JP2018078103A - 非水系二次電池並びにこれに用いられるガス発生抑制剤及び非水系電解液 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温時のガス発生を抑制することができる非水系二次電池並びにこれに用いられるガス発生抑制剤及び非水系電解液を提供する。
【解決手段】本発明は、正極活物質を含む正極と、珪素を有する負極活物質を含む負極と、非水系電解液とを具備する非水系二次電池であって、非水系電解液は、下記の化学式(1)で表されるシラン化合物、及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、正極活物質を含む正極と、珪素を有する負極活物質を含む負極と、非水系電解液とを具備する非水系二次電池であって、非水系電解液は、下記の化学式(1)で表されるシラン化合物、及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
【選択図】 図1
Description
本発明は、非水系二次電池並びにこれに用いられるガス発生抑制剤及び非水系電解液に関する。
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、及び車両用駆動源等の幅広い分野で用いられている。リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、例えば、容量の大きい珪素系材料が用いられている。
しかしながら、珪素を有する負極活物質は、電池の高容量化に適しているものの、当該負極活物質を具備する二次電池は、高温で保存した時に電池内部でガスが発生したり、充放電サイクル特性が低下したりするという問題があった(特許文献1参照)。
そこで、特許文献2には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)に代表されるフッ素含有環状カーボネートを電解液に添加することで、電池の充放電サイクル特性を向上させることが提案されている。
しかしながら、本発明者は、フッ素含有環状カーボネートは高温安定性が低いため、フッ素含有環状カーボネートを含む電解液を具備する二次電池を高温で保存する、または当該二次電池の充放電の繰り返しを高温で行うと、フッ素含有環状カーボネートの分解によって電解液からガスが発生しやすくなる傾向があることを知見した。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、高温時のガス発生を抑制することができる非水系二次電池並びにこれに用いられるガス発生抑制剤及び非水系電解液を提供することを課題とする。
本発明者は、フッ素含有環状カーボネートを含む非水系電解液を具備する非水系二次電池において、充放電サイクル特性が向上する一方、高温時に電解液からガスが発生しやすくなるという課題があることに着目した。そこで、本発明者は、鋭意探究の結果、電解液に特定のシラン化合物を添加することで、電解液からのガス発生が抑制されることを見出した。
本発明の非水系二次電池は、正極活物質を含む正極と、珪素を有する負極活物質を含む負極と、非水系電解液とを具備する非水系二次電池であって、
前記非水系電解液は、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物、及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
前記非水系電解液は、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物、及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
本発明のガス発生抑制剤は、珪素を有する負極活物質を含む負極を備えた非水系二次電池用のガス発生抑制剤であって、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
本発明の非水系電解液は、珪素を有する負極活物質を含む負極を備えた非水系二次電池用の非水系電解液であって、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
上記構成によれば、高温時のガス発生を抑制することができる非水系二次電池並びにこれに用いられるガス発生抑制剤及び非水系電解液を提供することができる。
本発明の実施形態に係るガス発生抑制剤、非水系電解液及び非水系二次電池について詳細に説明する。
(ガス発生抑制剤)
本実施形態のガス発生抑制剤は、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
本実施形態のガス発生抑制剤は、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含む。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
本実施形態に係るガス発生抑制剤は、フッ素含有環状カーボネートを含む非水系電解液を備えた非水系二次電池に用いられる。非水系二次電池の負極は、珪素を有する負極活物質を含む。
本実施形態のガス発生抑制剤を用いた非水系二次電池によれば、高温で保存または高温で充放電を繰り返したときに、電解液からのガスの発生を抑えることができる。その理由は以下のように考えられる。
一般に、非水系二次電池について高温で充放電を繰り返した場合、フッ素含有環状カーボネートが分解して、負極活物質表面にフッ素含有環状カーボネート由来の皮膜が形成される。一方で、珪素を有する負極活物質は充放電時の膨張収縮が大きい。そのため、充放電時に負極活物質表面の皮膜が割れる。皮膜の割れた部分から電解液が進入して電解液中のフッ素含有環状カーボネートが負極活物質と更に反応する。これにより、皮膜の割れた部分に更にフッ素含有環状カーボネート由来の皮膜成分が堆積して新生面が生成されるとともに、フッ素含有環状カーボネートからCO2などのガス成分が発生する。
本実施形態において、上記のガス発生抑制剤を二次電池に用いることで、負極活物質表面に、シラン化合物由来の成分を含む安定で割れにくい皮膜が形成される。高温時には、割れの生じにくい皮膜によって負極活物質と電解液との接触が抑えられ、電解液中のフッ素含有環状カーボネートの分解が抑えられ、電解液からのガス発生が抑制されると考えられる。
一般式(1)において、4つのRは、それぞれ独立に、炭化水素基である。Rの1以上は炭素間二重結合を有する。シラン化合物は炭素間二重結合を有する炭化水素基を含むため、高温時に電解液からのガス発生を抑制できる。その理由は、次のように考えられる。
高温で二次電池を保存した場合、シラン化合物は、炭化水素基の炭素間二重結合の部分で、互いに重合し得る。シラン化合物の重合体が皮膜の構成成分となり、割れの生じにくい皮膜が形成されると考えられる。また、シラン化合物は、その炭素間二重結合部分で、フッ素含有環状カーボネートのフッ素と付加反応を生じ得る。シラン化合物の付加反応物も、皮膜成分になると考えられる。このようにシラン化合物由来の皮膜によって、電解液と負極活物質との接触が抑制され、電解液中のフッ素含有環状カーボネートの分解が抑えられ、電解液からのガス発生が抑制されると推測される。
4つのRの炭素数は、それぞれ1以上である。4つのRの炭化水素基は、それぞれ10以下の炭素数であることが好ましく、更に5以下であることがより好ましい。
4つのRのうち、少なくとも1つのRは、2以上の炭素数をもち、炭素間二重結合を有する。4つのRのすべてが、それぞれ独立に、炭素間二重結合を有する炭化水素基であることがよい。
ここで、炭素間二重結合を有する炭化水素基は、アルケニル基であるとよく、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、シンナミル基のいずれかであることがよい。中でも、エテニル基(ビニル基)が好ましい。
4つのRの少なくとも1つは、エテニル基であることがよい。さらには、2つ以上のRがエテニル基であることが好ましい。
4つのRにおいて、炭素間二重結合を有する炭化水素基以外の炭化水素基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、鎖状アルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。
一般式(1)で表されるシラン化合物としては、テトラエテニルシラン、エテニルトリメチルシラン、エテニルトリエチルシラン、ジエテニルジメチルシラン、ジエテニルジエチルシラン、トリエテニルメチルシラン、トリエテニルエチルシラン、アリルトリエテニルシラン、アリルメチルジエテニルシラン、アリルジメチルエテニルシラン、ジアリルジエテニルシラン、ジアリルメチルエテニルシラン、トリアリルエテニルシラン、ジ−3−ブテニルジエテニルシラン、ジ−3−ブテニルメチルエテニルシラン、トリ−3−ブテニルエテニルシランが好ましく用いられる。
(非水系二次電池用電解液)
本実施形態の電解液は、非水系二次電池用の非水系電解液である。本実施形態の電解液は、上記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含むガス発生抑制剤、及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
本実施形態の電解液は、非水系二次電池用の非水系電解液である。本実施形態の電解液は、上記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含むガス発生抑制剤、及びフッ素含有環状カーボネートを含む。
本実施形態の電解液を100質量%としたときに、上記シラン化合物の濃度は、0.05〜1質量%であることが好ましく、更に、0.08〜0.8質量%であることがより好ましい。シラン化合物の濃度が0.05〜1質量%である場合には、高温時に非水系二次電池のガス発生を十分に抑制することができ、シラン化合物の濃度が0.08〜0.8質量%である場合には、更にガス発生を効率的に抑制できる。また、シラン化合物の濃度が1質量%以下であれば、非水系二次電池の過剰な抵抗上昇を抑制することができる。
本実施形態の電解液は、フッ素含有環状カーボネートを含む。フッ素含有環状カーボネートを含む電解液を備えた非水系二次電池を室温にて充放電させると、フッ素含有環状カーボネートの還元分解により、負極活物質表面にSEI膜が形成される。室温においては、安定したSEI膜(Solid Electrolyte Interface)と称される皮膜が形成され、電池について優れた充放電サイクル特性が維持される。
ここで、フッ素含有環状カーボネートを含む電解液を備えた二次電池について高温で保存あるいは高温で充放電を繰り返すと、フッ素含有環状カーボネートが過剰に分解しやすくなり、フッ素含有環状カーボネートの分解により電解液からガスが発生する。
しかし、本実施形態の電解液は、フッ素含有環状カーボネートに加え、更に上記一般式(1)で表されるシラン化合物を含んでいる。上述の通り、電解液中のシラン化合物は負極活物質表面に安定な皮膜を形成する。この皮膜には、シラン化合物由来の珪素が含まれている。当該皮膜によれば、高温時においても負極活物質と電解液との接触が抑制され、電解液中のフッ素含有カーボネートの分解が抑えられ、電解液からのガス発生が抑制される。
ここで、フッ素含有環状カーボネートは、少なくとも1つのフッ素を含有すればよく他のハロゲンを含有してもよい。フッ素含有環状カーボネートは、下記の一般式(3)で表されるものが好ましい。
(式中、R13は、それぞれ独立して、水素、フッ素、アルキル基あるいはフッ化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはフッ素またはフッ化アルキル基である。)
一般式(3)において、R13がアルキル基またはフッ化アルキル基である場合、それらの炭素数は1または2であるのが好ましい。特に好ましくは、下記の化学式(4−1)〜(4−3)で表されるような、環状構造を構成する1以上の炭素に少なくとも1つのフッ素が結合した構造を有するフッ素含有環状カーボネートである。
なかでも、耐酸化性の観点から、化学式(4−1)で表される4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(フルオロエチレンカーボネート:FEC)が好ましい。
本実施形態の電解液は、電解質と、非水系溶媒とを含む。フッ素含有環状カーボネートは、環状カーボネートの一種であり、非水系溶媒として用いられる。非水系溶媒は、フッ素含有環状カーボネートを含む環状カーボネートと、鎖状カーボネートとを併用することが好ましい。環状カーボネートは誘電率が高く、鎖状カーボネートは粘性が低い傾向にある。このため、本実施形態の電解液が環状カーボネートと鎖状カーボネートとの双方を含む場合には、電解質イオンの移動を妨げず、電池容量を向上させることができる。
本実施形態において、電解液の非水系溶媒を100体積%としたときに、フッ素含有環状カーボネートの含有量は、1〜40体積%であることがよい。この場合には、電池の充放電サイクル特性を効果的に向上させることができるとともに、電解液の粘性を低く抑えて電解質イオンを移動させやすくして電池容量を更に向上させることができる。
電解液の非水系溶媒を100体積%としたときに、フッ素含有環状カーボネートの含有量は、10〜35体積%であることが更に好ましい。この場合には、電池について充放電サイクルを繰り返したときに、フッ素含有環状カーボネートの分解が少なく、負極の細孔の変化が少なく、充放電サイクル特性に優れると想定される。
電解液における非水系溶媒全体を100体積%としたとき、フッ素含有環状カーボネートを含む環状カーボネートの含有量は20〜40体積%であり、かつ鎖状カーボネートは60〜80体積%であることが好ましく、更に、フッ素含有環状カーボネートを含む環状カーボネートの含有量は25〜35体積%であり、かつ鎖状カーボネートは65〜75体積%であることがより好ましい。環状カーボネートは、誘電率が高いものの、粘性が比較的高いため、電解液中の電解質イオンの移動が妨げられる。鎖状カーボネートについては、誘電率が低いが、粘性は低い。両者を上記の配合比の範囲でバランスよく配合することで、非水系溶媒の誘電率をある程度高く、また非水系溶媒の粘性を低くして、電解液での電解質イオンが移動しやすくなり、電池容量を向上させることができる。
環状カーボネートは、フッ素含有環状カーボネートのほか、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート、及びビニレンカーボネートの群から選ばれる一種以上を含んでもよい。
鎖状カーボネートは、鎖状である限り特に限定はない。たとえば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジブチルカーボネート、及びジプロピルカーボネートから選ばれる一種以上を用いることができる。
本実施形態の電解液は、電解質としての金属塩を含む。電解質としての金属塩はハロゲン含有リチウム塩であるとよい。ハロゲン含有リチウム塩は、フッ素含有リチウム塩であることがよい。フッ素含有リチウム塩としては、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(SO2F)2等を用いることができる。ハロゲン含有リチウム塩としては、フッ素含有リチウム塩のほかに、LiClO4、LiAlCl4などの塩素含有リチウム塩を用いても良い。電解液中のハロゲン含有リチウム塩の濃度は、0.5mol/L〜1.7mol/Lであることがよい。
(非水系二次電池)
本実施形態の非水系二次電池は、上記の非水系二次電池用電解液と、正極と、負極とを具備する。
本実施形態の非水系二次電池は、上記の非水系二次電池用電解液と、正極と、負極とを具備する。
正極は、集電体と、集電体の表面を被覆している正極活物質層とを有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極活物質層は、正極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を有する。
正極活物質は、リチウム金属複合酸化物であるとよい。リチウム金属複合酸化物は取り出せる容量が比較的大きいからである。
一方、正極活物質がリチウム金属複合酸化物である場合には、電池を高温下で保存すると電解液からCO2ガスなどのガスが発生しやすくなることが、本発明者によって知見された。ガス発生のメカニズムは、次のように考えられる。電池を高温で保存したときには、電解液中のフッ素含有環状カーボネートが分解してフッ酸が生じる。フッ酸によりリチウム金属複合酸化物の酸素が活性化されて、電解液中のフッ素含有環状カーボネートなどの有機物が酸化分解され、CO2などのガスが発生すると想定される。
しかし、本実施形態の電解液は、フッ素含有環状カーボネートに加えてシラン化合物を含んでいる。当該電解液を備えた二次電池を高温で保存したときには、後述の実験のように、電解液からのガス発生を抑制することができる。当該二次電池によれば、高温保存時にリチウム金属複合酸化物表面にシラン化合物由来の成分(例えば珪素)を含む安定な皮膜(例えば、SEI皮膜)が形成され、リチウム金属複合酸化物の電解液との接触が抑制され、リチウム金属複合酸化物の酸素が活性化されにくくなり電解液の酸化分解が抑えられ、これによりガス発生が抑制されると想定される。
また、前記シラン化合物は、正極活物質としてのリチウム金属複合酸化物を有する非水系二次電池において、発熱抑制剤としても機能し得る。
一般に、正極活物質としてリチウム金属複合酸化物を有する非水系二次電池を高温で充電及び放電をすると、電池が発熱することがある。発熱のメカニズムは以下のように考えられている。リチウム金属複合酸化物を有する非水系二次電池を高温で充電及び放電をすると、電解液が負極活物質と反応して発熱し、電池内部に熱が溜まり、電池の内部温度が上昇する。やがて、電池の内部温度が、リチウム金属複合酸化物と電解液との反応が開始し得る発熱開始温度に到達する。一方で、電解液中のフッ素含有環状カーボネートが分解してフッ酸が生じる。電池の内部温度が発熱開始温度に到達すると、生成したフッ酸が、リチウム金属複合酸化物と発熱反応を生じさせて、電池がさらに発熱する。
しかし、本実施形態の非水系二次電池の電解液は、前記シラン化合物を含む発熱抑制剤を含んでいる。当該二次電池について高温下で充放電を行ったとき、後述の実施例で示すように上記発熱開始温度が上昇するため、電池の発熱が抑えられる。電池の発熱抑制のメカニズムは次のように考えられる。当該二次電池について高温下で充放電を行うと、正極のリチウム金属複合酸化物表面に、シラン化合物由来の成分(例えば珪素)を含む安定な皮膜が形成される。当該皮膜により、リチウム金属複合酸化物が電解液と直接接触することが効果的に抑えられ、電解液中のフッ素含有環状カーボネートが分解しにくくなり、電池内部の発熱開始温度が高くなると想定される。このように、発熱開始温度が高くなることによって、電池の発熱が抑制される。
前記リチウム金属複合酸化物は、以下の1)〜4)の化合物から選ばれる一種以上からなることが好ましい。なお、リチウム金属複合酸化物は炭素被覆されていてもよい。
1)一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも一種の元素、1.7≦f≦2.1)、及びLi2MnO3から選ばれる層状化合物、
2)一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属元素、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素、0<x≦1.2、0≦y≦1)で表されるスピネル型化合物、
3)LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4、(式中のMはCo、Ni、Mn、Feから選ばれる少なくとも一種の元素)で表されるポリアニオン化合物、
4)LiAPO4F(Aは遷移金属元素)で表されるタボライト系化合物、又はLiABO3(Aは遷移金属元素)で表されるボレート系化合物。
2)一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属元素、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素、0<x≦1.2、0≦y≦1)で表されるスピネル型化合物、
3)LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4、(式中のMはCo、Ni、Mn、Feから選ばれる少なくとも一種の元素)で表されるポリアニオン化合物、
4)LiAPO4F(Aは遷移金属元素)で表されるタボライト系化合物、又はLiABO3(Aは遷移金属元素)で表されるボレート系化合物。
リチウム金属複合酸化物は、上記の1)〜4)から選ばれる一種の化合物であってもよいし、複数種の化合物の混合体であってもよい。また、例えば、リチウム金属複合酸化物は、上記の1)の層状化合物と上記2)のスピネル型化合物で構成される固溶体であってもよい。
上記1)の一般式において、b、c及びdの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが0<b<80/100、0<c<70/100、10/100<d<1の範囲であることが好ましく、30/100<b<78/100、12/100<c<60/100、10/100<d<50/100の範囲であることがより好ましい。aは、0.5≦a≦1.5の範囲内が好ましく、0.7≦a≦1.3の範囲内がより好ましく、0.9≦a≦1.2の範囲内がさらに好ましく、1≦a≦1.1の範囲内が特に好ましい。e、fについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、e=0、f=2を例示することができる。
上記2)のスピネル型化合物としては、例えば、LiMn2O4が挙げられる。
上記3)のポリアニオン化合物としては、LiMPO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)が好ましい。
上記4)のタボライト化合物としては、例えば、LiFePO4Fが挙げられ、ボレート化合物としては、例えば、LiFeBO3が挙げられる。
正極活物質として用いられるリチウム金属複合酸化物は上記の各組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも正極活物質として使用可能である。
また、正極活物質として、充放電に寄与するリチウムイオンを含まない正極活物質材料、たとえば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS2などの金属硫化物、V2O5、MnO2などの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウムを含まない正極活物質を用いる場合には、正極および/または負極に、公知の方法により、予めイオンを添加させておく必要がある。ここで、当該イオンを添加するためには、金属または当該イオンを含む化合物を用いればよい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.01〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.03〜1:0.1であるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
結着剤は、活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースを例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.001〜1:0.3であるのが好ましく、1:0.005〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.01〜1:0.15であるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
負極は、珪素を有する負極活物質を含む。珪素は、高い容量を有するため、非水系二次電池の負極活物質として優れている。
既述したように、珪素を有する負極活物質を含む負極及びフッ素含有環状カーボネートを含む電解液を備えた非水系二次電池を高温で保存すると、電解液からガスが発生することを、本発明者は知見した。
しかし、本実施形態の二次電池の電解液は上記シラン化合物を含む。当該二次電池を高温で保存すると、前述のように、電解液からのガス発生を抑制することができる。
本実施形態の非水系二次電池における負極活物質は、珪素を有する負極活物質のみを採用してもよいし、珪素を有する負極活物質と公知の負極活物質とを併用してもよい。
珪素は負極活物質として機能する。珪素は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であってリチウムと合金化可能な元素である。珪素を有する負極活物質は、珪素単体、又は珪素と他の元素を有する珪素化合物であっても良い。珪素を有する負極活物質は、後述するシリコン材料であってもよい。
本実施形態において「シリコン材料」とは、例えば、以下の工程を行うことで得られる材料をいう。
シリコン材料の製造方法は、CaSi2と酸とを反応させて層状シリコン化合物を得る反応工程、層状シリコン化合物を加熱することで水素などを離脱させてシリコン材料を得る加熱工程とを含む。
反応工程において用いる酸としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ素酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロゲルマン酸、ヘキサフルオロスズ(IV)酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸が例示される。これらの酸を単独又は併用して使用すれば良い。
また、酸は水溶液として用いられるのが、作業の簡便性及び安全性の観点、並びに、副生物の除去の観点から好ましい。
反応工程に用いる酸は、CaSi2に対して2当量以上のプロトンを供給できる量で用いればよい。従って、1価の酸であれば、CaSi21モルに対して2モル以上で用いればよい。
反応工程の反応条件は、真空などの減圧条件又は不活性ガス雰囲気下とすることが好ましく、また、氷浴などの室温以下の温度条件とするのが好ましい。同工程の反応時間は適宜設定すれば良い。
反応工程において、酸として塩化水素を用いた場合の反応式で示すと、以下の通りとなる。
3CaSi2+6HCl→Si6H6+3CaCl2
3CaSi2+6HCl→Si6H6+3CaCl2
ポリシランであるSi6H6が理想的な層状シリコン化合物に該当する。この反応は、層状のCaSi2のCaが2Hで置換されつつ、Si−H結合を形成すると考えることもできる。CaSi2は、Ca層とSi層が積層した構造からなる。そして、層状シリコン化合物は、原料のCaSi2におけるSi層の基本骨格が維持されているため、層状をなす。
反応工程において、酸を水溶液として用いる場合、Si6H6は水と反応し得る。このため、通常は、層状シリコン化合物がSi6H6なる化合物のみで得られることはほとんどなく、酸素や酸由来の元素を含有する。
反応工程以降は、層状シリコン化合物を濾取する濾過工程、層状シリコン化合物を洗浄する洗浄工程、層状シリコン化合物を乾燥する乾燥工程、層状シリコン化合物を粉砕若しくは分級する工程を、必要に応じて適宜実施するのが好ましい。
加熱工程において、上記の層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する。
加熱工程を理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
Si6H6→6Si+3H2↑
Si6H6→6Si+3H2↑
ただし、加熱工程に実際に用いられる層状シリコン化合物は酸素や酸由来の元素を含有し、さらに不可避不純物も含有する。このため、実際に得られるシリコン材料も酸素や酸由来の元素を含有し、さらに不可避不純物も含有するものとなる。シリコン材料は、珪素のモル量を100としたとき酸素元素のモル量が50以下であることが好ましく、40以下の量となるのが特に好ましい。また、珪素のモル量を100としたとき酸由来の元素のモル量が8以下の量であることが好ましく、5以下の量となるのが特に好ましい。
加熱工程は、通常の大気下よりも酸素含有量の少ない非酸化性雰囲気下で行われるのが好ましい。非酸化性雰囲気としては、真空を含む減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気を例示できる。加熱温度は、350℃〜1200℃の範囲内が好ましく、400℃〜1000℃の範囲内がより好ましい。加熱温度が低すぎると水素の離脱が十分でない場合があり、他方、加熱温度が高すぎるとエネルギーの無駄になる。加熱時間は加熱温度に応じて適宜設定すれば良く、また、反応系外に抜けていく水素などの量を測定しながら加熱時間を決定することが好ましい。加熱温度及び加熱時間を適宜選択することにより、製造されるシリコン材料にアモルファスシリコン及びシリコン結晶子が含まれる場合のアモルファスシリコン及びシリコン結晶子の割合、並びに、シリコン結晶子の大きさを調整することもでき、さらには、製造されるシリコン材料に含まれる、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子を含むナノ水準の厚みの層の形状や大きさを調整することもできる。
上記のシリコン材料の製造方法で得られたシリコン材料は、複数の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有することが好ましい。この構造は、走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。シリコン材料をリチウムイオン二次電池の負極活物質として使用する場合を考慮すると、リチウムイオンの効率的な挿入及び脱離反応のためには、板状シリコン体の厚さが10nm〜100nmの範囲が好ましく、20nm〜50nmの範囲がより好ましい。また、板状シリコン体の長軸方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲が好ましい。また、板状シリコン体について、(長軸方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲が好ましい。
シリコン材料は、粉砕や分級を経て、一定の粒度分布の粒子としてもよい。シリコン材料の好ましい粒度としては、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した場合に、D50が1〜30μmの範囲を例示できる。
シリコン材料は、炭素で被覆して用いるのが好ましい。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。
シリコン材料のシリコン結晶子サイズとしては、ナノサイズのものが好ましい。具体的には、シリコン結晶子サイズは、0.5nm〜300nmの範囲が好ましく、1nm〜100nmの範囲がより好ましく、1nm〜50nmの範囲がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲が特に好ましい。シリコン結晶子サイズは、シリコン材料に対してX線回折測定(XRD測定)を行い、得られたXRDチャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。なお、ここで述べたシリコン結晶子は、XRDチャートにブロードなピークとして観察されるものを意味している。
また、珪素を有する負極活物質は、SiOx(0.3≦x≦1.6)で表される珪素酸化物であることがよい。SiOxは、Si相と、SiO2相とを含むことが好ましい。Si相は、珪素単体からなり、電解質イオンを吸蔵・放出し得る相である。Si相は、理論放電容量が大きく、電解質イオンの吸蔵・放出に伴って膨張・収縮する。SiO2相は、SiO2からなり、Si相の膨張・収縮を緩和する。Si相がSiO2相により被覆されることで、Si相とSiO2相とからなる負極活物質を形成しているとよい。さらには、微細化された複数のSi相がSiO2相により被覆されて一体となって、負極活物質を形成しているとよい。この場合には、負極活物質粒子全体の体積変化を効果的に抑えることができる。
SiOxでのSi相に対するSiO2相の質量比は、1〜3であることが好ましい。この場合には、充放電時に負極活物質の膨張・収縮が抑制され、負極活物質での充放電容量を高く維持できる。
珪素酸化物の原料として、一酸化珪素を含む原料粉末を用いるとよい。この場合、原料粉末中の一酸化珪素を、SiO2相とSi相との二相に不均化する。一酸化珪素の不均化では、SiとOとの原子比が概ね1:1の均質な固体である一酸化珪素が固体内部の反応により、SiO2相とSi相との二相に分離する。不均化により得られる酸化珪素粉末は、SiO2相とSi相とを含む。原料粉末の一酸化珪素の不均化は、原料粉末にエネルギーを与えることにより進行する。不均化の一例として、原料粉末を加熱する、ミリングする、などの方法が挙げられる。
原料粉末を加熱する場合、一般に、酸素を絶った状態であれば800℃以上で、ほぼすべての一酸化珪素が不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性の一酸化珪素粉末を含む原料粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことにより、非結晶性のSiO2相と結晶性のSi相の二相を含む酸化珪素粉末が得られる。
原料粉末をミリングする場合には、ミリングの機械的エネルギーの一部が、原料粉末の固相界面における化学的な原子拡散に寄与し、酸化物相と珪素相などを生成する。ミリングでは、原料粉末を、真空中、アルゴンガス中などの不活性ガス雰囲気下で、ボールミル、アトライタ、ジェットミル、振動ミル、高エネルギーボールミル等を使用して混合するとよい。ミリング後にさらに熱処理を施すことで、一酸化珪素の不均化をさらに促進させてもよい。
珪素酸化物は、粉末状が好ましく、その平均粒径が1〜10μmであるとよい。珪素酸化物粉末は、4μm以下さらには2μm以下に分級して使用されるとよい。
負極は、集電体と、集電体の表面を被覆している負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は珪素を有する負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を有する。
負極に用いる導電助剤及び結着剤については、正極で説明したものを同様の配合割合で適宜適切に採用すれば良い。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
本実施形態の非水系二次電池において、正極は、正極活物質の表面に形成され且つX線光電子分光装置(XPS)を用いて測定されたX線光電子分光スペクトルにおいて101eV及び102eVの結合エネルギー領域においてそれぞれピークが発現する皮膜を有することがよい。
本実施形態の非水系二次電池において、負極は、負極活物質の表面に形成され且つX線光電子分光装置(XPS)を用いて測定されたX線光電子分光スペクトルにおいて103eVの結合エネルギー領域にピークが発現する皮膜を有することがよい。フッ素含有環状カーボネート及びシラン化合物を含む電解液を備えた非水系二次電池について充電後高温で保存することで、正極活物質及び負極活物質の表面に、上記シラン化合物由来の成分を含む皮膜が形成される。これによりガス発生が更に効果的に抑制されると考えられる。
本実施形態の非水系二次電池は必要に応じてセパレータを用いることもある。セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を一種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
次に、非水系二次電池の作製方法について説明する。正極および負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から、外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えて非水系二次電池とするとよい。
本実施形態の非水系二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本実施形態の非水系二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部に非水系二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両に非水系二次電池を搭載する場合には、非水系二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。非水系二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、非水系二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、各種電池を作製し、電池の特性を評価した。
(電池E1)
<シリコン材料の作製>
結晶性シリコンを含むCaSi2として、日本重化学工業株式会社製のカルシウムシリコンを採用した。当該CaSi2は目開き250μmの篩を通過した粉末状のものである。
・反応工程
アルゴン雰囲気下、10℃とした濃度35重量%のHCl水溶液500gに、50gのCaSi2を加え、撹拌した。反応液から発泡が無くなったのを確認した後、さらに同条件下、4時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、濾過を行った。残渣を300mLの蒸留水で3回洗浄した後、300mLのエタノールで洗浄し、減圧乾燥して39.4gの固形物を得た。当該固形物を層状シリコン化合物とした。
・加熱工程
層状シリコン化合物を、O2を1体積%以下の量で含むアルゴン雰囲気下にて900℃で1時間加熱し、シリコン材料を得た。
(電池E1)
<シリコン材料の作製>
結晶性シリコンを含むCaSi2として、日本重化学工業株式会社製のカルシウムシリコンを採用した。当該CaSi2は目開き250μmの篩を通過した粉末状のものである。
・反応工程
アルゴン雰囲気下、10℃とした濃度35重量%のHCl水溶液500gに、50gのCaSi2を加え、撹拌した。反応液から発泡が無くなったのを確認した後、さらに同条件下、4時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、濾過を行った。残渣を300mLの蒸留水で3回洗浄した後、300mLのエタノールで洗浄し、減圧乾燥して39.4gの固形物を得た。当該固形物を層状シリコン化合物とした。
・加熱工程
層状シリコン化合物を、O2を1体積%以下の量で含むアルゴン雰囲気下にて900℃で1時間加熱し、シリコン材料を得た。
<非水系二次電池の製造>
負極活物質としてシリコン材料45質量部、負極活物質として天然黒鉛40質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、結着剤としてポリアミドイミド10質量部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを混合し、スラリーを調製した。上記スラリーを、集電体としての厚さ約20μmの電解銅箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥して、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、銅箔と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを200℃で2時間減圧乾燥し、負極活物質層の厚さが30μmの負極を得た。
負極活物質としてシリコン材料45質量部、負極活物質として天然黒鉛40質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、結着剤としてポリアミドイミド10質量部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを混合し、スラリーを調製した。上記スラリーを、集電体としての厚さ約20μmの電解銅箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥して、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、銅箔と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを200℃で2時間減圧乾燥し、負極活物質層の厚さが30μmの負極を得た。
正極を作製するために、正極活物質としてのLiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)を、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2とPVDFとABとの質量比が94:3:3となるように混合し、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加してスラリーとした。このスラリーを、集電体としてのアルミニウム箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で20分間乾燥することで、NMPを揮発により除去して、正極活物質層を形成した。表面に正極活物質層を形成したアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを強固に密着接合させた。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状に切り取り、正極を得た。
電解液を調製するために、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を、体積比で、FEC/EC/EMC/DMC=15/15/30/40となるように混合して非水系溶媒を調製した。電解質及びシラン化合物を、非水系溶媒に溶解させて、電解液を調製した。電解質はLiPF6である。シラン化合物は、テトラエテニルシランである。電解液中のLiPF6の濃度は1mol/Lとし、シラン化合物の濃度は0.5質量%とした。
電池を作製するために、正極と負極との間に、セパレータとしてのポリプロピレン多孔質膜を挟み込んで電極体を作製した。この電極体を電解液とともにアルミニウムフィルムで封止した。封止の際には、2枚のアルミニウムフィルムをその周囲の一部を除いて熱溶着をすることにより袋状とし、その開口部から電極体、さらに電解液を入れて、真空引きしながら開口部を完全に気密に封止した。このとき、正極側および負極側の集電体の先端を、フィルムの端縁部から突出させ、外部端子に接続可能とした。以上により、ラミネートセルからなる電池E1を得た。
その後、電池E1について、3.9Vまで0.3Cで充電し60℃で20時間保存するというコンディショニング工程を行った後、以下の試験を行った。
<高温保存試験>
コンディショニング後の電池E1について高温保存試験を行った。高温保存試験では、電池E1について、電圧4.24Vとなるまで充電を行った。その後、電池E1を60℃恒温槽で保存し6、12、28日後にガス量を測定した。
コンディショニング後の電池E1について高温保存試験を行った。高温保存試験では、電池E1について、電圧4.24Vとなるまで充電を行った。その後、電池E1を60℃恒温槽で保存し6、12、28日後にガス量を測定した。
<ガス量測定>
高温保存試験前後に電池E1の体積をアルキメデス法により測定した。具体的には、任意の日数保存した後の電池E1の体積A(3Vまで放電したもの)から、保存前(3Vまで放電したもの)の電池E1の体積Bを差し引いて、その差分(A−B)である電池E1の体積増加量を求めた。電池E1の体積増加量は、高温保存試験中に電池内で発生したガス量に等しい。上記差分(A−B)をガス量とした。測定したガス量を図1に示した。
高温保存試験前後に電池E1の体積をアルキメデス法により測定した。具体的には、任意の日数保存した後の電池E1の体積A(3Vまで放電したもの)から、保存前(3Vまで放電したもの)の電池E1の体積Bを差し引いて、その差分(A−B)である電池E1の体積増加量を求めた。電池E1の体積増加量は、高温保存試験中に電池内で発生したガス量に等しい。上記差分(A−B)をガス量とした。測定したガス量を図1に示した。
<高温サイクル試験>
コンディショニング後の電池E1について、高温でのサイクル試験を行った。サイクル試験は60℃で行った。サイクル試験では、電池E1について、1Cの定電流で電圧4.24Vとなるまで充電する充電過程と、1Cの定電流で3Vまで放電を行う放電過程とを繰り返した。サイクル数は、200回、400回、600回、800回とした。
コンディショニング後の電池E1について、高温でのサイクル試験を行った。サイクル試験は60℃で行った。サイクル試験では、電池E1について、1Cの定電流で電圧4.24Vとなるまで充電する充電過程と、1Cの定電流で3Vまで放電を行う放電過程とを繰り返した。サイクル数は、200回、400回、600回、800回とした。
各サイクル数のサイクル試験毎に、上記<ガス量測定>と同様に、ガス量を測定した。測定結果を図2に示した。
(電池C1)
電池C1は、電解液にシラン化合物を含んでいない点を除いて、電池E1と同様である。電池C1において、電解液の非水系溶媒の成分比は、体積比で、FEC/EC/EMC/DMC=15/15/30/40とした。電池C1について、電池E1と同様にコンディショニング工程を行った。
電池C1は、電解液にシラン化合物を含んでいない点を除いて、電池E1と同様である。電池C1において、電解液の非水系溶媒の成分比は、体積比で、FEC/EC/EMC/DMC=15/15/30/40とした。電池C1について、電池E1と同様にコンディショニング工程を行った。
コンディショニング後の電池C1について、電池E1の<高温保存試験>及び<高温サイクル試験>と同様に、高温保存試験及び高温サイクル試験を行った。それぞれの試験において発生したガス量を測定し、測定結果を図1,図2に示した。
図1及び図2に示すように、シラン化合物を含む電解液を備えた電池E1は、シラン化合物を含んでいない電解液を備えた電池C1に比べて、高温保存試験時及び高温サイクル試験時に発生したガス量が格段に少なかった。高温保存試験の保存日数が長くなるに従って、試験時に発生したガス量について、シラン化合物を含む電解液を備えた電池と、シラン化合物を含んでいない電解液を備えた電池との間の差が大きくなった。また、高温サイクル試験のサイクル数についても、サイクル数が多くなるに従って、シラン化合物を含む電解液を備えた電池と、シラン化合物を含んでいない電解液を備えた電池との間のガス量の差が大きくなった。
<正極及び負極の表面分析>
コンディショニング後の電池E1、電池C1について、電圧3.0Vまで放電させた。放電後に、正極及び負極について表面分析を行った。正極及び負極の表面分析では、X線光電子分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy, XPS)を行った。前処理としては以下の処理を行った。先ず、各電池を解体して正極及び負極を取出し、正極及び負極を洗浄および乾燥して、分析対象となる正極及び負極を得た。洗浄は、DMC(ジメチルカーボネート)を用いて3回行った。また、セルの解体から分析対象としての正極及び負極を分析装置に搬送するまでの全ての工程を、Arガス雰囲気下で、正極及び負極を大気に触れさせることなく行った。以下の前処理を電池E1、C1について行い、得られた検体をXPS分析した。装置としては、アルバックファイ社 PH15000 VersaProbeIIを用いた。X線源は単色AlKα線(15kV、10mA)を用いた。XPSにより測定された電池E1、電池C1の正極及び負極の表面分析結果を図3、図4に示す。
コンディショニング後の電池E1、電池C1について、電圧3.0Vまで放電させた。放電後に、正極及び負極について表面分析を行った。正極及び負極の表面分析では、X線光電子分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy, XPS)を行った。前処理としては以下の処理を行った。先ず、各電池を解体して正極及び負極を取出し、正極及び負極を洗浄および乾燥して、分析対象となる正極及び負極を得た。洗浄は、DMC(ジメチルカーボネート)を用いて3回行った。また、セルの解体から分析対象としての正極及び負極を分析装置に搬送するまでの全ての工程を、Arガス雰囲気下で、正極及び負極を大気に触れさせることなく行った。以下の前処理を電池E1、C1について行い、得られた検体をXPS分析した。装置としては、アルバックファイ社 PH15000 VersaProbeIIを用いた。X線源は単色AlKα線(15kV、10mA)を用いた。XPSにより測定された電池E1、電池C1の正極及び負極の表面分析結果を図3、図4に示す。
図3に示すように、電池E1の正極のXPSスペクトルでは、102eV、101eVの結合エネルギー領域においてピークが観察された。一方、電池C1の正極では、102eV、101eVの結合エネルギー領域にはピークは観察されなかった。101eVの結合エネルギーをもつ結合基はSi−C、Si−Oに由来すると想定される。102eVの結合エネルギーをもつ結合基はSi−Oに由来すると想定される。これらの結合基は、シラン化合物由来の基であるといえる。シラン化合物由来のピークが、電池E1の正極では現れたが、電池C1の正極では現れなかった。電池E1の正極の正極活物質表面には、シラン化合物由来の成分を含む皮膜が形成されているといえる。
また、図4に示すように、電池E1の負極のXPSスペクトルでは、103eVの結合エネルギー領域においてピークが観察された。一方、電池C1の負極では、103eVの結合エネルギー領域にはピークが観察されなかった。103eVの結合エネルギーをもつ結合基は、Si−Oに由来すると想定される。この結合基は、シラン化合物由来の基であるといえる。電池E1の負極の負極活物質表面には、シラン化合物由来の成分を含む皮膜が形成されているといえる。
以上より、正極活物質及び負極活物質の双方の表面に、シラン化合物由来の成分を含む安定な皮膜が形成されていることがわかった。この皮膜により、電解液と正極活物質及び負極活物質との接触が抑えられ、電解液中のFECの分解が抑制され、電解液からのガス発生が抑えられると考えられる。
(電池E2)
電池E2は、下記の正極及び電解液を用いた点を除いて、電池E1と同様である。
電池E2は、下記の正極及び電解液を用いた点を除いて、電池E1と同様である。
電池E2の正極は以下のようにして作製された。まず、正極活物質としてLiNi0.5Co0.3Mn0.2O2及び炭素被覆されたLiFePO4を準備した。LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2及び炭素被覆LiFePO4の質量比は、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2:炭素被覆LiFePO4=69:25とした。結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)を、正極活物質とPVDFとABとの質量比が94:3:3となるように混合し、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加してペーストとした。このペーストを、集電体としてのアルミニウム箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で20分間乾燥することでNMPを揮発により除去して、正極活物質層を形成した。表面に正極活物質層を形成したアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを強固に密着接合させた。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状に切り取り、正極を得た。
電池E2の電解液を調製するにあたって、非水系溶媒の配合比(体積比)をFEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40とした。電解液中のシラン化合物の濃度は0.5質量%とした。その他の点は、電池E1の電解液の調製方法と同様に、電池E2の電解液を調製した。
上記の電池E2の正極及び電解液を用いて、電池E1の作製方法と同様にして電池E2を作製した。
その後、電池E2について、電池E1のコンディショニング工程と同様に、3.9Vまで0.3Cで充電し60℃で20時間保存するというコンディショニング工程を行った後、以下の試験を行った。
(電池C2)
電池C2は、電解液にシラン化合物を含んでいない点を除いて、電池E2と同様である。電池C2の電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)は、電池E2と同様に、FEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40とした。電池C2についても、電池E2と同様のコンディショニングを行った。
電池C2は、電解液にシラン化合物を含んでいない点を除いて、電池E2と同様である。電池C2の電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)は、電池E2と同様に、FEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40とした。電池C2についても、電池E2と同様のコンディショニングを行った。
(電池C3)
電池C3は、電解液の非水系溶媒にFECを含んでいない点を除いて、電池C2と同様である。電池C3の電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)はEC/EMC/DMC=30/30/40とした。電池C3についても、電池C2と同様のコンディショニングを行った。
電池C3は、電解液の非水系溶媒にFECを含んでいない点を除いて、電池C2と同様である。電池C3の電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)はEC/EMC/DMC=30/30/40とした。電池C3についても、電池C2と同様のコンディショニングを行った。
<電池C2,C3の充電後の正極活物質層の発熱量測定>
コンディショニング後の電池C2、C3について、電圧4.24Vとなるまで充電した。充電後の各電池をグローブボックス内で解体し、正極を取り出した。取り出した各正極を自然乾燥させ、その後正極活物質層をそぎ落とした。そぎ落とした正極活物質層を5mg量りとり、正極活物質層に2.6μLの電解液を加えた。加えられた電解液は、各電池で用いたものとそれぞれ同じものである。即ち、電池C2の正極活物質層に加えられた電解液は、電池C2で用いたものと同じものであり、電池C3の正極活物質層に加えられた電解液は、電池C3で用いたものと同じものである。この正極活物質層および電解液をスラリー状に混合したものを試料として用い、当該試料の発熱量をDSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)により測定した。具体的には、容器に入れた試料を5℃/分のレートで室温〜350℃まで加熱した。このときの温度変化に伴う試料の発熱量変化を観察した。発熱量の測定結果を図5に示す。
コンディショニング後の電池C2、C3について、電圧4.24Vとなるまで充電した。充電後の各電池をグローブボックス内で解体し、正極を取り出した。取り出した各正極を自然乾燥させ、その後正極活物質層をそぎ落とした。そぎ落とした正極活物質層を5mg量りとり、正極活物質層に2.6μLの電解液を加えた。加えられた電解液は、各電池で用いたものとそれぞれ同じものである。即ち、電池C2の正極活物質層に加えられた電解液は、電池C2で用いたものと同じものであり、電池C3の正極活物質層に加えられた電解液は、電池C3で用いたものと同じものである。この正極活物質層および電解液をスラリー状に混合したものを試料として用い、当該試料の発熱量をDSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)により測定した。具体的には、容器に入れた試料を5℃/分のレートで室温〜350℃まで加熱した。このときの温度変化に伴う試料の発熱量変化を観察した。発熱量の測定結果を図5に示す。
図5に示すように、電池C2の正極活物質層の発熱開始温度は、209.5℃であり、電池C3の正極活物質層の発熱開始温度は248.5℃であった。電池C2の正極活物質層の発熱量は、電池C3の正極活物質層の発熱量よりも大きかった。このことから、FECを有する電解液を備えた電池は、FECを含まない電解液を備えた電池に比べて発熱開始温度が低くなり、また発熱量も大きくなり、発熱しやすいことがわかった。
<電池E2、C2の充電後の正極活物質層の発熱量測定>
コンディショニング後の電池E2,C2についても、<電池C2,C3の充電後の正極活物質層の発熱量測定>と同様の方法により、充電後の正極活物質層の発熱量測定を行った。その結果を図6に示した。また、電池E2,C2の正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量を求めた。図7には、電池C2の正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量の求め方について示した。図7に示すように、DSC曲線において、第1発熱ピーク開始時の発熱開始点Aと、第1発熱ピークトップBと、第1発熱ピークトップから垂下した線と横軸とが交差する点Cで囲まれた三角形の面積を求め、これを、正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量とした。求めた積算発熱量を表1に示した。
コンディショニング後の電池E2,C2についても、<電池C2,C3の充電後の正極活物質層の発熱量測定>と同様の方法により、充電後の正極活物質層の発熱量測定を行った。その結果を図6に示した。また、電池E2,C2の正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量を求めた。図7には、電池C2の正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量の求め方について示した。図7に示すように、DSC曲線において、第1発熱ピーク開始時の発熱開始点Aと、第1発熱ピークトップBと、第1発熱ピークトップから垂下した線と横軸とが交差する点Cで囲まれた三角形の面積を求め、これを、正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量とした。求めた積算発熱量を表1に示した。
上記の正極活物質層の発熱量測定によれば、電池E2の場合には、電池C2の場合よりも発熱開始温度が8.7℃高くなった。電池C2の正極活物質層についての発熱開始から第1発熱ピークトップまでの積算発熱量を100%としたときに、電池E2の当該積算発熱量は33%に抑えられた。
このことから、フッ素含有環状カーボネートを有する電解液に一般式(1)で表されたシラン化合物を添加すると、発熱しにくい電池が得られることがわかった。
(電池C4)
電池C4は、電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)をFEC/EC/EMC/DMC=4/26/30/40とした点を除いて、電池C2と同様である。電池C4について電池C2と同様のコンディショニングを行った。
電池C4は、電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)をFEC/EC/EMC/DMC=4/26/30/40とした点を除いて、電池C2と同様である。電池C4について電池C2と同様のコンディショニングを行った。
(電池C5)
電池C5は、電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)をFEC/EMC/DMC=30/30/40とした点を除いて、電池C4と同様である。電池C5について電池C4と同様のコンディショニングを行った。
電池C5は、電解液の非水系溶媒の配合比(体積比)をFEC/EMC/DMC=30/30/40とした点を除いて、電池C4と同様である。電池C5について電池C4と同様のコンディショニングを行った。
<常温サイクル試験>
コンディショニング後の電池C4,C5について、常温(25℃)でサイクル試験を行った。サイクル試験では、各電池について、1Cの定電流で電圧4.24Vとなるまで充電する充電過程と、1Cの定電流で3Vまで放電を行う放電過程とを100回繰り返した。サイクル試験前の各電池の放電容量と、100回サイクル試験後の各電池の放電容量を求めた。各電池について、100×(100回サイクル試験後の放電容量)/(試験前の放電容量)を計算し、得られた値を容量維持率(%)とした。
コンディショニング後の電池C4,C5について、常温(25℃)でサイクル試験を行った。サイクル試験では、各電池について、1Cの定電流で電圧4.24Vとなるまで充電する充電過程と、1Cの定電流で3Vまで放電を行う放電過程とを100回繰り返した。サイクル試験前の各電池の放電容量と、100回サイクル試験後の各電池の放電容量を求めた。各電池について、100×(100回サイクル試験後の放電容量)/(試験前の放電容量)を計算し、得られた値を容量維持率(%)とした。
電池C5の容量維持率は94%であり、電池C4の容量維持率は66%であった。このことから、電解液中のフッ素含有環状カーボネートの含有量が30体積%の場合は、4体積%の場合よりも、サイクル特性が優れることがわかった。
また、電池C4,C5についてサイクル試験(25℃、400回)を行ったときの負極の質量増加率を測定した。電池C5の負極は、電池C4の負極に比べて、質量増加率が少なかった。この結果から、電池C5の方が電解液の分解が少ないことが示唆される。
また、サイクル試験(25℃、400回)前後の電池C4,C5について、水銀圧入法により負極の細孔径分布を測定した。電池C4,C5について、サイクル試験を行うと、いずれも負極の細孔直径が小さくなる方向に細孔径分布が変化したが、電池C5の負極は、電池C4の負極よりも、サイクル試験前の細孔径分布に対するサイクル試験後の細孔径分布の変化が少なかった。
上記の結果から、フッ素含有環状カーボネートの含有量が30体積%の電解液を用いた電池は、フッ素含有環状カーボネートの含有量が4体積%の電解液を用いた電池よりも、電解液の分解が少なく、負極の細孔状態の変化も少なく、その結果サイクル特性に優れることがわかった。
(電池E3)
以下のとおり、電池E3を作製した。負極は、電池E1の負極と同様の方法で作製した。
以下のとおり、電池E3を作製した。負極は、電池E1の負極と同様の方法で作製した。
正極を作製するために、正極活物質としてのLiNi0.5Co0.3Mn0.2O2及び炭素被覆されたLiFePO4、結着剤としてのPVDF及び導電助剤としてのABを、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2と炭素被覆LiFePO4とPVDFとABとの質量比が69:25:3:3となるように混合し、溶剤としてのNMPを添加してスラリーとした。このスラリーを、集電体としてのアルミニウム箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で20分間乾燥することで、NMPを揮発により除去して、正極活物質層を形成した。表面に正極活物質層を形成したアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを強固に密着接合させた。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状に切り取り、正極を得た。
電解液を調製するために、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=15/15/30/40となるように混合して非水系溶媒を調製した。電解質及びシラン化合物を、非水系溶媒に溶解させて、電解液を調製した。電解質はLiPF6である。シラン化合物は、テトラエテニルシランである。電解液中のLiPF6の濃度は1mol/Lとし、シラン化合物の濃度は0.05質量%とした。
以下、電池E1と同様の方法で、電池E3を作製した。電池E3に対して、3.9Vまで0.3Cで充電し60℃で20時間保存するというコンディショニング工程を行った後、以下の試験を行った。なお、コンディショニング工程については、以後のすべての電池に対して行い、その後、各電池を各試験に供している。
(電池E4)
電解液におけるシラン化合物の濃度を0.1質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E4を作製した。
電解液におけるシラン化合物の濃度を0.1質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E4を作製した。
(電池E5)
電解液におけるシラン化合物の濃度を0.25質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E5を作製した。
電解液におけるシラン化合物の濃度を0.25質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E5を作製した。
(電池E6)
電解液におけるシラン化合物の濃度を0.5質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E6を作製した。
電解液におけるシラン化合物の濃度を0.5質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E6を作製した。
(電池E7)
電解液におけるシラン化合物の濃度を1質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E7を作製した。
電解液におけるシラン化合物の濃度を1質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E7を作製した。
(電池E8)
電解液におけるシラン化合物の濃度を2質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E8を作製した。
電解液におけるシラン化合物の濃度を2質量%とした以外は、電池E3と同様の方法で、電池E8を作製した。
(電池C6)
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E3と同様の方法で、電池C6を作製した。
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E3と同様の方法で、電池C6を作製した。
<抵抗測定>
電池E4〜電池E8及び電池C6を電圧4.24Vとなるまで充電し、その後、1Cの電流で10秒間の放電を行った。放電前後の電圧変化量及び電流値から、オームの法則により、放電時の直流抵抗を算出した。直流抵抗の結果とともに、電池C6の直流抵抗を100とした場合における各電池の直流抵抗の換算値を表2に示す。
電池E4〜電池E8及び電池C6を電圧4.24Vとなるまで充電し、その後、1Cの電流で10秒間の放電を行った。放電前後の電圧変化量及び電流値から、オームの法則により、放電時の直流抵抗を算出した。直流抵抗の結果とともに、電池C6の直流抵抗を100とした場合における各電池の直流抵抗の換算値を表2に示す。
表2から、電解液におけるシラン化合物の濃度が2質量%以上になれば、電池の抵抗が著しく上昇するといえる。抵抗の観点からは、電解液におけるシラン化合物の濃度は1質量%以下が好ましいといえる。
<高温サイクル試験>
電池E3〜電池E7及び電池C6に対して、60℃の条件下、1Cで電圧4.24Vまで充電し、1Cで電圧2.8Vまで放電することを1サイクルとする充放電を、1000サイクル行った。サイクル数200、600、1000の時点で、上記<ガス量測定>と同様の方法で、各電池のガス量を測定した。測定結果を表3及び図8に示す。
電池E3〜電池E7及び電池C6に対して、60℃の条件下、1Cで電圧4.24Vまで充電し、1Cで電圧2.8Vまで放電することを1サイクルとする充放電を、1000サイクル行った。サイクル数200、600、1000の時点で、上記<ガス量測定>と同様の方法で、各電池のガス量を測定した。測定結果を表3及び図8に示す。
表3及び図8から、シラン化合物の濃度の増加に伴い、ガス量が減少することがわかる。シラン化合物がガス発生抑制剤として機能していることが裏付けられた。
<高温保存試験>
電池E6、電池E7及び電池C6に対して、電圧4.24Vまで充電を行った。その後、各電池を60℃恒温槽で保存し、6、13及び27日後に上記<ガス量測定>と同様の方法で、各電池のガス量を測定した。測定結果を表4及び図9に示す。
電池E6、電池E7及び電池C6に対して、電圧4.24Vまで充電を行った。その後、各電池を60℃恒温槽で保存し、6、13及び27日後に上記<ガス量測定>と同様の方法で、各電池のガス量を測定した。測定結果を表4及び図9に示す。
表4及び図9から、高温保存条件下においても、シラン化合物がガス発生抑制剤として好適に機能していることがわかる。
(電池E9)
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=4/26/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E6と同様の方法で、電池E9を作製した。
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=4/26/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E6と同様の方法で、電池E9を作製した。
(電池E10)
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=10/20/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E6と同様の方法で、電池E10を作製した。
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=10/20/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E6と同様の方法で、電池E10を作製した。
(電池E11)
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E6と同様の方法で、電池E11を作製した。
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E6と同様の方法で、電池E11を作製した。
(電池C7)
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E9と同様の方法で、電池C7を作製した。
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E9と同様の方法で、電池C7を作製した。
(電池C8)
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E10と同様の方法で、電池C8を作製した。
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E10と同様の方法で、電池C8を作製した。
(電池C9)
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E11と同様の方法で、電池C9を作製した。
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E11と同様の方法で、電池C9を作製した。
<高温保存試験>
電池E6、電池E9〜E11及び電池C6〜C9に対して、電圧4.24Vまで充電を行った。その後、各電池を60℃恒温槽で保存し、10日後に上記<ガス量測定>と同様の方法で、各電池のガス量を測定した。測定結果を表5に示す。
電池E6、電池E9〜E11及び電池C6〜C9に対して、電圧4.24Vまで充電を行った。その後、各電池を60℃恒温槽で保存し、10日後に上記<ガス量測定>と同様の方法で、各電池のガス量を測定した。測定結果を表5に示す。
表5から、FECの割合が変化しても、高温保存条件下において、シラン化合物がガス発生抑制剤として好適に機能していることがわかる。
(電池E12)
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=10/20/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E7と同様の方法で、電池E12を作製した。
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=10/20/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E7と同様の方法で、電池E12を作製した。
(電池E13)
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E7と同様の方法で、電池E13を作製した。
非水系溶媒として、FEC、EC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EC/EMC/DMC=20/10/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E7と同様の方法で、電池E13を作製した。
(電池E14)
非水系溶媒として、FEC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EMC/DMC=30/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E7と同様の方法で、電池E14を作製した。
非水系溶媒として、FEC、EMC及びDMCを体積比でFEC/EMC/DMC=30/30/40となるように混合したものを用いた以外は、電池E7と同様の方法で、電池E14を作製した。
(電池C10)
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E14と同様の方法で、電池C10を作製した。
電解液にシラン化合物を含んでいない以外は、電池E14と同様の方法で、電池C10を作製した。
<高温サイクル試験>
電池E7、E12〜E14及び電池C6、C8〜C10に対して、60℃の条件下、1Cで電圧4.24Vまで充電し、1Cで電圧2.8Vまで放電することを1サイクルとする充放電を、600サイクル行った。上記<ガス量測定>と同様の方法で、600サイクル後の各電池のガス量を測定した。測定結果を表6に示す。
電池E7、E12〜E14及び電池C6、C8〜C10に対して、60℃の条件下、1Cで電圧4.24Vまで充電し、1Cで電圧2.8Vまで放電することを1サイクルとする充放電を、600サイクル行った。上記<ガス量測定>と同様の方法で、600サイクル後の各電池のガス量を測定した。測定結果を表6に示す。
表6から、FECの割合が変化しても、高温での充放電条件下において、シラン化合物がガス発生抑制剤として好適に機能していることがわかる。
Claims (14)
- 正極活物質を含む正極と、珪素を有する負極活物質を含む負極と、非水系電解液とを具備する非水系二次電池であって、
前記非水系電解液は、下記の一般式(1)で表されるシラン化合物、及びフッ素含有環状カーボネートを含む非水系二次電池。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。) - 前記一般式(1)において、4つのRは、それぞれ独立に、炭素間二重結合を有する炭化水素基である請求項1に記載の非水系二次電池。
- 前記一般式(1)において、Rの1以上は、ビニル基である請求項1又は2に記載の非水系二次電池。
- 前記非水系電解液に含まれる非水系溶媒を100体積%としたときに、前記フッ素含有環状カーボネートの含有量は、10体積%以上35体積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の非水系二次電池。
- 前記非水系電解液を100質量%としたときに、前記シラン化合物の含有量は、0.05質量%以上1質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池。
- 前記負極活物質は、複数の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料である請求項1〜5のいずれかに記載の非水系二次電池。
- 前記正極活物質は、リチウム金属複合酸化物である請求項1〜6のいずれかに記載の非水系二次電池。
- 前記リチウム金属複合酸化物は、以下の1)〜4)の化合物から選ばれる一種以上からなる請求項7に記載の非水系二次電池。
1)一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも一種の元素、1.7≦f≦2.1)、及びLi2MnO3から選ばれる層状化合物、
2)一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属元素、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素、0<x≦1.2、0≦y≦1)で表されるスピネル型化合物、
3)LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4、(式中のMはCo、Ni、Mn、Feから選ばれる少なくとも一種の元素)で表されるポリアニオン化合物、
4)LiAPO4F(Aは遷移金属元素)で表されるタボライト化合物、又はLiABO3(Aは遷移金属元素)で表されるボレート化合物。 - 前記正極は、前記正極活物質の表面に形成され且つX線光電子分光装置(XPS)を用いて測定されたX線光電子分光スペクトルにおいて101eV及び102eVの結合エネルギー領域にそれぞれピークが発現する皮膜を有する請求項1〜8のいずれかに記載の非水系二次電池。
- 前記負極は、前記負極活物質の表面に形成され且つX線光電子分光装置(XPS)を用いて測定されたX線光電子分光スペクトルにおいて103eVの結合エネルギー領域にピークが発現する皮膜を有する請求項1〜9のいずれかに記載の非水系二次電池。
- 珪素を有する負極活物質を含む負極を備えた非水系二次電池用のガス発生抑制剤であって、
下記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含むガス発生抑制剤。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。) - 珪素を有する負極活物質を含む負極を備えた非水系二次電池用の非水系電解液であって、
下記の一般式(1)で表されるシラン化合物及びフッ素含有環状カーボネートを含む非水系電解液。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。) - リチウム金属複合酸化物を有する正極活物質を含む正極を備えた非水系二次電池用の発熱抑制剤であって、
下記の一般式(1)で表されるシラン化合物を含む発熱抑制剤。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。) - リチウム金属複合酸化物を有する正極活物質を含む正極を備えた非水系二次電池用の非水系電解液であって、
下記の一般式(1)で表されるシラン化合物及びフッ素含有環状カーボネートを含む非水系電解液。
SiR4 (1)
(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭化水素基であって、Rの1以上は、炭素間二重結合を有する。)
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