[電子写真感光体の構成]
本実施の形態に係る電子写真感光体(感光体)は、導電性支持体と、当該導電性支持体上に配置されている感光層と、当該感光層上に配置されている保護層と、を有する。当該感光体は、上記保護層以外は、公知の感光体と同様に構成されうる。
上記導電性支持体は、上記感光層を支持することができ、かつ導電性を有する部材である。上記導電性支持体の例には、金属製のドラムまたはシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の膜を有するプラスチックフィルム、導電性物質またはそれとバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材や、プラスチックフィルム、紙などが含まれる。上記金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が含まれる。上記導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウムおよび酸化スズが含まれる。
上記感光層は、後述する露光により所期の画像に対応する静電潜像を上記感光体の表面に形成するための層である。当該感光層は、単層で構成されていてもよいし、積層された複数の層で構成されていてもよい。上記感光層の例には、バインダー樹脂、電荷輸送化合物および電荷発生化合物を含む単層物、ならびに、バインダー樹脂および電荷発生化合物を含有する電荷発生層と、バインダー樹脂および電荷輸送化合物を含有する電荷輸送層との積層物、が含まれる。本実施の形態に係る感光体の感光層は、電荷発生層および電荷輸送層の積層物である。
上記感光層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリレート樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、およびスチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、が含まれる。
上記電荷発生化合物の例には、スーダンレッドやダイアンブルーなどのアゾ原料;ピレンキノンやアントアントロンなどのキノン顔料;キノシアニン顔料;ペリレン顔料;インジゴやチオインジゴなどのインジゴ顔料;およびフタロシアニン顔料、が含まれる。上記電荷発生化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して1〜600質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。
上記電荷輸送化合物の例には、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、およびポリ−9−ビニルアントラセン、が含まれる。上記電荷輸送化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。
上記感光層が上記単層物である場合、上記感光層の厚さは、例えば、10〜50μmであり、20〜40μmであることが好ましい。上記感光層が上記積層物である場合、上記電荷発生層の厚さは、例えば、0.01〜5μmであり、0.05〜3μmであることが好ましい。また、上記電荷輸送層の厚さは、例えば、5〜40μmであり、10〜30μmであることが好ましい。
上記保護層は、上記感光層を保護するための層である。上記保護層は、上記感光層の上に配置されるとともに上記感光体の表面を構成する。上記保護層は、熱可塑性樹脂と、電荷輸送化合物と、パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子と、を含有する。
上記保護層は、前述したように、熱可塑性樹脂と、電荷輸送化合物と、パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子と、を含有する。以下、上記保護層に含有される各成分について説明する。
(熱可塑性樹脂)
上記熱可塑性樹脂は、保護層のバインダー樹脂である。上記熱可塑性樹脂は、感光体における保護層のバインダー樹脂として使用されうる公知の熱可塑性樹脂から適宜選択されうる。熱可塑性樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂およびシリコーン樹脂が含まれる。上記熱可塑性樹脂は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
(電荷輸送化合物)
上記電荷輸送化合物は、上記保護層に電荷輸送能を付与する化合物である。上記電荷輸送化合物は、当該機能を発揮できればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。上記電荷輸送化合物は、高い移動度を有することが好ましい。上記保護層について所期の膜強度および電気抵抗を得る観点から、上記電荷輸送化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基であり、Ar1は、水素原子、置換基を有する芳香族基または無置換の芳香族基であり、Ar2は、置換基を有する芳香族基または無置換の芳香族基である。
上記一般式(1)で表される電荷輸送化合物の具体例には、下記式T1〜T64で表される化合物が含まれる。
上記電荷輸送剤の含有量は、例えば、上記保護層100体積部に対して、10〜35体積部であり、15〜25体積部であることがより好ましい。上記電荷輸送剤の含有量が少なすぎると、所期の電気特性が得られず、転写メモリの発生を抑制できないことがある。上記電荷輸送剤の含有量が多すぎると、所期の膜強度が得られないことがある。上記電荷輸送化合物の含有量は、上記保護層の所期の膜強度および電気特性に応じて適宜調整されうる。
(パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子)
上記パーフルオロポリエーテル(PFPE)基を有する金属酸化物粒子(以下、「PFPE基含有粒子」ともいう)は、上記PFPE基を有する成分を表面に担持した金属酸化物粒子である。金属酸化物粒子の表面への上記PFPE基を含む成分の担持は、物理的な担持であってもよいし、化学的な結合によってもよい。
上記金属酸化物粒子は、導電性金属酸化物粒子であってもよいし、絶縁性金属酸化物粒子であってもよい。導電性金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛が含まれる。絶縁性金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、シリカ(酸化ケイ素)およびアルミナ(酸化アルミニウム)が含まれる。中でも、比誘電率が小さく、上記金属酸化物粒子の帯電による上記保護層の電界損失を抑制しうる観点と、屈折率が小さく、上記保護層の透明性を確保しうる観点と、比重が小さく、上記感光体の製造時における上記金属酸化物粒子の分散剤への分散安定性の観点とから、上記金属酸化物粒子の材料は、シリカであることが好ましい。上記金属酸化物粒子は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
上記シリカの例には、乾式法シリカ、湿式沈降法シリカおよび湿式ゲル法シリカが含まれる。また、シリカ粒子は、シラノール基を有する親水性シリカ粒子であってもよいし、疎水化処理が施された疎水性シリカ粒子であってもよい。当該疎水化処理の例には、上記シラノール基のトリメチルシリル化と、シリコーンオイルによるシリカ粒子の表面処理と、が含まれる。また、シリカ粒子は、一種であってもよいし、それ以上でもあってもよい。
上記シリカ粒子は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。上記シリカ粒子の市販品の例には、日本エアロジル株式会社製のアエロジルR−972(「アエロジル」は、同社の登録商標、以下、省略する)、R−974、R−976S、R−9200、RX−50、NAX−50、NX−90G、RX−200、R−8200、RX−300、R−812S、R−812、RY−50、NY−50、RY−200S、RY−200、RY−200L、RY−300、NKT−90およびT−805;キャボット社製のCAB−O−SIL TG−6110G(「CAB−O−SIL」は、同社の登録商標、以下、省略する)、TG−810G、TG−811F、TG−308FおよびTG−7580F;クラリアント社製のH2000/4、H2000T、H05TM、H13TM、H20TM、H30TM、H05TD、H13TD、H20TDおよびH30TD;ならびに信越化学工業株式会社製のX−24−9163Aが含まれる。
上記PFPE基含有粒子中の上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、例えば、20〜50nmであることが好ましい。上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径が小さすぎると、十分な膜強度および耐摩耗性が得られないことがある。上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径が大きすぎると、上記保護層の形成時に上記金属酸化物粒子を溶剤に分散させるときに、分散液中で上記金属酸化物粒子が沈降しやすくなり、上記感光体の製造が困難となることがある。上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、上記保護層の膜強度の観点から、上記金属酸化物粒子や電荷輸送化合物などの上記保護層に含まれる成分およびその含有量に応じて適宜調整されうる。
上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、例えば、例えば、以下のようにして決定されうる。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込み、得られた写真画像から、凝集粒子を除く300個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム「ルーゼックス AP」(株式会社ニレコ製、「LUZEX」は同社の登録商標、ソフトウエアVer.1.32)を使用して2値化処理して当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出し、その平均値を算出して数平均一次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
上記金属酸化物粒子の含有量は、保護層100体積部に対して、3〜20体積部であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、上記保護層について所期の膜強度が得られないことがある。また、上記含有量が多すぎると、上記金属酸化物粒子の表面に残存する水酸基の存在によって、高温高湿下において像流れが発生しやすくなることがある。上記含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲内で適宜調整されうる。
上記PFPE基含有粒子におけるパーフルオロポリエーテル部分(以下、単に「PFPE」ともいう)は、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位として有するオリゴマーまたはポリマーである。パーフルオロアルキレンエーテルの繰り返し単位の構造の例には、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、および、パーフルオロプロピレンエーテルが含まれる。パーフルオロポリエーテルは、下記式(a)で示される繰り返し構造単位1、または、下記式(b)で示される繰り返し構造単位2を有することが好ましい。
上記PFPEが、当該繰り返し構造単位1または当該繰り返し構造単位2を有する場合、当該繰り返し構造単位1の繰り返し数mおよび当該繰り返し構造単位2の繰り返し数nは、それぞれ0以上の整数であり、かつ、m+n≧1である。
また、上記PFPEが、当該繰り返し構造単位1及び当該繰り返し構造単位2の両方を有する場合、当該繰り返し構造単位1と当該繰り返し構造単位2は、ブロック共重合体構造を形成していてもよいし、ランダム共重合体構造を形成していてもよい。
上記PFPEの重量平均分子量Mwは、100以上8,000以下であることが好ましく、500以上5,000以下であることがより好ましい。
上記PFPEの含有量は、保護層100体積部に対して、1〜20体積部であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、上記感光体のクリーニング性が不十分となることがある。また、上記含有量が多すぎると、膜強度および耐摩耗性が不十分となることがある。上記含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲内で適宜調整されうる。
上記PFPE基含有粒子は、例えば、金属酸化物粒子と、その表面に化学結合している表面処理剤残基と、当該表面処理剤残基に含まれる上記PFPE基と、を有する。本実施の形態では、上記PFPE基含有粒子は、ラジカル反応性官能基を有するPFPE化合物(以下、「ラジカル反応性PFPE」ともいう)と、ラジカル反応性官能基を有する上記金属酸化物粒子(以下、「ラジカル反応性金属酸化物粒子」ともいう)とのラジカル反応による反応生成物である。より具体的には、上記PFPE基含有粒子は、ラジカル反応性PFPEと、ラジカル反応性金属酸化物粒子における上記表面処理剤残基とのラジカル反応による反応生成物である。なお、表面処理剤残基とは、例えば、金属酸化物粒子の表面に化学結合している分子構造であって表面処理剤由来の部分である。
上記ラジカル反応性官能基を含む成分の金属酸化物粒子の表面への担持は、例えば、金属酸化物粒子の公知の表面処理剤による公知の表面処理方法によって行うことが可能である。
上記表面処理剤は、ラジカル反応性官能基および表面処理官能基を有する。上記表面処理剤は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。当該表面処理官能基は、金属酸化物粒子の表面に存在する水酸基などの極性基への反応性を有する基である。上記表面処理剤の上記ラジカル反応性官能基は、炭素−炭素二重結合を有しラジカル反応可能な基であり、その例には、ビニル基および(メタ)アクリロイル基が含まれる。なお、本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基(CH2=CHCO−)およびメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO−)の一方または両方を意味する。
上記表面処理剤は、上記ラジカル反応性官能基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。当該シランカップリング剤の例には、下記式S−1〜S−31で表される化合物が含まれる。
S−1:CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2
S−2:CH2=CHSi(OCH3)3
S−3:CH2=CHSiCl3
S−4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S−6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S−7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S−8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S−10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S−12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S−14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S−15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S−16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S−18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S−20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S−21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S−22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S−23:CH2=CHSi(OCH3)3
S−24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S−25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S−26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S−27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S−28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S−29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S−30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
S−31:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)2(OCH3)
上記金属酸化物粒子に対する表面処理剤の処理量は、例えば、上記金属酸化物粒子100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましく、7〜70質量部であることがより好ましい。上記処理量は、上記表面処理剤の種類に応じて適宜調整されうる。
上記ラジカル反応性金属酸化物粒子は、製造されてもよいし、市販品であってもよい。たとえば、当該ラジカル反応性金属酸化物粒子は、下記の方法に従って製造されうる。まず、金属酸化物粒子100体積部に対して表面処理剤0.1〜200体積部と溶媒50〜5000体積部とを混合し、湿式メディア分散型装置を使用して分散する。これにより、表面処理された金属酸化物粒子の分散液が得られる。次いで、金属酸化物粒子分散液から溶媒を除去することで、上記ラジカル反応性金属酸化物粒子が得られる。
上記ラジカル反応性PFPEが有するラジカル反応性官能基の数は、1つ以上であり、2つ以上であることが好ましい。ラジカル反応性PFPEがラジカル反応性官能基を2つ以上有する場合には、ラジカル反応性官能基のPFPEにおける位置は、片末端でも両末端でもよく、2つ以上のラジカル反応性官能基が片末端に結合していてもよいし、両末端に結合していてもよい。上記ラジカル反応性PFPEが有するラジカル反応性官能基の数が2つ以上であるとき、上記保護層は、上記ラジカル反応性PFPEが有する前記ラジカル反応性官能基のラジカル反応による架橋構造を含む。当該架橋構造とは、例えば、複数の上記ラジカル反応性PFPEの分子間ラジカル反応によって形成され、複数の上記PFPEが互いに結合することで形成される3次元構造をいう。
中でも、ラジカル反応性官能基を4つ以上有するラジカル反応性PFPEは、ラジカル反応性金属酸化物粒子との反応点をより多く持つ。上記ラジカル反応性PFPEが、ラジカル反応性官能基を4つ以上有することは、上記感光体の耐摩耗性およびクリーニング性を高める観点から好ましい。
上記ラジカル反応性PFPEの上記ラジカル反応性官能基は、炭素−炭素二重結合を有しラジカル反応可能な基である。上記ラジカル反応性PFPEが有する複数のラジカル反応性官能基は、互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。上記ラジカル反応性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが特に好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するラジカル反応性PFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFluorolink AD1700、MD500、MD700、5101X、5113X、Fomblin MT70(「FLUOROLINK」および「FOMBLIN」は、いずれも同社の登録商標)、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC、および、信越化学工業株式会社製のKY−1203、が含まれる。
また、ラジカル反応性PFPEは、末端に水酸基やカルボキシル基を有するPFPEを原料として、これらの置換基の置換またはこれらの置換基からの誘導によって適宜に合成されうる。
末端に水酸基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinD2、Fluorolink D4000、FluorolinkE10H、5158X、5147X、Fomblin Ztetraol、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SA、が含まれる。末端にカルボキシル基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinZDIZAC4000、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SH、が含まれる。
(メタ)アクリロイル基を有するPFPEの例には、具体的には、下記式P−1〜P−9で表される化合物が含まれる。下記式中、Xはアクリロイル基(A)またはメタクリロイル基(M)を表す。また、化合物P−2中の「p」は、独立して1〜10を表す。
なお、Xがアクリロイル基である場合はAを、Xがメタクリロイル基である場合はMを、化合物の記号に添えることによって、下記化合物がより具体的に示される。たとえば、Xがアクリロイル基である下記P−1の化合物は「P−1A」、メタクリロイル基である下記P−1の化合物は「P−1M」と表される。
以下に、ラジカル反応性PFPEの合成法の具体例を示す。
(合成例1 P−2Mの合成)
下記式P−S1で表される、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fluorolink E10H (ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:平均分子量1700)17質量部、トリエチルアミン3質量部、ジイソプロピルエーテル10質量部、および、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.006質量部、を混合し、空気気流下にて撹拌を開始する。混合液の温度を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド3.1質量部を2時間かけて滴下する。滴下終了後、得られた混合液を10℃に維持ながら1時間撹拌する。次いで、当該反応液を30℃まで昇温し、30℃で1時間撹拌し、さらに50℃まで昇温し、50℃で10時間撹拌することにより反応を行う。次いで、得られた反応液にジイソプロピルエーテル72質量部を追加し、ジイソプロピルエーテル相の水洗を3回行う。次いで、ジイソプロピルエーテル相を硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を留去する。こうして、ラジカル反応性PFPEであるP−2Mが得られる(収量17.1質量部)。
(合成例2 P−3Mの合成)
(1)中間体(I)の合成
下記式P−S2で表される、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fomblin ZDIAC4000(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:平均分子量3700)18.5質量部、塩化チオニル20質量部、および、N,N−ジメチルホルムアミド2滴、を混合し、4時間加熱還流する。得られた反応液から過剰の塩化チオニルを留去し、中間体(I)18.6質量部を得る。
(2)P−3Mの合成
グリセリンジメタクリレート2.3質量部、ピリジン0.8質量部、および、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.006質量部、をジクロロエタン50質量部に溶解し、得られた溶液に中間体(I)18.6質量部を添加する。得られた混合液をそのまま室温で一晩撹拌し、次いで水を添加してジクロロエタン相を分離する。そしてジクロロエタン相を水洗し、溶媒を留去する。こうして、ラジカル反応性PFPEであるP−3Mを得る(収量 20.2質量部)。
(合成例3 P−6Aの合成)
下記式P−S3で表される、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fomblin Z−tet−raol (ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)20質量部、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.01質量部、ウレタン化触媒ジブチルスズジラウレート0.01質量部、および、メチルエチルケトン20質量部、を混合し、空気気流下で撹拌し、混合液を80℃に加熱する。次いで、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート5.7質量部を、発熱に注意しながら分割して上記混合液に添加する。次いで、当該混合液を80℃で10時間撹拌することにより反応を行う。IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm−1付近の吸収ピークの消失を確認した後に上記混合液から溶媒を留去する。こうして、ラジカル反応性PFPEであるP−6Aを得る(収量 25.6質量部)。
上記化合物P−1〜P−9のうちのその他の例示化合物についても、下記のいずれかの方法により同様に合成することができる。
1)末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルに対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸によりエステル化反応させる方法。
2)末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルに対して、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法。
3)末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を常法により酸ハロゲン化物とし、この酸ハロゲン化物に対して、(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する化合物をエステル化反応させる方法。
保護層の厚さは、例えば、2〜15μmであり、より好ましくは4〜8μmである。
上記保護層が、上記熱可塑性樹脂と、上記電荷輸送化合物と、上記PFPE基含有粒子と、を含有すること、および、上記PFPE基含有粒子が、上記ラジカル反応性PFPEおよび上記ラジカル反応性金属酸化物粒子のラジカル反応による反応生成物であることは、熱分解GC−MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、元素分析などの公知の機器分析技術による分析によって確認することが可能である。
なお、上記感光体は、本実施形態の効果が得られる範囲において、上記導電性支持体、上記感光層および上記保護層以外の他の構成をさらに含んでいてもよい。当該他の構成の例には、中間層が含まれる。当該中間層は、例えば、上記導電性支持体と上記感光層との間に配置される、バリア機能および接着機能を有する層である。上記中間層は、例えば、中間層用のバインダー樹脂と、中間層用の金属酸化物粒子と、を含む。
上記中間層用のバインダー樹脂の例には、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、ポリウレタンおよびゼラチンが含まれる。
上記中間層用の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウムおよび酸化ビスマスが含まれる。上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、例えば、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。上記金属酸化物粒子の含有量は、例えば、上記中間層中のバインダー樹脂100質量部に対して20〜400質量部であることが好ましく、50〜350質量部であることがより好ましい。
上記中間層の厚さは、0.1〜15μmであることが好ましく、0.3〜10μmであることがより好ましい。
[感光体の製造方法]
上記感光体は、保護層用の塗料に上記熱可塑性樹脂と、上記電荷輸送化合物と、ラジカル反応性PFPEと、上記ラジカル反応性金属酸化物粒子と、を含む樹脂組成物を用いる以外は、公知の感光体の製造方法によって製造することができる。たとえば、本実施の形態に係る感光体の製造方法は、1)上記導電性支持体上に感光層を形成する第1工程と、2)上記感光層上に保護層を形成する第2工程と、を含む。
1)第1工程
第1工程では、準備した上記導電性支持体上に感光層を形成する。本実施の形態に係る感光体の製造方法では、感光層を形成する工程は、上記導電性支持体上に電荷発生層を形成する工程と、当該電荷発生層上に電荷輸送層を形成する工程とを含む。
まず、電荷発生層形成用の塗布液(以下、「塗布液A」ともいう)を調製する。次いで、塗布液Aを上記導電性支持体上に塗布して、上記導電性支持体上に塗布液Aの塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥させることにより電荷発生層を形成する。
塗布液Aは、例えば、公知の溶剤に溶解させた上記感光層用のバインダー樹脂中に上記電荷発生化合物を添加し、分散させることで調製されうる。
塗布液Aに使用される溶剤の例には、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。上記溶剤は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
上記電荷発生化合物の分散手段は、公知の分散装置から適宜選択されうる。上記電荷発生化合物の分散手段の例には、超音波分散機、ボールミル、サンドミルおよびホモミキサーが含まれる。
塗布液Aの塗布方法は、塗布液Aの組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。塗布液Aの塗布方法の例には、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法および円形スライドホッパー法が含まれる。
塗布液Aの塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や、電荷発生層の所期の厚みなどに応じて適宜選択されうる。塗布液Aの塗膜の乾燥方法の例には、自然乾燥および熱乾燥が含まれる。
次いで、電荷発生層上に電荷輸送層を形成する。具体的には、まず、電荷輸送層用の塗布液(以下、「塗布液B」ともいう)を調製する。次いで、塗布液Bを上記電荷発生層上に塗布して、上記電荷発生層上に塗布液Bの塗膜を形成する。最後に、当該塗膜を乾燥させることにより電荷輸送層を形成することができる。
塗布液Bは、例えば、公知の溶剤に溶解させた上記感光層用のバインダー樹脂中に上記電荷輸送化合物を添加し、分散させることで調製されうる。塗布液Bに使用される溶剤の例は、塗布液Aに使用される溶剤と同じである。
塗布液Bの塗布方法は、塗布液Bの組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。塗布液Bの塗布方法の例は、塗布液Aの塗布方法と同じである。
塗布液Bの塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類や電荷輸送層の所期の厚みなどに応じて適宜選択されうる。塗布液Bの塗膜の乾燥方法の例には、塗布液Aの塗膜の乾燥方法と同じである。
2)第2工程
次いで、電荷輸送層上に保護層を形成する。保護層を形成する工程は、上記樹脂組成物を電荷輸送層上に塗布して、電荷輸送層上に上記樹脂組成物の塗膜を形成する工程と、当該塗膜に活性光線を照射して、上記樹脂組成物中のラジカル反応性官能基をラジカル反応させる工程と、上記塗膜を硬化させる工程と、を含む。
まず、保護層形成用の塗布液(上記樹脂組成物)を調製し、調製した当該塗布液を上記電荷輸送層上に塗布することにより上記樹脂組成物の塗膜を形成する。
上記熱可塑性樹脂、上記電荷輸送化合物、上記ラジカル反応性PFPE、上記ラジカル反応性金属酸化物粒子を準備する。次いで、準備した上記保護層用の材料を公知の溶剤に分散させることで上記樹脂組成物を調製する。
上記樹脂組成物に使用される溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。上記溶剤は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
保護層用の材料の分散手段の例は、上記電荷発生化合物の分散手段と同じである。上記樹脂組成物の塗布方法の例は、塗布液Aの塗布方法と同じである。
上記樹脂組成物は、本実施形態の効果が得られる範囲において、上記成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、ラジカル反応開始剤が含まれる。
上記ラジカル反応開始剤は、保護層の製造工程に応じて公知の重合開始剤から適宜決定されうる。ラジカル反応開始剤の例には、アシルフォスフィンオキサイド化合物またはオキシムエステル化合物が含まれる。上記ラジカル反応開始剤は、一種であってもよく、それ以上であってもよい。
アシルフォスフィンオキサイド化合物の具体例には、下記式P1およびP2で表される化合物が含まれる。
オキシムエステル化合物の具体例には、下記式P3およびP4で表される化合物が含まれる。
上記ラジカル反応開始剤の含有量は、上記ラジカル反応性成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
次いで、上記熱可塑性樹脂の塗膜中のラジカル反応性官能基をラジカル反応させる。ラジカル反応させるための方法の例には、上記塗膜への活性光線の照射、および上記塗膜の加熱が含まれる。活性光線の上記塗膜への照射は、例えば、硬化性樹脂中のラジカル反応性成分のラジカル反応によって保護層を形成する公知の条件で行うことが可能である。
活性光線の照射エネルギーや照射時間などは、使用される光源の種類や光源の出力、保護層を形成するためのラジカル反応性官能基の種類などに応じて適宜設定されうる。活性光線の照射エネルギーは、5〜500mJ/cm2であることが好ましく、5〜10mJ/cm2であることがより好ましい。また、照射時間は、0.1秒〜10分であることが好ましく、0.1秒〜5分であることがより好ましい。
活性光線の光源の種類の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LEDが含まれる。活性光線の光源の出力は、0.1〜5kWであることが好ましく、0.5〜3kWであることがより好ましい。活性光線の波長は、250〜400nm(紫外光)であることが好ましい。
最後に、上記樹脂組成物の塗膜を乾燥し、上記塗膜を硬化させることによって、上記保護層を形成する。上記樹脂組成物の塗膜の乾燥方法の例は、塗布液Aの塗膜の乾燥方法と同じである。
以上の工程により、本実施の形態に係る感光体を製造することができる。
なお、上記感光体が導電性支持体および感光層の間に中間層を有する場合には、上記感光体の製造方法は、上記第1工程の前に感光層上に中間層を形成する工程をさらに含む。中間層は、例えば、中間層形成用の材料を混合して中間層形成用の塗布液を調製し、当該塗布液を上記導電性支持体の表面に塗布し、乾燥することによって形成されうる。
上記保護層は、上記熱可塑性樹脂と、上記電荷輸送化合物と、上記パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子と、を含有する。熱可塑性樹脂は、電荷輸送化合物との相溶性が高いため、上記保護層中に電荷輸送化合物を高濃度に含有させることができる。これにより、上記保護層の所期の電気特性を実現しうる。その一方で、電荷輸送化合物は、可塑剤としての作用を有するため、保護層の膜強度を低下させ、耐摩耗性を低くする傾向がある。しかしながら、上記保護層では、金属酸化物粒子の作用によって保護層の膜強度を高め、優れた耐摩耗性を実現しうる。また、上記保護層では、上記PFPEの作用によって保護層の滑性を高め、上記保護層のクリーニング部材に対する摩擦力(ブレードトルク)を低減させることができる。このような観点からも、優れた耐摩耗性を実現しうる。
また、上記保護層では、PFPEが金属酸化物粒子と結合した状態で存在している。上記保護層では、金属酸化物粒子が保護層の面方向および厚さ方向の両方向において分散して存在するので、金属酸化物粒子に結合しているPFPEも、上記保護層の全体に亘って分散して存在しうる。結果として、上記保護層が減耗したとしても、高いクリーニング性(滑性)を維持するのに十分な量のPFPEが上記保護層の表面に長期に亘って存在することができる。この結果として、上記感光体では、上記保護層の高いクリーニング性が長期に亘って維持される。
本実施の形態に係る感光体の製造方法によって製造された感光体において、上記PFPEが保護層中に拡散することなく、上記金属酸化物に固定されるメカニズムについては明らかではないが、下記のように推定される。すなわち、ラジカル反応性官能基の極性が高いことによって、樹脂組成物の塗膜中で、ラジカル反応性官能基が、PFPEおよび金属酸化物粒子の間で互いに集合(凝集)しやすい。ラジカル反応性官能基が互いに凝集した状態で、ラジカル反応が起こることで、上記金属酸化物粒子の表面に上記PFPEが、固定されうると推定される。
上記感光体は、電子写真方式の画像形成装置における有機感光体として使用される。たとえば、上記画像形成装置は、上記感光体と、上記感光体の表面を帯電させるための帯電装置と、帯電した上記感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成するための露光装置と、静電潜像が形成された上記感光体にトナーを供給してトナー像を形成するための現像装置と、上記感光体の表面の上記トナー像を記録媒体に転写するための転写装置と、上記記録媒体に転写された上記トナー像を構成するトナーを上記記録媒体に定着させるための定着装置と、感光体に当接して、上記トナー像が上記記録媒体に転写された後の上記感光体の表面に残留する転写残トナーを除去するためのクリーニング装置と、を有する。
また、上記感光体は、静電潜像が形成された上記感光体の表面にトナーを供給して上記静電潜像に応じたトナー像を上記感光体の表面に形成し、上記トナー像を上記感光体の表面から記録媒体に転写し、上記感光体の表面に残留する上記トナーをクリーニング装置で除去する画像形成方法に適用される。当該画像形成方法は、例えば、上記の画像形成装置によって行われる。
図1は、上記感光体を有する画像形成装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示されるように、画像形成装置100は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。感光体413は、前述の本実施の形態に係る感光体である。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、例えば、後述の二成分現像剤が収容されている。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、中間転写ベルト421を感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト20と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト20に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
次いで、画像形成装置100による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
感光体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、感光体413の表面を一様に、例えば、負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って感光体413の外周面に照射される。こうして感光体413の表面には、静電潜像が形成される。
現像装置412では、上記現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は上記現像ローラーに搬送され、当該現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、上記磁性ブラシから感光体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、感光体413の表面の静電潜像が可視化され、感光体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に感光体413の表面に残存する転写残トナーは、感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が感光体413に圧接することにより、感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
上記二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
定着装置60は、発熱ベルト20と加圧ローラー63とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを当該定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
以上のとおり、画像形成装置100は、画像を形成することができる。
前述のとおり、本実施の形態に係る感光体413の保護層は、上記熱可塑性樹脂と、上記電荷輸送化合物と、上記パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子と、を含有する。上記保護層における優れた電気特性を実現でき、カラー印刷で要求されうる画質を十分に満足することができる。これにより、本実施の形態に係る画像形成装置100では、転写メモリの発生が抑制され、結果として、画像形成装置100は、高画質の画像を形成することができる。
画像形成プロセスのクリーニングプロセスにおいて、クリーニングブレードは、感光体413の保護層に摺接し、保護層の表面に位置する転写残トナーを除去するが、本実施の形態に係る感光体413の保護層は、上記PFPE基含有粒子を含有する。金属酸化物粒子に起因する高い膜強度と、上記PFPEに起因する高い滑性により得られる低いブレードトルクとによって、保護層は、優れた耐摩耗性を有する。
また、前述のとおり、上記PFPEは、金属酸化物粒子に固定された状態で存在する。このため、保護層の全体に亘ってPFPEが分散して存在している。すなわち、上記保護層では、上記PFPEが保護層の面方向および厚さ方向の両方向において分散して存在する。これにより、クリーニング部材の摺接によって保護層が減耗しても、保護層の表面には、高いクリーニング性(滑性)を維持するのに十分な量の上記PFPEが長期に亘って存在することができる。これにより、本実施の形態に係る画像形成装置100は、高画質の画像を長期に亘って形成することができる。
これに対して、前述のとおり、重合硬化膜で構成されている保護層は、一般に、ブレードトルクが高い。このため、保護層の表面には、滑剤塗布機構またはトナーを介して滑剤が供給されるが、カバレッジの高い画像を印刷すると、クリーニングプロセスにおいて除去されてしまい、結果として、保護層において偏った摩耗および傷が生じやすくなる。保護層の傷が進行しすぎると、クリーニングプロセスにおいて、保護層の表面の転写残トナーを適切に除去できない現象、いわゆるトナーのすり抜けが生じうる。本実施の形態に係る感光体413は、上記PFPE基含有粒子に起因する高いクリーニング性によって、上記トナーのすり抜けの発生が抑制されうる。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に係る感光体は、導電性支持体と、上記導電性支持体上に配置されている感光層と、上記感光層上に配置されている保護層と、を有する電子写真感光体であって、上記保護層は、熱可塑性樹脂と、電荷輸送化合物と、パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子と、を含有する。よって、上記感光体では、十分な膜強度を確保しつつ、ブレードトルクを低減することができ、これらの特性が長期に亘って発現されうる。
したがって、上記感光体を有する上記画像形成装置は、クリーニング不良による画像欠陥の発生を抑制しつつ、長期に亘って高画質な画像を形成しうる。
ラジカル反応性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、ラジカル反応性官能基を4つ以上有し、上記保護層が、上記パーフルオロポリエーテル化合物が有する上記ラジカル反応性官能基のラジカル反応による架橋構造を含むことは、耐摩耗性およびクリーニング性の観点から、より一層効果的である。
上記ラジカル反応性官能基が、アクリロイル基およびメタクリロイル基の一方または両方であることは、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であるとの観点から、より一層効果的である。
上記絶縁性金属酸化物粒子が、シリカ粒子であることは、上記金属酸化物粒子の帯電に起因する上記保護層の帯電損失を抑制して、十分な電界強度を確保しつつ、電荷輸送剤の含有量を低減させる観点から、より一層効果的である。
なお、上記実施の形態に係る感光体の製造方法では、熱可塑性樹脂の塗膜中でラジカル反応性官能基をラジカル反応させる態様について説明したが、本発明に係る感光体の製造方法はこの態様に限定されない。たとえば、上記ラジカル反応性PFPEと上記ラジカル反応性金属酸化物粒子とをラジカル反応させて、上記PFPE基含有粒子をあらかじめ調製しておいてもよい。この場合、樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂と、上記電荷輸送化合物と、あらかじめ調製された上記PFPE基含有粒子とを溶剤に分散させることにより調製されうる。
[表面処理金属酸化物粒子1の作製]
金属酸化物粒子として数平均一次粒径50nmのシリカ(SiO2)粒子100質量部、表面処理剤として「上記例示化合物S−15」10質量部、および、メチルエチルケトン1000質量部、を湿式サンドミル(メディア:径0.5mmのアルミナビーズ)に入れ、30℃にて6時間混合した。その後、メチルエチルケトンとアルミナビーズをろ過によりシリカ粒子から分離し、当該シリカ粒子を60℃にて乾燥した。こうして、上記ラジカル反応性金属酸化物粒子である表面処理金属酸化物粒子1を作製した。
[表面処理金属酸化物粒子2〜5の作製]
表3に示されるように、金属酸化物粒子の種類と、表面処理剤の種類と、を変更したこと以外は表面処理金属酸化物粒子1の作製と同様にして、表面処理金属酸化物粒子2〜5をそれぞれ作製した。表面処理金属酸化物粒子5の作製では、上記ラジカル反応性官能基を有しない表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いた。
[表面処理金属酸化物粒子6の作製]
金属酸化物粒子として数平均一次粒径50nmのシリカ(SiO2)粒子100質量部、フッ素原子含有の表面処理剤として、下記化学式で表されるパーフルオロ−3,6−オキサデカン酸(ST−10、和光純薬工業株式会社製)7質量部、表面処理剤として「上記例示化合物S−15」3質量部、メタノール500質量部、および、トルエン500質量部、を湿式サンドミル(メディア:径0.5mmのアルミナビーズ)に入れ、30℃にて4時間混合した。その後、メタノール、トルエン、およびアルミナビーズをろ過によりシリカ粒子から分離し、当該シリカ粒子を120℃にて乾燥した。こうして、パーフルオロポリエーテル基を有する表面処理剤で処理された上記ラジカル反応性金属酸化物粒子である表面処理金属酸化物粒子6を作製した。
各表面処理金属酸化物粒子について、表面処理金属酸化物粒子No.、金属酸化物粒子の種類、金属酸化物粒子の数平均一次粒径(D)、表面処理剤の種類、および表面処理剤の処理量を表1に示す。表1において、「MOP」は、金属酸化物粒子を表し、処理量は、金属酸化物粒子100質量部に対する表面処理剤の処理量を表す。
[感光体1の作製]
(1)導電性支持体の準備
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
(2)中間層の形成
下記中間層用材料を混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層形成用の塗布液を調製した。次いで、当該塗布液を浸漬塗布法によって上記導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥させることで、厚さ2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
ポリアミド樹脂 10質量部
酸化チタン粒子 11質量部
エタノール 200質量部
ポリアミド樹脂としては、X1010(ダイセルデグサ株式会社製)を使用し、酸化チタン粒子としては、SMT500SAS(テイカ株式会社製)を使用した。
(3)電荷発生層の形成
下記電荷発生層用材料を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製)」を19.5kHz、600Wにて循環流量40L/Hで0.5時間に亘って分散することにより、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記中間層の表面に塗布し、乾燥させることで、厚さ0.3μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
電荷発生化合物 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂 12質量部
混合溶剤 400質量部
電荷発生化合物としては、Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニンおよび(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混晶を使用し、ポリビニルブチラール樹脂としては、エスレックBL−1(積水化学工業株式会社製、「エスレック」は同社の登録商標)を使用し、混合溶剤としては、3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン(4/1(体積比))を使用した。
(4)電荷輸送層の形成
下記電荷輸送層用材料を混合、溶解させることにより電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥させることで、厚さ24μmの電荷輸送層を電荷発生層上に形成した。
電荷輸送化合物(上記例示化合物T16) 60質量部
ポリカーボネート樹脂 100質量部
酸化防止剤 4質量部
ポリカーボネート樹脂として、Z300(三菱ガス化学株式会社製)を使用し、酸化防止剤として、IRGANOX1010(BASF社製、「IRGANOX」は同社の登録商標)」を使用した。
(5)保護層の形成
下記保護層用材料を溶解、分散し、保護層形成用の塗布液(熱可塑性樹脂組成物)を調製した。当該塗布液を電荷輸送層の表面に、円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。
ポリカーボネート樹脂 100質量部
表面処理金属酸化物粒子1 11質量部
ラジカル反応性PFPE(上記例示化合物MT70) 12質量部
電荷輸送化合物(上記例示化合物T16) 53質量部
重合開始剤 9質量部
混合溶剤 1300質量部
ポリカーボネート樹脂として、Z300(三菱ガス化学株式会社製)を使用し、重合開始剤として、イルガキュア819(BASFジャパン社製)を使用し、混合溶剤としては、トルエン/テトラヒドロフラン(2/8(体積比))を使用した。
次いで、上記塗布液の塗膜に、メタルハライドランプから紫外線を1分間照射して、当該塗膜における、上記表面処理金属酸化物粒子および上記ラジカル反応性PFPEが有するラジカル反応性官能基をラジカル反応させた。最後に、当該塗膜を120℃で60分間乾燥させることで、厚さ6.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。こうして、感光体1を作製した。
(感光体2〜12、C1およびC2の作製)
表2および表3に示されるように、保護層のバインダー樹脂の種類および含有量と、表面処理金属酸化物粒子の種類および含有量と、ラジカル反応性PFPEの種類および含有量と、電荷輸送化合物の種類および含有量と、重合開始剤の含有量と、を変更したこと以外は感光体1の作製と同様にして、感光体2〜12、C1およびC2をそれぞれ作製した。
なお、感光体C2の作製に使用した「P−6H」は、Xが水素原子である上記式P−6で表される化合物を表している。電荷輸送化合物としては、下記化学式T65で表される化合物をさらに使用した。
(感光体C3の作製)
下記のとおり、保護層の形成方法を変更したこと以外は感光体1の作製と同様にして、感光体C3を作製した。
まず、下記保護層用材料を溶解、分散し、保護層形成用の塗布液(熱可塑性樹脂組成物)を調製した。当該塗布液を電荷輸送層の表面に、円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。
ラジカル重合性モノマー 100質量部
表面処理金属酸化物粒子6 7質量部
重合開始剤 5質量部
混合溶剤 200質量部
ラジカル重合性モノマーとして、下記化学式で表される化合物Mc−1/FMc−1(6/4(質量比))を使用し、混合溶剤としては、2−ブチルアルコール/テトラヒドロフラン(2/8(体積比))を使用した。
次いで、上記塗布液の塗膜に、メタルハライドランプから紫外線を1分間照射して、ラジカル重合性モノマーと、上記表面処理金属酸化物粒子が有するラジカル反応性官能基と、をラジカル反応させて、上記塗膜を硬化させることによって、厚さ3.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。こうして、感光体C3を作製した。
各感光体について、区分、感光体No.、バインダー樹脂の種類および含有量と、表面処理金属酸化物粒子の種類(表面処理金属酸化物粒子No.)および含有量と、ラジカル反応性PFPEの種類および含有量と、電荷輸送化合物の種類および含有量と、重合開始剤の含有量と、を表2および表3に示す。表2および表3において、「st−MOP」は、表面処理金属酸化物粒子を示し、「r−PFPE」は、ラジカル反応性PFPEを示す。表2では、上記各成分の含有量を質量部で示しており、表3では、上記各成分の含有量を体積%で示している。質量部から体積%への換算するとき、塗布液(熱可塑性樹脂組成物)中の溶剤を除く成分の合計を100%として計算し、シリカの比重を2.2g/cm3、酸化スズの比重を6.95g/cm3、アルミナの比重を3.9g/cm3、r−PFPEの比重を1.5g/cm3、電荷輸送化合物の比重を1.1g/cm3、重合開始剤の比重を1.1g/cm3として計算した。
[評価]
感光体1〜12、C1〜C3のそれぞれを、フルカラー複写機(bizhub PRESS C8000:コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)に搭載した。まず、画像比率20%のA4版文字画像を、A4版中性紙の両面に、横送りで30万枚連続して印刷する耐久試験を行った。次いで、下記各評価(転写メモリ、耐摩耗性およびトナーのすり抜け)を行った。
(1)転写メモリ
上記耐久試験前後に30℃、80%RHの環境下において、感光体の1回転目にベタ画像、感光体の2回転目にハーフトーン画像が形成されるように設定された画像を、A3版PODグロスコート紙(100g/m2;王子製紙株式会社製)に印刷した。そして、当該ハーフトーン画像に当該ベタ画像のパターンが転写メモリとして現われるか否かを確認した。具体的には、上記ハーフトーン画像中の上記ベタ画像に対応する領域の反射濃度と、上記ハーフトーン画像中の上記ベタ画像に対応しない領域の反射濃度との差(ΔID)を算出し、下記評価基準に基づいて、各感光体の転写メモリを評価した。なお、転写メモリの評価は、上記フルカラー複写機の第2帯電手段(除電手段)を作動させずに行った。また、上記反射濃度については、マクベス反射濃度計(RD−918;グレタグマクベス社製)を用いて測定した。評価結果が「◎」および「○」の場合を合格と判定した。
(評価基準)
◎:ΔIDが0.05以下である
○:ΔIDが0.05より大きく、0.10以下である
×:ΔIDが0.10より大きい
(2)耐摩耗性
上記耐久試験前後における感光体の均一膜厚部分(感光体の両端部の膜厚が不均一に部分を、膜厚分布プロフィールに基づいて除く)を、渦電流方式の膜厚測定器(商品名:「EDDY560C」、HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いてランダムに10か所測定し、その平均値を算出し、感光体の膜厚とした。そして、上記耐久試験前後の感光体の上記膜厚の差を減耗量とした。100krоt(10万回転)あたりの減耗量をα値とし、下記基準に基づいて、各感光体について耐摩耗性を評価した。評価結果が「◎」および「○」の場合を合格と判定した。
(評価基準)
◎:α値が0.1以上0.4未満
○:α値が0.4以上0.8未満
×:α値が0.8以上
(3)トナーのすり抜け
10℃、15%RHの環境下において、紙の搬送方向の前方部に黒地部、後方部に白地部が位置するように、カバレッジ率95%の帯状画像と、カバレッジ率80%の帯状画像とを、A3版中性紙に2万枚印刷し、2万枚目の紙の白地部を目視により観察し、下記基準に基づいて、トナーのすり抜けを評価した。評価結果が「◎」および「○」の場合を合格と判定した。
(評価基準)
◎:カバレッジ率95%の帯状画像の白地部に汚れが見られなかった。
○:カバレッジ率95%の帯状画像の白地部にスジ状の汚れが発生したが、カバレッジ率80%の帯状画像の白地部にスジ状の汚れが発生しなかった。
×:カバレッジ率80%の帯状画像の白地部にスジ状の汚れが発生した。
各感光体について、区分、感光体No.および評価結果を表4に示す。
表4に示されるように、感光体1〜12については、十分な耐摩耗性およびクリーニング性(トナーのすり抜け)を確保しつつ、転写メモリの発生を抑制できた。これは、感光体1〜12の保護層が、熱可塑性樹脂と、電荷輸送化合物と、パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子と、を含有するためと考えられる。
一方で、表4に示されるように、感光体C1およびC2については、耐摩耗性およびクリーニング性(トナーのすり抜け)が不十分であった。これは、感光体C1およびC2の保護層が、パーフルオロポリエーテル基を有する金属酸化物粒子を含んでいないためと考えられる。
感光体C1の評価結果と、感光体C2の評価結果との比較から明らかなように、感光体C2の保護層は、パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいるものの、パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいない保護層を有する感光体C1と同程度の評価結果であった。これは、金属酸化物粒子がラジカル反応性官能基を有しておらず、パーフルオロポリエーテル化合物が金属酸化物粒子に結合されていないため、感光体C2の保護層の表面近傍にパーフルオロポリエーテル化合物が偏在し、PFPEによる効果が耐久試験中に損なわれたためと考えられる。
また、表4に示されるように、感光体C3については、転写メモリが発生していた。これは、感光体C3の保護層が、電荷輸送化合物を含んでおらず、保護層における電荷輸送能が不十分なためと考えられる。