角形又は楕円形の筒形状のものを用いてもよい。半田付けを行う配線基板Bd及び(又は)電子部品Epの端子Ndの形状に合わせて異なる形状のものを用意するようにしてもよい。
ガス供給部7は、半田付け装置Aの外部に設けられたガス供給源GSから供給されるガスを半田付け装置Aに供給する。ガスとして、上述した、不活性ガスを用いることで半田の酸化を防止することが可能である。図2に示すように、ガス供給部7は、配管70と、第1調整部71と、第1計測部72と、第2計測部73とを有する。なお、図2では、便宜上、配管70を線図で示しているが、実際にはガスである窒素ガスが漏れない管体(例えば、樹脂管)である。
配管70はガス供給源GSとを接続し、ガス供給源GSからの窒素ガスをガス流入孔222に流入させる配管である。半田付け装置Aにおいて、ガス流入孔222は、下刃孔221、半田供給孔422及び半田孔51に連通しており、半田孔51は、外部に開口している。
第1調整部71は配管70に設けられている。第1調整部71は、流量制御弁を含む構成であり、配管70を流れる窒素ガスの流量を調整している。すなわち、第1調整部71は、ガス供給源GSからガス供給部7に供給される全窒素ガスの流量を調整している。
第1計測部72は、配管70の第1調整部71よりも下流側に配されて、配管70を流れる窒素ガスの流量を計測する。すなわち、第1計測部72は、第1調整部71から吐出される窒素ガスの流量を計測している。そして、第1計測部72は、計測した窒素ガスの流量が予め決められた流量となるように、第1調整部71に対して、第1調整部71を制御する制御信号を送信している。すなわち、ガス供給部7は、第1調整部71と第1計測部72を用いて、フィードバック制御を行っており、ガス供給源GSから供給される窒素ガスの流量を一定に制御している。なお、第1計測部72の計測結果に基づいて、作業者が手動で第1調整部71を操作して窒素ガスの流量を調整してもよい。また、何らかの異常により計測した流量が予め決めた基準値又はテーブルと異なる又は予め設定した範囲から外れる場合には、制御部Contは、異常が発生している旨の警報及び(又は)半田付け装置の運転の停止を行ってもよい。
第2計測部73は、第1計測部72よりも下流側に配されて、配管70を流れるガスの圧力を計測する。第2計測部73は、制御部Contに接続されており、ガスの圧力は、制御部Contに送信される。制御部Contは、配管70の圧力及び/又は圧力の変化に基づいて、半田孔の汚れ状態を判定する。すなわち、制御部Contは、半田孔の汚れ状態を判定する状態判定部としての役割を果たす。また、制御部Contは、判定した半田孔の汚れ状態に基づいて、半田付け装置Aの制御を行ってもよい。半田付け装置Aの制御としては、半田孔を含む鏝先のクリーニング動作が挙げられる。
次に、配管70を流れる窒素ガスの圧力に基づいて半田孔51の汚れ状態を判定する方法について説明する。なお、ガス供給部7において、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5の半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃案221のZ方向上端から抜けないように密閉されるものとする。
なお、配管70を流れる窒素ガスは第1調整部71で調整することで流量が調整される。ここで、配管70を流れる窒素ガスの全流量をQ1とする。
第1調整部71に備えられている流量制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず、窒素ガスを設定した流量で流し続ける。すなわち、ガス供給部7は、全流量Q1を一定とする流量制御が行われている。
以下に、半田孔51の初期状態と汚れた状態における配管70内の圧力Pについて、図面を参照して説明する。図4及び図5は、半田孔51の初期状態と汚れた状態を示す図である。なお、図4及び図5に示すように、半田孔51及びリリース孔53は大気に開放されている。図4に示す初期状態では、半田孔51及びリリース孔53にドロスなどは付着していないため、ガス供給部7から半田孔51に窒素ガスが供給されても、配管70内の圧力は一定である。このときの配管70内の圧力をPsとする。リリース孔53は半田孔51に比べて口径が小さく、リリース孔53から外部に流れる窒素ガスは少量である。
半田付け処理の回数を重ねると、半田孔51の下端部の内周壁などにドロスなどが付着し半田孔51が汚れてくる。なお、リリース孔53も同時にドロスなどで汚れるが、リリース孔53はヒーター41に近いため半田孔51の下端部に比べて温度が高くドロスなどの付着物量は半田孔51の下端部に比べて少量である。
図5に示すように、半田孔51の下端部の内周壁にドロスなどが付着し半田孔51が汚れてくると窒素ガスが通過できる面積が狭くなり、配管70の流路抵抗が初期状態よりも高くなる。このため、配管70内の圧力は初期状態の圧力Psよりも高い圧力Peとなる。
このように、配管70内の窒素ガスの圧力は半田孔51のドロスなどの付着状態すなわち汚れ状態によって変化する。制御部Contは、予め基準となる値をデータベースとして記憶しておき、第2測定部73から取得した配管70内の窒素ガスの圧力値(変動値)と基準値とを比較することで、現在の半田孔51内の汚れ状態を判定することができる。
なお、半田孔51の汚れ状態をより精度良く検知する観点からは、鏝先5の温度を所定温度で一定の状態として配管70内の窒素ガスの圧力を測定することが推奨される。窒素ガスは、鏝先5の温度によって膨張する程度や粘度が異なるため、流路抵抗も増減し、その結果、窒素ガスの圧力も変化するからである。また、半田孔51の汚れ状態を判定する際は、配管70内を流れるガス流量を半田片を加熱溶融するときよりも多くすることが推奨される。これにより、半田孔51の汚れ状態に対するガス圧力変化が大きくなり、半田孔51の汚れ状態の判定の精度が高まるからである。
制御部Contは、データベースに記憶された基準値と第2測定部73から取得した配管70内の圧力値とを比較し、第2測定部73から取得した圧力値が基準値よりも高ければ、半田孔51が汚れているとしてクリーニングを実施する。半田孔51のクリーニングについては従来公知の処理を実施可能であり、例えば、本出願人が既に提案した特開2015−221449号公報及び特開2016−124004号公報に記載のクリーニング処理などを用いることができる。
(第1変形例)
また、半田孔51の汚れ状態判定は、鏝先5と基板Bdとが非接触状態、鏝先5と基板Bdとが接触、鏝先5への半田片の投入、加熱溶融、鏝先5からの溶融半田の流出、鏝先5の基板Bdからの離間といった一連の半田付け工程における配管70内の窒素ガスの圧力の経時変化から判定することもできる。図6に、1回の半田付けを行うときの配管70の圧力の経時変化を示す。
図6において、第1領域Ar1は、鏝先5が基板BdのランドLdと非接触状態のときであり、半田孔51は大気開放状態で配管70の圧力は圧力P1aとなっている。第2領域Ar2は、鏝先5が基板BdのランドLdと接触した状態であり、基板BdのランドLdによって鏝先5の半田孔51の一部が塞がれる。そして、半田孔51の窒素ガスはリリース孔53と端子Ndが挿入されたスルーホールThから外部に流出する。半田孔51の下端開口からの窒素ガスの流出は、端子Ndが挿入されたスルーホールThの部分のみとなり流路抵抗が急に増加し、配管70の圧力は圧力P1aから圧力P1bに急激に変化る。
次に、第3領域Ar3は、鏝先5の半田孔51に半田片Whが投入された状態を示しており、半田孔51に半田片Whが投入されると、半田片Whは、半田孔51に挿入されている端子Ndに接触して、半田孔51の内部で停止し、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積が小さくなる。これにより、配管70の流路抵抗がさらに大きくなって、配管70の圧力が圧力P1bから圧力P1cへは急激に変化する。
第4領域Ar4は、鏝先5の半田孔51において半田片Whが加熱溶融された状態を示しており、半田孔51の下端開口は半田片Whの溶融によって塞がれるので、その流路抵抗は増加する。半田片Whの溶融は、まず、フラックスが比較的ゆっくり溶融し、その後半田片Whは急激に溶融する。圧力P1cから圧力P1dへは、最初ゆっくり高くなり、一定の変化ののち急激に高くなる。すなわち、図6において、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に高くなる。
第5領域Ar5は、半田片Whが溶融して半田孔51から流出し、ランドLd及びスルーホールThを状態を塞いだ状態である。つまり半田付けされた状態である。この状態における配管70の流路抵抗は半田片Whが溶融状態のときと同じであって、配管70の圧力P1eは圧力P1dと略等しい。
第6領域Ar6は、鏝先5が基板BdのランドLdから離間した状態を示している。半田付け装置Aでは、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付けが終了すると、鏝先5をランドLdから離間させる。半田孔51の下端開口は大気解放される。これにより、配管70の圧力P1fは、圧力P1aと同じとなる。
このように、配管70の圧力P1a〜P1d(P1e)は、各状態によって異なる値になる。制御部Contは、予め圧力P1a〜P1d(P1e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、第2測定部73から取得した配管70の圧力P1のデータと比較することで、半田孔51の汚れ状態を判定することができる。あるいはまた、制御部Contは、鏝先5と基板Bdとは非接触状態、鏝先5と基板Bdとの接触、鏝先5への半田片Whの投入、加熱溶融、鏝先5からの溶融半田の流出、鏝先5の基板Bdからの離間といった一連の半田付け工程における配管70内の窒素ガスの圧力の基準となる経時変化をデータベースとしてて記憶しておき、第2測定部73から取得した配管70の圧力P1の経時変化と比較することで半田孔51の汚れ状態を判定することも可能である。
第3領域Ar3すなわち半田孔51への半田片Whの投入段階において半田孔51の汚れ状態を判定する場合を例に説明する。図7及び図8に、半田片Whが半田孔51へ投入された状態図を示す。図7に示すような半田孔51が汚れていない初期状態では配管70の圧力はP1cである。一方、図8に示すような半田孔51の内周壁にドロスなどの付着物が付着している状態では、半田孔51内の窒素ガスが通過する流路面積が小さくなっているところ、半田片Whが投入されることによって流路面積はさらに小さくなるため、配管70の圧力は初期状態の圧力P1cよりも高い圧力P1c’となる(図6の一点鎖線)。制御部Contは、初期状態における圧力P1cを予め記憶しておき、測定された配管70の圧力と圧力P1cとを比較して半田孔の汚れ状態を判定することが可能となる。
(第2変形例)
第1変形例では、一連の半田付け工程における配管70内の窒素ガスの圧力の経時変化から半田孔51の汚れ状態を判定していたが、一連の半田付け工程とは別に半田孔51の汚れ状態の測定を行うこともできる。図9に、半田付け工程とは別に半田孔51の汚れ状態の測定を行う場合の説明図を示す。検査治具8を用いて半田孔51の汚れ状態を検査する。検査治具8は、基台81と、基台81の上面から垂直上方に突出する検査用ピン82とを備える。半田孔51の汚れ状態を検査する場合は、鏝先5を検査治具8の設置位置に移動させて半田孔51に検査用ピン82を挿入する。このとき、半田孔51の下端開口と基台51との間にはガスが流れるに十分な空間を確保する。すなわち、鏝先5の下端と基台81との間に所定以上の距離を空ける。
検査用ピン82が半田孔51に挿入されることによって、窒素ガスが通過する流路面積が小さくなり、半田孔51の内周壁へのドロスなどの付着量が少しであっても配管70内の圧力が増加が生じやすくなり、半田孔51の汚れていない初期状態のときの配管70内の圧力との差がより大きく現れる。このような検査治具8を用いて半田孔51の汚れ状態を検査する時期としては、例えば、半田付け回数や使用時間など一定周期ごとに行う、あるいは半田付け装置Aの主電源投入直後などである。
(第3変形例)
以上説明した半田孔51の汚れ状態の判定方法では、半田孔51及びリリース孔53をそれぞれ大気開放として、第2測定部73で取得した配管70の圧力P1と基準値とを比較することで半田孔51の汚れ状態を判定していた。すなわち半田孔51とリリース孔53の汚れ状態を合わせて測定していた。リリース孔53はヒーター41に近く、半田孔51の下端開口部に比べて高い温度が維持されやすいため、リリース孔53には通常はドロスなどは付着しにくく、実質的に半田孔51の汚れ状態の判定となっている。
一方で、半田孔51の僅かな汚れを高い精度で判定したい場合などには、図10に示すように、リリース孔53を封鎖した状態で配管70の圧力を測定し、半田孔51の汚れ状態を判定してもよい。図10に示す測定方法では、半田孔51を大気開放とし、リリース孔53を封鎖治具83で封鎖した状態として一定量の窒素ガスを流し配管70の圧力を測定し、予め記憶されている基準値と比較して半田孔51の汚れ状態を判定する。
一方、リリース孔53の汚れ状態を判定する場合には、図11に示すように、リリース孔53を大気開放とし、半田孔51を封鎖治具84で封鎖した状態として一定量の窒素ガスを流し配管70の圧力を測定し、予め記憶されている基準値と比較してリリース孔53の汚れ状態を判定する。リリース孔53の汚れ状態を判定する頻度は、半田孔51の汚れ状態の判定頻度よりも通常は少なくてもよく、例えば、半田付け回数や使用時間など一定周期ごとに行う、あるいは半田付け装置の主電源投入直後などに行うようにする。
(第2実施形態)
本実施形態に係る半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。図12は、本発明に係る半田付け装置の他の例の鏝先5及びガス供給部7を示す図である。なお、図12に示す半田付け装置では、配管70が、主配管701と、分岐配管702と、流入配管703とを有する。それ以外は、第1実施形態の半田付け装置と同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には同じ符号を付すと共に、同じ部分の詳細な説明は省略する。
主配管701はガス供給部GSから窒素ガスが流入する配管である。主配管701の下流側の分岐部で、分岐配管702と流入配管703とに分岐する。そして、流入配管703は、主配管701の分岐部とガス流入孔222とを連通している。すなわち、主配管701を流れた窒素ガスは、流入配管703を通ってガス流入孔222へ流入する。
一方、分岐配管702は主配管701を流れる窒素ガスの一部を外部に流すための配管である。半田付け装置Bにおいて、ガス流入孔222は、下刃孔221、半田供給孔422及び半田孔51に連通しており、半田孔51は外部に開口している。例えば、半田付け装置Bを作動させた場合、付着物によって半田孔51が詰まる場合がある。この場合、ガス供給部GSから供給される窒素ガスが口径の小さいリリース孔53のみから流れ出る状態となって配管を損傷する原因となり得る。そこで、配管70に分岐配管702を設けて窒素ガスを外部に放出可能な経路を設けた。また、分岐配管702は配管70内での窒素ガス圧力の上昇を抑制する働きもある。
第2調整部74は、分岐配管702に配されている。第2調整部74は、分岐配管702を流れる窒素ガスの流量を絞る絞り弁を含む。第2調整部74を調整することで、分岐配管702に流れる窒素ガスの流量が調整される。第1調整部71で調整された窒素ガスは、分岐点でガス流入孔222と分岐配管702に分かれて流れる。すなわち、第1調整部71で調整されて主配管701を流れる窒素ガスの流量をQ1、第2調整部74で調整されて分岐配管702を流れる窒素ガスの流量を分岐流量Q2、流入配管703を流れる窒素ガスの流量を供給流量Q3とすると、Q1=Q2+Q3の関係が成り立つ。
ガス供給部7は、半田付け時の半田の酸化を抑制するために窒素ガスを供給するものであるため、分岐配管702よりも流入配管703へより多くの窒素ガスが流れるようにすることが好ましい。そのため、第2調整部74では、しぼり弁で分岐配管702を絞り、流量Q2をなるべく小さくしている。なお、第2調整部74では絞り弁を用いて、絞り量を調整できるようにしているが、例えば、オリフィス等の流路抵抗が固定のものを用いてもよい。第2調整部74は、絞り量を一定に調整する又は頻繁に調整しないため、流入側の圧力が変動すると流量が変動する。
第2計測部74は、分岐部と第2調整部74の間に配されて、分岐部で分岐した窒素ガスの流量(すなわち、流量Q2)を計測する。第2計測部74は、制御部Contに接続されており、流量Q2は、制御部Contに送信される。制御部Contは、流量Q2に基づいて、半田孔51の汚れ状態を判定する。すなわち、制御部Contは、半田孔51の汚れ状態を判定する状態判定部としての役割を果たす。また、制御部Contは、判定した半田孔51の汚れ状態に基づいて、半田付け装置の制御を行ってもよい。半田付け装置の制御としては、半田孔51のクリーニング等である。
次に、分岐配管702の流量に基づいて半田孔51の汚れ状態を判定する判定方法について説明する。なお、ガス供給部7において、ガス流入孔222に流入した窒素ガスは、すべて、鏝先5の半田孔51に流入するものとする。例えば、ガス流入孔222は、下刃孔221と連通しており、下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向上下に貫通している。窒素ガスが供給されている状態において、窒素ガスは、下刃孔221のZ方向上端から抜けないように、密閉されるものとする。
なお、主配管701を流れる窒素ガスは、ガス供給源GSからのガスを第1調整部71で調整することで流量が調整される。主配管701を流れる窒素ガスの流量は、ガス供給部7に供給される窒素ガスの全流量でもある。すなわち、ガス供給部7に流れる窒素ガスの全流量はQ1である。
第1調整部71に備えられている流量制御弁は、配管内部の圧力にかかわらず、窒素ガスを設定した流量で流し続ける。すなわち、ガス供給部7は、全流量Q1を一定とする流量制御が行われている。そして、第2調整部74には、絞り弁が採用されている。第2調整部74では、分岐配管702の流路面積を絞っているだけであり、配管上流の圧力が上昇すると、流量は変動する。すなわち、分岐流量Q2は、圧力によって変動する。
半田付け装置において、半田孔51にドロスなどの付着物が付着した場合、半田孔51の軸と直交する断面の一部を付着物が占める。そのため、半田孔51の窒素ガスが流れる部分の流路面積が小さくなり、窒素ガスが流れにくくなる、すなわち、流路抵抗が大きくなる。そして、半田孔51の流路抵抗が大きくなると、供給流量Q3が減少する。つまり、半田孔51の汚れ状態が変化することで、供給流量Q3は変動する。制御部Contは、供給流量Q3、或いは、供給流量Q3の変化に基づいて、半田孔51の汚れ状態を判定する。例えば、制御部Contは、供給流量Q3の変化とその変化の原因とを関連付けた情報を予め記憶している。制御部Contは、算出した供給流量Q3の変化に基づいて、その原因、すなわち、半田孔51の汚れ状態を判定する。
全流量Q1を一定に制御しているため、供給流量Q3と分岐流量Q2とは、一対一で変化する。実際には、制御部Contは、分岐流量Q2に基づいて、半田孔の汚れ状態を判定している。例えば、供給流量Q3が減少すれば、主配管701の全流量Q1が略一定であるので、分岐流量Q2が増加する。
以下に、半田孔51の初期状態と汚れた状態における配管70内の分岐流量Q2について、図面を参照して説明する。図12及び図13は、半田孔51の初期状態と汚れた状態を示す図である。なお、図12及び図13に示すように、半田孔51及びリリース孔53は大気に開放されている。図12に示す初期状態では、半田孔51及びリリース孔53にドロスなどは付着していないため半田孔51の流路抵抗は低い。一方、分岐配管702は、第2調整部74によって流路が絞られているので流路抵抗が高い。そのため、主配管701を流れる窒素ガスの流量Q1(全流量Q1)の多くは供給配管703に供給流量Q3aとして流れる。制御部Contは、第2計測部74からの流量を取得しており、初期状態において、分岐配管702には、分岐流量Q2aが流れる。分岐流量Q2aは、供給流量Q3aに比べて少ない。
半田付けの回数を重ねると、半田孔51の下端部の内周壁などにドロスなどが付着し半田孔51が汚れてくる。なお、リリース孔53も同時にドロスなどで汚れるが、リリース孔53はヒーター41に近いため半田孔51の下端部に比べて温度が高くドロスなどの付着物量は半田孔51の下端部に比べて少量である。図13に示すように、半田孔51の下端部の内周壁にドロスなどが付着し半田孔51が汚れてくると窒素ガスが通過できる面積が狭くなり、供給配管703の流路抵抗が、初期状態よりも大きくなる。これにより、供給流量Q3bは初期状態のときよりも少なくなる。結果として、分岐配管702に初期状態よりも多くの窒素ガスが流入する。このとき、分岐配管702には、分岐流量Q2bが流れる。分岐流量Q2bは分岐流量Q2aよりも多い。
このように、分岐配管702の分岐流量Q2bは半田孔51のドロスなどの付着状態すなわち汚れ状態によって変化する。制御部Contは、予め基準となる値をデータベースとして記憶しておき、第2測定部74から取得した分岐配管702の分岐流量Q2と比較することで、現在の半田孔51内の汚れ状態を判定することができる。
なお、第1実施形態と同様に、半田孔51の汚れ状態をより精度良く検知する観点からは、鏝先5の温度を所定温度で一定の状態として分岐配管702の分岐流量Q2を測定することが推奨される。ガスは、鏝先の温度によって膨張する程度や粘度が異なるため、流路抵抗も増減し、その結果、ガスの流量も変化するからである。また、半田孔51の汚れ状態を判定する際は、主配管701の全流量Q1を半田片Whを加熱溶融するときよりも多くすることが推奨される。これにより、半田孔51の汚れ状態に対する分岐配管702の分岐流量Q2の変化が大きくなり、半田孔51の汚れ状態の判定の精度が高まるからである。
制御部Contは、データベースに記憶された基準値と第2測定部74から取得した分岐配管702の分岐流量Q2とを比較し、第2測定部74から取得した分岐配管702の分岐流量Q2が基準値よりも多ければ、第1実施形態と同様に、半田孔51のクリーニングを実施する。
(第4変形例)
また、半田孔51の汚れ状態判定は、第1実施形態と同様に、鏝先と基板とが非接触状態、鏝先と基板とが接触、鏝先への半田片の投入、加熱溶融、鏝先からの溶融半田の流出、鏝先の基板からの離間といった一連の半田付け工程における分岐配管702の分岐流量Q2の経時変化から判定することもできる。図14に、1回の半田付けを行うときの分岐配管702の分岐流量Q2の経時変化を示す。制御部Contは、図14に示すような、1回の半田付けを行うときの分岐配管702の分岐流量Q2の経時変化を示すテーブルを予め記憶しておき、第2測定部74からの分岐流量Q2の挙動及び値を比較することで半田孔51の汚れ状態を判定するようにする。
図14において、第1領域Ar1は、鏝先5が基板BdのランドLdと非接触状態のときであり、半田孔51は大気開放状態で分岐配管702の分岐流量Q2はQ2aとなっている。第2領域Ar2は、鏝先5が基板BdのランドLdと接触した状態であり、基板BdのランドLdによって鏝先5の半田孔51の一部が塞がれる。そして、半田孔51の窒素ガスはリリース孔53と端子Ndが挿入されたスルーホールThから外部に流出する。半田孔51の下端開口からの窒素ガスの流出は、端子Ndが挿入されたスルーホールThの部分のみとなり流路抵抗が急に増加し、分岐配管702の分岐流量はQ2aからQ2bに急激に変化する。
次に、第3領域Ar3は、鏝先5の半田孔51に半田片Whが投入された状態を示しており、半田孔51に半田片Whが投入されると、半田片Whは、半田孔51に挿入されている端子Ndに接触して、半田孔51の内部で停止し、半田孔51の窒素ガスが通過する流路面積が小さくなる。これにより、配管70の流路抵抗がさらに大きくなって、分岐配管702の分岐流量Q2はQ2bからQ2cへ急激に変化する。
第4領域Ar4は、鏝先5の半田孔51において半田片Whが加熱溶融された状態を示しており、半田孔51の下端開口は半田片Whの溶融によって塞がれるので、その流路抵抗は増加する。半田片Whの溶融は、まず、フラックスが比較的ゆっくり溶融し、その後半田片は急激に溶融する。分岐配管702の分岐流量Q2は、Q2cからQ2dへ最初ゆっくり、一定の変化ののち急激に高くなる。すなわち、図14において、第3領域Ar3から第4領域Ar4への変化は最初ゆっくりで、その後急激に高くなる。
第5領域Ar5は、半田片Whが溶融して半田孔51から流出し、ランドLd及びスルーホールThを状態を塞いだ状態である。つまり半田付けされた状態である。この状態における配管70の流路抵抗は半田片Whが溶融状態のときと同じであって、分岐配管702の分岐流量Q2eはQ2dと略等しい。
第6領域Ar6は、鏝先5が基板BdのランドLdから離間した状態を示している。半田付け装置では、ランドLdと電子部品Epの端子Ndとの半田付けが終了すると、鏝先5をランドLdから離間させる。半田孔51の下端開口は大気解放される。これにより、分岐配管702の分岐流量Q2は、第1領域Ar1の分岐流量Q2aと同じQ2fとなる。
このように、分岐配管702の分岐流量Q2は、半田付け工程の各状態によって異なる値になる。制御部Contは、分岐配管702の分岐流量Q2a〜Q2d(Q2e)の基準となる値をデータベースとして記憶しておき、第2測定部74から取得した分岐配管702の分岐流量Q2のデータと比較することで、半田孔51の汚れ状態を判定することができる。あるいはまた、制御部Contは、鏝先5と基板Bdとは非接触状態、鏝先5と基板Bdとの接触、鏝先5への半田片Whの投入、加熱溶融、鏝先5からの溶融半田の流出、鏝先5の基板Bdからの離間といった一連の半田付け工程における分岐配管702の分岐流量の基準となる経時変化をデータベースとしてて記憶しておき、第2測定部74から取得した分岐配管702の分岐流量Q2の経時変化と比較することで半田孔51の汚れ状態を判定することも可能である。
半田孔51への半田片Whの投入段階(Ar3)において半田孔51の汚れ状態を判定する場合を例に説明すると、半田孔51が汚れていない初期状態では分岐配管702の分岐流量Q2はQ2cである。一方、半田孔51の内周壁にドロスなどの付着物が付着している状態では、半田孔51内の窒素ガスが通過する流路面積が小さくなっているところ、半田片Whが投入されることによって流路面積はさらに小さくなるため、分岐配管702の分岐流量Q2は初期状態の流量Q2cよりも多い流量Q2c’となる(図14の一点鎖線)。制御部Contは、初期状態における流量Q2cを予め記憶しておき、測定された分岐配管702の分岐流量配管の流量Q2と流量Q2cとを比較して半田孔51の汚れ状態を判定することが可能となる。
以上示した第2実施形態では、分岐流路702に流量計測を行う第2計測部74を設けて分岐流路の流量の変化に基づいて鏝先5の状態を判定するようにしたが、供給流路703に第2計測部74を設けて供給流路703を流れる窒素ガスの流量(供給流量)を直接計測し、供給流量の流量変化に基づいて半田孔51の汚れ状態の判定を行ってもよい。この場合、半田付け工程の各状態における流量の変化は、上述した分岐流量と逆方向の挙動を示す。すなわち、供給流量と時間との関係は、図14に示すテーブルとは上下逆転した挙動を示す。供給流量は、(a)初期状態のときに最大流量となり、(d)半田片溶融状態のときに最小流量となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。