[電子写真感光体の構成]
本実施の形態に係る電子写真感光体(感光体)は、導電性支持体と、当該導電性支持体上に配置される中間層と、当該中間層上に配置される感光層と、当該感光層上に配置される保護層と、を有する。当該感光体は、上記保護層以外は、公知の感光体と同様に構成されうる。
上記導電性支持体は、上記感光層を支持することができ、かつ導電性を有する部材である。上記導電性支持体の例には、金属製のドラムまたはシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の膜を有するプラスチックフィルム、導電性物質またはそれとバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材や、プラスチックフィルム、紙などが含まれる。上記金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が含まれる。上記導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウムおよび酸化スズが含まれる。
上記中間層は、上記導電性支持体と上記感光層との間に配置される、バリア機能および接着機能を有する層である。上記中間層は、例えば、バインダー樹脂と、金属酸化物粒子とを含む。上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、例えば、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。上記金属酸化物粒子の含有量は、例えば、上記中間層中のバインダー樹脂100質量部に対して20〜400質量部であることが好ましく、50〜350質量部であることがより好ましい。
上記中間層の厚さは、0.1〜15μmであることが好ましく、0.3〜10μmであることがより好ましい。
上記感光層は、後述する露光により所期の画像に対応する静電潜像を上記感光体の表面に形成するための層である。当該感光層は、単層で構成されていてもよいし、積層された複数の層で構成されていてもよい。上記感光層の例には、電荷輸送化合物と電荷発生化合物とを含む単層物、および、電荷発生化合物を含有する電荷発生層と、電荷輸送化合物を含有する電荷輸送層との積層物、が含まれる。本実施の形態に係る感光体の感光層は、電荷発生層および電荷輸送層の積層物である。
上記感光層が上記単層物である場合、上記感光層の厚さは、例えば、10〜50μmであり、より好ましくは20〜40μmである。上記感光層が上記積層物である場合、上記電荷発生層の厚さは、例えば、0.01〜5μmであり、より好ましくは0.05〜3μmである。また、上記電荷輸送層の厚さは、例えば、5〜40μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
上記保護層は、上記感光層を保護するための層である。上記保護層は、上記感光層の上に配置されるとともに上記感光体の表面を構成する。上記保護層は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、ラジカル重合性官能基を有する導電性粒子と、を含むラジカル重合性組成物のラジカル反応による重合硬化物で構成されている。すなわち、上記保護層は、上記ラジカル重合性モノマーのラジカル重合による一体的な重合体で構成され、パーフルオロポリエーテル化合物および導電性粒子を含有する。当該パーフルオロポリエーテル化合物および導電性粒子は、いずれも、上記重合体とラジカル重合による共有結合によって結合している。
上記保護層は、前述したように、上記ラジカル重合性組成物の重合硬化物であり、当該ラジカル重合性組成物は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、ラジカル重合性官能基を有する導電性粒子と、を含む。これら含有成分は、いずれも一種であってもよいし、それ以上であってもよい。以下、上記ラジカル重合性組成物に含まれる各成分について説明する。
(ラジカル重合性モノマー)
上記ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を有し、紫外線や可視光線、電子線、遠赤外線などの活性光線を照射されることによりラジカル重合(硬化)して、一般に上記保護層のバインダー樹脂として用いられる樹脂となる化合物である。ラジカル重合性モノマーの例には、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマーおよびN−ビニルピロリドン系モノマーが含まれ、上記バインダー樹脂の例には、ポリスチレンおよびポリアクリレートが含まれる。
上記ラジカル重合性官能基は、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基である。上記ラジカル重合性官能基は、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることから、(メタ)アクリロイル基であることが特に好ましい。なお、本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、ラジカル重合性官能基であり、アクリロイル基(CH2=CHCO−)およびメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO−)の一方または両方を意味する。
上記ラジカル重合性モノマーの例には、具体的には、下記式M1〜M11で表される化合物が含まれる。下記式中、Rはアクリロイル基を表し、R’はメタクリロイル基を表す。
上記ラジカル重合性モノマー化合物は、公知の化合物であってもよく、市販品であってもよい。上記ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を3つ以上有することが、架橋密度の高い高硬度の保護層を形成する観点から好ましい。
(ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物)
上記ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(以下、「ラジカル重合性PFPE」ともいう)におけるパーフルオロポリエーテルの部分(以下、「PFPE」ともいう)は、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位として有するオリゴマーまたはポリマーである。
パーフルオロアルキレンエーテルの繰り返し単位の構造の例には、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、および、パーフルオロプロピレンエーテルが含まれる。パーフルオロポリエーテルは、下記式(a)で示される繰り返し構造単位1、または、下記式(b)で示される繰り返し構造単位2を有することが好ましい。
上記PFPEが当該繰り返し構造単位1または当該繰り返し構造単位2を有する場合、当該繰り返し構造単位1の繰り返し数mおよび当該繰り返し構造単位2の繰り返し数nは、それぞれ0以上の整数であり、かつ、m+n≧1である。
また、当該繰り返し構造単位1及び当該繰り返し構造単位2の両方を有する場合、該繰り返し構造単位1と該繰り返し構造単位2は、ブロック共重合体構造を形成していてもよいし、ランダム共重合体構造を形成していてもよい。
上記PFPEの重量平均分子量Mwは、100以上8,000以下であることが好ましく、500以上5,000以下であることがより好ましい。
上記ラジカル重合性PFPEが有するラジカル重合性官能基の数は、1以上であり、4つ以上であることが好ましい。ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性官能基を2つ以上有する場合には、ラジカル重合性官能基のPFPEにおける位置は、片末端でも両末端でもよく、2つ以上のラジカル重合性官能基が片末端に結合していてもよいし、両末端に結合していてもよい。
中でも、ラジカル重合性官能基を4つ以上有するラジカル重合性PFPEは、上記ラジカル重合性モノマーおよび後述のラジカル重合性導電性粒子との反応点をより多く持つ。上記ラジカル重合性PFPEが、ラジカル重合性官能基を4つ以上有することは、上記感光体の耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性を高める観点から特に好ましい。
上記ラジカル重合性官能基は、ラジカル重合性モノマーのそれと同じく、炭素−炭素二重結合を有しラジカル重合可能な基である。上記ラジカル重合性PFPEのラジカル重合性官能基は、上記ラジカル重合性モノマーのそれと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、上記ラジカル重合性PFPEが有する複数のラジカル重合性官能基もまた、互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。上記ラジカル重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが特に好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFluorolink AD1700、MD500、MD700、5101X、5113X、Fomblin MT70(「FLUOROLINK」および「FOMBLIN」は、いずれも同社の登録商標)、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC、および、信越化学工業株式会社製のKY−1203、が含まれる。
また、ラジカル重合性PFPEは、末端に水酸基やカルボキシル基を有するPFPEを原料として、これらの置換基の置換またはこれらの置換基からの誘導によって適宜に合成することも可能であり、そのような合成品であってもよい。
末端に水酸基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinD2、Fluorolink D4000、FluorolinkE10H、5158X、5147X、Fomblin Ztetraol、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SA、が含まれる。末端にカルボキシル基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinZDIZAC4000、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SH、が含まれる。
(メタ)アクリロイル基を有するPFPEの例には、具体的には、下記式P−1〜P−9で表される化合物が含まれる。下記式中、Xはアクリロイル基(A)またはメタクリロイル基(M)を表す。また、化合物P−2中の「p」は、独立して1〜10を表す。
なお、Xがアクリロイル基である場合はAを、Xがメタクリロイル基である場合はMを、化合物の記号に添えることによって、下記化合物がより具体的に示される。たとえば、Xがアクリロイル基である下記P−1の化合物は「P−1A」、メタクリロイル基である下記P−1の化合物は「P−1M」と表される。
以下に、ラジカル重合性PFPEの合成法の具体例を示す。
(合成例1 P−2Mの合成)
下記式P−S1で表される、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fluorolink E10H (ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:平均分子量1700)17質量部、トリエチルアミン3質量部、ジイソプロピルエーテル10質量部、および、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.006質量部、を混合し、空気気流下にて撹拌を開始する。混合液の温度を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド3.1質量部を2時間かけて滴下する。滴下終了後、得られた混合液を10℃に維持ながら1時間撹拌する。次いで、当該反応液を30℃まで昇温し、30℃で1時間撹拌し、さらに50℃まで昇温し、50℃で10時間撹拌することにより反応を行う。次いで、得られた反応液にジイソプロピルエーテル72質量部を追加し、ジイソプロピルエーテル相の水洗を3回行う。次いで、ジイソプロピルエーテル相を硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEであるP−2Mが得られる(収量17.1質量部)。
(合成例2 P−3Mの合成)
(1)中間体(I)の合成
下記式P−S2で表される、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fomblin ZDIAC4000(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:平均分子量3700)18.5質量部、塩化チオニル20質量部、および、N,N−ジメチルホルムアミド2滴、を混合し、4時間加熱還流する。得られた反応液から過剰の塩化チオニルを留去し、中間体(I)18.6質量部を得る。
(2)P−3Mの合成
グリセリンジメタクリレート2.3質量部、ピリジン0.8質量部、および、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.006質量部、をジクロロエタン50質量部に溶解し、得られた溶液に中間体(I)18.6質量部を添加する。得られた混合液をそのまま室温で一晩撹拌し、次いで水を添加してジクロロエタン相を分離する。そしてジクロロエタン相を水洗し、溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEであるP−3Mを得る(収量 20.2質量部)。
(合成例3 P−6Aの合成)
下記式P−S3で表される、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fomblin Z−tet−raol (ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)20質量部、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.01質量部、ウレタン化触媒ジブチルスズジラウレート0.01質量部、および、メチルエチルケトン20質量部、を混合し、空気気流下で撹拌し、混合液を80℃に加熱する。次いで、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート5.7質量部を、発熱に注意しながら分割して上記混合液に添加する。次いで、当該混合液を80℃で10時間撹拌することにより反応を行う。IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm−1付近の吸収ピークの消失を確認した後に上記混合液から溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEであるP−6Aを得る(収量 25.6質量部)。
上記化合物P−1〜P−9のうちのその他の例示化合物についても、下記のいずれかの方法により同様に合成することができる。
1)末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルに対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸によりエステル化反応させる方法。
2)末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルに対して、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法。
3)末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を常法により酸ハロゲン化物とし、この酸ハロゲン化物に対して、(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する化合物をエステル化反応させる方法。
上記保護層における上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、少なすぎると感光体のクリーニング性が不十分となり、多すぎると感光体の膜強度、耐摩耗性および耐傷性が不十分となることがある。感光体のクリーニング性を十分に発現させる観点から、上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、保護層100体積部に対して、1体積部以上であることが好ましい。また、上記耐摩耗性および耐傷性を十分に発現させる観点から、上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、保護層100体積部に対して、10体積部以下であることが好ましい。
(ラジカル重合性基を有する導電性粒子)
上記ラジカル重合性基を有する導電性粒子(以下、「ラジカル重合性導電性粒子」ともいう)は、ラジカル重合性官能基を含む成分を表面に担持した導電性粒子である。導電性粒子の表面へのラジカル重合性官能基を含む成分の担持は、物理的な担持であってもよいし、化学的な結合によってもよい。当該ラジカル重合性官能基は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
上記ラジカル重合性導電性粒子は、例えば、導電性粒子と、その表面に化学結合している表面処理剤残基と、当該表面処理剤残基に含まれる上記ラジカル重合性官能基とを有し、上記保護層中では、導電性粒子が、その表面に有する上記表面処理剤残基を介して、保護層を構成している一体的な重合体と化学結合した状態で存在する。なお、表面処理剤残基とは、例えば、導電性粒子の表面に化学結合している分子構造であって表面処理剤由来の部分である。
上記導電性粒子の体積抵抗率は、例えば、101〜108Ω・cmであることが好ましい。上記導電性粒子の材料の例には、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび酸化インジウムスズが含まれる。上記導電性粒子は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
上記導電性粒子は、例えば、絶縁性粒子(コア)と、当該絶縁性粒子の表面に担持され、導電性金属酸化物で構成されている被担持体(シェル)とで構成された、コア−シェル構造を有する複合粒子であってもよい。上記導電性粒子がコア−シェル構造を有する複合粒子であることは、上記導電性粒子が単一の導電性粒子である場合と比較して、上記導電性粒子への電荷トラップに起因する転写メモリの発生を抑制しうる観点から好ましい。また、上記導電性粒子がコア−シェル構造を有する複合粒子であることは、被担持体(シェル)による高い導電性と、絶縁性粒子(コア)による高い透明性とをいずれも両立できる観点から好ましい。
上記絶縁性粒子を構成する導電性金属酸化物の体積抵抗率は、例えば、1010〜101d6Ω・cmであることが好ましい。上記絶縁性粒子の材料の例には、硫酸バリウム、アルミナおよびシリカが含まれる。保護層の透明性を確保する観点からは、上記絶縁性粒子の材料は、硫酸バリウムであることが好ましい。上記絶縁性粒子は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
上記被担持体を構成する導電性金属酸化物の体積抵抗率は、例えば、101〜108Ω・cmであることが好ましい。上記被担持体を構成する導電性金属酸化物の例には、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび酸化インジウムスズが含まれる。上記被担持体は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
上記保護層における上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径、含有量および数密度は、上記導電性粒子の数平均一次粒径、含有量および数密度とそれぞれ実質的に等しい。このため、上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径、含有量および数密度は、上記導電性粒子の数平均一次粒径、含有量および数密度を測定することにより、それぞれ決定されうる。
上記ラジカル重合性導電性粒子(上記導電性粒子)の数平均一次粒径は、80〜200nmである。上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径が80nm未満である場合、十分な耐摩耗性が得られないおそれがある。上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径が200nm超である場合、上記保護層の形成時に上記導電性粒子を溶剤に分散させるときに、分散液中で上記ラジカル重合性導電性粒子の沈降が生じやすくなり、上記感光体の製造が困難となるおそれがある。たとえば、上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径は、90〜150nmであることが好ましく、100〜130nmであることがより好ましい。上記ラジカル重合性導電性粒子の粒度分布は、本実施形態の効果が得られる範囲内で適宜調整されうる。上記ラジカル重合性導電性粒子の標準偏差σは、例えば、10〜30nmである。
上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径は、例えば、以下のようにして決定されうる。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込み、得られた写真画像から、凝集粒子を除く300個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム「ルーゼックス AP」(株式会社ニレコ製、「LUZEX」は同社の登録商標、ソフトウエアVer.1.32)を使用して2値化処理して当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出し、その平均値を算出して数平均一次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
また、上記ラジカル重合性導電性粒子の数平均一次粒径は、上記保護層の膜強度の観点から、上記ラジカル重合性導電性粒子や電荷輸送化合物、ラジカル捕捉剤などの上記保護層に含まれる成分およびその含有量に応じて適宜調整されうる。
上記ラジカル重合性官能基を含む成分の導電性粒子の表面への担持は、例えば、導電性粒子の公知の表面処理剤による公知の表面処理方法によって行うことが可能である。
上記表面処理剤は、ラジカル重合性官能基および表面処理官能基を有する。上記表面処理剤は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。当該表面処理官能基は、導電性粒子の表面に存在する水酸基などの極性基への反応性を有する基である。上記ラジカル重合性官能基は、ラジカル重合性モノマーまたはラジカル重合性PFPEのそれと同じく、炭素−炭素二重結合を有しラジカル重合可能な基であり、その例には、ビニル基および(メタ)アクリロイル基が含まれる。
上記表面処理剤は、上記ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、その例には、下記式S−1〜S−31で表される化合物が含まれる。
S−1:CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2
S−2:CH2=CHSi(OCH3)3
S−3:CH2=CHSiCl3
S−4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S−6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S−7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S−8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S−10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S−12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S−14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S−15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S−16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S−18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S−20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S−21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S−22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S−23:CH2=CHSi(OCH3)3
S−24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S−25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S−26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S−27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S−28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S−29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S−30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
S−31:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)2(OCH3)
上記導電性粒子に対する表面処理剤の処理量は、上記導電性粒子の数平均一次粒径および表面処理剤の種類に応じて適宜調整されうる。上記処理量は、例えば、上記導電性粒子100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましく、7〜70質量部であることがより好ましい。
上記保護層における上記ラジカル重合性導電性粒子(上記導電性粒子)の数密度は、本実施形態の効果が得られる範囲内で適宜調整されうる。上記数密度が少なすぎると、上記保護層について所期の膜強度および電気抵抗が得られないおそれがある。また、上記数密度が多すぎると、上記保護層について所期の耐摩耗性が得られないおそれがある。これらの観点から、上記数密度は、3〜110個/μm3であことが好ましい。
上記数密度nは、上記ラジカル重合性導電性粒子1個あたりの質量をW1、上記保護層1μm3あたりの上記ラジカル重合性導電性粒子の質量をW2としたときに、n=W2/W1で表される。W1は、上記ラジカル重合性導電性粒子の密度をρ、上記ラジカル重合性導電性粒子1個あたりの体積をVとしたときに、W1=ρ×Vで表される。このとき、密度ρは、上記ラジカル重合性導電性粒子の組成に基づいて決定されうる。上記体積Vは、上記ラジカル重合性導電性粒子を半径r(上記の数平均一次粒径)の真球とみなしたときに、V=(4πr3)/3で決定されうる。
また、W2は、例えば、感光体から導電性支持体上の層(感光層および保護層を含む)を剥がして得られるサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて決定されうる当該サンプルにおける保護層の割合と、熱重量測定装置(TGA)を用いて決定されうる上記サンプル中の導電性粒子の質量とに基づいて推定されうる。たとえば、上記サンプルの質量が100g、TEMにより決定された上記サンプルにおける保護層の割合が10%、TGAにより決定された上記サンプル中の導電性粒子の質量が10gとする。上記サンプル中の有機化合物の比重を1g/cm3、導電性粒子の比重を5g/cm3として、上記質量を体積に換算すると、上記サンプルの導電性粒子の体積は2cc、上記サンプル中の有機化合物の体積は90ccとなり、上記サンプル全体の体積は92ccとなる。上記サンプル全体の体積92ccと、上記サンプルにおける保護層の割合10%とに基づいて、保護層の体積は、9.2ccと算出される。したがって、保護層1μm3あたりのラジカル重合性導電性粒子の質量であるW2は、1.09g/cc(=10g/9.2cc)と決定されうる。1ccは1012μm3であるため、W2は、1.09×10−12g/μm3となる。
上記保護層における上記ラジカル重合性導電性粒子(上記導電性粒子)の含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲内で適宜調整されうる。上記含有量が少なすぎると、上記保護層について所期の膜強度および電気抵抗が得られないおそれがある。また、上記含有量が多すぎると、保護層の表面抵抗が低下するため、高温高湿下において像流れが発生しやすくなるおそれがある。これらの観点から、上記保護層における上記ラジカル重合性導電性粒子の含有量は、保護層100体積部に対して、10〜20体積部であることが好ましい。
上記保護層は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、電荷輸送化合物が含まれる。上記保護層が電荷輸送化合物を含むことにより、上記保護層の電気抵抗を調整することができる。上記電荷輸送化合物は、当該機能を発揮できればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。上記保護層について所期の膜強度および電気抵抗を得る観点から、上記電荷輸送化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ、水素原子またはメチル基であり、R3は、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基または分岐状アルキル基である。
上記一般式(1)で表される電荷輸送化合物の具体例には、下記式CTM−1〜CTM−15で表される化合物が含まれる。
上記電荷輸送化合物の含有量は、上記保護層の所期の膜強度および電気特性に応じて適宜調整されうる。上記電荷輸送化合物の含有量が少なすぎると、所期の電気特性が得られないことがある。上記電荷輸送化合物の含有量が多すぎると、所期の膜強度が得られないことがある。上記電荷輸送化合物の含有量は、例えば、樹脂固形分の総量に対して10〜40質量%であり、20〜30質量%であることがより好ましい。ここで、「樹脂固形分」とは、ラジカル重合性組成物が硬化した後の重合硬化物(上記保護層)中で樹脂として存在する成分であり、例えば、ラジカル重合工程で重合するラジカル重合性モノマーである。
保護層の厚さは、例えば、1〜15μmであり、より好ましくは3〜8μmである。
上記保護層中、上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性PFPE、上記ラジカル重合性導電性粒子は、保護層を形成する一体的な重合物(重合硬化物)を構成している。当該重合硬化物が上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性PFPEおよび上記ラジカル重合性導電性粒子の重合体であることは、熱分解GC-MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、元素分析などの公知の機器分析技術による上記重合硬化物の分析によって確認することが可能である。
[感光体の製造方法]
上記感光体は、保護層用の塗料に上記のラジカル重合性組成物を用いる以外は、公知の感光体の製造方法によって製造することができる。たとえば、本実施の形態に係る感光体は、下記工程1〜工程4を含む方法によって製造されうる。
工程1:上記導電性支持体の外周面上に中間層形成用の塗布液(以下、「塗布液1」ともいう)を塗布して塗布液1の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより、中間層を形成する。
工程2:上記導電性支持体上に形成された中間層の外周面上に電荷発生層形成用の塗布液(以下、「塗布液2」ともいう)を塗布して塗布液2の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより、電荷発生層を形成する。
工程3:上記中間層上に形成された上記電荷発生層の外周面上に電荷輸送層形成用の塗布液(以下、「塗布液3」ともいう)を塗布して塗布液3の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより、電荷輸送層を形成する。
工程4:上記電荷発生層上に形成された上記電荷輸送層の外周面上に保護層形成用の塗布液(上記ラジカル重合性組成物)を塗布して当該塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を硬化処理することにより、保護層を形成する。
(工程1:中間層の形成)
まず、溶剤中に中間層用のバインダー樹脂を溶解させて中間層形成用の塗布液1を調製する。塗布液1には、上記中間層の抵抗を調整する観点から、導電性の金属酸化物粒子または絶縁性の金属酸化物粒子を分散させてもよい。次いで、塗布液1を導電性支持体上に一定の厚さとなるように塗布して、上記導電性支持体上に塗布液1の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥することにより、中間層を形成する。
塗布液1に上記金属酸化物粒子を分散させるための分散手段の例には、超音波分散機、ボールミル、サンドミルおよびホモミキサーが含まれる。
塗布液1の塗布方法の例には、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法および円形スライドホッパー法が含まれる。
塗布液1の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類および中間層の厚さに応じて適宜選択されうる。塗布液1の塗膜の乾燥方法は、例えば、熱乾燥であることが好ましい。
塗布液1における溶剤は、上記金属酸化物粒子を良好に分散し、中間層用のバインダー樹脂を溶解できればよい。塗布液1における溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどの炭素原子数1〜4のアルコールが含まれる。塗布液1における溶剤が当該アルコールであることは、バインダー樹脂の溶解性と、塗布性の観点から好ましい。
塗布液1における上記中間層用のバインダー樹脂の例には、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、ポリウレタンおよびゼラチンが含まれる。中でも、上記中間層用のバインダー樹脂は、アルコール可溶性のポリアミドであることが好ましい。塗布液1中の中間層用の上記バインダー樹脂の濃度は、中間層の厚さや生産速度などに応じて、適宜調整されうる。
塗布液1における上記金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウムおよび酸化ビスマスが含まれる。
塗布液1の保存性と、上記金属酸化物粒子の分散性との観点から、塗布液1は、助溶媒をさらに含んでいてもよい。当該助溶媒の例には、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノンおよびテトラヒドロフランが含まれる。
(工程2:電荷発生層の形成)
まず、溶剤に電荷発生層用のバインダー樹脂を溶解させた溶液中に電荷発生化合物を分散させて電荷発生層形成用の塗布液2を調製する。次いで、塗布液2を上記中間層上に一定の厚さとなるように塗布して、上記中間層上に塗布液2の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥することにより、電荷発生層を形成する。
塗布液2に電荷発生化合物を分散させるための分散手段の例は、塗布液1に上記金属酸化物粒子を分散させるための分散手段と同じである。また、塗布液2の塗布方法の例は、塗布液1の塗布方法と同じである。さらに、塗布液2の塗膜の乾燥方法についても、塗布液1の塗膜の乾燥方法と同じである。
塗布液2における溶剤の例には、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。
塗布液2における上記電荷発生層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、およびポリ−ビニルカルバゾール樹脂、が含まれる。
電荷発生化合物の例には、スーダンレッドやダイアンブルーなどのアゾ原料;ピレンキノンやアントアントロンなどのキノン顔料;キノシアニン顔料;ペリレン顔料;インジゴやチオインジゴなどのインジゴ顔料;およびフタロシアニン顔料、が含まれる。
電荷発生化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して1〜600質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。
(工程3:電荷輸送層の形成)
まず、溶剤中に電荷輸送層用のバインダー樹脂および前述の電荷輸送化合物を溶解させて電荷輸送層形成用の塗布液3を調製する。次いで、塗布液3を上記電荷発生層上に一定の厚さとなるように塗布して、上記電荷発生層上に塗布液3の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥することにより、電荷輸送層を形成する。
塗布液3の塗布方法の例は、塗布液1の塗布方法と同じである。さらに、塗布液3の塗膜の乾燥方法についても、塗布液1の塗膜の乾燥方法と同じである。
塗布液3における溶剤の例は、塗布液2における溶剤と同じである。
塗布液3におけるバインダー樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、およびスチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、が含まれる。
電荷輸送化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。
(工程4:保護層の形成)
まず、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、ラジカル重合性官能基を有する導電性粒子と、を溶媒に添加して、保護層形成用の塗布液(前述のラジカル重合性組成物)を調製する。このとき、必要に応じて他の成分(例えば、ラジカル重合開始剤およびラジカル捕捉剤)をラジカル重合性組成物にさらに添加してもよい。次いで、調製した当該ラジカル重合性組成物を上記電荷輸送層上に塗布して上記ラジカル重合性組成物の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥し、活性光線を照射してラジカル重合性モノマーを重合させて、上記塗膜を硬化させることにより上記保護層を形成する。
上記保護層は、上記塗布、上記乾燥、および上記硬化の過程で、上記ラジカル重合性モノマー同士の反応、ならびにパーフルオロポリエーテル化合物および導電性粒子が有するラジカル重合性官能基と、上記ラジカル重合性モノマーとの反応が進行することにより、架橋型硬化樹脂として形成される。
ラジカル重合性組成物における上記導電性粒子の含有量は、例えば、硬化樹脂を形成するための全モノマー(多官能ラジカル重合性化合物および単官能ラジカル重合性化合物)100質量部に対して、50〜250質量部であることが好ましく、70〜200質量部であることがより好ましく、80〜150質量部であることが特に好ましい。
ラジカル重合性組成物に上記導電性粒子を分散させるための分散手段の例は、塗布液1に上記金属酸化物粒子を分散させるための分散手段と同じである。また、ラジカル重合性組成物の塗布方法の例は、塗布液1の塗布方法と同じである。ラジカル重合性組成物の塗布方法は、円形スライドホッパー法であることが好ましく、この場合、ラジカル重合性組成物は、円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布される。以下、円形スライドホッパー塗布装置を用いたラジカル重合性組成物の塗布方法について説明する。
図1A、Bは、円形スライドホッパー塗布装置の構成を示す模式図である。図1A、Bに示されるように、円形スライドホッパー塗布装置は、円筒形状の基材251を取り囲むように設けられた環状の塗布ヘッド260と、塗布液Lを貯蔵するための貯蔵タンク254と、を有する。ここで、基材251とは、塗布液Lが塗布される基材であり、例えば、上記導電性支持体上に上記中間層および上記感光層が形成された状態の基材(保護層形成前の基材)である。
塗布ヘッド260には、基材251側に開口している塗布液流出口261を有する幅が狭い塗布液分配スリット262が、基材251の長手方向に垂直な方向に沿って、環状の塗布ヘッド260の全周に亘って形成されている。塗布液分配スリット262は、環状の塗布液分配室263に連通している。塗布液分配室263は、貯蔵タンク254内の塗布液Lが、圧送ポンプ255により供給管264を介して供給されるように形成されている。
図1Aにおける塗布液流出口261の下側には、塗布液流出口261に連続する傾斜面であるスライド面265が形成されている。図1Aにおけるスライド面265の内縁部の下側には、液溜部(ビード)266が形成されている。
円形スライドホッパー法では、円形スライドホッパー塗布装置において、基材251を図1A、Bの矢印方向に移動させつつ、塗布液Lを、塗布液分配スリット262から押し出し、スライド面265を沿うようにして、基材251に供給する。スライド面265の内縁部に到達した塗布液Lは、スライド面265の内縁部と基材251の外周面との間にビードを形成し、基材251の表面に塗布される。これにより、塗布液Lの塗膜Fが基材251上に形成される。塗布液Lのうち塗膜Fの形成に利用されなかった塗布液は、排出口267から排出される。
このような円形スライドホッパー塗布装置を用いた塗布液の塗布方法は、スライド面265の内縁部と基材251との間には、適度な隙間(2μm〜2mm)が存在する。このため、基材251を傷つけることなく、塗布液を塗布することができる。また、積層構造を形成する際にも、基材251上に形成されている層を傷つけることなく、塗布液を塗布することができる。さらに、同一溶媒に溶解しうる成分からなる層の積層構造を形成する際にも、円形スライドホッパーでは、浸漬コーティング法と比較して、当該成分が溶媒中に存在する時間がはるかに短いため、下層中の成分が上層側へほとんど溶出することなく、塗布液を塗布することができる。
上記ラジカル重合性組成物における溶剤は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、ラジカル重合性官能基を有する導電性粒子と、を溶解または分散させることができればよい。当該溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。
上記ラジカル重合開始剤は、保護層の製造工程に応じて公知のラジカル重合開始剤から適宜決定されうる。ラジカル重合開始剤の例には、光重合開始剤、熱重合開始剤、および、光、熱の両方で重合開始可能な重合開始剤、が含まれる。上記ラジカル重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましく、例えば、アシルフォスフィンオキサイド化合物またはオキシムエステル化合物であることが好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド化合物の具体例には、下記式P1およびP2で表される化合物が含まれる。
オキシムエステル化合物の具体例には、下記式P3およびP4で表される化合物が含まれる。
上記重合開始剤の含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。上記ラジカル重合開始剤は、一種であってもよく、それ以上であってもよい。
また、上記光重合開始剤には、光重合促進効果を有する光重合促進剤を併用してもよい。当該光重合促進剤の例には、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチルおよび4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンが含まれる。
上記ラジカル捕捉剤は、重合禁止効果を有する。上記ラジカル捕捉剤により、上記保護層における上記ラジカル重合性モノマーの架橋密度を調整することができる。これにより、画像形成プロセスにおける像流れの発生を抑制するとともに、上記保護層のクリーニングに起因する摩耗速度の微調整を行うことができる。上記ラジカル捕捉剤は、上記の機能を発揮することができればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。転写メモリ性およびクリーニング性を低下させることなく、像流れの発生を抑制する観点から、上記ラジカル捕捉剤は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(2)において、R5およびR6は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基または分岐状アルキル基であり、R7は、水素原子またはメチル基である。
上記一般式(2)で表されるラジカル捕捉剤の具体例には、下記式で表される化合物が含まれる。
上記ラジカル捕捉剤の含有量は、上記機能を発揮することができる範囲内において、必要に応じて適宜調整されうる。上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下である。上記ラジカル捕捉剤は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
活性光線の照射エネルギーや照射時間などは、使用される光源の種類や光源の出力、保護層を形成するためのラジカル重合性モノマーの種類などに応じて適宜設定されうる。活性光線の照射エネルギーは、5〜500mJ/cm2であることが好ましく、5〜10mJ/cm2であることがより好ましい。また、照射時間は、0.1秒〜10分であることが好ましく、0.1秒〜5分であることがより好ましい。
活性光線の光源の種類の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LEDが含まれる。活性光線の光源の出力は、0.1〜5kWであることが好ましく、0.5〜3kWであることがより好ましい。活性光線の波長は、250〜400nm(紫外光)であることが好ましい。
以上の工程により、本実施の形態に係る感光体を製造することができる。
上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性PFPEおよび上記ラジカル重合性導電性粒子は、いずれもラジカル重合性基官能を有する。よって、上記ラジカル重合性組成物において、これらの成分は、互いに高い相溶性を有する。よって、上記ラジカル重合性PFPEおよび上記ラジカル重合性導電性粒子は、いずれも、上記ラジカル重合性組成物において均一に分散する。その結果、PFPEおよび導電性粒子は、保護層中においてもその面方向および厚さ方向のいずれにおいても均一に分散して存在する。
上記保護層では、上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性PFPEおよび上記ラジカル重合性導電性粒子のラジカル重合性官能基がそれぞれ互いに反応し、架橋構造を形成する。よって、PFPEの含有量がある程度多くても、十分な耐摩耗性を有する高強度な保護層が得られる。
上記保護層は、高いクリーニング性が長期に亘って維持される。これは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、上記保護層では、PFPEが導電性粒子とも結合した状態で存在する。このため、保護層の全体に亘ってPFPEが分散して存在しやすい。このように、保護層では、PFPEおよび導電性粒子が保護層の面方向および厚さ方向の両方向において分散して存在するので、保護層の表面には、保護層が減耗しても、高いクリーニング性(滑性)を維持するのに十分な量のPFPEが存在する。
また、上記感光体の上記保護層が上記導電性粒子を含有していることにより、高い膜強度が得られるとともに、高い電気特性が得られる。これにより、可塑剤として作用しうる電荷輸送化合物の含有量を低減でき、または電荷輸送化合物を添加する必要がなくなる。このような観点から、本実施の形態に係る感光体は、高い耐摩耗性を実現しうる。
さらに、ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性官能基を4つ以上有すると、ラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合性導電性粒子とPFPEとの結合箇所が増える。このような観点からも、高い耐摩耗性および高いクリーニング性が持続する上記保護層が得られる。
上記感光体は、電子写真方式の画像形成装置における有機感光体として使用される。たとえば、上記画像形成装置は、上記感光体と、上記感光体の表面を帯電させるための帯電装置と、帯電した上記感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成するための露光装置と、静電潜像が形成された上記感光体にトナーを供給してトナー像を形成するための現像装置と、上記感光体の表面の上記トナー像を記録媒体に転写するための転写装置と、上記記録媒体に転写された上記トナー像を構成するトナーを上記記録媒体に定着させるための定着装置と、感光体に当接して、上記トナー像が上記記録媒体に転写された後の上記感光体の表面に残留する転写残トナーを除去するためのクリーニング装置と、を有する。
また、上記感光体は、静電潜像が形成された上記感光体の表面にトナーを供給して上記静電潜像に応じたトナー像を上記感光体の表面に形成し、上記トナー像を上記感光体の表面から記録媒体に転写し、上記感光体の表面に残留する上記トナーをクリーニング装置で除去する画像形成方法に適用される。当該画像形成方法は、例えば、上記の画像形成装置によって行われる。
[画像形成装置]
図2は、上記感光体を有する画像形成装置の構成の一例を示す模式図である。図2に示されるように、画像形成装置100は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、前述の感光体413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、例えば、後述の二成分現像剤が収容されている。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、中間転写ベルト421を感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト20と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト20に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
次いで、画像形成装置100による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
感光体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、感光体413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って感光体413の外周面に照射される。こうして感光体413の表面には、静電潜像が形成される。
現像装置412では、上記現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は上記現像ローラーに搬送され、当該現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、上記磁性ブラシから感光体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、感光体413の表面の静電潜像が可視化され、感光体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に感光体413の表面に残存する転写残トナーは、感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が感光体413に圧接することにより、感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
上記二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
定着装置60は、発熱ベルト20と加圧ローラー63とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを当該定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
以上のとおり、画像形成装置100は、画像を形成することができる。
画像形成プロセスの帯電プロセスにおいて、感光体413の保護層に含まれる導電性粒子と、帯電部材との間では放電が生じうる。このため、当該放電に起因して保護層が摩耗してしまう。したがって、保護層に含まれる導電性粒子の含有量が一定の場合、上記放電に起因する保護層の摩耗を抑制する観点からは、粒径の大きい導電性粒子を添加して、放電点として作用しうる導電性粒子の数密度を減少させることが好ましい。
また、画像形成プロセスのクリーニングプロセスにおいて、クリーニングブレードは、感光体413の保護層に摺接し、保護層の表面に位置する転写残トナーを除去する。通常、重合硬化膜で構成されている保護層は、クリーニングブレードに対する摩擦力、いわゆるブレードトルクが高いため、クリーニング時には、滑剤塗布機構、またはトナーに外添されている滑剤により、保護層の表面に滑剤が供給される。また、導電性粒子が存在する領域と比較して、樹脂が存在する領域は、ブレードトルクが高いため、当該滑剤がクリーニングブレードにより除去されやすく、結果として傷が生じやすい傾向にある。保護層の傷が進行しすぎると、クリーニングプロセスにおいて、保護層の表面の転写残トナーを適切に除去できない現象、いわゆるトナーのすり抜けが生じうる。したがって、クリーニングブレードによる傷付きを抑制する観点からは、粒径の小さい導電性粒子を添加して、導電性粒子の数密度を増大させることで、保護層の表面において上記樹脂が露出している領域の面積比を小さくすることが好ましい。
画像形成プロセスにおける保護層の上記摩耗および上記傷付きを抑制する観点から、本実施の形態に係る感光体413では、保護層に含有されている導電性粒子の数平均一次粒径は、80〜200nmである。これにより、導電性粒子の粒径が小さすぎる場合と比較して、放電点として作用しうる導電性粒子の数密度がより少なくなるため、帯電プロセスの放電に起因する保護層の摩耗を抑制することができる。これとともに、導電性粒子の粒径が大きすぎる場合と比較して、保護層における上記樹脂が露出している領域の面積比がより小さくなるため、クリーニングプロセスにおけるクリーニングブレードによる保護層の傷付きを抑制することができる。すなわち、本実施の形態に係る感光体413では、保護層の耐摩耗性(耐放電性)、耐傷付性およびクリーニング性(滑性)をいずれも両立することができる。
本実施の形態に係る画像形成装置100において、感光体413の保護層は、前述したように、ラジカル重合性モノマーのラジカル重合による重合物で一体的に構成された保護層全体に、PFPEおよび導電性粒子が十分量で均一に分散している。よって、上記重合物および導電性粒子による耐摩耗性および耐傷性と、PFPEによる高いクリーニング性とが十分に発現される。よって、感光体413は、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、かつこれらの特性を長期に亘って発現する。したがって、画像形成装置100は、所期の画質の画像を長期に亘って安定して形成することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に係る感光体は、導電性支持体と、上記導電性支持体上に配置されている感光層と、上記感光層上に配置されている保護層と、を有する電子写真感光体であって、上記保護層は、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、ラジカル重合性官能基を有する導電性粒子と、を含むラジカル重合性組成物のラジカル反応による重合硬化物で構成されており、上記導電性粒子の数平均一次粒径は、80〜200nmである。よって、上記感光体では、導電性粒子および帯電部材の間で生じる放電による保護層の劣化が抑制され、かつブレードトルクを低減することができ、これらの特性を長期に亘って発現することができる。
したがって、上記感光体を有する上記画像形成装置は、クリーニング不良による画像欠陥の発生を長期に亘って抑制しつつ、長期に亘って高画質な画像を形成しうる。
上記保護層において、上記導電性粒子の含有量は、10〜20体積%であり、かつ上記導電性粒子の数密度は、3〜110個/μm3であることは、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性の観点から、より一層効果的である。
ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、ラジカル重合性官能基を4つ以上有することは、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性の観点から、より一層効果的である。
上記ラジカル重合性官能基が、アクリロイル基およびメタクリロイル基の一方または両方であることは、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であるとの観点から、より一層効果的である。
上記導電性粒子が、絶縁性粒子と、上記絶縁性粒子の表面に担持され、導電性金属酸化物で構成されている被担持体と、を有することは、転写メモリの抑制の観点から、より一層効果的である。
上記導電性金属酸化物の体積抵抗率が、101〜108Ω・cmであることは、保護層の所期の電気特性を得る観点から、より一層効果的である。
なお、上記実施の形態では、中間層を有する感光体について説明したが、本発明に係る感光体は、中間層を有していなくてもよい。
[ラジカル重合性導電性粒子の作製]
(ラジカル重合性導電性粒子1の作製)
図3は、導電性粒子の製造装置の構成を示す模式図である。図3に示されるように、導電性粒子の製造装置10は、母液槽11、第1配管12、強分散装置13、第2配管14、第1ポンプ15および第2ポンプ16を有する。母液槽11および強分散装置13は、第1配管12および第2配管14を介して互いに接続されている。母液槽11は、撹拌翼11a、第1シャフト11bおよび第1モーター11cを有する。強分散装置13は、撹拌部13a、第2シャフト13bおよび第2モーター13cを有する。第1ポンプ15は、第1配管12に配置されており、第2ポンプ16は、第2配管14に配置されている。
まず、母液槽11中に、純粋3500cm3を入れ、平均粒径D50が10nmである硫酸バリウム粒子900gを加えてスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを製造装置で5パス循環させた。このとき、強分散装置13での撹拌部13aの撹拌速度を16000rpmとし、母液槽11から流出するスラリーの流速S1が2280cm3/分となるようにスラリーを循環させた。次いで、得られたスラリーを純水で全量が9000cm3となるようにメスアップし、スズ酸ナトリウム1600gおよび濃度25Nの水酸化ナトリウム水溶液を、メスアップされたスラリーに加え、さらに製造装置で5パス循環させることで、母液を得た。なお、強分散装置13としては、ホモジナイザー「magic LAB」(IKAジャパン株式会社製、容積20cm3)を使用した。
次いで、得られた母液を、母液槽11からの流速S1が200cm3/分となるように循環させるとともに、強分散装置13に20%硫酸を供給した。このとき、撹拌速度を16000rpmとし、強分散装置13への硫酸の供給速度S3が9.2cm3/分となるようにして循環を行った。この状態で母液の循環を15分間行った。これにより、硫酸バリウム(BaSO4)粒子の表面が酸化スズ(TiO2)で被覆された粒子を得た。
次いで、得られた上記粒子を含むスラリーを、導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェろ過を行うことにより、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを大気中において150℃で10時間乾燥させた。次いで、乾燥させたケーキを粉砕し、1体積%H2/N2雰囲気下において、450℃で45分間還元焼成した。これにより、硫酸バリウム(BaSO4)粒子の表面に酸化スズ(SnO2)が担持されている複合粒子1を得た。複合粒子1の数平均一次粒径は、100nmであった。
次いで、下記成分を下記の量で、サンドミル(メディア:径0.5mmのジルコニアビーズ)に入れ、回転速度1500rpm、40℃にて1時間混合した。表面処理剤としては、上記例示化合物S−15を使用し、溶剤としては、トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)を使用した。
複合粒子1 100質量部
表面処理剤 30質量部
溶剤 300質量部
最後に、混合物をヘンシェルミキサーにて、回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥することによって、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子1を得た。ラジカル重合性導電性粒子1の数平均一次粒径は、100nmであり、体積抵抗率は、6.7×102Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子2の作製)
硫酸バリウム粒子の代わりに、平均粒径D50が25nmであるシリカ(SiO2)粒子を使用し、上記例示化合物S−15の代わりに、上記例示化合物S−7を使用し、母液を得る工程において、水酸化ナトリウム水溶液(濃度25N)をスラリーに加えず、かつ強分散装置13として、ホモジナイザー「T50」(IKAジャパン株式会社製、容積500cm3)を使用したこと以外は、ラジカル重合性導電性粒子1と同様にして、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子2を作製した。ラジカル重合性導電性粒子2の数平均一次粒径は、100nmであり、体積抵抗率は、3.2×103Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子3の作製)
まず、純粋3Lに35%塩酸0.1Lを加え、75℃に加熱した後、平均粒径D50が30nmであるアルミナ粒子300gを加えて懸濁させた。次いで、懸濁液を撹拌しながら、四塩化チタン水溶液(Ti原子換算で50質量%)を供給速度36g/時間で加えるとともに、10質量%苛性ソーダを供給速度360mL/時間で加えてスラリーを得た。得られたスラリーを、導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行うことにより、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを150℃で真空乾燥し、アルミナ(Al2O3)粒子の表面に酸化チタン(TiO2)が担持されている複合粒子2を得た。最後に、複合粒子1と同様の方法により、複合粒子2の表面処理を行うことによって、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子3を得た。ラジカル重合性導電性粒子3の数平均一次粒径は、200nmであり、体積抵抗率は、4.8×104Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子4の作製)
シリカ粒子として、平均粒径D50が20nmであるシリカ粒子を使用したこと以外は、ラジカル重合性導電性粒子2と同様にして、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子4を作製した。ラジカル重合性導電性粒子4の数平均一次粒径は、80nmであり、体積抵抗率は、2.7×101Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子5の作製)
アルミナ粒子の代わりに、平均粒径D50が40nmである硫酸バリウム粒子を使用し、上記例示化合物S−15の代わりに、上記例示化合物S−7を使用したこと以外は、ラジカル重合性導電性粒子3と同様にして、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子5を作製した。ラジカル重合性導電性粒子5の数平均一次粒径は、130nmであり、体積抵抗率は、1.7×109Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子6の作製)
母液を得る工程および得られた母液を循環させる工程以外は、ラジカル重合性導電性粒子1と同様にして、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子6を作製した。母液を得る工程においては、スズ酸ナトリウム1600gおよび濃度25Nの水酸化ナトリウム水溶液をスラリーに加える代わりに、無水塩化亜鉛1000gをスラリーに加えた。また、強分散装置13として、ホモジナイザー「T50」(IKAジャパン株式会社製、容積500cm3)を使用した。得られた母液を循環させる工程においては、母液槽11からの流速S1が200cm3/分となるように循環させるとともに、強分散装置13に20%硫酸を供給する代わりに、母液槽11からの流速S1が10L/分となるように循環させるとともに、母液のpHが5.0となるまで強分散装置13に20%水酸化ナトリウム水溶液を供給した。ラジカル重合性導電性粒子6の数平均一次粒径は、150nmであり、体積抵抗率は、8.9×10−1Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子7の作製)
シリカ粒子として、平均粒径D50が12nmであるシリカ粒子を使用したこと以外は、ラジカル重合性導電性粒子2と同様にして、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子7を作製した。ラジカル重合性導電性粒子7の数平均一次粒径は、50nmであり、体積抵抗率は、2.1×101Ω・cmであった。
(ラジカル重合性導電性粒子8の作製)
硫酸バリウム粒子として、平均粒径D50が80nmである硫酸バリウム粒子を使用したこと以外は、ラジカル重合性導電性粒子1と同様にして、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子8を作製した。ラジカル重合性導電性粒子8の数平均一次粒径は、300nmであり、体積抵抗率は、8.7×102Ω・cmであった。
各導電性粒子について、ラジカル重合性導電性粒子No.、コア−シェル構造を有するラジカル重合性導電性粒子の材料(コアおよびシェル)、表面処理剤、体積抵抗率(ρ)、数平均一次粒径(D)および比重(d)を表1に示す。なお、ラジカル重合性導電性粒子の比重は、コア/シェルの体積比率を2/1としたときの計算値である。
[感光体の作製]
(感光体1の作製)
(1)導電性支持体の準備
直径60mmの円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
(2)中間層の形成
下記成分を下記の量で混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、分散液を調製した。得られた分散液を、下記溶剤と同じ溶剤にて2倍に希釈し、一晩静置した後、フィルター(リジメッシュ、濾過精度5μm;日本ポール株式会社製、「リジメッシュ」は、ポール社の登録商標)にて濾過して、中間層形成用塗布液を調整した。
ポリアミド樹脂 1質量部
酸化チタン粒子 3質量部
メタノール 10質量部
ポリアミド樹脂(バインダー樹脂)としては、CM8000(東レ株式会社製)を使用し、酸化チタン粒子(金属酸化物粒子)としては、SMT500SAS(テイカ株式会社製)を使用した。
次いで、中間層形成用塗布液を浸漬塗布法によって上記導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
(3)電荷発生層の形成
下記成分を下記の量で混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、電荷発生層形成用塗布液を調製した。
顔料 20質量部
ポリビニルブチラール 10質量部
溶剤 1000質量部
顔料(電荷発生物質)としては、下記の作製方法により作製した。ポリビニルブチラール(バインダー樹脂)としては、エスレックBL−1(積水化学工業株式会社製、「エスレック」は、同社の登録商標)を使用し、溶剤としては、酢酸t−ブチル/4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン=700/300(質量比)を使用した。
次いで、電荷発生層形成用塗布液を浸漬塗布法によって上記中間層の表面に塗布し、乾燥させることで、膜厚0.3μmの電荷発生層を上記中間層上に形成した。
(顔料の合成)
下記成分を下記の量で混合し、窒素雰囲気下において、150〜160℃で5時間加熱した。放冷した後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄し、2%塩酸水溶液で洗浄し、水洗し、メタノール洗浄した後、乾燥させて、26.2質量部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
1,3−ジイミノイソインドリン 29.2質量部
チタニウムテトラ−n−ブトキシド 20.4質量部
o−ジクロロベンゼン 200質量部
次いで、粗チタニルフタロシアニンを濃硫酸250質量部に加え、5℃以下で1時間撹拌して、溶解させた。次いで、この溶液を20℃の水5000質量部に加えて、析出した結晶を濾過し、十分に水洗して、ペースト状組成物225質量部を得た。
次いで、上記ペースト状組成物を冷凍庫にて凍結させた後に、再度解凍させ、濾過し、乾燥させることによって、無定形チタニルフタロシアニン24.8質量部(収率86%)を得た。
次いで、下記成分を下記の量で混合し、60〜70℃で6時間撹拌した。なお、下記当量比とは、上記チタニルフタロシアニンに対する当量比を表す。
無定形チタニルフタロシアニン 10.0質量部
(2R,3R)−2,3−ブタンジオール 0.94質量部(0.6当量比)
チタニウムテトラ−n−ブトキシド 20.4質量部
o−ジクロロベンゼン 200質量部
次いで、この反応液を一晩放置した後、メタノールを加えて結晶を得た。次いで、得られた結晶を濾過し、メタノールで洗浄し、顔料を得た。
顔料のX線回折スペクトルでは、8.3°、24.7°、25.1°および26.5°に明確なピークが観測された。マススペクトルでは、576および648にピークが観測された。IRスペクトルでは、970cm−1近傍にTi=O結合に由来する吸収と、630cm−1近傍にO−Ti−O結合に由来する吸収とが観測された。熱分析(TG)では、390〜410℃の範囲内で約7%の質量減少が観測された。これらの分析によって、得られた顔料は、チタニルフタロシアニンの(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体と、チタニルフタロシアニン(非付加体)との混合物と推定された。また、上記顔料のBET比表面積を流動式比表面積自動測定装置(マイクロメトリックス・フローソーブ型:株式会社島津製作所製)を用いて測定したところ、上記顔料のBET比表面積は、31.2m2/gであった。
(4)電荷輸送層の形成
下記成分を下記の量で混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
電荷輸送物質 225質量部
ポリカーボネート樹脂 300質量部
酸化防止剤 6質量部
テトラヒドロフラン(THF) 1600質量部
トルエン 400質量部
シリコーンオイル 1質量部
電荷輸送物質としては、下記式で表される電荷輸送物質を使用し、ポリカーボネート樹脂(バインダー樹脂)としては、Z300(三菱ガス化学株式会社製)を使用し、酸化防止剤としては、IRGANOX1010(BASF社製、「IRGANOX」は同社の登録商標)を使用し、シリコーンオイルとしては、KF−50(信越化学工業株式会社製)を使用した。
次いで、上記電荷輸送層形成用塗布液を円形スライドホッパー塗布装置を用いて、上記電荷発生層上に塗布し、乾燥させることで、膜厚20μmの電荷輸送層を上記電荷発生層上に形成した。
(5)保護層の形成
下記成分を下記の量で遮光下において混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で5時間の分散を行った。
ラジカル重合性導電性粒子1 120質量部
ラジカル重合性モノマー(上記例示化合物M1) 100質量部
2−ブタノール 320質量部
テトラヒドロフラン(THF) 80質量部
得られた分散液に下記成分を下記の量で加え、遮光下において撹拌し、溶解させて、保護層形成用塗布液(ラジカル重合性組成物)を調製した。なお、ラジカル捕捉剤としては、スミライザーGS(住友化学工業株式会社製、「スミライザー」は、同社の登録商標)を使用した。
電荷輸送化合物(上記例示化合物CTM−8) 16.5質量部
重合開始剤(上記例示化合物P2) 10質量部
ラジカル捕捉剤 5質量部
ラジカル重合性PFPE(上記例示化合物P−2M) 10質量部
次いで、上記保護層形成用塗布液を上記電荷輸送層の表面に、円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して、上記ラジカル重合性組成物の塗膜を形成した。次いで、上記塗膜に、メタルハライドランプから紫外線を1分間照射して当該塗膜を硬化させることによって、乾燥膜厚5.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。こうして、感光体1を作製した。感光体1の保護層における導電性粒子の数密度は、45個/μm3であった。
(感光体2〜7およびC1〜C3の作製)
表2に示されるように、ラジカル重合性モノマーの種類、ラジカル重合性導電性粒子の種類および含有量、ラジカル重合性PFPEの種類および含有量、電荷輸送化合物の種類および含有量、ラジカル捕捉剤の含有量、ならびに重合開始剤の含有量を変更したこと以外は感光体1の作製と同様にして、感光体2〜7およびC1〜C3をそれぞれ作製した。
各感光体について、区分、感光体No.、ラジカル重合性モノマーの種類、ラジカル重合性導電性粒子の種類、数密度および含有量、ラジカル重合性PFPEの種類および含有量、電荷輸送化合物の種類および含有量、ラジカル捕捉剤の含有量、ならびに重合開始剤の含有量を表2および表3に示す。表2において、「モノマー」は、ラジカル重合性モノマーを示し、「導電性粒子」は、ラジカル重合性導電性粒子を示し、「r−PFPE」は、ラジカル重合性PFPEを示す。表2では、上記各成分の含有量を質量部で示しており、表3では、上記各成分の含有量を体積%で示している。質量部から体積%への換算するとき、ラジカル重合性組成物中の溶剤を除く成分の合計を100%として計算し、導電性粒子の比重を上記の表1で示す値、r−PFPEの比重を1.5g/cm3、電荷輸送化合物の比重を1.1g/cm3、ラジカル捕捉剤の比重を1.1g/cm3、重合開始剤の比重を1.1g/cm3として計算した。
[評価]
感光体1〜7およびC1〜C3のそれぞれを、フルカラー複写機(bizhub PRO C554:コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)に搭載した。当該フルカラー複写機は、波長780nmのレーザー露光、反転現像を行う、タンデム方式のフルカラー複写機(MEP:Multi−Function Peripheral)であり、ローラー帯電方式に改造されている。まず、30℃、85%RHの環境下において、YMCK各色の画像比率5%の帯状画像を含むA4版画像(合計画像比率20%)を、A4版中性紙に30万枚連続してプリントする耐久試験を行った。次いで、下記各評価(耐摩耗性、像流れおよびトナーのすり抜け)を行った。
(1)耐摩耗性
上記耐久試験前後における感光体の均一膜厚部分(感光体の両端部の膜厚が不均一に部分を、膜厚分布プロフィールに基づいて除く)を、渦電流方式の膜厚測定器(商品名:「EDDY560C」、HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いてランダムに10か所測定し、その平均値を算出し、感光体の膜厚とした。そして、上記耐久試験前後の感光体の上記膜厚の差を減耗量とした。100krоt(10万回転)あたりの減耗量をα値とし、下記基準に基づいて、各感光体について耐摩耗性を評価した。評価結果が「◎」および「○」の場合を合格と判定した。
◎:α値が0.1以上0.3未満
○:α値が0.3以上0.5未満
×:α値が0.5以上
(2)像流れ
30℃、80%RHの環境下において、画像比率5%のA4版画像を、A4版中性紙に1000枚プリントした後、すぐに画像形成装置の主電源を切り、主電源を切った12時間後に主電源を入れた。次いで、印刷可能状態になった後、すぐにA3版中性紙の全面に、ハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)と、6dot格子画像とをそれぞれプリントした。プリントされたハーフトーン画像と上記格子画像とをそれぞれ目視にて観察し、下記基準に基づいて、各感光体について像流れの発生の有無を評価した。評価結果が「◎」および「○」の場合を合格と判定した。
◎:ハーフトーン画像において、濃度ムラの発生はなく、かつ格子画像において、欠損および線幅の細りはない。
○:ハーフトーン画像において、感光体の長軸方向に沿った帯状の濃度低下領域が観測されるが、格子画像において、欠損および線幅の細りはない。
×:格子画像において、欠損または線幅の細りが観測される。
(3)トナーのすり抜け
10℃、15%RHの環境下において、紙の搬送方向の前方部に黒地部、後方部に白地部が位置するように、カバレッジ率80%のハーフトーン画像を、A3版中性紙に100枚プリントし、100枚目の紙の白地部を目視により観察し、下記基準に基づいて、トナーのすり抜けを評価した。評価結果が「◎」および「○」の場合を合格と判定した。
◎:白地部に汚れが見られなかった
○:白地部に軽微なスジ状の汚れが発生したが、実用上の問題はない
×:白地部に明らかなスジ状の汚れが発生し、実用上の問題がある
各感光体について、区分、感光体No.および評価結果を表4に示す。
表4に示されるように、感光体1〜7については、十分な耐摩耗性およびクリーニング性(トナーのすり抜け)を確保しつつ、像流れの発生も抑制されていた。これは、保護層が、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合性PFPEと、ラジカル重合性導電性粒子と、を含むラジカル重合性組成物のラジカル反応による重合硬化物で構成されており、導電性粒子の数平均一次粒径が、80〜200nmであるためと考えられる。
これに対して、表4に示されるように、感光体C1については、耐摩耗性が不十分であった。これは、感光体C1については、導電性粒子の数平均一次粒径が、80nm未満であるためと考えられる。また、表3に示されるように、感光体C2、C3については、クリーニング性(トナーのすり抜け)が不十分であった。これは、感光体C2については、導電性粒子の数平均一次粒径が、200nm超であるためと考えられる。感光体C3については、保護層がラジカル重合性PFPEを含まないラジカル重合性組成物のラジカル反応による重合硬化物で構成されているためと考えられる。