JP2014146550A - 燃料電池セパレータ用材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】厚さ40μm以上200μm以下のチタンまたはチタン合金からなるチタン基材の表面に、炭素原子および酸素原子を含むバインダ化合物と炭素とを含有する塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層によって被覆されたチタン基材を熱処理する熱処理工程を有する燃料電池セパレータ用材料の製造方法であって、前記塗工層によって被覆されたチタン基材がコイル状に巻回されたものであり、前記熱処理工程が10Pa以下の真空雰囲気下で行われ、前記熱処理工程において、前記塗工層から炭素層を形成させ、前記チタン基材と前記炭素層との間に炭化チタンを含む中間層を形成させることを特徴とする燃料電池セパレータ用材料の製造方法。
【選択図】なし
Description
例えば、基材自身の酸化皮膜の表面に、気相成膜法により中間層および導電性薄膜を形成する方法(特許文献1)や、基材表面に、半金属元素等からなる部分と炭素等からなる部分とから構成される表面処理層を気相成膜法により形成する方法(特許文献2)が提案されている。
また、特許文献3に開示された技術では、十分性能を得ることはできるが、熱処理は連続焼鈍、或いは切板をバッチ処理で熱処理するものであり、生産性に劣ったり、コストのかかる技術である。具体的には連続焼鈍では非酸素雰囲気を得るためにアルゴンガスや窒素ガスを大量に流す必要があることからコスト高である。また切板のバッチ処理では後工程での材料のハンドリングが煩雑となることから量産性に問題がある。
チタン基材を昇温する昇温工程と、昇温された前記チタン基材を昇温状態のまま保持する保持工程とを含み、前記昇温工程と前記保持工程とを異なる室で行うことが好ましい。
まず、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法で製造される燃料電池セパレータ(以下、適宜、「セパレータ」ともいう)について説明する。
セパレータは、チタン基材とチタン基材表面を被覆する炭素層とから構成されるセパレータ用材料の表面に、ガス流路が形成された構造を有している。なお、セパレータ用材料の炭素層は、チタン基材の片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。
そして、セパレータは、ガス拡散層と電解質膜とが積層して構成されるセルとセルの間に設けられる。
以下、燃料電池セパレータを構成する燃料電池セパレータ用材料の基材、炭素層、中間層について説明する。
<基材>
基材とは、本発明に係る燃料電池セパレータ用材料の基材であって、板材を燃料電池セパレータの形状に成形したものである。基材の材料としては、燃料電池セパレータの薄肉化・軽量化を図るのに特に好適であり、かつ燃料電池セパレータが燃料電池に使用された際に、当該燃料電池の内部の酸性雰囲気に対して十分な耐酸性を有している純チタン(チタン)またはチタン合金が使用される。例えば、JIS H4600に規定される1〜4種の純チタンや、Ti−Al、Ti−Ta、Ti−6Al−4V、Ti−Pd等のTi合金を使用することができ、中でも薄型化に特に好適な純チタンが好ましい。
炭素層は、本発明に係る燃料電池セパレータ用材料の基材の表面を被覆するように設けられる。即ち、炭素層は、燃料電池セパレータの表面に設けられる。そして、炭素層は、当該燃料電池セパレータに、腐食環境下における導電性を付与する。
炭素層は、炭素を含む層である。炭素層に使用される炭素としては、各種の結晶系の炭素や無定形の炭素が存在するが、黒鉛(グラファイト)が好ましい。さらに黒鉛としては、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉および熱分解黒鉛粉のうち、少なくとも1つ以上を含むものが好ましい。
なお、炭素層は基材の表面全体に被覆されていることが好ましいが、導電性と耐食性を確保するために、基材表面の少なくとも40%以上、好ましくは50%以上の面積に被覆されていればよい。
中間層は、本発明に係る燃料電池セパレータ用材料の製造方法によって、基材と炭素層との間に形成される層であり、炭化チタンを含む層である。中間層は、炭素層と基材との界面でC、Tiが互いに拡散することにより反応して生成した炭化チタン(チタンカーバイド、TiC)を含む層、または炭化チタンと炭素固溶チタン(C固溶Ti)とを含む層である。この中間層は、基材と炭素層との間で、粒状の炭化チタンまたは炭化チタンと炭素固溶チタンがそれぞれ重なり合い、面方向に沿って連なって形成された複合組織である。炭素層と基材は、この中間層を通して化学的に強固に密着している。この中間層は、後記するように、チタン基材上に炭素を含む塗工層を形成させた後、熱処理を行うことによって形成される。
次に、本発明に係る燃料電池セパレータ用材料の製造方法について、製造工程毎に順を追って説明する。
基材製造工程とは、前記した純チタンまたはチタン合金を公知の方法で鋳造、熱間圧延し、必要に応じて間に焼鈍・酸洗処理等を行い、冷間圧延にて所望の厚さまで圧延し、焼鈍することによって、板(条)材を製造する工程である。ここで、焼鈍とは、加熱処理して結晶粒サイズを制御することによって、圧延後の成形性を制御する処理のことである。
その他、冷間圧延後(+焼鈍後)の酸洗の有無は問わない。
塗工工程とは、基材表面に炭素原子および酸素原子を含むバインダ化合物と炭素とを含有するスラリーを塗工して、塗工層を有する基材を製造する工程である。
ここで、炭素原子および酸素原子を含むバインダ化合物とは、炭素を含有する塗工層を基材表面に形成させる際に使用される皮膜成形能を有する物質である。カルボキシメチルセルロース、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が代表的なものである。
圧着工程とは、塗工工程の後であって、後記する熱処理工程の前に、塗工層によって被覆された基材を圧着する工程である。ここで、圧着とは、基材の厚さの変化率が5%以下となる範囲で、プレスあるいはロールプレスすることである。基材の圧着による基材厚さ変化率は次式で求めることができる。
基材厚さ変化率(%)=100×(t0―t1)/t0
ここで、t0:圧着前の基材厚さ(μm)、t1:圧着後の基材の厚さ(μm)であり、基材厚さに塗工層の厚さは含まれない。
熱処理工程とは、コイル状に巻回された、塗工層によって被覆されたチタン基材を熱処理する工程である。そのため、上記の基材製造工程、塗工工程、圧着工程を経た、塗工層によって被覆されたチタン基材は、この熱処理工程を行う前に、コイル状に巻回させることが必要である。基材をコイル状に巻回する為の芯材であるコアは、最高温度に耐え得る金属製のコア(ステンレスコア、鉄コア等)であれば使用が可能であるが、熱膨張性の観点から、チタン製のコアが最も好ましい。
例えば、昇温工程を3時間、保持工程を3時間、冷却工程を2時間とした場合、1つの室でこれらを処理しようとすると、処理時間は1コイルあたり合計で8時間となる。一方、昇温工程、保持工程、冷却工程を別々の室にして、複数のコイルを並行して処理する場合には、合計で1コイルあたり5時間未満とすることができる。
矯正工程(レベリング工程)とは、熱処理で生じた長さ方向の基材の反りを矯正して、平坦化させる工程である。通常、後工程の成型工程で基材の平坦度が求められる。燃料電池セパレータ用材料の平坦度の仕様にもよるが、高い平坦度が要求される場合には、平坦化を行う矯正工程を付加することが好ましい。
本発明に係る燃料電池セパレータ用材料の製造方法では、熱処理工程の後に、熱処理された前記チタン基材を裁断する裁断工程をさらに含むことが、生産性を高めるためには好ましい。
本発明に係る燃料電池セパレータ用材料の製造方法は、基材製造工程、塗工工程、圧着工程、熱処理工程、矯正工程、裁断工程の順番で実施するが、圧着工程と矯正工程は、必要に応じて適宜選択して行うことができる。
前記の製造方法を用いて製造された燃料電池セパレータ用材料の表面に、プレス加工によってガス流路を形成するプレス加工工程を行うことによって、燃料電池セパレータを連続して生産することが可能となる。
本発明に係るコイル状の燃料電池セパレータ用材料は、厚さ40μm以上200μm以下のチタンまたはチタン合金からなるチタン基材と、チタン基材を被覆する炭素層と、チタン基材と炭素層との間に中間層とを有するコイル状の燃料電池セパレータ用材料であって、燃料電池セパレータ用材料を両面から2枚のカーボンクロスで挟み、さらにその外側を接触面積4cm2の銅電極を用いて接触荷重196Nで加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、前記基材を面方向に20cm/秒の速度で引き抜いた後の基材を被覆する炭素層の被覆面積が、前記基材を引き抜く前の基材を被覆する炭素層の被覆面積の半分以上であることを特徴としている。
次に、本発明の燃料電池セパレータ用材料の製造方法について、本発明の要件を満たす試験体(実施例1〜5)と本発明の要件を満たさない試験体(比較例1〜3)とを比較して具体的に説明する。
基材としては、0.1mm厚のJIS H4600の1種のチタン基材(冷間圧延板)を使用した。チタン基材の化学組成は、Oの含有量450ppm、Feの含有量250ppm、Nの含有量40ppm、残部がTiおよび不可避的不純物であり、サイズは240mm幅×500m長であった。なお、当該チタン基材は、チタン原料に対して従来公知の溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程(酸洗あり)、冷間圧延工程(酸洗なし)を施して得られたものである。
膨張化黒鉛粉(SECカーボン社製、SNE−6G、平均粒径7μm、純度99.9%)を1質量%メチルセルロース水溶液中に、含有量が10質量%となるように分散させてスラリーを作製した。そして、当該スラリーをマイクログラビア装置で基材表面に塗工した。このようにして基材の両面に塗工層を形成した。片面の付着量は、乾燥後で、約300μg/cm2であった。
上記の塗工層を有する基材を、直径200mmのロールプレス機を用いて、6トンの荷重を掛けて圧着した。
上記の圧着処理を施したチタン基材を、各実施例・比較例毎に、表1に記載の所定のコイル内径を有したコイル状に巻き、熱処理を行った。実施例1〜5および比較例3では、熱処理は、真空熱処理炉を用いて、以下の手順で行った。炉内の真空度が2×10−3Paに達した後、室温から200℃/時間で昇温し、バインダ化合物成分であるメチルセルロースが熱分解する温度領域である200℃〜450℃では50℃/時間で昇温し、450℃から最高到達温度までは再び200℃/時間で昇温した。最高到達温度および最高到達温度での保持時間は、表1においてそれぞれ、処理温度、処理時間として記載してある。また、熱処理時の炉内圧力の最大値は、表1に記載してある。その後、冷却は、99.9999%の高純度アルゴンガス雰囲気下で行った。この時の50℃までの冷却時間は1時間であった。
実施例1は、ロール径16mmのロールが上部に11本、下部12本配されたレベラーに180kgfの張力をかけて、平坦化した(テンションレベラー)。
実施例2は、ロール径8mmのロールが上部に13本、下部14本配されたレベラーで平坦化した(張力はなし)(レベラー)。
実施例3は、20kgfの張力をかけた状態で700℃で1分間の熱処理をした(テンション熱アニール)。
前記方法により作製した試験体について、導電性の耐久性評価(耐久性試験)を行った。
図1(a)は、本発明の燃料電池セパレータ用材料の接触抵抗を評価するための接触抵抗測定装置10の概略図である。
試験体を比液量が20ml/cm2である80℃の硫酸水溶液(10mmol/L)に1000時間浸漬した後、試験体を硫酸水溶液から取り出し、洗浄、乾燥して、接触抵抗を測定した。
硫酸浸漬後(耐久性試験後)の接触抵抗(表1では導電耐久性と示す)が15mΩ・cm2以下の場合を導電耐久性が良好、15mΩ・cm2を超える場合を導電耐久性が不良と判定した。
図1(b)は、本発明の燃料電池セパレータ用材料の密着性を評価するための密着性評価装置20の概略図である。
前記方法により作製した試験体21を、両面から2枚のカーボンクロス22で挟み、さらにその外側を接触面積4cm2の銅電極23で挟んで、接触荷重196N(20kgf)で加圧した。試験体21を、両面から加圧された状態を保持したまま、面方向に20cm/秒の速度で引き抜いた(引抜き試験)。引抜き試験後、試験体21表面における銅電極23による摺動領域を目視にて観察し、炭素層の残存状態、即ち基材の露出の程度で評価した。
平坦度は、長さ方向の平坦度を評価した。50cm長さに切断した基材を、平坦度が50μm以下のストーンブロック上におき、両端の高さを測定し、次にその基材を裏返して同様の測定を行い、測定値が大きい面の両端の高さの平均値を平坦度の数値(cm)とした。平坦度は1cm未満を優良(◎)、1cm以上5cm未満を良好(○)、5cm以上を不合格(×)とし、5cm未満を合格と判定した。
比較例1、2は、熱処理を行う際に、窒素ガスあるいはアルゴンガス雰囲気の大気圧下で行ったため、導電耐久性および密着性が劣っていた。
11、21 試験体
12、22 カーボンクロス
13、23 銅電極
14 直流電流電源
15 電圧計
20 密着性評価装置
Claims (10)
- 厚さ40μm以上200μm以下のチタンまたはチタン合金からなるチタン基材の表面に、炭素原子および酸素原子を含むバインダ化合物と炭素とを含有する塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層によって被覆されたチタン基材を熱処理する熱処理工程を有する燃料電池セパレータ用材料の製造方法であって、
前記塗工層によって被覆されたチタン基材がコイル状に巻回されたものであり、
前記熱処理工程が10Pa以下の真空雰囲気下で行われ、
前記熱処理工程において、前記塗工層から炭素層を形成させ、前記チタン基材と前記炭素層との間に炭化チタンを含む中間層を形成させることを特徴とする燃料電池セパレータ用材料の製造方法。 - 前記熱処理される前記チタン基材が冷間圧延材であって、冷間圧延後に焼鈍処理が施されていないものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法。
- 前記塗工工程の後であって、前記熱処理工程の前に、前記塗工層によって被覆されたチタン基材を圧着する圧着工程を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記熱処理工程の後に、前記チタン基材の反りを矯正する矯正工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法。
- 前記塗工層によって被覆されたチタン基材のコイル内径が400mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法。
- 前記熱処理工程は、
前記塗工層によって被覆されたチタン基材を第1室の中に搬入して、前記第1室を減圧する減圧工程と、
減圧された前記第1室から、前記チタン基材を真空雰囲気に維持されている第2室に移動し、前記第2室において前記チタン基材を加熱して熱処理を施す真空熱処理工程と、
前記熱処理されたチタン基材を第3室に移動し、前記第3室にガスを導入して前記チタン基材を冷却する冷却工程とを含み、
前記第1〜3室はそれぞれ密閉が可能な互いに異なる室であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法。 - 前記真空熱処理工程は、前記チタン基材を昇温する昇温工程と、昇温された前記チタン基材を昇温状態のまま保持する保持工程とを含み、
前記昇温工程と前記保持工程とを異なる室で行うことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法。 - 前記熱処理工程の後に、前記チタン基材を裁断する裁断工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ用材料の製造方法によって燃料電池セパレータ用材料を製造する燃料電池セパレータ用材料製造工程と、
製造された燃料電池セパレータ用材料の表面にプレス加工によってガス流路を形成するプレス加工工程とを含むことを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。 - 厚さ40μm以上200μm以下のチタンまたはチタン合金からなるチタン基材と、前記チタン基材を被覆する炭素層と、前記チタン基材と前記炭素層との間に炭化チタンを含む中間層とを有するコイル状の燃料電池セパレータ用材料であって、
前記燃料電池セパレータ用材料を両面から2枚のカーボンクロスで挟み、さらにその外側を接触面積4cm2の銅電極を用いて接触荷重196Nで加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、前記基材を面方向に20cm/秒の速度で引き抜いた後の基材を被覆する炭素層の被覆面積が、前記基材を引き抜く前の基材を被覆する炭素層の被覆面積の半分以上であることを特徴とするコイル状の燃料電池セパレータ用材料。
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