JP2018053399A - スパンボンド不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、柔軟で高い強度を有し、かつ耐摩耗性に優れるスパンボンド不織布を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂を含有する第一成分と、ポリエチレン系樹脂を含有する第二成分とからなる複合長繊維であって、繊維長さ方向に対して垂直な断面が前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域からなり、前記断面において、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の少なくともいずれかが二個以上に分割され、かつ、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の両方を少なくとも一個ずつ含む三個以上の領域がその外周の一部を前記断面の外周と共有する複合長繊維からなるスパンボンド不織布であって、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合が10%以下であり、目付当たりのシート強度が1.5N/5cm以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、スパンボンド不織布に関する。
一般に紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料用の不織布には、製造時の加工性および着用時の風合いのため、強力、耐毛羽立ち性および柔軟性に優れるという性能が求められている。従来、ポリプロピレン系ポリマーを用いた不織布が多く利用されているが、同じポリオレフィンであるポリエチレンは、ポリプロピレンに比べて優れた柔軟性を有すポリマーであり、これまでにも衛生材料用不織布にポリエチレンを適用する試みがなされてきた。
しかし、ポリエチレン単成分では強度が低く、また毛羽立ちが大きいといった課題があった。そこで、ポリエチレンを複合繊維として適用する提案がなされている。
例えば、融点の異なる2成分からなり、ポリエチレンが繊維表面の40%以上をしめる複合短繊維が提案されている(特許文献1)。
また、ポリエチレンを含む複合繊維を用いた不織布として、メルトフローレート(MFR)40g/10分以上のプロピレン系重合体と低密度ポリエチレンが互いに接してなる分割型複合長繊維が提案されている(特許文献2)。
特開平8−134759号公報 特許第5334583号公報
しかしながら、特許文献1に記載された複合短繊維は、短繊維で構成された不織布であるため、熱接着部が少ないことでシート強度が弱く、表面に存在する繊維端による毛羽立ちが多いという問題があった。
また、特許文献2に記載された不織布は、ポリプロピレン系重合体とポリエチレンの複合繊維が20%以上で分割しており、多くの極細ポリエチレン繊維が存在することにより強度や毛羽立ちに問題があった。
このように、ポリエチレンの柔軟性を活かしつつ、強度、耐毛羽立ち性、すなわち耐摩耗性に優れる不織布は得られていなかった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、柔軟で高い強度を有し、かつ耐摩耗性に優れるスパンボンド不織布を提供することである。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂を含有する第一成分と、ポリエチレン系樹脂を含有する第二成分とからなる複合長繊維であって、繊維長さ方向に対して垂直な断面が前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域からなり、前記断面において、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の少なくともいずれかが二個以上に分割され、かつ、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の両方を少なくとも一個ずつ含む三個以上の領域がその外周の一部を前記断面の外周と共有する複合長繊維からなるスパンボンド不織布であって、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合が10%以下であり、目付当たりのシート強度が1.5N/5cm以上である。
本発明によれば、柔軟で高い強度を有し、かつ耐摩耗性に優れるスパンボンド不織布を得ることができる。
本発明における複合長繊維の、繊維長さ方向に垂直な断面の例を示した模式図である。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂を含有する第一成分と、ポリエチレン系樹脂を含有する第二成分とからなる複合長繊維であって、繊維長さ方向に対して垂直な断面が前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域からなり、前記断面において、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の少なくともいずれかが二個以上に分割され、かつ、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の両方を少なくとも一個ずつ含む三個以上の領域がその外周の一部を前記断面の外周と共有する複合長繊維からなるスパンボンド不織布であって、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合が10%以下であり、目付当たりのシート強度が1.5N/5cm以上である。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂を含有する第一成分と、ポリエチレン系樹脂を含有する第二成分とからなる複合長繊維であって、繊維長さ方向に対して垂直な断面が前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域からなり、前記断面において、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の少なくともいずれかが二個以上に分割され、かつ、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の両方を少なくとも一個ずつ含む三個以上の領域がその外周の一部を前記断面の外周と共有する複合長繊維からなる。前記断面において、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の少なくともいずれかが二個以上に分割されることにより、互いに異なる成分からなる領域が複数箇所で隣接することとなるため、樹脂の剥離を抑えることができ、高い強度を得ることが出来る。また、第一成分からなる領域と第二成分からなる領域の両方を少なくとも一個ずつ含む三個以上の領域がその外周の一部を前記断面の外周と共有することで、優れた柔軟性と耐摩耗性を得ることが出来る。
前記断面における第一成分からなる領域と第二成分からなる領域の分割数の合計は特に限定されないが、4〜48分割が好ましく、8〜24分割がより好ましい。
図1は、本発明における複合長繊維の、繊維長さ方向に対して垂直な断面の例を示したものである。
図1の(a)は、ポリプロピレン系樹脂を含有する第一成分と、ポリエチレン系樹脂を含有する第二成分とからなる複合長繊維の、繊維長さ方向に対して垂直な断面において、前記第一成分からなる領域1と、前記第二成分からなる領域2が、互いに8個ずつに分割された例を示した模式図である。図1の(a)においては、8個の第一成分からなる領域1と、8個の第二成分からなる領域2との合計16個の領域が、その外周の一部を前記断面の外周と共有している。
また、図1の(b)は、中央部に空洞部3を有する中空糸であり、前記第一成分からなる領域1と前記第二成分からなる領域2とが、互いに8個ずつに分割された例を示した模式図である。図1の(b)においては、8個の第一成分からなる領域1と、8個の第二成分からなる領域2との合計16個の領域が、その外周の一部を前記断面の外周と共有している。
図1の(c)は、前記第一成分からなる領域1が、並列に並ぶ前記第二成分からなる領域2によって3個に分割されている例を示した模式図である。図1の(c)においては、3個の第一成分からなる領域1と、2個の第二成分からなる領域2との合計5個の領域が、その外周の一部を前記断面の外周と共有している。
図1の(d)は、前記第二成分からなる領域2が、前記第一成分からなる領域1によって4個に分割されている例を示した模式図である。図1の(d)においては、1個の第一成分からなる領域1と、4個の第二成分からなる領域2との合計5個の領域が、その外周の一部を前記断面の外周と共有している。
図1の(e)は、前記第一成分からなる領域1が、前記第二成分からなる領域2によって4個に分割されている例を示した模式図である。図1の(e)においては、4個の第一成分からなる領域1と、1個の第二成分からなる領域2との合計5個の領域が、その外周の一部を前記断面の外周と共有している。
これらのうち、良好な紡糸性と第一成分と第二成分とが分割し難いという観点から図1の(a)の形態が好ましい。
複合長繊維を構成する成分の一つであるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
本発明における複合長繊維に用いるポリプロピレン系樹脂の融点は、80〜200℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましい。融点を80℃以上、より好ましくは100℃以上とすることで、実用に耐え得る耐熱性が得られやすくなる。また、融点を200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることで口金から吐出された糸条を冷却しやすくなり、繊維同士の融着を抑制し安定した紡糸を行いやすくなる。
本発明における複合長繊維に用いるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと記載する場合がある;ASTM D−1238 荷重;2160g、温度;230℃)は特に限定はされないが、1〜1000g/10分であることが好ましく、10〜500g/10分であることがより好ましく、20〜200g/10分の樹脂であることがさらに好ましい。メルトフローレートを1〜1000g/10分の範囲とすることにより、安定した紡糸を行いやすくなり、かつ配向結晶化が進みやすくなり、高い強度の繊維が得られやすくなる。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加してもよい。
本発明における複合長繊維を構成するもう一つの成分であるポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
本発明における複合長繊維に用いるポリエチレン系樹脂の融点は、80〜160℃であることが好ましく、100〜140℃であることがより好ましい。融点を80℃以上、より好ましくは100℃以上とすることで実使用に耐え得る耐熱性が得られやすくなる。また、融点を160℃以下、より好ましくは140℃以下とすることでポリプロピレン系樹脂と強固に接着しやすくなる。
本発明における複合長繊維に用いるポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(ASTM D−1238 荷重;2160g、温度;190℃)は特に限定はされないが、1〜1000g/10分、好ましくは10〜500g/10分、より好ましくは15〜25g/10分の樹脂である。メルトフローレートを1〜1000g/10分の範囲とすることにより、安定した紡糸を行いやすくなり、かつ配向結晶化が進みやすくなり、高い強度の繊維が得られやすくなる。
本発明に用いられるポリエチレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加してもよい。
本発明でいう「複合長繊維」とは、2種類以上の異なる樹脂から構成される長繊維を指す。また、長繊維とは繊維に切れ目がない連続フィラメントを指す。
一般的な不織布の製法としては例えば、ニードルパンチ不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、レジンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、トウ開繊式不織布、エアレイド不織布等の種々の製法があるが、本発明ではスパンボンド不織布であることが重要である。スパンボンド不織布は、生産性や機械的強度に優れ、また、長繊維からなるため短繊維不織布に比べて毛羽立ちしにくい特徴を有する。
本発明のスパンボンド不織布は、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合が10%以下である。交互に隣接された第一成分と第二成分が剥離・分割されるといわゆる割繊となるが、割繊により8.0μm未満の繊維とすると強度が弱く、また耐摩耗性に劣る。繊維径8.0μm未満の繊維が10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは3%以下とすることで、実用に供し得る強度をもち、かつ優れた耐摩耗性を保つことができる。
本発明のスパンボンド不織布は、前記複合長繊維の平均繊維径が8.0〜21.0μmであることが好ましい。前記平均繊維径は、より好ましくは10.0〜19.0μm、さらに好ましくは12.0〜17.0μmである。前記平均繊維径を上記範囲とすることにより、柔軟性や不織布とした際の地合、さらに耐摩耗性が向上しやすくなる。
本発明のスパンボンド不織布は、目付当たりのシート強度が1.5N/5cm以上である。目付当たりのシート強度が1.5N/5cm以上、より好ましくは2.0N/5cm以上であることにより、製造時の工程張力や着用に十分な強度を有する不織布となる。上限については特に設けるものではないが、あまりに高い強度を求めた場合、柔軟性が損なわれる傾向があるため、10.0N/5cm以下であることが好ましい。目付当たりのシート強度を1.5N/5cm以上とする方法としては、例えば、本発明における複合長繊維の第一成分の樹脂と第二成分の樹脂とが剥離しないようにする方法が挙げられる。より具体的には、スパンボンド不織布を製造する際の熱エンボスロールの線圧を5〜50kgf/cmとすることで第一成分の樹脂と第二成分の樹脂とを剥離しないようにし、スパンボンド不織布の目付当たりのシート強度を1.5N/5cm以上とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、剛軟度が60mm以下であることが好ましい。剛軟度が60mm以下、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下とすることで、特に衛生材料用不織布として用いる場合に十分な柔軟性を得ることができる。下限については特に設けるものではないが、あまりに低い剛軟度とすると不織布の取り扱い性に劣る場合があるため、10mm以上であることが好ましい。
本発明のスパンボンド不織布は、目付が3〜200g/mであることが好ましい。前記目付は、より好ましくは5〜150g/m、さらに好ましくは10〜100g/mである。目付をかかる範囲とすることで、特に衛生材料用不織布として用いる場合に十分な柔軟性を得ることができる。
本発明のスパンボンド不織布は、耐摩耗等級が3級以上であることが好ましい。耐摩耗等級が3級以上であることにより、衛生材料製品としての実用に供する表面の毛羽立ちに抑えやすくすることができる。耐摩耗等級を3級以上とする方法としては、例えば、本発明における複合長繊維の第一成分の樹脂と第二成分の樹脂とを剥離しないようにする方法が挙げられる。より具体的には、スパンボンド不織布を製造する際の熱エンボスロールの線圧を5〜50kgf/cmとすることで第一成分の樹脂と第二成分の樹脂とを剥離しないようにし、スパンボンド不織布の耐摩耗等級を3級以上とすることができる。
次に、本発明のスパンボンド不織布を製造する方法の一例を、以下に説明する。
スパンボンド法は、樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化した糸条に対し、エジェクターで牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した後、熱接着する工程を要する製造方法である。
紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくい点から矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましい。
溶融し紡糸する際の紡糸温度は、200〜300℃が好ましく、より好ましくは210〜280℃、さらに好ましくは220〜260℃である。紡糸温度を上記範囲内とすることで、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂をそれぞれ別の押出機にて、溶融、計量し、複合紡糸口金へと供給し、図1に例示される複合長繊維を紡出する。
紡出された複合長繊維の糸条を冷却する方法としては例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度にて自然冷却する方法、紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法、またはこれらの組み合わせを採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度、雰囲気温度等を考慮し適宜調整し採用することができる。
次に、冷却固化した糸条は、エジェクターから噴射する圧縮エアにて牽引、延伸される。延伸により得られた複合長繊維を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化し、得られた不織ウェブを熱接着により一体化することにより不織布を得ることができる。
熱接着の方法としては例えば、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど各種ロールによる熱圧着や、超音波による融着を適用することが出来る。中でも強度と耐摩耗性の観点から、エンボスロールを用いた熱接着を好ましく採用することができる。また、上下いずれかに彫刻(凹凸部)が施されたロールを用いることにより、全体に圧力が掛かりにくくなり、複合長繊維が分割しにくい傾向となるため好ましい。
熱融着時のエンボス接着面積率は、5〜30%が好ましい。接着面積を5%以上、より好ましくは10%以上とすることで、不織布として実用に供しうる強度を得ることができる。一方、接着面積を30%以下、より好ましくは20%以下とすることで、複合長繊維が分割してしまうことを抑制することができる。ここでいうエンボス接着面積率とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことをいう。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことをいう。
熱エンボスロールに施される彫刻の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。
熱エンボスロールの表面温度は、使用している樹脂のうち、最も低融点の樹脂(以下、低融点樹脂という場合がある)の融点に対し−50〜−1℃とすることが好ましい。熱エンボスロールの表面温度を低融点樹脂の融点に対し−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、さらに好ましくは−10℃以上とすることで、十分に熱接着させ強度をもたせ毛羽の発生を抑えやすくすることができる。また、低融点樹脂の融点に対し−1℃以下とすることにより、繊維の融解により樹脂同士の剥離が発生するのを防ぎやすくすることができる。
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、5〜50kgf/cmが好ましい。前記線圧を5kgf/cm以上、より好ましくは10kgf/cm以上、さらに好ましくは15kgf/cm以上とすることで、十分に熱接着させ強度をもたせ毛羽の発生を抑えやすくすることができる。一方、前記線圧を50kgf/cm以下、より好ましくは40kgf/cm以下、さらに好ましくは30kgf/cm以下とすることで、ロールの応力がかかることによって繊維断面の互いに接触した樹脂が剥離することを防ぎやすくすることができる。
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(1)繊維径、平均繊維径
得られた不織布の断面を任意の位置にて剃刀刃で切断し試験片を作成した。走査型電子顕微鏡で500倍の写真を撮影し、任意の100本の繊維の断面の面積を測定した。測定した断面積を、丸形断面形状を有する繊維の断面積とみなし、下記式にて繊維径を算出した。算出した100本の繊維径の平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入して平均繊維径とした。
繊維径(μm)=√(4×断面積(μm)/3.14)。
(2)繊維径8.0μm未満の繊維本数割合
上記(1)にて測定した100本の繊維のうち、8.0μm未満の繊維の本数の割合を下記式にて算出し、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合とした。
繊維径8.0μm未満の繊維本数割合
=8.0μm未満の繊維本数/100本×100。
(3)目付
JIS L1913(2010年)の6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
(4)引張強度、目付当たりの引張強度
JIS L1913(2010年)の6.3.1に準じ、サンプルサイズ5cm×30cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で3点の引張試験を行い、サンプルが破断した時の強度を引張強度(N/5cm)とし、平均値について小数点以下第二位を四捨五入して算出した。続いて、算出した引張強度(N/5cm)を、上記(3)で求めた目付(g/m)から、次の式より小数点以下第二位を四捨五入して単位目付当たりの引張強度を算出した。
単位目付当たりの引張強度=引張強度(N/5cm)/目付(g/m)。
(5)耐摩耗性
JIS L0849(2013年)に記載に規定される学振型摩擦試験に準拠して、乾燥白綿布をかぶせた摩擦子を用い摩擦回数100往復にて摩擦させ、不織布表面の毛羽立ち、磨耗状態を下記の基準で目視判定にて評価した(n=5の平均値)。
毛羽立ちが大:1級、毛羽立ちが中:2級、毛羽立ちが少:3級、毛羽立ちが微少:4級、毛羽立ちがない:5級。
(6)剛軟度
JIS L1913(2010年)の6.7.3に準拠して、幅25mm×150mmの試験片を5枚採取し、45°の斜面をもつ水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置いた。手動により試験片を斜面の方向に滑らせて試験片の一端の中央点が斜面と接したとき他端の位置の移動長さをスケールによって読んだ。5枚の裏表について測定し平均値を算出した。
実施例1
第一成分として、MFRが35g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)、融点が162℃であるポリプロピレン樹脂を、第二成分としてMFRが18g/10分(荷重;2160g、温度;190℃)、融点が130℃であるポリエチレン樹脂(HDPE)を、それぞれ別の押出機で溶融し、各成分の質量比が50:50となるように計量し、紡糸温度245℃で、孔径φ0.3mmの紡糸用口金から単孔吐出量0.6g/分で、図1(a)に示された2成分が交互に隣接する断面形状の複合長繊維を紡出した。紡出した複合長繊維をエジェクターに通し、紡速3600m/minでエジェクターから噴射させ、糸条を牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した。引き続き、金属製の水玉柄の彫刻がなされた上ロールおよび金属製でフラットな下ロールから構成される上下一対の接着面積10%のエンボスロールを用いて、線圧20kgf/cm、熱接着温度125℃で熱接着処理し、目付20g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた不織布について平均繊維径、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合、目付、目付当たりの引張強度、耐摩耗性、剛軟度を測定して評価した。結果を表1に示す。
Figure 2018053399
比較例1
エンボスロールの線圧を70kgf/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、スパンボンド不織布を得た。評価結果を表1に示す。
比較例2
第一成分、第二成分の両方に、MFRが18g/10分(荷重;2160g、温度;190℃)のポリエチレン樹脂(HDPE)を使用し、紡糸温度215℃としたこと以外は実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1のポリプロピレンとポリエチレンからなる複合長繊維は繊維径8.0μm未満の繊維本数割合が0%であり、強度、耐摩耗性ともに極めて優れていた。
それに対し、比較例1では繊維が割繊されて8.0μm未満の繊維本数割合が多く、強度、耐摩耗性に劣るものとなった。また、比較例2のポリエチレン単一成分のみを用いてなるスパンボンド不織布では強度、耐摩耗性とも劣るものとなった。
本発明のスパンボンド不織布は、柔軟性を持ちながら強度、耐摩耗性に優れており、使い捨て紙おむつやナプキンなどの衛生材料の表面材等に好適に利用することができる。
1 第一成分からなる領域
2 第二成分からなる領域
3 空洞部

Claims (3)

  1. ポリプロピレン系樹脂を含有する第一成分と、ポリエチレン系樹脂を含有する第二成分とからなる複合長繊維であって、繊維長さ方向に対して垂直な断面が前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域からなり、前記断面において、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の少なくともいずれかが二個以上に分割され、かつ、前記第一成分からなる領域と前記第二成分からなる領域の両方を少なくとも一個ずつ含む三個以上の領域がその外周の一部を前記断面の外周と共有する複合長繊維からなるスパンボンド不織布であって、繊維径8.0μm未満の繊維本数割合が10%以下であり、目付当たりのシート強度が1.5N/5cm以上である、スパンボンド不織布。
  2. 前記複合長繊維の平均繊維径が8.0〜21.0μmである、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  3. 耐摩耗等級が3級以上である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
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