JP2018066062A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】仕上焼鈍中に長時間の保定をすることなしに板厚が薄い方向性電磁鋼板の二次再結晶を安定化して、コイル内での磁気特性の偏差が小さい方向性電磁鋼板を得る。【解決手段】最終板厚が0.14〜0.24mmの薄手の方向性電磁鋼板の製造方法において、MgOを主成分とする焼鈍分離剤中に、該MgO:100質量部に対し、硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baのうちから選ばれる1種または2種以上を2.0〜20.0質量部添加する。【選択図】図1

Description

本発明は、主として変圧器や発電機等の鉄心に用いられる方向性電磁鋼板、より具体的には板厚が0.14〜0.24mmの極薄かつ低鉄損の方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
Siを含有し、結晶方位が[110]<001>方位(Goss方位)や[100]<001>方位(Cube方位)に高度に配向した方向性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を示すことから、商用周波数領域で用いられる各種電気機器の鉄心材料として広く用いられている。このような用途に用いられる方向性電磁鋼板は、一般に、50Hzの周波数で1.7Tに磁化させたときの磁気損失を表す鉄損W17/50(W/kg)が低いことが求められる。その理由は、発電機や変圧器の効率は、W17/50の値が低い鉄心材料を用いることで、大幅に向上させることができるからである。そのため、鉄損の低い材料の開発が益々強く求められるようになってきている。
電磁鋼板の鉄損は、結晶方位や純度等に依存するヒステリシス損と、板厚や比抵抗、磁区の大きさ等に依存する渦電流損との和で表される。したがって、鉄損を低減する方法としては、結晶方位の集積度を高めて磁束密度を向上し、ヒステリシス損を低減する方法や電気抵抗を高めるSiの含有量を増加させたり、鋼板の板厚を低減したり、磁区を細分化したりすることで渦電流損を低減する方法等が知られている。
これらの鉄損低減方法のうち、ヒステリシス損を低減させるべく磁束密度を向上させる方法に関しては、例えば特許文献1および特許文献2に、AlNをインヒビターとする方向性電磁鋼板を製造するに際し、Niを添加しかつNi添加量に応じてSbを所定の範囲で添加することで、一次再結晶粒の正常粒成長に対し極めて強い抑制力効果を発揮させ、一次再結晶粒集合組織の改善と二次再結晶粒の微細化を図ると共に、[110]<001>方位の圧延方向に対する平均面内ずれ角を小さくすることにより、鉄損を大幅に低減する技術が開示されている。
一方、渦電流損を低減する方法のうち板厚を低減する方法に関しては、圧延による方法と化学研磨を用いる方法が知られているが、化学研磨で板厚を薄くする方法は、歩留まりの低下が大きく、工業的規模での生産には適さない。そのため、板厚を薄くする方法には、専ら圧延による方法が用いられている。しかし、圧延して板厚を薄くすると、仕上焼鈍における二次再結晶が不安定となり、磁気特性の優れた製品を安定して製造することが難しくなるという問題があった。
この問題に対しては、例えば特許文献3に、AlNを主インヒビターとし、強圧下最終冷延を特徴とする薄手一方向性電磁鋼板の製造において、SnとSeの複合添加に加えて、さらにCuおよび/またはSbを添加することにより優れた鉄損値が得られることが記載されている。
特許文献4には、板厚0.20mm以下の薄手一方向性電磁鋼板の製造方法において、Nbを添加することによって炭窒化物の微細分散が促進されてインヒビターが強化され、これにより磁気特性が向上することが記載されている。
特許文献5には、熱延板の板厚を薄くし、コイルの巻取温度を下げると共に、仕上焼鈍パターンを適正に制御することで、1回の冷延で磁気特性の優れた薄手一方向性電磁鋼板を製造する方法が記載されている。
特許文献6には、熱延コイルの板厚を1.9mm以下とすることで、0.23mm以下の方向性電磁鋼板を一回冷延法で製造する方法が提案されている。
特許文献7および8には、スラブにおける(sol.Al/N)と二次再結晶焼鈍時の鋼板板厚dの関係を制御すると共に、仕上げ焼鈍において775〜875℃の温度域に40〜200時間保定し、さらに仕上焼鈍の875〜1050℃の温度域における昇温速度を10〜60℃/hに制御することにより、板厚が薄い方向性電磁鋼板において良好な二次再結晶を得る技術が提案されている。
これらの技術の適用により、板厚が薄くても、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造が可能になってきた。
特許第3357601号公報 特許第3357578号公報 特公平07-017956号公報 特開平06-025747号公報 特公平07-042507号公報 特開平04-341518号公報 特開2013-47382号公報 特開2013-47383号公報
しかしながら、上記のように、仕上焼鈍中に40〜200時間の保定を要する条件では、炉内滞在時間が長くコストが嵩むという課題が残っていた。また、仕上焼鈍中の昇温速度を高めることで焼鈍中のコイル内の温度勾配が大きくなる、つまりコイル中巻部と外巻部とで熱処理履歴に差異が生じ表層粒成長挙動が異なってしまうことにより、コイル内で磁気特性にバラツキが生じるという問題があった。
そこで、発明者らは、板厚が薄い方向性電磁鋼板の二次再結晶が不安定となる原因とその解決策について、鋭意検討を行った。
すなわち、仕上焼鈍途中の鋼板中のインヒビターおよび粒成長挙動を調査した結果、板厚が薄い方向性電磁鋼板において二次再結晶が不安定となる原因は、仕上焼鈍中に粒成長を抑制する役割を持つインヒビターが鋼板表面の酸化に伴い消失することで、表層粒の粗大化が進行するためであることを突き止めた。
この結果を受け、発明者らは、板厚の薄い方向性電磁鋼板において二次再結晶を安定化させるためには、仕上焼鈍中に、特に表層におけるインヒビターの劣化を抑制することが重要であると考え、さらに検討を重ねた。
その結果、一次再結晶焼鈍後の鋼板に塗布する焼鈍分離剤中に、硫酸Mgや硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baなどを適量添加することにより、仕上焼鈍中に長時間の保定などの必要なしに安定して二次再結晶が生じることを見出した。この理由は、焼鈍分離剤中に上記したような硫酸化合物を添加すると、かような硫酸化合物が仕上焼鈍中に分解して鋼板内部へSが侵入し、これによりインヒビター効果が強化され、その結果、表層における粒成長が効果的に抑制されて安定した二次再結晶効果が得られるためであると考えられる。
本発明は、上記の知見に基づいて開発されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.04〜0.12mass%、Si:1.5〜5.0mass%、Mn:0.01〜1.0mass%、sol.Al:0.010〜0.040mass%、N:0.004〜0.02mass%、Sおよび/またはSe:0.005〜0.05mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1250℃以上に加熱したのち、熱間圧延により板厚1.8mm以上の熱延板とし、ついで1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚0.14〜0.24mmの冷延板とし、一次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を鋼板に塗布してから仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
MgOを主成分とする焼鈍分離剤中に、該MgO:100質量部に対し、硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baのうちから選ばれる1種または2種以上を2.0〜20.0質量部添加することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記鋼スラブが、前記成分に加えてさらに、Sb:0.01〜0.15mass%、Ni:0.10〜1.0mass%、Cu:0.02〜1.0mass%およびMo:0.002〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記鋼スラブが、前記成分に加えてさらに、Ge,Bi,V,Nb,Te,CrおよびSnのうちから選らばれる1種または2種以上を合計で0.002〜1.0mass%含有することを特徴とする前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記鋼スラブのsol.AlとNの含有量の比(sol.Al/N)と、焼鈍分離剤中に添加する硫
酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baのうちから選ばれる1種または2種以上の合計量X(質量部)および最終板厚t(mm)が下記式を満たすことを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20
5.前記冷間圧延以降のいずれかの段階で、磁区細分化処理を施す前記1〜4のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
6.前記磁区細分化処理が、二次再結晶焼鈍後の鋼板表面への電子ビーム照射によるものである前記5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
7.前記磁区細分化処理が、二次再結晶焼鈍後の鋼板表面へのレーザー照射によるものである前記5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
8.前記磁区細分化処理が、冷間圧延後の鋼板表面への溝形成によるものである前記5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、仕上焼鈍中に長時間の保定をすることなしに板厚が薄い方向性電磁鋼板の二次再結晶を安定的に得ることが可能となる。また、仕上焼鈍における昇温速度を高める必要がなく、仕上焼鈍中のコイル内での温度勾配が小さいため、コイル内で磁気特性のバラツキが生じないという効果もある。
硫酸Mgを最適範囲〔(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3が3〜20を満たす範囲〕で添加した場合における板厚と鉄損改善代ΔWとの関係を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
以下、本発明に至った実験について説明する。
C:0.07mass%,Si:3.40mass%,Mn:0.08mass%,sol.Al:0.027mass%,N:0.01mass%,Mo:0.002mass%,S:0.01mass%,Se:0.02mass%,Ni:0.3mass%,Cu:0.1mass%,Sb:0.06mass%,Sn:0.001mass%およびCr:0.002mass%を含有するスラブを、熱間圧延により板厚2.4mmの熱延コイルとしたのち、1000℃,40秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延により板厚:1.7mmの中間冷延板とし、1150℃,80秒の中間焼鈍後、200℃での温間圧延により最終板厚:0.17mmの冷延板とした。その後、上記冷延板を脱脂処理したのち、H2:50vol%とN2:50vol%からなる湿水素雰囲気下で、850℃,2分間の脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。
ついで、一次再結晶後の鋼板表面に、表1に示す量の硫酸Mgを添加したMgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板両面合計で14.0g/m2塗布し、乾燥した。なお、表1に示す硫酸Mg量は、焼鈍分離剤中のMgO:100質量部に対する割合である。ついで、仕上焼鈍として、850℃までをN2雰囲気下で昇温速度20℃/hで加熱し、850℃から1200℃までは25vol%N2-75vol%H2の混合雰囲気下で昇温速度5℃/hで加熱し、1200℃で10時間保持する熱処理を施した。
その後、仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を形成して、製品コイルとした。
かくして得られた全長4000mの製品コイルのコイル長手方向0m、1000m、2000m、3000mおよび4000mの計5箇所の位置から、磁気測定用の試験片を採取し、JIS C 2550に記載の方法で、鉄損W17/50および磁束密度B8を測定した。
それらの測定値の中で、特性が最も悪い値をコイル内保証値、最も良好な値をコイル内良好値とし、その結果を表1に併記する。
Figure 2018066062
表1に示したとおり、焼鈍分離剤中に硫酸Mgを添加することで磁気特性のコイル内保証値および良好値が共に向上した。ただし、焼鈍分離剤中の硫酸Mgが2.0質量部に満たない場合や、20.0質量部を超えた場合には十分な磁気特性の改善効果は認められなかった。
次に、本発明の各構成要件の限定理由について述べる。
C:0.04〜0.12mass%
Cは、熱間圧延、冷間圧延中の組織の均一微細化ならびにGoss方位の発達のために有用な元素であり、少なくとも0.04mass%を含有させる必要がある。しかし、0.12mass%を超えて添加すると、一次再結晶焼鈍で脱炭不足を起こし、磁気特性が劣化するおそれがある。よって、Cは0.04〜0.12mass%の範囲とする。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Si:1.5〜5.0mass%
Siは、鋼板の比抵抗を高めて鉄損の低減に有効に寄与する元素であり、良好な磁気特性を確保する観点から、本発明では1.5mass%以上含有させるものとした。一方、5.0mass%を超える添加は、冷間加工性を著しく害するようになる。よって、Siは1.5〜5.0mass%の範囲とする。好ましくは2.0〜4.0mass%の範囲である。
Mn:0.01〜1.0mass%
Mnは、熱間加工性を改善し、熱間圧延時の表面疵を防止するのに有効な元素であり、この効果を得るためには0.01mass%以上含有させる必要がある。しかし、1.0mass%を超えて添加すると、磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.01〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.04〜0.2mass%の範囲である。
sol.Al:0.010〜0.040mass%
Alは、インヒビターであるAlNを構成する必須の元素でありが、sol.Alとして0.010mass%未満では、熱延時や熱延板焼鈍の昇温過程等において析出するAlNの量が不足し、十分なインヒビター効果を得ることができない。一方、0.040mass%を超えて添加すると、析出するインヒビターが粗大化し、逆に正常粒成長の抑制力(以下、単に抑制力ともいう)が低下してしまう。よって、AlNのインヒビター効果を十分に得るためには、Alはsol.Alで0.010〜0.040mass%の範囲とする必要がある。好ましくは0.020〜0.030mass%の範囲である。
N:0.004〜0.02mass%
Nは、Alと同様、インヒビターであるAlNを構成する必須の元素である。ただし、このNは、窒化処理を施すことで添加可能なので、スラブ段階では、0.004mass%以上含有していればよい。ただし、窒化処理を施さない場合には0.005mass%以上含有させる必要がある。一方、Nを0.02mass%超えて添加した場合には、熱間圧延においてふくれを生じるおそれがある。よって、Nは0.004〜0.02mass%の範囲とする。好ましくは0.005〜0.01mass%の範囲である。
SおよびSeの1種または2種合計:0.005〜0.05mass%
SおよびSeは、Cu2SやCu2Se等を、AlNと複合して微細析出させ、インヒビターとして利用するために必要な元素である。この目的のため、本発明では、単独もしくは合計で0.005mass%以上を含有させる必要がある。しかし、0.05mass%を超えて添加すると、析出物の粗大化を招く。よって、SおよびSeは単独または合計で0.005〜0.05mass%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.03mass%の範囲である。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、以下に述べる元素を適宜添加することができる。
Sb:0.01〜0.15mass%
Sbは、析出したインヒビターであるAlNやCu2S,Cu2Se,MnS,MnSeの表面に偏析し、インヒビターの粗大化を抑止するために有用な元素である。かかる効果は0.01mass%以上の添加で得られる。しかし、0.15mass%を超えて添加すると、脱炭反応を阻害し、磁気特性の劣化を招くようになる。よって、Sbは0.01〜0.15mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.10mass%の範囲である。
Ni:0.10〜1.0mass%
Niは、粒界にSbと共偏析して、Sbの偏析効果を促進し、インヒビターの粗大化を抑止する元素であるので、0.10mass%以上含有させることが望ましい。しかし、1.0mass%を超えて添加すると、一次再結晶焼鈍後の集合組織が劣化し、磁気特性が低下する原因となる。よって、Niは0.10〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.10〜0.50mass%の範囲である。
Cu:0.02〜1.0mass%
Cuは、Cu2SやCu2Seを構成し、インヒビターを強化するために添加することが望ましい元素である。極薄方向性電磁鋼板においては、インヒビターがMnSやMnSeであると、仕上焼鈍中に抑制力が低下し、二次再結晶が不安定となる。これに対し、インヒビターがCu2S、Cu2Seで、かつNi,Sbと共に複合添加されている場合には、インヒビターの抑制力
は低下し難い。そのため、Cuを0.02mass%以上添加することが好ましい。しかし、1.0mass%を超えて含有させると、インヒビターの粗大化を招くばかりでなく、ふくれの発生を招く。よって、Cuは0.02〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.04〜0.5mass%の範囲である。
Mo:0.002〜1.0mass%
Moは、インヒビターを強化する元素として添加される。しかし、添加量が0.002mass%に満たないとインヒビター強化の効果が小さく、Mo添加の効果が得られにくい。一方、1.0mass%を超えて添加すると二次再結晶が不安定となり磁気特性の劣化を招く。よって、Moは0.002〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.002〜0.5mass%の範囲、より好ましくは0.05〜0.1mass%の範囲である。
本発明では、上記成分に加えてさらに、インヒビター補助成分として、Ge,Bi,V,Nb,Te,CrおよびSnのうちから選ばれる1種または2種以上を、合計で0.002〜1.0mass%の範囲で含有させることができる。これらの元素は、いずれも析出物を形成し、結晶粒界や析出物の表面に偏析して抑制力を強化する補助的機能を果たす。かかる作用を得るためには、これらの元素を1種または2種類以上の合計で0.002mass%以上含有させる必要がある。しかし、1.0mass%を超える添加は、鋼の脆化や脱炭不良を招くため上限を1.0%とした。よって、上記元素は合計で0.002〜1.0mass%の範囲で含有させるのが好ましい。
焼鈍分離剤中の硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Sr、硫化Baのうちいずれか1種あるいは2種以上の合計添加量:2.0〜20.0質量部
焼鈍分離剤中に添加する硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Sr、硫化Baのうちいずれか1種あるいは2種以上は、仕上焼鈍中の鋼板表層におけるインヒビターを補強するために必須である。通常、方向性電磁鋼板の仕上焼鈍中に、鋼板表面の酸化に伴いインヒビターの消失が進行するために、表層粒の粗大化が進行する。この表層粒粗大化が二次再結晶の発現を不安定にする。この点、焼鈍分離剤中に上記の添加剤(例えば硫酸Mg)が2.0質量部以上存在すれば、焼鈍中に硫酸Mgが分解してSが鋼板内部に侵入し析出物を生成することで、インヒビターが補強される。しかしながら、添加量が2.0質量部に満たないとその効果が充分に得られず二次再結晶が安定化しない。一方、20.0質量部を超えて添加されると、二次再結晶が発現しないばかりでなく製品板にSが残留することによる磁気特性の劣化を招くおそれがある。よって、焼鈍分離剤への添加量は2.0〜20.0質量部とした。より好ましくは3.0〜10.0質量部の範囲である。
(sol.Al/N)と、焼鈍分離剤中に含まれる硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Sr、硫化Baのうちいずれか1種または2種以上の合計量X(質量部)および最終板厚tとが、3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20の関係を満たす
本発明では、前記した成分組成を満たすとともに、酸可溶Alであるsol.Alの含有量とNの含有量の比と、焼鈍分離剤中に添加する硫化物および板厚との関係が、3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20を満たすことが有利である。このメカニズムについては、必ずしも明らかではないが、発明者らは以下のように推測している。
板厚に応じて二次再結晶の発現に必要な抑制力が変化し、良好な磁気特性を得るにはそれらを適正な関係に制御する必要がある。これは、特に板厚が薄いほど、表層での結晶粒の粗大化を防ぐことが良好な二次再結晶を得るために重要な因子であるという前述した知見に基づくものである。つまり板厚が薄い場合、良好な二次再結晶を得るためには抑制力が強く保たれる必要がある。スラブ中の成分における(sol.Al/N)が大きい場合はインヒビターであるAlNが粗大に析出しているために、粒成長抑制力としては弱い。一方で(sol.Al/N)が小さいとAlNが微細に析出するために粒成長抑制力としては強い。
これに対して、焼鈍分離剤中の硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Sr、硫化Baのうちいずれか1種あるいは2種以上の合計量Xに応じて、仕上焼鈍中に鋼板へ侵入するS量が増加してインヒビターの補強効果が発現する。以上より、これらのパラメータの間に適正な関係が存在する。
発明者らは、これらの関係について鋭意検討を重ねた結果、これらが3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20の関係を満足させることにより、良好な結果が得られることを突き止めたのである。
次に、本発明の好適製造条件について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上述した成分組成に調整した鋼スラブを、再加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、一次再結晶焼鈍後、仕上焼鈍を施す一連の工程からなるものである。
上記鋼スラブの製造法については、上述した本発明の成分組成を満たしている限り、特に制限はなく、通常公知の製造条件で製造することができる。
上記鋼スラブは、その後、1250℃以上の温度に再加熱した後、熱間圧延に供する。再加熱温度が1250℃未満では、添加した元素が鋼中に固溶しないからである。なお、再加熱する方法は、ガス炉、誘導加熱炉、通電炉などの公知の方法を用いることができる。また、熱間圧延の条件は、従来公知の条件であればよく、特に制限はない。
上記スラブの再加熱後、熱間圧延により板厚1.8mm以上の熱延板とする。ここで、熱延板の板厚を1.8mm以上に限定する理由は、圧延時間を短縮し、熱延鋼板の圧延方向の温度差を低減させるためである。なお、熱間圧延の条件は、常法に準じて行えばよく、特に制限はない。
熱間圧延して得た熱延板は、その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、酸洗し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚の冷延板とする。
上記熱延板焼鈍および中間焼鈍は、熱間圧延や冷間圧延で導入された歪を利用して再結晶せるため、800℃以上の温度で行うことが好ましい。また、上記焼鈍における冷却を、急速冷却とし、鋼中の固溶C量を高めることは、二次再結晶の核生成頻度を高める効果があるので好ましい。また、急速冷却した後、所定の温度範囲で保定することは、微細カーバイドを鋼中に析出させ上記効果を高めるのでより好ましい。
なお、上記の冷間圧延では、パス間時効や温間圧延を適用してもよいことは勿論である。さらに、上記冷延板は、一次再結晶焼鈍する前に、製品板の鉄損を低減するため、鋼板表面にエッチングで溝を形成する磁区細分化処理を施してもよい。また、上記冷延板は、二次再結晶させる前までに、公知の磁区細分化処理、たとえば微細結晶粒を生成させるための点線状の局所的熱処理や化学的処理を施してもよい。
最終板厚とした冷延板は、脱脂処理し、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す。さらに、一次再結晶焼鈍では、必要に応じて窒化処理を兼ねて行ってもよく、また一次再結晶焼鈍とは別に、冷間圧延後から仕上焼鈍前までの間に窒化処理工程を付加してもよい。
上記に加えて、一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を50℃/s以上とすることにより、一次再結晶板集合組織におけるGoss方位粒の数を増加させ、二次再結晶粒を細粒化することができるので、鉄損特性をさらに改善することができる。
また、鋼板表面に塗布する焼鈍分離剤は、前述した硫化物以外は公知のものを用いることができる。
すなわち、MgOを主成分とし、これに対し、必要に応じてTiO2やSnO、SnO2、Sb2O3等を0.1〜15質量部の範囲で添加したものを用いることができる。
また、かかる焼鈍分離剤の塗布量は、鋼板両面合計で5〜30g/m2程度とすることが好ましい。
仕上焼鈍は、通常、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍を兼ねて、最高1200℃程度の温度で行われる。
二次再結晶は、通常1000℃程度で発現するが、二次再結晶が完了するまでの焼鈍雰囲気は窒素雰囲気や水素雰囲気やアルゴン雰囲気あるいはこれらの混合雰囲気であることが望ましい。これは二次再結晶焼鈍中に鋼板を過度に酸化させないためである。なお、本発明においては、従来の極薄方向性電磁鋼板の二次再結晶焼鈍のように、必ずしも特許文献5のように加熱速度を10℃/h〜60℃/hに制御する必要はない。ただし、60℃/hを超える場合は、二次再結晶粒のGoss方位への先鋭度の低下を招く可能性があるので、60℃/h以下であることが望ましい。また、5℃/h以下の昇温速度では炉内滞在時間を不必要に伸ばすことになるので、5℃/h以上であることが望ましい。
また、二次再結晶完了後に1200℃程度の高温域において水素雰囲気中で3〜10時間の保定を行うことが望ましい。3時間以下では鋼板の純化反応が充分でなく、磁気特性の劣化を招くし、10時間以上となるとコイルの形状が悪化する原因となる。また、保定を終えた後の冷却時における焼鈍雰囲気は水素雰囲気やアルゴン雰囲気あるいはこれらの混合雰囲気であることが望ましい。これは過度な酸化を防止するとともに、鋼板の窒化を防止するためである。
仕上焼鈍した鋼板は、その後、鋼板表面に残存する未反応の焼鈍分離剤を除去した後、必要に応じて、絶縁コーティングを塗布・焼付けたり、平坦化焼鈍を施したりして製品板とする。上記絶縁コーティングは、鉄損を低減するためには、張力コーティングを用いることが好ましい。
また、仕上焼鈍後の鋼板に、鉄損を低減するため、プラズマジェットやレーザー照射、電子ビーム照射を線状に施したり、突起状ロールで線状の歪を付与したりする公知の磁区細分化処理を施してもよい。さらに、仕上焼鈍により鋼板表面に形成されるフォルステライト被膜を酸洗や研磨により除去したのち、鋼板表面を電解や化学研磨などにより鏡面化し、さらに張力コーティングを施して製品板としてもよい。
実施例1(焼鈍分離剤へ添加する硫化物の種類)
C:0.06mass%,Si:3.30mass%,Mn:0.06mass%,sol.Al:0.027mass%,N:0.008mass%,S:0.02mass%,Se:0.01mass%,Ni:0.3mass%,Cu:0.1mass%,Sb:0.07mass%,Mo:0.005mass%,Bi:0.001mass%およびV:0.001mass%を含有するスラブを、熱間圧延により板厚2.4mmの熱延コイルとしたのち、1000℃×40秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延により板厚:1.7mmの中間冷延板とし、1150℃×80秒の中間焼鈍後、200℃での温間圧延により最終板厚を0.20mmの冷延板とした。
その後、上記冷延板を脱脂処理し、H2:50vol%とN2:50vol%からなる湿水素雰囲気下で850℃,2分間の脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。
ついで、一次再結晶後の鋼板表面に、表2に示す硫化物をMgOを主成分とする焼鈍分離剤中に種々の割合で添加したものを鋼板両面合計で14.0g/m2塗布し、乾燥した。仕上焼鈍として、850℃までをN2雰囲気下で昇温速度20℃/hで加熱し、850℃から1200℃までは25vol%N2-75vol%H2の混合雰囲気下で昇温速度10℃/hで加熱し、1200℃に10時間保持する熱処理を施した。
ついで、仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応の焼鈍分離剤を除去した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を被成したのち、電子ビームを、加速電圧:80kV、照射間隔:4mm、ビーム電流:3mAの条件で圧延直角方向に連続照射して製品コイルとした。
かくして得られた全長4000mの製品コイルのコイル長手方向0m、1000m、2000m、3000mおよび4000mの計5箇所の位置から、磁気測定用の試験片を採取し、JIS C 2550に記載の方法で、鉄損W17/50および磁束密度B8を測定した。
それらの測定値の中で、特性が最も悪い値をコイル内保証値、最も良好な値をコイル内良好値とし、その結果を表2に併記する。
Figure 2018066062
表2に示したとおり、焼鈍分離剤中に硫化物を添加しなかった場合に比べ、焼鈍分離剤中に硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baのうちいずれか1種あるいは2種以上の合計で2.0〜20.0質量部添加した場合には良好な磁気特性を得ることができた。
実施例2(最終板厚に対する適正な焼鈍分離剤中の硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Sr、硫化Baのうちいずれか1種あるいは2種以上の合計量)
C:0.07mass%,Si:3.40mass%,Mn:0.07mass%,sol.Al:0.025mass%,N:0.01mass%,S:0.02mass%,Se:0.01mass%,Ni:0.3mass%,Cu:0.1mass%,Sb:0.07mass%,Mo:0.002mass%およびGe:0.002mass%を含有するスラブを、熱間圧延により板厚2.4mmの熱延コイルとしたのち、1000℃,40秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延により板厚:1.7mmの中間冷延板とし、1150℃×80秒の中間焼鈍後、200℃での温間圧延により最終板厚がそれぞれ0.14、0.17,0.20,0.24mmの冷延板とした。
その後、上記冷延板を脱脂処理し、H2:50vol%とN2:50vol%からなる湿水素雰囲気下で850℃×2分間の脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。
次いで、一次再結晶後の鋼板表面に、それぞれの板厚に対し表3に示す量の硫酸Mgを添加したMgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板両面合計で14.0g/m2塗布し、乾燥した。仕上焼鈍として、850℃までをN2雰囲気下で昇温速度20℃/hで加熱し、850℃から1200℃までは25vol%N2-75vol%H2の混合雰囲気下で昇温速度20℃/hで加熱し、1200℃に10時間保持する熱処理を施した。
ついで、仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を形成し、製品コイルとした。
かくして得られた全長4000mの製品コイルのコイル長手方向0m、1000m、2000m、3000mおよび4000mの計5箇所の位置から、磁気測定用の試験片を採取し、JIS C 2550に記載の方法で、鉄損W17/50および磁束密度B8を測定した。
それらの測定値の中で、特性が最も悪い値をコイル内保証値、最も良好な値をコイル内良好値とし、その結果を表3に併記する。
Figure 2018066062
表3に示したとおり、いずれの最終板厚においても焼鈍分離剤中に硫酸Mgを2〜20質量部添加した場合には良好な磁気特性を得ることができた。
さらに、3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20を満たす条件では特に磁気特性は良好で、なおかつコイル内保証値と良好値の差も小さく、安定して磁気特性に優れたコイルを得ることができた。一方で、硫酸Mgを添加しなかった条件や20.0質量部を超えて添加した条件においては良好な二次再結晶が得られず、磁気特性不良となった。
実施例3(スラブ成分と焼鈍分離剤中の硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Sr、硫化Baのうちいずれか1種あるいは2種以上の合計量の関係)
表4に示す成分組成になるスラブを、熱間圧延により板厚2.2mmの熱延コイルとしたのち、1000℃,40秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延により板厚:1.7mmの中間冷延板とし、1150℃,80秒の中間焼鈍後、200℃の温間圧延により最終板厚を0.19mmの冷延板とした。この冷延板に対し、鋼板表面に、幅:180μm、深さ:15μmで、圧延直角方向に延びる溝を圧延方向に5mmの間隔で形成する磁区細分化処理を施した。
ついで、H2:50vol%とN2:50vol%からなる湿水素雰囲気下で、850℃,2分間の脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。
ついで、一次再結晶後の鋼板表面に、表4に示す量の硫酸Mgを添加したMgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板両面合計で14.0g/m2塗布し、乾燥した。その後、仕上焼鈍として、850℃までをN2雰囲気下で昇温速度20℃/hで加熱し、850℃から1200℃までは25vol%N2-75vol%H2の混合雰囲気下で昇温速度10℃/hで加熱し、1200℃に10時間保持する熱処理を施した。
ついで、仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を形成し、製品コイルとした。
かくして得られた全長4000mの製品コイルのコイル長手方向0m、1000m、2000m、3000mおよび4000mの計5箇所の位置から、磁気測定用の試験片を採取し、JIS C 2550に記載の方法で、鉄損W17/50および磁束密度B8を測定した。
それらの測定値の中で、特性が最も悪い値をコイル内保証値、最も良好な値をコイル内良好値とし、その結果を表4に併記する。
Figure 2018066062
表4から明らかなように、焼鈍分離剤中に適量の硫酸Mgを添加することで良好な磁気特性が得られることが分かる。また、特に焼鈍分離剤中の硫酸Mg量Xと各々のスラブ成分に対して3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20の関係を満たす条件では特に磁気特性は良好で、かつコイル内保証値と良好値の差も小さく、安定して磁気特性に優れたコイルを得ることができた。さらに、スラブ成分で、Ni:0.1〜1.0mass%、Cu:0.02〜1.0mass%およびSb:0.01〜0.15mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する条件では、特に良好な磁気特性が得られた。
実施例4(板厚に対する発明の効果確認)
C:0.065mass%,Si:3.40mass%,Mn:0.08mass%,sol.Al:0.027mass%,N:0.010mass%,S:0.03mass%,Se:0.01mass%,Ni:0.3mass%,Cu:0.1mass%,Sb:0.07mass%,Mo:0.002mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるスラブを、熱間圧延により板厚2.4mmの熱延コイルとしたのち、1000℃,40秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延により板厚:1.7mmの中間冷延板とし、1150℃×80秒の中間焼鈍後、200℃での温間圧延により最終板厚がそれぞれ0.17,0.20,0.23,0.27,0.30mmの冷延板とした。
その後、上記冷延板を脱脂処理し、H2:50vol%とN2:50vol%からなる湿水素雰囲気下で850℃×2分間の脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。
次いで、一次再結晶後の鋼板表面に、それぞれの板厚に対し表5に示す量の硫酸Mgを添加したMgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板両面合計で14.0g/m2塗布し、乾燥した。仕上焼鈍として、850℃までをN2雰囲気下で昇温速度30℃/hで加熱し、850℃から1200℃までは25vol%N2-75vol%H2の混合雰囲気下で昇温速度15℃/hで加熱し、1200℃に5時間保持する熱処理を施した。
ついで、仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を形成し、製品コイルとした。
かくして得られた全長4000mの製品コイルのコイル長手方向0m、1000m、2000m、3000mおよび4000mの計5箇所の位置から、磁気測定用の試験片を採取し、JIS C 2550に記載の方法で、鉄損W17/50および磁束密度B8を測定した。
それらの測定値の中で、特性が最も悪い値をコイル内保証値、最も良好な値をコイル内良好値とし、その結果を表5に併記する。
また、図1に、硫酸Mgを最適範囲〔(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3が3〜20を満たす範囲〕で添加した場合における板厚と鉄損改善代との関係について調べた結果を示す。
Figure 2018066062
表5に示したとおり、焼鈍分離剤中の硫酸Mg量Xが3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20の関係を満たす場合、すなわち硫酸Mgを最適範囲で添加した場合には、磁気特性は良好で、かつコイル内保証値と良好値の差も小さく、安定して磁気特性に優れたコイルを得ることができた。
ただし、図1に示したように、板厚が0.27mm以上の場合は鉄損の改善代が小さい。

Claims (8)

  1. C:0.04〜0.12mass%、Si:1.5〜5.0mass%、Mn:0.01〜1.0mass%、sol.Al:0.010〜0.040mass%、N:0.004〜0.02mass%、Sおよび/またはSe:0.005〜0.05mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1250℃以上に加熱したのち、熱間圧延により板厚1.8mm以上の熱延板とし、ついで1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚0.14〜0.24mmの冷延板とし、一次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を鋼板に塗布してから仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    MgOを主成分とする焼鈍分離剤中に、該MgO:100質量部に対し、硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baのうちから選ばれる1種または2種以上を2.0〜20.0質量部添加することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼スラブが、前記成分に加えてさらに、Sb:0.01〜0.15mass%、Ni:0.10〜1.0mass%、Cu:0.02〜1.0mass%およびMo:0.002〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼スラブが、前記成分に加えてさらに、Ge,Bi,V,Nb,Te,CrおよびSnのうちから選らばれる1種または2種以上を合計で0.002〜1.0mass%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼スラブのsol.AlとNの含有量の比(sol.Al/N)と、焼鈍分離剤中に添加する硫酸Mg、硫酸Ca、硫酸Sr、硫酸Ba、硫化Mg、硫化Ca、硫化Srおよび硫化Baのうちから選ばれる1種または2種以上の合計量X(質量部)および最終板厚t(mm)が下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

    3≦(X×t2×1000)/(sol.Al/N)3≦20
  5. 前記冷間圧延以降のいずれかの段階で、磁区細分化処理を施す請求項1〜4のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 前記磁区細分化処理が、二次再結晶焼鈍後の鋼板表面への電子ビーム照射によるものである請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記磁区細分化処理が、二次再結晶焼鈍後の鋼板表面へのレーザー照射によるものである請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 前記磁区細分化処理が、冷間圧延後の鋼板表面への溝形成によるものである請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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