JP2019026956A - 捲縮繊維、スパンボンド不織布、および捲縮繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで、嵩高性に優れた捲縮繊維およびスパンボンド不織布を提供する。また、前記捲縮繊維を、工業的に生産性と安定性に優れた方法で製造することができる捲繊維の製造方法を提供する。【解決手段】ポリオレフィンを主成分とする繊維であって、実質的に単一原料で構成されており、繊維長さ方向に対して垂直な断面の形状が円型であり、かつ、繊維断面の配向パラメータの差が0.3以上である捲縮繊維、およびそれを含んでなるスパンボンド不織布である。また、ノズルから吐出させた繊維群に対し、冷却風を相対する方向から当てて冷却する、前記捲縮繊維を製造する方法であって、相対する冷却風の温度の差が5℃以上である、捲縮繊維の製造方法である。【選択図】 図1
Description
本発明は、捲縮繊維、それを用いたスパンボンド不織布、および捲縮繊維の製造方法に関するものである。
一般に、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料用の不織布には、着用時の風合いのため、嵩高性および柔軟性に優れているという性能が求められている。特に、肌に直接触れる表面部材においては、嵩高性が要求される。
従来、衛生材料の表面部材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)複合繊維を代表とする短繊維を、カーディングによりシート化した後、熱風処理により自己融着した、いわゆるエアスルー不織布が好適に使用されている。このエアスルー不織布は、嵩高性と柔軟性に優れているという特徴を有していることから、衛生材料用途等に幅広く採用されているが、エアスルー不織布は製造プロセスが複雑であり、生産速度が遅いという課題がある。
一方、ポリプロピレン(以下、PPと略記することがある。)を代表とするポリオレフィン系樹脂繊維を原料として用いたスパンボンド不織布は、そのプロセスから生産性が高く低コストであることを特徴としているが、スパンボンド不織布を構成する長繊維が不織布の面方向に配向する構造であることから、嵩高性に劣るという課題がある。
このような課題に対し、スパンボンド不織布に嵩高性を付与する手法としては、不織布を構成する繊維に捲縮繊維を適用するという手法が提案されている。
例えば、特許文献1では、融点が10℃以上異なる2成分のポリマーから構成される捲縮複合繊維が提案されている。
また、特許文献2では、V型断面ノズルを用いた異形断面に対し、吐出後の繊維に対し片側から冷却する非対称冷却を行い、捲縮を発現させる手法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載された捲縮複合繊維の場合、異なる原料を別々の押出機によって押出し、口金から吐出する必要があるため、設備投資が高くなるという課題がある。また、この捲縮複合繊維では融点が10℃以上異なる原料を選定する必要があり、通常のPP(いわゆるホモPP)と共重合PP(いわゆるランダムPP)の組み合わせが必要となる。一般的に、ランダムPPはホモPPより原料価格が高いため、コストアップとなり、さらに、得られる複合繊維の捲縮数には限度があるため、エアスルー不織布並みの嵩高性は得られていない。
また、特許文献2の手法の場合、原料が単成分においても捲縮が発現するという特徴はあるが、この手法では、冷却風速を大きくすると、糸揺れ・糸切れが起こるため、生産安定性の観点から冷却風速を小さくせざるを得なく、得られる捲縮数は小さくなり、衛生材料の表面材に適用できるほどの嵩高性は得られていないのが現状である
したがって、従来、低コストで、かつ工業的に生産性と安定性に優れ、衛生材料として好適に使用される上で満足のいくレベルの嵩高性に優れた捲縮繊維およびスパンボンド不織布は得られていないのが現状である。
したがって、従来、低コストで、かつ工業的に生産性と安定性に優れ、衛生材料として好適に使用される上で満足のいくレベルの嵩高性に優れた捲縮繊維およびスパンボンド不織布は得られていないのが現状である。
そこで本発明の目的は、上記の課題に鑑み、低コストで、嵩高性に優れた捲縮繊維およびスパンボンド不織布を提供することにある。また、本発明の別の目的は、本発明の捲縮繊維を、工業的に生産性と安定性に優れた方法で製造することができる捲繊維の製造方法を提供することにある。
本発明の捲縮繊維は、ポリオレフィンを主成分とする繊維であって、実質的に単一原料で構成されており、繊維長さ方向に対して垂直な断面の形状が円型であり、かつ、繊維断面の配向パラメータの差が0.3以上である、捲縮繊維である。
本発明のスパンボンド不織布は、前記捲縮繊維を含んでなる、スパンボンド不織布である。
本発明の捲縮繊維の製造方法は、ノズルから吐出させた繊維群に対し、冷却風を相対する方向から当てて冷却する、前記捲縮繊維を製造する方法であって、相対する冷却風の温度の差が5℃以上である、捲縮繊維の製造方法である。
本発明によれば、低コストで、嵩高性に優れた捲縮繊維およびスパンボンド不織布が得られる。また、本発明の捲縮繊維を、工業的に生産性と安定性に優れた方法で製造することができる。
本発明の捲縮繊維は、ポリオレフィンを主成分とする繊維であって、実質的に単一原料で構成されており、繊維長さ方向に対して垂直な断面の形状が円型であり、かつ、繊維断面の配向パラメータの差が0.3以上である、捲縮繊維である。
本発明において、「繊維長さ方向に対して垂直な断面」を、単に「繊維断面」という場合がある。
本発明の捲縮繊維は、繊維断面円周方向に等分割した4点において、ラマン分光を用いて繊維側面から測定して得られる配向パラメータの最大値Imaxと最小値Iminの差が、0.3以上の繊維である。
本発明においては、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリオレフィンを主成分とする繊維の繊維断面円周方向に等分割した4点において、ラマン分光を用いて繊維側面から測定した配向パラメータの最大値Imaxと最小値Iminの差が、0.3以上であることが重要である。
本発明でいう配向パラメータとは、ラマン分光法で得られるラマンスペクトルにおいて、例えば、ポリプロピレン(PP)の場合は、810cm−1と840cm−1付近のラマンバンドの強度から求めることができる。PPの場合、810cm−1と840cm−1付近のラマンバンドは入射光の偏光に対して強い異方性を示すことが知られている。これらは、CH2変角振動とC−C伸縮振動のカップリングモード、CH2変角振動モードにそれぞれ帰属される。これらのうち、810cm−1のラマンバンドについては、振動モードのラマンテンソルの主軸は分子の主鎖方向に対し平行であり、一方で、840cm−1のラマンバンドでは直交している。よって、これらのラマンバンドの偏光方向に対するバンド強度比から、分子鎖の配向が得られる。
本発明でいう配向パラメータIは、I810/I840(I810:810cm−1付近のラマンバンド強度であり、I840:840cm−1付近のラマンバンド強度)の値として求められる。
また、ポリエチレン(PE)の場合は、1130cm−1付近のラマンバンドが振動モードのラマンテンソルの主軸は分子の主鎖方向に対し平行であり、1060cm−1付近のラマンバンドが直交しているため、本発明でいう配向パラメータIは、I1130/I1060(I1130:1130cm−1付近のラマンバンド強度であり、I1060:1060cm−1付近のラマンバンド強度)の値として求められる。
他のポリオレフィンの場合でも、当業者であれば同様にしてラマンバンドを決定し、配向パラメータを求めることができる。
一般的なPP繊維の場合、配向パラメータの最大値と最小値の差は、せいぜい0.2程度である。繊維の配向パラメータの最大値と最小値の差を0.3以上とすることにより、捲縮発現可能な繊維構造とすることができる。
本発明の捲縮繊維の繊維断面の配向パラメータの最大値と最小値の差は、0.3以上であり、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上である。配向パラメータの差を上記範囲とすることにより、繊維が捲縮発現できる構造差とすることができる。また、配向パラメータの差の上限は特に限定しないが、同一繊維内に製造できる限界としては、せいぜい7.0程度である。
本発明の捲縮繊維の繊維断面は円型であることが重要である。繊維断面が円型であるとは、通常知られている丸型断面の紡糸口金で製造されていることを意味する。本発明でいう繊維断面が円型であるということは、繊維断面に描いた内接円の中心と繊維円周上の2点を通る線分の最大の長さ(DMAX)と最小の長さ(DMIN)の比率DMAX/DMINが1.00以上1.05以下であることを意味する。円型断面の繊維は通常の紡糸口金により製造が可能であるため、従来のように、捲縮繊維を得るための異型断面口金を適用する必要がない。そのため、異型断面口金に係る設備投資が不要であるほか、通常の生産品からの連続生産が可能であったり、品種切り替えによるロスが少なくなったりするため、コスト競争力に優れ好ましい。
本発明の捲縮繊維は実質的に単一原料で構成されることが重要である。本発明でいう、実質的に単一原料で構成されるとは、いわゆる2成分以上の原料で構成される複合繊維ではなく、主原料であるオレフィン種が1種類であることを意味する。通常用いられている酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤および顔料等の添加物等は、ポリマーの原料としてカウントしない。すなわち、オレフィン種が1種類であるポリマーが、これらの添加物等を何種類含んでいても、該ポリマーは実質的に単一原料で構成されたポリマーとなる。また、複数の原料をチップの状態で混合した後に紡糸する、いわゆるブレンド紡糸は、1台の押出機等で溶融して口金へと供給することから、本発明においては単一原料で構成されたポリマーとして扱う。
本発明において、「ポリオレフィンを主成分とする」とは、捲縮繊維中のポリオレフィンの含有率が80質量%以上であることをいう。前記含有率は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であることが特に好ましい。
本発明の捲縮繊維および不織布を構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらのモノマーと他のα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。なかでも、強度が強く、使用時において破断し難く、かつ衛生材料の生産時における寸法安定性に優れていることから、ポリプロピレンを用いることが好ましい。
ポリプロピレンは、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリマーでもよく、メタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されるポリマーでもよい。また、エチレンランダム共重合ポリプロピレンも用いることができる。エチレン含有量は、エチレンランダム共重合台プロピレン全体の質量を100質量%として、2質量%未満であることが好ましく、より好ましくは1質量%未満である。
他のα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましい。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキサン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンなどが挙げられる。これらは、1種類単独でも2種類以上を組み合わせてもよい。
強度と寸法安定性、および生産性とコストの観点から、ホモポリプロピレンを主成分とするものであることが特に好ましい。
本発明で用いられるポリプロピレンのメルトフローレート(以下、MFRと記載する場合がある;ASTM D−1238 荷重;2160g、温度;230℃)は、1〜1000g/10分であることが好ましく、10〜500g/10分であることがより好ましく、20〜200g/10分の樹脂であることがさらに好ましい。ポリプロピレンのメルトフローレートを上記範囲とすることにより、安定した紡糸を行いやすくなり、かつ配向結晶化が進みやすくなり、高い強度の繊維が得られやすくなる。
本発明で用いられるポリエチレンのメルトフローレート(ASTM D−1238 荷重;2160g、温度;190℃)は、1〜1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは10〜500g/10分、さらに好ましくは15〜200g/10分の樹脂である。ポリエチレンのメルトフローレートを上記範囲とすることにより、安定した紡糸を行いやすくなり、かつ配向結晶化が進みやすくなり、高い強度の繊維が得られやすくなる。
本発明で用いられるポリプロピレンおよびポリエチレンには、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられている酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤および顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
本発明のスパンボンド不織布は、本発明の捲縮繊維を含んでなる。一般的な不織布の製法としては、例えば、ニードルパンチ不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、レジンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、トウ開繊式不織布、およびエアレイド不織布等の種々の製法があるが、本発明ではスパンボンド法による不織布であることが重要である。スパンボンド不織布は、生産性や機械的強度に優れ、また、長繊維からなるため短繊維不織布に比べて毛羽立ちしにくい特徴を有する。
本発明において、ポリオレフィンを主成分とする繊維の平均単繊維繊度は、0.5dtex以上3.5dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.7dtex以上3.2dtex以下であり、さらに好ましくは0.9dtex以上2.8dtex以下である。紡糸安定性の観点から、平均単繊維繊度は、0.5dtex以上であることが好ましい。一方、繊度が細い程、スパンボンド不織布として糸の接着点が多くなるため強度が高く、柔軟性が良好となりやすい。衛生材料として使用するためには、スパンボンド不織布の強力の観点から、平均単繊維繊度は3.5dtex以下であることが好ましい。上記平均単繊維繊度は、繊維断面写真における繊維断面積A(m2)とポリマー密度ρ(g/m3)から、次式を用いて算出することができる。
・単繊維繊度(dtex)=A(m2)×ρ(g/m3)×10000(m)。
・単繊維繊度(dtex)=A(m2)×ρ(g/m3)×10000(m)。
本発明のスパンボンド不織布は、目付が3〜200g/m2であることが好ましい。前記の目付は、より好ましくは5〜150g/m2であり、さらに好ましくは10〜100g/m2である。目付を上記範囲とすることにより、特に衛生材料用不織布として用いる場合に、十分な柔軟性を得ることができる。
本発明のスパンボンド不織布の見掛密度は、0.130g/cm3以下であることが好ましい。前記見掛密度は、目付を厚さで除することにより算出することができる。見掛密度は、より好ましくは0.125g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.100g/cm3以下である。見掛密度を上記範囲とすることにより、特に衛生材料用不織布として用いる場合に、十分な嵩高性を得ることができる。
次に、本発明の捲縮繊維およびスパンボンド不織布を製造する方法の一例を、説明する。
本発明の不織布はスパンボンド法で製造されることが好ましい。スパンボンド法は、原料樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化した繊維群に対し、エジェクターで牽引し延伸して、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した後、熱接着する工程を要する製造方法である。
紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアーの使用量が比較的少なく、繊維同士の融着や擦過が起こりにくい点から矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
本発明の捲縮繊維の製造方法は、ノズルから吐出させた繊維群の側面に対し、冷却風を相対する方向から当てて冷却する、本発明の捲縮繊維を製造する方法であって、相対する冷却風の温度の差が5℃以上である。
本発明の捲縮繊維の繊維断面の形状を得る口金としては、通常用いられる丸型の吐出形状のものが好ましく用いられる。
溶融し紡糸する際の紡糸温度は、200〜300℃が好ましく、より好ましくは210〜280℃であり、さらに好ましくは220〜260℃である。紡糸温度を上記範囲とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。ポリオレフィン樹脂(原料)は押出機によって、溶融し計量され、紡糸口金へと供給される口金吐出孔から紡出される。
紡出された長繊維の繊維群を冷却する方法としては、繊維群に対し相対する2方向から当てる冷却風温度差を5℃以上とすることが重要である。冷却風の温度差を5℃以上とすることにより、繊維断面内での冷却状態に差が生じた状態で、牽引・延伸することができ、延伸後の繊維断面に構造差が発現し、繊維を捲縮させることができる。冷却風の温度差は5℃以上とすることが好ましく、温度差が大きいほど、捲縮発現に有利となるが、紡糸の安定性の観点からせいぜい30℃程度である。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度、および雰囲気温度等を考慮し適宜調整し採用することで、繊維の捲縮数を制御することができる。
次に、冷却固化された繊維群は、エジェクターから噴射する圧縮エアーによって牽引し延伸される。延伸された後は圧縮エアーによる拘束がなくなるため、延伸繊維は応力緩和の影響を受ける。このとき、繊維断面の構造差に起因する収縮差により、繊維に捲縮が発現する。その後、長繊維を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化し、得られた不織ウェブを熱接着により一体化することにより不織布を得ることができる。
熱接着の方法としては、例えば、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど各種ロールによる熱圧着や、超音波による融着を適用することができる。
中でも強度と耐摩耗性の観点から、エンボスロールを用いた熱接着を好ましく採用することができる。また、上下いずれかに彫刻(凹凸部)が施されたロールを用いることにより、全体に圧力が掛かりにくくなり、捲縮繊維による嵩高性が損なわれないため好ましい態様である。
熱融着時のエンボス接着面積率は、5〜30%であることが好ましい。エンボス接着面積率を5%以上、より好ましくは10%以上とすることにより、不織布として実用に供しうる強度を得ることができる。一方、エンボス接着面積率を30%以下、より好ましくは20%以下とすることにより、捲縮繊維による嵩高性を維持することができる。
ここでいうエンボス接着面積率とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことをいう。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことをいう。
熱エンボスロールに施される彫刻の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などの形状を用いることができる。
熱エンボスロールの表面温度は、使用している樹脂の融点に対し−50〜−1℃とすることが好ましい。熱エンボスロールの表面温度を樹脂の融点に対し−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、さらに好ましくは−10℃以上とすることにより、十分に熱接着させ強度をもたせ毛羽の発生を抑えやすくすることができる。
また、熱エンボスロールの表面温度を樹脂の融点に対し−1℃以下とすることにより、繊維の融解により樹脂同士の剥離が発生するのを防ぎやすくすることができる。
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、5〜50kgf/cmであることが好ましい。前記線圧を5kgf/cm以上、より好ましくは10kgf/cm以上、さらに好ましくは15kgf/cm以上とすることにより、十分に熱接着させることができる。一方、前記線圧を50kgf/cm以下、より好ましくは40kgf/cm以下、さらに好ましくは30kgf/cm以下とすることにより、ロールの応力がかかりすぎないことによって捲縮繊維による嵩高性を維持することができる。
本発明の捲縮繊維を用いたスパンボンド不織布は、嵩高性に非常に優れており、使い捨て紙おむつやナプキンなどの衛生材料用途に好適に利用することができる。衛生材料用途の中でも、特に表面材に好適に利用することができる。
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
(1)繊維断面における配向パラメータの差(Imax−Imin):
測定装置には、愛宕物産製トリプルラマン分光装置T−64000を用いた。測定条件は、次のとおりで実施した。
・測定モード:顕微ラマン(偏光測定)
・対物レンズ:長焦点90倍(NA=0.90)
・ビーム径:51μm、光源:Ar+レーザー/514.5nm
・レーザーパワー:100mW
・回折格子:Single1800gr/mm
・スリット:100μm
・クロススリット:200μm
・検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256
・積算時間:120秒
不織布から繊維1本を取り出し、繊維断面円周方向に等分割した4点において、繊維側面よりラマンスペクトルをそれぞれ測定した。PPの場合は、各測定点における810cm−1および840cm−1のラマンバンドの強度I810およびI840を算出しその比率I810/I840を、配向パラメータIとして算出した。また、PEの場合は、1130cm−1および1060cm−1のラマンバンドの強度I1130およびI1060を算出しその比率I1130/I1060配向パラメータIとして算出した。各測定点における配向パラメータの最大値Imaxと最小値Iminを求め、その差(Imax−Imin)を算出した。不織布の異なる位置から採取した繊維1本に対して同様に測定し、2点の平均を求め、配向パラメータの差とした。
測定装置には、愛宕物産製トリプルラマン分光装置T−64000を用いた。測定条件は、次のとおりで実施した。
・測定モード:顕微ラマン(偏光測定)
・対物レンズ:長焦点90倍(NA=0.90)
・ビーム径:51μm、光源:Ar+レーザー/514.5nm
・レーザーパワー:100mW
・回折格子:Single1800gr/mm
・スリット:100μm
・クロススリット:200μm
・検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256
・積算時間:120秒
不織布から繊維1本を取り出し、繊維断面円周方向に等分割した4点において、繊維側面よりラマンスペクトルをそれぞれ測定した。PPの場合は、各測定点における810cm−1および840cm−1のラマンバンドの強度I810およびI840を算出しその比率I810/I840を、配向パラメータIとして算出した。また、PEの場合は、1130cm−1および1060cm−1のラマンバンドの強度I1130およびI1060を算出しその比率I1130/I1060配向パラメータIとして算出した。各測定点における配向パラメータの最大値Imaxと最小値Iminを求め、その差(Imax−Imin)を算出した。不織布の異なる位置から採取した繊維1本に対して同様に測定し、2点の平均を求め、配向パラメータの差とした。
本発明における配向パラメータの測定位置について説明する。図1は、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリオレフィン系繊維の断面を例示しており、配向パラメータの測定位置の一例を符号10で示している。図1の符号10の位置はあくまで一例であり、測定点数に応じて符号10で示す測定位置同士を繊維円周上の等間隔とすることが重要であり、そのような測定位置とすることで本発明における配向パラメータの差の算出が可能となる。
(2)繊維断面形状(DMAX/DMINの値)
捲縮繊維の横断面をキーエンス社製走査型電子顕微鏡(型番:VE7800)により撮影し、繊維断面に描いた内接円の中心と繊維円周上の2点を通る線分の最大の長さ(DMAX)と最小の長さ(DMIN)を測定し、その比率を算出した。繊維断面の内接円および、この比率における各種線分の測定は、画像撮影に使用した顕微鏡ソフトウエアに付属されている計測機能を使用した。異なる捲縮繊維3本に対して測定し、その平均を求め、DMAX/DMINが1.00以上1.05以下のものを繊維断面形状が円型であるとした。
捲縮繊維の横断面をキーエンス社製走査型電子顕微鏡(型番:VE7800)により撮影し、繊維断面に描いた内接円の中心と繊維円周上の2点を通る線分の最大の長さ(DMAX)と最小の長さ(DMIN)を測定し、その比率を算出した。繊維断面の内接円および、この比率における各種線分の測定は、画像撮影に使用した顕微鏡ソフトウエアに付属されている計測機能を使用した。異なる捲縮繊維3本に対して測定し、その平均を求め、DMAX/DMINが1.00以上1.05以下のものを繊維断面形状が円型であるとした。
(3)繊維の捲縮数:
マイクロスコープにより撮影した繊維の画像から、捲縮数を測定した。単位長さ当たりの繊維の山と谷の数全部数え、その合計を2で割り、25mm当たりの数を捲縮数とした。繊維10本について測定し、その平均を求めた。捲縮数が50個/25mm以上を捲縮度(◎)、捲縮数が25個/25mm以上50個/25mm未満を捲縮度(○)、捲縮数が0個/25mm(捲縮しないもの)〜25個/25mm未満を捲縮度(×)とし、捲縮数が25個/25mm以上のもの(◎および〇)を合格とした。
マイクロスコープにより撮影した繊維の画像から、捲縮数を測定した。単位長さ当たりの繊維の山と谷の数全部数え、その合計を2で割り、25mm当たりの数を捲縮数とした。繊維10本について測定し、その平均を求めた。捲縮数が50個/25mm以上を捲縮度(◎)、捲縮数が25個/25mm以上50個/25mm未満を捲縮度(○)、捲縮数が0個/25mm(捲縮しないもの)〜25個/25mm未満を捲縮度(×)とし、捲縮数が25個/25mm以上のもの(◎および〇)を合格とした。
(4)不織布の目付:
JIS L1913(2010年)の6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表した。
(5)不織布の厚さ:
JIS L 1908(2010年)に準拠して、不織布の厚さを測定した。2500mm2の面積を有するプレッサーフットを準備した。プレッサーフットの直径の1.75 倍以上の大きさの試験片について、2kPaの圧力を5秒間加えた後、厚さを測定した。試験片10枚分の平均値を算出して、その値を厚みとした。この数値が高いほど、嵩高性に優れると評価した。
(6)不織布の見掛密度:
測定した上記の目付と厚さから、不織布の見掛密度を算出した。この数値が低いほど、嵩高性に優れると評価した。
JIS L1913(2010年)の6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表した。
(5)不織布の厚さ:
JIS L 1908(2010年)に準拠して、不織布の厚さを測定した。2500mm2の面積を有するプレッサーフットを準備した。プレッサーフットの直径の1.75 倍以上の大きさの試験片について、2kPaの圧力を5秒間加えた後、厚さを測定した。試験片10枚分の平均値を算出して、その値を厚みとした。この数値が高いほど、嵩高性に優れると評価した。
(6)不織布の見掛密度:
測定した上記の目付と厚さから、不織布の見掛密度を算出した。この数値が低いほど、嵩高性に優れると評価した。
(実施例1)
原料に、メルトフローレート(MFR)が60g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)で、融点が162℃のポリプロピレン(PP)樹脂を用い、これを押出機で溶融し、紡糸温度235℃で、孔径がφ0.5mmの吐出形状を有する紡糸口金から単孔吐出量0.6g/分で長繊維を紡出した。紡出された長繊維群の側面に、温度10℃と15℃の冷却風をそれぞれ相対する2方向からを当てて冷却した後、エジェクターに通して、エジェクター圧力0.20MPaでエジェクターから圧縮エアーを噴射させ、糸条を牽引し、延伸し、捲縮を発現させた。その後、移動するネット上に繊維を捕集して不織ウェブ化した。引き続き、金属製の水玉柄の彫刻がなされた上ロールおよび金属製でフラットな下ロールから構成される上下一対の接着面積10%のエンボスロールを用いて、線圧が20kgf/cm、熱接着温度135℃で熱接着処理し、目付が20g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布を構成する繊維の繊維断面における配向パラメータの差(Imax−Imin)、繊維断面形状およびDMAX/DMIN値、捲縮数、不織布の目付、厚み、および見掛密度を測定した。得られた結果を、表1に示す。
原料に、メルトフローレート(MFR)が60g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)で、融点が162℃のポリプロピレン(PP)樹脂を用い、これを押出機で溶融し、紡糸温度235℃で、孔径がφ0.5mmの吐出形状を有する紡糸口金から単孔吐出量0.6g/分で長繊維を紡出した。紡出された長繊維群の側面に、温度10℃と15℃の冷却風をそれぞれ相対する2方向からを当てて冷却した後、エジェクターに通して、エジェクター圧力0.20MPaでエジェクターから圧縮エアーを噴射させ、糸条を牽引し、延伸し、捲縮を発現させた。その後、移動するネット上に繊維を捕集して不織ウェブ化した。引き続き、金属製の水玉柄の彫刻がなされた上ロールおよび金属製でフラットな下ロールから構成される上下一対の接着面積10%のエンボスロールを用いて、線圧が20kgf/cm、熱接着温度135℃で熱接着処理し、目付が20g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布を構成する繊維の繊維断面における配向パラメータの差(Imax−Imin)、繊維断面形状およびDMAX/DMIN値、捲縮数、不織布の目付、厚み、および見掛密度を測定した。得られた結果を、表1に示す。
(実施例2)
原料にMFRが35g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)で、融点が162℃のポリプロピレン(PP)樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表1に示す。
原料にMFRが35g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)で、融点が162℃のポリプロピレン(PP)樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表1に示す。
(実施例3)
原料にMFRが33g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)、融点が149℃の共重合ポリプロピレン(共重合PP)樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表1に示す。
原料にMFRが33g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)、融点が149℃の共重合ポリプロピレン(共重合PP)樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表1に示す。
(実施例4)
原料にMFRが18g/10分(荷重;2160g、温度;190℃)で、融点が130℃の高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を用い、エンボスロールの熱接着温度を90℃にしたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表1に示す。
原料にMFRが18g/10分(荷重;2160g、温度;190℃)で、融点が130℃の高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を用い、エンボスロールの熱接着温度を90℃にしたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表1に示す。
(実施例5)
原料にMFRが30g/10分(荷重;2160g、温度;190℃)で、融点が130℃の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表2に示す。
原料にMFRが30g/10分(荷重;2160g、温度;190℃)で、融点が130℃の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表2に示す。
(実施例6)
原料にMFRが35g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)で、融点が162℃のポリプロピレン(PP)樹脂とMFRが25g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)の共重合ポリプロピレン(PP)樹脂を各原原料の重量比率88:12とした混合原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を表2に示す。
原料にMFRが35g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)で、融点が162℃のポリプロピレン(PP)樹脂とMFRが25g/10分(荷重;2160g、温度;230℃)の共重合ポリプロピレン(PP)樹脂を各原原料の重量比率88:12とした混合原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を表2に示す。
(実施例7)
冷却風の温度を10℃と20℃とした事以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表2に示す。
冷却風の温度を10℃と20℃とした事以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を、表2に示す。
(比較例1)
冷却風の温度を同温度(15℃)としたこと以外は実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を表2に示す。
冷却風の温度を同温度(15℃)としたこと以外は実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。得られた結果を表2に示す。
表1、表2の結果から、実施例1〜7は、実質的に単一原料で構成されているにもかかわらず、繊維断面の配向パラメータの差が0.3以上と構造差ができており、繊維は捲縮し得られたスパンボンド不織布は嵩高性に非常に優れており、衛生材料の表面部材として非常に好適に用いられるものであった。
また、比較例1は、配向パラメータの差はなく繊維に捲縮は発現せず、不織布の嵩高性に劣っていた。
10:配向パラメータ測定位置
20:吐出孔(大孔径側)
30:吐出孔(小孔径側)
20:吐出孔(大孔径側)
30:吐出孔(小孔径側)
Claims (3)
- ポリオレフィンを主成分とする繊維であって、実質的に単一原料で構成されており、繊維長さ方向に対して垂直な断面の形状が円型であり、かつ、繊維断面の配向パラメータの差が0.3以上である、捲縮繊維。
- 請求項1に記載の捲縮繊維を含んでなる、スパンボンド不織布。
- ノズルから吐出させた繊維群に対し、冷却風を相対する方向から当てて冷却する、請求項1に記載の捲縮繊維を製造する方法であって、相対する冷却風の温度の差が5℃以上である、捲縮繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017146286A JP2019026956A (ja) | 2017-07-28 | 2017-07-28 | 捲縮繊維、スパンボンド不織布、および捲縮繊維の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021215492A1 (ja) * | 2020-04-22 | 2021-10-28 | 花王株式会社 | 衛生用不織布並びにこれを備える衛生品及び吸収性物品、並びに衛生用不織布の製造方法 |
-
2017
- 2017-07-28 JP JP2017146286A patent/JP2019026956A/ja active Pending
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WO2021215492A1 (ja) * | 2020-04-22 | 2021-10-28 | 花王株式会社 | 衛生用不織布並びにこれを備える衛生品及び吸収性物品、並びに衛生用不織布の製造方法 |
CN115427621A (zh) * | 2020-04-22 | 2022-12-02 | 花王株式会社 | 卫生用无纺布及具备其的卫生用品及吸收性物品、以及卫生用无纺布的制造方法 |
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