JP2012186147A - 燃料電池セパレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性よく形成できる炭素膜により、低い接触抵抗を長期間維持して燃料電池に使用できる燃料電池セパレータを提供する。
【解決手段】燃料電池セパレータ10は、チタンまたはチタン合金からなる基材1と、基材1に炭素粉を圧着して形成された表面を被覆する導電性の炭素層2を備え、基材1と炭素層2との間に、熱処理にて基材1のTiと炭素層2のCが反応して生成した粒状の炭化チタン31および炭素固溶チタン32が連なって中間層3が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に使用される、チタンを基材とする燃料電池セパレータに関する。
水素等の燃料と酸素等の酸化剤を供給し続けることで継続的に電力を取り出すことができる燃料電池は、乾電池等の一次電池や鉛蓄電池等の二次電池とは異なり、発電効率が高くシステム規模の大小にあまり影響されず、騒音や振動も少ないため、多様な用途や規模をカバーするエネルギー源として期待されている。燃料電池は、具体的には、固体高分子型燃料電池(PEFC)、アルカリ電解質型燃料電池(AFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、バイオ燃料電池等として開発されている。中でも、燃料電池自動車や、家庭用コジェネレーションシステム、携帯電話やパソコン等の携帯機器向けとして、固体高分子型燃料電池の開発が進められている。
固体高分子型燃料電池(以下、燃料電池という)は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだものを単セルとし、ガス(水素、酸素等)の流路となる溝が形成されたセパレータ(バイポーラプレートとも呼ばれる)を介して前記単セルを複数個重ね合わせて構成される。
セパレータは、燃料電池において発生した電流を外部へ取り出すための部品でもあるので、接触抵抗(電極とセパレータ表面との間で、界面現象のために電圧降下が生じることをいう。)が低い材料が適用される。また、セパレータは、燃料電池の内部がpH2〜4程度の酸性雰囲気であるために高耐食性が要求され、さらに前記低接触抵抗がこの酸性雰囲気での使用中に長期間維持されるという特性も要求される。したがって、従来は、黒鉛粉末の成形体を削り出して製造されたり、黒鉛と樹脂の混合物成形体で形成された等の、カーボン製のセパレータが適用されていた。しかし、セパレータは、近年、燃料電池の薄型化や軽量化、またセル数を増やして高出力化するために、薄肉化が要求されている。前記のカーボン製のセパレータは強度や靱性に劣り、薄肉化が困難であるので、加工性および強度に優れたアルミニウム、チタン、ニッケル、それらを基とする合金、あるいはステンレス鋼等の金属材料を用いたセパレータが検討されている。
アルミニウムやステンレス鋼等をセパレータに適用すると、燃料電池の内部の酸性雰囲気で腐食して金属イオンが溶出するために、固体高分子電解質膜や触媒を早期に劣化させることになる。一方、チタン等の耐食性が良好な金属は、腐食環境下で導電性の低い不働態皮膜を形成するため、接触抵抗が劣化(上昇)する。これらのことから、金属材料を基材として、その表面に長期間維持可能な導電性を有する皮膜を被覆して、耐食性および導電性を付与したセパレータが開発されている。
導電性を有し、かつ耐食性の皮膜材料としては、Au,Ptのような貴金属または貴金属合金が挙げられるが、コストが高くなる。そこで、導電性および耐食性を有する安価な材料として、炭素を含む皮膜等を適用し、これを金属基材の表面に設けたセパレータの技術が開示されている。例えば、特許文献1に開示されたセパレータは、表面を被覆する炭素膜を、化学気相成長(CVD)法またはスパッタリング法にて高温で成膜して、非晶質とすることで導電性を高くして、低接触抵抗のセパレータとしている。さらに特許文献2に開示されたセパレータは、耐食性向上のために金属基材の酸化皮膜を残し、この酸化皮膜と表面を被覆する炭素からなる導電性薄膜との密着性を付与するために、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Cr等から選択される金属元素またはSi等の半金属元素からなる中間層を備え、さらに中間層から導電性薄膜にかけてその界面で金属元素等から炭素へと配合割合を推移させている。特許文献3に開示されたセパレータは、耐食性を付与するために金属基材表面にダイヤモンドライクカーボン層を成膜し、その上に、黒鉛粒子を分散して付着させた導電部を、アークイオンプレーティング(AIP)装置にて形成している。
特許文献4および特許文献5に開示されたセパレータは、ステンレス鋼の中でも耐酸性の高いCr,Niを添加したオーステナイト系またはオーステナイト・フェライト二相系のステンレス鋼を基材とし、その表面にカーボン粒子を分散して付着させ、特許文献4は圧着により、特許文献5は熱処理により、それぞれ基材に密着させている。
特開2007−207718号公報 特許第4147925号公報 特開2008−204876号公報 特許第3904690号公報 特許第3904696号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたセパレータは、非晶質の炭素膜のみで金属基材を被覆しているため、金属基材への環境遮蔽性(バリア性)に劣り、また炭素膜と金属基材との密着性が不十分である。特許文献2に記載されたセパレータも、基材に中間層および炭素膜を共に形成する方法としてスパッタリング法を挙げているため、非晶質の炭素膜となり、またTa,Zr,Nb等の高融点金属を通常のスパッタリング法で成膜するとピンホールを有する金属膜となるため、金属基材へのバリア性が不十分である。また、特許文献1〜3の炭素膜は、例えばカーボンターゲットを用いたスパッタリング法で成膜すると、成膜速度が遅くて生産コストが高くなる。特許文献4および特許文献5に開示されたセパレータは、カーボン粒子が島状に付着しているため、基材が部分的に露出しており、耐酸性の高いステンレス鋼基材であっても、燃料電池に使用した際に鉄イオンが溶出する虞がある。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、生産性よく形成できる炭素膜により、低い接触抵抗を長期間維持して燃料電池に使用できる燃料電池セパレータを提供することを目的とする。
本発明者らは、軽量で耐食性に優れるチタンまたはチタン合金を基材材料に適用し、炭素粉を圧着して膜を形成することで、導電性の炭素層を生産性よく十分な厚さで表面に被覆した燃料電池セパレータにすることとした。さらに、基材と炭素層との界面に、基材のチタン(Ti)と炭素層の炭素(C)を反応させた生成物を含有する中間層を形成することで、炭素層との基材との密着性、および基材へのバリア性が得られることを見出した。
すなわち、本発明に係る燃料電池セパレータは、チタンまたはチタン合金からなる基材と、表面を被覆する導電性の炭素層とを備え、前記基材と前記炭素層との間に、炭化チタンおよび炭素固溶チタンを有する中間層が形成されていることを特徴とする。また、前記中間層として、粒状の前記炭化チタンと粒状の前記炭素固溶チタンとが重なり合い面方向に沿って連なって形成された混合組織を有するものが挙げられる。さらに燃料電池セパレータは、前記炭素層がグラファイト層からなることが好ましい。
このように、基材をチタンで形成することで、当該基材の表面が露出して燃料電池内部の酸性雰囲気に曝されても、基材が腐食することがなく耐久性に優れ、基材から金属イオンが溶出しないので燃料電池を劣化させず、さらに軽量で薄肉化が可能なので、燃料電池の軽量化や小型化が比較的容易な燃料電池セパレータとなる。一方、表面に設ける導電膜を炭素層とすることで、燃料電池セパレータは良好かつ長期間維持される導電性が付与される。さらに基材と炭素層との間に、基材のチタンと炭素層の炭素とを反応させて生成した炭化チタンおよび炭素固溶チタンにより中間層が形成されていることで、基材と炭素層との密着性および基材へのバリア性が得られるだけでなく、炭素層が低抵抗の材料からなる中間層を介して基材に被覆するために基材と電気的に低抵抗で接続し、導電性がいっそう向上した燃料電池セパレータとなる。
本発明に係る燃料電池セパレータにおいて、前記炭素層は、粉状または粒状の炭素を基材に圧着して形成されたものとすることができる。このような炭素層であれば、容易に十分な厚さの膜に形成することができる。
本発明に係る燃料電池セパレータによれば、低コストに形成できる炭素膜にて低い接触抵抗を長期間維持できる。
本発明に係る燃料電池セパレータの積層構造を説明する模式図で、拡大断面図である。 実施例に係る燃料電池セパレータの試験材の断面の透過型電子顕微鏡画像写真である。 実施例に係る燃料電池セパレータの試験材の電子線回折画像写真であって、(a)は図2に示す点P1、(b)は図2に示す点P2における電子線回折である。 実施例に係る燃料電池セパレータの試験材の断面の透過型電子顕微鏡画像写真である。 実施例に係る燃料電池セパレータの試験材の電子線回折画像写真であって、(a)〜(i)は図4に示す点P4〜P12における電子線回折である。 接触抵抗の測定方法を説明する模式図である。
〔燃料電池セパレータ〕
本発明に係る燃料電池セパレータについて、図1を参照して詳細に説明する。
本発明に係る燃料電池セパレータ10は、一般的な燃料電池(固体高分子型燃料電池)に使用される板状のセパレータであり、水素や酸素等の流路となる溝が形成されている(図示省略)。図1に示すように、燃料電池セパレータ10は、チタン(純チタン)またはチタン合金からなる基材1と、燃料電池セパレータ1の表面に設けられた炭素層2と、基材1と炭素層2との間に形成した中間層3と、を備えて構成される。ここで、燃料電池セパレータ10の表面とは、燃料電池に使用された際に、当該燃料電池の内部の酸性雰囲気に曝される領域(両側の面や端面を含む)を指す。以下、燃料電池セパレータを構成する各要素について詳細に説明する。
(基材)
基材1は、燃料電池セパレータ10の基材として、板材を当該燃料電池セパレータ10の形状に成形されたものである。基材1は、薄肉化および燃料電池セパレータ10の軽量化に特に好適で、また燃料電池セパレータ10が燃料電池に使用された際に、当該燃料電池の内部の酸性雰囲気に対して十分な耐酸性を有するチタン(純チタン)またはチタン合金で形成される。例えばJIS H 4600に規定される1〜4種の純チタンや、Ti−Al,Ti−Ta,Ti−6Al−4V,Ti−Pd等のTi合金を適用でき、中でも薄型化に特に好適な純チタンが好ましい。具体的には、O:1500ppm以下(より好ましくは1000ppm以下)、Fe:1500ppm以下(より好ましくは1000ppm以下)、C:800ppm以下、N:300ppm以下、H:130ppm以下であり、残部がTiおよび不可避的不純物からなるものが好ましく、例えばJIS 1種の冷間圧延板を使用することができる。ただし、本発明において適用できる純チタンまたはチタン合金としては、これらに限定されることはなく、他の金属元素等を含有してなる前記した純チタン相当またはチタン合金相当の組成を有するものであれば、好適に用いることができる。なお、以下、本明細書において、成分や元素としてのチタンおよび炭素は、それぞれ「Ti」、「C」と表記する。
基材1の厚さ(板厚)は特に限定されないが、燃料電池セパレータの基材としては、0.05〜1mmであることが好ましい。基材1の厚さをこのような範囲とすれば、燃料電池セパレータの軽量化・薄型化の要求を満足し、板材としての強度やハンドリング性を備え、かつ、かかる厚さの板材に形成(圧延)することが容易であり、さらに炭素層2を形成した後に、当該燃料電池セパレータ10の形状に加工することが比較的容易である。
基材1の製造方法の一例としては、前記したチタンまたはチタン合金を公知の方法で鋳造、熱間圧延し、必要に応じて間に焼鈍・酸洗処理等を行って、冷間圧延にて所望の厚さまで圧延して、板(条)材として製造することができる。
ここで、チタンおよびチタン合金は大気中で自然酸化膜(TiO2、不働態皮膜)を形成するため、炭素層2等が形成される前の基材1すなわちチタン冷間圧延板の表面には、厚さ10nm程度の不働態皮膜が形成されている。さらにこの基材1は、その表層(不働態皮膜の下の母材(Ti)における表層)に、冷間圧延によって圧延油(潤滑油)に由来する炭素(C)がTiに固溶して含有する層が形成されている(以上、図示せず)。本発明に係る燃料電池セパレータ10は、これらの不働態皮膜および炭素を含有する基材1の表層を除去しないでさらに炭素層2を形成して製造される。基材1に厚い不働態皮膜が形成されていると、燃料電池セパレータの導電性が劣化し、また炭素層2の密着性に劣る。しかし、後記するように、炭素層2の形成後に低酸素雰囲気で熱処理を行うことで、不働態皮膜の酸素(O)が基材1の母材や炭素層2に拡散して不働態皮膜が薄くなって、局所的に消失、さらには全部が消失し、基材1は母材(図1における基材1)のみとなる。そして、基材1(母材)のCを含有する表層が炭素層2に接触した状態となって熱処理が継続されることで、中間層3が形成される。
(炭素層)
炭素層2は、基材1を被覆して燃料電池セパレータ10の表面に設けられ、当該燃料電池セパレータ10に腐食環境下での導電性を付与する。炭素層2は、耐食性を有する炭素(C)で形成され、導電性を有するものであればその構造は特に限定されず、六方晶系のグラファイト構造を有していても、いわゆる炭のように、微小なグラファイト構造と立方晶系のダイヤモンド構造とが混在した非晶質(無定形)構造であってもよい。特に、炭素層2は、グラファイト構造を形成していれば耐久性がいっそう向上するため、好ましい。
炭素層2は、燃料電池セパレータ10において燃料電池の内部の酸性雰囲気に曝される全表面(両側の面、端面を含む)を被覆していることがもっとも好ましいが、前記全表面の40%以上に形成されていればよく、50%以上に形成されていることが好ましい。本発明に係る燃料電池セパレータ10においては、前記した通り、基材1は腐食環境下で不働態皮膜を形成するため、基材1自体が耐食性を有するので露出していても腐食することはないが、炭素層2が被覆する面積率が高いほど燃料電池セパレータ10の導電性が向上する。したがって、炭素層2は完全に連続した膜とする必要はなく、粒状または粉状に成形された黒鉛(グラファイト)やカーボンブラックのような炭素粉を基材1に付着させて(塗布して)圧着することで形成できる(後記の燃料電池セパレータの製造方法にて詳細に説明する)。このような方法で形成されることで、炭素層2は生産性よく十分な厚さに形成され、黒鉛やカーボンブラックの導電性が得られる。
炭素層2を形成するための炭素粉は、粉径または粒径(直径)が0.5〜100μmの範囲のものが好ましい。粒径が大き過ぎると、基材1に付着させ難く、さらに圧延による基材1への圧着においても付着し難い。反対に粒径が小さ過ぎると、圧延による基材1への圧着において炭素粉が基材1に押し付けられる力が弱くなるため、基材1に付着し難くなる。
炭素層2の厚さ(膜厚)は特に限定されないが、極端に薄いと導電性が十分に得られず、また、このような薄い膜は形成時の面積あたりの炭素粉の量すなわち個数が少ないために炭素層2が隙間の多い膜となってバリア性が十分に得られず、基材1の表面に微細に露出する領域が多くなり、このような領域に不働態皮膜が形成されるため、燃料電池セパレータ10の導電性がさらに劣化する。炭素層2が燃料電池セパレータ10に十分な導電性を付与するためには、炭素の付着量に換算して2μg/cm2以上であることが好ましく、5μg/cm2以上がさらに好ましい。一方、炭素層2の炭素の付着量が1mg/cm2を超えても導電性がさらには向上せず、また、多量の炭素粉を圧着して炭素層2を形成することが困難であり、さらに炭素層2が極端に厚膜化されると基材1との熱膨張率の差により後記の熱処理等で剥離し易くなることから、炭素の付着量は1mg/cm2以下であることが好ましい。炭素層2の厚さおよび炭素の付着量は、当該炭素層2の形成における基材1への炭素粉の塗布量で制御できる。
このように、炭素層2は炭素粉を圧着して形成されることで、軟質な炭素粉同士では接合して一体の膜になるが、硬質な基材1へは押し付けられたことによって付着しているので、炭素層2の形成直後においては基材1への密着性が不十分である。また、前記した通り、基材1の表面すなわち炭素層2との界面には不働態皮膜が形成されているために、全体として接触抵抗が高い。そこで、以下のように、基材1と炭素層2との間に、不働態皮膜を消失させ、さらに中間層3を形成する。
(中間層)
中間層3は、炭素層2の形成後に当該炭素層2と基材1との界面でC,Tiが互いに拡散することで反応して生成した炭化チタン(チタンカーバイド、TiC)31および炭素固溶チタン(C固溶Ti)32により形成される層である。詳しくは図1に示すように、中間層3は、基材1と炭素層2との間で、それぞれ粒状の炭化チタン31および炭素固溶チタン32が重なり合い面方向に沿って連なって形成された混合組織である。このような中間層3は、基材1上に炭素層2を形成した後に、低酸素雰囲気で熱処理を行うことで形成される(後記の燃料電池セパレータの製造方法にて詳細に説明する)。
ここで、中間層3が形成されているということは、基材1の表面に不働態皮膜がないということである。基材1の表面に不働態皮膜が存在する状態で熱処理が行われても、炭素層2のCは不働態皮膜(TiO2)中の酸素(O)と優先的に反応し、Tiとの反応生成物はほとんど得られない。しかし、この反応により不働態皮膜から酸素が解離して二酸化炭素(CO2)として放出されるにしたがい、不働態皮膜が薄くなって最終的には消失し得る。そして、炭素層2が基材1の母材に、詳しくは母材のCを含有する表層に接触した状態になると、その接触した界面で、熱処理によりC,Tiが互いに拡散して反応するようになり、炭化チタン31および炭素固溶チタン32からなる中間層3が形成される。したがって、中間層3が形成された領域は、熱処理により基材1の不働態皮膜が消失した領域である。そして、このような領域では、炭素層2が基材1の母材に低抵抗の中間層3のみを介して被覆する状態となって、炭素層2と基材1が電気的に低抵抗で接続する。その結果、燃料電池セパレータ10は、基材1、中間層3、炭素層2の積層体として低い接触抵抗が得られる。さらに、中間層3が形成されることで、当該中間層3を介して基材1と炭素層2とが強固に接合される。その結果、燃料電池セパレータ10は、当該燃料電池セパレータ10への成形時、あるいは燃料電池に使用された際に、炭素層2が剥離等しないだけでなく、基材1と炭素層2との間に間隙を生じないので、燃料電池内部の酸性雰囲気が浸入して基材1表面に接触することがなく、新たな不働態皮膜の形成による接触抵抗の上昇が抑制され、耐久性が向上する。
中間層3を形成する炭化チタン31および炭素固溶チタン32の大きさおよび形状は規定しないが、それぞれ粒径5〜100nmの範囲のものが形成され易い。中間層3は、基材1と炭素層2との間(界面)のすべてに形成されていることがもっとも好ましいが、当該界面の50%以上に形成されていれば基材1と炭素層2との密着性が十分に得られる。また、中間層3の厚さは特に限定されず、炭化チタン31および炭素固溶チタン32の少なくとも一方の粒子1個分があればよいが、10nm以上であれば基材1と炭素層2との密着性が十分に得られて好ましい。一方、中間層3の厚さが500nmを超えても、基材1と炭素層2との密着性がさらに向上することはなく、また熱処理時間が長くなって生産性が低下するため、500nm以下が好ましく、200nm以下がさらに好ましい。
〔燃料電池セパレータの製造方法〕
次に、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法の一例を説明する。
(基材製造工程)
基材1を、前記した通り、公知の方法でチタンまたはチタン合金からなる所望の厚さの冷間圧延板(条材)を製造し、コイルに巻き取る。
(炭素層形成工程)
基材1の表面(片面または両面)に炭素粉を付着させる。付着方法は特に限定されないが、炭素粉を直接に基材1に付着させたり、炭素粉をカルボキシメチルセルロース等の水溶液や樹脂成分を含有する塗料中に分散させたスラリーを、基材1に塗布すればよい。あるいは、炭素粉と樹脂とを混練して作製した炭素粉含有フィルムを基材1に貼り付けたり、ショットブラストにより炭素粉を基材1表面に打ち込んで、基材1に担持させたり、炭素粉末と樹脂粉末とを混合して、コールドスプレー法によって基材1に付着させる方法等が挙げられる。また、スラリーを塗布した場合等、溶媒を使用した場合は、ブロー等にて乾燥させてから後続の圧着を行うことが好ましい。
炭素粉を付着させた基材1を、さらに冷間圧延を行うことにより、炭素粉を基材1に圧着して(以下、圧延圧着という)炭素層2とする。このときの冷間圧延は、基材1を製造したときの通常の冷間圧延と同様に圧延機にて行うことができるが、炭素粉が潤滑剤と同様の効果を有するので、圧延ロールには潤滑油を塗布しなくてよい。この圧延圧着における基材1の総圧延率(圧延圧着前の基材1の板厚に対する圧延圧着による基材1の板厚変化率)は0.1%以上とすることが好ましい。かかる圧延圧着により、軟質の炭素粉が変形して炭素粉同士が接合されて膜状の炭素層2を形成して、基材1に付着する。総圧延率の上限は特に規定せず、基材製造工程完了時の基材1の厚さに対して所望の厚さとなるように調整すればよいが、総圧延率が過大になると基材1に反りやうねりを生じるため、50%以下とすることが好ましい。
(熱処理工程)
炭素層2を形成した基材1を、非酸化性雰囲気で熱処理を施すことにより、基材1の不働態皮膜を薄くして少なくとも一部を消失させて、基材1(母材)に炭素層2が接触するようにし、さらに接触した界面に炭化チタン31および炭素固溶チタン32を生成させて中間層3を形成する。具体的には、真空中または窒素(N2)やAr等の低酸素雰囲気とし、酸素分圧1.3×10-3Pa以下とすることが好ましい。酸素分圧を十分に低くしていないと、熱処理で炭素層2の炭素が酸化して二酸化炭素(CO2)として解離してしまい、炭素層2の膜厚が減少する。また、熱処理温度は300〜850℃の範囲が好ましい。熱処理温度が低過ぎると、基材1と炭素層2の界面でのTiとCの反応が進行しないために中間層3が形成されず、さらに低いと、基材1の自然酸化膜(不働態皮膜)が、当該不働態皮膜中のOと炭素層2のCとの反応が進行しないために残存する。温度が高いほど、これらの反応速度は速くなるので熱処理時間を短縮できる。熱処理時間は0.5〜60分間の範囲で、熱処理温度に応じて設定する。一方、熱処理温度が高過ぎるとTiの相変態が起こるため、基材1の機械特性が変化する虞がある。
このような熱処理により、基材1の不働態皮膜中の酸素が基材1のTi母材中や炭素層2に拡散して、不働態皮膜が消失し、または十分に薄くなり、そして、基材1(母材)と炭素層2の界面でTiとCが反応して中間層3が形成される。したがって、炭素層2が基材1の母材に低抵抗の中間層3を介して被覆した状態になるために、炭素層2と基材1が電気的に低抵抗で接続し、その結果、燃料電池セパレータ10は接触抵抗が低くなる。熱処理は、前記範囲の所望の熱処理温度で熱処理を行うことができ、かつ雰囲気調整ができる熱処理炉であれば、電気炉、ガス炉等、どのような熱処理炉でも用いることができる。また、連続式の熱処理炉であれば、炭素層2を形成した基材1をコイル状の条材のままで熱処理を行うことができる。一方、バッチ式の熱処理炉を用いる場合は、炉内に収容可能な長さに、あるいは燃料電池セパレータ10とするための所定の形状に切断してから熱処理を行えばよい。
(成形工程)
さらに炭素層2および中間層3を形成した基材1を、切断、プレス加工等により、所望の形状に成形して、燃料電池セパレータ10とする。なお、成形工程は熱処理工程前に行うこともできる。すなわち中間層3が形成される前であっても、加工等により炭素層2が剥離しない程度に基材1に密着していればよい。あるいは、圧延圧着に代えてプレス加工にて炭素粉を圧着して炭素層2を形成してもよい。
以上、本発明に係る燃料電池セパレータについて、本発明を実施するための形態について説明したが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と比較して説明する。なお、本発明はこの実施例および前記形態に限定されるものではなく、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
〔試験材の作製〕
基材材料としてJIS 1種、化学組成が、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、C:350ppm、残部がTiおよび不可避的不純物の純チタンを適用し、公知の溶解、鋳造、熱間圧延、冷間圧延を施して、板厚0.12mmの基材を作製した。
平均粒径10μm、純度4Nの黒鉛粒子を、1質量%カルボキシメチルセルロース水溶液中に所定濃度となるように分散させてスラリーを作製した。そして、前記の基材に冷間圧延後の酸洗等による表層の除去を行わずに、試験材(基材)毎に塗布量を変えてスラリーを両面に塗布し、自然乾燥させた。そして、基材について、1パスあたりの圧下率が一定となるようにロールギャップを調整し、潤滑油を塗布していない圧延ロールにて、複数パスに分けて表1に示す総圧延率まで冷間圧延を施して炭素層を形成した。
炭素層を形成した基材を真空熱処理炉の予備室に収容し、予備室および炉内を1.3×10-3Pa以下の真空に排気した。そして、炉内を表1に示す温度に加熱した後、基材を炉内に搬送し、表1に示す時間の熱処理を行った。熱処理後、基材を再び予備室に搬送し、予備室にArを導入して、基材の温度が100℃以下になるまでガス冷却して、燃料電池セパレータの試験材とした。
(炭素付着量の測定)
試験材に代えて、炭素層を形成した基材(熱処理前)にて炭素の付着量を測定した。炭素層を形成した基材から所定サイズの小片を切り出して、その質量を測定した後、純水にて超音波洗浄して炭素層を除去した。この小片を乾燥した後、再び質量を測定して質量の差分を小片の炭素付着量とし、さらに面積あたりの炭素付着量を算出した。得られた炭素付着量を表1に示す。なお、本実施例のように、熱処理を非酸化性雰囲気の下で行った場合は、熱処理の前後で炭素の付着量が変化しないことが経験的に知られている。したがって、本実施例では熱処理前の基材における炭素の付着量を測定して、得られた付着量を熱処理後の基材(試験材)における炭素付着量とした。
(基材−炭素層間の構造観察)
燃料電池セパレータの試験材を切り出して、断面をイオンビーム加工装置(日立集束イオンビーム加工観察装置、FB−2100)で加工した後、基材と炭素層との界面近傍を、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope、日立電界放出形分析電子顕微鏡、HF−2200)にて倍率75万倍で観察しながら、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)を行った。さらにチタン(Ti)と炭素(C)とを含有する部分について、電子線回折にて結晶構造を解析した。試験材断面において、チタン単体からなる領域を基材、炭素単体からなる領域を炭素層として、両者の間で検出された物質を表1に示す。また、試験材No.1について、TEM画像写真を図2に示す。さらに、図3(a)、(b)に、図2の点P1,P2のそれぞれにおける電子線回折画像写真を、原子核の座標を付して、原子組成比と共に示す。同様に、試験材No.6について、TEM画像写真を図4に、図4の点P4〜P12における電子線回折画像写真および原子組成比を図5(a)〜(i)に、それぞれ示す。
〔評価〕
(接触抵抗の評価)
試験材の接触抵抗を、図6に示す接触抵抗測定装置を用いて測定した。試験材を両面から2枚のカーボンクロスで挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極で荷重98N(10kgf)に加圧し、直流電流電源を用いて7.4mAの電流を通電し、両カーボンクロス間に印加される電圧を電圧計で測定して抵抗値を算出した。得られた抵抗値を初期特性の接触抵抗として表1に示す。導電性の合格基準は、接触抵抗が10mΩ・cm2以下とした。
(耐久性の評価)
試験材を、80℃に加熱した硫酸水溶液(10mmol/L)に比液量20ml/cm2で浸漬して、飽和カロメル電極(SCE)を基準として+0.60Vの電位を200時間印加することにより、耐食試験を行った。耐食試験後に洗浄、乾燥した試験材について、前記の浸漬前の試験材と同じ方法で接触抵抗を測定し、表1に示す。耐久性の合格基準は、耐食試験後の接触抵抗が30mΩ・cm2以下とした。
(密着性の評価)
炭素層の密着性を、接触抵抗の測定に用いた接触抵抗測定装置(図6参照)を用いて評価した。試験材を、前記接触抵抗の測定と同様に、両面から2枚のカーボンクロスで挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極で荷重98N(10kgf)に加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、面方向に引き抜いた(引抜き試験)。引抜き試験後、試験材表面における銅電極による摺動領域を目視にて観察し、炭素層の残存状態、すなわち基材の露出の程度で評価した。密着性の合格基準は、基材の露出した面積率が50%未満とし、さらに基材の露出がまったく見られないものは優れているとして「○」、基材が50%未満に露出したものは良好であるとして「△」で、50%以上露出したものは不良として「×」で、表1に示す。
表1に示すように、それぞれの試験材について十分な量の炭素が基材に付着しており、圧延により、基材上に炭素粉(黒鉛粒子)が膜を形成することが確認された。さらに、試験材No.1〜6は、炭素層(C単体)の下にTi,Cを含有する粒状の物質が集合した層が観察され、例えば試験材No.1は、図2に示すように厚さ約50nmの層が形成された。また、Ti,Cを含有する層の下はTi単体(図2の点P3において、Ti:100at%)であり、酸素(O)は検出されなかった。
試験材No.1のTi,Cを含有する層の粒状の物質は、原子組成比および結晶構造(図3参照)から、炭化チタン(Ti:46.5at%、C:53.5at%)および炭素固溶チタン(Ti:65.6at%、C:34.4at%)の2種類の生成物であることが確認できた(試験材No.1の点P1,P2における測定値)。また、試験材No.1よりも熱処理温度が高くかつ処理時間が長い試験材No.6は、図4に示すようにTi,Cを含有する厚さ約100nmの層が形成された。この層は、図4の点P4〜P12における原子組成比および結晶構造(図5参照)から、粒状の炭化チタン(図4の点P4〜P8)と、粒状の炭素固溶チタン(図4の点P9〜P12)とが混合した組織であることが確認された。これらのことから、試験材No.1〜6は、基材の不働態皮膜(TiO2)が消失し、さらにこの基材と炭素層との間に、粒状の炭化チタンおよび炭素固溶チタンの2種類の生成物を有する中間層が形成された本発明に係る燃料電池セパレータの実施例である。
このように、試験材No.1〜6は、基材表面の不働態皮膜が消失したことで、表1に示すように、初期の接触抵抗が良好であった。さらに中間層が形成されたことにより、基材と炭素層との密着性に優れ、引抜き試験後の摺動領域に基材の露出がまったく見られなかった(基材露出面積率:0%)。また、耐食試験後の接触抵抗の上昇が極めて小さく耐久性に優れていたことから、耐食試験において基材表面に不働態皮膜がほとんど形成されなかったと推測でき、中間層が形成されたことで基材と炭素層との間に腐食環境(硫酸水溶液)が浸入しなかったことが確認できた。
これに対して、試験材No.7〜9は、炭素層とTi単体からなる層との間に膜状の酸化チタンが検出され、基材の表面に不働態皮膜が存在することが確認され、一方、Ti,Cの両方が検出される領域がなく、中間層が形成されていなかった。特に試験材No.7は、炭素層の形成後に熱処理を行わなかったために、基材の厚い不働態皮膜(自然酸化膜)が炭素層との界面に存在するため、初期の接触抵抗は合格基準を満たすものの、実施例(試験材No.1〜6)よりも劣った。試験材No.8,9は熱処理の温度が低く、不働態皮膜がある程度炭素と反応して薄くなったことにより、初期の接触抵抗が試験材No.7よりは向上した。しかし、試験材No.7〜9はいずれも中間層が形成されていないため、基材と炭素層との密着性に劣り、引抜き試験により摺動領域の50%以上の面積で基材が露出した。また、試験材No.7〜9は耐久性に劣り、耐食試験にて接触抵抗が大きく上昇した。これは、基材と炭素層との界面に間隙が生じ、この間隙に耐食試験にて硫酸水溶液が試験材の端面等から浸入して基材表面(不働態皮膜)の広い領域に接触したことで、不働態皮膜が成長したことによる。
10 燃料電池セパレータ
1 基材
2 炭素層
3 中間層
31 炭化チタン
32 炭素固溶チタン
すなわち、本発明に係る燃料電池セパレータは、チタンまたはチタン合金からなる基材と、表面を被覆する導電性のグラファイト層とを備え、前記基材と前記グラファイト層との間に、炭化チタンおよび炭素固溶チタンを有する中間層が形成されていることを特徴とする。また、前記中間層として、粒状の前記炭化チタンと粒状の前記炭素固溶チタンとが重なり合い面方向に沿って連なって形成された混合組織を有するものが挙げられる
このように、基材をチタンで形成することで、当該基材の表面が露出して燃料電池内部の酸性雰囲気に曝されても、基材が腐食することがなく耐久性に優れ、基材から金属イオンが溶出しないので燃料電池を劣化させず、さらに軽量で薄肉化が可能なので、燃料電池の軽量化や小型化が比較的容易な燃料電池セパレータとなる。一方、表面に設ける導電膜をグラファイト層とすることで、燃料電池セパレータは良好かつ長期間維持される導電性が付与される。さらに基材とグラファイト層との間に、基材のチタンとグラファイト層の炭素とを反応させて生成した炭化チタンおよび炭素固溶チタンにより中間層が形成されていることで、基材とグラファイト層との密着性および基材へのバリア性が得られるだけでなく、グラファイト層が低抵抗の材料からなる中間層を介して基材に被覆するために基材と電気的に低抵抗で接続し、導電性がいっそう向上した燃料電池セパレータとなる。
本発明に係る燃料電池セパレータにおいて、前記グラファイト層は、粉状または粒状の炭素を基材に圧着して形成されたものとすることができる。このようなグラファイト層であれば、容易に十分な厚さの膜に形成することができる。

Claims (4)

  1. チタンまたはチタン合金からなる基材と、表面を被覆する導電性の炭素層と、を備える燃料電池セパレータであって、
    前記基材と前記炭素層との間に、炭化チタンおよび炭素固溶チタンを有する中間層が形成されていることを特徴とする燃料電池セパレータ。
  2. 前記中間層は、粒状の前記炭化チタンと粒状の前記炭素固溶チタンとが重なり合い面方向に沿って連なって形成された混合組織を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータ。
  3. 前記炭素層がグラファイト層からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池セパレータ。
  4. 前記炭素層が、粉状または粒状の炭素を前記基材に圧着して形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池セパレータ。
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