JP2018053687A - 無機質板の固定方法およびその固定方法に用いられる固定部材、ならびにその固定方法によって得られる構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機質板を被施工面に固定し、その脱落を防止できる無機質板の固定方法の提供。【解決手段】無機質板を被施工面に固定する方法は、深さ方向に向かって互いに接近するように延びた第1溝および第2溝を一方の面に有する無機質板を用意する工程と、第1基部と、第1溝に係止される第1係止部と、第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片を用意する工程と、第2基部と、第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片を用意する工程と、第1係止部を第1溝に引っ掛け、長尺部の折り返し部に第2係止片を係合させ、第2係止部を第2溝に引っ掛けることにより、第1係止片および第2係止片を無機質板に係止する工程と、長尺部を被施工面に固定具で締結することで、無機質板を接続する工程と、一方の面と被施工面とを接着する工程と、を含んでなる。【選択図】図1

Description

本発明は、無機質板、とりわけ薄型で大型の陶磁器板を壁などの被施工面に固定する方法およびその固定方法に用いられる固定部材、ならびにその固定方法によって得られる構造物に関し、さらに詳しくは無機質板を接着剤などで接着する固定手段に加えて実施され、その脱落などを防止する固定方法およびその固定方法に用いられる固定部材、ならびにその固定方法によって得られる構造物に関する。
内装または外装材としてタイルなどの無機質板が広く用いられている。これら無機質板の被施工面への施工は、接着剤やモルタルなどで張り付けることに行われる。さらに、最近では目地を少なくでき、施工の簡略化や意匠の多様化を実現可能な大型陶磁器板が実用化され広く利用されてきており、このような大型陶磁器板についてもその施工は接着剤などによる接着が一般的である。
このような無機質板、とくに大型陶磁器板を壁面などに施工する場合、経年により剥離や割れが発生しても、脱落並びに脱落に伴う被害を抑止することが必要になる。大型陶磁器板は薄型とされ軽量化されているものが多いが、特に大型陶磁器板を外装材として使用する場合には、脱落並びに脱落に伴う被害を抑止可能な施工システムが重要になる。
このような施工システムとして、接着剤などによる接着に加えて、無機質板に穴をあけてビスなどで固定することが行われている。しかしながら、内装・外装材として化粧面を有するものである場合、穴およびビスの頭は化粧面の意匠を損なう恐れがある。
化粧面の意匠性を損ねない施工方法として、例えば、建物用外装板のアンカー金物を用いて建物用外装板を固定する方法が提案されている(実開昭62−140109号公報、特許文献1)。特許文献1に記載された建物用外装板のアンカー金物は、回転板に支軸と枢支軸とを設け、支軸を掛着基板の軸受に、枢支軸を弾性掛着板の軸受にそれぞれ軸支し、回動板を支軸を中心にして回動させることにより弾性掛着板と掛着基板とに設けられた両掛着片で外装板裏面を掴持する。
しかし、特許文献1に記載された建物用外装板のアンカー金物を用いて建物用外装板を固定する方法では、掛着基板の軸受および弾性掛着板の軸受が外装板裏面から突出している寸法が比較的長いため、接着剤の層の厚さが厚くなる。施工の迅速化のため、合成樹脂を主として含有してなる接着剤が広く用いられているが、接着剤の層の厚みが厚くなれば、建物用外装板は張り付け後に自重で下がってしまう。そのため、接着剤などによる接着に加えて、特許文献1に記載された建物用外装板のアンカー金物を用いることは困難である。従って、化粧面の意匠性を損ねない施工方法、とりわけ薄型で大型の無機質板の固定方法が依然として求められていると言える。
実開昭62−140109号公報
本発明は、無機質板を被施工面に固定し、その脱落を防止できる無機質板の固定方法お
よびその固定方法に用いられる固定部材、ならびにその固定方法によって得られる構造物の提供を目的とする。
そして、本発明による無機質板を被施工面に固定する方法は、
(a) 深さ方向に向かって互いに接近するように延びた第1溝および第2溝を、一方の面に有する無機質板を用意する工程と、
(b) 第1基部と、前記第1基部の一方の端部に設けられ前記第1溝に係止される第1係止部と、前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ前記第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片を用意する工程と、
(c) 第2基部と、前記第2基部の一方の端部に設けられ前記第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片を用意する工程と、
(d) 前記第1係止部を前記第1溝に引っ掛け、前記長尺部を折り返した折り返し部に前記第2係止片を係合させ、前記第2係止部を前記第2溝に引っ掛けることにより、前記第1係止片および前記第2係止片を前記無機質板に係止する工程と、
(e) 前記長尺部を前記被施工面に固定具で締結することで、前記無機質板を接続する工程と、
(f) 前記一方の面と前記被施工面とを接着する工程と、
を含んでなる方法である。
また、本発明による固定部材は、本発明による無機質板を被施工面に固定する方法に用いられる固定部材であって、
第1基部と、前記第1基部の一方の端部に設けられ前記第1溝に係止される第1係止部と、前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ前記第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片と、
第2基部と、前記第2基部の一方の端部に設けられ前記第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片と、
を備えてなるものであることを特徴とする。
また、本発明による構造物は、被施工面と、前記被施工面に固定された無機質板と、前記無機質板に係止された固定部材と、を備えてなる構造物であって、
前記無機質板は、深さ方向に向かって互いに接近するように延びた第1溝および第2溝を、一方の面に有してなり、
前記固定部材は、
第1基部と、前記第1基部の一方の端部に設けられ前記第1溝に係止される第1係止部と、前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ前記第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片と、
第2基部と、前記第2基部の一方の端部に設けられ前記第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片と、
を有してなり、
前記固定部材が前記被施工面に接続されるとともに、前記一方の面と前記被施工面とが接着されてなることを特徴とする。
本発明によれば、無機質板を被施工面に固定し、その脱落を防止できる無機質板の固定方法およびその固定方法に用いられる固定部材、ならびにその固定方法によって得られる構造物を提供することができる。
無機質板の被施工面への固定方法を説明する図である。 無機質板の被施工面への固定方法を説明する図である。 無機質板の施工面に設けられた第1溝および第2溝の拡大図である。 本発明による方法において用いられる第1係止片を表す図である。 本発明による方法において用いられる第1係止片の変形例を表す図である。 本発明による方法において用いられる第2係止片を表す図である。 本発明による方法において用いられる第2係止片の変形例を表す図である。 第1係止片および第2係止片を無機質板に係止する工程を説明する断面図である。 第1係止片および第2係止片を無機質板に係止する工程を説明する断面図である。 長尺部を被施工面に接続する工程、および無機質板を被施工面に接着する工程を説明する断面図である。 被施工面に、複数の無機質板を張り付けた状態の説明図である。
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
定義
無機質板
本発明による方法によって固定される無機質板は、例えば陶磁器、石、またはガラスからなるものである。本発明の一つの態様によれば、本発明において無機質板は、平板として、外装または内装の壁、床、天井の仕上げ材や、キャビネット面材やカウンターの仕上げ材に好ましく用いられる。従って、無機質板は、好ましくは意匠が施された化粧面と、躯体等の被施工面に張り付けられる施工面とを備える。また、その大きさは限定されないが、本発明による固定方法は、後記するとおり、無機質板の被施工面への二重化された固定方法とすることができることから、比較的大型の無機質板に対して好ましく適用される。本発明の一つの態様によれば、無機質板は短辺300mmを超えるものであり、900cmを超える面積を有するものである。無機質板の短辺の長さは、好ましくは600mm以上、より好ましくは900mm以上を有するものである。
さらに本発明による固定方法は、比較的薄い無機質板に好ましく適用できる。薄い無機質板においては非貫通の溝は浅くならざるを得ない。大型の陶磁器板では軽量化のため、例えば厚さは3mm以上15mm程度まで、好ましくは10mm程度まで、より好ましくは8mm程度までとされる。
本発明において無機質板は、その表面に釉薬層を有していてもよい。釉薬の成分は特に限定されない。釉薬層の形成は、成形後に施釉し、成形体と一体的に焼成するか、または、焼成体(仮焼体)に施釉した後に焼成するか、いずれかの方法を用いてもよい。さらに、施釉の前後に乾燥工程を設けてもよい。
非貫通孔または溝
本発明による方法が適用される無機質板は、非貫通の溝を一方の面、すなわち施工面に有する。非貫通とは、施工面から深さ方向に掘り下げられて溝が形成されるが、化粧面にまで至らない状態を意味する。
本発明において、無機質板が有する非貫通の溝とは、凹条を意味する。なお、非貫通の
溝は、非貫通の孔であってもよい。非貫通の孔とは、典型的には円形の穴を意味するが、形状は、円形に止まらず、楕円、三角形、四角形、多角形様であってよい。このように、本発明において、溝と孔とは、本発明において明確に区別される必要はなく、例えば楕円の非貫通の孔が横長に形成されて溝と解されるような形状であってもよい。後記する固定部材が挿入かつ係止可能である限りにおいて、非貫通の溝と呼ぶ。また、溝はその端において閉じずに、無機質板の端部にまで至り、その側面に凹みを形成するものであってよいが、無機質板の強度を維持する観点からは、その端は閉じて、無機質板の端部にまで溝が至らない構成が好ましいと考えられる。
非貫通の溝は、一対の溝として形成され、深さ方向に向かって互いに接近するように延びている。つまり、一対の溝は、凹条を垂直方向に断面視した時に、ハの字の形状に形成されている。また、溝の角度や溝幅が深さ方向に変化してもよい。
無機質板の強度等への影響からすると、非貫通の溝の深さは無機質板の厚さのほぼ半分乃至それ以下とされることが望ましい。本発明による固定方法は、とりわけこのような薄い無機質板における比較的浅い非貫通の溝に対して有利に用いられる。具体的には、例えば、非貫通の溝の深さは、7mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。また、非貫通の溝の最も短い幅は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。最も短い幅は、凹条の方向と直角方向の幅のうち、最も短い部位の幅である。
本発明による施工方法
以下、本発明による施工方法について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、無機質板の被施工面への固定方法を説明する図である。
図1において、無機質板2の一方の面(施工面)23に、非貫通の第1溝21および第2溝22が設けられてなり、この非貫通の溝に固定部材5を挿入して固定部材が係止される。
固定部材5は、第1係止片3と、第2係止片4と、を備える。第1係止片3は、第1基部31と、第1係止部32と、長尺部33と、を有する。第2係止片4は、第2基部41と、第2係止部42と、を有する。図1および図2の態様にあっては、第1係止部32を第1溝21に引っ掛け、第1係止片3の長尺部33を折り返した折り返し部332に第2係止片4を係合させ、第2係止部42を第2溝22に引っ掛け、長尺部33に設けられた固定孔331にビスなどの固定具6を被施工面7(図10参照)に打ち込み、無機質板2は被施工面7に接続される。この接続とは別に、無機質板2の第1溝21および第2溝22が設けられた施工面23は、接着剤により被施工面7に接着される。
本発明による固定方法によれば、接着と、固定部材による接続との二つの手段により、無機質板と被施工面とが固定される。無機質板2は、経時的な劣化などで接着力が十分でなくなった場合でも、固定部材を用いた接続手段が存在するため、脱落や、脱落に伴う被害を防ぐことができる。すなわち、本発明によれば、無機質板の被施工面への二重化された固定方法が提供される。この態様による固定方法を、工程ごとに以下説明する。
(a)無機質板を用意する工程
この工程は上記で定義した無機質板を用意する工程である。図3は、図1および図2の無機質板2の施工面23に設けられた第1溝21および第2溝22の拡大図である。すなわち、図3は、図1に表した切断面A11−A11における断面図である。図に示される態様において、第1溝21および第2溝22は、互いに並行して水平方向に延びるとともに(図1参照)、深さ方向(無機質板2の板厚方向)に向かって互いに接近するように延びている。第1溝21は、深さ方向に向かって延びた第1内壁面211を有する。第1内
壁面211は、無機質板2の施工面23に対して垂直ではなく、深さ方向に向かって下方に延びている。第2溝22は、深さ方向に向かって延びた第2内壁面221を有する。第2内壁面221は、無機質板2の施工面23に対して垂直ではなく、深さ方向に向かって上方に延びている。すなわち、第1内壁面211および第2内壁面221は、図3に表した断面図において、ハの字の形状に形成されている。
第1係止部32は、第1係止部32の主面が無機質板2の施工面23に対して垂直ではない第1内壁面211に面で接触して、引っ掛かる力によって係止される。あるいは、第1係止部32は、無機質板2の施工面23に設けられた第1溝21の入口部の付近に接触して、引っ掛かる力によっても係止される。第2係止部42は、第2係止部42の主面が無機質板2の施工面23に対して垂直ではない第2内壁面221に面で接触して、引っ掛かる力によって係止される。あるいは、第2係止部42は、無機質板2の施工面23に設けられた第2溝22の入口部の付近に接触して、引っ掛かる力によっても係止される。
図3に示される第1溝21の底部212および第2溝22の底部222は平面であってよいが、挿入された固定部材5の係止を大きく阻害しない限り、特に限定されない。第1溝21の幅D11および第2溝22の幅D21は特に限定されないが、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。第1溝21の深さD12および第2溝22の深さD22は、無機質板の厚さのほぼ半分乃至それ以下とされることが望ましく、具体的には7mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。
(b)第1係止片を用意する工程
図4は、本発明による方法において用いられる第1係止片を表す図である。図4(a)は、第1係止片を表す正面図である。図4(b)は、図4(a)に表した矢印A12の方向からみたときの側面図である。
第1係止片3は、第1基部31と、第1係止部32と、長尺部33と、を有し、板状の部材、例えば金属板により形成されている。第1係止部32は、第1基部31の一方の端部311に設けられ、第1溝21に挿入されて係止される。第1係止部32は、第1基部31の端部311に曲げ加工が施されることにより形成され、第1基部31の主面に対して所定の角度で延びている。
第1基部31と第1係止部32との間の角度A3は、無機質板2の施工面23と第1溝21の第1内壁面211との間の角度A1(図3参照)以下であることが好ましい。角度A3が角度A1よりも小さい場合には、第1係止部32は、第1溝21に挿入されると、無機質板2の施工面23に設けられた第1溝21の内壁面211の深い位置に接触して、引っ掛かる力によって係止される。
あるいは、角度A3は、角度A1と同じであってもよい。この場合には、第1係止部32は、第1溝21に挿入されると、第1係止部32の主面が無機質板2の施工面23に設けられた第1溝21の第1内壁面211に面で接触して、引っ掛かる力によって係止される。
長尺部33は、第1基部31の一方の端部311とは反対側の他方の端部312に設けられ、第1基部31から外側に向かって延びている。長尺部33は、第1基部31に一体的に形成されており、固定具6が通される固定孔331を有する。図4(a)に表した例では、長尺部33は、長尺部33が延びる方向(長尺部33の長手方向)に沿って所定間隔で設けられた複数の固定孔331を有する。固定具6が固定孔331を通して被施工面7に結合され、固定具6が通された固定孔331の部分が被施工面7に締結されることに
より、無機質板2が被施工面7に接続される。
図4(a)および図4(b)に表した第1係止片3では、固定部材と被施工面との接続を、第1基部31に一体的に形成された長尺部33を介して行うが、本発明の別の態様によれば、固定部材と被施工面との接続が、第1基部31とは別体として設けられた長尺部を介して行われてもよい。すなわち、図4(a)および図4(b)に表した第1係止片において、長尺部を第1基部とは別体化し、第1基部の端部に取り付けられた長尺部が設けられていてもよい。図6は、そのような第1係止片を表した図である。
図5は、本発明による方法において用いられる第1係止片の変形例を表す図である。図5(a)は、第1係止片の変形例を表す正面図である。図5(b)は、図5(a)に表した矢印A13の方向からみたときの側面図である。
本変形例の第1係止片3Aは、第1基部31Aと、第1係止部32と、長尺部33Aと、を有する。第1基部31Aおよび第1係止部32は、板状の部材、例えば金属板により形成されている。一方で、長尺部33Aは、第1基部31Aとは別体として設けられた線材であり、第1基部31Aの他方の端部312に取り付けられている。具体的には、第1基部31Aは、端部312の近傍に孔313を有する。長尺部33Aの一方の端部は、孔313に通され、任意の固定方法により端部312に取り付けられている。
長尺部33Aの一方の端部(第1基部31Aに取り付けられた端部)とは反対側の他方の端部は、リング状に形成され、固定孔331Aを有する。固定具6が固定孔331Aを通して被施工面7に結合され、固定具6が通された固定孔331Aの部分が被施工面7に締結されることにより、無機質板2が被施工面7に接続される。その他の構造は、図4(a)および図4(b)に関して前述した第1係止片3の構造と同様である。
(c)第2係止片を用意する工程
図6は、本発明による方法において用いられる第2係止片を表す図である。図6(a)は、第2係止片を表す正面図である。図6(b)は、図6(a)に表した矢印A14の方向からみたときの側面図である。
図6(a)および図6(b)に表した第2係止片4は、例えば、図4(a)および図4(b)に関して前述した第1係止片3と共に用いられる。この場合には、固定部材は、第1係止片3と、第2係止片4と、を有する。第2係止片4は、第2基部41と、第2係止部42と、を有し、板状の部材、例えば金属板により形成されている。第2係止部42は、第2基部41の一方の端部411に設けられ、第2溝22に挿入されて係止される。第2係止部42は、第2基部41の端部411に曲げ加工が施されることにより形成され、第2基部41の主面に対して所定の角度で延びている。
第2基部41と第2係止部42との間の角度A4は、無機質板2の施工面23と第2溝22の第2内壁面221との間の角度A2(図3参照)以下であることが好ましい。角度A4が角度A2よりも小さい場合には、第2係止部42は、第2溝22に挿入されると、無機質板2の施工面23に設けられた第2溝22の内壁面221の深い位置に接触して、引っ掛かる力によって係止される。
あるいは、角度A4は、角度A2と同じであってもよい。この場合には、第2係止部42は、第2溝22に挿入されると、第2係止部42の主面が無機質板2の施工面23に設けられた第2溝22の第2内壁面221に面で接触して、引っ掛かる力によって係止される。
第2基部41は、第1係止片3の長尺部33が通過可能な孔412を有する。すなわち、第1係止片3の長尺部33は、第2係止片4の孔412に挿入可能とされている。図6(a)に表した例では、孔412は、所定の幅を有するスリット状に形成されている。
図4(a)および図4(b)に関して前述した第1係止片3の長尺部33は、スリット状に形成された第2係止片4の孔412に挿入されるが、本発明の別の態様によれば、第1係止片の長尺部は、他の形状に形成された第2係止片の孔に挿入されてもよい。すなわち、図6(a)および図6(b)に表した第2係止片4において、第2係止片4の孔412は、スリット状ではなく他の形状に形成されていてもよい。図7は、そのような第2係止片を表した図である。
図7は、本発明による方法において用いられる第2係止片の変形例を表す図である。図7(a)は、第2係止片の変形例を表す正面図である。図7(b)は、図7(a)に表した矢印A15の方向からみたときの側面図である。
本変形例の第2係止片4Aは、例えば、図5(a)および図5(b)に関して前述した第1係止片3Aと共に用いられる。この場合には、固定部材は、第1係止片3Aと、第2係止片4Aと、を有する。第2係止片4Aは、第2基部41Aと、第2係止部42と、を有し、板状の部材、例えば金属板により形成されている。
第2基部41Aは、第1係止片3Aの長尺部33Aが通過可能な孔412Aを有する。すなわち、第1係止片3Aのリング状に形成された端部が第2係止片4の孔412を通過することにより、第1係止片3Aの長尺部33Aは、第2係止片4の孔412に挿入可能とされている。図7(a)に表した例では、孔412Aは、円形に形成されている。なお、孔412Aの形状は、円形だけには限定されず、矩形であってもよく、あるいは、直線部分と円弧部分を有するいわゆる長孔や、楕円などであってもよい。その他の構造は、図6(a)および図6(b)に関して前述した第2係止片4の構造と同様である。
(d)第1係止片および第2係止片を無機質板に係止する工程
図8および図9は、第1係止片および第2係止片を無機質板に係止する工程を説明する断面図である。図8および図9は、図1に表した切断面A11−A11における断面図に相当する。なお、以下の説明では、図4(a)および図4(b)に関して前述した第1係止片3、ならびに図6(a)および図6(b)に関して前述した第2係止片4を用いる場合を例に挙げる。
この工程では、まず、図8に表したように、第1係止片3の長尺部33を第2係止片4の孔412に通す。続いて、第1係止片3の第1係止部32を無機質板2の第1溝21に引っ掛ける。なお、第1係止部32を第1溝21に引っ掛けた後に、長尺部33を第2係止片4の孔412に通してもよい。つまり、長尺部33を第2係止片4の孔412に通すタイミングと、第1係止部32を第1溝21に引っ掛けるタイミングと、の間の先後関係は、特には限定されない。
続いて、図9に表したように、長尺部33を折り返した折り返し部332に第2係止片4を係合させる。続いて、第2係止片4の第2係止部42を無機質板2の第2溝22に引っ掛ける。なお、第2係止部42を第2溝22に引っ掛けた後に、長尺部33を折り返した折り返し部332に第2係止片4を係合させてもよい。つまり、第2係止部42を第2溝22に引っ掛けるタイミングと、長尺部33を折り返した折り返し部332に第2係止片4を係合させるタイミングと、の間の先後関係は、特には限定されない。
この工程により、第1係止片3の第1係止部32は、無機質板2の第1溝21の入口部
の付近に接触して、引っ掛かる力によって係止される。あるいは、第1係止片3の第1係止部32は、第1係止部32の主面が第1溝21の第1内壁面211に接触して、引っ掛かる力によって係止される。第2係止片4の第2係止部42は、無機質板2の第2溝22の入口部の付近に接触して、引っ掛かる力によって係止される。あるいは、第2係止片4の第2係止部42は、第2係止部42の主面が第2溝22の第2内壁面221に接触して、引っ掛かる力によって係止される。
(e)長尺部を被施工面に締結する工程、および(f)無機質板を被施工面に接着する工程
図10は、長尺部を被施工面に締結する工程、および無機質板を被施工面に接着する工程を説明する断面図である。図10は、図1に表した切断面A11−A11における断面図に相当する。
第1係止片3の長尺部33の被施工面7への締結は、固定具6が長尺部33の固定孔331を通して被施工面7に締結されることにより行われる。図10において、固定具6が通された固定孔331の部分は、躯体71の表面である被施工面7に打ち込まれた固定具6により被施工面7に締結されており、これにより無機質板は固定部材によって接続される。続いて、無機質板2は、被施工面7に接着剤により接着される。
本実施形態に係る固定方法によれば、無機質板2は、固定部材による接続と、接着剤による接着との二つの手段により固定される。無機質板2には、経時的な劣化などで接着力が十分でなくなった場合でも、固定部材を用いた接続手段が存在するため、脱落や、脱落に伴う被害を防ぐことができる。
また、第1係止片3の長尺部33を折り返した折り返し部332に第2係止片4を係合させるため、接着を阻害しない薄手の設計が可能となる。例えば、第1係止片3および第2係止片4は、金属板などの板状の部材により形成されているため、第1基部31と、第2基部41と、長尺部33と、の3つの部分の板の厚さで無機質板2の被施工面7への固定方法を実現することができる。これにより、無機質板2が固定された後の接着剤の層の厚みは、好ましくは0.5mm以上5mm以下、より好ましくは1mm以上2mm以下とすることが可能となり、被施工面7または施工面23の全面に接着剤を適用することも可能となる。
また、本発明の好適な態様によれば、第1係止片3の第1係止部32は、第1溝21に嵌め込まれるわけではなく、第1溝21に引っ掛けられ、無機質板2に係止される。また、第2係止片4の第2係止部42は、第2溝22に嵌め込まれるわけではなく、第2溝22に引っ掛けられ、無機質板2に係止される。これにより、第1溝21の幅D11および第2溝22の幅D21を、厳密な寸法に設定する必要はない。つまり、第1係止片3は第1溝21の幅D11に柔軟に対応することができ、第2係止片4は第2溝22の幅D21に柔軟に対応することができる。そのため、例えば作業者が、施工現場において第1溝21および第2溝22を無機質板2の施工面23に形成することができる。また、作業者が、無機質板2のサイズや張り付け位置に応じて第1溝21の幅D11および第2溝22の幅D21を基準寸法から変更した場合であっても、1組の固定部材5(第1係止片3および第2係止片4)で対応することができる。
また、第1係止片3は、第1係止部32で無機質板2を必ずしも締め付ける必要はなく、第1溝21の第1内壁面211に接触して、引っ掛かる力によって係止されていればよい。また、第2係止片4は、第2係止部42で無機質板2を必ずしも締め付ける必要ななく、第2溝22の第2内壁面221に接触して、引っ掛かる力によって係止されていればよい。これにより、無機質板2の脱落を防ぐことができる。このように、固定部材5が無
機質板2を把持する部分に遊びを設けることで、過度の応力負荷が無機質板2に掛かることを抑え、無機質板2が破損することを抑えることができる。
また、図4(a)および図4(b)に関して前述した第1係止片3のように、複数の固定孔331が設けられている場合には、作業者は、無機質板2のサイズや張り付け位置に応じて、固定具6を通す固定孔331を複数の固定孔331の中から自由に選択することができる。これにより、作業者は、無機質板2のサイズや張り付け位置に応じて、長尺部33の被施工面7への接続箇所を適宜設定することができる。
図11は、被施工面7に、複数の無機質板2を張り付けた状態の説明図である。図において、無機質板2は、第1係止片3の長尺部33を固定具6により被施工面7に接続し、さらに無機質板2を接着剤で接着することにより固定される。図11にあっては、無機質板1枚あたり、三つの固定部材が設けられている。このとき、第1溝21および第2溝は、三つの固定部材に対して共通の溝として用いられているが、各部材毎に一対の溝を設けてもよい。
また、図11にあって、無機質板2は2段に張り付けられており、下の段の無機質板についての固定具6は上の段の無機質板に隠れるよう構成されている。図11にあっては、固定具6は、それにより接続される無機質板の上端よりも上に設けられているが、上端よりも下、すなわち、それにより接続される無機質板に隠れる位置に設けられてもよい。
被施工面7に設けられる固定具6は、結果として二重化された固定手段として、接着等の第一の固定手段が失われたときにも無機質板を係止することができる強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ビス、タッピンねじ、ドリリングねじ、釘、リベットなどが挙げられる。
接着剤としては、無機質板を被施工面に接着可能なものであれば限定されないが、合成高分子系の接着剤が好ましい。合成高分子系の接着剤としては、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系、アクリル系などが好適に用いられる。これらの接着剤は、常温で液状またはペースト状の接着剤、ホットメルト接着剤、テープ状に成形されたもの、のいずれも好適に使用可能である。
図11に表したように、無機質板1枚あたりに複数の固定部材が設けられている場合には、固定部材5が無機質板2を把持する部分に遊びが設けられる場合であっても、複数の固定部材の全体として無機質板2を保持する力を確保することができる。
なお、本発明において、無機質板2の施工面23と被施工面7との接着剤による接着は、無機質板2と躯体71との間に下地材が介在する態様も含まれるものとする。この場合、下地材の内側に、躯体や間柱、ライトゲージスチール(LGS)などのスタッド、またはパネルフレームなどの構造材があり、例えば、躯体が鉄骨等の柱である場合には、板状の下地材が躯体やこれらの構造材に公知の方法で固定されており、この下地材の表面に無機質板を接着剤で張り付ける。また例えば、既設の壁をリフォームする際に本発明の方法を適用する場合、既設の壁面を下地材として、その上に接着剤を用いて無機質板を張り付けても良い。いずれの場合も、固定具は躯体や上記の構造材に固定されていることが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。例えば、図4(a)および図4(b)に関して前述した第1係止片3と、図5(a)
および図5(b)に関して前述した第1係止片3Aと、を組み合わせてもよい。すなわち、線材としての長尺部33Aの一方の端部を長尺部33の固定孔331に通し、任意の固定方法により、第1係止片3の長尺部33と、第1係止片3Aの長尺部33Aと、を連結させてもよい。
2・・・無機質板、 3、3A・・・第1係止片、 4、4A・・・第2係止片、 5・・・固定部材、 6・・・固定具、 7・・・被施工面、 21・・・第1溝、 22・・・第2溝、 23・・・施工面、 31、31A・・・第1基部、 32・・・第1係止部、 33、33A・・・長尺部、 41、41A・・・第2基部、 42・・・第2係止部、 71・・・躯体、 211・・・第1内壁面、 212・・・底部、 221・・・第2内壁面、 222・・・底部、 311、312・・・端部、 313・・・孔、 331、331A・・・固定孔、 332・・・折り返し部、 411・・・端部、 412、412A・・・孔

Claims (14)

  1. 無機質板を被施工面に固定する方法であって、
    (a) 深さ方向に向かって互いに接近するように延びた第1溝および第2溝を、一方の面に有する無機質板を用意する工程と、
    (b) 第1基部と、前記第1基部の一方の端部に設けられ前記第1溝に係止される第1係止部と、前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ前記第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片を用意する工程と、
    (c) 第2基部と、前記第2基部の一方の端部に設けられ前記第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片を用意する工程と、
    (d) 前記第1係止部を前記第1溝に引っ掛け、前記長尺部を折り返した折り返し部に前記第2係止片を係合させ、前記第2係止部を前記第2溝に引っ掛けることにより、前記第1係止片および前記第2係止片を前記無機質板に係止する工程と、
    (e) 前記長尺部を前記被施工面に固定具で締結することで、前記無機質板を接続する工程と、
    (f) 前記一方の面と前記被施工面とを接着する工程と、
    を含んでなる方法。
  2. 前記第2基部は、前記長尺部が通過可能な孔を有し、
    前記工程(d)において、前記長尺部を前記孔に通した後に前記長尺部を折り返して前記折り返し部を形成する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1基部と前記第1係止部との間の角度は、前記一方の面と前記深さ方向に向かって延びた前記第1溝の第1内壁面との間の角度よりも大きく、
    前記第2基部と前記第2係止部との間の角度は、前記一方の面と前記深さ方向に向かって延びた前記第2溝の第2内壁面との間の角度よりも大きい、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記長尺部は、前記第1基部に一体的に形成されてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記長尺部は、前記長尺部が延びる方向に沿って所定間隔で設けられた複数の固定孔を有する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記長尺部は、前記第1基部の前記他方の端部に取り付けられた線材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記長尺部は、前記第1基部に取り付けられた端部とは反対側の端部に形成された固定孔を有する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記長尺部の前記被施工面への接続が、前記固定孔を通して前記固定具を前記被施工面に結合させ前記固定具を通した前記固定孔の部分を前記被施工面に締結することにより行われる、請求項5または7に記載の方法。
  9. 前記無機質板が、陶磁器、石、またはガラスからなるものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記無機質板が一辺900mm以上、厚さ10mmまでのものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記第1溝および前記第2溝の深さが、前記無機質板の厚さの半分以下とされてなる、請求項10に記載の方法。
  12. 前記第1溝および前記第2溝の深さが2mm以下である、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の前記無機質板を前記被施工面に固定する方法に用いられる固定部材であって、
    第1基部と、前記第1基部の一方の端部に設けられ前記第1溝に係止される第1係止部と、前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ前記第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片と、
    第2基部と、前記第2基部の一方の端部に設けられ前記第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片と、
    を備えてなるものであることを特徴とする、固定部材。
  14. 被施工面と、前記被施工面に固定された無機質板と、前記無機質板に係止された固定部材と、を備えてなる構造物であって、
    前記無機質板は、深さ方向に向かって互いに接近するように延びた第1溝および第2溝を、一方の面に有してなり、
    前記固定部材は、
    第1基部と、前記第1基部の一方の端部に設けられ前記第1溝に係止される第1係止部と、前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ前記第1基部から外側に向かって延びる長尺部と、を有する第1係止片と、
    第2基部と、前記第2基部の一方の端部に設けられ前記第2溝に係止される第2係止部と、を有する第2係止片と、
    を有してなり、
    前記固定部材が前記被施工面に接続されるとともに、前記一方の面と前記被施工面とが接着されてなることを特徴とする、構造物。
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