JP2018067450A - 燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化チタンとカーボンブラックとの混合層を形成した燃料電池用カーボンコートセパレータ材において、混合層とチタン基材との密着性を向上させて高い導電性を長期間維持できるようにする。【解決手段】最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%以下であるチタン基材に、カーボンブラック分散塗料を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後、酸素分圧が0.2〜25Paである低酸素分圧下で500〜800℃にて熱処理する低酸素分圧下熱処理工程とを含む燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法であって、前記低酸素分圧下熱処理工程の前に、前記カーボンブラック分散塗料を塗布した基材を、非酸化性雰囲気下で400〜700℃にて熱処理を行う非酸化性熱処理工程を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、純チタン又はチタン合金製の基材上に、カーボンブラック分散塗料を塗工して得られる燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法に関し、より詳細にはカーボンブラック分散塗料を塗布した後の熱処理工程の改良に関する。
燃料電池は、固体高分子電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで挟んだものを単セルとし、ガス(水素、酸素等)の流路となる溝が形成されたセパレータ(バイポーラプレートとも呼ばれる)を介して、前記単セルを複数個重ね合わせたスタックとして構成される。燃料電池は、スタックあたりのセル数を増やすことで、出力を高くすることができる。
燃料電池用のセパレータは、発生した電流を隣のセルに流す役割も担っているので、セパレータを構成するセパレータ材には、高い導電性及びその高い導電性が燃料電池のセル内部の高温・酸性雰囲気の中においても長期間維持されることとなる導電耐久性が要求される。ここで、高い導電性及び導電耐久性とは、接触抵抗が低いことを意味する。また、接触抵抗とは、電極とセパレータ表面との間で、界面現象のために電圧降下が生じることをいう。
前記した要求を満たすべく開発されたセパレータ材が、例えば、特許文献1〜4に提案されている。
特許文献1には、固体高分子電解質型燃料電池用セパレータであって、表面に基材自身の酸化皮膜を有する金属の基材と、前記基材の酸化皮膜の表面に形成された導電性薄膜と、を有し、前記基材自身の酸化皮膜と前記導電性薄膜との間に密着性を高める中間層が形成されており、前記導電性薄膜が原子レベルで形成された炭素(C)からなる炭素薄膜であり、前記中間層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wの金属あるいはSi、Bの半金属元素から選択された1種以上の元素からなる層(Me)と、該(Me)層の上に形成された、炭素(C)と、金属あるいは半金属元素の元素(Me)とを含有し、前記基材から離れるにつれて炭素(C)の配合割合が多くなる、(炭素−Me)傾斜層と、の何れか少なくとも1層からなる燃料電池用セパレータが記載されている。
この燃料電池用セパレータでは、基材と導電性薄膜との間に中間層を形成してこれらの密着性を高めている。しかし、導電性薄膜及び中間層は、気相成膜によって積層されたものであるため、中間層と導電性薄膜との界面における密着性が弱い可能性がある。従って、燃料電池に使用すると、中間層と導電性薄膜とが剥離等してしまい、導電性が低くなってしまう可能性がある。
また、特許文献2には、金属からなる基材と該基材の表面に形成された表面処理層とを有する燃料電池のセパレータであって、前記表面処理層が、金属あるいは半金属元素(Me)、又は該金属あるいは半金属元素の炭化物(MeC)、からなる基材側部分と、原子レベルで形成された炭素(C)からなる、又は炭素に金属あるいは半金属元素(Me)又は該金属あるいは半金属元素の炭化物(MeC)を原子レベルで複合化した(C+Me又はMeC)からなる、基材と反対側部分と、を有する燃料電池のセパレータが記載されている。
しかしながら、この燃料電池用セパレータでは、当該表面処理層の基材側部分と反対側部分とは、気相成膜によって積層されたものであるため、これらの界面における密着性が弱い可能性がある。従って、燃料電池に用いると、基材側部分と反対側部分とが剥離するなどして導電性が低くなってしまう可能性がある。
また、特許文献3には、金属板表面に、導電性炭素膜が被覆してあり、導電性炭素膜が化学的気相合成法又はスパッタ法で、製膜温度400℃〜600℃で作製されたものであり、導電性炭素膜内の不対電子密度が1020個/cm以上であり、ラマン分光法によるG/D比が0.5以下であって、抵抗率が10Ωcm以下であることを特徴とする燃料電池用セパレータが記載されている。
この燃料電池用セパレータでは、化学的気相合成法またはスパッタ法により、基材表面に導電性炭素膜を直接形成している。そのため、基材と導電性炭素膜との間の密着性が弱い可能性がある。従って、燃料電池に使用すると、基材と導電性炭素膜とが剥離等してしまい、導電性が低くなってしまう可能性がある。
また、特許文献4には、金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有することを特徴とする燃料電池用セパレータが記載されている。
しかし、この燃料電池用セパレータでは、基板上に直接炭素層を形成しているため、これらの間の密着性が弱い可能性がある。従って、燃料電池に使用すると、基板と炭素層とが剥離等してしまい、導電性が低くなってしまう可能性がある。
このような背景から、本出願人は、特願2015−104578において、純チタン又はチタン合金からなる基材上に、カーボンブラック分散塗料を塗布した後、低酸素分圧下で熱処理することにより、酸化チタン(ルチル)とカーボンブラックとが混合分散した混合層を有する燃料電池用カーボンコートセパレータ材を提案している。
特許第4147925号公報 特開2004−14208号公報 特開2007−207718号公報 特開2008−204876号公報
上記した本出願人による燃料電池用カーボンコートセパレータ材は、酸化チタンとカーボンブラックとの混合層により導電性と耐久性とを両立できるものの、混合層の基材との密着性に改善の余地がある。
そこで本発明は、酸化チタンとカーボンブラックとの混合層を形成した燃料電池用カーボンコートセパレータ材において、混合層とチタン基材との密着性を向上させて高い導電性を長期間維持できるようにすることを目的とする。
前記課題を解決した本発明に係る燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法は、最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%以下であるチタン基材に、カーボンブラック分散塗料を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後、酸素分圧が0.2〜25Paである低酸素分圧下で500〜800℃にて熱処理する低酸素分圧下熱処理工程とを含む燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法であって、前記低酸素分圧下熱処理工程の前に、前記カーボンブラック分散塗料を塗布した基材を、非酸化性雰囲気下で400〜700℃にて熱処理を行う非酸化性熱処理工程を含むことを特徴とする。特に、前記塗布工程で用いる前記カーボンブラック分散塗料が、カーボンブラックと、500℃以下の加熱により残渣なく分解する樹脂からなるバインダー樹脂とを含有するとともに、前記非酸化性熱処理工程において、前記カーボンブラック分散塗料を塗布した基材を、圧力0.5Pa以下の真空下で400〜600℃にて熱処理することが好ましい。
本発明の製造方法で得られる燃料電池用カーボンコートセパレータ材は、チタン基材上に、基材からのチタン原子が、カーボンブラック分散塗料からなる塗膜中に拡散して酸化チタンとカーボンブラックとが混合した混合層が形成される。この混合層において、カーボンブラックが導電パスを形成して高い導電性が得られる。また、カーボンブラックと酸化チタンは、燃料電池内の高温酸性雰囲気(例えば、80℃、pH2)でも酸化が進まず安定している。従って、燃料電池用カーボンコートセパレータ材は、高い導電性と耐食性とが両立したものとなる。
また、低酸素分圧下熱処理工程の前に非酸化性雰囲気中で熱処理を行うことにより、混合層と基材との間にTiC層またはTiOC層が形成され、混合層と基材との密着性が高まる。
カーボン塗料の塗布工程において、塗布したカーボン塗料が脱落しないようにするため、バインダーを添加する場合がある。この場合には、非酸化熱処理工程の加熱温度の上限600℃とする。
カーボンブラック分散塗料を、500℃以下の加熱により残渣なく分解するバインダー樹脂を含む構成にすることにより、塗布後の塗膜と基材との密着性が高まり、塗膜が安定に保持される。次の熱処理の際、低酸素分圧下熱処理前に非酸化性熱処理による脱ガス処理によりバインダー樹脂から発生する分解ガスを除去しているため、この分解ガスが低酸素分圧下熱処理時にチタンの酸化を阻害したり、基材と反応することを抑制し、目的とする組成の混合層をより確実に形成するとともに混合層と基材との密着性をより高めることができる。
本発明の製造方法によれば、チタン基材上に、酸化チタンとカーボンブラックとの混合層を形成した燃料電池用カーボンコートセパレータ材が得られる。この混合層により、高い導電性及び導電耐久性が得られる。そして、基材と混合層との間にTiC層やTiOC層を介在させることができ、基材と混合層との密着性が高まる。また、カーボンブラック分散塗料がバインダー樹脂を含有することにより、塗布後の塗膜と基材との密着性が高まり塗膜が安定に保持される。また、バインダー樹脂からの分解ガスを除去して目的とする混合層を良好に密着性良く形成することができる。
本発明の製造方法により得られるカーボンコートセパレータ材を示す概略断面図である。 本発明の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 塗布工程S2で基材2の表面にカーボンブラック分散塗料を塗布する様子を示した概略説明図である。 低酸素分圧下熱処理工程S4において、基材2から外方拡散したチタン原子の一部又は全部が酸化した酸化チタン4とカーボンブラック5とが混合した混合層3が形成される様子を示した概略説明図である。 基材2と混合層3との界面を、図4に従って示す概略説明図である。 試験体の接触抵抗値を測定する様子を説明する概略図である。
以下、適宜図面を参照して本発明に係る燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。尚、下記説明では、燃料電池用カーボンコートセパレータ材を「カーボンコートセパレータ材」という。
(カーボンコートセパレータ材)
まず、本発明方法により得られるカーボンコートセパレータ材の基本構造について説明する。
図1はその概略断面図であるが、図示されるように、カーボンコートセパレータ材1は、純チタン又はチタン合金からなる基材(以下、単に基材という。)2上に、酸化チタン4(図4参照)とカーボンブラック5(図4参照)とが混合した混合層3が形成されている。
ここで、純チタンとしては、例えば、JIS H 4600に規定される1〜4種を挙げることができる。また、チタン合金としては、例えば、Ti−Al、Ti−Nb、Ti−Ta、Ti−6Al−4V、Ti−Pdを挙げることができる。ただし、いずれの場合も前記例示に限定されない。純チタン又はチタン合金製の基材とすると、軽く、耐食性に優れたものとすることができる。また、基材の表面に後記する混合層に被覆されずに露出している部分や端面部があったとしても、燃料電池内の高温酸性雰囲気(例えば、80℃、pH2)でチタン又はチタン合金が溶出せず、固体高分子膜を劣化させる恐れがない。
基材2は、例えば、厚さ0.05〜1mmの冷間板材とするのが好ましい。厚さをこの範囲とすると、セパレータの軽量化及び薄型化の要求を満足し、セパレータ材としての強度及びハンドリング性を備え、セパレータの形状にプレス加工することが比較的容易となる。基材は、コイル状に巻かれた長尺帯状のものであってもよいし、所定の寸法に切断された枚葉紙状のものであってもよい。
混合層3の中の酸化チタンは、結晶性のルチル構造のものを含み、この部分は導電耐食性に優れる。一方、この混合層3の中のカーボンブラック5は、混合層中のカーボンの結合状態をX線光電子分光分析により分析した際に検出されたカーボンのうちの70%以上がC−C結合、即ちカーボンとカーボン同士の結合を有するカーボンブラック5単体として存在しており、カーボンコートセパレータ材1の最表面から基材2へと分布している(図4参照)。つまり、このカーボンブラック4(図4参照)は、電流を流す導電パスとしての役割を果たしており、また、カーボンブラックは酸化に対して安定であるため、導電性が安定的に維持される。カーボンコートセパレータ材1は、このような混合層3が形成されていることにより、高い導電性と導電耐食性を両立することができる。
一方、カーボンがチタンと反応してチタンカーバイドを形成している場合、カーボンの結合はTi−Cの結合となるが、このチタンカーバイドは導電性があるものの酸化し易いため、この結合が支配的な場合は導電耐食性が不十分となる。
そして、混合層3の断面を観察した際にカーボンブラック5は粒状の形態を呈しており、混合層3のマトリックス(酸化チタン4のマトリックス)中に粒状のカーボンブラック5が埋まっているような形態となっている。なお、前記した断面は、板厚方向に対して平行な方向に得たものでもよく、板厚方向に対して垂直な方向に得たものでもよく、板厚方向に対して斜めとなる方向に得たものでもよい。いずれの断面においてもカーボンブラック5が粒状の形態を呈していることを確認することができる。
カーボンブラック5は、1つ又は複数の粒子が連なることにより、混合層3の最表面に突出する部分を持つとともに、混合層3と基材2の界面まで分散して電流を流す導電パスとして存在することが望ましい。
混合層3の厚さの範囲は10〜500nmが好ましい。混合層3の厚さがこの範囲であると、高い導電性と導電耐食性を備えることができる。混合層3の厚さが10nm未満であると導電耐食性が不十分となり、燃料電池内で酸化が進行して導電性が劣化する恐れがある。一方、混合層3の厚さが500nmを超えると、カーボンコートセパレータ材1にガス流路を形成するためのプレス加工を行う際に、基材2の変形により剥離して脱落する恐れがある。
なお、混合層3のさらに上に、非晶質または結晶質のカーボンブラックの層(図示せず)が積層されていてもよい。このカーボンブラックの層は、本実施形態に係るカーボンコートセパレータ材1の製造方法を実施した際に用いられたカーボンブラックが残存したものである。また、混合層3は基材2の片面のみに形成することができるが、両面に形成することもできる。
(カーボンコートセパレータ材の製造方法)
次に、図2に示すフローチャートを参照して製造方法について説明する。
図示されるように、塗布工程S2と、非酸化性熱処理工程S3と、低酸素分圧下熱処理工程S4と、を含んでおり、これらの工程がこの順で行われる。この製造方法を実施することによって、図1に示すカーボンコートセパレータ材1を製造することができる。
(塗布工程)
塗布工程S2は、最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%以下である基材2の表面に、カーボンブラック5の粉末を含有するカーボンブラック分散塗料を塗布する工程である(図3参照)。なお、最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%以下であると、最表面から深さ5〜50nmの間の平均炭素濃度も10原子%以下となることから、これらは相互に言い換えることもできる。
ここで、最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度について説明する。基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度は、例えば、X線光電子分光分析装置(X−ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)を用いて、深さ方向の組成分析を行うことにより測定することができる。なお、通常、基材2の表層からは、雰囲気中に存在する有機物などの吸着に起因する炭素が検出される。本発明では、有機物などが吸着した基材2の表層部分(コンタミ層)を除いた部分を「最表面」とし、この最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度を10原子%以下に規定している。この位置での炭素濃度が10原子%を超えているということは、基材2を作製する圧延などの工程中に、基材2の表層に加工油や雰囲気中に存在する有機物などが浸入して汚染されているか、又はそれらがチタンと反応してチタンカーバイドを形成している可能性が非常に高いことを示している。基材2の表層が加工油や有機物などで汚染されていたり、チタンカーバイドが形成されていたりすると、後記する熱処理工程S3、S4で熱処理を行った際に、カーボンブラック5が基材2の表面に結合し難くなる。そのため、混合層3が形成され難くなる結果、高い導電性及び導電耐久性を得ることができない恐れがある。
従って、基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%を超える場合は、塗布工程S2を行う前に、後記する炭素濃度低減処理工程S1を行うのが好ましい。他方、前記した位置における炭素濃度が10原子%以下である場合は、炭素濃度低減処理工程S1を行うことなく、塗布工程S2を行うことができる。なお、冷間圧延の1パスあたりの圧下率を10%以下で行うなど圧延加工プロセスを調整することで、基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度を低く抑えることができ、10原子%以下とすることが可能である。基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度は低いほど好ましい。当該位置での炭素濃度は、例えば、9原子%以下とするのが好ましく、8原子%以下とするのがより好ましい。
なお、より確実に、高い導電性及び導電耐久性を得たい場合は、後記する炭素濃度低減処理工程S1を常に行うようにするのが好ましい。
カーボンブラック分散塗料は、カーボンブラック5の粉末を含有する水性や油性の液(分散塗料)である。水性の液としては、例えば、水を溶媒として用いることができる。油性の液としては、例えば、エタノールやトルエン、シクロヘキサノンなどを用いることができる。
カーボンブラック5の粉末の粒径は20〜200nmが好ましい。カーボンブラック5の粉末は塗料中で凝集体を作りやすい傾向があるが、本製造方法では凝集体を形成させないよう工夫された塗料を用いるのが好ましい。例えば、カーボンブラック5の表面にカルボキシル基などの官能基を化学結合させて、お互いの反発を強めるようにして分散性を高めたカーボンブラック粉を用いて調製した塗料を用いるのが好ましい。
基材2へのカーボンブラック分散塗料の塗布量は、カーボンブラック5の塗布量で5μg/cm以上にすることにより、高い導電性及び導電耐久性を得ることができ、10μg/cm以上にすればより安定した導電耐久性を得ることができる。但し、カーボンブラック5の塗布量を50μg/cm以上に多くしても導電性及び導電耐久性を向上させる効果が飽和する。より好ましくは、40μg/cm以下にする。
カーボンブラック分散塗料を基材2に塗付する方法としては、例えば、刷毛塗りや、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、ディップコーター、スプレーコーターなどを用いることが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(非酸化性熱処理工程)
カーボンブラック分散塗料を塗布した基材2を、低酸素分圧下熱処理工程S4の前に、非酸化性雰囲気下で熱処理する。非酸化性雰囲気は酸素を含まなければよく、真空でもよいし、不活性ガス雰囲気でもよい。尚、真空度は、0.5Pa以下が好ましく、0.4Pa以下がより好ましい。
また、非酸化性雰熱処理工程S3における加熱温度は、真空及び不活性ガス雰囲気ともに、400〜600℃が好ましく、450〜580℃がより好ましい。
基材2の表面には、酸化によるチタンの不働態皮膜が形成されているが、非酸化性雰囲気で加熱すると、不働態皮膜中の酸素が基材中に拡散して不働態皮膜が消失する。従って、カーボンブラック分散塗料を塗布した後に非酸化性熱処理工程S3を行うことにより、基材2と塗膜との界面には、図5に示すように、基材2のチタンとカーボンブラック5とが反応してTIC層6が形成される。但し、TiCは酸化されやすいため、TiOC層が副生することもある。以下、TiOC層も含めてTiC層6という。
TiCは導電性に優れる一方で酸化しやすいため、厚くなりすぎると耐久性が不足するため、平均層厚で(以下同様)、20nm以下にすることが好ましく、15nm以下がより好ましい。但し、このTiC層6が介在することにより基材2と混合層3との密着性が固まるため、密着性向上のためには2nm以上形成することが好ましく、5nm以上がより好ましい。このような厚さになるように、処理時間を調整する。
(低酸素分圧下熱処理工程)
低酸素分圧熱処理工程S4は、酸素分圧が25Pa以下である低酸素分圧下で熱処理する工程である。この低酸素分圧熱処理工程S4により、図4に示すように、基材2の表面に、基材2から外方拡散したチタン原子の一部又は全部が酸化した酸化チタン4とカーボンブラック5とが混合した混合層3が形成される。この混合層3が形成されることによって、カーボンコートセパレータ材1に高い導電性及び導電耐久性を付与することができる。
低酸素分圧熱処理工程S4における酸素分圧は25Pa以下であり、これよりも高圧になると炭素と酸素の反応により二酸化炭素となる(燃焼する)可能性がある。つまり、カーボンブラック5の酸化分解が生じるとともに、基材2の表面が露出した露出部で基材2の表面のチタンが酸化し、酸化チタン4が多く生じる(酸化チタン4の層が厚くなり過ぎる)。さらに、これに加えて、基材2から外方拡散したチタン原子の一部又は全部が酸化した酸化チタン4とカーボンブラック5とが混合した混合層3が形成されないため、高い導電性及び導電耐久性を得ることができない。そのため、熱処理は減圧下、又はArガスや窒素ガスなどの不活性ガスやそれらの不活性ガスと酸素の混合ガスを用いるなどして、酸素分圧を25Pa以下とする必要がある。
なお、酸素分圧は、例えば、0.2〜21Paの範囲が好ましい。また、熱処理の温度は、例えば、500〜800℃の温度範囲とするのが好ましい。酸素分圧及び熱処理の温度がそれぞれ前記した範囲であると、基材2から外方拡散したチタン原子の一部又は全部が雰囲気中の微量の酸素と反応して酸化チタン4となり、酸化チタン4とカーボンブラック5が混合した混合層3を確実に形成させることができる。
一方、酸素分圧が極めて低い雰囲気下で熱処理をすると、チタンとカーボンブラック5が結合してTiCとなる反応が支配的となる。このTiCは、接触抵抗は低いものの、燃料電池内の高温酸性雰囲気(例えば80℃、pH2)では酸化が進行して抵抗が高くなるため好ましくない。これに対し、前記した混合層3に含まれる酸化チタン4とカーボンブラック5は、燃料電池内の高温酸性雰囲気(例えば、80℃、pH2)でも酸化が進まず安定している。そのため、本発明に係る製造方法によれば、高い導電性及び導電耐久性を備えたカーボンコートセパレータ材1を製造することができる。
つまり、基材2上に酸化チタン4とカーボンブラック5とが混合した混合層3を形成するためには、熱処理雰囲気中に特定量の酸素が存在する必要があり、その酸素分圧の上限は、例えば、20Paとすることができ、酸素分圧の下限は、例えば、0.3Paとすることができる。また、熱処理の温度の下限は、例えば、600℃とすることができ、熱処理の温度の上限は、例えば、750℃とすることができる。酸素分圧の上限及び下限と、熱処理温度の下限及び上限をそれぞれこのように設定してもカーボンコートセパレータ材1を製造することができる。
熱処理の時間は、例えば、熱処理の温度が500℃の場合は30分などとし、700℃の場合は1〜2分などとすることができる。熱処理の時間は、前記した例に限定されるものではなく、熱処理の温度によって適宜に設定することができる。
前記熱処理時が0.2Paに近いような酸素分圧が低い雰囲気で、400℃程度の低温条件で実施した場合、酸化チタン4の形成がやや不足となり、導電性は高いものの耐久性がやや不足する恐れがある。このような場合、前記低酸素分圧下での熱処理の後、大気雰囲気下で熱処理することによって酸化チタン4の形成を促し、耐久性を高めることもできる。この大気雰囲気下での熱処理は、カーボンブラック5の燃焼が起こり難く、酸化チタン4の形成が起こるような条件で実施すればよい。そのような条件としては、例えば、200〜500℃の温度範囲における低温側(例えば、200℃以上350℃未満)であれば30〜60分、高温側(例えば、350℃以上500℃以下)であれば0.5〜5分というように、適宜条件を調整して実施すればよい。
以上に説明したように、塗布工程S2にて、最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%以下である基材2の表面に、カーボンブラック5を含有するカーボンブラック分散塗料を塗布する。次いで、非酸化性雰熱処理工程S3を行うことにより、TiC層6により基材2と混合層3との密着性を高めることができる。そして、低酸素分圧下熱処理工程S4にて、基材2を酸素分圧25Pa以下で熱処理する。これにより、図4に示すように、熱処理された基材2の表面には、基材2から外方拡散したチタン原子の一部又は全部が酸化した酸化チタン4とカーボンブラック5とが混合した混合層3が形成され、高い導電性及び導電耐久性が付与される。
尚、上記したように、基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%を超えていると、低酸素分圧下熱処理工程S4で熱処理を行っても基材2からカーボンブラック5へのチタン原子の外方拡散が阻害され、前記した混合層3が形成され難くなる。従って、そのような場合には、図2に示すように、塗布工程S2の前に、炭素濃度低減処理工程S1を行う。
(炭素濃度低減処理工程)
炭素濃度低減処理工程S1は、塗布工程S2の前に、基材2の表面を処理して、最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度を10原子%以下にする工程である。つまり、炭素濃度低減処理工程S1は、基材2の最表面の有機物などによる汚染領域やチタンカーバイドが形成されている領域を除去して自然酸化皮膜を形成する工程である。
基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%を超えているときに、これを10原子%以下とするには、例えば、フッ酸を含む酸性水溶液中で基材2を酸洗する酸洗処理を行うのが好ましい。また、このフッ酸を含む酸性水溶液には硝酸、硫酸、過酸化水素などがそれぞれ単独もしくは組合せで含まれていてもよい。例えば、フッ酸と硝酸の混合水溶液の場合、フッ酸の濃度は0.1〜5質量%とするのが好ましく、1質量%などとするのがより好ましい。一方、硝酸濃度は1〜20質量%とするのが好ましく、5質量%などとするのがより好ましい。また、例えば、フッ酸と過酸化水素の混合水溶液の場合、フッ酸の濃度は0.1〜5質量%とするのが好ましく、1質量%などとするのがより好ましい。一方、過酸化水素濃度は1〜20質量%とするのが好ましく、5質量%などとするのがより好ましい。
酸洗処理に用いる水溶液の組成や濃度の例を挙げたが、これらに限定されるものではない。例えば、前記したフッ酸を含む混合水溶液に替えて、前記した濃度のフッ酸水溶液を単独で用いることもできる。
このように、炭素濃度低減処理工程S1を行うことで、前記した位置での炭素濃度が10原子%を超えているときであっても、当該位置での炭素濃度を確実に10原子%以下とすることができる。従って、高い導電性及び導電耐久性を備えたカーボンコートセパレータ材1を確実に製造することができる。ここで、酸洗処理によって酸洗された基材2の最表面の炭素濃度は、前記したように、例えば、9原子%であるのが好ましく、8原子%であるのが好ましい。
酸洗処理における混合水溶液の温度は、例えば、室温とすることができるが、処理速度等を勘案し、10〜90℃の範囲で調整可能である。浸漬時間は、例えば、数分〜数十分の範囲で調整可能であり、例えば、5〜7分などとすることができる。これらの条件は、基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度に応じて適宜に設定することができる。
なお、炭素濃度低減処理工程S1で基材2の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度を10原子%以下とする処理方法としては、前記した酸洗処理に限定されるものではなく、例えば、真空中(1.3×10−3Pa以下)で650℃以上の温度で熱処理して炭素を基材2中に拡散させることや、ショットブラストや研磨などにより炭素濃度が高い層を物理的に除去することなども適用可能である。
(バインダー樹脂含有)
また、塗布工程S2において、カーボンブラック分散塗料は、カーボンブラック5の粉末とともに、500℃以下の加熱により残渣なく分解する樹脂からなるバインダー樹脂を含有することが好ましい。パインダ―樹脂により、塗布後に形成される塗膜と基材との密着性が高まることで塗布後のハンドリング時に剥離しにくくなり、工程途中でも基材上に安定に保持される。このようなバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタンが好ましく、それぞれ単独でも、2種以上を混合使用してもよい。これらの中では、分解が終了する温度が低いほど熱処理工程S3における混合層3の形成に影響を及ぼさなくなると考えられることから、アクリル樹脂がより好ましい。
尚、同温度で残渣が残る樹脂としては、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等を挙げることができる。混合層3に残渣があると、カーボンブラック5による導電パスを遮断して導電性を低下させる。
カーボンブラック分散塗料におけるカーボンブラック5とバインダー樹脂との配合比率は、固形分の質量比で、(バインダー樹脂固形分量/カーボンブラック固形分量)=0.5〜2.5であることが好ましい。この比が大きくなるほどカーボンブラック5の量が少なくなることを示しており、その結果として導電性が低くなり、この比が2.5を超えると目的とする導電性が得られない。一方、この比が小さいほどバインダー樹脂の量が少なくなることを示しており、その結果として基材2と塗膜との密着性が低くなり、この比か0.5未満では密着性の向上効果が得られない。基材2と塗膜との密着性を考慮すると、この比を0.5以上にすることがより好ましい。また、導電性を考慮すると、この比を3.0以下にすることがより好ましい。
その他にも、カーボンブラック分散塗料には、粘度調整剤や界面活性剤等を、導電性や密着性に影響を与えない範囲で添加してもよい。
基材2へのカーボンブラック分散塗料の塗布量は、カーボンブラック5とバインダー樹脂との合計固形分量で、5〜100μg/cmにすることが好ましい。合計固形分量が5μg/cm未満では、カーボンブラック5及びバインダー樹脂の各量が少なすぎて、目的とする導電性及び密着性が得られない。より好ましくは、7μg/cm以上とする。一方、合計固形分量が100μg/cmを超えても、導電性や密着性の向上効果が飽和する一方でコスト増を招く。より好ましくは、80μg/cm以下とする。
(脱ガス処理工程)
カーボンブラック分散塗料がバインダー樹脂を含む場合、バインダー樹脂からの分解ガスを除去するために脱ガス処理を行う。具体的には、カーボンブラック分散塗料を塗布した基材2を真空引きしながら熱処理する。この脱ガス処理を行わずに低酸素分圧熱処理工程S4を行うと、低酸素分圧熱処理工程S4での加熱によりバインダー樹脂から分解ガスが発生し、この分解ガスの酸化に低酸素分圧熱処理工程S4における酸素が消費されて基材2からのチタンの酸化が不足する。また、分解ガスが基材2と反応して混合層3に酸化チタン4及びカーボンブラック5以外の生成物(不純物)が混入する。その結果、混合層3における酸化チタン4とカーボンブラック5とが目的とする組成とはならず、導電性や耐食性が低下する。また、不純物が混入したり、基材と発生ガスの反応形成物ができることにより、基材2と混合層3との密着性も低下する。
脱ガス処理工程S3における真空度は、0.5Pa以下が好ましく、0.4Pa以下がより好ましい。真空度が0.5Paを超えると、脱ガス効率が十分ではなく、長時間の処理が必要になる。また、加熱温度は、バインダー樹脂からの分解ガスが十分に発生する温度で、かつ、分解ガスと基材2との反応が起こり難い温度が好ましく、400〜600℃で行う。より好ましくは、450〜580℃である。尚、処理時間は、真空度や加熱温度、バインダー樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、5〜60秒が適当である。あるいは、ガスクロマトグラフィー等によりバインダー樹脂からの分解ガスの発生を検知し、分解ガスの発生が無くなったのを確認して、低酸素分圧下熱処理工程S4を行ってもよい。
尚、上記非酸化性熱処理工程S3では、同様の真空度下での加熱を行うため、この脱ガス工程を兼務することができる。
本実施形態に係るカーボンコートセパレータ材の製造方法は、以上に述べた工程以外の工程を任意に含むことができる。
例えば、炭素濃度低減処理工程S1の前に、材料を狙いの厚さに圧延してコイルに巻き取る圧延・巻き取り工程や、圧延油を除去する脱脂工程(図2において図示せず)を含んでいてもよい。
また、炭素濃度低減処理工程S1と塗布工程S2との間に、基材2を洗浄して乾燥する洗浄・乾燥工程(図2において図示せず)を含んでいてもよい。
塗布工程S2後に、塗布面を乾燥する乾燥工程(図2において図示せず)を含んでいてもよい。
さらに、低酸素分圧下熱処理工程S4の後に、熱処理で生じた長さ方向の基材2の反りを矯正して、平坦化させる矯正工程(レベリング工程)(図2において図示せず)を含んでいてもよい。
なお、矯正は、テンションレベラー、ローラーレベラー、ストレッチャーなどを用いることにより行うことができる。また、点酸素分圧下熱処理工程S4又は矯正工程を終えたカーボンコートセパレータ材1を所定の寸法に裁断する裁断工程を含んでいてもよい。
これらの工程はいずれも任意の工程であり、必要に応じて行うことができる。
(燃料電池セパレータの作製の一態様)
上記した製造方法により製造したカーボンコートセパレータ材1を用いて燃料電池セパレータ(図示せず)を作製するには、製造したカーボンコートセパレータ材1に対して、ガスを流通させるガス流路及び当該ガス流路にガスを導入するガス導入口を形成させるプレス成形工程(図示せず)を行うのが好ましい。
プレス成形工程によるカーボンコートセパレータ材1の成形は、公知のプレス成形装置に所望の形状を形成する成形用金型(例えば、ガス流路及びガス導入口を形成する成形用金型)を取り付けてプレスすることにより行うことができる。なお、成形時に潤滑剤を使用する必要がある場合は適宜使用することができる。潤滑剤を用いてプレス成形する場合は、潤滑剤を除去するための工程をプレス成形工程後に行うのが好ましい。
なお、カーボンコートセパレータ材1に対してプレス成形加工を行うと、表面の酸化チタン4とカーボンブラック5の混合層3が基材2の変形に追従しきれず、一部で基材2の新生面が露出することがある。この露出した部分には自然酸化皮膜が形成されるが、耐食性が不十分である場合は、プレス成形工程後に大気中で熱処理すると、露出した新生面の耐食性を強化することができる。
この大気雰囲気下での熱処理は、カーボンブラック5の燃焼が起こり難く、酸化チタン4の形成が起こるような条件で実施すればよい。そのような条件としては、例えば、200〜500℃の温度範囲における低温側(例えば、200℃以上350℃未満)であれば30〜60分、高温側(例えば、350℃以上500℃以下)であれば0.5〜5分というように適宜条件を調整して実施すればよい。
(燃料電池セパレータの作製の他の態様)
第1の製造方法または第2の製造方法は、ガス流路及びガス導入口が形成された燃料電池セパレータを製造する方法であってもよい。この場合、ガス流路及びガス導入口を形成させるプレス成形工程(図示せず)を前記した塗布工程S2の前に行うとよい。
具体的には、例えば、純チタン又はチタン合金を圧延し、焼鈍して基材2を作製した後、前記したプレス成形工程を行い、次いで必要に応じて炭素濃度低減処理工程S1を行い、塗布工程S2を行った後、非酸化性熱処理工程S3(脱ガス処理工程兼務)及び低酸素雰囲気下熱処理工程S4を行うのが好ましい。この場合において、プレス成形工程と炭素濃度低減処理工程S1との間に、基材2の表面に付着した油分を除去する脱脂処理を行うことができる。
また、例えば、純チタン又はチタン合金を圧延し、焼鈍して基材2を作製した後、必要に応じて炭素濃度低減処理工程S1を行い、次いで、プレス成形工程を行い、塗布工程S2を行った後、非酸化性熱処理工程S3(脱ガス処理工程兼務)を行い、次いで低酸素雰囲気下熱処理工程S4を行うのが好ましい。この場合において、プレス成形工程と塗布工程S2との間に、基材2の表面に付着した油分を除去する脱脂処理を行うことができる。
次に、実施例を挙げて本発明の内容について具体的に説明する。
<実施例1及び比較例1>
(1)試験体の作製
[基材]
基材には厚さ0.1mmの純チタン(JIS H 4600に規定される1種)の冷間圧延材を用い、50×150mmのサイズに切断加工して用いた。
用いた基材は、基材の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度をXPS分析によって測定した結果、18原子%であった(最表面から深さ5〜50nmの間の平均炭素濃度も18原子%であった)ため、下記の酸洗処理を行い、さらに、以下の工程を行うことによって試験体の作製を行った。
[酸洗処理]
酸洗処理液として5質量%の硝酸と、0.5質量%のフッ酸を含む混合水溶液(フッ酸を含む酸性水溶液)を調製した。そして、この混合水溶液に、前記50×150mmのサイズに切断加工した基材を5〜7分間室温にて浸漬処理して基材の最表面の炭素濃度が高い領域を除去した後、水洗及び超音波洗浄を行い、乾燥させた。
このようにして処理した基材の最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度をXPS分析によって測定した結果、5原子%以下であった(最表面から深さ5〜50nmの間の平均炭素濃度も5原子%であった)。
[カーボンブラック分散塗料の塗布]
市販のカーボンブラック含有塗料(東海カーボン(株)製Aqua Black−162)を用い、この塗料を蒸留水とエタノールを用いて適宜希釈した後、アクリル樹脂を添加してカーボンブラック分散塗料を調製した。尚、カーボンブラック分散塗料における(アクリル樹脂固形分量/カーボンブラック固形分量)比を1.0とした。そして、このカーボンブラック分散塗料を、刷毛塗りによって基材上に塗布した。尚、塗布量は、カーボンブラックとアクリル樹脂との合計固形分量で30μg/cmとした。
[脱ガス処理]
カーボンブラック分散塗料を塗布した後、バインダー樹脂からの分解ガスを除去するために、圧力0.2Pa下、500℃にて30秒処理した(実施例1)。一方、比較例1ではこの脱ガス処理を行わずに、次の低酸素分圧下熱処理を行った。
[低酸素分圧下熱処理]
次いで、20×50mmの試験片を切出し、この試験片を酸素分圧1.2Pa、650℃にて25秒熱処理した後、同酸素分圧、750℃にて15秒熱処理を行って試験体を製造した。尚、本熱処理は真空熱処理炉を用いて実施し、酸素分圧の調整は真空度を調整することにより行った。
(2)評価
そして、このようにして作製した各試験体について、表面に残った余剰のカーボンブラックを、エタノールを浸したベンコントで拭き取り、その後水洗、乾燥した後下記評価を行った。
[接触抵抗値の測定]
各試験体について、図6に示す接触抵抗測定装置10を用いて接触抵抗を測定した。詳細には、試験体11の両面をカーボンクロス12(Fuel Cell Earth社製、CC6 Plain、厚さ26mils(約660μm))で挟み、さらにその外側を接触面積1cmの2枚の銅電極13で挟み、荷重98N(10kgf)で加圧した。そして、直流電流電源14を用いて7.4mAの電流を通電し、カーボンクロス12の間に加わる電圧を電圧計15で測定し、接触抵抗値を求めた。接触抵抗値が8mΩ・cm未満であれば導電性が良好であると判断できるが、実施例1では3.8mΩ・cmであったのに対し、比較例1では5.6mΩ・cmであり両試験体ともに良好な導電性を示したが、実施例1の方がより導電性に優れていた。これは、実施例1ではバインダー樹脂からの分解ガスの混合層への影響が少なくなり、比較例1よりも高い導電性が得られたものと考えられる。
また、作製した直後の試験体について、下記により密着性を評価した。
[密着性の評価]
混合層の密着性を評価するために、室温にて表面皮膜(混合層)にセロテープを貼り付けて90°引き剥がし試験を行った。また、より過酷な試験条件として、試験体を20×65mmの短冊試験片に切断加工した後、引張試験機を用いて伸び率が15%となるような引張加工を実施した後、伸び加工部にセロテープを貼り付けて90°引き剥がし試験を行った。なお、混合層剥離状況の確認は光学顕微鏡観察により行った。その結果、引張加工なしでは実施例1及び比較例1ともに混合層の剥離は見られなかったが、引張加工後の評価では比較例1で混合層の剥離が顕著であったのに対し実施例1では一部に剥離が見られただけであった。これは、実施例1ではバインダー樹脂からの分解ガスを除去したことにより、混合層の形成がより良好になり、密着性が向上したものと考えられる。
<実施例2及び比較例2>
(1)試験体の作製
実施例1及び比較例1と同様にして酸洗処理を行った基材上にバインダー樹脂を含まないカーボンブラック分散塗料を塗布した後、実施例2では下記の非酸化性熱処理を行い、比較例2では同非酸化性熱処理を行わずに、実施例1及び比較例1と同様の低酸素分圧下熱処理を行って試験体を作製した。
[非酸化性熱処理]
カーボンブラック分散塗料を塗布した基材を、圧力1.3×10−3Pa、650℃にて30秒熱処理した。XPS分析したところ、基材と混合層との境界に、TiC層が平均で(10)nm形成されていた。
(2)導電性評価
そして、作製した直後の試験体について、実施例1及び比較例1と同様にして接触抵抗値を測定し、密着性を評価した。接触抵抗値は、実施例2及び比較例2共に8mΩ・cm未満であり、導電性に大きな差は見られなかった。
(3)密着性評価
試験体を20×65mmの短冊試験片に切断加工した後、引張試験機を用いて伸び率が15%となるような引張加工を実施した後、伸び加工部にセロテープを貼り付けて90°引き剥がし試験を行って混合層の密着性を評価した結果、TiC層を介在している実施例2の方が密着性に有意に優れていた。これは、TiC層により密着性が向上したものと考えられる。
1 カーボンコートセパレータ材
2 基材
3 混合層
4 酸化チタン
5 カーボンブラック
6 TiC層(またはTiOC層)
S1 炭素濃度低減処理工程
S2 塗布工程
S3 非酸化性熱処理工程
S4 低酸素分圧下熱処理工程

Claims (2)

  1. 最表面から深さ10nmの位置での炭素濃度が10原子%以下であるチタン基材に、カーボンブラック分散塗料を塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程後、酸素分圧が0.2〜25Paである低酸素分圧下で500〜800℃にて熱処理する低酸素分圧下熱処理工程と
    を含む燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法であって、
    前記低酸素分圧下熱処理工程の前に、前記カーボンブラック分散塗料を塗布した基材を、非酸化性雰囲気下で400〜700℃にて熱処理を行う非酸化性熱処理工程を含むことを特徴とする燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法。
  2. 前記塗布工程で用いる前記カーボンブラック分散塗料が、カーボンブラックと、500℃以下の加熱により残渣なく分解する樹脂からなるバインダー樹脂とを含有するとともに、
    前記非酸化性熱処理工程において、前記カーボンブラック分散塗料を塗布した基材を、圧力0.5Pa以下の真空下で400〜600℃にて熱処理することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用カーボンコートセパレータ材の製造方法。
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