JP2012186147A - 燃料電池セパレータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料電池セパレータ10は、チタンまたはチタン合金からなる基材1と、基材1に炭素粉を圧着して形成された表面を被覆する導電性の炭素層2を備え、基材1と炭素層2との間に、熱処理にて基材1のTiと炭素層2のCが反応して生成した粒状の炭化チタン31および炭素固溶チタン32が連なって中間層3が形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明に係る燃料電池セパレータについて、図1を参照して詳細に説明する。
本発明に係る燃料電池セパレータ10は、一般的な燃料電池(固体高分子型燃料電池)に使用される板状のセパレータであり、水素や酸素等の流路となる溝が形成されている(図示省略)。図1に示すように、燃料電池セパレータ10は、チタン(純チタン)またはチタン合金からなる基材1と、燃料電池セパレータ1の表面に設けられた炭素層2と、基材1と炭素層2との間に形成した中間層3と、を備えて構成される。ここで、燃料電池セパレータ10の表面とは、燃料電池に使用された際に、当該燃料電池の内部の酸性雰囲気に曝される領域(両側の面や端面を含む)を指す。以下、燃料電池セパレータを構成する各要素について詳細に説明する。
基材1は、燃料電池セパレータ10の基材として、板材を当該燃料電池セパレータ10の形状に成形されたものである。基材1は、薄肉化および燃料電池セパレータ10の軽量化に特に好適で、また燃料電池セパレータ10が燃料電池に使用された際に、当該燃料電池の内部の酸性雰囲気に対して十分な耐酸性を有するチタン(純チタン)またはチタン合金で形成される。例えばJIS H 4600に規定される1〜4種の純チタンや、Ti−Al,Ti−Ta,Ti−6Al−4V,Ti−Pd等のTi合金を適用でき、中でも薄型化に特に好適な純チタンが好ましい。具体的には、O:1500ppm以下(より好ましくは1000ppm以下)、Fe:1500ppm以下(より好ましくは1000ppm以下)、C:800ppm以下、N:300ppm以下、H:130ppm以下であり、残部がTiおよび不可避的不純物からなるものが好ましく、例えばJIS 1種の冷間圧延板を使用することができる。ただし、本発明において適用できる純チタンまたはチタン合金としては、これらに限定されることはなく、他の金属元素等を含有してなる前記した純チタン相当またはチタン合金相当の組成を有するものであれば、好適に用いることができる。なお、以下、本明細書において、成分や元素としてのチタンおよび炭素は、それぞれ「Ti」、「C」と表記する。
炭素層2は、基材1を被覆して燃料電池セパレータ10の表面に設けられ、当該燃料電池セパレータ10に腐食環境下での導電性を付与する。炭素層2は、耐食性を有する炭素(C)で形成され、導電性を有するものであればその構造は特に限定されず、六方晶系のグラファイト構造を有していても、いわゆる炭のように、微小なグラファイト構造と立方晶系のダイヤモンド構造とが混在した非晶質(無定形)構造であってもよい。特に、炭素層2は、グラファイト構造を形成していれば耐久性がいっそう向上するため、好ましい。
中間層3は、炭素層2の形成後に当該炭素層2と基材1との界面でC,Tiが互いに拡散することで反応して生成した炭化チタン(チタンカーバイド、TiC)31および炭素固溶チタン(C固溶Ti)32により形成される層である。詳しくは図1に示すように、中間層3は、基材1と炭素層2との間で、それぞれ粒状の炭化チタン31および炭素固溶チタン32が重なり合い面方向に沿って連なって形成された混合組織である。このような中間層3は、基材1上に炭素層2を形成した後に、低酸素雰囲気で熱処理を行うことで形成される(後記の燃料電池セパレータの製造方法にて詳細に説明する)。
次に、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法の一例を説明する。
基材1を、前記した通り、公知の方法でチタンまたはチタン合金からなる所望の厚さの冷間圧延板(条材)を製造し、コイルに巻き取る。
基材1の表面(片面または両面)に炭素粉を付着させる。付着方法は特に限定されないが、炭素粉を直接に基材1に付着させたり、炭素粉をカルボキシメチルセルロース等の水溶液や樹脂成分を含有する塗料中に分散させたスラリーを、基材1に塗布すればよい。あるいは、炭素粉と樹脂とを混練して作製した炭素粉含有フィルムを基材1に貼り付けたり、ショットブラストにより炭素粉を基材1表面に打ち込んで、基材1に担持させたり、炭素粉末と樹脂粉末とを混合して、コールドスプレー法によって基材1に付着させる方法等が挙げられる。また、スラリーを塗布した場合等、溶媒を使用した場合は、ブロー等にて乾燥させてから後続の圧着を行うことが好ましい。
炭素層2を形成した基材1を、非酸化性雰囲気で熱処理を施すことにより、基材1の不働態皮膜を薄くして少なくとも一部を消失させて、基材1(母材)に炭素層2が接触するようにし、さらに接触した界面に炭化チタン31および炭素固溶チタン32を生成させて中間層3を形成する。具体的には、真空中または窒素(N2)やAr等の低酸素雰囲気とし、酸素分圧1.3×10-3Pa以下とすることが好ましい。酸素分圧を十分に低くしていないと、熱処理で炭素層2の炭素が酸化して二酸化炭素(CO2)として解離してしまい、炭素層2の膜厚が減少する。また、熱処理温度は300〜850℃の範囲が好ましい。熱処理温度が低過ぎると、基材1と炭素層2の界面でのTiとCの反応が進行しないために中間層3が形成されず、さらに低いと、基材1の自然酸化膜(不働態皮膜)が、当該不働態皮膜中のOと炭素層2のCとの反応が進行しないために残存する。温度が高いほど、これらの反応速度は速くなるので熱処理時間を短縮できる。熱処理時間は0.5〜60分間の範囲で、熱処理温度に応じて設定する。一方、熱処理温度が高過ぎるとTiの相変態が起こるため、基材1の機械特性が変化する虞がある。
さらに炭素層2および中間層3を形成した基材1を、切断、プレス加工等により、所望の形状に成形して、燃料電池セパレータ10とする。なお、成形工程は熱処理工程前に行うこともできる。すなわち中間層3が形成される前であっても、加工等により炭素層2が剥離しない程度に基材1に密着していればよい。あるいは、圧延圧着に代えてプレス加工にて炭素粉を圧着して炭素層2を形成してもよい。
基材材料としてJIS 1種、化学組成が、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、C:350ppm、残部がTiおよび不可避的不純物の純チタンを適用し、公知の溶解、鋳造、熱間圧延、冷間圧延を施して、板厚0.12mmの基材を作製した。
試験材に代えて、炭素層を形成した基材(熱処理前)にて炭素の付着量を測定した。炭素層を形成した基材から所定サイズの小片を切り出して、その質量を測定した後、純水にて超音波洗浄して炭素層を除去した。この小片を乾燥した後、再び質量を測定して質量の差分を小片の炭素付着量とし、さらに面積あたりの炭素付着量を算出した。得られた炭素付着量を表1に示す。なお、本実施例のように、熱処理を非酸化性雰囲気の下で行った場合は、熱処理の前後で炭素の付着量が変化しないことが経験的に知られている。したがって、本実施例では熱処理前の基材における炭素の付着量を測定して、得られた付着量を熱処理後の基材(試験材)における炭素付着量とした。
燃料電池セパレータの試験材を切り出して、断面をイオンビーム加工装置(日立集束イオンビーム加工観察装置、FB−2100)で加工した後、基材と炭素層との界面近傍を、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope、日立電界放出形分析電子顕微鏡、HF−2200)にて倍率75万倍で観察しながら、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)を行った。さらにチタン(Ti)と炭素(C)とを含有する部分について、電子線回折にて結晶構造を解析した。試験材断面において、チタン単体からなる領域を基材、炭素単体からなる領域を炭素層として、両者の間で検出された物質を表1に示す。また、試験材No.1について、TEM画像写真を図2に示す。さらに、図3(a)、(b)に、図2の点P1,P2のそれぞれにおける電子線回折画像写真を、原子核の座標を付して、原子組成比と共に示す。同様に、試験材No.6について、TEM画像写真を図4に、図4の点P4〜P12における電子線回折画像写真および原子組成比を図5(a)〜(i)に、それぞれ示す。
(接触抵抗の評価)
試験材の接触抵抗を、図6に示す接触抵抗測定装置を用いて測定した。試験材を両面から2枚のカーボンクロスで挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極で荷重98N(10kgf)に加圧し、直流電流電源を用いて7.4mAの電流を通電し、両カーボンクロス間に印加される電圧を電圧計で測定して抵抗値を算出した。得られた抵抗値を初期特性の接触抵抗として表1に示す。導電性の合格基準は、接触抵抗が10mΩ・cm2以下とした。
試験材を、80℃に加熱した硫酸水溶液(10mmol/L)に比液量20ml/cm2で浸漬して、飽和カロメル電極(SCE)を基準として+0.60Vの電位を200時間印加することにより、耐食試験を行った。耐食試験後に洗浄、乾燥した試験材について、前記の浸漬前の試験材と同じ方法で接触抵抗を測定し、表1に示す。耐久性の合格基準は、耐食試験後の接触抵抗が30mΩ・cm2以下とした。
炭素層の密着性を、接触抵抗の測定に用いた接触抵抗測定装置(図6参照)を用いて評価した。試験材を、前記接触抵抗の測定と同様に、両面から2枚のカーボンクロスで挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極で荷重98N(10kgf)に加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、面方向に引き抜いた(引抜き試験)。引抜き試験後、試験材表面における銅電極による摺動領域を目視にて観察し、炭素層の残存状態、すなわち基材の露出の程度で評価した。密着性の合格基準は、基材の露出した面積率が50%未満とし、さらに基材の露出がまったく見られないものは優れているとして「○」、基材が50%未満に露出したものは良好であるとして「△」で、50%以上露出したものは不良として「×」で、表1に示す。
1 基材
2 炭素層
3 中間層
31 炭化チタン
32 炭素固溶チタン
Claims (4)
- チタンまたはチタン合金からなる基材と、表面を被覆する導電性の炭素層と、を備える燃料電池セパレータであって、
前記基材と前記炭素層との間に、炭化チタンおよび炭素固溶チタンを有する中間層が形成されていることを特徴とする燃料電池セパレータ。 - 前記中間層は、粒状の前記炭化チタンと粒状の前記炭素固溶チタンとが重なり合い面方向に沿って連なって形成された混合組織を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータ。
- 前記炭素層がグラファイト層からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池セパレータ。
- 前記炭素層が、粉状または粒状の炭素を前記基材に圧着して形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池セパレータ。
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